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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】アクチュエーター
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20240830BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20240830BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20240830BHJP
   H02K 33/16 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
G02B26/10 C
B81B3/00
H02K33/16 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023503849
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2022008511
(87)【国際公開番号】W WO2022186178
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2021032420
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520001073
【氏名又は名称】パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】大島 清朗
(72)【発明者】
【氏名】矢部 友崇
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 新吾
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-033087(JP,A)
【文献】特開2016-092508(JP,A)
【文献】国際公開第2019/172307(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10
G02B 26/08
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石が設けられ、基準面に対し、第1の軸と前記第1の軸に非平行な第2の軸とをそれぞれ揺動軸として揺動可能なミラーと、
ヨークおよびコイルを有し、前記永久磁石に磁束を作用させる電磁石とを備え、
前記ヨークの両端はギャップを挟んで少なくとも一部が互いに対向しており、
前記基準面に垂直な方向から見て、前記ギャップの中心は前記永久磁石の中心とは重ならず、
前記コイルには、前記ミラーを、前記第1の軸に対して揺動させるための電流と前記第2の軸に対して揺動させるための電流とが重畳されて流され
前記ヨークの両端は、互いに前記第1の軸または前記第2の軸に平行な方向に対向する、
アクチュエーター。
【請求項2】
永久磁石が設けられ、基準面に対し、第1の軸と前記第1の軸に非平行な第2の軸とをそれぞれ揺動軸として揺動可能なミラーと、
ヨークおよびコイルを有し、前記永久磁石に磁束を作用させる電磁石とを備え、
前記ヨークの両端はギャップを挟んで少なくとも一部が互いに対向しており、
前記基準面に垂直な方向から見て、前記ギャップの中心は前記永久磁石の中心とは重ならず、
前記コイルには、前記ミラーを、前記第1の軸に対して揺動させるための電流と前記第2の軸に対して揺動させるための電流とが重畳されて流され、
前記ヨークの両端は前記第1の軸に垂直な端面を有している、または、前記ヨークの両端は前記第2の軸に垂直な端面を有している、
アクチュエーター。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアクチュエーターにおいて、
前記ミラーは、前記第2の軸に対して共振周波数で揺動するよう駆動される
アクチュエーター。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のアクチュエーターにおいて、
前記基準面に垂直な方向から見て、前記ギャップの中心は、前記永久磁石の中心から前記第1の軸に平行な方向にずれている
アクチュエーター。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載のアクチュエーターにおいて、
前記ミラーを、前記第1の軸に対して揺動させるための電流はノコギリ波または三角波であり、
前記ミラーを、前記第2の軸に対して揺動させるための電流は正弦波である
アクチュエーター。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載のアクチュエーターにおいて、
前記第1の軸に対して揺動させるための電流と前記第2の軸に対して揺動させるための電流とが重畳された信号を生成する制御部をさらに有する
アクチュエーター。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載のアクチュエーターにおいて、
MEMSアクチュエーターである
アクチュエーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエーターに関する。
【背景技術】
【0002】
光で所定の領域を走査して測定する測定装置等では、光の出射方向を可変とするために可動ミラーが用いられる。
【0003】
特許文献1には、ミラーに固定された永久磁石と電磁石とを相互作用させて、ミラーに駆動トルクを生じさせる光走査装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-69676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ミラーを駆動するアクチュエーターの小型化が、それを含む測定装置等の全体の小型化のために重要である。一方、ミラーを2軸に対して駆動しようとすると、二組の電磁石が必要となり、アクチュエーターが大型化するという問題があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、ミラーを駆動するアクチュエーターを小型化することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
永久磁石が設けられ、基準面に対し、第1の軸と前記第1の軸に非平行な第2の軸とをそれぞれ揺動軸として揺動可能なミラーと、
ヨークおよびコイルを有し、前記永久磁石に磁束を作用させる電磁石とを備え、
前記ヨークの両端はギャップを挟んで少なくとも一部が互いに対向しており、
前記基準面に垂直な方向から見て、前記ギャップの中心は前記永久磁石の中心とは重ならず、
前記コイルには、前記ミラーを、前記第1の軸に対して揺動させるための電流と前記第2の軸に対して揺動させるための電流とが重畳されて流される
アクチュエーターである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るアクチュエーターの構成を例示する図である。
図2】実施形態に係るアクチュエーターの構成を例示する図である。
図3】実施形態に係るアクチュエーターの構成を例示する図である。
図4】制御部のハードウエア構成を例示する図である。
図5】ミラーを、第1の軸に対して揺動させるための電流の波形を例示する図である。
図6】ミラーを、第2の軸に対して揺動させるための電流の波形を例示する図である。
図7】ミラーを、第1の軸に対して揺動させるための電流と第2の軸に対して揺動させるための電流とが重畳された電流の波形を例示する図である。
図8】電磁石の位置と発生トルクとの関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
図9】電磁石の位置とミラーの振幅との関係を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0010】
(実施形態)
図1図3は、実施形態に係るアクチュエーター10の構成を例示する図である。図1はアクチュエーター10の斜視図であり、図2はアクチュエーター10の側面図であり、図3はアクチュエーター10の平面図である。各図に示されたx軸、y軸およびz軸は互いに直交する三軸である。本実施形態に係るアクチュエーター10は、ミラー20と電磁石30とを備える。ミラー20には永久磁石21が設けられている。ミラー20は、基準面101に対し、第1の軸201と第2の軸202とをそれぞれ揺動軸として揺動可能である。第2の軸202は第1の軸201とは非平行である。電磁石30は、ヨーク34およびコイル32を有し、永久磁石21に磁束を作用させる。ヨーク34の両端(端部341および端部342)はギャップ340を挟んで少なくとも一部が互いに対向している。基準面101に垂直な方向(z軸方向)から見て、ギャップ340の中心Cgは永久磁石21の中心Cmとは重ならない。そしてコイル32には、ミラー20を、第1の軸201に対して揺動させるための電流Iと第2の軸202に対して揺動させるための電流Iとが重畳されて流される。以下に詳しく説明する。
【0011】
なお、ミラー20を第1の軸201に対して揺動させるとは、ミラー20を第1の軸201を揺動軸として揺動させることと同意であり、ミラー20を第2の軸202に対して揺動させるとは、ミラー20を第2の軸202を揺動軸として揺動させることと同意である。
【0012】
ミラー20は、反射面22を有し、反射面22とは反対側の面の中心には永久磁石21が固定されている。永久磁石21の一方の極である第1の極211がミラー20側に向き、他方の極である第2の極212がミラー20とは反対側、すなわち、電磁石30が設けられている側に向いている。基準面101は、電磁石30においてコイルに電流が流れていない状態、すなわち、永久磁石21が力を受けていない基準状態における、ミラー20の反射面22を含む平面である。なお、図1図3はいずれも基準状態を示している。基準面101はxy平面に平行である。
【0013】
アクチュエーター10は2軸アクチュエーターであり、ミラー20を第1の軸201と第2の軸202に対して揺動させる事ができる。それにより、ミラー20の反射面22で反射された光の方向を2次元的に変化させることができる。本実施形態において、第1の軸201と第2の軸202とは略直交するまたは直交する。
【0014】
電磁石30では、コイル32がヨーク34の少なくとも一部に巻きつけられている。コイル32に電流が流れることにより、端部341と端部342との間に磁束が発生する。この磁束が永久磁石21に作用することにより、ミラー20を第1の軸201および第2の軸202に対して揺動させる事ができる。
【0015】
本実施形態に係るアクチュエーター10では、同一の電磁石30を用いて、ミラー20の第1の軸201に対する駆動と第2の軸202に対する駆動とを実現する。すなわち、ミラー20を第1の軸201に対して揺動させるための電磁石と、ミラー20を第2の軸202に対して揺動させるための電磁石とが分けられていない。そうすることで、複数の揺動軸ごとに電磁石を設ける必要がなく、アクチュエーター10を小型化することができる。
【0016】
電磁石30はU字型またはC字型である。具体的には、電磁石30のヨーク34の両端(端部341および端部342)は、基準面101に垂直な方向から見て、永久磁石21の少なくとも一部を挟んで互いに対向している。端部341および端部342はいずれも磁束発生端部である。なお、電磁石30は、磁束発生端部の少なくとも一部がギャップ340を挟んで互いに対向するように構成された、複数の電磁石からなっていても良い。すなわち、電磁石30のヨーク34およびコイル32が複数に分かれていてもよい。図1図3の例において、端部341および端部342はコイル32よりもミラー20に近い。また、コイル32は基準面101に平行な方向に延在している。
【0017】
次に、図1および図3を参照し、ミラー20、外側フレーム50、および内側フレーム60を含む構造体12について説明する。アクチュエーター10は、外側フレーム50、トーションバー52、内側フレーム60、およびトーションバー62をさらに備える。外側フレーム50と内側フレーム60は2つのトーションバー52を介して接続されている。内側フレーム60とミラー20とは、2つのトーションバー62を介して接続されている。外側フレーム50、トーションバー52、内側フレーム60、トーションバー62およびミラー20は、たとえば半導体ウエハを微細加工することにより一体に構成されており、アクチュエーター10はMEMSアクチュエーターである。本実施形態において、電磁石30は、外側フレーム50、トーションバー52、内側フレーム60、トーションバー62、およびミラー20を含む構造体12の一方の面側に、全体が位置している。
【0018】
たとえば外側フレーム50は、アクチュエーター10の筐体(不図示)に対して固定されている。内側フレーム60は外側フレーム50に対して第1の軸201を揺動軸として揺動可能である。2つのトーションバー52は第1の軸201に一致する。すなわち2つのトーションバー52は第1の軸201に沿って重なり、トーションバー52のねじれを伴って内側フレーム60が外側フレーム50に対して揺動する。また、ミラー20は内側フレーム60に対して第2の軸202を揺動軸として揺動可能である。2つのトーションバー62は第2の軸202に一致する。すなわち2つのトーションバー62は第2の軸202に沿って重なり、トーションバー62のねじれを伴ってミラー20が内側フレーム60に対して揺動する。上述した基準状態において、トーションバー52およびトーションバー62にはねじれが生じておらず、外側フレーム50、内側フレーム60およびミラー20の一方の面は基準面101と同一平面上に位置する。
【0019】
図1図3図5および図6を参照し、電磁石30によるアクチュエーター10の駆動について以下に説明する。まず第1の軸201を揺動軸とした駆動について説明する。電磁石30のコイル32に電流が流れると、端部341と端部342との間に磁束が発生する。このとき端部341と端部342とは互いに異なる極となる。そして、端部341と端部342の内、第2の極212とは異極である端部側へ永久磁石21が向くように、ミラー20の向きが変化する。電磁石30のコイル32に、たとえば後述する図5のように電流Iが流れると、電流の極性がプラスからマイナスに、マイナスからプラスに切り替わるごとにミラー20の向きが変化する。次いで、第2の軸202を揺動軸とした駆動について説明する。電磁石30のコイル32に電流が流れると、電磁石30が永久磁石21をギャップ340側へ引き込み、第2の軸202に沿ったトーションバー62がねじられる。ねじられたトーションバーは元に戻ろうとするため、コイル32に流れる電流の大きさが小さくなると永久磁石21がギャップ340から離れる方向に動く。電磁石30のコイル32に、たとえば後述する図6のように、ミラー20の共振周波数で電流Iを流すと、永久磁石21とともにミラー20が共振周波数で揺動する。したがって、コイル32に流す電流の極性および大きさを変化させることによりミラー20の反射面22の向きを制御する事ができる。
【0020】
本実施形態に係るアクチュエーター10では、端部341および端部342は、第2の軸202に垂直な端面を有している。そしてヨーク34の端部341および端部342は、互いに第2の軸202に平行な方向(y軸方向)に対向する。こうすることで、第1の軸201に対する揺動と第2の軸202に対する揺動とのクロストークを低減できる。ただし、ヨーク34は、両端が第2の軸202に対して斜めに対向するように配置されても良い。また、端部341および端部342は、第1の軸201に垂直な端面を有していてもよい。そしてヨーク34の端部341および端部342は、互いに第1の軸201に平行な方向(x軸方向)に対向してもよい。ヨーク34は、両端が第1の軸201に対して斜めに対向するように配置されても良い。
【0021】
なお、ヨーク34の端部341および端部342が、互いに第2の軸202に平行な方向(y軸方向)に対向する場合、第2の軸202を揺動軸とした駆動のために発生させる事ができるトルクが、第1の軸201を揺動軸とした駆動のために発生させる事ができるトルクよりも小さくなる。これに対し、本実施形態では、ミラー20は、第2の軸202に対して共振周波数で揺動するよう駆動される。したがって、比較的小さい駆動トルクでも十分にミラー20を揺動させる事ができる。
【0022】
また、本実施形態に係るアクチュエーター10では、上述した通り、基準面101に垂直な方向(z軸方向)から見て、ギャップ340の中心Cgは永久磁石21の中心Cmとは重ならない。詳しくは、基準面101に垂直な方向から見て、ギャップ340の中心は、永久磁石21の中心から第1の軸201に平行な方向(x軸方向)にずれている。こうすることで、第2の軸202を揺動軸として、ミラー20を揺動させるためのトルクを大きくすることができる。一方、ギャップ340の中心は、永久磁石21の中心から第1の軸201に垂直な方向(y軸方向)には、ずれていない。こうすることで、第1の軸201に対する揺動と第2の軸202に対する揺動とのクロストークを低減できる。ただし、ギャップ340は、永久磁石21の中心から第1の軸201に対し斜め方向にずれていても良いし、第2の軸202に対し斜め方向にずれていても良い。
【0023】
アクチュエーター10は、制御部70をさらに備える。制御部70は、ミラー20を第1の軸201に対して揺動させるための電流Iと第2の軸202に対して揺動させるための電流Iとが重畳された信号を生成する。制御部70はたとえば駆動回路72および集積回路40を含んで構成される。
【0024】
図4は、制御部70のハードウエア構成を例示する図である。本図において制御部70は、集積回路40を用いて実装されている。集積回路40は、例えば SoC(System On Chip)である。制御部70は集積回路40および駆動回路72を含んで構成される。
【0025】
集積回路40は、バス402、プロセッサ404、メモリ406、ストレージデバイス408、入出力インタフェース410、及びネットワークインタフェース412を有する。バス402は、プロセッサ404、メモリ406、ストレージデバイス408、入出力インタフェース410、及びネットワークインタフェース412が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ404などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。プロセッサ404は、マイクロプロセッサなどを用いて実現される演算処理装置である。メモリ406は、RAM(Random Access Memory)などを用いて実現されるメモリである。ストレージデバイス408は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリなどを用いて実現されるストレージデバイスである。
【0026】
入出力インタフェース410は、集積回路40を周辺デバイスと接続するためのインタフェースである。本図において、入出力インタフェース410には少なくとも駆動回路72が接続されている。
【0027】
ネットワークインタフェース412は、集積回路40を通信網に接続するためのインタフェースである。この通信網は、例えば CAN(Controller Area Network)通信網である。なお、ネットワークインタフェース412が通信網に接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0028】
ストレージデバイス408は、制御部70の機能を実現するためのプログラムモジュールをそれぞれ記憶している。プロセッサ404は、このプログラムモジュールをメモリ406に読み出して実行することで、制御部70の機能を実現する。
【0029】
集積回路40のハードウエア構成は本図に示した構成に限定されない。例えば、プログラムモジュールはメモリ406に格納されてもよい。この場合、集積回路40は、ストレージデバイス408を備えていなくてもよい。
【0030】
図5は、ミラー20を、第1の軸201に対して揺動させるための電流Iの波形を例示する図である。図6は、ミラー20を、第2の軸202に対して揺動させるための電流Iの波形を例示する図である。図7は、ミラー20を、第1の軸201に対して揺動させるための電流と第2の軸202に対して揺動させるための電流とが重畳された電流(I+I)の波形を例示する図である。
【0031】
ミラー20を、第1の軸201に対して揺動させるための電流Iはたとえばノコギリ波または三角波である。ミラー20を、第2の軸202に対して揺動させるための電流Iはたとえば正弦波である。上述した通り、ミラー20は、第2の軸202に対して共振周波数で揺動するよう駆動される。上述した制御部70で電流Iと電流Iとが重畳された駆動電流(I+I)が生成され、制御部70からコイル32へ駆動電流が流される。図7のような駆動電流を用いると、反射面22で反射した光でラスタスキャンを行うように、ミラー20を駆動することができる。ただし、電流Iおよび電流Iの波形はそれぞれ図5および図6に示した例に限定されない。
【0032】
以上、本実施形態によれば、基準面101に垂直な方向から見て、ギャップ340の中心Cgは永久磁石21の中心Cmとは重ならない。したがって、同一の電磁石30を用いて、ミラー20の第1の軸201に対する駆動と第2の軸202に対する駆動とを実現することができる。ひいてはアクチュエーター10を小型化することができる。
【実施例
【0033】
図8は電磁石30の位置と発生トルクとの関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。図1図3に示した構造において、永久磁石21とヨーク34との距離をz方向に複数の値(図8中の単位はmm)に変えて、シミュレーションを行った。グラフの横軸は、z軸方向から見たギャップ340の中心Cgと永久磁石21の中心Cmとの距離(オフセット)である。また、グラフの縦軸は、電磁石30により発生する、ミラー20を第2の軸202に対して揺動させるトルクの大きさである。
【0034】
本図に示すように、中心Cmに対して中心Cgのオフセットが無い場合には、永久磁石21とヨーク34との距離に関わらず、トルクはほぼ0であった。一方、オフセットを大きくするとトルクは徐々に増加し、オフセットが2.5mmのときにピークを示した。
【0035】
図9は電磁石30の位置とミラーの振幅との関係を測定した結果を示すグラフである。図1図3に示した構造において、ミラー20を第2の軸202について揺動させ、揺動振幅を測定した。測定は複数のオフセット値について行い、駆動信号は同一の正弦波とした。本図に示すように、オフセットが2.5mmのときに。光学振角で60°近くまで揺動させる事ができた。
【0036】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 永久磁石が設けられ、基準面に対し、第1の軸と前記第1の軸に非平行な第2の軸とをそれぞれ揺動軸として揺動可能なミラーと、
ヨークおよびコイルを有し、前記永久磁石に磁束を作用させる電磁石とを備え、
前記ヨークの両端はギャップを挟んで少なくとも一部が互いに対向しており、
前記基準面に垂直な方向から見て、前記ギャップの中心は前記永久磁石の中心とは重ならず、
前記コイルには、前記ミラーを、前記第1の軸に対して揺動させるための電流と前記第2の軸に対して揺動させるための電流とが重畳されて流される
アクチュエーター。
2. 1.に記載のアクチュエーターにおいて、
前記ミラーは、前記第2の軸に対して共振周波数で揺動するよう駆動され、
前記ヨークの両端は、互いに前記第2の軸に平行な方向に対向する
アクチュエーター。
3. 1.または2.に記載のアクチュエーターにおいて、
前記基準面に垂直な方向から見て、前記ギャップの中心は、前記永久磁石の中心から前記第1の軸に平行な方向にずれている
アクチュエーター。
4. 1.~3.のいずれか一つに記載のアクチュエーターにおいて、
前記ミラーを、前記第1の軸に対して揺動させるための電流はノコギリ波または三角波であり、
前記ミラーを、前記第2の軸に対して揺動させるための電流は正弦波である
アクチュエーター。
5. 1.~4.のいずれか一つに記載のアクチュエーターにおいて、
前記第1の軸に対して揺動させるための電流と前記第2の軸に対して揺動させるための電流とが重畳された信号を生成する制御部をさらに有する
アクチュエーター。
6. 1.~5.のいずれか一つに記載のアクチュエーターにおいて、
MEMSアクチュエーターである
アクチュエーター。
【0037】
この出願は、2021年3月2日に出願された日本出願特願2021-032420号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0038】
10 アクチュエーター
12 構造体
20 ミラー
21 永久磁石
22 反射面
30 電磁石
32 コイル
34 ヨーク
40 集積回路
50 外側フレーム
52 トーションバー
60 内側フレーム
62 トーションバー
70 制御部
72 駆動回路
101 基準面
201 第1の軸
202 第2の軸
340 ギャップ
341 端部
342 端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9