(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】携行型時計の計時器用ムーブメントを離れて制御する制御デバイス、及びかかる制御デバイスを備える携行型時計
(51)【国際特許分類】
G04B 3/04 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
G04B3/04 G
G04B3/04 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023036216
(22)【出願日】2023-03-09
【審査請求日】2023-03-09
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513233632
【氏名又は名称】ハリー・ウィンストン・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ベルナト・モンフェレール
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・デノレア
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-189629(JP,A)
【文献】スイス国特許発明第00689570(CH,A5)
【文献】特表2009-531669(JP,A)
【文献】米国特許第08851743(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 3/04,3/00
G04B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携行型時計の計時器用ムーブメント(100)を離れて制御するための制御デバイス(10)であって、
前記制御デバイス(10)は、ユーザーの作用を受けるように意図されている入力制御メンバー(11)を備え、
前記入力制御メンバー(11)は、前記携行型時計の計時器用ムーブメント(100)に作用するように意図されている出力制御メンバー(12)に接続メンバー(13)を介して運動学的に接続され、
前記接続メンバー(13)は、前記計時器用ムーブメント(100)のまわりを回転することができ、かつ、この回転中に前記出力制御メンバー(12)を動かすように意図されており、
前記入力制御メンバー(11)には、係合用輪郭(110)があり、
前記係合用輪郭(110)は、前記接続メンバー(13)の被駆動係合要素(132)と係合して、前記入力制御メンバー(11)が作用を受けたときに前記接続メンバー(13)を回転駆動し、
前記係合用輪郭(110)と前記被駆動係合要素(132)はそれぞれ、相補的なベベルの形を有し、
支持構造を備え、
前記入力制御メンバー(11)は、レバーによって形成され、
このレバーは、その第1の端と第2の端の間にて延在しており、
前記第1の端において前記支持構造に回転可能に取り付けられており、
前記レバーには、第2の端において、係合用輪郭(110)がある
ことを特徴とする制御デバイス(10)。
【請求項2】
支持構造を備え、
前記支持構造とともに前記入力制御メンバー(11)と前記出力制御メンバー(12)が一体的となっており、
前記支持構造は、前記接続メンバー(13)を受ける環状の空欠部を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御デバイス(10)。
【請求項3】
前記接続メンバー(13)は、リングを形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御デバイス(10)。
【請求項4】
携行型時計の計時器用ムーブメント(100)を離れて制御するための制御デバイス(10)であって、
前記制御デバイス(10)は、ユーザーの作用を受けるように意図されている入力制御メンバー(11)を備え、
前記入力制御メンバー(11)は、前記携行型時計の計時器用ムーブメント(100)に作用するように意図されている出力制御メンバー(12)に接続メンバー(13)を介して運動学的に接続され、
前記接続メンバー(13)は、前記計時器用ムーブメント(100)のまわりを回転することができ、かつ、この回転中に前記出力制御メンバー(12)を動かすように意図されており、
前記入力制御メンバー(11)には、係合用輪郭(110)があり、
前記係合用輪郭(110)は、前記接続メンバー(13)の被駆動係合要素(132)と係合して、前記入力制御メンバー(11)が作用を受けたときに前記接続メンバー(13)を回転駆動し、
前記係合用輪郭(110)と前記被駆動係合要素(132)はそれぞれ、相補的なベベルの形を有し、
支持構造を備え、
前記入力制御メンバー(11)は、前記支持構造に対して摺動可能であるように構成しており、前記入力制御メンバー(11)は、回転可能に前記支持構造に取り付けられ、前記接続メンバー(13)と係合する伝達要素と、前記係合用輪郭(110)を介して係合するように設けられ、前記入力制御メンバー(11)が摺動することで前記接続メンバー(13)を回転させる
ことを特徴とする制御デバイス。
【請求項5】
前記出力制御メンバー(12)には、係合用輪郭(120)があり、
この係合用輪郭(120)は、前記接続メンバー(13)が回転すると前記出力制御メンバー(12)が動くように、前記接続メンバー(13)の駆動係合要素(133)と係合するように構成している
ことを特徴とする請求項2に記載の制御デバイス(10)。
【請求項6】
携行型時計の計時器用ムーブメント(100)を離れて制御するための制御デバイス(10)であって、
前記制御デバイス(10)は、ユーザーの作用を受けるように意図されている入力制御メンバー(11)を備え、
前記入力制御メンバー(11)は、前記携行型時計の計時器用ムーブメント(100)に作用するように意図されている出力制御メンバー(12)に接続メンバー(13)を介して運動学的に接続され、
前記接続メンバー(13)は、前記計時器用ムーブメント(100)のまわりを回転することができ、かつ、この回転中に前記出力制御メンバー(12)を動かすように意図されており、
前記入力制御メンバー(11)には、係合用輪郭(110)があり、
前記係合用輪郭(110)は、前記接続メンバー(13)の被駆動係合要素(132)と係合して、前記入力制御メンバー(11)が作用を受けたときに前記接続メンバー(13)を回転駆動し、
前記係合用輪郭(110)と前記被駆動係合要素(132)はそれぞれ、相補的なベベルの形を有し、
支持構造を備え、
前記支持構造とともに前記入力制御メンバー(11)と前記出力制御メンバー(12)が一体的となっており、
前記支持構造は、前記接続メンバー(13)を受ける環状の空欠部を形成し、
前記出力制御メンバー(12)には、係合用輪郭(120)があり、
この係合用輪郭(120)は、前記接続メンバー(13)が回転すると前記出力制御メンバー(12)が動くように、前記接続メンバー(13)の駆動係合要素(133)と係合するように構成し、
前記出力制御メンバー(12)は、第1の端において、回転可能に前記支持構造に取り付けられたレバーによって形成され、
前記レバーには、第2の端において、前記係合用輪郭(120)を構成するベベルがあり、
前記出力制御メンバー(12)は、前記係合用輪郭(120)に対向する内側側面を介して前記計時器用ムーブメント(100)に作用するように意図されている
ことを特徴とする制御デバイス(10)。
【請求項7】
携行型時計の計時器用ムーブメント(100)を離れて制御するための制御デバイス(10)であって、
前記制御デバイス(10)は、ユーザーの作用を受けるように意図されている入力制御メンバー(11)を備え、
前記入力制御メンバー(11)は、前記携行型時計の計時器用ムーブメント(100)に作用するように意図されている出力制御メンバー(12)に接続メンバー(13)を介して運動学的に接続され、
前記接続メンバー(13)は、前記計時器用ムーブメント(100)のまわりを回転することができ、かつ、この回転中に前記出力制御メンバー(12)を動かすように意図されており、
前記入力制御メンバー(11)には、係合用輪郭(110)があり、
前記係合用輪郭(110)は、前記接続メンバー(13)の被駆動係合要素(132)と係合して、前記入力制御メンバー(11)が作用を受けたときに前記接続メンバー(13)を回転駆動し、
前記係合用輪郭(110)と前記被駆動係合要素(132)はそれぞれ、相補的なベベルの形を有し、
支持構造を備え、
前記支持構造とともに前記入力制御メンバー(11)と前記出力制御メンバー(12)が一体的となっており、
前記支持構造は、前記接続メンバー(13)を受ける環状の空欠部を形成し、
前記出力制御メンバー(12)には、係合用輪郭(120)があり、
この係合用輪郭(120)は、前記接続メンバー(13)が回転すると前記出力制御メンバー(12)が動くように、前記接続メンバー(13)の駆動係合要素(133)と係合するように構成し、
前記出力制御メンバー(12)は、ピボットリンクによって一方では前記接続メンバー(13)に、他方では前記支持構造に接続され、
前記出力制御メンバー(12)には、支持アーム(121)があり、
前記支持アーム(121)は、前記入力制御メンバー(11)が作用を受けたときにバランスを止める機能を実行するように、前記計時器用ムーブメント(100)のバランスを支持するように構成するように意図されている
ことを特徴とする制御デバイス(10)。
【請求項8】
携行型時計の計時器用ムーブメント(100)を離れて制御するための制御デバイス(10)であって、
前記制御デバイス(10)は、ユーザーの作用を受けるように意図されている入力制御メンバー(11)を備え、
前記入力制御メンバー(11)は、前記携行型時計の計時器用ムーブメント(100)に作用するように意図されている出力制御メンバー(12)に接続メンバー(13)を介して運動学的に接続され、
前記接続メンバー(13)は、前記計時器用ムーブメント(100)のまわりを回転することができ、かつ、この回転中に前記出力制御メンバー(12)を動かすように意図されており、
前記入力制御メンバー(11)には、係合用輪郭(110)があり、
前記係合用輪郭(110)は、前記接続メンバー(13)の被駆動係合要素(132)と係合して、前記入力制御メンバー(11)が作用を受けたときに前記接続メンバー(13)を回転駆動し、
前記係合用輪郭(110)と前記被駆動係合要素(132)はそれぞれ、相補的なベベルの形を有し、
支持構造を備え、
前記支持構造とともに前記入力制御メンバー(11)と前記出力制御メンバー(12)が一体的となっており、
前記支持構造は、前記接続メンバー(13)を受ける環状の空欠部を形成し、
前記出力制御メンバー(12)には、係合用輪郭(120)があり、
この係合用輪郭(120)は、前記接続メンバー(13)が回転すると前記出力制御メンバー(12)が動くように、前記接続メンバー(13)の駆動係合要素(133)と係合するように構成し、
前記駆動係合要素(133)は、突出部によって構成している
ことを特徴とする制御デバイス(10)。
【請求項9】
携行型時計の計時器用ムーブメント(100)を離れて制御するための制御デバイス(10)であって、
前記制御デバイス(10)は、ユーザーの作用を受けるように意図されている入力制御メンバー(11)を備え、
前記入力制御メンバー(11)は、前記携行型時計の計時器用ムーブメント(100)に作用するように意図されている出力制御メンバー(12)に接続メンバー(13)を介して運動学的に接続され、
前記接続メンバー(13)は、前記計時器用ムーブメント(100)のまわりを回転することができ、かつ、この回転中に前記出力制御メンバー(12)を動かすように意図されており、
前記入力制御メンバー(11)には、係合用輪郭(110)があり、
前記係合用輪郭(110)は、前記接続メンバー(13)の被駆動係合要素(132)と係合して、前記入力制御メンバー(11)が作用を受けたときに前記接続メンバー(13)を回転駆動し、
前記係合用輪郭(110)と前記被駆動係合要素(132)はそれぞれ、相補的なベベルの形を有し、
前記接続メンバー(13)に接続されるばねを備え、
前記ばねは、前記接続メンバー(13)が前記入力制御メンバー(11)と係合することができる休み位置へと前記接続メンバー(13)を動かすように付勢されている
ことを特徴とする制御デバイス(10)。
【請求項10】
携行型時計の計時器用ムーブメント(100)を離れて制御するための制御デバイス(10)であって、
前記制御デバイス(10)は、ユーザーの作用を受けるように意図されている入力制御メンバー(11)を備え、
前記入力制御メンバー(11)は、前記携行型時計の計時器用ムーブメント(100)に作用するように意図されている出力制御メンバー(12)に接続メンバー(13)を介して運動学的に接続され、
前記接続メンバー(13)は、前記計時器用ムーブメント(100)のまわりを回転することができ、かつ、この回転中に前記出力制御メンバー(12)を動かすように意図されており、
前記入力制御メンバー(11)には、係合用輪郭(110)があり、
前記係合用輪郭(110)は、前記接続メンバー(13)の被駆動係合要素(132)と係合して、前記入力制御メンバー(11)が作用を受けたときに前記接続メンバー(13)を回転駆動し、
前記係合用輪郭(110)と前記被駆動係合要素(132)はそれぞれ、相補的なベベルの形を有し、
前記接続メンバー(13)を介して運動学的に互いに接続された第2の入力制御メンバー(11)と第2の出力制御メンバー(12)を備え、
前記第2の入力制御メンバー(11)と前記第2の出力制御メンバー(12)はそれぞれ、被駆動係合メンバー(132)と駆動係合メンバー(133)と係合するように構成しており、
前記入力制御メンバー(11)は、どの入力制御メンバー(11)が作用を受けたかに応じて、前記接続メンバー(13)が異なる回転方向に駆動され、一方又は他方の出力制御メンバー(12)を動かすように構成している
ことを特徴とする制御デバイス(10)。
【請求項11】
前記接続メンバー(13)には、当接体を構成するように構成しているロック要素(134)があり、
前記当接体は、前記入力制御メンバー(11)の一方が何らかの運動をすることを、前記入力制御メンバー(11)の他方が作用を受けたときに、防ぐ
ことを特徴とする請求項10に記載の制御デバイス(10)。
【請求項12】
前記ロック要素(134)は、前記被駆動係合要素(132)を構成するそれぞれ2つのベベル付き半径方向に対する両側面の間に延在している歯によって形成され、
前記歯は、前記半径方向の両側面を互いに接続し、入力制御部材(11)の一方の可動性を、他方が作用を受けた場合に妨げる停止部を構成するように配置された外部側面をさらに備える
ことを特徴とする請求項11に記載の制御デバイス(10)。
【請求項13】
計時器用ムーブメント(100)を備える携行型時計であって、
請求項1に記載の制御デバイス(10)を備える
ことを特徴とする携行型時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器の分野に関し、特に、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)の計時器用ムーブメントを離れて制御する制御デバイス、及びこの制御デバイスを備える携行型時計に関する。
【背景技術】
【0002】
プッシュピース、コレクター(修正器)、リュウズのような制御メンバーが、典型的には計時器用ムーブメントの機構に対向するように、携行型時計のミドル部に配置されて、ユーザーが操作するとその機構をアクチュエートするように意図されている。
【0003】
例として、クロノグラフ、ストライク機構、タイムゾーン変更、日付変更などのための制御メンバーは、それがアクチュエートしようとする計時器用ムーブメントの機構のすぐ近くに配置されることが多い。
【0004】
したがって、計時器用ムーブメントのアーキテクチャーは、ミドル部にある一又は複数の制御メンバーのレイアウトによって決まったり、その逆に計時器用ムーブメントのアーキテクチャーによって制御メンバーのレイアウトが決まったりすることが多い。
【0005】
しかし、場合によっては、アクチュエートしようとする機構から離れた箇所に制御メンバーを配置することも考えられる。例として、携行型時計の開発と製造のコストを減らすために、既存の計時器用ムーブメントと既存のミドル部を備える携行型時計を設計することは、特に興味深い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スイス特許文献CH689570に、この需要を満たすために開発された手法の1つが記載されている。この手法は、アクチュエートされる機構から離れた箇所に制御メンバーを配置するための一組のレバーがある制御デバイスの形態となっている。
【0007】
しかし、この手法には、適用される携行型時計ケースの寸法を著しく大きくしてしまうという課題がある。また、この手法によっては、アクチュエートしようとする機構から制御メンバーを制約を受けつつオフセットすることしか可能にならない。
【0008】
既存の手法の別の課題として、その設計が、特に、ミドル部の寸法と形状に応じて、そして、制御メンバーとそれがアクチュエートしようとする機構との間の距離に応じて、各状況に高いレベルで適応しなければならないということがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、制御メンバーが、計時器用ムーブメントの機構を、互いに対する位置の制約を受けずに、アクチュエートすることを可能にする、計時器用ムーブメントを離れて制御するための制御デバイスを提供することによって、上述の課題を解決する。
【0010】
特に、本発明のおかげで、制御メンバーが、アクチュエートされる計時器用ムーブメントの機構と、互いに対するそれぞれの位置にかかわらず、かつ、ミドル部の寸法と形状にかかわらず、運動学的に接続することが可能になる。
【0011】
このために、本発明は、携行型時計の計時器用ムーブメントを離間して制御するための制御デバイスに関し、前記制御デバイスは、ユーザーによって作用を受けるように意図されている入力制御メンバーを備え、前記入力制御メンバーは、前記携行型時計の計時器用ムーブメントに作用するように意図されている出力制御メンバーに接続メンバーを介して運動学的に接続される。前記接続メンバーは、前記計時器用ムーブメントのまわりを回転することができ、かつ、前記入力制御メンバーが作用を受けたときに前記入力制御メンバーが前記接続メンバーを回転駆動し、この回転中に前記出力制御メンバーを動かすように構成している。
【0012】
特定の実施形態において、本発明は、さらに、単独で又は技術的に可能な任意の組み合わせに従って考えるべきである、以下の特徴の1つ又は複数を有することができる。
【0013】
特定の実施形態において、前記制御デバイスは、支持構造を備え、前記支持構造とともに前記入力制御メンバーと前記出力制御メンバーが一体的となっており、前記支持構造は、前記接続メンバーを受ける環状の空欠部を形成する。
【0014】
特定の実施形態において、前記接続メンバーは、リングを形成する。
【0015】
特定の実施形態において、前記入力制御メンバーには、係合用輪郭があり、この係合用輪郭は、前記入力制御メンバーが作用を受けたときに前記接続メンバーを回転駆動するように、前記接続メンバーの被駆動係合要素と係合するように構成している。
【0016】
特定の実施形態において、前記係合用輪郭と前記被駆動係合要素はそれぞれ、相補的なベベルの形を有する。
【0017】
特定の実施形態において、前記入力制御メンバーは、レバーによって形成され、このレバーは、その第1の端と第2の端の間にて延在しており、前記第1の端において前記支持構造に回転可能に取り付けられており、前記レバーには、第2の端において、係合用輪郭がある。
【0018】
特定の実施形態において、前記入力制御メンバーは、前記支持構造に対して摺動可能であるように構成しており、前記入力制御メンバーは、前記入力制御メンバーが摺動することによって前記接続メンバーを回転させるように、前記係合用輪郭を介して回転可能に前記支持構造に取り付けられ前記接続メンバーと係合する伝達要素と係合する。
【0019】
特定の実施形態において、前記出力制御メンバーには、係合用輪郭があり、この係合用輪郭は、前記接続メンバーが回転すると前記出力制御メンバーが動くように、前記接続メンバーの駆動係合要素と係合するように構成している。
【0020】
特定の実施形態において、前記出力制御メンバーは、第1の端において、回転可能に前記支持構造に取り付けられたレバーによって形成され、前記レバーには、第2の端において、前記係合用輪郭を構成するベベルがあり、前記出力制御メンバーは、前記係合用輪郭に対向する内側フランクを介して前記計時器用ムーブメントに作用するように意図されている。
【0021】
特定の実施形態において、前記出力制御メンバーは、ピボットリンクによって、一方では前記接続メンバーに、他方では前記支持構造に接続され、前記出力制御メンバーには、支持アームがあり、前記支持アームは、前記入力制御メンバーが作用を受けたときにバランスを止める機能を実行するように、前記計時器用ムーブメントのバランスを支持するように構成するように意図されている。
【0022】
特定の実施形態において、前記駆動係合要素は、キャッチによって構成している。
【0023】
特定の実施形態において、前記制御デバイスは、前記接続メンバーに接続されるばねを備え、前記ばねは、前記接続メンバーが前記入力制御メンバーと係合することができる休み位置へと前記接続メンバーを動かすように付勢されている。
【0024】
特定の実施形態において、前記制御デバイスは、前記接続メンバーを介して運動学的に互いに接続された第2の入力制御メンバーと第2の出力制御メンバーを備え、前記第2の入力制御メンバーと前記第2の出力制御メンバーはそれぞれ、被駆動係合メンバーと駆動係合メンバーと係合するように構成しており、前記入力制御メンバーは、どの入力制御メンバーが作用を受けたかに応じて、前記接続メンバーが異なる回転方向に駆動され、一方又は他方の出力制御メンバーを動かすように構成している。
【0025】
特定の実施形態において、前記接続メンバーには、当接体を構成するように構成しているロック要素があり、前記当接体は、前記入力制御メンバーの一方が何らかの運動をすることを、前記入力制御メンバーの他方が作用を受けたときに、防ぐ。
【0026】
特定の実施形態において、前記ロック要素は、2つのベベル付き半径方向フランクの間に延在している歯によって形成され、前記半径方向フランクはそれぞれ、被駆動係合要素を構成しており、前記歯には、さらに、前記半径方向フランクどうしを接続する外側フランクがあり、前記歯は、前記入力制御メンバーの一方が何らかの運動をすることを、他方が作用を受けたときに、防ぐ当接体を構成するように構成している。
【0027】
別の態様において、本発明は、計時器用ムーブメント及び前記制御デバイスを備える携行型時計に関する。
【0028】
添付の図面を参照しながら例として与えられる下記の詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の好ましい実施例に係る、携行型時計の計時器用ムーブメントを離れて制御するための制御デバイスの正面図を概略的に示している。
【
図2】
図1の制御デバイスにおいて上側の入力制御メンバーが作用した様子を概略的に示している。
【
図3】
図1の制御デバイスにおいて下側の入力制御メンバーが作用した様子を概略的に示している。
【
図4】本発明に係る制御デバイスの別の実施例を示している図である。
【
図5】
図4の制御デバイスにおいて制御メンバーが作用した様子を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、
図1~5に示しているように、携行型時計の計時器用ムーブメント100を離れて制御するための制御デバイス10に関する。なお、図面において、計時器用ムーブメント100を破線で示しており、携行型時計の一部のみを示している。
【0031】
制御デバイス10には、ユーザーの作用を受ける少なくとも1つの入力制御メンバー11がある。
【0032】
図1~5に示しているように、入力制御メンバー11は、接続メンバー13を介して、前記携行型時計の計時器用ムーブメント100に作用するように意図されている出力制御メンバー12に運動学的に接続されている。
【0033】
図1~3に示している実施例において、制御デバイス10は、2つの入力制御メンバー11と2つの出力制御メンバー12を備え、その各入力制御メンバー11は、1つの出力制御メンバー12に運動学的に接続されている。
【0034】
代わりに、
図4及び5に示している実施例においては、制御デバイス10は、単一の入力制御メンバー11と単一の出力制御メンバー12を備える。
【0035】
以下において、読みやすくするために、基本的には、単一の入力制御メンバー11と単一の出力制御メンバー12があるものとして、本発明について説明する。
【0036】
図1~3に示しているように、出力制御メンバー12は、計時器用ムーブメント100の機能を実行するために、コレクター、プッシュピース、レバー、ヨーク、車のような計時器用ムーブメント100のアクチュエーター101を介して、計時器用ムーブメント100の計時器用コンポーネントと係合するように意図されていることができる。
【0037】
図4及び5に示している本発明の実施例において、出力制御メンバー12は、バランス102のような、計時器用ムーブメント100の計時器用コンポーネントと直接係合するように意図されている。したがって、このような機能は、「ストップセコンド」や「ストップバランス」とも呼ばれるバランスを止める機能である。
【0038】
本発明の別の実施形態において、このような機能は、クロノグラフ、日付修正、月相修正、ツールビロンキャリッジ、カルーセルを止める機能などの機能であることができる。
【0039】
したがって、出力制御メンバー12は、
図1~5に示しているように、計時器用ムーブメント100と接続メンバー13の間にあるように意図されている。
【0040】
接続メンバー13は、支持構造において、例えば、携行型時計ケースのミドル部(図示せず)において、計時器用ムーブメント100のまわりを回転することができるように構成しているように意図されている。特に、支持構造は、接続メンバー13を受けるように意図された、溝のような環状の空欠部を形成する。
【0041】
接続メンバー13は、好ましくは、閉じたリングを形成する。しかし、本発明の他の代替的実施形態において、接続メンバー13は、特定の角度的区画にわたって延在している開いたリングを形成することができる。この角度的区画は、入力制御メンバー11と出力制御メンバー12の間の角距離に依存する。
【0042】
好ましいことに、接続メンバー13は、入力制御メンバー11が作用を受けたときに入力制御メンバー11によって回転駆動され、この回転中に出力制御メンバー12を動かすように構成している。
【0043】
接続メンバー13は、内周壁130と外周壁131の間に形成され、出力制御メンバー12は、接続メンバー13において、内周壁130に配置される。
図1~5に示しているように、入力制御メンバー11の全部又は一部が、接続メンバー13の外側に配置される。
【0044】
入力制御メンバー11と出力制御メンバー12は、支持構造と一体的となっている。
【0045】
特に、
図1に示している実施例において、入力制御メンバー11は、回転することができるように第1の端において支持構造に取り付けられるレバーによって形成され、前記レバーには、第2の端において、係合用輪郭110がある。
【0046】
入力制御メンバー11の係合用輪郭110は、ベベル状であり、接続メンバー13の被駆動係合要素132と直接係合して、入力制御メンバー11が作用したときに接続メンバー13が回転するように接続メンバー13を駆動するように構成している。
【0047】
特に、
図2又は
図3に示しているように、入力制御メンバー11の運動中に、入力制御メンバー11がユーザーの作用を受けると、その係合用輪郭110は、接続メンバー13の被駆動係合要素132に圧力を与えて、前記接続メンバー13を回転させる。
【0048】
接続メンバー13の被駆動係合要素132は、入力制御メンバー11のベベル形状に対して相補的な形状であるベベルによって構成している。
【0049】
また、出力制御メンバー12には、さらに、係合用輪郭120があり、この係合用輪郭120は、接続メンバー13と、特にその駆動係合要素133と、係合して、前記接続メンバー13が回転すると前記出力制御メンバー12が動くように構成している。
【0050】
特に、
図1~3に示しているように、出力制御メンバー12の係合用輪郭120は、ベベル状である。
【0051】
図1~3に示している実施例において、出力制御メンバー12は、回転することができるように第1の端において支持構造に取り付けられたレバーによって形成され、前記レバーには、第2の端において、係合用輪郭120がある。好ましいことに、出力制御メンバー12は、係合用輪郭120に対向する内側フランクを介して、計時器用ムーブメント100に作用するように意図されている。
【0052】
また、
図1~3に示している本発明の実施例において、駆動係合要素133は、例えば接続メンバー13内に入れ込まれたピンによって形成される、キャッチによって構成している。
【0053】
図示していない本発明の他の代替的実施形態において、被駆動係合要素132と駆動係合要素133は、接続メンバー13の内周壁130及び/又は外周壁131に形成される空欠部によって、又は接続メンバー13から延在しているキャッチ、ベベル又は他の突出部によって形成されることができる。当然、ここで検討している被駆動係合要素132又は駆動係合要素133の代替的実施形態に応じて、入力制御メンバー11又は出力制御メンバー12はそれぞれ、接続メンバー13が延在している平面に平行である又は一致する平面内に配置される。
【0054】
好ましいことに、制御デバイス10は、接続メンバー13に接続されたばね(図示せず)を備え、このばねは、接続メンバー13を休み位置に動かすように付勢され、この休み位置において、接続メンバー13は入力制御メンバー11と係合することができる。用語「ばね」は、弾性変形を行うことができる任意のコンポーネントを意味すると理解することができる。
【0055】
特に、
図1に示しているように、接続メンバー13が休み位置にあるときに、入力制御メンバー11も休み位置にあり、すなわち、ユーザーの作用を受けておらず、動かされておらず、これによって、出力制御メンバー12も休み位置にある。
【0056】
入力制御メンバー11は、自身を休み位置に保持するために、好ましいことに、ばね111によって応力を受けることができ、このばね111は、例えば、前記入力制御メンバー11の第1の端から延在しており支持構造に当接するように構成している弾性細長材によって構成している。
【0057】
図1~3に示している実施例において、入力制御メンバー11は、どの入力制御メンバー11が作用を受けているかに応じて、接続メンバー13が異なる回転方向に駆動され、一方又は他方の出力制御メンバー12をそれぞれ
図2及び3に示しているように動かすように構成している。
【0058】
図1~3に示しているように、2つの入力制御メンバー11は、上にて入力制御メンバー11について説明した通りであり、好ましくは、それと同じである。また、入力制御メンバー11は、好ましくは、接続メンバー13の1つの直径平面に対して互いに対称に配置される。
【0059】
同様に、
図1~3に示しているように、2つの出力制御メンバー12は、上にて出力制御メンバー12について説明した通りであり、好ましくは、それと同じである。また、出力制御メンバー12は、好ましくは、接続メンバー13の1つの直径平面に対して互いに対称に配置される。
【0060】
図1~3に示している本発明の実施例において、接続メンバー13には、2つの駆動係合要素133と2つの被駆動係合要素132があり、駆動係合要素133はそれぞれ、入力制御メンバー11のうちの1つと係合するように意図されており、被駆動係合要素132はそれぞれ、出力制御メンバー12のうちの1つと係合するように意図されている。
【0061】
本発明の実施例において、
図1~3に示しているように、接続メンバー13には、好ましくは、さらに、ロック要素134があり、このロック要素134は、入力制御メンバー11の一方が、入力制御メンバー11の他方が作用を受けたときに、いずれの運動をすることをも防ぐ、当接体を構成するように構成している。
【0062】
特に、ロック要素134は、好ましいことに、2つのベベル付き半径方向フランクの間に延在している歯によって形成することができ、これらの半径方向フランクはそれぞれ、入力制御メンバー11のうちの1つと係合するように意図された被駆動係合要素132を構成している。この歯には、さらに、半径方向フランクを互いに接続する外側フランクとは反対側に内側フランクがある。外側フランクは、内側フランクと同様に曲がった形であり、
図2及び3に示しているように、入力制御メンバー11の一方が、入力制御メンバー11の他方が作用を受けたときに、いずれの運動をすることをも防ぐ当接体を構成する。
【0063】
図1~3に示しているように、ベベル付き半径方向フランクが被駆動係合要素132を構成していることによって、外側フランクは、内側フランクが延在している角度的区画よりも小さい角度的区画にわたって延在している。
【0064】
図4及び5に示している本発明の実施例において、入力制御メンバー11は、支持構造に対して摺動可能なように構成している、ステム、特にセッティングステム、によって形成される。
図4及び5に示しているように、入力制御メンバー11は、接続メンバー13を貫通するように延在し、内側部分を介して内周壁130から、また、外側部分を介して外周壁131から出現するように構成している。
【0065】
入力制御メンバー11は、その外側部分からその縦方向軸に沿ってユーザーが加える引張力の作用を受けるように意図されており、内側部分から伝達要素を介して、接続メンバー13の被駆動係合要素132と係合するように構成している。
【0066】
特に、入力制御メンバー11は、係合用輪郭110を介して、伝達ヨーク14と係合するように構成している。伝達ヨーク14は、回転可能なように支持構造に取り付けられ、前記入力制御メンバー11の摺動によって前記伝達ヨーク14が回転して、このことによって接続メンバー13が回転するように、接続メンバー13と係合する。
【0067】
好ましくは、係合用輪郭110は、半径方向の溝の形態であり、伝達ヨーク14の第1の端が、フィンガーの形態で、この溝と係合する。また、被駆動係合要素132は、ピボット接続にて、伝達ヨーク14の第2の端と係合する。
【0068】
図4及び5に示している実施例において、出力制御メンバー12には、さらに、係合用輪郭120があり、この係合用輪郭120は、前記接続メンバー13が回転すると前記出力制御メンバー12が動くように接続メンバー13の駆動係合要素133と係合する。
【0069】
出力制御メンバー12は、本発明のこの実施例において、回転することができるように、一方では支持構造に、他方では接続メンバー13に、取り付けられるレバーによって形成される。
【0070】
特に、
図4及び5に示しているように、係合用輪郭120と駆動係合要素133は、どちらがピンでどちらがボアであるかを問わず、ピンとボアによって形成されることができる。出力制御メンバー12と支持構造の間のピボットリンクは、好ましいことに、同様に作ることができる。
【0071】
図5に示しているように、本発明のこの実施例において、出力制御メンバー12には、支持アーム121があり、この支持アーム121は、入力制御メンバー11が作用を受けたときにバランスを止める機能を実行するように、計時器用ムーブメント100のバランスを支持するように構成するように意図されている。
【0072】
一般的に、上で考察した実装例及び実施形態は、例として記載しており、したがって、他の代替形態も可能である。
【0073】
特に、入力制御メンバー11及び/又は出力制御メンバー12は、ここではヨークによって形成されるが、プルアウトピース、プッシュボタン、リュウズ、車のような任意のタイプの制御によって形成されることができる。
【0074】
また、係合用輪郭110及び120はそれぞれ、被駆動係合要素132と駆動係合要素133と噛み合う歯付き部分によって形成されることができる。
【符号の説明】
【0075】
10 制御デバイス
11 入力制御メンバー
12 出力制御メンバー
13 接続メンバー
14 伝達ヨーク
100 計時器用ムーブメント
101 アクチュエーター
110、120 係合用輪郭
111 ばね
121 支持アーム
130 内周壁
131 外周壁
132 被駆動係合要素
133 駆動係合要素
134 ロック要素