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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】二相ステンレス鋼を含む流体システム
(51)【国際特許分類】
   F16L 19/065 20060101AFI20240830BHJP
   F16L 21/02 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
F16L19/065
F16L21/02 F
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022564419
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 US2021028851
(87)【国際公開番号】W WO2021217008
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】63/014,392
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518100030
【氏名又は名称】レンロック ホールディングズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Lenlok Holdings, LLC
【住所又は居所原語表記】38376 Apollo Parkway, Willoughby, OH 44094, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーク ジョン シンデラー
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02020553(EP,A2)
【文献】特表2013-516587(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0027581(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 19/065
F16L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体要素に機械的に取り付けるための流体継手であって、
前記流体要素を受け入れるための孔を画定する接続体であって、スリーブ部分と、前記流体要素に係合するために前記スリーブ部分から半径方向内向きに延在する歯とを備える接続体と、
前記接続体を前記流体要素に機械的に取り付けるために前記接続体の少なくとも1つの端部に外嵌するように構成されたリングと
を備え、
前記リングが、力を介して前記接続体の前記少なくとも1つの端部に、前記孔に受け入れられた前記流体要素と共に組み付けられると、前記リングが、前記接続体を永久変形させるために十分な圧縮力を前記接続体に加え、これによって、前記接続体の前記歯が、前記流体要素に食い込み、これによって、前記接続体が、前記流体要素に漏れなしに取り付けられ、
前記接続体は、二相ステンレス鋼を含み、
前記接続体の1つ以上の部分が加工硬化させられている
流体継手。
【請求項2】
前記リングは、二相ステンレス鋼を含む、請求項1記載の流体継手。
【請求項3】
前記リングは、二相ステンレス鋼を含まない、請求項1記載の流体継手。
【請求項4】
前記二相ステンレス鋼は、約35%~約65%のオーステナイト対フェライト比を有する、請求項1記載の流体継手。
【請求項5】
前記二相ステンレス鋼は、最小約25質量%のクロムを含む、請求項1記載の流体継手。
【請求項6】
前記二相ステンレス鋼は、最小約2質量%のモリブデンを含む、請求項1記載の流体継手。
【請求項7】
前記二相ステンレス鋼は、最小約6.5質量%のニッケルを含む、請求項1記載の流体継手。
【請求項8】
前記二相ステンレス鋼は、約40以上のPRENを有する、請求項1記載の流体継手。
【請求項9】
前記歯は、実質的に台形である断面輪郭を有する、請求項1記載の流体継手。
【請求項10】
前記接続体の前記孔は、前記接続体の軸線方向および半径方向を規定する中心軸線を有し、
前記歯は、内側側面と、外側側面と、前記内側側面と前記外側側面との間に延在する遠位面とを有し、
前記内側側面と前記外側側面とは、前記半径方向に対して傾いて延在している、
請求項1記載の流体継手。
【請求項11】
前記半径方向と、前記内側側面および前記外側側面の各々との間の角度は、約30度~約50度である、請求項10記載の流体継手。
【請求項12】
前記遠位面の断面輪郭は、実質的に平らである、請求項10記載の流体継手。
【請求項13】
前記遠位面の断面輪郭は、約0.010インチ~約0.050インチの曲率半径を有するように丸み付けられている、請求項10記載の流体継手。
【請求項14】
前記遠位面の断面輪郭は、約0.005インチ~約0.040インチの長さを有する、請求項10記載の流体継手。
【請求項15】
前記遠位面は、前記内側側面と前記外側側面とに、約0.003インチ~約0.005インチの曲率半径を有する各々の縁部で交わっている、請求項10記載の流体継手。
【請求項16】
前記接続体は、加工硬化させられた1つ以上の部分と、加工硬化させられていない1つ以上の部分とを有する材料の単一のモノリシック体である、請求項1記載の流体継手。
【請求項17】
流体システムであって、
流体要素と、
前記流体要素に機械的に取り付けるための流体継手であって、
前記流体要素を受け入れるための孔を画定する内面と、前記流体要素に係合するために前記内面に形成されたシール部分とを有する接続体と、
前記接続体を前記流体要素に機械的に取り付けるために前記接続体の少なくとも1つの端部に外嵌するように構成されたリングと
を備える流体継手と
を備え、
前記リングが、力を介して前記接続体の前記少なくとも1つの端部に、前記孔に受け入れられた前記流体要素と共に組み付けられると、前記リングが、前記接続体を永久変形させるために十分な圧縮力を前記接続体に加え、これによって、前記シール部分の歯が、前記流体要素に食い込み、これによって、前記流体要素が、前記接続体に漏れなしに取り付けられ、
前記接続体は、二相ステンレス鋼を含み、
前記接続体の1つ以上の部分が加工硬化させられている
流体システム。
【請求項18】
前記流体要素は、二相ステンレス鋼を含む、請求項17記載の流体システム。
【請求項19】
前記流体要素は、二相ステンレス鋼を含まない、請求項17記載の流体システム。
【請求項20】
前記歯は、実質的に台形である断面輪郭を有する、請求項17記載の流体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年4月23日に出願された米国仮特許出願第63/014,392号の利益を主張し、その内容を参照により援用するものとする。
【0002】
技術分野
本開示は、概して、流体要素に機械的に取り付けるための流体継手を含む流体システムであって、特に、流体継手および流体要素のうちの少なくとも一方が、二相ステンレス鋼材料を含む、流体システムに関する。
【0003】
発明の背景
現在のところ、管と継手とは、一般的に溶接によって互いに取り付けられている。しかしながら、このような溶接技術は、互いに溶接することができない材料で管と継手とを製造する能力を妨げているか、または適切に溶接するために高度な技能を必要としている。
【0004】
例えば、二相ステンレス鋼は、標準的なオーステナイト系ステンレス鋼と比較して、優れた耐食性、高い強度、十分な延性、良好な改質および費用対効果で注目されている。これらの改善された特性は、二相ステンレス鋼のオーステナイトとフェライトとの二相のミクロ組織に起因していることが多い。しかしながら、二相ステンレス鋼は、別の合金と比較して、溶接温度の点で安定性に欠けている。具体的には、溶接は、鋼のミクロ組織を最終的に内側で破壊して、耐食性と靭性とを低下させてしまう。
【0005】
さらに、不適切な溶接技術と施工とによって、二相ステンレス鋼に有害な影響、例えば、フェライトとオーステナイトとのアンバランスな比および金属間相の形成が生じ、これによって、溶接ゾーンにおける腐食または機械的な損傷が加速してしまう。こういった影響は、特に腐食性のプロセス流体またはガス、例えば硫化水素の存在下で流体継手および管を危険に曝してしまう。例えば、水の存在下でのHSは、鋼管路に腐食、亀裂またはブリスターの形態の損害を与えてしまう。鋼へのHSの影響によって、硫化物応力割れ(SSC)、水素誘起割れ(HIC)および腐食が生じてしまう。二酸化炭素の存在は、鋼における腐食速度を高める傾向にある。また、二酸化炭素の存在は、SSCおよびHICの両方に対する鋼の感受性も高めることがある。
【0006】
したがって、二相ステンレス鋼を含む管と継手とを溶接する際には、高度な技能および制御が必要となり、鋼が溶接ゾーンにおいて十分な耐食性および機械的な特性を維持することを確保するために、重要な措置が講じられなければならない。最高の結果が必要となるところでは、例えば腐食性の供給用途では、適切な母材と溶接フィラー金属とを選択することで成功が保証されるわけではない。二相ステンレス鋼の溶接時に満足のいく結果を得るためには、溶接プロセス、溶接機技術、ビード形状、予熱/パス間温度、ビードごとの入熱および腐食試料調製の全てに特別な注意が必要となる。
【0007】
発明の簡単な概要
以下には、本発明の例示的な実施形態の簡単な概要が提示してある。この概要は、重要な要素を特定するかまたは本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0008】
第1の態様によれば、流体要素に機械的に取り付けるための流体継手は、前記流体要素を受け入れるための孔を画定する接続体であって、スリーブ部分と、前記流体要素に係合するためにスリーブ部分から半径方向内向きに延在する歯とを備える接続体を含む。流体継手は、接続体を前記流体要素に機械的に取り付けるために接続体の少なくとも1つの端部に外嵌するように構成されたリングをさらに含む。このリングが、力を介して接続体の少なくとも1つの端部に、孔に受け入れられた流体要素と共に組み付けられると、リングが、接続体を永久変形させるために十分な圧縮力を接続体に加え、これによって、この接続体の歯が、前記流体要素に食い込み、これによって、接続体が、流体要素に漏れなしに取り付けられる。さらに、接続体およびリングのうちの少なくとも一方は、二相ステンレス鋼を含む。
【0009】
第1の態様の1つの例では、接続体およびリングの両方は、二相ステンレス鋼を含む。
【0010】
第1の態様の別の例では、接続体および駆動リングのうちの一方は、二相ステンレス鋼を含み、接続体および駆動リングのうちの他方は、二相ステンレス鋼を含まない。
【0011】
第1の態様のさらに別の例では、二相ステンレス鋼は、約35%~約65%のオーステナイト対フェライト比を含む。
【0012】
第1の態様のさらに別の例では、二相ステンレス鋼は、最小約25質量%のクロムを含む。
【0013】
第1の態様の別の例では、二相ステンレス鋼は、最小約2質量%のモリブデンを含む。
【0014】
第1の態様のさらに別の例では、二相ステンレス鋼は、最小約6.5質量%のニッケルを含む。
【0015】
第1の態様のさらに別の例では、二相ステンレス鋼は、約40以上のPREN(つまり、耐孔食指数)を含む。
【0016】
第1の態様の別の例では、歯は、実質的に台形である断面輪郭を含む。
【0017】
第1の態様のさらに別の例では、接続体の孔は、接続体の軸線方向および半径方向を規定する中心軸線を有する。歯は、内側側面と、外側側面と、内側側面と外側側面との間に延在する遠位面とを含む。さらに、内側側面と外側側面とは、半径方向に対して傾いて延在している。1つの例では、半径方向と、内側側面および外側側面の各々との間の角度は、約40度~約60度である。別の例では、遠位面の断面輪郭は、実質的に平らである。さらに別の例では、遠位面の断面輪郭は、約0.010インチ~約0.050インチの曲率半径を有するように丸み付けられている。さらに別の例では、遠位面の断面輪郭は、約0.005インチ~約0.040インチの長さを有する。別の例では、遠位面は、内側側面と外側側面とに、約0.003インチ~約0.005インチの曲率半径を有する各々の縁部で交わっている。
【0018】
第1の態様のさらに別の例では、接続体は、加工硬化させられた1つ以上の部分と、加工硬化させられていない1つ以上の部分とを有する材料の単一のモノリシック体である。
【0019】
第2の態様によれば、流体システムは、流体要素と、流体要素に機械的に取り付けるための流体継手とを含む。この流体継手は、流体要素を受け入れるための孔を画定する内面と、流体要素に係合するために内面に形成されたシール部分とを有する接続体を含む。流体継手は、接続体を流体要素に機械的に取り付けるために接続体の少なくとも1つの端部に外嵌するように構成されたリングをさらに含む。リングが、力を介して接続体の少なくとも1つの端部に、孔に受け入れられた流体要素と共に組み付けられると、リングが、接続体を永久変形させるために十分な圧縮力を接続体に加え、これによって、シール部分の歯が、流体要素に食い込み、これによって、この流体要素が、接続体に漏れなしに取り付けられる。さらに、流体要素、接続体およびリングのうちの少なくとも1つは、二相ステンレス鋼を含む。
【0020】
第2の態様の1つの例では、流体要素および接続体の両方は、二相ステンレス鋼を含む。
【0021】
第2の態様の別の例では、流体要素および接続体のうちの一方は、二相ステンレス鋼を含み、流体要素および接続体のうちの他方は、二相ステンレス鋼を含まない。
【0022】
第2の態様のさらに別の例では、歯は、実質的に台形である断面輪郭を含む。
【0023】
当然ながら、前述した概略的な記載および以下の詳細な記載の両方が、例および例示的な実施形態を提示している。添付の図面は、記載した実施形態の更なる理解を提供するために含めてあり、本明細書に組み込んで、本明細書の一部を成している。図面には、本発明の様々な例示的な実施形態が示してある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の前述した態様および別の態様は、添付の図面を参照しながら以下の記載を読むことで当業者に明らかとなる。
図1】流体要素に機械的に取り付けるための例示的な流体継手の断面図である。
図2】組付け前の構成における継手の詳細な断面図である。
図3】組付け後の構成における継手の別の詳細な断面図である。
図4A】流体継手への取付け前の流体要素の顕微鏡写真である。
図4B】流体継手への取付け後の流体要素の顕微鏡写真である。
図5】継手用の例示的な歯の詳細な断面図である。
図6】継手用の別の例示的な歯の詳細な断面図である。
図7A】継手用の代替的な接続体を形成するために処理されてよいワークの斜視図である。
図7B図7に示したワークから形成された代替的な接続体の断面図である。
【0025】
詳細な説明
以下は、本願の例示的な実施形態の詳細な説明である。本願のこういった実施形態を前述した図面を参照しながら説明することで、当業者には、記載した方法および/または特定の構造の様々な変更または改良が明らかとなり得る。当該技術分野を発展させてきた本願の教示に依存する全てのこのような変更、改良または変形は、本願の精神および範囲内にあると考えられる。したがって、こういった記載および図面は限定的な意味で考慮すべきではない。なぜならば、当然ながら、本願が図示の実施形態に決して限定されるものではないからである。さらに、特定の術語は、本明細書において便宜的に使用しているにすぎず、限定と解すべきではない。さらに、図面には、同じ要素を指定するにあたり、同じ参照符号が使用してある。
【0026】
本明細書において、下端点および上端点を有する範囲が与えてある場合、このことは、好ましくは下端点以上を意味していて、別個にまたは独立して、好ましくは上端点以下を意味している。
【0027】
さらに、「約」、「実質的な」、「実質的に」という用語およびそれらの変形は、記載した特徴が、公差、換算係数、四捨五入、測定誤差およびこれに類するものならびに別の係数を所望のように反映させた値または特徴と等しいかまたはほぼ等しいことに言及していることを意図している。例えば、2つの要素の「実質的に平行な」構成は、2つの要素が互いに平行またはほぼ平行であることに言及していることを意図している。さらに、「約」、「実質的な」、「実質的に」という用語およびこれらの変形は、正確な値の約10%以内、例えば、正確な値の約5%以内または正確な値の約2%以内である値に言及し得る。値または特徴を記載するにあたり、「約」、「実質的な」、「実質的に」という用語およびこれらの変形を使用した場合、本開示は、言及している正確な値または特性を含むと解すものとする。値の範囲は、最小の管径および最大の管径の両方ならびに両方の間における管径に作用するように開発された設計における幾何学的な差異を説明するために設定してある。
【0028】
付言しておくと、「約」、「実質的な」、「実質的に」という用語およびこれらの変形は、本明細書では、任意の定量的な比較、値、寸法または別の表現に起因することがある固有の不確かさの程度を表すために使用し得る。また、こういった用語は、本明細書では、最も重要な主題の基本的な機能を変えることなしに、定量的な表現が、記載した基準から変化し得る程度を表すためにも使用している。
【0029】
図1図3に目を向けると、2つ以上の流体要素に接続されてよい例示的な継手10が示してある。本開示の目的では、「流体要素」とは、流体を搬送し、給送しかつ/または受け入れるように構成された管、チューブ、継手または他の任意の要素のことを指している。さらに、「継手」とは、2つ以上の流体要素を互いに流体接続するために2つ以上の流体要素に接続されてよい任意の要素のことを指している。
【0030】
図1図3には、長手方向軸線Lに対して平行であると共に長手方向軸線Lを含む平面に沿った継手10の断面図が示してある。図1図3において配置されているような継手10の構成要素は、概して、長手方向軸線Lを中心として対称であるため、長手方向軸線Lを中心として完全に対称に延在している。図1には、概して、長手方向軸線Lに沿って整列させられた継手10の構成要素が示してある。一方、図2および図3には、組付け前の構成および組付け後の構成の継手10の一方の側(つまり、図1で見て右側)が示してある。当然ながら、継手10の反対側(つまり、図1で見て左側)は、長手方向軸線Lに沿って鏡像対称である類似または同一の構成を備えていてよい。
【0031】
本例における継手10は、さらに以下に述べるように、接続体12と、継手10に一対の管16を接合するために接続体12に外嵌されてよい2つの駆動リング14(「スウェージリング」と呼ばれることがある)とを含んでいる。本願を適用することができる管16は、径の範囲が1/4インチNPS~4インチNPSまたは6インチNPS以上ですらあるような肉薄の管または肉厚の管であってよい。さらに、各々の管16は、約1~約100、約2~約70、約3~約40または約4.5~約30の肉厚(t)で割り算した外径(Do)の比(Do/t)を有していてよい。しかしながら、別の管径によって、例示的な継手10から利点が得られることもある。さらに、継手10は、別のタイプの流体要素、例えばフランジ、Tおよび別の継手に同様に接続されてよい。
【0032】
【表1】
【0033】
図2および図3に示したように、接続体12は、各々の端部において管16を受け入れるために接続体12を貫いて延在する孔18を画定している。したがって、継手10は、2つの管16を封止して漏れなしに流体接続するために使用される。接続体12は、孔18の中心軸線Xを中心として対称に延在していて、スリーブ部分20と、フランジ部分22と、シール部分24とを含んでいる。さらに、このシール部分24は、管16の外部に接続するための少なくとも1つのシールを含んでいて、図示の実施形態では、メインシール30と、内側シール32と、外側シール34とを含んでいる。各々のシール30,32,34は、スリーブ部分20から半径方向内向きに延在する1つ以上の歯38を備えている。シール部分24が別の個数および/または配置のシールを含んでいてもよいことが考えられている。駆動リング14も同じく、接続体12を受け入れるために駆動リング14を貫いて延在する孔46を画定する中央開放体である。さらに、駆動リング14は、孔46の中心軸線Xを中心として対称に延在している。
【0034】
接続体12と駆動リング14とは、まず、図2に示した組付け前の構成に組み立てられてよい。詳細には、駆動リング14は、接続体12の中心軸線Xと駆動リング14の中心軸線Xとが長手軸線Lと共線性であり、接続体12が駆動リング14の孔46の内部に配置されるように、接続体12の端部にわたって配置されてよい。この構成では、駆動リング14の上昇傾斜区分54が、接続体12のランド区分56に隣接しているものの、このランド区分56に対して僅かに離間させられている。組付け前の構成では、駆動リング14を締まり嵌めによって接続体12に維持することができ、顧客に向けて出荷することができる。これによって、最終的なエンドユーザによる使用および組付けが容易になる。
【0035】
継手10を管16に組み付けるために、この管16は、継手10がその組付け前の構成にある間、接続体12の孔18の内部に位置していてよい(図2)。次いで、駆動リング14が、軸線方向で長手方向軸線Lに沿って接続体12のフランジ部分22に向かって押し進められてよく、こうして、継手10がその組付け後の構成をとる(図3)。駆動リング14と接続体12とは、予め設定された比の締め代を有しているため、組付け後の構成への駆動リング14の軸線方向の運動によって、接続体12と、駆動リング14と、管16とが変形させられ、これによって、これらの要素が、管16と接続体12との間に漏れのない金属同士のシールを伴って機械的に接続される。
【0036】
より詳細には、駆動リング14が、軸線方向で長手方向軸線Lに沿ってフランジ部分22に向かって押し進められるときに、駆動リング14は、接続体12を半径方向に変形させる圧縮力を接続体12に加え、これによって、シール30,32,34の歯38が管16に食い込む。そして、接続体12が、まず、管16を弾性的に(つまり、非永久的に)圧縮し、次いで、塑性的に(つまり、永久的に)圧縮する。この圧縮は、管16を封止ランドの下側で塑性降伏させるために十分に高く、これによって、管16と接続体12との間に360°の全周にわたって持続的な金属同士のシールが形成される。接続体12と管16との半径方向の圧縮と同時に、駆動リング14は半径方向外向きに拡張する。駆動リング14のこの半径方向の拡張は弾性的であり、結果として、駆動リング14の僅かな拡径が生じる。
【0037】
シールの固定は、シールの歯38が完全に押し進められて、変形状態で管16に接触しているときに(例えば、シール30,32,34にすぐ向かい合った管16の外面58が、駆動リング14の特定の区分によって内方に押し進められた結果、更なる半径方向の運動を有していないときに)完全である(つまり、完全に固定されている)と考えられる。代替的には、シールの完全な固定は、駆動リング14がシールの歯38を管16内に最も押し進めた場合または駆動リング14がシールを通過した際に駆動リング14の作動テーパが直径に関して一定の円筒形の区分に推移した場合として規定されてよい。管16は、典型的には、シール30,32,34が面58に食い込み続け、管16が塑性変形し始めるかまたは半径方向内向きに運動し始め、その結果、永久変形するので、弾性限界を超えて歪まされた状態になる。シール30,32,34の歯38は、管16の外面58に食い込んで、この外面58を変形させ、それ自体幾分変形させられてよい。このことは、管16の外側に見られる任意の粗いまたは不規則な表面欠陥を埋めるために機能する。
【0038】
駆動リング14は、組み付けられると、フランジ部分22に当接または係合している(ただし、別の例では、駆動リング14はフランジ部分22から離間させられていてよい)。さらに、駆動リング14は組付け中に弾性変形し、これによって、半径方向外向きに拡張するので、駆動リング14は、接続体12と管16とに連続的な弾性力を加えることになる。この弾性力は組付け後に継手10の寿命を通じて維持され、これによって、管16と接続体12との間の金属同士のシールの解離が阻止されている。
【0039】
上述したように、図示の実施形態の接続体12のシール部分24は、メインシール30と、内側シール32と、外側シール34とを含んでいる。各々のシール30,32,34は、スリーブ部分20から半径方向内向きに延在しかつ継手10の組付け中に管16に食い込む1つ以上の歯38を備えている。幾つかの実施形態では、シール30,32,34は、好ましくは、管16の外径の約60%~75%である孔18の軸線方向長さにわたって分配されている。シール30,32,34がこの範囲内に分配されていると、極端な熱的な曝露に基づく応力により継手10に加えられる負荷を散逸させることができ、材料疲労を生じさせる焦点応力集中を減じることができる。
【0040】
当然ながら、本開示の範囲から逸脱することなしに、継手10の接続体12および駆動リング14に様々な変更が加えられてよい。例えば、さらに後述するように、接続体12はフランジ体であってよい。さらに、接続体12は、2つよりも多くの脚部を有するT字形体またはY字形体であってよく、継手10は、この継手10を流体要素に接続するために、それぞれ異なる脚部にそれぞれ外嵌されてよい複数の駆動リング14を含んでいてよい。別の例として、接続体12は、ただ1つの流体要素を受け入れるように構成されていてよく、継手10は、接続体12を流体要素に機械的に取り付けるための1つの駆動リング14しか含んでいなくてよい。
【0041】
概して、接続体12と駆動リング14とは、接続体12が流体要素を受け入れることができ、駆動リング14が接続体12に外嵌され、この接続体12を圧縮して流体要素に機械的に取り付けることができるように、貫通した孔を画定する任意の物体であってよい。例えば、接続体と駆動リングとを備えた様々な例示的な継手が、一般的に所有されている米国特許第10,663,093号明細書、米国特許第8,870,237号明細書、米国特許第7,575,257号明細書、米国特許第6,692,040号明細書、米国特許第6,131,964号明細書、米国特許第5,709,418号明細書、米国特許第5,305,510号明細書および米国特許第5,110,163号明細書に記載されており、これらの明細書は全てその全体を参照により本明細書に明示的に援用するものとする。
【0042】
接続体12、駆動リング14および管16の様々な特徴を説明するにあたり、「軸線方向」、「半径方向」という用語およびそれらの変形は上述のように使用されている。当然ながら、上述のように(かつ後述のように)使用されるようなこういった用語は、特に明示的に指示しない限り、説明した要素の中心軸線に対して相対的である。つまり、「軸線方向」、「半径方向」という用語およびそれらの変形は、特に明示的に指示しない限り、接続体12の特徴を説明するときには、接続体の中心軸線Xに対して相対的であり、駆動リング14の特徴を説明するときには、駆動リングの中心軸線Xに対して相対的であり、管16の特徴を説明するときには、管の中心軸線に対して相対的である。さらに、当然ながら、接続体12、駆動リング14および管16の中心軸線が、互いにかつ共通の軸線(例えば図1図3参照)と共線性である構成では、「軸線方向」、「半径方向」という用語およびそれらの変形は、接続体12、駆動リング14および管16の特徴を説明するときには、同じく、接続体12、駆動リング14および管16の共通の軸線および全ての中心軸線に対して相対的である。
【0043】
本発明者らは、上述した継手10と、管16への継手10の機械的な取付けとによって、典型的に管と継手との間の溶接接続に適していないかまたは溶接接続を妨害する継手10用および/または管16用の材料の使用が可能となることを発見した。
【0044】
例えば、本実施形態における接続体12、駆動リング14および管16は、それぞれ材料の単一の物体であることを意味するモノリシック体である。特に、接続体12、駆動リング14および管16は、それぞれ第1の材料M、第2の材料Mおよび第3の材料Mを含んでいる。これらの材料M,M,Mのいずれかまたは全ては、オーステナイトおよびフェライトの両方から成る二相のミクロ組織を有する二相ステンレス鋼DSSを含んでいてよい。フェライト相は、標準的なオーステナイト系ステンレス鋼と比較したとき、より大きな強度を二相ステンレス鋼DSSに付与し、塩化物(塩化物は、こういった継手の工業用のオイル設備およびガス設備に一般的に認められる腐食性の化学物質である)に対して著しい耐応力腐食割れ性を提供する。付加的には、オーステナイト相は、二相ステンレス鋼DSSに十分な延性を提供する。延性は、継手10および/または管16におけるミクロ割れの発生を減じることができる。このミクロ割れは、組付けプロセス中に生じ、腐食性の化学物質を侵入させ、場合により、継手10の強度に損害を与えることがある。
【0045】
二相ステンレス鋼DSSの強度、防食および延性は、オーステナイトとフェライトとの間のミクロ組織バランスを変化させることによって所望の目的を達成するために変更されてよい。1つ以上の実施形態では、二相ステンレス鋼DSSは、約35%~約65%、約40%~約60%または約45%~約55%のオーステナイト対フェライト比(つまり、オーステナイト質量をフェライト質量で割り算した比)を有していてよい。好適な実施形態では、二相ステンレス鋼は、約50%のオーステナイト対フェライト比を有していてよい。
【0046】
二相ステンレス鋼DSSの化学的な組成は、(質量%で)最小約25質量%のクロム、最小約2質量%のモリブデンおよび最小約6.5質量%のニッケルを含んでいてよい。さらに、本願で使用される二相ステンレス鋼DSSは、約40のPREN(つまり、耐孔食指数)を有するスーパー二相鋼または約45以上のPRENを有するハイパー二相鋼である。好ましくは、二相ステンレス鋼DSSは、約35%~約65%のオーステナイトとフェライトとのバランス、最小約40のPRENならびに最小約25質量%のクロム、最小約2質量%のモリブデンおよび最小約6.5質量%のニッケルの化学的な組成を有するスーパー/ハイパー二相鋼である。しかしながら、二相ステンレス鋼DSSの組成は、実施形態によって変えられてよく、二相ステンレス鋼DSSにおける各々の金属の相対量は、使用環境、製造元の推奨、経験等に基づいていてよい。
【0047】
二相ステンレス鋼DSSを含む要素(例えば、接続体12、駆動リング14および/または管16)は、二相ステンレス鋼DSSを加工硬化技術により機械的に強化することができる冷間加工プロセスまたは冷間成形プロセスを用いて形成されてよい。幾つかの実施形態では、二相ステンレス鋼DDSは、ロックウェルCスケール約32の硬さレベルまで加工硬化させられてよい。
【0048】
例えば、各々の要素は、テーパ付きのマンドレルを、二相ステンレス鋼DSSを含むワーク(例えば管またはチューブ)の孔内に挿入し、上下一対のダイスをワークの外径を取り囲みつつ、これにわたって押し進める冷間ピルガ圧延加工プロセスによって形成されてよい。マンドレルは、ダイスが外径を縮径する間にワークの内径を維持し、これによって、1回のステップでワークの外径および厚さが減じられる。
【0049】
別の例として、各々の要素は、二相ステンレス鋼DSSを含むワークを1つのダイまたは連続したダイスに押し通し、これによって、ワークの断面サイズを減じる冷間引抜き加工プロセスによって形成されてよい。冷間引抜き加工は、約15%~約30%の断面減少を達成することができる。
【0050】
図4Aには、継手10と共に使用するための好適なミクロ組織バランスを有する二相ステンレス鋼材料を含んだ管16の光学顕微鏡画像が示してある。明るい方の領域がオーステナイト含分を表しているのに対して、暗い方の領域はフェライト含分を表している。図4Bには、継手10に接続した後の管16の光学顕微鏡画像が示してある。図4Bにおいて明らかであるように、管16は、そのミクロ組織を著しく変化させることなしに、(黒色で示した)継手10に接続するために十分に延性であった。両図は、溶接により取り付けられる従来の継手と異なり、本継手10によって、二相ステンレス鋼材料のミクロ組織バランスを著しく変化させることなしに、管16と継手10とを機械的に接続することが可能となることを実証している。したがって、溶接プロセスと異なり、二相ステンレス鋼はその強度、延性および防食特性をより容易に維持することができる。
【0051】
本実施形態における接続体12、駆動リング14および管16は、それぞれ同一の二相ステンレス鋼材料を含んでいる。しかし、当然ながら、接続体12、駆動リング14および管16は、互いに類似しているかまたは実質的に異なっている二相ステンレス鋼材料を含んでいてよい。例えば、接続体12と駆動リング14とは、組成、PRENおよび/またはオーステナイトとフェライトとのバランスに関して管16の二相ステンレス鋼材料と異なる二相ステンレス鋼材料を含んでいてよい。好ましくは、接続体12、駆動リング14および管16の二相ステンレス鋼材料M,M,Mは、ASMEコードに列挙されているグレード(例えば、臨界プロセスおよび動力配管における許容可能な使用のための)ASME B31.3-2016である。
【0052】
上述した継手10の別の利点は、その機械的な取付けによって、継手10と管16とが、互いに実質的に異なる材料を含んでいることが可能となるということである。これに対して、継手と管とを接続するための従来の溶接プロセスでは、互いに溶接される構成要素が実質的に同様の組成を有していることが要求される。したがって、幾つかの実施形態では、継手10および管16のうちの1つ以上の要素(例えば接続体12および駆動リング14)が二相ステンレス鋼材料を含んでいてよいのに対して、1つ以上の他方の要素(例えば管16)は、限定するものではないが、炭素鋼、低~中合金鋼およびステンレス鋼を含む、二相ステンレス鋼材料と異なる材料を含んでいてよい。継手10が、加工硬化させられた二相ステンレス鋼を含んでいて、二相ステンレス鋼と異なる鋼を含んだ管16に接続される場合、二相ステンレス鋼と異なる鋼製の管16は、80ksi以下の降伏強度を有していてよい。さらに、継手10は、バイメタル腐食の影響に対して、より耐性を有していてよい。なぜならば、二相ステンレス鋼が、別の鋼合金、例えば炭素鋼よりも比較的貴であり、ひいては、より耐食性であるからである。
【0053】
さらに、接続体12を二相ステンレス鋼で形成することによって、より低い延性の材料で製作された接続体と比較して、固有のシールジオメトリを形成することができる。より詳細には、別の金属合金で製作された接続体には、典型的には、流体要素との適切なシールを形成するために、鋭い歯が必要となる。しかしながら、二相ステンレス鋼の使用によって、シールの強度または構造的な完全性を犠牲にすることなしに、接続体12の歯38が、より平らなまたはより丸み付けられた輪郭を有することが可能となる。
【0054】
例えば、図5および図6には、接続体12の各々の歯38に対する互いに異なる例の構成が示してあり、両図は、中心軸線Xに対して平行であると共に中心軸線Xを含む平面に沿った断面図である。図5に示したように、接続体のシール部分24の各々の歯38は、歯38の根元64で始まり遠位端部66までスリーブ部分20から半径方向内向きに延在していてよい。各々の歯38は、内側側面68と、外側側面70と、内側側面68と外側側面70との間に延在しかつ両者に各々の縁部78で交わる遠位面74とを有していてよい。側面68,70は、接続体12の中心軸線Xに対して傾いて延びるように、互いに所定の角度を成していてよい。特に、各々の側面68,70と半径方向との間の角度αは、約30度~約40度であってよい。さらに、遠位面74は、実質的に平らであると共に中心軸線Xに対して実質的に平行に延在する断面輪郭を有していてよい。
【0055】
別の例(例えば図6参照)では、側面68,70は、各々の側面68,70と半径方向との間の角度αが約40度~約50度であるように、互いに所定の角度を成していてよい。さらに、遠位面74の断面輪郭は、約0.010インチ~約0.050インチの曲率半径を有するように丸み付けられていてよい。平らであろうと、丸み付けられていようと、断面輪郭は、好ましくは、約0.005インチ~約0.040インチの長さを有している(丸み付けられた輪郭では、当然ながら、丸み付けられた輪郭の「長さ」がその弧の長さのことを指している)。
【0056】
各々の縁部78は、比較的大きな曲率半径を有するアール加工された縁部であってよく、これによって、歯38の各々の側面68,70と遠位面74との間の境界面が、鋭いまたは個々のいかなる移行部も有することなしに、平滑であると共に連続している。別の実施形態では、歯38の各々の縁部78は、この各々の側面68,70と遠位面74との間に識別可能な個々の境界面を得るために十分に小さい比較的小さな曲率半径を有していてよい。このような個々の境界面は、離れて見ると、歯38の関連する側面68,70と遠位面74との間の鋭い縁部に類似し得る。好ましくは、各々の縁部78は、約0.003インチ~約0.005インチの曲率半径を有している。また、当然ながら、幾つかの実施形態では、相互間に明確に規定された縁部が存在しないように、側面68,70が遠位面74と共に輪郭削り面を形成していてもよい。
【0057】
したがって、各々の歯38は、二相ステンレス鋼と異なる鋼を含んだ従来の接続体のより鋭い歯と比較して、より頑丈であると共に管16に押し付けるためのより大きな質量を提供する実質的に台形の断面輪郭を有していてよい。各々の歯38は、また、従来の歯と比較して大きな質量を有していてもよく、これによって、接続体12がより低品質の管面に係合することが可能となる。
【0058】
上述した継手10の別の利点は、特に継手10が火炎および/または高周波振動に曝されているときに可燃性の液体またはガスの漏れを減じる能力である。このことは、材料開発の適切な比を通じて、接触領域の軸線方向長さに沿った加工硬化と、接続体12、駆動リング14および管16の間の締め代とによって達成することができる。さらに、継手10によって、腐食性の環境での溶接のために典型的に必要となるような、溶接接続部を熱処理する必要性が排除される。
【0059】
ここで、図7Aおよび図7Bに目を向けて、継手10用の例示的な接続体12’を形成するプロセスを説明する。図7Aに示したように、上記の説明に関連した二相ステンレス鋼の単一のモノリシック体を有する初期のワーク100が提供される。このワーク100は、フランジ部分102と、このフランジ部分102から延在する円筒部分104とを含んでいる。この円筒部分104は、所望の機械的な材料強度と材料ミクロ組織レベルとを得るために冷間加工されてよく、次いで、図7Bに示したように、最終的な接続体12’を形成するために高い耐性下で機械加工されてよい。
【0060】
したがって、最終的な接続体12’は、二相ステンレス鋼の単一のモノリシック体である。しかしながら、ワーク100の円筒部分104から形成された接続体12’の特定の部分(例えば、接続体12’のスリーブ部分20、フランジ部分22およびシール部分24)は、材料の化学的性質に応じて、材料の約20%以下のオーダーにおける材料の冷間加工減少のプロセスによって加工硬化させられる。一方、接続体12’の別の部分(例えばフランジ部分102)は加工硬化させられない。それにもかかわらず、接続体12’の、機械的に強化された部分と機械的に強化されていない部分との間の移行領域は、ワークの母材におけるオーステナイトとフェライトとのバランスを通じて比較的均一な耐食性を維持している。
【0061】
当然ながら、接続体12’を形成するための上述したプロセスは、別の接続体、例えば図1図3に示した接続体12を形成するために同様に適用されてよい。つまり、初期のワークが冷間加工され、次いで、流体継手用の図1図3に示した接続体12または幾つかの別のタイプの接続体を形成するために機械加工されてよい。また、限定するものではないが、90度エルボ、T字形体、アダプタ、キャップ、様々な角度のエルボ、レデューサ、T、ユニオン等を含めて、様々な別のタイプまたは構成の接続体が、本明細書において述べた方法および材料を用いて製造されてもよい。
【0062】
本発明を、上述した例示的な実施形態を参照しながら説明してきた。本明細書を読んで理解することで、変更および代替が他に思い浮かぶはずである。本発明の1つ以上の態様を組み込んだ例示的な実施形態は、添付の特許請求の範囲内にある限り、このような全ての変更および代替を含むことを意図している。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B