(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】塗装装置
(51)【国際特許分類】
B05B 14/43 20180101AFI20240830BHJP
B05B 16/60 20180101ALI20240830BHJP
B05C 15/00 20060101ALI20240830BHJP
B01D 46/00 20220101ALI20240830BHJP
【FI】
B05B14/43
B05B16/60
B05C15/00
B01D46/00 302
B01D46/00 F
B01D46/00 E
(21)【出願番号】P 2023124362
(22)【出願日】2023-07-31
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】崎田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】赤荻 隆斗
(72)【発明者】
【氏名】関川 拓哉
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2022/0134371(US,A1)
【文献】特開2021-000580(JP,A)
【文献】特表2008-536661(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0135955(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0158787(US,A1)
【文献】特開平06-079207(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114832527(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 14/43
B05B 16/60
B05C 15/00
B01D 46/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される被塗物に対して塗料を塗装する塗装動作を行い、塗料ミストを含む空気を排出する開口部が下面であって前記被塗物の搬送方向に対して水平方向に直交する幅方向の中央部に設けられた塗装ブースと、
前記塗装ブースの下方であって、かつ前記幅方向において前記塗装ブースのある領域に配され、前記塗装ブースから塗料ミストを含む空気が導入され
る空気導入口が設けられ、塗料ミストを除去する除去装置と、
前記開口部と前記除去装置とを連通する第1の連通路と、を備える塗装装置において、
前記除去装置は、
前記幅方向における仮想中心線に対して一方の側に配され前記第1の連通路と前記空気導入口が連通して前記塗装ブースから塗料ミストを含む空気が導入される運転位置と、前記仮想中心線に対して他方の側に配され前記第1の連通路と前記空気導入口が連通せず当該除去装置に対するメンテナンスを行うことができる非運転位置と、に移動可能であることを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
前記除去装置内において、空気は前記幅方向の外側から内側へ流れることを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。
【請求項3】
前記除去装置は、当該除去装置の上面に配され、塗料ミストが除去された空気を排出する空気排出口を有し、
前記空気排出口から排出された空気を前記塗装装置外に排出する排気ファンと、
前記空気排出口から前記排気ファンへ連通するための第2の連通路と、
前記第1の連通路と前記第2の連通路とを仕切る仕切壁と、を更に備えることを特徴とする請求項2に記載の塗装装置。
【請求項4】
前記仕切壁は、前記開口部から排出された塗料ミストを含む空気を前記幅方向の外側へ案内する気流ガイド部を有することを特徴とする請求項3に記載の塗装装置。
【請求項5】
前記空気導入口は前記除去装置の上面に配されていることを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。
【請求項6】
前記除去装置は、当該除去装置の下面又は前記幅方向における側面に配され、塗料ミストが除去された空気を排出する空気排出口を有し、
前記空気排出口から排出された空気を前記塗装装置外に排出する排気ファンと、
前記空気排出口から前記排気ファンへ連通するための第2の連通路と、を更に備えることを特徴とする請求項5に記載の塗装装置。
【請求項7】
前記開口部から排出された塗料ミストを含む空気を前記幅方向の外側へ案内する気流ガイド部を更に備えることを特徴とする請求項6に記載の塗装装置。
【請求項8】
前記除去装置は、段ボールフィルタからなるフィルタエレメントを有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の塗装装置。
【請求項9】
前記第1の連通路は、前記開口部側の領域と前記空気導入口側の領域との間に、当該開口部側の領域及び当該空気導入口側の領域の少なくとも一方と断面積が異なる領域を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の塗装装置。
【請求項10】
前記搬送方向に沿って複数の前記除去装置が並列に配され、
前記第1の連通路は、複数の前記除去装置の前記空気導入口と、前記塗装ブースの前記開口部とを連通することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の塗装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ブースの下方空間に塗料ミストを除去する除去装置を備えた塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装ブースから排出された空気に含まれている塗料ミストを除去するための除去装置を、当該塗装ブースの下方空間を利用して配置した塗装装置が一般的に知られている。例えば、特開2019-217502号公報(特許文献1)には、塗装チャンバの真下において、2個のフィルタモジュールが夫々フィルタモジュール収容器内に収容された状態で、当該塗装チャンバの垂直長手方向中心面を基準にして互いに向き合って配置されている構成の塗装装置について開示されている。
【0003】
特許文献1の
図1に記載された塗装装置において、各フィルタモジュールの主濾過装置の空気導入口は、塗装チャンバの垂直長手方向中心面から離れた側(すなわち塗装チャンバの幅方向における外方側)の側面に設けられており、塗装チャンバの床から排出された空気は、フィルタモジュール収容器の天井において当該空気導入口の上方に設けられた送入口を通って当該空気導入口から主濾過装置内へ送り込まれる。
【0004】
一方、特許文献1の
図11に記載された塗装装置において、各フィルタモジュールの主濾過装置の空気導入口は、塗装チャンバの垂直長手方向中心面側(すなわち塗装チャンバの幅方向における内方側)の側面に設けられており、塗装チャンバの床から排出された空気は、互いに向き合って配置されている両主濾過装置の間に設けられた通路を通って当該空気導入口から主濾過装置内へ送り込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載された塗装装置において、塗装チャンバの床は全幅にわたって通気可能な構成である。そのため、特許文献1の
図1及び
図11に記載された塗装装置はいずれも、運転時に、塗装チャンバの床のうち主濾過装置の空気導入口の略真上に位置する部分から当該空気導入口に向かう略直線的な空気経路が形成される。このような略直線的な空気経路は、流れに対する抵抗が少ないため、経路の一部において生じた風量の変化は経路の全体に反映されやすい。したがって、特許文献1に記載された塗装装置は、詰まりなどによって主濾過装置の処理風量が低下すると、塗装チャンバ内の気流が乱れやすくなり、これは塗装作業の品質の低下につながる虞がある。
【0007】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、塗装ブースから除去装置までのミストを含む空気の経路が非直線的である塗装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る塗装装置は、
搬送される被塗物に対して塗料を塗装する塗装動作を行い、塗料ミストを含む空気を排出する開口部が下面であって前記被塗物の搬送方向に対して水平方向に直交する幅方向の中央部に設けられた塗装ブースと、
前記塗装ブースの下方であって、かつ前記幅方向において前記塗装ブースのある領域に配され、前記塗装ブースから塗料ミストを含む空気が導入される空気導入口が設けられ、塗料ミストを除去する除去装置と、
前記開口部と前記除去装置とを連通する第1の連通路と、を備える塗装装置において、
前記除去装置は、前記幅方向における仮想中心線に対して一方の側に配され前記第1の連通路と前記空気導入口が連通して前記塗装ブースから塗料ミストを含む空気が導入される運転位置と、前記仮想中心線に対して他方の側に配され前記第1の連通路と前記空気導入口が連通せず当該除去装置に対するメンテナンスを行うことができる非運転位置と、に移動可能であることを特徴とする。
【0009】
このように構成された塗装装置において、塗装ブースの開口部から排出された塗料ミストを含む空気は、除去装置の空気導入口に辿り着くまでの間に、幅方向において外側に案内されながら下方に流れるので、塗装ブースから除去装置までのミストを含む空気の経路は、流れに対する抵抗が比較的大きい非直線的なものとなる。これにより、除去装置の処理風量の低下が生じても、塗装ブース内の気流への影響は緩和されるので、塗装ブース内の気流の乱れは生じにくくなり、塗装作業の品質が低下することを抑止することができる。
【0010】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】第1の実施形態に係る塗装装置において、除去装置が運転位置にあるときの模式的断面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る塗装装置において、除去装置が非運転位置にあるときの模式的断面図である。
【
図4】第2の実施形態に係る塗装装置において、除去装置が運転位置にあるときの模式的断面図である。
【
図5】第2の実施形態に係る塗装装置において、除去装置が非運転位置にあるときの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る塗装装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
〔第1の実施形態〕
図1は塗装装置の概略構成を示す模式図である。
図1に示すように、塗装装置10は、自動車のボディーなどの被塗物Bに対して塗料を塗装する塗装動作が行われる塗装室21を有する塗装ブース20と、塗装室21から排出された空気に含まれている塗料ミストを除去する除去装置30とを備える。
【0014】
塗装ブース20の塗装室21は、被塗物Bの搬送方向Tにおいて塗装工程に応じて複数の塗装ゾーンZ1、Z2、Z3…が設けられている。被塗物Bは、コンベアなどの搬送装置23により、塗装工程の順を追ってこれらの塗装ゾーンZ1、Z2、Z3…に搬送される。各塗装ゾーンZ1、Z2、Z3…内に搬送された被塗物Bは、塗装ブース20の側壁等に設けられたスプレー装置24によって所定の塗料がスプレーされる。
【0015】
塗装ブース20の上面には、塗装ゾーンZ1、Z2、Z3…ごとに、外部の空気を供給するための供給口25が設けられている。供給口25から外部の空気が供給されることにより、各塗装ゾーンZ1、Z2、Z3…内には、上方から下方に向かう下降気流が形成される。被塗物Bに付着しなかった塗料ミストを含む空気は、グレーチング床22を通って塗装室21の底部へ案内される。
【0016】
一方、塗装ブース20の下面には、塗装ゾーンZ1、Z2、Z3…ごとに、塗装室21内の空気を排出するための開口部26が設けられている。開口部26は、被塗物Bの搬送方向Tに対して水平方向に直交する幅方向Wの中央部に配されて搬送方向Tに沿って延在している。塗装ブース20の下面のうち開口部26よりも幅方向Wの外側の部分は空気を通過させない床面である。なお、ここでいう中央部とは、幅方向Wにおける塗装装置10の仮想中心線Cを挟んで左右に配された、幅方向Wでの塗装ブース20の下面の幅の約1%~50%の幅を有する領域を意味している。開口部26は、後述する第1の連通路41と連通している。
【0017】
なお、各塗装ゾーンZ1、Z2、Z3…内に形成される下降気流の流量は、塗装ブース20の供給口25から供給される外部の空気の風量を図示しない制御装置によって制御することで、塗装ゾーンZ1、Z2、Z3…間で同一となるように、又は、塗装工程に応じて塗装ゾーンZ1、Z2、Z3…ごとに適切な流量となるように、調節可能である。
【0018】
塗装ブース20の下方には、塗装ゾーンZ1、Z2、Z3…ごとに、下方空間40が設けられている。各下方空間40は、幅方向Wにおいて塗装室21の寸法に略相当する長さを有し、かつ搬送方向Tにおいて対応する塗装ゾーンZ1、Z2、Z3…の寸法に略相当する長さを有する。言い換えれば、塗装室21の各塗装ゾーンZ1、Z2、Z3…と、その下方に位置する下方空間40とは、平面視で実質的に同一の形状を有する。
【0019】
図2は、第1の実施形態に係る塗装装置において、除去装置が運転位置にあるときの模式的断面図である。
図3は、第1の実施形態に係る塗装装置において、除去装置が非運転位置にあるときの模式的断面図である。各下方空間40内には、複数(本実施形態では五つ)の除去装置30が、搬送方向Tに沿って並列に配されている。それぞれの除去装置30は、幅方向Wに沿って
図2に示す運転位置と
図3に示す非運転位置とに移動可能である。ここで、運転位置とは、除去装置30内に塗料ミストを含む空気が導入され、塗料ミストが空気から除去される位置である。非運転位置とは、除去装置30内に塗料ミストを含む空気が導入されず、作業員によって除去装置30に対するメンテナンスが行われる位置である。本実施形態において、除去装置30の運転位置及び非運転位置は、仮想中心線Cに対して互いに反対側の位置である。但し、除去装置30の運転位置は仮想中心線Cに重なる位置であってもよく、この場合、運転位置にある除去装置30は仮想中心線Cを跨いている。また、除去装置30の非運転位置は仮想中心線Cに重なる位置であってもよく、この場合、非運転位置にある除去装置30は仮想中心線Cを跨いている。
【0020】
以下、幅方向Wにおいて除去装置30の非運転位置よりも外側にいる作業員(
図3参照)から見て、除去装置30の運転位置側を幅方向Wの奥側と称し、除去装置30の非運転位置側を幅方向Wの手前側と称して、除去装置30に係る構成について説明する。
【0021】
各除去装置30は、キャスター付きのケース31と、ケース31内に配され、塗料ミストを空気から除去する一次フィルタエレメント321、二次フィルタエレメント322及び三次フィルタエレメント323と、を有する。ケース31は、幅方向Wにおいて奥側の側面に配され塗料ミストを含む空気が導入される空気導入口311と、上面における幅方向Wの手前側に配され塗料ミストが除去された空気を排出する空気排出口312と、を有する。なお、ケース31はキャスター付きの構成に限らず、スライドレール等によって幅方向Wに移動可能な構成としてもよい。
【0022】
一次フィルタエレメント321、二次フィルタエレメント322及び三次フィルタエレメント323は、空気導入口311から導入された空気が順番に通過するように配されている。本実施形態において、一次フィルタエレメント321は空気導入口311の近傍に配された段ボールフィルタである。二次フィルタエレメント322は一次フィルタエレメント321に対して幅方向Wの手前側に配されたクラフトフィルタである。三次フィルタエレメント323は二次フィルタエレメント322に対して幅方向Wの手前側に配されたバグフィルタである。なお、フィルタエレメントの段数及び各段のフィルタエレメントとして使用される材料は任意である。
【0023】
各下方空間40内には更に、運転位置に位置する除去装置30に対して空気導入口311と塗装ブース20の開口部26とを連通する第1の連通路41と、空気排出口312と後述する排気口433とを連通する第2の連通路42と、が設けられている。後述するように、第1の連通路41は、上流側流路431、上流側連通口46及び上流側集合ダクト48により構成される。また、第2の連通路42は、下流側ダクト49、下流側連通口47及び下流側流路432により構成される。
【0024】
各下方空間40は、塗装室21の下方に位置する略直方体形状の上部室43を有する。上部室43は、幅方向Wの略中央部に配されて搬送方向Tに沿って延在する仕切壁45によって上流側流路431と下流側流路432とに仕切られている。上流側流路431は、開口部26を介して塗装室21と連通している。一方、下流側流路432は、幅方向Wにおいて外側(手前側)の側面に排気口433が設けられている。排気口433は排気ファンFの一次側に接続されている。
【0025】
各下方空間40はまた、上部室43の下方に位置し、複数の除去装置30が配されている略直方体形状の下部室44を有する。下部室44は、上部室43と下部室44の境界に設けられた上流側連通口46を介して上部室43と連通している。本実施形態において、上流側連通口46は、幅方向Wにおいて外側(奥側)であって、搬送方向Tに沿って離れた位置に複数設けられている。なお、複数の上流側連通口46が一体になった構成としても良い。更に、下部室44は、上部室43と下部室44の境界に設けられた下流側連通口47を介して上部室43と連通している。本実施形態において、下流側連通口47は、幅方向Wにおいて略中央であって、搬送方向Tに沿って離れた位置に複数設けられている。
【0026】
下部室44には、その天面及び底面にわたって上流側連通口46と連結された一つの上流側集合ダクト48が配されている。除去装置30は、運転位置に位置するときに、各々の空気導入口311が、幅方向Wにおいて開口部26よりも外側(奥側)の位置において上流側集合ダクト48に共通して連結されている。
【0027】
また、下部室44には、その天面から吊り下がるようにして下流側連通口47と連結された一つの下流側ダクト49が配されている。除去装置30は、運転位置に位置するときに、各々の空気排出口312が下流側ダクト49に共通して連結されている。
【0028】
なお、本実施形態において、仕切壁45は、幅方向Wの中央部に配された開口部26から上流側流路431内に排出された塗料ミストを含む空気を幅方向Wの外側(奥側)へ案内する気流ガイド部451を有する。気流ガイド部451は、開口部26の直下に配されており、開口部26から離れる部位ほど、第1の連通路41と連通された空気導入口311に近づくように斜めに直線状に延設されている。気流ガイド部451が設置された上流側流路431は、開口部26と上流側連通口46とを直線的に結ぶ経路の外側に拡がりを有するのであるが、この経路に直交する面の面積(すなわち上流側流路431の断面積)は、開口部26側の領域から上流側連通口46側の領域にかけて、一旦拡大した後に縮小する。なお、気流ガイド部451は直線状の形状ではなくて、円弧状や階段状の形状であってもよい。
【0029】
以下、除去装置30が運転位置に位置するときの塗料ミストの除去動作、及び除去装置30の運転位置と非運転位置との切り換え動作について説明する。
【0030】
被塗物Bに対する塗装動作が行われている期間中に、除去装置30は
図2に示す運転位置に保持される。この状態において、塗装ブース20の各塗装ゾーンZ1、Z2、Z3…において生じた塗料ミストを含む空気は、第1の連通路41を通って、塗装ゾーンZ1、Z2、Z3…ごとに複数設けられた除去装置30へ送られる。
【0031】
塗料ミストを含む空気はまず、塗装ブース20の開口部26から上流側流路431内に排出され、仕切壁45の気流ガイド部451により幅方向Wの外側(奥側)へ案内されながら上流側流路431の底部に流れる。ここで、上流側流路431の壁面と接触して付着することで一部の塗料ミストが空気から除去される。本実施形態では上流側流路431の断面積の変化により上流側流路431内で渦などの乱流が生じるので、塗料ミストが壁面と接触して付着する。この構成により、空気中から多くの塗料ミストが除去される。なお、上流側流路431の断面積は、開口部26側の領域から上流側連通口46側の領域にかけて変化が生じていればよく、例えば、開口部26側の領域から上流側連通口46側の領域にかけて縮小又は拡大してもよい。上流側流路431の壁面に付着した塗料ミストは、塗装装置10に対する定期的なメンテナンスなどの際に清掃される。
【0032】
上流側流路431の底部に流れた塗料ミストを含む空気は、上流側連通口46から上流側集合ダクト48内に排出され、各々の空気導入口311を通って各除去装置30内に送り込まれる。除去装置30内において一次フィルタエレメント321、二次フィルタエレメント322及び三次フィルタエレメント323を順番に通過することにより、空気から塗料ミストが除去される。塗料ミストが除去された空気は、各除去装置30の空気排出口312から排出されて、第2の連通路42すなわち下流側ダクト49、下流側連通口47及び下流側流路432を通って排気口433から塗装装置10の外部へ排出される。
【0033】
一方、除去装置30内のフィルタエレメント321,322,323の交換が必要になったとき、当該除去装置30は、作業員により、
図3に示す非運転位置に移動される。非運転位置では、当該除去装置30の空気導入口311及び空気排出口312は、第1の連通路41及び第2の連通路42から離間しており、これらの連通路との連通が切断されている。上流側集合ダクト48において、除去装置30ごとに開閉可能なシャッター部材が設けられている。非運転位置に移動する除去装置30に対応したシャッターのみを閉じることにより、運転位置にある除去装置30への塗料ミストを含む空気の流れは維持される。したがって、フィルタエレメント321、322、323の交換が必要な除去装置30が非運転位置に移動している間も、塗装装置10による塗装動作は継続して行われる。作業員は、ケース31に設けられた扉を介してフィルタエレメント321,322,323の交換などのメンテナンスを行う。その後、除去装置30は再び運転位置に移動されて保持される。
【0034】
なお、本実施形態において、除去装置30の空気導入口311は、ケース31の側面ではなく上面の幅方向W奥側に配されてもよい。この場合、除去装置30の運転位置は、当該除去装置30が運転位置にあるときに空気導入口311が上流側連通口46の下方にあるような位置(すなわち
図2に示す位置よりも幅方向Wの奥側に寄った位置)であってもよい。そして、除去装置30が運転位置にあるとき、空気導入口311は、下部室44の天面から吊り下がるようにして上流側連通口46に連結された上流側集合ダクト48を介して上流側流路431と連通する。
【0035】
〔第2の実施形態〕
図4は、第2の実施形態に係る塗装装置において、除去装置が運転位置にあるときの模式的断面図である。
図5は、第2の実施形態に係る塗装装置において、除去装置が非運転位置にあるときの模式的断面図である。本実施形態の塗装装置10は、除去装置30、第1の連通路41及び第2の連通路42を除き第1の実施形態と概ね同一の構成を有し、以下では同一の構成についての説明を省略する。
【0036】
本実施形態において、
図4に示すように、除去装置30のケース31は、上面に配された空気導入口311と、幅方向Wにおいて奥側の側面の下部に配された空気排出口312と、を有する。ケース31内には、空気導入口311から送り込まれた塗料ミストを含む空気が通過するように、空気導入口311の近傍から下方に向かって一次フィルタエレメント321、二次フィルタエレメント322及び三次フィルタエレメント323が順番に配されている。
【0037】
そして、本実施形態において、下部室44には、その天面から吊り下がるようにして上流側連通口46と連結された一つの上流側集合ダクト48が配されている。また、下部室44の幅方向Wにおいて外側(奥側)の側面に、排気口441及びこれと連通する下流側ダクト49が配されている。排気口441は排気ファンFの一次側に接続されている。除去装置30は、運転位置に位置するときに、各々の空気導入口311が上流側集合ダクト48に共通して連結され、各々の空気排出口312が下流側ダクト49に共通して連結される。
【0038】
このように構成された本実施形態の塗装装置10において、塗料ミストを含む空気は、上流側流路431、上流側連通口46及び上流側集合ダクト48により構成される第1の連通路41を通って各々の空気導入口311から各除去装置30内に送り込まれる。塗料ミストを含む空気は、除去装置30内において上方から下方へ流れて一次フィルタエレメント321、二次フィルタエレメント322及び三次フィルタエレメント323によって塗料ミストが除去される。塗料ミストが除去された空気は、各除去装置30の空気排出口312から排出され、下流側ダクト49により構成される第2の連通路42を通って排気口441から塗装装置10の外部へ排出される。
【0039】
そして、本実施形態の塗装装置10においても、
図5に示すように作業員により除去装置30を下方空間40内の非運転位置に移動させることで、フィルタエレメント321,322,323の交換などのメンテナンスを行うことが可能である。
【0040】
なお、本実施形態において、除去装置30の空気排出口312は、ケース31の側面ではなく下面に配されてもよい。この場合、空気を塗装装置10の外部へ排出する排気口441、及び当該排気口441と空気排出口312とを連通する下流側ダクト49は下部室44の下面に設けられる。
【0041】
以上、第1及び第2の実施形態の塗装装置10について、特徴となる構成を説明した。続いて、これらの特徴となる構成による利点について説明する。
【0042】
第1及び第2の実施形態の塗装装置10において、塗装ブース20から除去装置30までのミストを含む空気の経路(すなわち第1の連通路41)は、流れに対する抵抗が比較的大きい非直線的なものである。そのため、フィルタエレメント321,322,323の詰まりなどにより除去装置30の処理風量の低下が生じても、塗装ブース20内の気流への影響は緩和されるので、塗装ブース20内の気流の乱れは生じにくくなる。
【0043】
また、塗装ゾーンZ1、Z2、Z3…ごとに設けられた塗装装置10は、一つの共通の第1の連通路41を介して塗装ブース20の開口部26と連通している。そのため、一部の除去装置30において処理風量の低下が生じても、低下分の処理風量を他の除去装置30によって補うことができるので、除去装置30の処理風量の低下による塗装ブース20内の気流への影響を抑止することができる。
【0044】
また、除去装置30は、塗装装置10の仮想中心線Cに対して下方空間40の一方側にのみ設置されるので、下方空間40の反対側の空間を除去装置30のメンテナンスなどに利用することができる。これにより、幅方向Wにおいて下方空間40よりも外側に除去装置30のメンテナンスのための空間を設ける必要がない。すなわち、塗装装置10の設置に必要な面積が小さくて済む。
【0045】
また、一次フィルタエレメント321、二次フィルタエレメント322及び三次フィルタエレメント323は、幅方向Wに沿って並列にケース31内に集約して設けられている。フィルタエレメントを配するための空間が上下方向において別々に設けられる場合と比べると、上下方向における塗料ミストを含む空気のための流路の高さ寸法を小さくして作業員の手が届きにくい箇所を減らすことができるので、流路のメンテナンスが容易になる。また、全体のフィルタエレメント321,322,323をまとめて移動させることができるので、フィルタエレメント321,322,323のメンテナンスも容易になる。
【0046】
また、上流側流路431は断面積が変化する形状を有するので、前述したように渦などの乱流を引き起こしてより多くの塗料ミストを壁面に接触させて付着させることができる。これにより、除去装置30に送り込まれる空気に含まれる塗料ミストが減少するので、フィルタエレメント321,322,323に付着する塗料ミストの量が減少し、その結果、フィルタエレメント321,322,323の交換までの寿命が長くなる。
【符号の説明】
【0047】
10 :塗装装置
20 :塗装ブース
21 :塗装室
26 :開口部
30 :除去装置
40 :下方空間
41 :第1の連通路
311 :空気導入口
B :被塗物
T :搬送方向
W :幅方向
【要約】
【課題】塗装ブースから除去装置までのミストを含む空気の経路が非直線的である塗装装置を提供する。
【解決手段】搬送される被塗物Bに対して塗料を塗装する塗装動作を行い、塗料ミストを含む空気を排出する開口部26が下面であって被塗物Bの搬送方向に対して水平方向に直交する幅方向Wの中央部に設けられた塗装ブース20と、塗装ブース20の下方であって、かつ幅方向Wにおいて塗装ブース20のある領域に配され、塗装ブース20から塗料ミストを含む空気が導入されて塗料ミストを除去する除去装置30と、開口部26と除去装置30とを連通する第1の連通路41と、を備える塗装装置10において、除去装置30は、幅方向Wにおいて開口部26よりも外側の位置において第1の連通路41と連通し、第1の連通路41から塗料ミストを含む空気が導入される空気導入口311を有する。
【選択図】
図2