(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】バッテリー異常診断装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/396 20190101AFI20240830BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240830BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20240830BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20240830BHJP
G01R 31/3835 20190101ALI20240830BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
G01R31/396
H02J7/00 Y
G01R31/382
G01R31/385
G01R31/3835
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2022576515
(86)(22)【出願日】2021-08-09
(86)【国際出願番号】 KR2021010470
(87)【国際公開番号】W WO2022035149
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】10-2020-0100131
(32)【優先日】2020-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ボ・ミ・イム
【審査官】越川 康弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-256436(JP,A)
【文献】特開2004-031120(JP,A)
【文献】特開2014-072992(JP,A)
【文献】特開2009-250796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/396
H02J 7/00
G01R 31/382
G01R 31/385
G01R 31/3835
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーセルの電圧を獲得する電圧獲得部と、
前記バッテリーセルの電圧を分析して前記バッテリーセルの電圧を推定する推定情報を算出する分析部と、
前記推定情報を分析して前記バッテリーセルの異常類型を診断する診断部と、
を含むバッテリー異常診断装置において、
前記推定情報は、前記バッテリーセルの電圧に関する電圧推定式を含み、
前記診断部は、アイドル区間における前記電圧推定式の時間による勾配差に基づいて前記バッテリーセルの異常
類型を診断し、
前記診断部は、前記勾配差が予め設定された第1の基準値未満の場合、
前記バッテリーセルの異常類型を、前記バッテリーセル
のアイドル長時間安定化異常として診断し、前記勾配差が前記第1の基準値以上の場合、
前記バッテリーセルの異常類型を、前記バッテリーセル
のアイドル長時間安定化異常ではないと診断するが、前記バッテリーセル
の充電又は放電後のアイドル電圧異常として診断
し、
前記分析部は、前記バッテリーセルの充電又は放電後のアイドル区間での回帰分析に基づく電圧推定式を算出する、バッテリー異常診断装置。
【請求項2】
前記第1の基準値は、バッテリーラックに含まれた複数のバッテリーセルのアイドル区間における前記電圧推定式の時間による勾配差に対する標準偏差に基づいて決定される、請求項1に記載のバッテリー異常診断装置。
【請求項3】
前記診断部は、前記勾配差が前記第1の基準値以上の場合、前記バッテリーセルのアイドル区間の開始電圧が予め設定された第2の基準値よりも大きいと、充電後のアイドル電圧異常として診断し、前記バッテリーセルのアイドル区間の開始電圧が前記第2の基準値以下の場合、放電後のアイドル電圧異常として診断する、請求項1に記載のバッテリー異常診断装置。
【請求項4】
前記第2の基準値は、前記バッテリーセルのSOCが50%であるときの電圧として決定される、請求項3に記載のバッテリー異常診断装置。
【請求項5】
前記電圧獲得部は、前記バッテリーセルに流れる電流及び前記電流の流れる方向を測定するように構成されており、
前記診断部は、前記勾配差が前記第1の基準値以上の場合、前記バッテリーセルの電流が第1の方向に流れると、充電後のアイドル電圧異常として診断し、前記バッテリーセルの電流が前記第1の方向と反対である第2の方向に流れると、放電後のアイドル電圧異常として診断する、請求項1に記載のバッテリー異常診断装置。
【請求項6】
前記診断部を介して前記バッテリーセルに異常が発生したと判断される場合、警告通知を発生させる通知部をさらに含む、請求項1~5のいずれ一項に記載のバッテリー異常診断装置。
【請求項7】
バッテリーセルの電圧を獲得する段階と、
前記バッテリーセルの電圧を分析して前記バッテリーセルの電圧を推定する推定情報を算出する段階と、
前記推定情報を分析して前記バッテリーセルの異常類型を診断する段階と、
を含むバッテリー異常診断方法において、
前記推定情報は、前記バッテリーセルの電圧に関する電圧推定式を含み、
前記バッテリーセルの異常
類型を診断する段階は、アイドル区間における前記電圧推定式の時間による勾配差に基づいて前記バッテリーセルの異常類型を診断し、
前記バッテリーセルの異常
類型を診断する段階は、前記勾配差が第1の基準値未満の場合、
前記バッテリーセルの異常類型を、前記バッテリーセルのアイドル長時間安定化異常として診断し、前記勾配差が前記第1の基準値以上の場合、
前記バッテリーセルの異常類型を、前記バッテリーセル
のアイドル長時間安定化異常ではないと診断するが、前記バッテリーセル
の充電又は放電後のアイドル電圧異常として診断し、
前記電圧推定式は、前記バッテリーセルの充電又は放電後のアイドル区間での回帰分析に基づく電圧推定式である、バッテリー異常診断方法。
【請求項8】
前記バッテリーセルの異常
類型を診断する段階は、前記勾配差が前記第1の基準値以上の場合、前記バッテリーセルのアイドル区間の開始電圧が予め設定された第2の基準値よりも大きいと、充電後のアイドル電圧異常として診断し、前記バッテリーセルのアイドル区間の開始電圧が前記第2の基準値以下の場合、放電後のアイドル電圧異常として診断する、請求項7に記載のバッテリー異常診断方法。
【請求項9】
前記バッテリー異常診断方法は、前記バッテリーセルに流れる電流及び前記電流の流れる方向を測定する段階を含み、
前記バッテリーセルの異常
類型を診断する段階は、前記勾配差が前記第1の基準値以上の場合、前記バッテリーセルに電流が第1の方向に流れると、充電後のアイドル電圧異常として診断し、前記バッテリーセルに電流が前記第1の方向と反対である第2の方向に流れると、放電後のアイドル電圧異常として診断する、請求項7に記載のバッテリー異常診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年8月10日に出願された韓国特許出願第10-2020-0100131号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、バッテリーのアイドル区間での異常を診断するためのバッテリー異常診断装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、二次電池に対する研究開発が活発に行われている。ここで、二次電池は、充放電が可能な電池であって、従来のNi/Cd電池、Ni/MH電池などと最近のリチウムイオン電池とを全て含む意味である。二次電池のうちリチウムイオン電池は、従来のNi/Cd電池、Ni/MH電池などに比べてエネルギー密度が遥かに高いという利点がある。また、リチウムイオン電池は、小型、軽量で製作することができ、移動機器の電源として使用される。また、リチウムイオン電池は、電気自動車の電源に使用範囲が拡張され、次世代エネルギー貯蔵媒体として注目を浴びている。
【0004】
また、二次電池は、一般的に複数のバッテリーセルが直列及び/又は並列に連結されたバッテリーモジュールを含むバッテリーパックとして用いられる。そして、バッテリーパックは、バッテリー管理システムにより状態及び動作が管理及び制御される。
【0005】
一方、一般的には、エネルギー貯蔵システム(Energy Storage System、ESS)の二次電池の場合、火事が発生する前に診断を行うための診断リストが備えられている。このような診断リストには、火事を防止するための電圧、電流、温度、電力などに関する様々な値が含まれており、二次電池の場合、主に過電圧(over voltage)や低電圧(under voltage)に対して診断を行った。
【0006】
しかし、このような二次電池では、実質的に電圧の上端又は下端以外の範囲でも異常が発生することもある。例えば、過電圧や低電圧に対する警告通知が起こらない場合でも、火事が発生することがある。よって、このような過電圧や低電圧以外にも火事が発生する問題を解決するための新たな診断項目が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記のような課題を解決するために考案されたものであって、バッテリーのアイドル区間で電圧の不安定な挙動を回帰分析によって診断することにより、バッテリーのアイドル区間での異常類型を分類できるバッテリー異常診断装置及び方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本文書に開示された一実施形態によるバッテリー異常診断装置は、バッテリーセルの電圧を獲得する電圧獲得部、前記バッテリーセルの電圧を分析して前記バッテリーセルの電圧を推定する推定情報を算出する分析部、及び前記推定情報を分析して前記バッテリーセルの異常を診断する診断部を含んでよい。
【0009】
一実施形態において、前記推定情報は、前記バッテリーセルの電圧に関する電圧推定式を含み、前記診断部は、前記電圧推定式の時間による勾配差に基づいて前記バッテリーセルの異常を診断してよい。
【0010】
一実施形態において、前記診断部は、前記勾配差が予め設定された第1の基準値未満の場合、前記バッテリーセルをアイドル長時間安定化(relaxation)異常として診断し、前記勾配差が前記第1の基準値以上の場合、前記バッテリーセルを充電又は放電後のアイドル電圧異常として診断してよい。
【0011】
一実施形態において、前記第1の基準値は、バッテリーラックに含まれた複数のバッテリーセルの前記電圧推定式の勾配差に対する標準偏差に基づいて決定されてよい。
【0012】
一実施形態において、前記診断部は、前記勾配差が前記第1の基準値以上の場合、前記バッテリーセルのアイドル区間の開始電圧が予め設定された第2の基準値よりも大きいと、充電後のアイドル電圧異常として診断し、前記バッテリーセルのアイドル区間の開始電圧が前記第2の基準値以下の場合、放電後のアイドル電圧異常として診断してよい。
【0013】
一実施形態において、前記第2の基準値は、前記バッテリーセルのSOCが50%であるときの電圧として決定されてよい。
【0014】
一実施形態において、前記診断部は、前記勾配差が前記第1の基準値以上の場合、前記バッテリーセルの電流が第1の方向に流れると、充電後のアイドル電圧異常として診断し、前記バッテリーセルの電流が前記第1の方向と反対である第2の方向に流れると、放電後のアイドル電圧異常として診断してよい。
【0015】
一実施形態において、前記分析部は、前記バッテリーセルの充電又は放電後のアイドル区間での電圧推定式を算出してよい。
【0016】
一実施形態において、前記診断部を介して前記バッテリーセルに異常が発生したと判断される場合、警告通知を発生させる通知部をさらに含んでよい。
【0017】
本文書に開示された一実施形態によるバッテリー異常診断方法は、バッテリーセルの電圧を獲得する段階、前記バッテリーセルの電圧を分析して前記バッテリーセルの電圧を推定する推定情報を算出する段階、及び前記推定情報を分析して前記バッテリーセルの異常を診断する段階を含んでよい。
【0018】
一実施形態において、前記推定情報は、前記バッテリーセルの電圧に関する電圧推定式を含み、前記バッテリーセルの異常を診断する段階は、前記電圧推定式の時間による勾配差に基づいて前記バッテリーセルの異常を診断してよい。
【0019】
一実施形態において、前記バッテリーセルの異常を診断する段階は、前記勾配差が第1の基準値未満の場合、前記バッテリーセルをアイドル長時間安定化(relaxation)異常として診断し、前記勾配差が前記第1の基準値以上の場合、前記バッテリーセルを充電又は放電後のアイドル電圧異常として診断してよい。
【0020】
一実施形態において、前記バッテリーセルの異常を診断する段階は、前記勾配差が前記第1の基準値以上の場合、前記バッテリーセルのアイドル区間の開始電圧が予め設定された第2の基準値よりも大きいと、充電後のアイドル電圧異常として診断し、前記バッテリーセルのアイドル区間の開始電圧が前記第2の基準値以下の場合、放電後のアイドル電圧異常として診断してよい。
【0021】
一実施形態において、前記バッテリーセルの異常を診断する段階は、前記勾配差が前記第1の基準値以上の場合、前記バッテリーセルに電流が第1の方向に流れると、充電後のアイドル電圧異常として診断し、前記バッテリーセルに電流が前記第1の方向と反対である第2の方向に流れると、放電後のアイドル電圧異常として診断してよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のバッテリー異常診断装置及び方法によれば、バッテリーのアイドル区間で電圧の不安定な挙動を回帰分析によって診断することにより、バッテリーのアイドル区間での異常類型を分類することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一般的なバッテリーラックの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断装置の構成を示すブロック図である。
【
図3a】本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断装置によりアイドル長時間安定化を分類することを示す図である。
【
図3b】本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断装置によりアイドル長時間安定化を分類することを示す図である。
【
図3c】本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断装置によりアイドル長時間安定化を分類することを示す図である。
【
図4a】本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断装置により放電後のアイドル電圧異常を分類することを示す図である。
【
図4b】本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断装置により放電後のアイドル電圧異常を分類することを示す図である。
【
図4c】本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断装置により放電後のアイドル電圧異常を分類することを示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断方法を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付した図面を参照して、本発明の多様な実施形態に対して詳細に説明する。本文書で図面上の同一の構成要素に対しては同一の参照符号を使用し、同一の構成要素に対して重複した説明は省略する。
【0025】
本文書に開示されている本発明の多様な実施形態に対して、特定の構造的又は機能的説明は、単に本発明の実施形態を説明するための目的として例示されたものであって、本発明の多様な実施形態は、多様な形態で実施可能であり、本文書に説明された実施形態に限定されるものと解釈されてはいけない。
【0026】
多様な実施形態で用いられる「第1」、「第2」、「第一」、又は「第二」などの表現は、多様な構成要素を順序及び/又は重要度に関係なく修飾することができ、当該構成要素を限定しない。例えば、本発明の権利範囲を外れることなく、第1の構成要素は第2の構成要素と命名されてよく、同様に、第2の構成要素も第1の構成要素に変えて命名されてよい。
【0027】
本文書で用いられる用語は、単に特定の実施形態を説明するために用いられたものであって、他の実施形態の範囲の限定を意図するものではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味がない限り、複数の表現を含んでよい。
【0028】
技術的や科学的な用語を含めて、ここで用いられる全ての用語は、本発明の技術分野における通常の知識を有する者により一般的に理解される意味と同一の意味を有し得る。一般的に用いられる辞書に定義された用語は、関連技術の文脈上有する意味と同一又は類似の意味を有するものと解釈されてよく、本文書で明らかに定義されない限り、理想的又は過度に形式的な意味に解釈されない。場合によっては、本文書で定義された用語であっても、本発明の実施形態を排除するように解釈されてはいけない。
【0029】
図1は、一般的なバッテリーラックの構成を示すブロック図である。
【0030】
図1を参照すれば、本発明の一実施形態によるバッテリーラック1と上位システムに含まれる上位制御器2とを含むバッテリー制御システムを概略的に示す。
【0031】
図1に示されたように、バッテリーラック1は、一つ以上のバッテリーセルからなり、充放電可能なバッテリーモジュール10と、バッテリーモジュール10の(+)端子側又は(-)端子側に直列に連結されてバッテリーモジュール10の充放電電流の流れを制御するためのスイッチング部14と、バッテリーラック1の電圧、電流、温度などをモニタリングして、過充電及び過放電などを防止するように制御管理するバッテリー管理システム20(例えば、RBMS)を含む。この際、バッテリーラック1には、バッテリーモジュール10、センサー12、スイッチング部14、及びバッテリー管理システム20が複数備えられてよい。
【0032】
ここで、スイッチング部14は、複数のバッテリーモジュール10の充電又は放電に対する電流の流れを制御するための素子であって、例えば、バッテリーラック1の仕様に応じて少なくとも一つのリレー、マグネチック接触器などが用いられてよい。
【0033】
バッテリー管理システム20は、前述した各種パラメータを測定した値が入力されるインターフェースであって、複数の端子と、これら端子と連結されて入力された値の処理を行う回路などを含んでよい。また、バッテリー管理システム20は、スイッチング部14、例えば、リレー又は接触器などのON/OFFを制御してもよく、バッテリーモジュール10に連結されてバッテリーモジュール10のそれぞれの状態を監視してもよい。
【0034】
一方、本発明のバッテリー管理システム20では、後述するように、バッテリーセルの電圧に関する回帰分析を、別途のプログラムを介して行うことができる。また、算出された回帰式を用いて、バッテリーセルの異常類型を分類することができる。
【0035】
上位制御器2は、バッテリー管理システム20にバッテリーモジュール10に対する制御信号を伝送することができる。これにより、バッテリー管理システム20は、上位制御器2から印加される信号に基づいて動作が制御され得る。一方、本発明のバッテリーセルは、ESS(Energy Storage System)に用いられるバッテリーモジュール10に含まれた構成であってよい。そして、このような場合、上位制御器2は、複数のラックを含むバッテリーバンクの制御器(BBMS)又は複数のバンクを含むESS全体を制御するESS制御器であってよい。ただし、バッテリーラック1は、このような用途に限定されるものではない。
【0036】
このようなバッテリーラック1の構成及びバッテリー管理システム20の構成は、公知の構成であるため、より具体的な説明は省略する。
【0037】
図2は、本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断装置の構成を示すブロック図である。
【0038】
図2のバッテリー異常診断装置200は、バッテリーモジュール10を管理するBMS、バッテリーラック1を管理するBMS、又はESS全体を管理するシステム制御器に含まれてよく、複数のバンクに含まれた複数のラックBMSから各バッテリーモジュールの電圧データを収集して異常診断を行ってよい。例えば、
図2のバッテリー異常診断装置200は、前述した
図1のバッテリー管理システム20又は上位制御器2に含まれてよい。
【0039】
また、本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断装置200によるバッテリーセルの異常類型分類は、バッテリーセルの異常検出アルゴリズム(例えば、主成分分析など)を介してバッテリーセルに異常が発生したと判断した以後の過程であってよい。すなわち、以下では、本発明のバッテリー異常診断装置200に関し、既に一連の過程を介してバッテリーセルに異常挙動発生を検出したことを前提として説明する。しかし、これは例示的なものであるだけで、本発明がこれに制限されるものではなく、本発明のバッテリー異常診断装置200は、異常挙動検出有無の判断とは関係なく、リアルタイムでデータを分析して異常類型を分類してもよい。
【0040】
図2を参照すれば、本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断装置200は、電圧獲得部210、分析部220、診断部230、及び通知部240を含んでよい。
【0041】
電圧獲得部210は、バッテリーセルの電圧を獲得することができる。例えば、電圧獲得部210は、一定の時間間隔でバッテリーセルの電圧を測定することができる。実施例によって、電圧獲得部210は、測定されたバッテリーセルの電圧を他の装置から受信することができる。また、電圧獲得部210は、バッテリーセルに流れる電流を測定することができる。
【0042】
分析部220は、獲得されたバッテリーセルの電圧を分析することにより、バッテリーセルの電圧に関する推定情報を算出することができる。実施例によって、推定情報は、バッテリーセルの電圧に関する電圧推定式を含んでよい。実施例によって、分析部220は、獲得されたバッテリーセルの電圧に対して回帰分析を行うことにより、バッテリーセルの電圧推定式を算出することができる。この際、分析部220は、バッテリーセルの充電又は放電後のアイドル区間に対して電圧推定式を算出することができる。また、分析部220は、設定されたウィンドウサイズ(例えば、30分)に対し、バッテリーセルの電圧に関する電圧推定式を算出することができる。例えば、分析部220は、次のように電圧推定式を算出することができる。
【0043】
【0044】
(ここで、Tsは、アイドル区間開始時間、Teは、アイドル区間終了時間、Xは、バッテリーセルの電圧)
【0045】
診断部230は、分析部220によって算出された電圧推定式を分析することにより、バッテリーセルの異常を診断することができる。例えば、診断部230は、電圧推定式の勾配(a)と勾配差(at+1-at)を算出し、これをバッテリーセルの異常診断のために使用してよい。また、勾配差に対する時間間隔は、サンプリング時間(例えば、1秒)であってよい。
【0046】
具体的には、診断部230は、電圧推定式の勾配差の標準偏差が予め設定された第1の基準値未満の場合、バッテリーセルをアイドル長時間安定化(relaxation)異常として診断してよい。この場合、第1の基準値は、バッテリーラックに含まれた複数のバッテリーセルの電圧推定式の勾配差に対する標準偏差(σ)の倍数に基づいて決定されてよい。例えば、第1の基準値は、6σであってよい。
【0047】
ここで、バッテリーセルのアイドル長時間安定化とは、アイドル後に他のバッテリーセルと比べて相対的にバッテリーセルが安定的な状態に到達することに長時間かかる異常類型である。このようなアイドル長時間安定化が発生する場合、バッテリーセルで正極と負極の間の動作が円滑ではなく、バッテリーの性能に問題が発生する可能性がある。
【0048】
また、診断部230は、電圧推定式の勾配差が第1の基準値以上の場合、バッテリーセルを充電又は放電後のアイドル電圧異常として診断することができる。この際、バッテリーセルの充電後又は放電後のアイドル電圧異常とは、バッテリーセルの充放電後のアイドル区間で電圧が緩やかに下降又は上昇するものではなく、不安定な形態として現れる異常類型である。例えば、バッテリーセルの充放電後のアイドル電圧異常の場合、バッテリーセルの電圧の勾配が一定のシグマ水準外に変動する可能性がある。
【0049】
具体的には、診断部230は、電圧推定式の勾配差が第1の基準値以上の場合、バッテリーセルのアイドル区間の開始電圧が予め設定された第2の基準値よりも大きいと、充電後のアイドル電圧異常として診断し、バッテリーセルのアイドル区間の開始電圧が第2の基準値以下の場合、放電後のアイドル電圧異常として診断することができる。例えば、第2の基準値は、バッテリーセルのSOCが50%であるときの電圧として決定されてよい。
【0050】
また、診断部230は、電圧推定式の勾配差が第1の基準値以上の場合、バッテリーセルに電流が第1の方向に流れると、充電後のアイドル電圧異常として診断し、バッテリーセルに電流が第1の方向と反対である第2の方向に流れると、放電後のアイドル電圧異常として診断することができる。この際、電流の方向は、(+)又は(-)で示してよい。
【0051】
通知部240は、診断部230を介してバッテリーセルに異常が発生したと判断される場合、警告通知を発生させてよい。この場合、通知部240は、前述した3つのバッテリー異常類型、すなわち、アイドル長時間安定化、充電後のアイドル電圧異常、放電後のアイドル電圧異常のそれぞれに対して異なる警告通知を発生させることにより、使用者にとってそれぞれの異常類型を区分可能となるようにできる。例えば、通知部240は、ランプやスピーカーなどを含んでよい。
【0052】
一方、
図2には示されていないが、本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断装置200は、格納部を含んでよい。この際、格納部は、電圧獲得部210から獲得された電圧及び電流データ、分析部220によって算出された電圧推定式とグラフ、電圧推定式の勾配差に対する標準偏差などの各種データを格納してよい。また、本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断装置200は、格納部を含む代わりに、通信部(未図示)を介して外部のサーバと通信することにより、前述したデータを送受信する方式で動作することができる。
【0053】
また、
図2では、本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断装置200が、アイドル長時間安定化、充電後のアイドル電圧異常、放電後のアイドル電圧異常の類型に対して分類することと示したが、これに制限されるものではなく、前述した統計的方法により様々な異常類型に対しても分類することができる。
【0054】
そして、バッテリーセルの異常類型を分類するための方法も前述した方式に制限されるものではなく、それ以外の様々な統計的方法で診断を行ってよい。例えば、バッテリーセルの電圧推定式に対する勾配差の代わりに、電圧推定式の勾配自体を用いてもよく、微分データなど他のデータを活用してもよい。
【0055】
このように、本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断装置200によれば、バッテリーのアイドル区間で電圧の不安定な挙動を診断することにより、バッテリーのアイドル区間での異常類型を分類することができる。
【0056】
図3a~
図3cは、本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断装置によりアイドル長時間安定化を分類することを示す図である。
【0057】
図3a~
図3cを参照すれば、ESSバッテリーのバンク1/ラック6/モジュール13/セル8に対する例示を示す。具体的には、
図3aは、このようなバッテリーセルの電圧に対する電圧推定式をグラフで示したものであり、
図3bは、
図3aのグラフの勾配を示したものであり、
図3cは、
図3bの勾配差を示したものである。また、
図3の各グラフにおいて、x軸は時間(m)を示し、
図3aのy軸は電圧(V)、
図3bのy軸は電圧推定式の勾配(a)、
図3cのy軸は勾配差(diff(a))を示す。
【0058】
図3cに示されたように、本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断装置200では、
図3aのように算出された電圧推定式の勾配差の標準偏差が第1の基準値(
図3では、6σ)未満の場合、バッテリーセルをアイドル長時間安定化異常として診断することができる。すなわち、
図3cを参照すれば、6σであるグラフ領域内に含まれる部分(すなわち、濃く表示されたグラフ部分)が、バッテリーセルのアイドル長時間安定化異常であってよい。
【0059】
図4a~
図4cは、本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断装置により、放電後のアイドル電圧異常を分類することを示す図である。
【0060】
図4a~
図4cを参照すれば、ESSバッテリーのバンク1/ラック6/モジュール13/セル8に対する例示を示す。
図3と同様に、
図4aは、このようなバッテリーセルの電圧に対する電圧推定式をグラフで示したものであり、
図4bは、
図4aのグラフの勾配を示したものであり、
図4cは、
図4bの勾配差を示したものである。また、
図4の各グラフにおいて、x軸は時間(m)を示し、
図4aのy軸は電圧(V)、
図4bのy軸は電圧推定式の勾配(a)、
図4cのy軸は勾配差(diff(a))を示す。
【0061】
図4cに示されたように、本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断装置200では、
図4aのように算出された電圧推定式の勾配差が第1の基準値(
図4から6σ)以上の場合、バッテリーセルを充電又は放電後のアイドル電圧異常として診断することができる。すなわち、
図4cを参照すれば、6σであるグラフ領域から外れる部分(すなわち、濃く表示されたグラフ部分)が、バッテリーセルの充電又は放電後のアイドル電圧異常であってよい。
【0062】
また、
図4cの電圧推定式の勾配差が第1の基準値以上の場合、バッテリーセルのアイドル区間の開始電圧が第2の基準値(例えば、3.8V)よりも大きいと、充電後のアイドル電圧異常として診断し、バッテリーセルのアイドル区間の開始電圧が第2の基準値以下の場合、放電後のアイドル電圧異常として診断することができる。
【0063】
一方、
図4cの電圧推定式の勾配差が第1の基準値以上の場合、バッテリーセルに電流が第1の方向(例えば、(+)方向)に流れると、充電後のアイドル電圧異常として診断し、バッテリーセルに電流が第2の方向(例えば、(-)方向)に流れると、放電後のアイドル電圧異常として診断することができる。
【0064】
図5は、本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断方法を示すフローチャートである。
【0065】
図5を参照すれば、本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断方法では、先ずバッテリーセルの電圧(X)を測定する(S510)。この際、段階S510においては、一定の時間間隔でバッテリーセルの電圧を測定してよい。また、バッテリーセルに流れる電流をともに測定してよい。
【0066】
そして、バッテリーセルの電圧を分析することにより、バッテリーセルのアイドル区間(Ts-Te)での電圧に関する推定情報を算出する(S520)。例えば、推定情報は、バッテリーセルの電圧に関する電圧推定式を含んでよい。この際、設定されたウィンドウサイズ(例えば、30分)に対し、バッテリーセルの電圧に関する電圧推定式を算出してよい。例えば、バッテリーセルの電圧推定式は、前述した式(1)であってよい。
【0067】
段階S530においては、勾配(a)差(diff(a))を計算する。この際、勾配(a)差は、at+1-atで示してよい。この際、勾配差に対する時間間隔は、サンプリング時間(例えば、1秒)であってよい。
【0068】
次に、電圧推定式の勾配差(例えば、絶対値)が予め設定された第1の基準値(
図5では、6σ)以上であるか否かを判断する(S540)。もし、電圧推定式の勾配差が第1の基準値未満の場合(No)、当該バッテリーセルは、アイドル長時間安定化異常として判断してよい(S550)。
【0069】
一方、電圧推定式の勾配差が第1の基準値以上の場合(Yes)、段階S560に進行する。そして、段階S560においては、バッテリーセルのアイドル区間の開始電圧(X
Ts)が予め設定された第2の基準値(
図5では、3.8V)よりも大きいか否かを判断する。
【0070】
もし、バッテリーセルのアイドル区間の開始電圧(XTs)が第2基準値以下の場合(No)、バッテリーセルの放電後のアイドル電圧異常として判断する(S570)。一方、バッテリーセルのアイドル区間の開始電圧(XTs)が第2基準値よりも大きい場合(Yes)、バッテリーセルの充電後のアイドル電圧異常として判断する(S580)。
【0071】
一方、段階S560~S580の方法の代りに、バッテリーセルの電流が第1の方向(例えば、(+)方向)に流れると、充電後のアイドル電圧異常として診断し、バッテリーセルの電流が第1の方向と反対である第2の方向(例えば、(-)方向)に流れると、放電後のアイドル電圧異常として診断するようにできる。
【0072】
このように、本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断方法によれば、バッテリーのアイドル区間で電圧の不安定な挙動を分析することにより、バッテリーのアイドル区間での異常類型を分類することができる。
【0073】
図6は、本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0074】
図6を参照すれば、本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断装置600は、MCU610、メモリー620、入出力I/F630、及び通信I/F640を含んでよい。
【0075】
MCU610は、メモリー620に格納されている各種プログラム(例えば、回帰分析プログラム、バッテリー異常類型分類プログラムなど)を実行させ、このようなプログラムを介してバッテリーセルの回帰分析と異常類型分類などのための各種データを処理し、前述した
図2の機能を行うようにするプロセッサであってよい。
【0076】
メモリー620は、バッテリーセルの回帰分析と異常類型分類などに関する各種プログラムを格納することができる。また、メモリー620は、バッテリーセルの測定電圧及び電流データ、電圧推定式によるグラフ、勾配データなどの各種データを格納することができる。
【0077】
このようなメモリー620は、必要に応じて複数設けられてもよい。メモリー620は、揮発性メモリーであってもよく、非揮発性メモリーであってもよい。揮発性メモリーとしてのメモリー620は、RAM、DRAM、SRAMなどが使用されてよい。非揮発性メモリーとしてのメモリー620は、ROM、PROM、EAROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリーなどが使用されてよい。前記列挙したメモリー620の例は単に例示であるだけで、これら例に限定されるものではない。
【0078】
入出力I/F630は、キーボード、マウス、タッチパネルなどの入力装置(未図示)とディスプレイ(未図示)などの出力装置とMCU610との間を連結してデータを送受信できるようにするインターフェースを提供することができる。
【0079】
通信I/F640は、サーバと各種データを送受信できる構成であって、有線又は無線通信を支援できる各種装置であってよい。例えば、通信I/F640を介して別途設けられた外部サーバからバッテリーセルの電圧推定と異常類型診断のためのプログラムや各種データなどを送受信することができる。
【0080】
このように、本発明の一実施形態によるコンピュータープログラムは、メモリー620に記録され、MCU610によって処理されることにより、例えば、
図2に示した各機能ブロックを行うモジュールとして具現されてもよい。
【0081】
以上、本発明の実施形態を構成する全ての構成要素が一つに結合するか、結合されて動作することと説明されたとして、本発明が必ずこのような実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の目的範囲内であれば、その全ての構成要素が一つ以上に選択的に結合されて動作してもよい。
【0082】
また、以上に記載された「含む」、「構成する」又は「有する」などの用語は、特に反対の記載がない限り、当該構成要素が内在し得ることを意味するので、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでよいと解釈されなければならない。技術的や科学的な用語を含む全ての用語は、特に定義されない限り、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者により一般的に理解されるものと同一の意味を有すると解釈されてよい。辞書に定義された用語のように一般的に用いられる用語は、関連技術の文脈上の意味と一致すると解釈されなければならず、本発明で明らかに定義しない限り、理想的や過度に形式的な意味として解釈されない。
【0083】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎないものであって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から外れない範囲で多様な修正及び変形が可能である。したがって、本発明に開示された実施形態は、本発明の技術思想を限定するためではなく、説明するためのものであり、このような実施形態により本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は、以下の特許請求の範囲により解釈されなければならず、それと同等の範囲内の全ての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
【符号の説明】
【0084】
1 バッテリーラック
2 上位制御器
6 ラック
8 セル
10 バッテリーモジュール
12 センサー
13 モジュール
14 スイッチング部
20 バッテリー管理システム
200 バッテリー異常診断装置
210 電圧獲得部
220 分析部
230 診断部
240 通知部
600 バッテリー異常診断装置
610 MCU
620 メモリー
630 入出力I/F
640 通信I/F