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特許7546681音響機器、音響機器の制御方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】音響機器、音響機器の制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20240830BHJP
   G10H 1/18 20060101ALI20240830BHJP
   G10H 1/32 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H04R3/00
G10H1/18 101
G10H1/32 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022546847
(86)(22)【出願日】2020-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2020033742
(87)【国際公開番号】W WO2022049759
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】315017409
【氏名又は名称】AlphaTheta株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐川 健太
(72)【発明者】
【氏名】小泉 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】津田 悠佑
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-287342(JP,A)
【文献】国際公開第2010/119541(WO,A1)
【文献】特開2003-263169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00-3/14
G10H 1/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽曲に対応するスケールを示す情報を取得するスケール情報取得部と、
前記スケールに含まれる音階を可変抵抗器の出力値の範囲に割り当てる音階割り当て部と、
前記割り当てに従い、前記出力値に応じて前記音階の中の少なくとも1つの音を発音させるための制御信号を生成する発音制御信号生成部と
を備え
前記可変抵抗器は、第1の楽曲再生部で再生される楽曲の音量を調節可能な第1の可変抵抗器と、前記第1の楽曲再生部とは異なる第2の楽曲再生部で再生される楽曲の音量を調節可能な第2の可変抵抗器とを含み、
前記スケール情報取得部は、前記第1の楽曲再生部で再生中または再生準備中の楽曲に対応する第1のスケールを示す情報を取得し、
前記音階割り当て部は、前記第1のスケールに含まれる音階を前記第2の可変抵抗器の出力値の範囲に割り当てる、音響機器。
【請求項2】
前記音階割り当て部は、前記スケールごとに異なる数の前記音階を前記出力値の範囲に割り当てる、請求項1に記載の音響機器。
【請求項3】
前記音階割り当て部は、前記出力値の範囲に割り当てる前記音階の数を設定情報に従って決定する、請求項または請求項2に記載の音響機器。
【請求項4】
前記音階割り当て部は、前記可変抵抗器の可動域において前記音階に対応する区間が対称配置されるように前記音階を前記出力値の範囲に割り当てる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の音響機器。
【請求項5】
前記音階割り当て部は、前記可変抵抗器の操作量に応じて前記音階が変化するカーブまたはステップの特性を設定情報に従って決定する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の音響機器。
【請求項6】
前記音階割り当て部は、2つ以上の前記音階を前記出力値の1つの範囲に割り当て、
前記発音制御信号生成部は、2つ以上の前記音階によって構成される和音を発音させるための前記制御信号を生成する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の音響機器。
【請求項7】
前記音階割り当て部は、前記音階を無段階的に前記出力値の範囲に割り当てる、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の音響機器。
【請求項8】
前記制御信号に従って前記音階を発音させるシンセサイザーをさらに備える、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の音響機器。
【請求項9】
前記可変抵抗器は、リニアフェーダーまたはロータリーフェーダーである、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の音響機器。
【請求項10】
楽曲に対応するスケールを示す情報を取得するステップと、
前記スケールに含まれる音階を可変抵抗器の出力値の範囲に割り当てるステップと、
前記割り当てに従い、前記出力値に応じて前記音階の中の少なくとも1つの音を発音させるための制御信号を生成するステップと
を含む音響機器の制御方法であって、
前記可変抵抗器は、第1の楽曲再生部で再生される楽曲の音量を調節可能な第1の可変抵抗器と、前記第1の楽曲再生部とは異なる第2の楽曲再生部で再生される楽曲の音量を調節可能な第2の可変抵抗器とを含み、
前記取得するステップでは、前記第1の楽曲再生部で再生中または再生準備中の楽曲に対応する第1のスケールを示す情報を取得し、
前記割り当てるステップでは、前記第1のスケールに含まれる音階を前記第2の可変抵抗器の出力値の範囲に割り当てる、音響機器の制御方法
【請求項11】
楽曲に対応するスケールを示す情報を取得するスケール情報取得部と、
前記スケールに含まれる音階を可変抵抗器の出力値の範囲に割り当てる音階割り当て部と、
前記割り当てに従い、前記出力値に応じて前記音階の中の少なくとも1つの音を発音させるための制御信号を生成する発音制御信号生成部と
を備える音響機器としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、
前記可変抵抗器は、第1の楽曲再生部で再生される楽曲の音量を調節可能な第1の可変抵抗器と、前記第1の楽曲再生部とは異なる第2の楽曲再生部で再生される楽曲の音量を調節可能な第2の可変抵抗器とを含み、
前記スケール情報取得部は、前記第1の楽曲再生部で再生中または再生準備中の楽曲に対応する第1のスケールを示す情報を取得し、
前記音階割り当て部は、前記第1のスケールに含まれる音階を前記第2の可変抵抗器の出力値の範囲に割り当てる、プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響機器、音響機器の制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
DJパフォーマンスに用いられるコントローラーやミキサーのような音響機器において、機能性や操作性を向上させたりするための技術が種々提案されている。そのような技術の例は、例えば特許文献1、特許文献2および特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/239538号
【文献】国際公開第2019/239486号
【文献】国際公開第2019/234861号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、近年のDJパフォーマンスでは、楽曲のキーを変えたり、シンセサイザーを演奏したりすることによって音程による効果を利用することが流行している。しかしながら、上記の文献に記載されたような従来の技術は、音程による効果を利用したパフォーマンスについて機能性や操作性を向上させるものではない。
【0005】
そこで、本発明は、音程による効果を利用したパフォーマンスを強化することが可能な音響機器、音響機器の制御方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]楽曲に対応するスケールを示す情報を取得するスケール情報取得部と、スケールに含まれる音階を可変抵抗器の出力値の範囲に割り当てる音階割り当て部と、割り当てに従い、出力値に応じて音階の中の少なくとも1つの音を発音させるための制御信号を生成する発音制御信号生成部とを備える音響機器。
[2]音階割り当て部は、スケールごとに異なる数の音階を出力値の範囲に割り当てる、[1]に記載の音響機器。
[3]音階割り当て部は、出力値の範囲に割り当てる音階の数を設定情報に従って決定する、[1]または[2]に記載の音響機器。
[4]音階割り当て部は、可変抵抗器の可動域において音階に対応する区間が対称配置されるように音階を出力値の範囲に割り当てる、[1]から[3]のいずれか1項に記載の音響機器。
[5]音階割り当て部は、可変抵抗器の操作量に応じて音階が変化するカーブまたはステップの特性を設定情報に従って決定する、[1]から[4]のいずれか1項に記載の音響機器。
[6]音階割り当て部は、2つ以上の音階を出力値の1つの範囲に割り当て、発音制御信号生成部は、2つ以上の音階によって構成される和音を発音させるための制御信号を生成する、[1]から[5]のいずれか1項に記載の音響機器。
[7]音階割り当て部は、音階を無段階的に出力値の範囲に割り当てる、[1]から[5]のいずれか1項に記載の音響機器。
[8]制御信号に従って音階を発音させるシンセサイザーをさらに備える、[1]から[7]のいずれか1項に記載の音響機器。
[9]可変抵抗器は、第1の楽曲再生部で再生される楽曲の音量を調節可能な第1の可変抵抗器と、第1の楽曲再生部とは異なる第2の楽曲再生部で再生される楽曲の音量を調節可能な第2の可変抵抗器とを含み、スケール情報取得部は、第1の楽曲再生部で再生中または再生準備中の楽曲に対応する第1のスケールを示す情報を取得し、音階割り当て部は、第1のスケールに含まれる音階を第2の可変抵抗器の出力値の範囲に割り当てる、[1]から[8]のいずれか1項に記載の音響機器。
[10]可変抵抗器は、リニアフェーダーまたはロータリーフェーダーである、[1]から[9]のいずれか1項に記載の音響機器。
[11]楽曲に対応するスケールを示す情報を取得するステップと、スケールに含まれる音階を可変抵抗器の出力値の範囲に割り当てるステップと、割り当てに従い、出力値に応じて音階の中の少なくとも1つの音を発音させるための制御信号を生成するステップとを含む音響機器の制御方法。
[12]楽曲に対応するスケールを示す情報を取得するスケール情報取得部と、スケールに含まれる音階を可変抵抗器の出力値の範囲に割り当てる音階割り当て部と、割り当てに従い、出力値に応じて音階の中の少なくとも1つの音を発音させるための制御信号を生成する発音制御信号生成部とを備える音響機器としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【0007】
上記の構成によれば、可変抵抗器を楽器のように操作して任意の音階の音を加えることによって、音程による効果を利用したパフォーマンスが可能になる。楽曲に適したスケールの音階が自動的に可変抵抗器の出力値の範囲に割り当てられるため、楽曲のキーまたはスケールにかかわらず、音程による効果を利用したパフォーマンスが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るミキサーの全体構成を示す図である。
図2図1に示されるミキサーのリニアフェーダーに関連する機能の構成を示すブロック図である。
図3A】本実施形態における音階の割り当ての第1の例を示す図である。
図3B】本実施形態における音階の割り当ての第1の例を示す図である。
図4A】本実施形態における音階の割り当ての第2の例を示す図である。
図4B】本実施形態における音階の割り当ての第2の例を示す図である。
図4C】本実施形態における音階の割り当ての第2の例を示す図である。
図5A】本実施形態における音階の割り当ての第3の例を示す図である。
図5B】本実施形態における音階の割り当ての第3の例を示す図である。
図6】本実施形態における音階の割り当ての第4の例を示す図である。
図7】フェーダーによる音程発音機能の起動時の処理を示すフローチャートである。
図8】フェーダーによる音程発音機能の起動中の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係るミキサーの全体構成を示す図である。本実施形態に係る音響機器は、DJパフォーマンスに用いられるミキサー100である。ミキサー100は、外部音源から入力される2チャンネルの音声信号を、筐体に配置されたスイッチやノブなどの操作子に対する操作に従って処理し、スピーカーなどに出力する。ミキサー100の操作子には、各チャンネルで再生される楽曲の音量を調節するチャンネルフェーダー、すなわちリニアフェーダー101A,101Bが含まれる。なお、以下で説明されるリニアフェーダー101A,101Bに関連する機能以外の部分について、ミキサー100はDJパフォーマンスに用いられる通常のミキサーと同様に構成されるため、これらの部分についての詳細な説明は省略する。
【0011】
図2は、図1に示されるミキサーのリニアフェーダーに関連する機能の構成を示すブロック図である。図示された例において、ミキサー100は、上記のリニアフェーダー101A,101Bに加えて、入力インターフェース110A,110Bと、再生処理部120A,120Bと、スケール情報取得部130と、音階割り当て部140と、発音制御信号生成部150と、シンセサイザー160と、出力インターフェース170とを含む。入力インターフェース110A,110B、再生処理部120A,120Bおよび出力インターフェース170は、音声信号のためのインターフェース装置、およびCPU(Central Processing Unit)またはDSP(Digital Signal Processor)によって構成される音声信号処理回路を用いて、通常のミキサーと同様に構成される。なお、以下の説明では、入力インターフェース110A、再生処理部120Aおよびリニアフェーダー101Aを含む音声信号の処理系統をAデッキ、入力インターフェース110B、再生処理部120Bおよびリニアフェーダー101Bを含む音声信号の処理系統をBデッキともいう。後述するフェーダーによる音程発音機能は、エフェクトの1つとしてAデッキまたはBデッキのいずれか(または両方)について起動することが可能である。
【0012】
上記の図1にも示されたリニアフェーダー101A,101Bは、可動域内で移動可能なノブの位置に応じて出力値が変化する可変抵抗器である。再生処理部120A,120Bは、リニアフェーダー101A,101Bの出力値から操作量を読み取り、操作量に応じて再生処理部120A,120Bのそれぞれで再生される楽器の音量を調節する。さらに、本実施形態では、以下でさらに説明するフェーダーによる音程発音機能により、リニアフェーダー101A,101Bの位置に応じた音程をシンセサイザー160で発音させて、再生処理部120A,120Bで処理された楽曲の音声信号とともに出力インターフェース170から出力することができる。このような機能を実現するための構成として、ミキサー100はスケール情報取得部130と、音階割り当て部140と、発音制御信号生成部150と、シンセサイザー160とを含む。これらの機能部分は、例えばメモリに格納されたプログラムに従って動作するCPU、またはDSPによって実装される。
【0013】
ここで、図2には、リニアフェーダー101Bを含むBデッキでフェーダーによる音程発音機能が起動された状態が示されている。この状態では、入力インターフェース110Aから入力された音声信号を再生処理部120Aが処理することによる楽曲の再生、およびリニアフェーダー101Aによる楽曲の音量の調節が通常通り実行されるのに対して、再生処理部120Bによる楽曲の再生はミュートされる。リニアフェーダー101Bの出力値は発音制御信号生成部150によって読み取られ、出力値に応じた音階の音がシンセサイザー160によって発音され、出力インターフェース170から出力される。この場合のスケール情報取得部130、音階割り当て部140および発音制御信号生成部の動作について、以下でさらに説明する。同様にリニアフェーダー101Aを含むBデッキでフェーダーによる音程発音機能を起動することも可能であり、その場合は以下で説明するAデッキおよびBデッキの機能が逆になる。
【0014】
スケール情報取得部130は、再生処理部120Aで再生中または再生準備中の楽曲に対応するスケールを示す情報を取得する。具体的には、スケール情報取得部130が取得する情報は、楽曲のキー情報またはスケール情報である。キー情報は、楽曲のキーを12音のいずれかの音と、メジャーまたはマイナーのいずれかとによって示す情報である。この場合、メジャーキーであれば当該音を主音とするメジャースケールを、マイナーキーであれば当該音を主音とするマイナースケールを特定することができる。一方、スケール情報は、楽曲に適合するスケールを直接的に示す情報である。スケール情報では、メジャースケールやマイナースケール以外の、例えばメジャーペンタトニックスケールやマイナーペンタトニックスケールなどのスケールを特定することもできる。なお、1つの楽曲に対応するキー情報またはスケール情報は1つには限られず、例えば楽曲に転調が含まれる場合は楽曲の区間ごとに異なるキー情報またはスケール情報が取得されてもよい。
【0015】
ここで、スケール情報取得部130は、外部装置で生成されたキー情報またはスケール情報を例えば入力インターフェース110Aを介して楽曲の音声信号とともに取得してもよいし、入力インターフェース110Aを介して取得された楽曲の音声信号を解析することによってキー情報またはスケール情報を抽出してもよい。音声信号の解析によってキー情報やスケール情報を抽出する手法については、公知の適切な手法を利用可能であるため詳細な説明は省略する。スケール情報取得部130は、例えば楽曲の音声信号が再生のために入力インターフェース110Aを介してロードされた段階で、予め音声信号を解析してキー情報またはスケール情報を抽出することができる。この場合、スケール情報取得部130は、AデッキおよびBデッキのそれぞれに楽曲がロードされたときに音声信号を解析してキー情報またはスケール情報を抽出し、フェーダーによる音程発音機能が起動された場合は既に抽出されているキー情報またはスケール情報を利用する。
【0016】
音階割り当て部140は、スケール情報取得部130が取得した情報によって示されるスケールに含まれる音階をリニアフェーダー101Bの出力値の範囲に割り当てる。具体的には、音階割り当て部140は、リニアフェーダー101Bの出力値から読み取られる操作量に応じて発音される音階が変化するように、出力値と音階との関係を決定する。音階割り当て部140は、例えばスケールごとに異なる数の音階を出力値の範囲に割り当ててもよい。あるいは、音階割り当て部140は、スケールに関わらず、出力値の範囲に割り当てる音階の数を設定情報に従って決定してもよい。また、音階割り当て部140は、リニアフェーダー101Bの操作量に応じて音階が変化するカーブまたはステップの特性を設定情報に従って決定してもよい。このような音階割り当て部140による音階の割り当てのより具体的な例については後述する。
【0017】
発音制御信号生成部150は、音階割り当て部140による割り当てに従い、リニアフェーダー101Bの出力値に応じて制御信号を生成する。制御信号はシンセサイザー160に入力され、シンセサイザー160は制御信号に応じて音階の中の少なくとも1つの音の音声信号を生成する。シンセサイザー160は例えばソフトウェアシンセサイザーであり、制御信号はMIDIコマンドであってもよい。シンセサイザー160は必ずしも発音制御信号生成部150と同じ装置内で実装されなくてもよく、例えば発音制御信号生成部150から外部音源装置に対して制御信号が送信されてもよい。シンセサイザー160が生成した音声信号は出力インターフェース170に入力され、リニアフェーダー101Bの操作量に応じた音が再生処理部120Aで再生されている楽曲とともに音声信号としてスピーカーなどに出力される。
【0018】
上記のような各部の機能によって、再生処理部120Aによる楽曲の再生中に、リニアフェーダー101Bを楽器のように操作して任意の音階の音を加えることによって、音程による効果を利用したパフォーマンスが可能になる。本実施形態では、スケール情報取得部130および音階割り当て部140の機能によって、楽曲に適したスケールの音階が自動的にリニアフェーダー101Bの出力値の範囲に割り当てられるため、楽曲のキーまたはスケールにかかわらず、リニアフェーダー101Bを用いて音程による効果を利用したパフォーマンスが容易にできる。
【0019】
図3Aおよび図3Bは、本実施形態における音階の割り当ての第1の例を示す図である。図3Aに示された例では、Gメジャースケールの1オクターブ分の音階がリニアフェーダー101Bの可動域を均等に分割した8つの区間に割り当てられている。なお、可動域内でのリニアフェーダー101Bの位置と出力値との関係は必ずしも線形ではないため、図3Aの例でも音階割り当て部140が音階を割り当てるリニアフェーダー101Bの出力値の範囲が数値的に均等に分割されているとは限らない。一方、図3Bに示された例では、Dメジャースケールの1オクターブ分の音階がリニアフェーダー101Bの可動域を均等に分割した8つの区間に割り当てられる。つまり、図3Aおよび図3Bに示された例では、リニアフェーダー101Bの可動域において割り当てられる音階の数および音階に対応する区間の配置は共通であるが、そこに割り当てられるスケールが、スケール情報取得部130が取得する情報(例えば楽曲のキー情報)に応じて自動的に変更されている。
【0020】
図4A図4Bおよび図4Cは、本実施形態における音階の割り当ての第2の例を示す図である。図4Aに示された例では、Aメジャースケールの1オクターブ分の音階がリニアフェーダー101Bの可動域を均等に分割した8つの区間に割り当てられている。一方、図4Bに示された例では、Aマイナーペンタトニックスケールの1オクターブ分の音階がリニアフェーダー101Bの可動域を均等に分割した6つの区間に割り当てられる。メジャースケールとペンタトニックスケールとでは1オクターブ分の音数が異なるため、音階割り当て部140がそれぞれのスケールで1オクターブ分の音階をリニアフェーダー101Bの出力値の範囲に割り当てようとした場合に、割り当てられる音階の数が異なる。あるいは、音階割り当て部140は、各スケールの1オクターブ分の音数に関係なく、同じ数の音階をリニアフェーダー101Bの出力値の範囲に割り当ててもよい。さらに、図4Cに示された例では、Aマイナーペンタトニックスケールの2オクターブ分の音がリニアフェーダー101Bの可動域を均等に分割した11の区間に割り当てられる。このように、音階割り当て部140が割り当てる音階の範囲は1オクターブ分には限られず、1オクターブ分を超える範囲、または1オクターブよりも少ない範囲であってもよい。
【0021】
図5Aおよび図5Bは、本実施形態における音階の割り当ての第3の例を示す図である。図5Aに示された例では、Aメジャースケールの1オクターブ分の音階がリニアフェーダー101Bの可動域を分割した8つの区間に割り当てられている。図5Aの例において、音階に対応するリニアフェーダー101Bの可動域の分割は不均等であり、可動域の端部では区間の幅が狭く、可動域の中央部では区間の幅が広くなっている。例えばリニアフェーダー101Bを視認することなく触覚を頼りにして操作するような場合、可動域の端部ではリニアフェーダー101Bを一方向に押し込んだり、押し込んだ位置から少しだけ戻したりといった操作が比較的容易であるために、区間の幅が狭くても狙い通りの発音が容易である。これに対して、可動域の中央部では操作にある程度の誤差が生じるために区間の幅が広い方が操作しやすい。このような点を考慮する場合に、図5Aのような割り当ては有用でありうる。図5Aの例ではリニアフェーダー101Bの可動域において音階に対応する区間が対称配置されるのに対して、図5Bの例では区間が非対称配置されている。例えばユーザーの好みに応じて、リニアフェーダー101Bの可動域における音階に対応する区間の均等配置および不均等配置、ならびに対称配置および非対称配置が選択可能であってもよい。また、上記の例では音階割り当て部140が音階を段階的にリニアフェーダー101Bの出力値の範囲に割り当てているが、音階割り当て部140は音階を無段階的に出力値の範囲に割り当ててもよい。
【0022】
図6は、本実施形態における音階の割り当ての第4の例を示す図である。図6の例では、音階割り当て部140がCメジャースケールに含まれる3つの音階をリニアフェーダー101Bの出力値の1つの範囲に割り当てることによって、キーがCメジャーである場合の1度(C,E,G)、4度(C,F,A)および5度(D,G,B)の和音を発音させることが可能になっている。このように、2つ以上の音階をリニアフェーダー101Bの出力値の1つの範囲に割り当てることも可能である。出力値の1つの範囲に割り当てられる音階の数、つまりリニアフェーダー101Bを用いて単音を出力するか和音を出力するかが選択可能であってもよい。
【0023】
次に、図7および図8のフローチャートを参照して、本発明の一実施形態における処理の例について説明する。
【0024】
図7には、フェーダーによる音程発音機能の起動時の処理が示されている。この場合、まず、機能が起動されたのがBデッキか(またはAデッキか)が判定される(ステップS101)。機能が起動されたのがBデッキである場合(YES)、Bデッキの再生処理部120BがBデッキにおける楽曲の再生をミュートする(ステップS102)。さらに、スケール情報取得部130がAデッキの再生処理部120Aで再生されている楽曲のスケールを示す情報を取得する(ステップS102)。既に述べたように、スケール情報取得部130は、例えば外部装置で予め生成されたキー情報またはスケール情報を取得するか、または予め音声信号を解析することによって抽出したキー情報またはスケール情報を利用する。次に、音階割り当て部140がBデッキのリニアフェーダー101Bにスケールの音階を割り当てる(ステップS103)。音階割り当て部140は、例えば予めユーザー操作によって決定された設定情報を参照して、上記で説明した例のようにリニアフェーダー101Bの出力値の範囲に音階を割り当てる。一方、ステップS101の判定で機能が起動されたのがBデッキではなくAデッキである場合(NO)、AデッキとBデッキを逆にして上記のステップS102,S103,S104と同様の処理が実行される(ステップS105、S106,S107)。
【0025】
図8には、フェーダーによる音程発音機能の起動中の処理が示されている。発音制御信号生成部150は、機能が起動されているデッキのリニアフェーダー(リニアフェーダー101A,101Bのいずれか)の出力値が変化したか否かを判定し(ステップS111)、出力値が変化した場合(YES)、変化後の新たな出力値を含む範囲に音階割り当て部140によって割り当てられた音階を特定し(ステップS112)、特定された音階を発音させるための発音制御信号を生成する(ステップS113)。以上の処理を、機能が終了されるまで繰り返す(ステップS114)。ステップS111の判定でリニアフェーダーの出力値が変化しなかった場合(NO)は新たな発音制御信号は生成されず、それまで発音されていた音階が引き続き発音される。
【0026】
なお、上記ではリニアフェーダーの出力値の範囲に音階を割り当てる例について説明したが、可変抵抗器の種類は特に限定されず、可変抵抗器によって実装される操作子の用途も音量調節には限定されない。例えば、ロータリーフェーダーや一般にポテンショメーターと呼ばれる可変抵抗器によって実装される各種の操作子について、上記の実施形態のように出力値の範囲に音階を割り当て、本来割り当てられている機能と音階を発音させる機能とを切り替えることによって、音程による効果を利用したパフォーマンスが可能になり、パフォーマンスの多様性を向上させることができる。このような機能をもった音響機器は上記の実施形態で説明されたようなミキサーには限られず、例えばミキサー機能を備えたDJコントローラーなどであってもよい。上記の例では2チャンネルのミキサーが説明されたが、例えば4チャンネルのミキサーでも同様の機能が実現可能である。また、本発明はDJ機器に限られず、可変抵抗器によって実装される操作子を備えた一般的なミキサーや電子楽器などの音響機器にも適用可能である。
【0027】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0028】
100…ミキサー、101A,101B…リニアフェーダー、110A,110B…入力インターフェース、120A,120B…再生処理部、130…スケール情報取得部、140…音階割り当て部、150…発音制御信号生成部、160…シンセサイザー、170…出力インターフェース。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7
図8