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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】バッテリー管理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/367 20190101AFI20240830BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20240830BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240830BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
G01R31/367
G01R31/392
H02J7/00 Q
H01M10/48 P
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022574606
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-03
(86)【国際出願番号】 KR2022000687
(87)【国際公開番号】W WO2022154545
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0004852
(32)【優先日】2021-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】イェ-ガン・ソン
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0109526(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111257755(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111856307(CN,A)
【文献】特許第7408843(JP,B2)
【文献】特表2023-527184(JP,A)
【文献】“Box plot”,Wikipedia,2020年12月25日,https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Box_plot&oldid=996143328
【文献】“Interquartile range”,Wikipedia,2020年12月04日,https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Interquartile_range&oldid=992136942
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリーセルについての複数のバッテリー情報を取得するように構成されたバッテリー情報取得部と、
前記複数のバッテリーセルの母集団に対する基準分布プロファイルに基づいて、前記複数のバッテリー情報に対するウィスカーを算出し、
前記複数のバッテリー情報及び算出されたウィスカーに基づいて、前記複数のバッテリーセルに対するボックスプロットを生成し、前記複数のバッテリー情報のそれぞれが、生成された前記ボックスプロットの下位境界内側の最小値と上位境界内側の最大値との間に含まれる閾値区間に含まれるか否かに応じて、前記複数のバッテリーセルのそれぞれの状態を決定するように構成された制御部と、
を含み、前記ウィスカーが、前記母集団に対する不良率に基づいて算出されることを特徴とするバッテリー管理装置。
【請求項2】
前記基準分布プロファイルは、
前記母集団に含まれるBOL状態の複数のバッテリーセルについての前記バッテリー情報の分布図を示すプロファイルであることを特徴とする請求項1に記載のバッテリー管理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記基準分布プロファイルの平均値、前記平均値から所定の確率密度に対応する参照値、及び前記母集団に対する不良率に対応するように設定された閾値に基づいて、前記ウィスカーを算出するように構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のバッテリー管理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記参照値と前記平均値との間の参照偏差を算出し、前記閾値と前記参照値との間の閾値偏差を算出し、前記算出された参照偏差と前記閾値偏差とに基づいて前記ウィスカーを算出するように構成されることを特徴とする請求項3に記載のバッテリー管理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
下記の数式1を用いて前記ウィスカーを算出するように構成されることを特徴とする請求項4に記載のバッテリー管理装置。
[数1]
W=Td÷(2×Rd) … 数式1
(ここで、Wはウィスカーであり、Tdは閾値偏差であり、Rdは参照偏差である。)
【請求項6】
前記不良率は、
前記母集団に含まれる複数のバッテリーセルのうちの欠陥セルの割合に対応するように設定されることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載のバッテリー管理装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記複数のバッテリーセルのうちの対応するバッテリー情報が前記閾区間に含まれるバッテリーセルの状態を正常状態として決定し、
前記複数のバッテリーセルのうちの対応するバッテリー情報が前記閾区間外のバッテリーセルの状態を欠陥状態として決定するように構成されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のバッテリー管理装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記取得されたバッテリー情報に応じて、前記生成されたボックスプロットの前記下位境界内側の最小値と上位境界内側の最大値との間に含まれる上段区間及び下段区間のうちの少なくとも一方の区間を選択し、選択された区間前記閾値区間として決定するように構成されることを特徴とする請求項7に記載のバッテリー管理装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のバッテリー管理装置を含むことを特徴とするバッテリーパック。
【請求項10】
複数のバッテリーセルについての複数のバッテリー情報を取得するバッテリー情報取得ステップと、
前記複数のバッテリーセルの母集団に対する基準分布プロファイルに基づいて、前記複数のバッテリー情報に対するウィスカーを算出するウィスカー算出ステップと、
前記複数のバッテリー情報及び算出されたウィスカーに基づいて、前記複数のバッテリーセルに対するボックスプロットを生成するボックスプロット生成ステップと、
前記複数のバッテリー情報のそれぞれが、生成された前記ボックスプロットの下位境界内側の最小値と上位境界内側の最大値との間に含まれる閾値区間に含まれるか否かに応じて、前記複数のバッテリーセルのそれぞれの状態を決定する状態決定ステップと、
を含み、前記ウィスカーが、前記母集団に対する不良率に基づいて算出されることを特徴とするバッテリー管理方法。
【請求項11】
コンピュータを請求項1から8のうちのいずれか一項に記載のバッテリー管理装置として機能させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年01月13日付け出願の韓国特許出願第10-2021-0004852号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、バッテリー管理装置及び方法に関し、より詳細には、複数のバッテリーセルのそれぞれの状態を決定することができるバッテリー管理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、ノートパソコン、ビデオカメラ、携帯電話などの携帯用電子製品の需要が急増し、電気自動車、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、衛星などの開発が本格化するにつれ、繰り返し充放電が可能な高性能バッテリーについての研究が盛んに行われている。
【0004】
現在商用化されているバッテリーとしては、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池、リチウムバッテリーなどが挙げられるが、中でも、リチウムバッテリーは、ニッケル系のバッテリーに比べてメモリ効果がほとんど起こらないので、充放電が自由で、自己放電率が非常に低くエネルギー密度の高い利点で脚光を浴びている。
【0005】
このようなバッテリーは、生産工程でのばらつき(偏差)や出荷後の実際の使用環境でのばらつき(偏差)などで同一製品であっても電気化学特性の格差が増加することがある。例えば、バッテリー間のギャップ(格差)は、充放電サイクル中の挙動偏差につながり、したがって発熱及び電圧差が非線形的に加速される可能性がある。
【0006】
従来、固定の閾値または固定の閾値範囲を設定し、設定した閾値または閾値範囲を用いて異常状態のバッテリーを診断した。しかしながら、この従来の方式は、バッテリーの経年劣化を反映していないという問題がある。また、バッテリーの劣化を反映して閾値または閾値範囲を設定するための数値決定モデルが複雑であるため、実際の具現が非常に困難になるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、母集団の正規分布に基づいて現在運用中の複数のバッテリーのそれぞれの状態を診断できるバッテリー管理装置及び方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的及び利点は、下記の説明によって理解されることができ、本発明の実施形態によってなお一層明らかに分かる筈である。さらに、本発明の目的及び利点は、特許請求の範囲に開示されている手段及びその組み合わせによって実現することができるということが容易に理解できる筈である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によるバッテリー管理装置は、複数のバッテリーセルについての複数のバッテリー情報を取得するように構成されたバッテリー情報取得部と、前記複数のバッテリーセルの母集団に対する基準分布プロファイルに基づいて、前記複数のバッテリー情報のためのウィスカーを算出し、前記複数のバッテリー情報及び算出されたウィスカーに基づいて、前記複数のバッテリーセルに対するボックスプロットを生成し、前記複数のバッテリー情報のそれぞれが、生成されたボックスプロットに対応する閾値区間に含まれるか否かに応じて、前記複数のバッテリーセルのそれぞれの状態を決定するように構成された制御部と、を含み得る。
【0010】
前記基準分布プロファイルは、前記母集団に含まれるBOL(Beginning of life)状態の複数のバッテリーについての前記バッテリー情報の分布図を示すプロファイルであり得る。
【0011】
前記制御部は、前記基準分布プロファイルの平均値、前記平均値から所定の確率密度に対応する参照値、及び前記母集団に対する不良率に対応するように設定された閾値に基づいて、前記ウィスカーを算出するように構成され得る。
【0012】
前記制御部は、前記参照値と前記平均値との間の参照偏差を算出し、前記閾値と前記参照値との間の閾値偏差を算出し、前記算出された参照偏差と前記閾値偏差とに基づいて前記ウィスカーを算出し得る。
【0013】
前記制御部は、下記の数式1を用いて前記ウィスカーを算出するように構成され得る。
【0014】
[数1]
W=Td÷(2×Rd) … 数式1
【0015】
(ここで、Wはウィスカーであり、Tdは閾値偏差であり、Rdは参照偏差であり得る。)
【0016】
前記不良率は、前記母集団に含まれる複数のセルのうちの欠陥セルの割合に対応するように設定し得る。
【0017】
前記制御部は、前記複数のバッテリーセルのうちの対応するバッテリー情報が前記ボックスプロットの閾値範囲に含まれるバッテリーセルの状態を正常状態として決定するように構成され得る。
【0018】
前記制御部は、前記複数のバッテリーセルのうちの対応するバッテリー情報が前記ボックスプロットの閾値範囲外のバッテリーセルの状態を欠陥状態として決定するように構成され得る。
【0019】
前記制御部は、前記取得されたバッテリー情報に応じて、前記生成されたボックスプロットに含まれる上段区間及び下段区間のうちの少なくとも一方の区間を選択し、選択された区間に基づいて前記閾値区間を決定するように構成され得る。
【0020】
本発明の他の態様によるバッテリーパックは、本発明の一態様によるバッテリー管理装置を含み得る。
【0021】
本発明のさらに他の態様によるバッテリー管理方法は、複数のバッテリーセルについての複数のバッテリー情報を取得するバッテリー情報取得ステップと;前記複数のバッテリーセルの母集団に対する基準分布プロファイルに基づいて、前記複数のバッテリー情報に対するウィスカーを算出するウィスカー算出ステップと;前記複数のバッテリー情報及び算出されたウィスカーに基づいて、前記複数のバッテリーセルに対するボックスプロットを生成するボックスプロット生成ステップと;前記複数のバッテリー情報のそれぞれが、生成されたボックスプロットに対応する閾値区間に含まれるか否かに応じて、前記複数のバッテリーセルのそれぞれの状態を決定する状態決定ステップと;を含み得る。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、母集団の不良率と複数のバッテリーセルの現在の劣化状態を考慮して、複数のバッテリーのそれぞれの状態を診断できるという利点がある。
【0023】
本発明の効果は、以上で言及した効果に限らず、言及されていない他の効果は特許請求の範囲の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【0024】
この明細書に添付される次の図面は、後述する発明の詳細な説明とともに本発明の技術的思想をなお一層理解しやすくする役割を果たすものであるため、本発明は、そのような図面に記載されている事項にのみ限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態によるバッテリー管理装置を概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態による基準分布プロファイルを概略的に示す図である。
図3】一般的なボックスプロット(箱ひげ図)を概略的に示す図である。
図4】本発明の一実施形態による基準分布プロファイルに基づいて生成されたボックスプロットを概略的に示す図である。
図5】本発明の他の実施形態によるバッテリーパックの例示的な構成を概略的に示す図である。
図6】本発明のさらに他の実施形態によるバッテリー管理方法を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則を踏まえて、本発明の技術的な思想に見合う意味及び概念として解釈されなければならない。
【0027】
よって、この明細書に記載の実施形態と図面に示されている構成は、本発明の最も好適な一部分の実施形態に過ぎないものであり、本発明の技術的思想をすべて代用するものではないので、本発明の出願時点においてこれらに代替できる様々な均等物と変形例があり得るということを理解しなければならない。
【0028】
また、本発明の説明において、関連する公知の構成または機能についての具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にする可能性があると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0029】
第1、第2などの序数を含む用語は、様々な構成要素のうちのいずれか一つをその他の要素と区別するために使われたものであり、これら用語によって構成要素が限定されることはない。
【0030】
明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に断りのない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0031】
なお、明細書の全般に亘って、ある部分が他の部分と「接続」されているとしたとき、これは、「直接的に接続」されている場合だけではなく、これらの間に他の素子を挟んで「間接的に接続」されている場合も含む。
【0032】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態によるバッテリー管理装置100を概略的に示す図である。
【0034】
図1を参照すると、バッテリー管理装置100は、バッテリー情報取得部110及び制御部120を含んでいてもよい。
【0035】
バッテリー情報取得部110は、複数のバッテリーセルについての複数のバッテリー情報を取得するように構成されてもよい。
【0036】
ここで、バッテリーセルとは、負極端子と正極端子とを有し、物理的に分離可能な1つの独立したセルを意味する。一例では、リチウムイオン電池またはリチウムポリマー電池をバッテリーセルと見なすことができる。
【0037】
例えば、バッテリー情報取得部110が取得可能なバッテリー情報は、複数のバッテリーセルのそれぞれの電圧、電流、温度、充電状態(SOC:State of charge)、健康状態(SOH:State of health)及び抵抗のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。具体的に、バッテリー情報取得部110は、複数のバッテリーセルのそれぞれの電圧、電流及び温度のうちの少なくとも1つを取得し得る。また、バッテリー情報取得部110は、取得した電圧、電流及び温度のうちの少なくとも1つに基づいて、SOC、SOH及び抵抗などのバッテリー情報を取得し得る。
【0038】
制御部120は、前記複数のバッテリーセルの母集団に対する基準分布プロファイルに基づいて、前記複数のバッテリー情報についてのウィスカーを算出するように構成されてもよい。
【0039】
ここで、前記基準分布プロファイルは、前記母集団に含まれるBOL(Beginning of life)状態の複数のバッテリーに対する前記バッテリー情報の連続確率分布を示すプロファイルであってもよい。
【0040】
具体的に、母集団は、前記複数のバッテリーセルを含めて複数のバッテリーを含んでいてもよい。例えば、母集団は、同じ生産ラインにより製造されたバッテリーを含んでいてもよい。また、母集団は、前記複数のバッテリーセルを含んでいてもよい。具体例では、複数のバッテリーセルは100個であり、母集団に含まれる複数のバッテリーは1,000個であってもよい。すなわち、母集団(1,000個のバッテリー)は、本発明の一実施形態による100個のバッテリーセルと残りの900個のバッテリーセルとを含んでいてもよい。
【0041】
図2は、本発明の一実施形態による基準分布プロファイルを概略的に示す図である。
【0042】
図2の実施形態において、母集団に含まれるBOL状態のバッテリーの基準分布プロファイルは、平均値がゼロ(0)の正規分布であってもよい。
【0043】
具体的に、前記制御部120は、前記基準分布プロファイルの平均値、前記平均値から所定の確率密度に対応する参照値、及び前記母集団の不良率に対応するように設定された閾値に基づいて、前記ウィスカーを算出するように構成されてもよい。
【0044】
図2の実施形態において、基準分布プロファイルは正規分布に従う分布プロファイルであってもよい。
【0045】
参照値は、基準分布プロファイルの平均値を基準として所定の確率密度(x%)に対応する値であってもよい。例えば、図2の実施形態において、参照値は、所定の確率密度25%に対応する値であり、0.6745であり得る。
【0046】
また、前記不良率は、前記母集団に含まれる複数のセルのうちの欠陥セルの割合に対応するように設定されてもよい。また、不良率に対応する確率密度に対応する値として、閾値を設定してもよい。例えば、図2の実施形態において、不良率は、母集団に含まれる複数のセルのうち実際の欠陥セルの割合であり、0.7%であり得る。また、閾値は不良率に対応する値であり、2.698であり得る。
【0047】
前記制御部120は、前記参照値と前記平均値との間の参照偏差を算出し、前記閾値と前記参照値との閾値偏差を算出し、前記算出された参照偏差及び前記閾値偏差に基づいて前記ウィスカーを算出するように構成されてもよい。
【0048】
具体的に、前記制御部120は、下記の数式1を用いて前記ウィスカーを算出するように構成されてもよい。
【0049】
[数1]
W=Td÷(2×Rd) … 数式1
【0050】
(ここで、Wはウィスカーであり、Tdは閾値偏差であり、Rdは参照偏差であり得る。閾値偏差Tdは、「閾値-参照値」の数式に基づいて計算され、参照偏差Rdは、「参照値-平均値」の数式に基づいて計算され得る。)
【0051】
例えば、図2の実施形態において、参照偏差Rdは、参照値(0.6745)と平均値(0)との差である0.6745であり得る。また、閾値偏差Tdは、閾値2.698と参照値0.6745との差である2.024(または2.0235)であり得る。したがって、ウィスカー(W)は、「2.024÷(2×0.6745)」の数式に基づいて1.5と算出され得る。
【0052】
制御部120は、前記複数のバッテリー情報及び算出されたウィスカーに基づいて前記複数のバッテリーセルに対するボックスプロットを生成するように構成されてもよい。
【0053】
図3は、一般的なボックスプロットを概略的に示す図である。
【0054】
図3を参照すると、ボックスプロットは、下位境界内側の最小値(Low inner fence)、四分位数範囲(Interquartile range、IQR)、及び上位境界内側の最大値(Upper inner fence)を含んでいてもよい。ここで、四分位数範囲(IQR)は、第1分位数(Q1)~第3分位数(Q2)の区間範囲として定義できる。
【0055】
具体的に、ボックスプロットの一般的な定義によれば、下位境界内側の最小値(Low inner fence)は、四分位数範囲(IQR)とウィスカー(W)に基づいて導出できる。例えば、下位境界内側の最小値(Low inner fence)は、「第1分位数(Q1)-(四分位数範囲(IQR)×ウィスカー(W))」として定義できる。
【0056】
また、上位境界内側の最大値(Upper inner fence)は、四分位数範囲(IQR)とウィスカー(W)に基づいて導出できる。例えば、上位境界内側の最大値(Upper inner fence)は、「第3分位数(Q3)+(四分位数範囲(IQR)×ウィスカー(W))」として定義できる。
【0057】
図4は、本発明の一実施形態による基準分布プロファイルに基づいて生成されたボックスプロットを概略的に示す図である。
【0058】
図4を参照すると、制御部120は、図2の基準分布プロファイルからウィスカーを算出してもよい。また、制御部120は、算出されたウィスカーを用いて複数のバッテリーセルに対するボックスプロットを生成してもよい。
【0059】
好ましくは、制御部120は、複数のバッテリー情報の中央値(median)を基準としてボックスプロットを生成してもよい。すなわち、図4の実施形態において、第2分位数(Q2)は、複数のバッテリー情報の中央値を基準として設定してもよい。
【0060】
具体的に、図4の実施形態は、基準分布プロファイルとボックスプロットとの理想的な対応関係を示す図である。ここで、基準分布プロファイルは母集団のバッテリー情報に基づくものであり、ボックスプロットは複数のバッテリーセルのバッテリー情報に基づくものであることに留意されたい。すなわち、基準分布プロファイルに基づいて算出されたウィスカーと複数のバッテリーセルのバッテリー情報とによりボックスプロットが生成され、基準分布プロファイルがボックスプロットに単純に置き換えられるわけではない。したがって、図4の理想的な実施形態に基づいて、母集団に対する基準分布プロファイルは、複数のバッテリーセルに対するボックスプロットに単純に置き換えられるものとして解釈されるべきではない。
【0061】
制御部120は、前記複数のバッテリー情報のそれぞれが、生成されたボックスプロットに対応する閾値区間に含まれるか否かによって、前記複数のバッテリーセルのそれぞれの状態を決定するように構成されてもよい。
【0062】
例えば、前記制御部120は、前記複数のバッテリーセルのうち対応するバッテリー情報が前記ボックスプロットの閾値範囲に含まれるバッテリーセルの状態を正常状態と決定するように構成されてもよい。逆に、前記制御部120は、前記複数のバッテリーセルのうち対応するバッテリー情報が前記ボックスプロットの閾値範囲外のバッテリーセルの状態を欠陥状態と決定するように構成されてもよい。
【0063】
すなわち、本発明の一実施形態によるバッテリー管理装置100は、複数のバッテリーセルを含む母集団の基準分布プロファイルに基づいて複数のバッテリーセルの状態を決定することができる。
【0064】
すなわち、複数のバッテリーセルの数が少ない場合には、複数のバッテリーセルに対するバッテリー情報だけでは理想的な連続確率分布が得られない場合が発生することがある。この場合、サンプル数が不十分であるため、連続確率分布のみでは、複数のバッテリーセルの状態決定に対する正確度及び信頼度が低い場合がある。
【0065】
したがって、バッテリー管理装置100は、サンプル(複数のバッテリーセル)の数が少ない場合、サンプルを含む母集団に対する基準分布プロファイルに基づいてウィスカーを算出することにより、複数のバッテリーセルに対するボックスプロットを生成することができる。また、バッテリー管理装置100は、生成されたボックスプロットに基づいて複数のバッテリーセルの状態を決定することができるので、複数のバッテリーセルの状態決定に対する正確度及び信頼度を向上させることができる。
【0066】
例えば、複数のバッテリーセルは100個であるが、母集団は数万個の場合、バッテリー管理装置100によって生成される複数のバッテリーセルに対するボックスプロットは、母集団の正規分布を考慮して生成されるものであるため、複数のバッテリーセルに対する状態決定の正確度及び信頼度を向上させることができる。
【0067】
また、制御部120は、母集団の不良率に基づいてウィスカーを算出するため、ボックスプロットに基づく複数のバッテリーセルの状態決定の正確度及び信頼度をさらに高めることができる。
【0068】
例えば、図4の実施形態において、母集団の不良率は0.7%であり、これにより算出されたウィスカーは1.5であり得る。すなわち、図4の実施形態によるボックスプロットは、不良率が0.7%と検出された母集団の基準分布プロファイルに基づいて、前記母集団に含まれる複数のバッテリーセルの状態を決定できるボックスプロットであり得る。
【0069】
母集団の不良率が増加するにつれて、上記の数式1に基づいて算出されるウィスカーは小さくなり、それによってボックスプロットの閾値区間も減少する可能性がある。逆に、母集団の不良率が減少するにつれて、上記の数式1に基づいて算出されるウィスカーは大きくなり、それによってボックスプロットの閾値区間も増加する可能性がある。
【0070】
すなわち、本発明の一実施形態によるバッテリー管理装置100は、母集団の不良率によって適応的に変化するボックスプロットを生成することができるので、複数のバッテリーセルの状態をより正確に決定できるという利点がある。これは、母集団の不良率が高いほど、母集団に含まれる複数のバッテリーセルも不良である確率が増加する可能性があるということである。したがって、バッテリー管理装置100は、MOL(Middle of life)またはEOL(End of life)状態である複数のバッテリーセルの状態を決定する際、母集団の不良率を考慮することにより、複数のバッテリーセルの状態を確率的により正確に決定することができる。
【0071】
一方、バッテリー管理装置100に備えられた制御部120は、本発明で行われる様々な制御ロジックを実行するためのもので、当技術分野で知られているプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、他のチップセット、論理回路、レジスタ、通信モデム、データ処理装置などを任意に含んでいてもよい。また、前記制御ロジックがソフトウェアで具現される場合、前記制御部120はプログラムモジュールの集合として具現され得る。このとき、プログラムモジュールはメモリに記憶され、制御部120によって実行されてもよい。前記メモリは、制御部120の内部または外部にあってもよく、様々な周知の手段によって制御部120に接続されてもよい。
【0072】
また、バッテリー管理装置100は、記憶部130をさらに含んでいてもよい。記憶部130は、バッテリー管理装置100の各構成要素が動作及び機能を実行するために必要なデータや、プログラム又は動作及び機能が実行される過程で生成されるデータ等を記憶することができる。記憶部130は、データの記録、消去、更新、読み出しが可能な公知の情報記憶手段であれば、その種類は特に限定されない。一例として、情報記憶手段は、RAM、フラッシュメモリ、ROM、EEPROM、レジスタなどを含んでいてもよい。また、記憶部130は、制御部120によって実行可能なプロセスが定義されたプログラムコードを記憶することができる。
【0073】
例えば、記憶部130は、基準分布プロファイルを記憶してもよい。また、記憶部130は、基準分布プロファイルに基づいて、平均値、参照値、閾値、参照偏差Rd、閾値偏差Td、母集団の不良率などを記憶してもよい。制御部120は、記憶部130にアクセスして、ウィスカー算出及びボックスプロット生成に必要な情報を取得することができる。
【0074】
また、記憶部130は、複数のバッテリーセルについてのバッテリー情報を記憶してもよい。バッテリー情報取得部110は、記憶部130にアクセスしてバッテリー情報を取得してもよいし、外部からバッテリー情報を直接受信して取得してもよい。
【0075】
前記制御部120は、前記取得されたバッテリー情報に応じて、前記生成されたボックスプロットに含まれる上段区間及び下段区間のうちの少なくとも1つの区間を選択し、選択された区間に基づいて前記閾値区間を決定するように構成されてもよい。
【0076】
ボックスプロットは、複数のバッテリー情報の中央値を基準として上段区間と下段区間とを含んでいてもよい。上段区間は中央値以上の値を含む区間であり、下段区間は中央値未満の値を含む区間であってもよい。
【0077】
例えば、図4の実施形態において、ボックスプロットの上段区間は、第2分位数(Q2)以上の上位境界内側の最大値(Upper inner fence)以下の区間に対応し、下端区間は第2分位数(Q2)未満の下位境界内側の最小値(Lower inner fence)以上の区間に対応できる。
【0078】
一般に、上段区間と下段区間の両方を含めて閾値区間を決定してもよい。ただし、バッテリー情報によっては、上段区間及び下段区間のうちの少なくとも一方で閾値区間を決定してもおい。
【0079】
例えば、バッテリー情報が充電終了時点のバッテリーセルの電圧である場合、過充電されたバッテリーセルを欠陥状態として決定するために、閾値区間には上段区間のみが含まれてもよい。
【0080】
別の例では、バッテリー情報が放電終了時点のバッテリーセルの電圧である場合、過放電されたバッテリーセルを欠陥状態として決定するために、閾値区間には上段区間のみが含まれてもよい。
【0081】
すなわち、制御部120は、バッテリー情報に応じて閾値区間を上段区間及び下段区間の少なくとも一方に決定することにより、閾値区間の設定及び記憶に不必要なシステムリソース(system resource)が浪費されることを防止することができる。また、バッテリー情報に応じて最適化された閾値区間が設定できるので、制御部120はバッテリーセルの状態をより迅速に決定し得る。
【0082】
本発明によるバッテリー管理装置100は、バッテリー管理システム(BMS)に適用されてもよい。すなわち、本発明によるBMSは、上述したバッテリー管理装置100を含んでいてもよい。このような構成において、バッテリー管理装置100の各構成要素の少なくとも一部は、従来のBMSに含まれる構成の機能を補完または追加することによって具現され得る。例えば、バッテリー管理装置100のバッテリー情報取得部110、制御部120及び記憶部130は、BMSの構成要素として具現され得る。
【0083】
また、本発明によるバッテリー管理装置100は、バッテリーパック1に設けられてもよい。すなわち、本発明によるバッテリーパック1は、上述したバッテリー管理装置100と1つ以上のバッテリーセルとを含んでいてもよい。また、バッテリーパック1は、電装品(リレー、ヒューズなど)及びケースなどをさらに含んでいてもよい。
【0084】
図5は、本発明の他の実施形態によるバッテリーパック1の例示的な構成を概略的に示す図である。
【0085】
具体的に、図5の実施形態において、測定部200は、第1センシングラインSL1、第2センシングラインSL2、及び第3センシングラインSL3と接続されてもよい。測定部200は、第1センシングラインSL1を通じてバッテリーBの正極端子と接続され、第2センシングラインSL2を通じてバッテリーBの負極端子と接続される。また、測定部200は、第1センシングラインSL1を通じて測定される電圧と第2センシングラインSL2を通じて測定される電圧との差を計算してバッテリーBの電圧を測定することができる。バッテリーBが充電Cレートで充電される過程において、測定部200は、第1センシングラインSL1及び第2センシングラインSL2を通じてバッテリーBの充電電圧を測定することができる。逆に、バッテリーBが放電Cレートで放電される過程において、測定部200は、第1センシングラインSL1及び第2センシングラインSL2を通じてバッテリーBの放電電圧を測定することができる。
【0086】
また、測定部200は、第3センシングラインSL3を通じて電流測定ユニットAと接続され、バッテリーBの充電電流及び放電電流を測定することができる。ここで、バッテリーBは充電Cレートで定電流充電されてもよいし、放電Cレートで定電流放電されてもよい。
【0087】
例えば、電流測定ユニットAは、バッテリーBの充放電経路に設けられ、バッテリーBの充電電流及び放電電流を測定できる電流センサまたはシャント抵抗であってもよい。ここで、バッテリーBの充放電経路は、バッテリーBに充電電流が印加されるか、バッテリーBから放電電流が出力される大電流経路であってもよい。図5の実施形態において、電流測定ユニットは、バッテリーBの充放電経路のうち、バッテリーBの負極端子とバッテリーパック1の負極端子P-との間に接続されてもよい。ただし、電流測定ユニットは、バッテリーBの充放電経路上であれば、バッテリーBの正極端子とバッテリーパック1の正極端子P+との間にも接続できることに留意されたい。
【0088】
また、測定部200は、第4センシングラインSL4を通じてバッテリーBの温度を測定してもよい。
【0089】
測定部200によって測定されたバッテリーBの電流、電圧及び温度のうち少なくとも1つを含むバッテリー情報は、バッテリー管理装置100に送信されてもよい。例えば、測定部200から送信されたバッテリー情報は、記憶部130に記憶されてもよいし、バッテリー情報取得部に直接送信されてもよい。
【0090】
本発明のさらに他の実施形態によるバッテリー管理方法を概略的に示す図である。
【0091】
好ましくは、バッテリー管理方法の各ステップは、バッテリー管理装置100によって実行されてもよい。以下では、上述した内容と重複する内容については省略または簡単に説明する。
【0092】
図6を参照すると、バッテリー管理方法は、バッテリー情報取得ステップS100、ウィスカー算出ステップS200、ボックスプロット生成ステップS300、及び状態決定ステップS400を含んでいてもよい。
【0093】
バッテリー情報取得ステップS100は、複数のバッテリーセルについての複数のバッテリー情報を取得するステップであり、バッテリー情報取得部110によって実行され得る。
【0094】
ウィスカー算出ステップS200は、前記複数のバッテリーセルの母集団に対する基準分布プロファイルに基づいて、前記複数のバッテリー情報に対するウィスカーを算出するステップであり、制御部120によって実行され得る。
【0095】
例えば、図4の実施形態において、母集団の不良率が0.7%であると仮定する。制御部120は、基準分布プロファイルにおける閾値偏差Td及び参照偏差Rdを前記数式1に代入してウィスカーを算出してもよい。
【0096】
ボックスプロット生成ステップS300は、前記複数のバッテリー情報及び算出されたウィスカーに基づいて、前記複数のバッテリーセルに対するボックスプロットを生成するステップであり、制御部120によって実行され得る。
【0097】
例えば、図4の実施形態において、制御部120は、基準分布プロファイルに対応するように算出されたウィスカーにより、複数のバッテリーセルに対するボックスプロットを生成することができる。
【0098】
状態決定ステップS400は、生成されたボックスプロットに対応する閾値区間に前記複数のバッテリー情報のそれぞれが含まれるか否かに応じて、前記複数のバッテリーセルのそれぞれの状態を決定するステップであり、制御部120によって実行され得る。
【0099】
例えば、図4の実施形態において、制御部120は、バッテリー情報がボックスプロットの閾値区間に属するバッテリーセルの状態を正常状態として決定することができる。逆に、制御部120は、バッテリー情報がボックスプロットの閾値区間に属さないバッテリーセルの状態を欠陥状態として決定することができる。
【0100】
また、上記の実施形態によれば、ボックスプロットの閾値区間がバッテリー情報の種類に対応するように決定できるので、制御部120は、バッテリー情報の種類に応じて複数のバッテリーセルの状態をより迅速に決定することができる。
【0101】
以上説明した本発明の実施形態は、装置及び方法によってのみ実現されるものではなく、本発明の実施形態の構成に対応する機能を実現するプログラムまたはそのプログラムが記録された記録媒体を介して具現されてもよく、このような具現は、上述した実施形態の記載から本発明が属する技術分野の専門家であれば容易に具現できるものである。
【0102】
以上、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で様々な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【0103】
また、以上で説明した本発明は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者により、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の置換、変形及び変更が可能であるため、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるのではなく、様々な変形のため各実施形態の全部または一部が選択的に組み合わせられて構成され得る。
【符号の説明】
【0104】
1 バッテリーパック
100 バッテリー管理装置
110 バッテリー情報取得部
120 制御部
130 記憶部
200 測定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6