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特許7546682車両を制御する方法、コンピュータプログラム、コンピュータ可読記憶媒体及び制御装置
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  • 特許-車両を制御する方法、コンピュータプログラム、コンピュータ可読記憶媒体及び制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】車両を制御する方法、コンピュータプログラム、コンピュータ可読記憶媒体及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/10 20060101AFI20240830BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20240830BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240830BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
B60W30/10
B60W40/02
B60L15/20 J
G08G1/16 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022547775
(86)(22)【出願日】2021-02-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 DE2021200021
(87)【国際公開番号】W WO2021175384
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】102020202758.7
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】322007626
【氏名又は名称】コンチネンタル・オートナマス・モビリティ・ジャーマニー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】クンチャー・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ラントフリート・カーイ
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102018203617(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/16
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置(2)によって、軌道に沿って少なくとも1つのアクチュエータを有する車両(1)を制御する方法において、探索空間内の前記軌道が、前記アクチュエータの少なくとも1つの変数の先読みを考慮してプラニングされ、以下の方法ステップ:
-前記アクチュエータの前記少なくとも1つの変数に基づいて、前記アクチュエータのアクチュエータモデルを作成するステップと、
-前記先読みの時間ステップを確定するステップと、
-前記アクチュエータモデルと前記変数の境界値とに基づいて、前記時間ステップに沿って前記アクチュエータの前記変数の変化を算出し、境界値として、正および/または負の方向の前記変数の最大可能変化が設けられているステップと、
-前記アクチュエータの前記変数の前記境界値に基づいて前記探索空間を境界画定するステップと、
-車両質量と車輪径とを用いて前記少なくとも1つの変数を変換することにより、前記車両(1)の加速度値および減速度値を算出し、走行抵抗が、前記先読みの前記時間ステップにおいて算出され、加速度値の算出の際および減速度値の算出の際に考慮されるステップと、
-前記探索空間を境界画定するために前記加速度値および前記減速度値を出力するステップであって、前記探索空間内において前記軌道がプラニングされるステップと、
を備える方法。
【請求項2】
アクチュエータとして、前記車両(1)の電動機(4)および/または制動装置(5)が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
変数として、モーメント又は前記電動機(4)の電動機モーメントまたは前記制動装置(5)の制動装置モーメントが設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アクチュエータモデルは前記変数の関数に基づいており、時間tに関する、変数上昇用の前記変数の正の増加と、変数下降用の前記変数の負の増加とを含むことを特徴とする、請求項1~3の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項5】
加速度値として前記車両(1)の最大可能加速度および減速度値として前記車両(1)の最大可能減速度が設けられていることを特徴とする、請求項1~4の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項6】
周辺を検知するための少なくとも1つのセンサ又はカメラ(6)および/またはライダセンサ(7)および/またはレーダセンサ(8)および/または超音波センサが設けられていることを特徴とする、請求項1~5の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項7】
検知された前記周辺が、前記探索空間(9)の確定のためおよび/または軌道プラニングのために用いられることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
コンピュータプログラムがコンピュータにおいて実行される際に請求項1~7の少なくとも1項に記載の方法を実行するプログラムコードを備えるコンピュータプログラム。
【請求項9】
命令が実行されるコンピュータに、請求項1~7の少なくとも1項に記載の方法を実行させる命令を含むコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項10】
軌道に沿って車両(1)を制御する制御装置(2)であって、前記車両(1)の制御は請求項1~7の少なくとも1項に記載の方法に基づいて行われることを特徴とする、制御装置(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の軌道プラニング方法、本発明に係る軌道プラニングを実行するように構成される制御システム、本発明に係る方法を実行するプログラムコードを有するコンピュータプログラム、およびコンピュータ記憶媒体が実行されるコンピュータに、本発明に係る方法を実行させるコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の車両、例えば乗用車(PKW)、貨物自動車(LKW)または自動二輪車においては、運転者支援システムがますます装備されており、運転者支援システムは、センサを用いて周辺およびそこに存在する物体を検知し、交通状況を認識し、例えば制動介入または操舵介入によりまたは光学的または音響的警告の出力により運転者を支援することができる。物体検知および/または周辺検知用のセンサとして、通常、レーダセンサ、ライダセンサ、カメラセンサ等が用いられる。センサにより検出されたセンサデータに基づいて、次に、周辺に関して推論される。ここで、処理されたセンサ情報が周辺検知のために用いられ、これに基づいて運転者警告/運転者情報に関する命令または制御された操舵、制動および加速に関する命令が供給される。この場合、センサデータおよび周辺データを処理する支援機能を用いて、運転タスクまたは車両案内が支援またはそれどころか完全にテイクオーバーされる(部分自動/完全自動)ことにより、例えば他の交通参加者との事故を回避し、または複雑な運転操作を軽減することができる。例えば、車両は、例えば緊急制動アシスト(EBA、Emergency Brake Assist)、自律緊急制動(AEB、Automatic Emergency Brake)によって、車間距離制御支援(ACC)、追従走行および速度制御によって、または操舵支援を用いたアクティブ車線逸脱防止支援(LKA、Lane Keep Assist)によって、車線維持することができる。さらに、複数のこれらの機能を1つのシステムにおいてまとめることもできる。危険な状況での緊急制動に加えて、特に車両の(完全)自動案内の際には自動制動介入が大きな意味を有する。ここで、自動制動は、危機的周辺状況または交通シーン、特に衝突の危険の際に導入される。
【0003】
(部分)自動走行を制御するために、一般に、制御システムが用いられ、制御システムは車両のアクチュエータ、例えば操舵装置、制動装置または電動機にアクセスし、軌道をプラニングし選択する軌道プランナ(略してプランナ)と、軌道を実現する1つまたは複数のレギュレータとを含む。ここで、「センス・プラン・アクト」(測定・計画・行動)、つまり左から右への制御フローにほぼ沿って制御のデータフローが行われる。ここでプランナは、とりわけセンス部分、つまり周辺センサを用いて検知された周辺データおよび物体データ、例えば前方走行車両との間隔およびその速度に基づく情報を処理する一方、アクト部分、例えば現在のアクチュエータ状態およびアクチュエータ限界値に基づく情報は処理しない。その代りに、プランナアンザッツは、一般に、アクチュエータ限界値は出現せず、アクチュエータダイナミクスは無視できるという単純化に基づいている。現実的には、アクチュエータの要件は、若干のアクチュエータデッドタイム後(つまり制御フローにおけるシステム入力における信号変化とシステム出力における信号応答との間の時間スパンの後)に初めて、設計に起因するダイナミクスを用いて、アクチュエータ動作領域内においてのみ満たされる。プランナにおいてこれら情報が利用可能でない場合、走行不可能な軌道をプラニングすることにつながる可能性がある。例えば、利用可能なアクチュエータダイナミクスを用いては実現不可能な軌道またはアクチュエータの動作領域外にある軌道がプラニングされてしまう。これらの場合、プラニングの下流のレギュレータにおけるレギュレータワインドアップ(レギュレータの著しい劣化)そして新規プラニングが生じる可能性がある。ワインドアップは制御偏差の累積により生じ、例えば前方走行車両との計画された間隔を下回ることにつながることがある。減速軌道から加速軌道(またはその逆)への移行の際、ワインドアップにより、車両反応はさらに遅延する。新規プラニングにより制御偏差は人工的に低下するが、これにより正確性が低下する。アクチュエータ限界値を恒常的に破ることにより、高頻度の新規プラニングと、それに伴い、必須の軌道と実際に走行した軌道との間のドリフトの増加とが発生する。
【0004】
上位概念の電動機システムおよび制動装置システムは、通常の場合、プランナに対するアクチュエータ境界値に関するフィードバックを行わない。その一方、アクチュエータ境界値に関する信号が存在する場合でも、これらは多くの場合、現在の演算サイクルのみに関するものである。電動機モーメント最大値および電動機モーメント最小値(つまり最大ドラッグトルク)は電動機制御装置から供給される一方、どの時点においてこれら最大値に到達することができるか指示を与えることはない。最大モーメント勾配、従って実際のアクチュエータポテンシャルの予測は、従って利用可能ではない。プランナにおいて境界条件式を用いて限界値が導入されれば、限界値が時間的先読みとともに利用可能となるはずである。電動機制御装置により供給された現時点の限界値は十分ではない。このようにして、プランナにおいてアクチュエータ境界値を考慮に入れることができず、ワインドアップまたは新規プラニングが発生する。
【0005】
また、予測の欠如は別として、プランナは最適化プロセスを用いて境界条件の形で限界値を考慮に入れることができるにもかかわらず、現在の電動機モーメント境界値がプランナにおいて用いられることはない。この理由は、アクチュエータトルク境界値の車両加速度境界値への変換が行われないからである。その一方、プランナは車両前後方向加速度に基づいて最適な軌道を算出する。アクチュエータ限界値がトルクまたは軸モーメントとしてのみ存在する場合、プランナはこれらを用いることができないのは、プランナはトルクを加速度に変換するアクチュエータ/車両モデルを有していないからである。従って、プランナにおいてはアクチュエータ限界値を考慮に入れることができない。
【0006】
特許文献1から複数のアクチュエータ(例えば操舵装置、ドライブトレイン、常用制動装置および駐車制動装置)を有する車両用の制御システムが知られている。ここで制御システムは、車両移動制御用モジュールと、アクチュエータ制御用モジュールと、実行する車両動作戦略を設定するためのモジュールと、モーメント座標用モジュールとを有し、車両の移動要件に基づいて、それにより得られる、前後方向成分と、左右方向成分と、垂直方向成分とを有する正規化された要件ベクトルが形成される。さらに、制御システムは、車両動作戦略と要件ベクトルとに応じて、アクチュエータに分散されているモーメントを形成するように構成されている。
【0007】
特許文献2には、車両用のコストを低減した軌道プラニングの方法において、軌道を算出するための探索空間が近似された終了時点に応じて境界画定される方法が記載されている。この場合、運転操作のための軌道を算出するための探索空間は近似された終了時点近傍の所定の領域、特に近似された終了時点近傍の10%に限定されることにより、軌道算出演算コストを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許出願公開第102016221723号明細書
【文献】独国特許出願公開第102015209066号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の課題は上位概念として、軌道プラニングが簡単かつ低コストで改善される車両を制御する方法を利用可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本課題は請求項1および並列独立請求項の特徴全体により解決される。本発明の好適な形態が従属請求項に記載される。
【0011】
本発明に係る軌道に沿って車両を制御する方法において、車両は少なくとも1つのアクチュエータ、好ましくは複数のアクチュエータを有する。さらに、車両は制御装置を含み、制御装置は軌道プランナを有し、軌道プランナは、確定可能な探索空間内の軌道を、アクチュエータまたはレギュレータの少なくとも1つの変数の先読みまたは予測を考慮してプラニングを行う。特に、本方法は前後方向の軌道をプラニング(Longitudinal Trajectory Planning)するのに好適である。ここで、本方法は以下の方法ステップを含む:
-アクチュエータの少なくとも1つの変数に基づいて、アクチュエータのアクチュエータモデルを作成するステップと、
-先読みの時間ステップを確定するステップと、
-アクチュエータモデルと変数の境界値とに基づいて、時間ステップに沿ってアクチュエータの変数の変化を算出するステップと、
-アクチュエータの変数の境界値に基づいて探索空間を境界画定するステップと、
-車両質量と車輪径とを用いて少なくとも1つの変数を変換することにより、車両の加速度値および/または減速度値を算出するステップと、
-探索空間を境界画定するために加速度値および減速度値を出力するステップであって、探索空間内において軌道がプラニングされるかまたは軌道プランナが可能な軌道を探索するステップ。
【0012】
本発明に係る方法プロセスにより、アクチュエータの自然境界条件が考慮されることにより、走行可能な軌道のみが軌道プランナによりプラニングされることが確実になるという有利な点が生じる。本発明により、特に簡単に1つまたは複数の変数の可変先読みが可能になるため、本方法は複数のアクチュエータにも使用可能であり、複雑な車両モデルは必要とされない。さらに、本方法については、簡単なパラメータ化と、解析演算に起因する演算コストが僅かにのみ必要とされるだけである。また、本方法は様々なプラニング概念との互換性を有することにより、特に簡単かつフレキシブルに実装可能である。
【0013】
好ましくは、アクチュエータとして、車両の電動機、例えば内燃機関または電動機および/または制動装置が設けられている。代替的にまたは追加的に、操舵装置がアクチュエータの1つとして設けられてもよい。
【0014】
本発明の好ましい形態によると、変数として、モーメント、特に電動機の電動機モーメントまたは制動装置の制動装置モーメントが設けられている。
【0015】
有利には、境界値として、正および/または負の方向の変数の最大可能変化が設けられてよい。例えば、変数として、モーメントまたは電動機のトルクが設けられてよい。
【0016】
好適には、アクチュエータモデルは変数の関数に基づいてよく、関数は、時間に関してプロットされ、変数上昇用の変数の正の増加と、変数下降用の変数の負の増加とを含んでよい。例えば、アクチュエータモデルとしてまたは複数のアクチュエータモデルとして、電動機モデルおよび/または制動装置モデルが設けられてよい。変数としてここで電動機モーメントまたは制動装置モーメントが設けられている場合、モータモデルは例えば正の増加として電動機モーメント上昇と、負の増加として電動機モーメント下降とを含み、制動装置モーメントは好ましくは制動装置モーメント上昇を正の増加として、制動装置モーメント下降を負の増加として含む。実際に、時間軸について、先読みの時間ステップが考慮されることにより、それぞれの増加が算出されてよい。
【0017】
好ましくは、加速度値として車両の最大可能加速度および減速度値として車両の最大可能減速度が設けられている。
【0018】
本方法の好ましい形態によると、走行抵抗が算出されてよい。特に、算出は先読みの時間ステップまたは先読みの期間において行われてよい。
【0019】
好適には、ここで、走行抵抗が加速度値の算出の際および/減速値の算出の際に考慮される。これにより、決定の正確さがさらに追加的に向上する。
【0020】
さらに、周辺検知用の少なくとも1つのセンサ、特にカメラおよび/またはライダセンサおよび/またはレーダセンサおよび/または超音波センサが設けられてよい。1つのセンサまたは複数のセンサのセンサデータに基づいて、車両周辺とそこに存在する物体および交通参加者とを検知することができる。ここで、複数のセンサのセンサデータを融合することもでき、これにより周辺検知および物体検知がさらに改善される。
【0021】
実際に、そこに存在する物体および交通参加者を含む検知された周辺が、探索空間の確定のためおよび/または軌道プラニングのために用いられてよい。これは、例えば、探索空間が可能な軌道に従ってさらに境界限定されることにより行われてよいのは、センサにより検知される物体はその前に境界画定されている探索空間に存在するからである。さらに、軌道プラニングの際またはその後の走行すべき軌道の選択は、例えば、道路コースに沿って他の物体/交通参加者と衝突しないように延びる軌道が選択されることにより衝突を回避する局面が考慮されるように、行われてよい。
【0022】
さらに、本発明は、コンピュータプログラムがコンピュータまたはその他の従来技術から公知のプログラム可能な計算機において実行される際に本発明に係る方法を実行するプログラムコードを備えるコンピュータプログラムを含む。これによると、本方法を純粋なコンピュータ実装方法としても構成することができ、本発明の意味における「コンピュータ実装方法」の概念は、計算機に基づいて実装または実行されるスケジューリングまたはプロセスを示している。計算機、例えばコンピュータ、コンピュータネットワークまたはその他の従来技術から公知のプログラム可能な装置(例えばプロセッサ、マイクロコントローラ等を含む計算装置)は、この場合、プログラム可能な計算アルゴリズムを用いてデータを処理することができる。
【0023】
また、本発明は、命令が実行されるコンピュータに、前述の請求項の少なくとも1項に記載の方法を実行させる命令を含むコンピュータ可読記憶媒体を含む。
【0024】
並列的にまたは下位概念的に、本発明は、特に前後方向の軌道に沿って車両を制御する制御装置であって、車両の制御は本発明に係る方法に基づいて行われるように構成される制御装置も含む。
【0025】
本発明の意味における探索空間の概念は、空間的広がりとして理解され、この空間的広がりの内部において制御ユニットは可能な走行可能軌道を探索し、探索空間内において複数の軌道がプラニング可能であるため、この場合、それぞれの軌道を状況に合わせて適切に選択することができる。
【0026】
本発明の意味における境界値の概念は、変数の最大値または最小値、つまり例えば走行したルートに沿うまたは時間tに沿うそのコースを検知可能な最大値または最小値として理解される。
【0027】
明示的に示されていない、特徴または請求項の特徴の組み合わせ、いわゆる下位組み合わせも本発明に含まれることは明らかである。
【0028】
以下、好適な実施形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、最大変数の予測を本発明に係る方法に基づいて行う車両の簡略化された概略図である。
図2図2は、本発明に係る方法のフローの簡略化された概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1の参照符号1は様々なアクチュエータ(操舵装置3、電動機4、制動装置5)を有する車両を示し、車両1は制御装置2(ECU、Electronic Control Unit)を備え、制御装置2によりアクチュエータダイナミクスを参照して軌道プラニングを行うことができる。この場合、軌道は軌道プランナに基づいて算出され、特に前後方向における各アクチュエータの最大変数の予測を、軌道プランナの探索空間境界画定のために行い、軌道プラニングのために用いられる。ここで、軌道プランナは、制御装置2のハードウェアモジュールとしてまたは純粋なソフトウェアモジュールとして構成されてよい。さらに、車両1は周辺を検知するセンサを備え(カメラ6、ライダセンサ7、レーダセンサ8および超音波センサ9a,9b)、そのセンサデータが周辺検知および物体検知のために用いられることにより、様々な支援機能、例えば緊急ブレーキアシスト(EBA、Electronik Brake Assist)、車間距離制御(ACC、Automatic Cruise Control)、車線逸脱防止制御または車線逸脱防止支援システム(LKA、Lane Keep Assist)等を実現することができる。具体的には、支援機能の実施は制御装置2または固有の制御装置を介しても行うことができる。
【0031】
本発明に係る方法は、入力信号である車両加速度a、車両速度v、制動装置モーメントT、電動機モーメントT、最小電動機モーメントTM,min、最大電動機モーメントTM,maxおよび現在噛み合っているギアを用い、両出力ベクトルである最大加速度および最大減速度をそれぞれ可変先読みとともに供給する。ここで、車両パラメータであるトランスミッション変速比i、車両質量m、車輪径r、フロント面積A、抗力係数c(この順に精度要求は減少)および空気密度ρ(単位はkg/m)は既知である。本方法のフローチャートまたはデータフローの設計についてその構成が図2に簡略化して示される。
【0032】
図2には、一例として、アクチュエータとして制御装置と電動機が設けられており、制御装置と電動機は、それぞれ対応するアクチュエータモデル(電動機モデル10と制動装置モデル11)に基づいて示され、電動機モデル10と制動装置モデル11は、それぞれ、時間tに関する、モーメント上昇用のモーメントTの正の増加(電動機モーメント上昇10aと制動装置モーメント上昇11a)と、モーメント下降用のモーメントTの負の増加(電動機モーメント下降10bと制動装置モーメント下降11b)とを有する。図2において、トルクつまりモーメントTはニュートンメートル(Nm)で、時間は秒(s)で示される。ここで、制動装置は線形関数に基づいて、デッドタイムと飽和を用いて示されており、任意で含まれるデッドタイムは関数の第1の傾き部分を含み、飽和は第2の傾き部分を含む。電動機モデル10の電動機が漸次的に定義された線形関数として任意のデッドタイムと飽和を用いて示されているのは、例えば内燃機関と電動機が、その設計に起因してギア依存の電動機モーメント境界値を超える、電動機モーメント境界値よりも低いモーメント勾配を供給するからである。その一方、1ギアトランスミッションを有する電動機について、制動装置モデル11のようなモデル化を選択することができる。
【0033】
先読み12において、アクチュエータの最大上昇および下降勾配がそれぞれ先読みベクトルと乗算されることにより、ベクトルにより特定される時間ステップ(秒s単位の時間t)における(トルク)モーメントTの最大正および負の変化を決定し、図2においては以下の時間ステップが選択されている:0s、0.5s、1sおよび2s。
また、現在のトルクTによる最大トルク変化は全体として、それぞれのアクチュエータの絶対境界(つまり、例えば最大電動機モーメントTM,max)以下であってよいため、飽和13に基づいて図示されるように、アクチュエータの可能な動作領域に限定される。
【0034】
その次に、好適には変換14が行われ、転換14の際、(4つの)トルク変化が車両質量mと車輪径rを用いて(4つの)車両加速度へと、
【0035】
【数1】
に基づいて変換される。電動機モーメント上昇と制動装置モーメント下降の合計の変換から最大車両加速度が得られる。従って、電動機モーメント下降と制動装置モーメント上昇の合計の変換から最大車両減速度が得られる。
【0036】
さらに、算出された車両加速度について、走行抵抗が考慮される。ここで、算出された車両加速度が適用されることにより、先読みの期間における走行抵抗の変化が得られる。また、これにより、加速度の変化が生じる。次式
【0037】
【数2】
が適用されることにより、ここで走行抵抗変化15a,15bを考慮に入れることができる。
【0038】
出力(右方向矢印)の際、走行抵抗の変化の影響分が修正された加速度限界値および減速度限界値が、先読み、例えば0s、0.5s、1s、2s等を用いて(可変に)構成または出力され、プランナに送信される。
【0039】
まとめると、本発明により、特に前後方向における現在および今後のアクチュエータ限界値の推定の予測方法を利用可能とすることができる。このアクチュエータ限界値がプランナに利用可能となるため、走行可能な軌道の算出が確実になる。この場合、特に、アクチュエータである電動機および制動装置の利用可能なダイナミクスと絶対限界値が推定されることになる。さらに、走行抵抗も考慮に入れることができる。この場合、推定されたアクチュエータ限界値は、現在の時点についてかつプランナに向けられている時間的先読みにについて算出されてよい。また、推定されたアクチュエータ限界値は車両前後方向加速度の形式でプランナに送信されてよく、これにより、最適化に基づいているプランナアンザッツおよび最適化に基づいていないプランナアンザッツとの互換性が実現される。さらに、本発明はさらなるアクチュエータを備えるシステム、例えばフロントアクスルステアリングおよびリアアクスルステアリングまたは四輪駆動車両にも適応可能であり、つまり、さらなる前後方向のアクチュエータに関して拡張可能である。また、冗長性を有するアクチュエータに適用することができ、例えばフォールバックパスとして従来の制動装置を用いた「ブレーキバイワイヤ制動装置」に適用することができる。さらに、本方法は前後方向の制御に限定されず、「ステアバイブレーキング」手法にも適用可能である。また、本方法はプランナコンセプトおよび制御アンザッツにも、組み合わされたアンザッツ、例えばモデル予測制御(MPC)にも適用可能である。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下の構成も包含し得る:
1.
軌道に沿って少なくとも1つのアクチュエータを有する車両(1)を制御する方法において、探索空間内の前記軌道が、前記アクチュエータの少なくとも1つの変数の先読みを考慮してプラニングされ、以下の方法ステップ:
-前記アクチュエータの前記少なくとも1つの変数に基づいて、前記アクチュエータのアクチュエータモデルを作成するステップと、
-前記先読みの時間ステップを確定するステップと、
-前記アクチュエータモデルと前記変数の境界値とに基づいて、前記時間ステップに沿って前記アクチュエータの前記変数の変化を算出するステップと、
-前記アクチュエータの前記変数の前記境界値に基づいて前記探索空間を境界画定するステップと、
-車両質量と車輪径とを用いて前記少なくとも1つの変数を変換することにより、前記車両(1)の加速度値および/または減速度値を算出するステップと、
-前記探索空間を境界画定するために前記加速度値および前記減速度値を出力するステップであって、前記探索空間内において前記軌道がプラニングされるステップと、
を備える方法。
2.
アクチュエータとして、前記車両(1)の電動機(4)および/または制動装置(5)が設けられている上記1に記載の方法。
3.
変数として、モーメント、特に前記電動機(4)の電動機モーメントまたは前記制動装置(5)の制動装置モーメントが設けられている上記1または2に記載の方法。
4.
境界値として、正および/または負の方向の前記変数の最大可能変化が設けられている上記1~3の少なくとも1つに記載の方法。
5.
前記アクチュエータモデルは前記変数の関数に基づいており、時間tに関する、変数上昇用の前記変数の正の増加と、変数下降用の前記変数の負の増加とを含む上記1~4の少なくとも1つに記載の方法。
6.
加速度値として前記車両(1)の最大可能加速度および減速度値として前記車両(1)の最大可能減速度が設けられている上記1~5の少なくとも1つに記載の方法。
7.
走行抵抗が、特に前記先読みの前記時間ステップにおいて算出される上記1~6の少なくとも1つに記載の方法。
8.
走行抵抗が加速度値の算出の際および/減速値の算出の際に考慮される上記7に記載の方法。
9.
周辺検知用の少なくとも1つのセンサ、特にカメラ(6)および/またはライダセンサ(7)および/またはレーダセンサ(8)および/または超音波センサが設けられている上記1~8の少なくとも1つに記載の方法。
10.
前記検知された周辺が、前記探索空間(9)の確定のためおよび/または軌道プラニングのために用いられる上記9に記載の方法。
11.
コンピュータプログラムがコンピュータにおいて実行される際に上記1~10の少なくとも1つに記載の方法を実行するプログラムコードを備えるコンピュータプログラム。
12.
命令が実行されるコンピュータに、上記1~10の少なくとも1つに記載の方法を実行させる命令を含むコンピュータ可読記憶媒体。
13.
軌道に沿って車両(1)を制御する制御装置(2)であって、前記車両(1)の制御は上記1~10の少なくとも1つに記載の方法に基づいて行われることを特徴とする、制御装置(2)。
【符号の説明】
【0040】
1 車両
2 制御装置
3 操舵装置
4 電動機
5 制動装置
6 カメラ
7 ライダセンサ
8 レーダセンサ
9a 超音波センサ
9b 超音波センサ
10 電動機モデル
10a 電動機モーメント上昇
10b 電動機モーメント下降
11 制動装置モデル
11a 制動装置モーメント上昇
11b 制動装置モーメント下降
12 先読み
13 飽和
14 変換
15a 走行抵抗
15b 走行抵抗
A フロント面積
a 車両加速度
抗力係数
変速比
m 車両質量
r 車輪径
T モーメント
t 時間
v 車両速度
ρ 空気密度
図1
図2