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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】熱風ノズルおよび乾燥炉
(51)【国際特許分類】
   F26B 21/00 20060101AFI20240830BHJP
   B05B 1/04 20060101ALI20240830BHJP
   F26B 15/00 20060101ALN20240830BHJP
【FI】
F26B21/00 B
B05B1/04
F26B15/00 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023516503
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2021048860
(87)【国際公開番号】W WO2023127120
(87)【国際公開日】2023-07-06
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】崎田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 幸也
(72)【発明者】
【氏名】石田 浩三
(72)【発明者】
【氏名】小池 俊彦
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-155463(JP,A)
【文献】特開2004-184009(JP,A)
【文献】特開2000-070822(JP,A)
【文献】特開平09-099263(JP,A)
【文献】特開平05-172462(JP,A)
【文献】実開昭63-043098(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 21/00
B05B 1/04
F26B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出口を有する先端面と、前記先端面と基端との間に延びる側面と、を備え、
前記先端面は、長手方向と短手方向とを区別可能な形状を有し、かつ、前記長手方向の中央部分が当該長手方向の両端よりも突出して設けられ、
前記吐出口は、前記先端面が突出する形状に沿って設けられ、
前記短手方向に沿う断面において、前記先端面における前記側面間の距離が、前記吐出口の幅より大きい熱風ノズル。
【請求項2】
前記先端面は、連続的に湾曲している湾曲面として設けられ、
前記吐出口は、前記先端面が湾曲する形状に沿って設けられている請求項1に記載の熱風ノズル。
【請求項3】
前記短手方向に沿う断面において、前記吐出口の幅は5mm以上20mm以下である請求項1または2に記載の熱風ノズル。
【請求項4】
ブースと、ワークを支持可能な支持部と、複数の熱風ノズルと、を含む乾燥炉であって、
前記熱風ノズルは、吐出口を有する先端面と、前記先端面と基端との間に延びる側面と、を備え、
前記先端面は、長手方向と短手方向とを区別可能な形状を有し、かつ、前記長手方向の中央部分が、当該長手方向の両端より突出して設けられ、前記吐出口は、前記先端面が突出する形状に沿って設けられ、
前記短手方向に沿う断面において、前記先端面における前記側面間の距離が、前記吐出口の幅より大きく、
複数の前記熱風ノズルは、複数の前記熱風ノズルが直線状に並べられた一つまたは複数のノズル列を形成しており、
前記ノズル列のそれぞれにおいて、複数の前記熱風ノズルは、前記長手方向側の前記側面を対向させる姿勢で離間して設けられている乾燥炉。
【請求項5】
複数の前記熱風ノズルのそれぞれは、当該熱風ノズルの前記長手方向と、当該熱風ノズルが属する前記ノズル列の延在方向と、がなす角が0°より大きく90°より小さい姿勢で設けられ、
ある前記熱風ノズルの前記延在方向に沿う存在範囲は、当該熱風ノズルに隣接する前記熱風ノズルの前記延在方向に沿う存在範囲と、部分的に重複している請求項4に記載の乾燥炉。
【請求項6】
前記ブースに、前記ブースの底部を画定する底面、当該ブースの側面を画定する側壁面、および、前記底面と前記側壁面との間に延びる傾斜面、が設けられ、
複数の前記熱風ノズルは、前記傾斜面から延びている請求項4または5に記載の乾燥炉。
【請求項7】
前記ブースの内側に延びる邪魔板が少なくとも一つ設けられている請求項4~6のいずれか一項に記載の乾燥炉。
【請求項8】
前記短手方向に沿う断面において、前記吐出口を挟む前記先端面の実体部分の幅が、前記吐出口の両側において5mm以上である請求項1~3のいずれか一項に記載の熱風ノズル。
【請求項9】
前記吐出口が、前記長手方向に沿って開口するスリットである請求項1~3および8のいずれか一項に記載の熱風ノズル。
【請求項10】
加熱空気を吐出する吐出口が設けられ上面から見て長方形である先端面と、前記先端面と基端との間に配置された側面と、を備え、
前記先端面は前記長方形の長辺の方向における中央部が端部よりも加熱空気を吐出する方向に突出する形状であり、
前記吐出口は前記長辺の方向に沿って設けられた熱風ノズルにおいて、
前記先端面は、前記長方形の短辺の方向に沿った断面において、前記吐出口を挟んだ両側に実体部分を有することを特徴とする熱風ノズル。
【請求項11】
前記先端面は、連続的に湾曲している湾曲面として設けられ、
前記吐出口は、前記先端面が湾曲する形状に沿って設けられている請求項10に記載の熱風ノズル。
【請求項12】
前記短辺の方向に沿う断面において、前記吐出口の幅は5mm以上20mm以下である請求項10または11に記載の熱風ノズル。
【請求項13】
前記短辺の方向に沿う断面において、前記実体部分の幅が、前記吐出口の両側において5mm以上である請求項10~12のいずれか一項に記載の熱風ノズル。
【請求項14】
前記吐出口が、前記長辺の方向に沿って開口するスリットである請求項10~13のいずれか一項に記載の熱風ノズル。
【請求項15】
ブースと、ワークを支持可能な支持部と、複数の熱風ノズルと、を含む乾燥炉であって、
前記熱風ノズルは、加熱空気を吐出する吐出口が設けられ上面から見て長方形である先端面と、前記先端面と基端との間に配置された側面と、を備え、
前記先端面は前記長方形の長辺の方向における中央部が端部よりも加熱空気を吐出する方向に突出する形状であり、
前記吐出口は前記長辺の方向に沿って設けられ、
前記先端面は、前記長方形の短辺の方向に沿った断面において、前記吐出口を挟んだ両側に実体部分を有し、
複数の前記熱風ノズルは、複数の前記熱風ノズルが直線状に並べられたノズル列を形成しており、
前記ノズル列において、隣接する前記熱風ノズルは、前記長辺の方向側の前記側面を対向させる姿勢で離間して設けられている乾燥炉。
【請求項16】
複数の前記熱風ノズルのそれぞれは、当該熱風ノズルの前記長辺の方向と、当該熱風ノズルが属する前記ノズル列の延在方向と、がなす角が0°より大きく90°より小さい姿勢で設けられ、
前記延在方向において、一つの前記熱風ノズルの存在範囲は、当該熱風ノズルに隣接する前記熱風ノズルの存在範囲と、部分的に重複している請求項15に記載の乾燥炉。
【請求項17】
前記ブースに、前記ブースの底部を画定する底面、天面、前記底面と前記天面の間に配置された側壁面、および、前記底面と前記側壁面との間に延びる傾斜面、が設けられ、
複数の前記熱風ノズルは、前記傾斜面に設けられている請求項15または16に記載の乾燥炉。
【請求項18】
前記ブースの内側に延びる邪魔板が少なくとも一つ設けられている請求項15~17のいずれか一項に記載の乾燥炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱風ノズルおよび乾燥炉に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装設備などにおいて、ワークを乾燥させるための設備として、乾燥対象のワークを収容したブース内に熱風を吹き込む態様の乾燥炉が汎用されている。かかる乾燥炉に熱風を吹き込む熱風ノズルとしては、特開平9-99263号公報(特許文献1)に開示されているようなスリットノズル型、特開平11-290751号公報(特許文献2)に開示されているような角錐型、および、特開平11-188303号公報(特許文献3)に開示されているようなエゼクタノズル型、などが汎用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-99263号公報(または米国特許第5823767号明細書)
【文献】特開平11-290751号公報
【文献】特開平11-188303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今の省エネ要求を背景に、塗装設備においても消費エネルギーの低減が求められており、特に乾燥炉における消費エネルギーを低減するべく、低温硬化型塗料(たとえば硬化温度が100℃程度の塗料をいう。)の採用が進んでいる。低温硬化型塗料は、一般的に、塗料焼き付けに適した温度帯の幅が狭いため、乾燥炉における温度制御の精密性、とくにワーク全体を均一に加熱することが求められる。
【0005】
ワーク全体を均一に加熱するためには、乾燥炉内を循環する空気の流量を向上することが効果的であるが、熱風ノズルから吐出される熱風の流量自体を増加させることは、省エネ要求に反するため好ましくない。そこで、熱風ノズルから吐出される熱風が周囲の空気を巻き込む誘引効果を効果的に活用することが検討されている。しかし、特許文献1~3のような従来の熱風ノズルでは、十分な誘引効果が得られなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、誘引効果を発揮しやすい熱風ノズル、およびこれを備える乾燥炉の実現が望まれる。
【0007】
本発明に係る熱風ノズルは、吐出口を有する先端面と、前記先端面と基端との間に延びる側面と、を備え、前記先端面は、長手方向と短手方向とを区別可能な形状を有し、かつ、前記長手方向の中央部分が当該長手方向の両端よりも突出して設けられ、前記吐出口は、前記先端面が突出する形状に沿って設けられ、前記短手方向に沿う断面において、前記先端面における前記側面間の距離が、前記吐出口の幅より大きいことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、熱風が、熱風ノズルの延出方向に沿って直進する方向に吐出されるのみならず、当該直進の方向から左右に拡がる方向にも吐出される。これによって、誘引効果を発揮しやすい。
【0022】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係る乾燥炉の斜視断面図である。
図2】実施形態に係る熱風ノズルの正面図である。
図3】実施形態に係る熱風ノズルの上面図である。
図4図3のIV-IV線における断面図である。
図5】実施形態に係るノズル列の上面図である。
図6】実施形態に係るノズル列から吐出される熱風の分布を示す模式図である。
図7】変形例に係る乾燥炉の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る熱風ノズルおよび乾燥炉の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、自動車の車体Bの塗装設備において用いられる乾燥炉100、および、乾燥炉100に設けられた熱風ノズル1、を例として、本発明の実施形態を説明する。
【0025】
〔本実施形態の概要〕
本実施形態に係る乾燥炉100は、塗装設備において車体Bを乾燥させる装置として用いられる。乾燥炉100の内部空間Sに対して熱風ノズル1から熱風を吹き込むことによって、当該内部空間Sに収容された車体Bの温度が上昇し、これによって車体Bに付着した塗料の乾燥がなされる(図1)。車体Bは、コンベア120によって搬送されて乾燥炉100内を内部空間Sの長手方向(図1のX軸方向)に進行する。
【0026】
〔熱風ノズルの構成〕
本実施形態に係る熱風ノズル1は、吐出口21を有する先端面2と、先端面2と基端4との間に延びる側面3と、を備える(図2図4)。本実施形態では、熱風ノズル1は、乾燥炉100の壁面(傾斜面114)から内部空間Sに向けて延びており、当該壁面に基端4が配置されている。基端4は給気ダクトに接続される。
【0027】
先端面2は、上面図(図3)において長方形であり、したがって長手方向αと短手方向βとを区別可能である。なお、側面3のうち、先端面2の長辺(長手方向α)側の側面3aと、先端面2の短辺(短手方向β)側の側面3bと、を区別可能である。
【0028】
先端面2の、長手方向αの中央部分22は、長手方向αの両端に位置する端部23より突出して設けられている(図2)。より具体的には、先端面2は、両側の端部23にわたって連続的に湾曲している湾曲面として設けられている。本実施形態では、先端面2の湾曲形状は、半径97mm、中心角84°の扇形の円弧部分に相当する形状にしてあり、中央部分22の頂点22aは、端部23より25mm突出している。
【0029】
本実施形態では、短手方向βに沿う断面(図4)における先端面2の幅W1は、35mmである。この例のように、先端面2の幅W1が20mm以上50mm以下であると、熱風ノズル1が圧力ヘッダーの役割を十分に果たしやすい。特に、先端面2の幅W1が、後述する吐出口21の幅W2より十分に大きいと、熱風ノズル1から吐出される熱風の風速が均等になりやすい。ただし、先端面2の幅W1が過度に大きい場合、誘引効果が損なわれる場合があるので、上記のように好適な範囲に上限を設けている。
【0030】
吐出口21は、先端面2の短手方向β中央に、長手方向αに沿って開口する長方形のスリットとして設けられている(図2図4)。本実施形態では、短手方向βに沿う断面(図4)において、吐出口21の幅W2は5mmであり、これは先端面2の幅W1(35mm)の14%である。
【0031】
この例のように、吐出口21の幅W2が5mm以上であると、吐出口21の開口を十分に確保でき、吐出される熱風(加熱空気)の圧損を抑制できるため好ましい。また、吐出口21の幅W2が20mm以下であると、吐出される熱風の風速が、十分な空気誘引効果を有する水準(たとえば毎秒15~25m)に達しやすいため好ましい。
【0032】
また、本実施形態では、短手方向βに沿う断面(図4)において吐出口21を挟む先端面2の実体部分の幅W3が、両側に15mmずつ確保してある。このように、吐出口21に隣接する実体部分の幅W3を5mm以上確保すると、吐出口21の周囲で渦流が生じやすく、これによって周囲の空気の撹拌が促進されやすいため、好ましい。この観点から、当該実体部分と熱風が吐出される方向とが直交することが好ましく、したがって、先端面2と側面3とが直交することが好ましい。なお、吐出口21を挟む先端面2の実体部分の幅は、吐出口の両側について等しくなくてもよい。
【0033】
なお、吐出口21は、先端面2が突出(湾曲)する形状に沿って設けられている。本実施形態では、先端面2の湾曲面に沿う吐出口21の長さLは、100mmである。吐出口21が、先端面2が突出(湾曲)する形状に沿って設けられていることによって、吐出口21から吐出される熱風は、熱風ノズルの延出方向に沿って直進する方向のみならず、当該直進の方向から左右に拡がる方向にも吐出されることになる。すなわち、本実施形態に係る熱風ノズル1によれば、長手方向αに拡がる放射状に熱風を吐出できる。なお、長手方向αに沿う断面において吐出口21を挟む先端面2の実体部分が存在すると、特に熱風が放射状になりやすいため、好ましい。
【0034】
〔乾燥炉の構成〕
乾燥炉100は、ブース110と、車体B(ワークの例である。)を支持可能なコンベア120(支持部の例である。)と、複数の熱風ノズル1とを含む(図1)。
【0035】
ブース110には、ブース110の底部を画定する底面111、ブース110の側面を画定する二つの側壁面112、ブース110の天面を画定する天面113、および、底面111と側壁面112との間に延びる二つの傾斜面114、が設けられている。傾斜面114は、水平方向(図1のXY平面方向)に対して45°傾斜している。底面111、側壁面112、天面113、および傾斜面114によって、ブース110の内部にはトンネル状の内部空間Sが形成されている。
【0036】
コンベア120は、底面111から上方に延びており、車体Bを支持するとともに車体Bを内部空間Sの長手方向(図1のX軸方向)に搬送できるように構成されている。
【0037】
熱風ノズル1は、複数の熱風ノズル1(本実施形態では10基)が直線状に並べられたノズル列10を形成している(図5)。各ノズル列10において、隣接する熱風ノズル1は、側面3a(先端面2の長辺側)を対向させる姿勢で、離間して設けられている。
【0038】
それぞれのノズル列10の延在方向は、傾斜面114の長手方向(図1のX軸方向)に沿っている。また、複数の熱風ノズル1のそれぞれは、熱風ノズル1の長手方向αと、当該熱風ノズル1が属するノズル列10の延在方向(図1のX軸方向)とが、45°の角をなすように設けられている。ここで、ある熱風ノズル1Aの、ノズル列10の延在方向に沿う存在範囲ZAは、当該熱風ノズル1Aに隣接する熱風ノズル1Bの当該延在方向に沿う存在範囲ZBと、部分的に重複している(図5)。これによって、隣接する熱風ノズル1から吐出される熱風に重複範囲Dが生じるので、車体Bが内部空間Sの長手方向に沿って搬送されるあいだ、熱風ノズル1から吐出された熱風が途切れなく車体Bに当たる状態を実現できる(図6)。このように、熱風ノズル1の長手方向αと、当該熱風ノズル1が属するノズル列10の延在方向とが、0°より大きく90°より小さいことが好ましい。
【0039】
それぞれの熱風ノズル1は、傾斜面114から垂直に、内部空間Sに向けて延びている。傾斜面114は水平方向(図1のXY平面方向)に対して45°傾斜して設けられているので、それぞれの熱風ノズル1は水平方向に対して45°傾斜して設けられている。熱風ノズル1から吐出された熱風は、コンベア120に支持された車体Bに、当該車体B斜め下方向から当たることになる。また、各ノズル列10は二つの傾斜面114のそれぞれに配置されており、車体Bの左右両側の斜め下方向から熱風を当てることができる。車体Bの下方部分(底部やドア下部など)は温度が上がりにくいことがあるが、この構成によって当該下方部分に重点的に熱風を当てることができるので、当該下方部分の温度を上げやすくなる。
【0040】
〔乾燥炉の変形例〕
変形例に係る乾燥炉100A(図7)では、ブース110の内側に延びる邪魔板115(115A、115B、115C)が設けられている。このうち、邪魔板115Aは天面113から下方向に、邪魔板115Bおよび邪魔板115Cは底面111から上方向に、それぞれ延びている。邪魔板115Aの延出長さは350mmであり、邪魔板115Bおよび邪魔板115Cの延出長さは250mmである。
【0041】
熱風ノズル1から熱風が吐出されることによって、内部空間Sにおいて、旋回流(図7のYZ平面に沿って時計回りまたは反時計回りに流れる空気の流れ)が生じる場合がある。旋回流が生じると、旋回流によって熱風に流されるため、車体Bに対する熱風の当たり方が意図している当たり方にならず、車体Bの温度にばらつきが生じる可能性がある。そこで当変形例では、邪魔板115を設けることによって、内部空間Sの断面(図7のYZ平面)方向に流れる空気の流れを遮って、旋回流を抑制している。
【0042】
なお、邪魔板115を設ける場合、当変形例のように三か所の邪魔板115(115A、115B、115C)設けなくてもよく、内部空間Sの断面(図7のYZ平面)の少なくとも一か所において空気の流れが遮られればよい。たとえば、天面113から延びる一か所の邪魔板115Aのみを設けてもよい。
【0043】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る熱風ノズルおよび乾燥炉のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0044】
上記の実施形態では、先端面2が両側の端部23にわたって連続的に湾曲している湾曲面として設けられている構成を例として説明した。しかし、本発明に係る先端面は、長手方向の中央部分が当該長手方向の両端よりも突出して設けられている限りにおいて、湾曲面に限定されない。たとえば、先端面を、複数の平面を組み合わせて設けてもよい。この場合、正面図における先端面の形状(図2に対応する視点における先端面の形状)は、多角形の一部でありうる。なお、この場合、先端面が突出する形状に沿って吐出口を設けるためには、吐出口が上記多角形の少なくとも一つの頂点に跨って設けられていることが好ましい。すなわち、吐出口は、長手方向に拡がる放射状に熱風を吐出できる形状で設けられていればよい。
【0045】
上記の実施形態では、先端面2が上面図(図3)において長方形である構成を例として説明した。しかし、本発明において、先端面の形状は、長手方向と短手方向とを区別可能な形状である限りにおいて限定されず、たとえば楕円や多角形などでありうる。
【0046】
上記の実施形態では、吐出口21が長方形のスリットとして設けられている構成を例として説明した。しかし、本発明における吐出口は、先端面が突出する形状に沿って設けられている(すなわち、長手方向に拡がる放射状に熱風を吐出できる形状で設けられている)限りにおいて、形状および配置が限定されない。吐出口は、たとえば、楕円や多角形などの形状であってもよいし、先端面が突出する形状に沿って複数の小開口が並べられている構成であってもよい。なお、後者の変形例において、それぞれの小開口は、円形、楕円形、多角形など、任意の形状でありうる。
【0047】
上記の実施形態では、熱風ノズル1の長手方向αと、当該熱風ノズル1が属するノズル列10の延在方向(図1のX軸方向)とが、45°の角をなすように設けられている構成を例として示し、当該角が0°より大きく90°より小さいことが好ましい旨を説明した。しかし、本発明において、熱風ノズルと、当該熱風ノズルが属するノズル列の延在方向とがなす角は特に限定されない。
【0048】
上記の実施形態では、熱風ノズル1Aの、ノズル列10の延在方向に沿う存在範囲ZAが、当該熱風ノズル1Aに隣接する熱風ノズル1Bの当該延在方向に沿う存在範囲ZBと、部分的に重複している構成を例として説明した。しかし、本発明において、かかる重複が存在しなくてもよい。
【0049】
上記の実施形態では、熱風ノズル1(ノズル列10)が傾斜面114に設けられている構成を例として説明した。しかし、本発明において、熱風ノズルが設けられる位置は限定されない。また、傾斜面114を設ける場合、水平方向に対する傾斜は上記の例における45°に限定されず、ワークに応じて適宜決定されうる。具体的には、ワークのうち熱風を重点的に当てたい箇所、および、熱風をあまり当てたくない箇所、の配置が考慮されうる。
【0050】
上記の実施形態では、車体Bを乾燥させる装置としての乾燥炉100を例として説明した。しかし、本発明において、乾燥対象とするワークは限定されない。
【0051】
上記の実施形態では、乾燥炉100がコンベア120を備え、車体Bがコンベア120によって搬送される構成を例として説明した。しかし、本発明に係る乾燥炉において、支持部はワークを支持可能である限りにおいて限定されない。すなわち、当該支持部は上記の実施形態におけるコンベア120のような可動式のものに限定されず、固定式のものであってもよい。
【0052】
上記の実施形態では、上記の実施形態に係る熱風ノズル1を備える乾燥炉100を例として説明した。しかし、本発明に係る乾燥炉に備えられる熱風ノズルは、本発明に係る熱風ノズルである限りにおいて限定されない。すなわち、本発明は、本発明に係る熱風ノズルの乾燥炉における使用でありうる。
【0053】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、たとえばワークを乾燥させるための乾燥炉、および当該乾燥炉に設置する熱風ノズルに利用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 :熱風ノズル
2 :先端面
21 :吐出口
22 :先端面の中央部分
22a :先端面の中央部分の頂点
23 :先端面の端部
3 :側面
3a :先端面の長辺側の側面
3b :先端面の短辺側の側面
4 :基端
10 :ノズル列
100 :乾燥炉
110 :ブース
111 :底面
112 :側壁面
113 :天面
114 :傾斜面
115 :邪魔板
120 :コンベア
B :車体
S :乾燥炉の内部空間
ZA,ZB :熱風ノズルの存在範囲
D :熱風の重複範囲
α :熱風ノズルの長手方向
β :熱風ノズルの短手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7