(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】OA軸用快削鋼熱間圧延線材の生産方法
(51)【国際特許分類】
C21D 8/06 20060101AFI20240830BHJP
B22D 11/00 20060101ALI20240830BHJP
B22D 11/115 20060101ALI20240830BHJP
B22D 11/128 20060101ALI20240830BHJP
B22D 11/20 20060101ALI20240830BHJP
C22C 38/60 20060101ALI20240830BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20240830BHJP
C21C 5/28 20060101ALI20240830BHJP
C21C 5/46 20060101ALI20240830BHJP
C21C 7/072 20060101ALI20240830BHJP
G01N 27/84 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
C21D8/06 A
B22D11/00 A
B22D11/115 D
B22D11/128 350A
B22D11/20 A
C22C38/60
C22C38/00 301Y
C21C5/28 Z
C21C5/46 103E
C21C7/072 Z
G01N27/84
(21)【出願番号】P 2023518332
(86)(22)【出願日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 CN2021109958
(87)【国際公開番号】W WO2022083217
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-03-21
(31)【優先権主張番号】202011118645.7
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523025469
【氏名又は名称】中天鋼鉄集団有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】523025296
【氏名又は名称】常州中天特鋼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100230086
【氏名又は名称】譚 粟元
(74)【代理人】
【識別番号】100207561
【氏名又は名称】柳元 八大
(72)【発明者】
【氏名】周 ▲ミョウ▼
(72)【発明者】
【氏名】張 盛華
(72)【発明者】
【氏名】蘇 振偉
【審査官】河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/159617(WO,A1)
【文献】特開2007-319872(JP,A)
【文献】特開2007-162119(JP,A)
【文献】特開2001-207240(JP,A)
【文献】特表2011-530004(JP,A)
【文献】特開平11-343514(JP,A)
【文献】特開2000-178630(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110722119(CN,A)
【文献】特開2000-256740(JP,A)
【文献】特開平07-005121(JP,A)
【文献】特開平07-132984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 1/00-11/00
B22D 11/00-11/22
C22C 38/00-38/60
C21C 1/00-7/10
G01N 27/00-27/92
C21B 3/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
OA軸用快削鋼熱間圧延線材の生産方法であって、
原料組成である鋼の化学成分を質量百分率で計算する場合、配合比は、C:0.04~0.10%、Si≦0.10%、Mn:1.00~1.50%、P:0.030~0.100%、S:0.30~0.45%であり、残りが、Fe及び不可避的不純物であり、
OA軸用快削鋼熱間圧延線材の生産方法は、転炉製錬、LF炉精錬、連続鋳造機による連続鋳造、分塊圧延、圧延ビレット仕上げ、完成品線材圧延、線材梱包及び保護であり、次のステップを含み、
(1)転炉製錬プロセスにおいて高品質の鋼屑を用い、ローキャッチカーボン操作を採用し、出鋼Cは、0.06%以下であり、出鋼温度は、1650℃以上であり、出鋼プロセスで脱酸剤、合金、スラグを順次添加し、
(2)LF精錬プロセスにおいて全行程でアルゴンガスを底吹きして溶鋼を攪拌し、アルゴンステーションのサンプルの状況に応じて合金及びスラグを追加し、酸素定量の状況に応じて脱酸剤を添加することができ、ステーションから出た後、取鍋の底にアルゴンガスをソフトブローし、ソフトブロー時間は、20min以上であり、ソフトブロー後の鋳造開始温度を1550~1650℃に制御し、
(3)連続鋳造プロセスにおいて全行程で保護的鋳造を採用し、快削鋼専用保護スラグを用い、結晶器を振動させ、電磁攪拌をオンにし、連続鋳造プロセスにおいて、弱冷却モードを採用し、鋳片凝固末端に動的軽圧下を用い、ビレット引張速度を0.75~0.95m/minに制御し、連続鋳造ビレット断面は、280×320mm
2であり、
(4)連続鋳造ビレットに分塊を行い、加熱温度を950~1350℃に制御し、総加熱時間は、240min以上であり、分塊断面は、160×160mm
2であり、
(5)分塊後にビレット仕上げを行い、片側皮はぎ深さは、3.0mm以上であり、面取り幅は、20.0mm以上であり、仕上げ後のビレットに探傷を行い、
(6)完成品線材圧延プロセスにおいて、加熱温度を900~1300℃に制御し、総加熱時間は、180min以上であり、圧延開始温度は、1150℃以上であり、仕上げ圧延入り温度と縮小サイジング入り温度は、いずれも1100℃以上であり、縮小サイジングユニットとレイングヘッドの間にホットアイHoteye装置をオンにし、レイング温度を950~1000℃に制御し、ステルモアローラーテーブル速度を15~30m/minに制御し、保温カバーを全部オンにし、線材が500℃以下に急速に冷却されるようにステアモアファンをオンにし、
(7)線材梱包プロセスにおいて両端に保護プラスチックボール紙を追加し、梱包圧力を制御し、押出速度を制御し、梱包が完了した後に線材に外部保護プラスチック包装袋をかぶせ
、
ステップ(6)において、電力が2×10
5
Wであるステルモアファンを6台以上オンにし、風量開度を60%よりも大きくし、
ステップ(7)において、線材梱包工程における押出速度は、0.02m/s以下であり、梱包圧力は、15~25tである、
ことを特徴とするOA軸用快削鋼熱間圧延線材の生産方法。
【請求項2】
ステップ(1)において、出鋼プロセスで添加される脱酸剤は、アルミニウム鉄であり、添加量は、3.0kg/t以上であり、添加される合金は、低炭素マンガン鉄、硫黄鉄、リン鉄であり、添加量は、それぞれ12.0~20.0kg/t、8.0~13.0kg/t、0.5~3.0kg/tであり、添加されるスラグは、石灰であり、添加量は、600kg/炉以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載のOA軸用快削鋼熱間圧延線材の生産方法。
【請求項3】
ステップ(3)において、鋳片凝固末端の動的軽圧下における初期設定値は、10mmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のOA軸用快削鋼熱間圧延線材の生産方法。
【請求項4】
ステップ(4)において、分塊加熱の空燃比は、0.5~0.7であり、
加熱一段温度は、950~1100℃であり、加熱時間は、100min以上であり、
加熱二段温度は、1150~1300℃であり、加熱時間は、80min以上であり、
均熱段の温度は、1250~1350℃であり、加熱時間は、60min以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載のOA軸用快削鋼熱間圧延線材の生産方法。
【請求項5】
ステップ(5)において、ビレット探傷方式は、磁粉探傷である、
ことを特徴とする請求項1に記載のOA軸用快削鋼熱間圧延線材の生産方法。
【請求項6】
ステップ(6)において、圧延ビレット加熱の空燃比は、0.4~0.6であり、
加熱一段温度は、900~1050℃であり、加熱時間は、80min以上であり、
加熱二段温度は、1100~1250℃であり、加熱時間は、60min以上であり、
均熱段の温度は、1200~1300℃であり、加熱時間は、40min以上である、
ことを特徴とする請求項4に記載のOA軸用快削鋼熱間圧延線材の生産方法。
【請求項7】
ステップ(6)において、ホットアイHoteye装置の三つのHDレンズは、全長線材表面に対して360°オンライン検出を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載のOA軸用快削鋼熱間圧延線材の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼冶金技術分野に属し、鋼の生産方法に関し、特にプリンタ軸、複写機軸、ファクシミリ軸、カメラ軸などのOA軸類の快削鋼熱間圧延線材及びこの熱間圧延線材の生産工程に関する。
【背景技術】
【0002】
OA軸類製品には、主にプリンタ軸、複写機軸、ファクシミリ軸、カメラ軸などがあり、その製品の特徴により、熱間圧延線材原料の表面品質、切削性能、製品安定性などの面に対する要求が極めて高いことが決定される。そのうち、原料線材のピット、あばた面、ブローホール、押出傷、擦り傷などの許容深さは、0.05mmより高くなってはならず、これは、製錬工程が特殊で、圧延温度が特殊であり、極めて擦りやすく損傷しやすい快削鋼線材にとっては過酷と言える。切削性能の面では、OA軸類製品に付帯する下流のユーザ加工設備は、基本的には業界の先進的なものに属すため、旋削加工の速度が高く、切削性能に対する要求も相対的に向上するようになる。製品安定性の面では、OA軸類製品を生産する下流ユーザは、加工後の半製品の無欠陥納品が保証されるように基本的にはオンライン探傷装置を装備しているため、製品品質の安定性に対する要求も、一般的な切削ユーザよりもはるかに高い。
【0003】
線材の切削性能及び力学的性能を保証するには、合理的な化学成分及び製錬方法を設計する必要があり、OA軸の欠陥探傷の合格率を向上させるには、線材表面の欠陥を改善する必要がある。現代の製鉄所の製錬技術は成熟しているが、特殊鋼には、製錬時に特別な要求と操作があり、快削鋼も同様である。現在、線材の表面欠陥を改善する方法は、ビレット仕上げ、ビレット加熱昇温速度、鋼材圧延工程、線材梱包や輸送保護など、主にビレット、線材の生産と輸送の面から着手する場合が多い。
【0004】
現在、国内の中国特許データベースには、専らOA軸類製品の特徴を対象とする快削鋼熱間圧延線材の生産方法はない。本発明は、特殊な製錬方法を添加することにより、線材欠陥の除去方法をまとめて改良し、本発明は、OA軸の強度が使用要求を満たし、かつ探傷要求に合致するようにOA軸用快削鋼熱間圧延線材及びその生産方法を提供することを試みる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、上記の技術的課題に対して、化学成分、ビレット品質、圧延安定性、線材表面品質及び力学的性能を効果的に制御し、下流ユーザのところの切削性能及び表面品質の安定性を満たし、ユーザがプリンタ軸、複写機軸、ファクシミリ軸、カメラ軸などのOA軸を順調に切削加工できることを確保し、OA軸の強度が使用要求を満たし、かつ探傷要求に合致するOA軸用快削鋼熱間圧延線材及びその生産方法を提供することにある。
【0006】
上記の技術的目的を達成するために、本発明によれば、OA軸用快削鋼熱間圧延線材及びその生産方法が提供される。
【0007】
OA軸用快削鋼熱間圧延線材であって、その化学成分を質量百分率で計算する場合、配合比は、C:0.04~0.10%、Si≦0.10%、Mn:1.00~1.50%、P:0.030~0.100%、S:0.30~0.45%であり、残りが、Fe及び不可避的不純物である。
【0008】
OA軸用快削鋼熱間圧延線材の生産方法であって、その生産工程は、転炉製錬、LF炉精錬、連続鋳造機による連続鋳造、分塊圧延、圧延ビレット仕上げ、完成品線材圧延、線材梱包及び保護であり、ステップは、以下のとおりである。
【0009】
(1)転炉製錬プロセスにおいて比率が15%を超えない高品質の鋼屑を用い、ローキャッチカーボン操作を採用し、出鋼Cは、0.06%以下であり、出鋼温度は、1650℃以上であり、出鋼プロセスで脱酸剤、合金、スラグを順次添加する。
【0010】
さらに、ステップ(1)において、出鋼プロセスで添加される脱酸剤は、アルミニウム鉄であり、添加量は、3.0kg/t以上であり、添加される合金は、低炭素マンガン鉄、硫黄鉄、リン鉄であり、添加量は、それぞれ12.0~20.0kg/t、8.0~13.0kg/t、0.5~3.0kg/tであり、添加されるスラグは、石灰であり、添加量は、600kg/炉以上である。一定量の硫黄鉄を添加することは、溶鋼中のS含有量が成分要求(S含有量が0.30~0.45%に達する)に合致することを保証し、凝固後に硫化物(FeSやMnSなど)を形成し、金属マトリックスを分割する役割を果たし、鋼の切削性能を保証するためである。
【0011】
(2)LF精錬プロセスにおいて全行程でアルゴンガスを底吹きして溶鋼を攪拌し、アルゴンステーションのサンプルの状況に応じて合金及びスラグを追加し、酸素定量の状況に応じて脱酸剤を添加することができ、ステーションから出た後、取鍋の底にアルゴンガスをソフトブローし、ソフトブロー時間は、20min以上であり、ソフトブロー後の鋳造開始温度を1550~1650℃に制御する。
【0012】
さらに、ステップ(2)において、アルゴンステーションで添加される合金は、硫黄鉄、リン鉄、低炭素マンガン鉄(炭素が低い場合は適量の高炭素マンガン鉄を用いてもよい)、補充されるスラグは石灰であり、補充される脱酸剤はアルミニウム鉄である。
【0013】
(3)連続鋳造プロセスにおいて全行程で保護的鋳造を採用し、快削鋼専用保護スラグを用い、結晶器を振動させ、電磁攪拌をオンにし、連続鋳造プロセスにおいて、弱冷却モードを採用し、鋳片凝固末端に動的軽圧下を用い、ビレット引張速度を0.75~0.95m/minに制御し、連続鋳造ビレット断面は、280×320mm2である。
【0014】
さらに、ステップ(3)において、鋳片凝固末端の動的軽圧下における設定値の総圧下量は、8~12mmであり、軽圧下により、二相領域の凝固収縮を補償し、連続鋳造ビレットの中心ポロシティ、収縮及び偏析を低減させ、連続鋳造ビレットの内在質量を向上させることができる。
【0015】
(4)連続鋳造ビレットに分塊を行い、加熱温度を950~1350℃に制御し、総加熱時間は、240min以上であり、分塊断面は、160×160mm2である。加熱温度を1000~1350℃に制御し、総加熱時間は、240~300minであることが好ましい。
【0016】
さらに、ステップ(4)において、分塊加熱の空燃比は、0.5~0.7であり、加熱一段温度は、950~1100℃であり、加熱時間は、100min以上であり、加熱二段温度は、1150~1300℃であり、加熱時間は、80min以上であり、均熱段の温度は、1250~1350℃であり、加熱時間は、60min以上である。
【0017】
加熱一段温度は、1000~1100℃であり、加熱時間は、100~120minであり、加熱二段温度は、1200~1300℃であり、加熱時間は、80~100minであり、均熱段の温度は、1250~1350℃であり、加熱時間は、60~80minであることが好ましい。
【0018】
(5)分塊後にビレット仕上げを行い、片側皮はぎ深さは、3.0mm以上であり、面取り幅は、20.0mm以上であり、仕上げ後のビレットに探傷を行う。
【0019】
分塊断面が160×160mm2であるさらなる好適値は、片側皮はぎ深さ3.0~4.0mm、面取り幅20.0mm~25.0mmである。
【0020】
(6)完成品線材圧延プロセスにおいて、加熱温度を900~1300℃に制御し、総加熱時間は、180min以上であり、圧延開始温度は、1150℃以上であり、仕上げ圧延入り温度と縮小サイジング入り温度は、いずれも1100℃以上であり、縮小サイジングユニットとレイングヘッドの間にホットアイHoteye装置をオンにし、レイング温度を950~1000℃に制御し、ステルモアローラーテーブル速度を15~30m/minに制御し、保温カバーを全部オンにし、線材が500℃以下に急速に冷却されるようにステアモアファンをオンにする。
【0021】
さらに、ステップ(6)において、圧延ビレット加熱の空燃比は、0.4~0.6であり、加熱一段温度は、900~1050℃であり、加熱時間は、80min以上であり、加熱二段温度は、1100~1250℃であり、加熱時間は、60min以上であり、均熱段の温度は、1200~1300℃であり、加熱時間は、40min以上である。そのうち、加熱一段温度の加熱時間は80~100minであり、加熱二段温度の加熱時間は60~80minであり、均熱段の加熱時間は40~60minであることが好ましい。
【0022】
さらに、ステップ(6)において圧延ビレットが高温で十分に加熱されることで、ビレット表面と心部、端部と中間の温度均一性を確保し、その後のマイクロ張力による安定した圧延を実現し、完成品の寸法精度を保証することができる。また、ビレットの高温加熱により、ビレットの高い圧延開始温度を保証し、さらにブランクを高温状態で粗中圧延、プレ仕上げ圧延、仕上げ圧延ユニット及び縮小サイジングユニットを通過させ、圧延プロセス全体がスムーズになることを実現し、鋼堆積のリスクを低下させることができる。
【0023】
さらに、ステップ(6)において、圧延開始温度は、1180~1250℃であることが好ましく、仕上げ圧延入り温度と縮小サイジング入り温度は、1100~1200℃であることが好ましい。
【0024】
さらに、ステップ(6)において、電力が2×105Wであるステルモアファンを6台以上オンにし、風量開度を60%よりも大きくすることで、平均冷却速度を5.0℃/s以上にし、線材を500℃以下に急速に冷却し、タックの後にC字形フックで80℃未満まで自然冷却した後に梱包するようにする。冷却工程とステルモアローラーテーブル速度の二つの措置により、線材とステルモアローラーテーブルとの接触に生じる擦り傷を効果的に低減させることができる。
【0025】
(7)線材梱包プロセスにおいて両端に保護プラスチックボール紙を追加し、梱包圧力は15~25tであり、合理的な押出速度を制御し、梱包が完了した後に線材に外部保護プラスチック包装袋をかぶせる。
【0026】
さらに、ステップ(7)において、線材梱包工程における押出速度は、0.02m/s以下であり、梱包プロセスにおける線材表面の押出傷を効果的に低減させることができる。
【0027】
さらに、ステップ(4)における連続鋳造大ビレットの分塊、ステップ(5)における分塊後のビレット仕上げは、キーとなる工程であり、皮下気泡、ピンホール、表面衝撃痕、スラグ溝、角部のひび割れを除去することができ、上記の連続鋳造ビレットの表面欠陥は、圧延により延長変形した後、圧延材に反映され、さらに、ピット、あばた、砂きずなどの欠陥として下流ユーザのOA軸類部品の表面に現れるため、ビレット表面品質の保証に対して極めて重要である。
【0028】
さらに、ステップ(5)において、ビレット探傷方式は、磁粉探傷であり、ビレット探傷は、さらに表面ひび割れが存在するビレットを除去し、次の圧延工程の完成品の線材品質の安定性を保証することができる。
【0029】
さらに、ステップ(6)において、ホットアイHoteye装置の三つのHDレンズは、全長線材表面に対して360°死角のないオンライン検出を行い、線材の表面欠陥を速やかに発見し、必要な異常管理措置を採用することには重要な指導的役割を有し、生産プロセスの制御可能性と製品品質の安定性をさらに保証することができる。
【0030】
本発明によれば、化学成分が安定することが保証されるように製錬プロセス及び精錬プロセスを厳密に制御し、連続鋳造プロセスにおいて、一連の措置により連続鋳造ビレットの表面品質と内部品質を向上させ、分塊と仕上げは、ビレットの表面品質をさらに向上させることができ、ビレット探傷は、次の工程の材料品質が制御可能であることを保証でき、完成品圧延プロセスにおいて、加熱を制御することにより、生産がスムーズで安定することを保証し、ホットアイHoteye装置により、生産品質の安定性を保証し、梱包プロセスにおける押出速度を制御することにより、線材表面の押出傷を低減させ、線材は、外部保護プラスチック包装袋をかぶせることにより、輸送や集積プロセスにおける擦り傷を低減させることができる。
【0031】
本発明の有益な効果は、本発明で生産されるOA軸用快削鋼熱間圧延線材により、化学成分が適格であり、表面品質が良好で、切削性能が優れ、力学的性能及び製品安定性がよいことを保証でき、下流ユーザのところの切削性能、表面品質の安定性及び強度要求を満たし、最終的に加工されるプリンタ軸、複写機軸、ファクシミリ軸、カメラ軸などのOA軸製品は、安定性がよく、強度が使用要求を満たし、かつ探傷要求に合致することである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明では、以下、ビレット化学成分C:0.07%、Si:0.03%、Mn:1.32%、P:0.059%、S:0.38%、完成品の仕様φ16.0mmのOA軸用快削鋼熱間圧延線材の生産実施と併せて説明する。
(実施例1)
【0033】
1、転炉製錬
転炉の炉総装入量は140tであり、製錬プロセスにおいて高品質の鋼屑を用い、ローキャッチカーボン操作を採用し、出鋼Cは、0.04%であり、出鋼温度は、1660~1680℃であり、出鋼プロセスでアルミニウム鉄3.5kg/t、低炭素マンガン鉄16.0kg/t、硫黄鉄10.0kg/t、リン鉄1.8kg/t、石灰700kg/炉を順次添加する。
【0034】
2、LF炉精錬
LF精錬プロセスにおいて全行程でアルゴンガスを底吹きして溶鋼を攪拌し、アルゴンステーションのサンプルの状況に応じて合金及びスラグを追加し、酸素定量(酸素含有量35~45ppmを要求する)の状況に応じて脱酸剤を添加することができ、ステーションから出た後、取鍋の底にアルゴンガスをソフトブローし、ソフトブロー時間は、30minであり、ソフトブロー後の鋳造開始温度を1580~1620℃に制御する。
【0035】
3、連続鋳造機による連続鋳造
連続鋳造プロセスにおいて全行程で保護的鋳造を採用し、快削鋼専用保護スラグ(快削鋼専用保護スラグ:上海日建易切削鋼専用保護スラグ:33~38%CaO、45~50%SiO2、2~5%Al2O3、2~5%CaF2、1~4%Na2O、1~3%K2O)を用い、結晶器を振動させ、電磁攪拌をオンにし、連続鋳造プロセスにおいて、弱冷却モードを採用し、鋳片凝固末端に動的軽圧下を用い、初期設定値は10mmであり、ビレット引張速度を0.85m/minに制御し、連続鋳造ビレット断面は、280×320mm2である。
【0036】
4、分塊圧延
連続鋳造ビレットに分塊を行い、加熱温度を1000~1350℃に制御し、空燃比を0.5~0.7に制御し、総加熱時間は、270minであり、そのうち、加熱一段温度は、1000~1100℃であり、加熱時間は、110minであり、加熱二段温度は、1200~1300℃であり、加熱時間は、90minであり、均熱段の温度は、1250~1350℃であり、加熱時間は、70minであり、分塊断面は、160×160mm2である。
【0037】
5、圧延ビレット仕上げ
分塊後にビレット仕上げを行い、片側皮はぎ深さは、3.0~3.5mmであり、面取り幅は、20.0~23.0mmであり、仕上げ後のビレットに磁粉探傷を行い、表面にひび割れが存在するビレットを除去して仕上げ探傷を継続して行う。
【0038】
6、完成品線材圧延
完成品線材圧延プロセスにおいて、加熱温度を950~1300℃に制御し、空燃比を0.4~0.6に制御し、総加熱時間は、210minであり、そのうち、加熱一段温度は、950~1050℃であり、加熱時間は、90minであり、加熱二段温度は、1150~1250℃であり、加熱時間は、70minであり、均熱段の温度は、1200~1300℃であり、加熱時間は、50minであり、圧延開始温度は、1180~1250℃であり、仕上げ圧延入り温度と縮小サイジング入り温度は、いずれも1100~1200℃であり、縮小サイジングユニットとレイングヘッドの間にホットアイHoteye装置をオンにし、その三つのHDレンズにより全長線材表面に対して360°死角のないオンライン検出を行い、レイング温度を950~1000℃に制御し、ステルモアローラーテーブル速度を25m/minに制御し、保温カバーを全部オンにし、線材が400~500℃に急速に冷却されるように電力が2×105Wであるステルモアファンを8台オンにし、風量開度を80%にする。
【0039】
7、線材梱包及び保護
線材梱包プロセスにおいて両端に保護プラスチックボール紙を追加し、梱包圧力は15~25tであり、押出速度を0.01m/sに制御し、梱包が完了した後に線材に外部保護プラスチック包装袋をかぶせる。
(実施例2)
【0040】
実施例2は、実施例1と比較して、ソフトブロー時間は40minであり、動的軽圧下における初期設定値は12mmであり、ビレット引張速度は0.90m/minであり、分塊圧延時の総加熱時間は300minであり、加熱一段時間は、120minであり、加熱二段時間は、100minであり、均熱段の時間は80minである。
【0041】
完成品線材圧延時の総加熱時間は、240minであり、加熱一段時間は、100minであり、加熱二段加熱時間は、80minであり、均熱段の時間は60minであり、電力が2×105Wであるステルモアファンを9台オンにし、風量開度を70%にすることであり、その他の操作は実施例1と同様である。
(比較例1)
【0042】
比較例1は,実施例1と比較して、主な違いは、実施例1のステップ5を省くことであり、その他の条件は、実施例1と同様である。
(比較例2)
【0043】
比較例2は、実際例1と比較して、主な違いは、実施例1のステップ6における8台のステルモアファンを全部オフにすることであり、その他の条件は、実施例1と同様である。
(比較例3)
【0044】
比較例3は、実施例1と比較して、主な違いは、実施例1のステップ6における電力が2×105Wである8台のステルモアファンの風量開度を80%から40%に置き換えることであり、その他の条件は、実施例1と同様である。
【0045】
風量が低すぎると冷却速度が低下し、急速な冷却効果を果たせず、線材のタック時の温度が400~500℃よりもはるかに高く、ローラーテーブルの高温状態では、擦り傷を引き起こす可能性が高い。
(比較例4)
【0046】
比較例4は、実施例1と比較して、主な違いは、実施例1のステップ6におけるステルモアローラーテーブルの速度を25m/minから10m/minに置き換えることであり、その他の条件は、実施例1と同様である。
(比較例5)
【0047】
比較例5は、実施例1と比較して、主な違いは、実施例1のステップ7における梱包機のプラテン押出速度を0.01m/sから0.05m/sに置き換えることであり、その他の条件は、実施例1と同様である。
(比較例6)
【0048】
比較例6は、実施例1と比較して、主な違いは、実施例1のステップ7における線材の外部保護プラスチック包装袋を省くことであり、その他の条件は、実施例1と同様である。
【0049】
本発明の実施例1、実施例2、比較例1、比較例2、比較例3、比較例4、比較例5は、比較例6で生産されるOA軸用快削鋼熱間圧延線材の力学的性能、切削性能及び下流ユーザによって加工されるOA軸の探傷結果の比較を表1に示す。
【0050】
【0051】
本発明で生産されるOA軸用快削鋼熱間圧延線材は、化学成分が適格であり、表面品質が良好で、切削性能が優れ、力学的性能及び製品安定性がよく、下流ユーザのところの切削性能及び表面品質の安定性を満たし、最終的に加工されるプリンタ軸、複写機軸、ファクシミリ軸、カメラ軸などのOA軸製品は、安定性がよく、かつ、強度が使用要求を満たし、探傷合格率が99%以上に達している。
【0052】
本発明に用いられる原料、装置は、特に断りのない限り、いずれも本分野の常用される原料、装置であり、本発明に用いられる方法は、特に断りのない限り、いずれも本分野の常規的方法である。上記は、本発明の好適実施形態に過ぎず、本発明を制限するためのものではなく、本発明の技術的本質に基づいて上記実施例に行った修正は、いずれも本発明の保護範囲に含まれている。