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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】ジルコニア用オペーク性付与液
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/84 20200101AFI20240830BHJP
   A61C 13/08 20060101ALI20240830BHJP
   A61K 6/842 20200101ALI20240830BHJP
   A61K 6/80 20200101ALI20240830BHJP
   A61C 5/73 20170101ALN20240830BHJP
【FI】
A61K6/84
A61C13/08
A61K6/842
A61K6/80
A61C5/73
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023109673
(22)【出願日】2023-07-03
(62)【分割の表示】P 2019049270の分割
【原出願日】2019-03-18
(65)【公開番号】P2023126879
(43)【公開日】2023-09-12
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2018066937
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390011143
【氏名又は名称】株式会社松風
(74)【代理人】
【識別番号】100173657
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬沼 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】北村 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 周平
【審査官】池田 百合香
(56)【参考文献】
【文献】特許第7309395(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00 ~ 33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科切削加工用ジルコニアから切削加工された補綴装置に用いるオペーク性付与液であって、
(a)水溶性アルミニウム化合物及び/又は水溶性ランタン化合物:10~39wt%
(b)水:60~89wt%
(c)有機溶媒:1~20wt%
を含み、
(c)有機溶媒がエタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、1,4ジオキサン及びポリプロピレングリコールから選択される1以上であることを特徴とするオペーク性付与液。
【請求項2】
(a)水溶性アルミニウム化合物及び/又は水溶性ランタン化合物が酢酸アルミニウム、酢酸ランタンを含むことを特徴とする請求項1に記載のオペーク性付与液。
【請求項3】
歯科切削加工用ジルコニアが鉄、エルビウム及び/又はコバルトが固溶したジルコニア粉末で着色されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のオペーク性付与液。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のオペーク性付与液を歯科切削加工用ジルコニアから切削加工された補綴装置の内面のみに塗布することを特徴とするオペーク性付与方法。
【請求項5】
歯科切削加工用ジルコニアから切削加工された補綴装置がクラウン又はブリッジであることを特徴する請求項4に記載のオペーク性付与方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科分野においてCAD/CAMシステムを用いて歯科切削加工用ジルコニアから切削加工された補綴装置に塗布することにより、焼結後のジルコニアセラミックス補綴装置にオペーク性を発現させるための、オペーク性付与液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、歯冠欠損部の歯科治療においては一般に鋳造クラウンブリッジや義歯による補綴修復が行われてきている。具体的には陶材焼付用の鋳造用合金で作製した金属フレーム表面に陶材を焼付けて、歯冠形態を再現させた機能性と審美性を兼備した陶材焼付クラウン・ブリッジの臨床応用が挙げられる。
また、金属アレルギーの発症や貴金属の相場に左右される価格高騰等の観点から、また天然歯の色調に模倣することができる審美性の観点から、アルミナ、アルミノシリケートガラス、二ケイ酸リチウムガラス等を用いたディッピング法やセラミックスインゴットを用いたプレス法などの技法により作製された補綴装置、いわゆるオールセラミックスが注目されてきており、それを用いた補綴修復も増加してきている。
【0003】
近年、歯科用CAD/CAMシステムを用いた切削加工により補綴装置を作製する技術が急速に普及してきている。これによりジルコニア、アルミナ、アルミノシリケートガラス、二ケイ酸リチウムガラスで製造されたブロックやディスクなどのブランク材を切削加工して、容易に補綴装置を作製することが可能となってきている。また高強度セラミックスとしてジルコニアが臨床で多用されてきているが、ジルコニアブランクの切削性を向上させるために、完全焼結まで行わず、低い焼成温度で仮焼して切削加工に有利な強度や硬さに調整したジルコニアブランク(予備焼結体)が一般に用いられてきている。
このジルコニアブランクは4ユニット以上のブリッジフレームに用いられる曲げ強さを有することから、3mol%イットリウム含有の正方晶部分安定化ジルコニアブランクが実用化されている。この3モル%イットリウム含有ジルコニアブランクには、焼結性の向上と低温劣化の抑制のためアルミナを微量添加させている。また、臼歯フルクラウンに適用可能な光透過性を高めるために、極微量のアルミナを含有したジルコニアブランクも臨床で用いられている。更に安定化材として添加しているイットリウムの含有量を5~6mol%に増量させて、前歯のフルクラウンにも使用できるように光透過性を高く設計したジルコニアブランクも使用されてきている。
【0004】
ジルコニアには大きく分けて色調が白色のジルコニアと、天然歯の色調に近い色に調色された着色ジルコニアの二種類がある。天然歯の色調は歯のエナメルにあたる切端部から歯頸部に向かって色が濃く変化しており、いわゆる彩度が増加している状態にある。
そのため、ジルコニアブランクから切削加工された天然歯の切端部と歯頸部の色調に再現できるように、切端部のエナメル色と歯頸部色に対応した異なる色調のジルコニア粉末を段階的に層状に重ね合わせて、色のグラデーションをつけた多層構造からなる歯科切削加工用ジルコニアブランクを成形する技術も用いられるようになってきた。
【0005】
この多層構造からなる歯科切削加工用ジルコニアブランクは、色調、光透過性等が異なる層が様々な厚みで重ね合わさっているのが特徴である。
しかし、イットリウム含有量が5mol%以上のジルコニアブランクは透明性は向上するものの、強度が低下するという問題があり、4本ブリッジを越える症例に使用した場合、破切するなどの問題を抱えていた。
この一方で、3~4mol%のイットリウム含有量のジルコニアブランクは十分な透明性が得られないため、歯のエナメル部に相当する透明性を再現するのは困難であり、エナメル質に陶材と呼ばれるガラスを築盛する必要があった。しかし、この工程は非常に煩雑な工程であるとともに、技工士のテクニックを必要とするものであった。
一方、強度を向上させる目的で3mol%のイットリウム含有量のジルコニアにアルミナを0.2~2wt%含有させることにより焼結性を向上させる試みがされてきた。しかし、アルミナを含有するジルコニアには十分な透明性が得られないという問題があった。
【0006】
上記のように歯科用ジルコニア材料を天然歯の透明感に近づけるような改善はこれまで試みられてきた。しかし、歯科で使用される支台歯と呼ばれる部分にはメタル支台、変色歯、などがあり、透明なジルコニアの場合、支台歯の色調の影響を受けやすいという問題があった。不透明なジルコニアを用いた場合、支台歯の影響が少なくなるが、エナメル層の透明性が十分ではないという問題を抱えていた。したがって、支台歯の部分のみわずかに不透明にできるオペーク機能を持つものが必要であった。
一方、セミシンタージルコニアに着色材として支台歯を模倣して色をつける方法もある。この方法の中にはチタンの水溶性溶液を塗布してオペーク効果を持たせるものもあったが、チタンはジルコニアの焼結時に白濁を起こし、物性を低下させるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2016-500955
【0008】
特許文献1には、ジルコニアの予備焼結体に着色材を塗布し、歯の色調に近いものを作製する方法が開示されている。この方法によるとジルコニアの表面に着色することにより透明性の改善はできるが、同時に着色材になっているため、不透明性を調整するために濃い調整をすることができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述した先行技術は、着色効果を有するものの、透明性を調整したい部分のみ不透明にすることができなかった。本発明が解決しようとする課題は透明性の高いジルコニアクラウンの一部に塗布し、着色することなく、透明性のみを調整することができる液材を提供することにある。また、この液材の塗布により焼結後のジルコニアクラウンの強度低下のないものを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、歯科切削加工用ジルコニアから切削加工された補綴装置に用いるオペーク性付与液であって、
(a)水溶性アルミニウム化合物及び/又は水溶性ランタン化合物:10~39wt%
(b)水:60~89wt%
(c)有機溶媒:1~20wt%
を含むことを特徴とするオペーク性付与液である。
【0011】
本発明のオペーク性付与液は、(c)有機溶媒がアルコール類、ポリオール類、グリコールエーテル類のいずれかを含むことが好ましい。本発明のオペーク性付与液は、(c)有機溶媒がアルコール類、ポリオール類、グリコールエーテル類のいずれかであることが好ましい。
本発明のオペーク性付与液は(a)水溶性アルミニウム化合物及び/又は水溶性ランタン化合物が酢酸アルミニウム、酢酸ランタンを含むことが好ましい。本発明のオペーク性付与液は(a)水溶性アルミニウム化合物及び/又は水溶性ランタン化合物が酢酸アルミニウム又は酢酸ランタンであることが好ましい。
本発明のオペーク性付与液は歯科切削加工用ジルコニアが鉄、エルビウム、コバルトなどが固溶したジルコニア粉末で着色されていることが好ましい。
本発明は、本発明のオペーク性付与液を歯科切削加工用ジルコニアから切削加工された補綴装置の内面のみに塗布することを特徴とするオペーク性付与方法である。
本発明のオペーク性付与方法は、歯科切削加工用ジルコニアから切削加工された補綴装置がクラウン又はブリッジであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のオペーク性付与液を歯科切削用ジルコニアから切削加工された補綴装置に塗布することにより、着色することなく、補綴装置の部分的オペーク性を付与することができる。
【0013】
更に予め着色されたジルコニアの予備焼結体に塗布することにより、着色液を使用することなく、塗布した部分のみオペーク性を付与することができ、塗布量を調整することにより変色歯に対して隠蔽効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の構成要件について具体的に説明する。
本発明のオペーク性付与液に含まれる(a)成分:水溶性アルミニウム化合物及び/又は水溶性ランタン化合物の水溶性アルミニウム化合物は水に溶解するものであれば、溶解度の程度に関係なくいずれのアルミニウム化合物でも用いることができる。その中でも乳酸塩、エチレンジアミン四酢酸アルミニウム、酸化酒石酸アルミニウム水和物、クエン酸アルミニウムナトリウム、クエン酸アルミニウムカリウム、塩化酸化アルミニウム、クエン酸アルミニウム、オキシ酢酸アルミニウム、オキシ過塩素酸アルミニウム、オキシサリチル酸アルミニウム、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、水酸化アルミニウム、オキシ炭酸二アルミニウム、オキシ硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウムなどが挙げられ、エチレンジアミン四酢酸塩が特に好ましい。これらの水溶性アルミニウム化合物は単独だけでなく、複数を組み合わせて用いることができる。
【0015】
また、水溶性ランタン化合物は水に溶解するものであれば、溶解度の程度に関係なくいずれのランタン化合物でも用いることができる。塩化ランタン、硝酸ランタン、硫酸ランタン、酢酸ランタンなどが好ましく、さらに塩化ランタン、酢酸ランタンが特に好ましい。
【0016】
また本発明のオペーク性付与液に含まれる水溶性アルミニウム化合物、水溶性ランタン化合物の含有量は10wt%~39wt%の範囲であることが必須であり、より好ましくは20wt%~30wt%の範囲で含まれていることである。オペーク性付与液に含まれている水溶性アルミニウム化合物の含有量が10wt%未満である場合、補綴装置にオペーク性付与液を塗布してもオペーク性が付与されない。一方、39wt%を超えると水への溶解性が著しく悪くなるため、均一なオペーク性付与液を調製することができない。
【0017】
本発明のオペーク性付与液に含まれている(b)水は、水溶性アルミニウム化合物、水溶性ランタン化合物を溶解もしくは分散させるために必要であり、特に溶解させることに有利になる。
本発明のオペーク性付与液に含まれている水は特に限定されないが、イオン交換水、日本薬局方精製水および日本薬局方蒸留水等を用いることできる。本発明のオペーク性付与液に含まれている水の含有量は特に制限はないものの、60~89wt%の範囲が好ましく、より好ましくは65~79wt%の範囲である。含有量が少ない場合は(a) 水溶性アルミニウム化合物及び/又は水溶性ランタン化合物の溶解性が悪くなり、配合量が多い場合はオペーク性付与の効果が少なくなる。
【0018】
本発明のオペーク性付与液に含まれている(c)有機溶媒は(b)水と相溶するものを適時選択して用いることができる。この有機溶媒は増粘剤として粘度を調製し、かつジルコニアの焼結時に有機物としての残渣が残らないものが好ましい。この有機溶媒を具体的に例示するとメタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、アセトン、1.4ジオキサン、ポリプロピレングリコール等が挙げられ、その中でもポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールが好ましい。また、本発明のオペーク性付与液に含まれている有機溶媒の含有量は1~20wt%であれば特に制限はなく、1~5wt%であることが好ましい。有機溶媒の含有量が0.1wt%未満の場合は塗布性が悪くなる。20wt%以上の場合は液の浸透性が悪くなる。
【0019】
また、本発明のオペーク性付与液に有機染料をベースとする有機マーカーを含有してもよい。これはオペーク性付与液を歯科切削加工用ジルコニアから切削加工により作製した補綴装置に適用した場合において、その適用した領域を視覚化することができ、また適用したオペーク性付与液の量やその浸透度合いも視覚化することができる。有機染料は無機物を含まないことが求められる。有機染料として具体的に例示するとクチナキ黄色素、アナトー色素、赤キャベツ色素等が挙げられ、その中でも赤キャベツ、クチナキ黄色素が好ましい。
【0020】
本発明のオペーク性付与液は、多孔質である予備焼結された歯科切削加工用ジルコニアを切削加工することにより、補綴装置(半焼結体)を作製し、その補綴装置に本発明のオペーク性付与液を適用後に完全焼結して色調の彩度や透明性の向上をもたらせるものである。そのため本発明のオペーク性付与液は、予備焼結体である補綴装置に浸透して、その後の完全焼結により補綴装置のオペーク性を付与することができる。かかる効果を確実に発揮するためにはためには、補綴装置を切削加工により作製する歯科切削加工用ジルコニアは、その相対密度や比表面積、そして組成等を調整することが好ましい。。
そのため補綴装置を切削加工により作製する歯科切削加工用ジルコニアの相対密度(完全焼結体の密度を100%としたとき半焼結体の見かけ上の密度を相対密度と定義)は45~60%であることが好ましい。相対密度が45%未満ではCAD/CAM加工機による加工性が悪くなる場合がある。一方、相対密度が60%を越える場合は、塗布したオペーク性付与液が浸透しにくいという問題がある場合がある。また予備焼結体が多孔質であるという観点から歯科切削加工用ジルコニアブランクの比表面積は10~200cm2/gの範囲であることが好ましい。比表面積が10cm2/g未満であるとオペーク性付与液の浸透が十分でない場合があり、一方比表面積が200cm2/gを越えるとCAD/CAM加工機による切削性悪くなる場合がある。
【0021】
また、本発明のオペーク性付与液を適用する補綴装置を作製するための歯科切削加工用ジルコニアに安定化材として、イットリウム及び/または、エルビウムを含んでいることが好ましい態様であり、これは本発明のオペーク性付与液を適用する補綴装置の歯科切削用ジルコニアが安定化材を含むものがより審美的である。歯科切削加工用ジルコニア中にこれらの安定化材が含まれているモル濃度は4mol%以上であることが好ましい。本発明品は透明性の高いジルコニアに用いることが好ましい。
【0022】
本発明のオペーク性付与液を適用する補綴装置を作製するための歯科切削加工用ジルコニアは着色されたジルコニア粉末を用いて製造したものが好ましく、具体的には上記エルビウム安定化材入りのジルコニア粉末(赤色)や鉄を含有した黄色のジルコニア粉末等が挙げられる。また、これらの着色ジルコニア粉末に加えて色調調整のためにコバルト(グレー)、マンガン(赤色)、クロム(黄色)などの元素を含有した着色ジルコニア粉末を併用しても何等問題はない。
【0023】
本発明のオペーク性付与液を適用する補綴装置の種類は特に制限はなく、インレー、ラミネート、クラウン、ブリッジ等のいずれの補綴装置でも何等問題はない。そのため補綴装置を切削加工により作製する歯科切削加工用ジルコニアの形状も特に制限はなく、インレー、ラミネート、クラウン等に対応したブロック形状やブリッジに対応したディスク形状など、いずれの形状の歯科切削加工用ジルコニアでも用いることができる。また、本発明のオペーク性付与液を適用することにより、より審美的な補綴装置を得るためには多層構造のブロック形状やディスク形状の歯科切削加工用ジルコニアを用いることがより好ましい態様である。
【0024】
また、本発明のオペーク性付与液は全ての成分を混合して製造する。流動性がある状態の液体状であれば好ましい。オペーク性付与液はいずれの状態であっても何等制限は無く、例えば均一にすべての成分が相溶している状態、複数層に分離している状態、ある特定の成分が分離して沈降している状態等が挙げられるが、使用前に振る等の操作により全体が均一な状態になるのであれば特に問題はない。その中でも本発明のオペーク性付与液を補綴装置に塗布後に本発明のオペーク性付与液が浸透するという観点からすべての成分が相溶しており、流動性がある低粘性の液体状であることが好ましい。本発明のオペーク性付与液は、例えば、歯科切削加工用ジルコニアから切削加工された補綴装置の内面のみに塗布することで、
着色液を使用することなく、透明性のみを調整することがで、塗布した部分のみオペーク性を付与することができる。
【0025】
以下、実施例により本発明をより詳細に、且つ具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
ジルコニアオペーク性付与液として下記実施例及び比較例に示す成分を含むオペーク性付与液を用意した。調合は各種試薬を溶媒にて1時間混合した。オペーク性を付与するジルコニアディスクとしては松風製「松風ディスクZR ルーセントFA スーパーライト色」を用いて10mm×10mm×1mmのセミシンタージルコニア片を切り出した。その後、実施例及び比較例記載のオペーク性付与液を筆にて塗布した。取扱説明書記載の方法にて焼結を行った。また、オペーク性に関してはオペーク材を塗布しないものの可視光透過率を100として計算した。塗布性に関してはまた、オペーク性付与液の塗布性をA、B、Cで評価した。塗布性は筆により塗れるものをAとし、やや粘性が低く、塗布しにくいものをB、筆にまとわりつかず塗布しにくいものをCとした。
曲げ試験体の測定にあたっては、歯科切削加工用ジルコニアとして「松風ディスクZR ルーセントFA スーパーライト色」(イットリア安定化材5mol%)を利用して、幅4.8、厚み1.6mm、長さ20mmの試験体を切削加工して作製した。これを用いて各種実施例及び比較例に記載のオペーク性付与液を片側にだけ塗布した。その後、80℃で1時間十分に乾燥を行った。さらに説明書記載の方法に従い最終係留温度1450℃で2時間の係留を行い焼結した。その試験体をオペーク塗布液面に引張応力がかかるように、3点曲げ試験を行った。なお、試験方法はISO6872-2015に準拠した。
なお、比較例1はオペーク性付与液を未使用で測定を行った。

【0027】
【表1】

【0028】
(実施例の考察)
実施例1~14は比較例1に比べてオペーク効果が十分出ている。70以下のオペーク効果があれば塗布効果があると臨床的に有用である。一方、比較例2は構成成分(a)の量が少なく、オペーク効果が少ない。また、比較例3はオペーク効果があるものの、曲げ強度の低下が著しい。比較例4は塗布性が悪く、臨床的に使用し難いと判断した。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、歯科分野においてCAD/CAMシステムを用いて歯科切削加工用ジルコニアから切削加工された補綴装置に塗布することにより、焼結後のジルコニアセラミックス補綴装置にオペーク性を発現させるための、オペーク性付与液に関するものであり、産業上の利用が可能である。