IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナンジン、ヴァレオ、クラッチ、カンパニー、リミテッドの特許一覧

特許7546772トルクリミッター、トランスミッションシステム、および該トルクリミッターを組立てるための方法
<>
  • 特許-トルクリミッター、トランスミッションシステム、および該トルクリミッターを組立てるための方法 図1A
  • 特許-トルクリミッター、トランスミッションシステム、および該トルクリミッターを組立てるための方法 図1B
  • 特許-トルクリミッター、トランスミッションシステム、および該トルクリミッターを組立てるための方法 図2A
  • 特許-トルクリミッター、トランスミッションシステム、および該トルクリミッターを組立てるための方法 図2B
  • 特許-トルクリミッター、トランスミッションシステム、および該トルクリミッターを組立てるための方法 図3
  • 特許-トルクリミッター、トランスミッションシステム、および該トルクリミッターを組立てるための方法 図4
  • 特許-トルクリミッター、トランスミッションシステム、および該トルクリミッターを組立てるための方法 図5
  • 特許-トルクリミッター、トランスミッションシステム、および該トルクリミッターを組立てるための方法 図6
  • 特許-トルクリミッター、トランスミッションシステム、および該トルクリミッターを組立てるための方法 図7
  • 特許-トルクリミッター、トランスミッションシステム、および該トルクリミッターを組立てるための方法 図8
  • 特許-トルクリミッター、トランスミッションシステム、および該トルクリミッターを組立てるための方法 図9
  • 特許-トルクリミッター、トランスミッションシステム、および該トルクリミッターを組立てるための方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】トルクリミッター、トランスミッションシステム、および該トルクリミッターを組立てるための方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 7/02 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
F16D7/02 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023522922
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(86)【国際出願番号】 CN2021123798
(87)【国際公開番号】W WO2022078443
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】202011096943.0
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519291548
【氏名又は名称】ナンジン、ヴァレオ、クラッチ、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NANJING VALEO CLUTCH CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】リー、リャン
(72)【発明者】
【氏名】セルカン、ギュルセス
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-121762(JP,A)
【文献】特開平7-54921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 7/02
F16F 15/12-15/139
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクリミッターであって、
回転軸を中心として回転駆動されるように構成された第1リング(1);
軸方向に前記第1リング(1)から特定距離に位置する第2リング(2);
軸方向に前記第1リング(1)と前記第2リング(2)との間に位置する圧力リング(3);
前記第2リング(2)と前記圧力リング(3)との間に滑走可能に介在する摩擦ディスク(4);
軸方向に前記第1リング(1)と前記圧力リング(3)との間に配列されるばね座金(5)であって、前記圧力リング(3)は、前記ばね座金(5)からのプレス力を収容し、前記摩擦ディスク(4)を前記第2リング(2)に対してプレスする、ばね座金(5);
を含み、
前記第1リング(1)および第2リング(2)が一体で形成され、前記第1リング(1)は複数の第1歯形部(11)を具備し、前記ばね座金(5)は、複数の支持歯形部(51)を具備し、それぞれの支持歯形部(51)は、一つの第1歯形部(11)によって支持されることを特徴とする、トルクリミッター。
【請求項2】
前記ばね座金(5)の支持歯形部(51)が半径方向外側に延長し、前記第1リング(1)の第1歯形部(11)が半径方向内側に延長することを特徴とする、請求項1に記載のトルクリミッター。
【請求項3】
前記ばね座金(5)の支持歯形部(51)は、軸方向に隣接した前記第1歯形部(11)の間を通過可能な大きさを有し、それにより前記ばね座金(5)は、組立て中に前記第1リング(1)を通過可能であり、前記ばね座金(5)は、組立て中に円周方向に所定角度だけ回転可能であり、それにより前記支持歯形部(51)が前記第1歯形部(11)上で支持可能にすることを特徴とする、請求項1または2に記載のトルクリミッター。
【請求項4】
前記第1リング(1)および第2リング(2)が複数の連結棒(7)によって相互連結され、前記連結棒(7)は、前記第1リング(1)および前記第2リング(2)と一体で形成されることを特徴とする、請求項1に記載のトルクリミッター。
【請求項5】
前記連結棒(7)の少なくとも一つの部分が軸方向に延長することを特徴とする、請求項4に記載のトルクリミッター。
【請求項6】
それぞれの連結棒(7)が円周方向に2個の第1歯形部(11)の間に配列され、前記第1リング(1)に連結される端部領域内の連結棒(7)の内径が前記支持歯形部(51)の外径より大きいことを特徴とする、請求項4に記載のトルクリミッター。
【請求項7】
前記圧力リング(3)が複数の軸方向延長回転防止歯形部(31)を具備し、前記回転防止歯形部(31)は、2個の隣接した連結棒(7)の間に挿入可能なことを特徴とする、請求項4に記載のトルクリミッター。
【請求項8】
前記複数の第1歯形部(11)のうち少なくとも一つは、第1溝(12)を具備し、前記複数の支持歯形部(51)のうち一つは、前記第1溝(12)の下端表面に対してプレスされることを特徴とする、請求項1に記載のトルクリミッター。
【請求項9】
前記ばね座金(5)は、半径方向内側に延長する複数の内部支持歯形部(52)をさらに具備し、前記内部支持歯形部(52)は、前記圧力リング(3)に対してプレスされ、回転防止装置を前記圧力リング(3)にフィッティングすることを特徴とする、請求項2に記載のトルクリミッター。
【請求項10】
前記圧力リング(3)の回転防止装置が複数の第2溝(32)を含み、前記内部支持歯形部(52)は、前記第2溝(32)の下端表面に対してプレスされることを特徴とする、請求項9に記載のトルクリミッター。
【請求項11】
前記圧力リング(3)の回転防止装置は、複数の軸方向に突出す制限突出部(33)の対を含み、前記内部支持歯形部(52)が挿入可能な離隔部部分34が前記制限突出部(33)のそれぞれの対の2個の制限突出部の間に形成されることを特徴とする、請求項9に記載のトルクリミッター。
【請求項12】
前記制限突出部(33)が前記圧力リング(3)の半径方向の内部縁部に、または半径方向の中間位置に位置することを特徴とする、請求項11に記載のトルクリミッター。
【請求項13】
摩擦ライニングが前記摩擦ディスク(4)と前記圧力リング(3)の間におよび/または前記摩擦ディスク(4)と前記第2リング(2)の間に配列されることを特徴とする、請求項1に記載のトルクリミッター。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載のトルクリミッター、およびトルクダンパ(200)を具備するトランスミッションシステムであって、
前記トルクダンパ(200)が入力部分(210)、出力部分(220)、および前記入力部分(210)と前記出力部分(220)の間で円周方向に圧縮するように配列されるばね(230)を具備し、
前記トルクダンパ(200)の入力部分(210)が前記トルクリミッターの第1リング(1)または摩擦ディスク(4)上に固定されることを特徴とする、トランスミッションシステム。
【請求項15】
トルクリミッターの組立て方法であって、
体で形成された入力部材または出力部材を提供する段階であって、前記入力部材または出力部材は、複数の第1歯形部(11)を有する第1リング(1)、軸方向に前記第1リング(1)から離隔する第2リング(2)、および前記第1リング(1)と第2リング(2)を相互連結する複数の連結棒(7)を含む、段階;
前記第2リング(2)上で支持される摩擦ディスク(4)を提供する段階;
前記摩擦ディスク(4)上で支持される圧力リング(3)を提供する段階;および
複数の支持歯形部(51)を有するばね座金(5)を提供する段階であって、前記ばね座金(5)は、前記摩擦ディスク(4)が前記第2リング(2)に対してプレスされるように前記圧力リング(3)をプレスする、段階;
を含み、
前記ばね座金(5)を提供する段階において、先ず、前記ばね座金(5)が前記第1リング(1)上で軸方向に移動して前記圧力リング(3)に対して隣り合い、前記支持歯形部(51)は、軸方向に隣接した前記第1歯形部(11)の間を通過し、次いで、それぞれの支持歯形部(51)が一つの第1歯形部(11)によって支持されるように、前記ばね座金(5)が円周方向に回転することを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクリミッター、およびトルクリミッターを含むトランスミッションシステムに関する。トルクリミッターは、コンパクトでかつ堅固な構造を有し、簡単でかつ費用効率的な方式で製造および組立てられることができる。また、本発明は、トルクリミッターを組立てるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モーター車両のエンジンによって生成されるトルクは、一般的に一定でなく頻繁に変動する。かかる一定でないトルクがギアボックスに伝達され、ギアボックスを振動させることがあり、それにより特に好ましくない騷音、衝撃などを誘発し得る。振動の否定的な影響を減少させ、モーター車両運転の気楽さを改善するために、トルク変動吸収メカニズムがモーター車両のトランスミッションシステムに装着されることが知られている。トルク変動吸収メカニズムは、モーター車両のエンジンによって生成されるトルクの変動を制限および吸収することができる。トルク変動吸収メカニズムがトルクダンパおよびトルクリミッターを含むことができるということが知られている。トルクダンパは、一般的にばね構造物でトルク変動を吸収および減少させる一方、トルクリミッターは、トルクダンパによって許容される最大トルクを超えるトルク変動を制限することができる。具体的に、トルク変動が最大許容トルクを超える時、トルクリミッターが滑走し、それにより伝達トルクを制限する。
【0003】
従来技術において、トルクリミッターは、一般的にトルクリミッターカバー、およびトルクリミッターカバーに対して滑走可能な摩擦ディスクを含む。トルクリミッターカバーは、モーター車両エンジンのフライホイールに固定的に連結され、トルク入力部分として機能する。滑走可能な摩擦ディスクは、弾性力によってトルクリミッターカバー内にクランピングされ、トルクダンパに固定的に連結されトルクをトルクダンパに伝達する。摩擦ディスクをクランピングするために用いられる構成要素は、一般的に弾性構成要素(例えば、ベリビルばね(Belleville spring))および圧力板を含む。摩擦ディスクをクランピングするために、トルクリミッターカバーは、2個の軸方向に対向したベアリング表面を提供する必要がある。他方で、トルクリミッターカバー内で弾性構成要素、圧力板、および摩擦ディスクを容易に組立てられるようにするために、トルクリミッターカバーは、一般的に軸方向に共にリベット作業した(riveted)2個のカバー板で構成され、それぞれのカバー板は、ベアリング表面を提供する。2個のカバー板の利用は、部品の費用を増加させ、それによりトルクリミッターが全体的にさらに高価になる。また、タイトで均一な連結のために、一般的に多数のリベット、例えば12個のリベットがそのようなリベット作業で用いられる。多数のリベットの利用は、トルクリミッターの組立てプロセスを複雑にし、これはリベットの損失を誘発するおそれがあり、リベット作業品質を低下し得て、リベット作業プロセスで付加的な制御費用をもたらす可能性がある。
【0004】
かかる問題を解決するために、一つの可能な解決策は、一つの部品を利用してトルクリミッターカバーを形成することである。しかし、これは、弾性構成要素、圧力板、および摩擦ディスクのような内部構成要素がトルクリミッターカバー内で組立てられることを要求し(内部構成要素の大きさはトルクリミッターカバーの開口より小さくなければならない)、摩擦ディスクをクランピングする力を提供するために、内部構成要素が互いに対面する両側面上でトルクリミッターカバーに対して支持可能なことを要求する(内部構成要素の大きさはトルクリミッターカバーの開口部より大きくなければならない)。米国特許US9127720B2には、トルクリミッターカバーが一つのカバー板によって形成されるトルクリミッターが開示されている。カバー板は、外部円周方向部分を曲げることで形成され、主本体部分に軸方向に対向する、曲げられた部分を含む(US9127720B2の図2に示されたカバー板31の支持部分31a参照)。それにより、摩擦ディスクは、主本体部分と曲げられた部分間でクランピングされることができる。かかる設計を有するトルクリミッターにおいて、カバー板の数が1に減少する一方、リベット作業を利用しないことにより費用を減少可能にする。しかし、かかる曲げられた部分は、スタンピングによって製造されることができない。また、摩擦ディスクをクランピングするための構成要素を設置するためには、カバー板が予め曲げられてはならず、かかるトルクリミッターの組立てプロセスで曲げられるべきである。これは、そのようなトルクリミッターの製造費用および組立て難易度を高める。
【0005】
従って、既存のトルク変動吸収メカニズムで使用されるトルクリミッターは、多数の部品の利用、高価、および高い組立て難易度という短所を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それにより、本発明は、既存のトルクリミッターが有する前述した問題を解決するためのものであって、その目的は、コンパクトでかつ堅固な構造を有し、簡単でかつ費用節減方式で製造および組立てられるトルクリミッターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、本発明の実施形態によるトルクリミッターによって達成され、トルクリミッターは、回転軸を中心として回転駆動されるように構成された第1リング;軸方向に第1リングから特定距離に位置する第2リング;軸方向に第1リングと第2リングとの間に位置する圧力リング;第2リングと圧力リングとの間に滑走可能にクランピングされる摩擦ディスク;および軸方向に第1リングと圧力リングとの間に配列されるばね座金であって、圧力リングは、ばね座金からのプレス力(pressing force)を収容し、摩擦ディスクを第2リングに対してプレスする、ばね座金;を含む。第1リングおよび第2リングが一体で形成され、第1リングは複数の第1歯形部を具備し、ばね座金は、複数の支持歯形部を具備し、それぞれの支持歯形部は、一つの第1歯形部によって支持される。フライホイールからトルクリミッターに伝達されるトルクがトルクリミッターの最大トルクより小さい時、摩擦ディスクは、第2リングおよび圧力リングと共に回転することができる。他方で、フライホイールからトルクリミッターに伝達されるトルクがトルクリミッターの最大トルクに到逹するかこれを超える時、摩擦ディスクは、第2リングと圧力リングとの間で滑走されることができ、それによりトルクリミッターによって出力されるトルクを最大トルクで制限する。
【0008】
本発明に係るトルクリミッターの第1リングおよび第2リングは、従来技術のトルクリミッターのカバー板と同一である。そのような設計において、第1リングおよび第2リングは、リベット作業によってまたは他の手段によって固定されず、単一構成要素形態のトルク入力部分として一体で形成され、それによりトルクリミッターの構造を単純化し費用を減らす。また、本発明において、ばね座金は、第1リングに隣り合うばね座金の全体円周方向の縁部の代わりに、支持歯形部によって第1リングの第1歯形部上で支持される。よって、ばね座金は、一体で設計された第1リングおよび第2リング内に便利に組立てられることができ、従来技術のようにばね座金を先に組立て、次いで2個のカバー板をリベット作業する(またはカバー板を曲げる)必要がない。これはまた、本発明に係るトルクリミッターの組立てをより容易にし、その製造費用を節減可能にする。
【0009】
本発明に係るトルクリミッターは、以下の特徴のうち一つ以上を個別的にまたは組み合わせてさらに有することができる。
【0010】
本発明の実施形態によって、少なくとも軸方向に沿った第1リングの主本体部分の投影が第2リングの外側に位置する。換言すると、第1リングの主本体部分の内径が第2リングの外径より大きい。好ましくは、軸方向に沿った第1リングの第1歯形部の投影も第2リングの外側に位置する。
【0011】
このような技術的解決策によって、トルクリミッターの摩擦ディスクだけでなく、摩擦ディスクをクランピングするために用いられるばね座金および圧力リングのいずれも、第1リングによって妨害されず、軸方向に第2リング上に便利に配置されることができ、それによりトルクリミッターの組立てを単純化することができる。
【0012】
本発明の実施形態によって、ばね座金の支持歯形部は、半径方向の外側に延長し、第1リングの第1歯形部は、半径方向内側に延長する。このような技術的解決策によって、ばね座金の主本体部分と第1リングの主本体部分の間に比較的大きい半径方向のギャップが形成されることができ、それにより支持歯形部が依然として第1歯形部上で支持可能な間に、ばね座金を第1リング内に便利に組立てることができる。
【0013】
本発明の実施形態によって、ばね座金の支持歯形部は、軸方向に隣接した第1歯形部の間を通過可能な大きさを有し、それによりばね座金は、組立て中に軸方向に第1リングを通過することができる。換言すると、隣接した第1歯形部間のギャップの大きさは支持歯形部の大きさより大きい。ばね座金が軸方向に第1リングを通過した後、支持歯形部が第1歯形部上で支持されるように、ばね座金を円周方向に所定角度だけ回転させることができる。このような技術的解決策によって、ばね座金は、第1リング上で便利に支持可能な間に、第1リング内に容易に組立てられることができ、それによりトルクリミッターの組立てを単純化させるようにする。
【0014】
本発明の実施形態によって、第1リングおよび第2リングは、複数の連結棒によって相互連結され、連結棒は第1リングおよび第2リングと一体で形成される。それにより、第1リング、第2リング、およびそれらの間の複数の連結棒は、トルクリミッターの入力部材を構成する。
【0015】
本発明の実施形態によって、連結棒の少なくとも一つの部分が軸方向に延長する。よって、連結棒は、第1リングおよび第2リングを軸方向に分離し、圧力リング、摩擦ディスク、およびばね座金を設置するための空間を形成する。また、連結棒は、第1リングの半径方向内部の縁部および第2リングの半径方向外部の縁部に連結される。
【0016】
本発明の実施形態によって、それぞれの連結棒は、円周方向に2個の第1歯形部の間に配列され、第1リングに連結される端部領域内の連結棒の内径は支持歯形部の外径より大きい。このような技術的解決策によって、連結棒は、第1歯形部から離隔して形成され、これは、連結棒が円周方向に隣接した第1歯形部の間のギャップ内に位置するということを意味する。トルクリミッターの組立て中に、ばね座金の支持歯形部は、隣接した第1歯形部の間のギャップを通過する。第1リングに連結される端部領域内の連結棒の内径を支持歯形部の外径より大きくすることにより、ばね座金が第1リング上で移動することを連結棒が妨害しないように保障することができる。
【0017】
本発明の実施形態によって、圧力リングは、複数の軸方向延長回転防止歯形部を具備し、回転防止歯形部は、2個の隣接した連結棒の間に挿入されることができる。このような技術的解決策によって、円周方向に沿った相対的な滑走が圧力リングと第1リングだけでなく第2リングの間で発生する場合に、回転防止歯形部が連結棒に隣り合い、圧力リングの過多滑走を防止することができる。換言すると、回転防止歯形部は、円周方向に沿った圧力リングと第1リングだけでなく第2リング間の相対的な滑走を制限する機能を行う。好ましくは、回転防止歯形部の幅は、2個の隣接した連結棒間のギャップの幅と略同一であり、これは、圧力リングと第1リングだけでなく第2リング間の相対的な滑走をできるだけ多く除去可能にする。
【0018】
本発明の実施形態によって、複数の第1歯形部のうち少なくとも一つは、第1溝を具備し、複数の支持歯形部のうち一つは、第1溝の下端表面に対してプレスされる。好ましくは、複数の第1歯形部のそれぞれが第1溝を具備する。このような技術的解決策によって、円周方向に沿った相対的な滑走がばね座金と第1リングだけでなく第2リングの間で発生する場合に、支持歯形部が第1溝の側面壁に対して隣り合い、ばね座金の過多滑走を防止することができる。それにより、第1溝は、円周方向に沿ったばね座金と第1リングだけでなく第2リング間の相対的な滑走を制限する機能を行う。好ましくは、第1溝の幅は、支持歯形部の幅と略同一であり、これは、ばね座金と第1リングだけでなく第2リング間の相対的な滑走をできるだけ多く除去可能にする。
【0019】
本発明の実施形態によって、ばね座金は、半径方向内側に延長する複数の内部支持歯形部をさらに含み、内部支持歯形部は、圧力リングに対してプレスされ、回転防止装置を圧力リングにフィッティングする(fitting)。このような技術的解決策によって、ばね座金の主本体部分は圧力リングに対してプレスされないが、ばね座金は、内部支持歯形部によって圧力リングに対してプレスされる。内部支持歯形部の数および長さを調整して摩擦ディスクをクランピングするために印加される力の大きさを変更することができ、それによりトルクリミッターによって伝達する最大トルクを調整することができる。
【0020】
本発明の実施形態によって、圧力リングの回転防止装置は、少なくとも一つの第2溝を含み、内部支持歯形部は、第2溝の下端表面に対してプレスされる。好ましくは、圧力リングは複数の第2溝を具備し、それぞれの第2溝はばね座金の一つの内部支持歯形部に相応する。このような技術的解決策によって、円周方向に沿った相対的な滑走がばね座金と圧力リングの間で発生する場合に、内部支持歯形部が第2溝の側面壁に対して隣り合い、ばね座金の過多滑走を防止することができる。それにより、第2溝は、円周方向に沿ったばね座金と圧力リングの間の相対的な滑走を制限する機能を行う。好ましくは、第2溝の幅は内部支持歯形部の幅と略同一であり、これは、ばね座金と圧力リングの間の相対的な滑走をできるだけ多く除去可能にする。
【0021】
本発明の実施形態によって、ばね座金は、ばね座金の主本体に連結される内部支持歯形部のベース領域内で回避溝(avoidance groove)をさらに具備し、回避溝は、内部支持歯形部の側面縁部から内側に陥没する。内部支持歯形部が第2溝の下端表面に対してプレスされる時、回避溝は、内部支持歯形部のベース領域の側面縁部が第2溝の側壁と干渉することを避けられるようにする。それにより、内部支持歯形部は、圧力リングの第2溝に対してさらに強くプレスされることができる。
【0022】
本発明の実施形態によって、圧力リングの回転防止装置は、複数の軸方向に突出す制限突出部の対を含み、内部支持歯形部が挿入可能な離隔部部分が制限突出部のそれぞれの対の2個の制限突出部の間に形成される。トルクリミッターの組立てられた構造において、内部支持歯形部は、離隔部部分内に挿入され、それにより円周方向に沿ったばね座金と圧力リング間の相対的な滑走を制限する。好ましくは、離隔部部分の幅は、内部支持歯形部の幅と略同一であり、これは、ばね座金と圧力リング間の相対的な滑走をできるだけ多く除去可能にする。
【0023】
本発明の実施形態によって、制限突出部は、圧力リングの半径方向内部の縁部に位置する。選択的に、制限突出部は、圧力リングの半径方向の中間位置に配列されることができる。
【0024】
本発明の実施形態によって、摩擦ライニングが摩擦ディスクと圧力リングの間におよび/または摩擦ディスクと第2リングの間に配列される。トルクリミッターが動作する時、第1リング、第2リング、ばね座金、および圧力リングが共に回転され、トルクリミッターの入力側を形成する。トルクは、摩擦ライニングを通じて入力側から摩擦ディスクに伝達される。フライホイールのトルクがトルクリミッターによって伝達可能な最大トルクを超える時、摩擦ライニングと摩擦ディスクの間で滑りが発生し、それによってトルク変動を除去する。
【0025】
本発明は、前述したようなトルクリミッターおよびトルクダンパを含むトランスミッションシステムに関する。トルクダンパは、入力部分、出力部分、および入力部分と出力部分の間で円周方向に圧縮するように配列されたばねを含む。トルクダンパの入力部分は、トルクリミッターの第1リングまたは摩擦ディスクに固定される。トルクダンパのばねは、摩擦ディスクを通じて伝達されるトルクの変動をさらに吸収して減少させることができる。選択的に、トルクリミッターの第1リングまたは摩擦ディスクがまたトルクダンパの出力部分であることができる。
【0026】
また、本発明は、トルクリミッターの入力部材または出力部材を形成するための方法に関する。入力部材または出力部材は、複数の第1歯形部を有する第1リング、軸方向に第1リングから特定距離に位置する第2リング、および第1リングおよび第2リングを相互連結する複数の連結棒を含む。入力部材または出力部材は、第1リングと第2リングの間で以下の構成要素を軸方向に収容することができる:第2リング上で支持される摩擦ディスク;摩擦板上で支持される圧力リング;および複数の第1歯形部のフィッティングのための複数の支持歯形部を具備し、摩擦ディスクが第2リングに対してプレスされるように圧力リングをプレス可能なばね座金。入力部材または出力部材は、好ましくはスタンピングによって形成される。よって、曲げ段階が入力部材または出力部材を形成するプロセスで省略される。
【0027】
また、本発明は、トルクリミッターを組立てる方法に関し、このような方法は、一体型で形成された入力部材または出力部材を提供する段階であって、入力部材または出力部材は、複数の第1歯形部を有する第1リング、軸方向に第1リングから特定距離に位置する第2リング、および第1リングと第2リングを相互連結する複数の連結棒を含む、段階;第2リング上で支持される摩擦ディスクを提供する段階;摩擦ディスク上で支持される圧力リングを提供する段階;および複数の支持歯形部を有するばね座金を提供する段階であって、ばね座金は、摩擦ディスクが第2リングに対してプレスされるように圧力リングをプレスする、段階;を含む。ばね座金を組立てる段階において、ばね座金は、先ず第1リング上で軸方向に移動されて圧力リングに対して隣り合う。ばね座金の支持歯形部は、軸方向に隣接した第1歯形部の間を通過する。次いで、それぞれの支持歯形部が一つの第1歯形部によって支持されるように、ばね座金は円周方向に回転する。
【発明の効果】
【0028】
トルクリミッターを組立てる前述した方法において、一体で形成された入力部材を提供することにより、トルクリミッターカバーをリベット作業する複雑な段階が省略する一方、摩擦ディスク、圧力リング、およびばね座金を入力部材内に便利に設置することができ、摩擦ディスクをクランピングすることができる。
【0029】
図面と関連した本発明の最適なモードに関する以下の具体的な説明を通じて、本発明の前述した特徴および長所だけでなく、他の特徴および長所が明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1A】本発明の第1実施形態によるトランスミッションシステムの概路図および分解図である。
図1B】本発明の第1実施形態によるトランスミッションシステムの概路図および分解図である。
図2A】本発明の第1実施形態によるトルクリミッターの横断面図である。
図2B図2Aの一部の拡大図である。
図3図2に示した実施形態の一体で形成された入力部材の一部の詳細図である。
図4図2に示した実施形態のばね座金である。
図5図2に示した実施形態の圧力リングである。
図6】本発明の第2実施形態による、組立てられた構成のトルクリミッターの上面図である。
図7図6に示した実施形態のばね座金の一部である。
図8図6に示した実施形態の圧力リングである。
図9】本発明の第3実施形態による、組立てられた構成のトルクリミッターの一部である。
図10図9に示した実施形態の圧力リングおよびばね座金である。 各図面において、同一または類似した部分は、同一の参照番号で表示した。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態の目的、技術的解決策、および長所をより明確にするために、本発明の実施形態によって提供される技術的解決策を本発明の実施形態に関する図面と共に明確でかつ完全に説明する。
【0032】
他に定義されない限り、本願で使用された技術的用語および科学的用語は、本発明に属する業界の当業者によって理解されるような一般的な意味を有する。本発明の特許出願の説明および請求の範囲で使用された「不定冠詞(a)」、「一つ」、「前記」およびこれと類似した用語は、数量制限を意味するものではなく、少なくとも一つがあることを意味する。「含む」、「包括する」、またはその他の類似した用語は、そのような用語の前に表れる要素または客体がそのような用語の後に並べられた要素または客体およびその均等物を含むが、他の要素または客体を排除しないことを意味する。「軸方向」、「半径方向」、「円周方向」およびその他の方向は、トルクリミッターの回転軸ROに対して定義され、軸方向は、回転軸ROの延長方向であり、半径方向は、回転軸ROに垂直な方向であり、円周方向は、回転軸ROを取り囲む方向である。
【0033】
図1Aは、本発明の第1実施形態によるトランスミッションシステムの概路図である。図1Bは、図1Aに示されたトランスミッションシステムの分解図である。
【0034】
トランスミッションシステムは、トルクをモーター車両のエンジンとギアボックスの間で伝達するために使用される。ギアボックスは、2個の部分、すなわちトルクリミッター100およびトルクダンパ200に分割されることができる。トルクリミッター100は、モーター車両エンジンのフライホイールに連結され、フライホイールによって駆動されて回転軸ROを中心とするトルクを伝達する。トルクダンパ200は、全体的にトルクリミッター100内に位置し、トルクリミッター100によって伝達されたトルクをモーター車両のギアボックスで出力する。トルクリミッター100は、予め決められた最大トルクを有し、エンジンによって生成されたトルクが最大トルクを超える時も、トルクダンパ200に伝達されるトルクは最大トルクを超えない。
【0035】
図1Aおよび図1Bを参照すると、トルクダンパ200は、入力部分210、出力部分220、および円周方向に入力部分210と出力部分220の間で圧縮されるように配列された4個のばね230を含む。入力部分210がトルクリミッター100の摩擦ディスク4に固定され、トルクリミッター100から伝達されるトルクを収容する。ばね230はコイルばねであり、その一端部には入力部分210が作用し、他端部には出力部分220が作用して、トルクを入力部分210から出力部分220に伝達する。ばね230は、圧縮および膨脹することによりトルク変動を吸収および減少させることができる。トルクリミッター100の摩擦ディスク4がトルクダンパ200の出力部分220に固定可能なことが考えられる。
【0036】
図2Aおよび図2Bと共に図1Aおよび図1Bをさらに参照すると、トルクリミッター100は、一体で形成された入力部材110を含む。入力部材110は、第1リング1、第2リング2、およびこれら2個を相互連結する複数の連結棒7を含む。第1リング1は、回転軸ROを中心として回転駆動されるように構成される。このような実施形態において、第1リング1は、外部円周上で均一に分布された複数の貫通孔を含む。貫通孔は、ねじなどを利用して第1リング1をフライホイール(図示せず)に固定するために使用される。選択的に、第1リング1は、トルクダンパ200の入力部分210に固定されることができる。第2リング2は、第1リング1と一体で形成され、それによりフライホイールによって駆動される時、第1リング1と共に回転軸ROを中心として回転される。第2リング2は、軸方向に予め決められた距離だけ第1リング1から離隔する。また、第1リング1の主本体部分10の内径は、第2リング2の外径より大きく、それにより軸方向に沿った第1リング1の主本体部分10の投影は第2リング2の外側に位置する。圧力リング3は、軸方向に第1リングと第2リングとの間に位置し、摩擦ディスク4は、軸方向に第1リング1と圧力リング3との間に配列されたばね座金5によって第2リング2と圧力リング3との間で滑走可能にクランピングされる。ばね座金5は、第1リング1によって支持され、摩擦ディスク4が第2リング2に対してプレスされるように圧力リング3をプレスする。具体的に、第1リング1は、複数の第1歯形部11を具備し、ばね座金5は複数の支持歯形部51を具備し、それぞれの支持歯形部51は、一つの第1歯形部11によって支持される。好ましくは、軸方向に沿った第1リング1の第1歯形部11の投影が第2リング2の外側に位置する。図面に示された実施形態において、支持歯形部51および第1歯形部11はその数が同一であり、これらの間には1対1の相応関係が存在する。第1リング1の第1歯形部11の数が支持歯形部51の数より多くてよく、それぞれの支持歯形部51が相応する第1歯形部11によって依然として支持可能なことが考えられる。
【0037】
図3と共に図2Bを参照すると、第1溝12が第1歯形部11上に配列される。第1溝12は、軸方向に、かつ第1歯形部11内に下向延長される。上面図からみると、第1溝12は、略丸い角を有する長い直四角形状を有し、その半径方向の表面は内側に向かって開放される。それにより、第1溝12は、2個の短い側壁および一つの半径方向の外部の長い側壁を含む、3個の側壁を有する。トルクリミッター100の組立てられた構成において、ばね座金5の支持歯形部51は、第1溝12の下端表面に対してプレスされ、これは、第1溝12の下端表面がばね座金5のための軸方向支持を提供するということを意味する。他方で、第1溝12は、ばね座金5の角度位置を規定する。相対的な滑走が円周方向にばね座金5と第1リング1の間で発生する時、支持歯形部51が第1溝12の側壁に対して隣り合いばね座金5の過多滑走を防止する。図面に示された例において、第1溝12の幅は、支持歯形部51の幅と略同一であり、それにより相対的な滑走ができるだけ多く除去される。
【0038】
第2リング2および第1リング1は、複数の連結棒7によって互いに連結される。連結棒7が第1リング1および第2リング2と一体で形成され、一体型入力部材を形成する。具体的に、連結棒7の一端部が第1リング1の半径方向内部側面に連結され、第2リング2の高さまで軸方向に延長する。次いで、連結棒7は内側に曲げられ、半径方向に延長することにより第2リング2の半径方向外部側面に連結される。第1リング1の内径は、第2リング2の外径より大きい。当業者は、曲げられた部分が省略されてよく、連結棒7が第1リング1の半径方向内部側面から軸方向に若干内側方向に第2リング2の半径方向外部側面まで直接的に延長することが考えられるだろう。
【0039】
円周方向に、第1リング1の複数の連結棒7が均一に分布され、第1歯形部11が2個の隣接した連結棒7の間に位置する。図示された例において、第1歯形部11は、実質的に、円周方向の2個の連結棒7間の全体空間を占める。第1リング1に連結される端部領域内の連結棒7の内径は、支持歯形部51の外径より大きく、隣接した第1歯形部11の間のギャップの大きさは、支持歯形部51の大きさより大きい。ばね座金5の組立てのために、支持歯形部51が円周方向に連結棒7に相応するようにばね座金5の角度位置が先に調整されることができ、次いで、ばね座金5が軸方向に移動されることができる。前述した大きさの設定により、支持歯形部51は、第1歯形部11または連結棒7によって妨害されず、軸方向に隣接した第1歯形部11間を通過することができる。従って、ばね座金5は、軸方向に第1リング1を通過し、圧力リング3に対して隣り合う。次いで、支持歯形部51が第1溝12の下端表面に対してプレスされるように、ばね座金5を回転させてばね座金5の角度位置を調整することができる。
【0040】
図4に示すように、ばね座金5は、ばね座金の主本体部分50およびばね座金の主本体部分50から半径方向外側に延長する支持歯形部51を含む、ベルビルばねの形態である。前述したように、トルクリミッター100の組立てられた構成において、支持歯形部51は、第1溝12の下端表面に対してプレスされ、ばね座金の主本体部分50は圧力リング3に対して隣り合う。ばね座金5は軸方向に圧縮され、それにより弾性的なプレス力を圧力リング3に印加する。プレス力の大きさは、ばね座金5の材料、そして支持歯形部51の大きさおよび数を変更することで調整されることができ、それにより、トルクリミッター100が伝達可能な最大トルクが調整されることができる。
【0041】
図5は、圧力リング3を示す。圧力リング3は、圧力リングの主本体部分30、および主本体部分30の半径方向外部の縁部から上方に軸方向に延長する複数の回転防止歯形部31を含む。図1Aおよび図2Bを参照すると、トルクリミッター100の組立てられた構成において、回転防止歯形部31は、2個の隣接した連結棒7の間に挿入される。換言すると、回転防止歯形部31の角度位置は、支持歯形部51と略一致する。圧力リング3と入力部材110の間の相対的な滑走が発生する場合に、回転防止歯形部31が連結棒7の側壁に対して隣り合い圧力リング3の追加的な滑走を防止する。具体的に、図2Bに示すように、連結棒7は、横断面図において略L状を有し、回転防止歯形部31は、L状の半径方向延長部分に対して隣り合う。それにより、回転防止歯形部31は、円周方向に圧力リング3を位置させる機能を行う。図1Aに示された実施形態において、回転防止歯形部31の幅は、2個の隣接した連結棒7間のギャップの幅と略同一であり、それにより相対的な滑走ができるだけ多く除去される。当業者は、回転防止歯形部31の幅が2個の連結棒7間のギャップの幅より小さくてよいことが理解できるであろう。
【0042】
前述した構成により、トルクリミッター100(第1リング1、第2リング2、および連結棒7を含む)の入力部材110、圧力リング3、およびばね座金5は、フライホイールによって共に駆動されることができ、これらは、トルクリミッター100の入力側を共に構成する。トルクリミッター100からトルクダンパ200へのトルク出力が摩擦ディスク4によって生成される。
【0043】
図2Aを参照すると、摩擦ディスク4の半径方向内部部分は、トルクダンパ200の入力部分210に固定的に連結され、その半径方向外部部分は、第2リング2と圧力リング3の間で滑走可能にクランピングされる。図2Aおよび図2Bに示された実施形態において、圧力リング3の圧力リングの主本体部分30の上部表面および第2リング2の下部表面のいずれもが摩擦ライニング8と固定される。それにより、摩擦ディスク4は、その2個の軸方向の対向表面において摩擦ライニング8と接触されて相互作用する。図示されていない他の実施形態において、摩擦ライニング8を圧力リング3および第2リング2のうち一つのみに固定することができる。任意の摩擦ライニング8を提供する代わり、摩擦ディスク4と接触する圧力リング3または第2リング2の表面に特定の処理を加えて特定トルクを伝達するのに適合に作る、他の技術的解決策が考えられる。
【0044】
トランスミッションシステムが動作する時、モーター車両のエンジンは、フライホイールによって入力部材110の第1リング1を駆動し、第2リング2(そして、第2リング2に固定された摩擦ライニング8)は、第1リング1と一体で回転する。圧力リング3(そして、圧力リング3に固定された摩擦ライニング8)およびばね座金5が入力部材110によって回転駆動される。摩擦ライニング8および摩擦ディスク4が相互作用し、それにより摩擦ディスク4およびトルクダンパ200の入力部分210を、回転軸ROを中心として回転駆動させ、それによりトルクがトルクダンパ200に伝達される。
【0045】
フライホイールからトルクリミッター100に伝達するトルクがトルクリミッター100の最大トルクより小さい時、摩擦ディスク4および摩擦ライニング8が共に回転する。その反対で、フライホイールからトルクリミッター100に伝達するトルクがトルクリミッター100の最大トルクに到逹するかそれより大きい場合、摩擦ディスク4と摩擦ライニング8の間で滑りが発生し、それによってトルクダンパ200に伝達するトルクをトルクリミッター100の最大トルクで制限する。
【0046】
前述したようなトルクリミッター100は、単純な方式で組立てられることができる。先ず、一体で形成された入力部材110が提供され、このような入力部材は、第1リング1、軸方向に第1リング1から離隔した第2リング2、そして第1リングおよび第2リングを互いに連結する複数の連結棒7を有し、入力部材110は、例えばスタンピングまたは鋳造により製造され、次いで、摩擦ディスク4が第2リング2上で支持されるように、摩擦ディスク4が軸方向に入力部材110上に配置され、圧力リング3が提供され、回転防止歯形部31が連結棒7の間のギャップに相応するように圧力リング3の角度位置が調整され、次いで圧力リングが摩擦ディスク4上で支持されるように、圧力リング3が軸方向に移動されて第1リング1を通過し、複数の支持歯形部51を有するばね座金5が提供され、支持歯形部51が第1リング1の第1歯形部11の間のギャップに相応するように、ばね座金5の角度位置が調整され、次いでばね座金5が第1リング1上で軸方向に移動されて圧力リング3に対して隣り合い、ばね座金が軸方向に圧縮するように、ばね座金5がプレスされ、最後に、それぞれの支持歯形部51が一つの第1歯形部11によって支持されるまでばね座金5が回転される。好ましくは、支持歯形部51は、第1歯形部11内の第1溝12の下端表面に対してプレスされる。また、トルクダンパ200は、先ず摩擦ディスク4上に設置されることができ、次いで摩擦ディスク4が組立てられることができる。選択的に、トルクダンパ200は、トルクリミッター100が組立てられた後に設置される。
【0047】
トルクリミッター100が前述した方法によって組立てられる場合、トルクリミッター100のカバーをリベット作業する段階が省略可能な一方、摩擦ディスク、圧力リングおよびばね座金が便利に設置されることができ、これは、トルクリミッター100の組立てに所要される費用および時間の減少、そして組立て成功率の改善をもたらす。
【0048】
図6図8は、本発明の第2実施形態によるトルクリミッター100を図示し、これは、主にばね座金5の構成および圧力リング3の構成で前述したトルクリミッター100と異なる。
【0049】
図6は、組立てられた構成のトルクリミッターの上面図である。図7は、ばね座金5の一部を示す。半径方向外側に延長する支持歯形部51に加えて、図7に示したばね座金5は、半径方向内側に延長する内部支持歯形部52をさらに含む。円周方向に内部支持歯形部52と支持歯形部51の間に1対1の相応関係が存在する。図4に示した実施形態と比較すると、図7に示したばね座金5の支持歯形部51はさらに短い長さを有する。また選択的に、内部支持歯形部52は、他の数および/または角度位置を有してよい。トルクリミッター100の組立てられた構成において、内部支持歯形部52は、ばね座金の主本体部分50によって直接プレスされる代わりに、圧力リング3の下部表面に対してプレスされる。ばね座金5によって圧力リング3に印加されるプレス力の大きさが、支持歯形部51の大きさおよび数の変更によって調整されることができる。
【0050】
図8は、図7に示したばね座金5にフィッティングされる圧力リング3を示す。図5に示した実施形態と比較すると、圧力リング3は、圧力リングの主本体部分30の下部表面が複数の第2溝32を具備するという点で異なる。第2溝32とばね座金5の内部支持歯形部52の間に1対1の相応関係が存在する。トルクリミッター100の組立てられた構成において、内部支持歯形部52は、第2溝32の下端表面に対してプレスされる。相対的な滑走が円周方向にばね座金5と圧力リング3の間で発生する場合、内部支持歯形部52が第2溝32の側壁に対して隣り合い、これらの二つ間の過多滑走を防止する。それにより、このような実施形態によるトルクリミッター100は、内部支持歯形部52および圧力リング3によって、ばね座金5と圧力リング3間の相対的な滑走を制限することができる。好ましくは、第2溝32の幅は、内部支持歯形部52の幅と略同一であり、これは、ばね座金5と圧力リング3間の相対的な滑走をできるだけ多く除去可能にする。
【0051】
図7に示すように、ばね座金5は、ばね座金の主本体部分50に連結される内部支持歯形部52のベース領域内で回避溝53をさらに具備し、回避溝53は、内部支持歯形部52の2個の側面縁部から内側に陥没される。内部支持歯形部52が圧力リング3の第2溝32の下端表面に対してプレスされる時、回避溝53は、内部支持歯形部52のベース領域の側面縁部が第2溝32の側壁と干渉することを避けられるようにする。それにより、内部支持歯形部52は、圧力リング3の第2溝32に対してさらに強くプレスされる。
【0052】
また、図8に示した実施形態において、圧力リング3は、複数の回転防止歯形部31を依然として具備し、それにより円周方向に沿った圧力リング3と入力部材110間の相対的な滑走を防止する。しかし、ばね座金5の支持歯形部51が第1溝12にフィッティングされてばね座金5と第1リング1間の相対的な滑走を防止することができ、内部支持歯形部52が第2溝32にフィッティングされてばね座金5と圧力リング3間の相対的な滑走を防止することができる。それにより、圧力リング3と入力部材110間の回転を防止する機能がばね座金5によって間接的に実現されることができる。従って、回転防止歯形部31を圧力リング3に提供しないことも考えられる。
【0053】
図6図8に示したトルクリミッター100を組立てる段階は、第1実施形態によるトルクリミッター100を組立てる段階と同様であり、そのため重複する説明は省略する。
【0054】
図9および図10は、本発明の第3実施形態によるトルクリミッター100を示す。図9を参照すると、第3実施形態のばね座金5は、半径方向外側に延長する支持歯形部51および半径方向内側に延長する内部支持歯形部52をさらに含む。本発明の第3実施形態によるトルクリミッター100は、主に圧力リング3の構成において、第2実施形態のトルクリミッター100と異なる。
【0055】
図8に示した第2溝を有する圧力リングと異なり、図10に示した圧力リング3は、複数の軸方向に突出す制限突出部33の対を具備する。内部支持歯形部52が内部に挿入可能な離隔部部分34が制限突出部33のそれぞれの対の2個の制限突出部の間に形成される。図9に示すように、トルクリミッター100の組立てられた構成において、内部支持歯形部52は、離隔部部分34内に挿入される。従って、円周方向にばね座金5と圧力リング3の間で相対的な滑走が発生する場合、内部支持歯形部52が制限突出部33に対して隣り合い、これら二つの間の過多滑走を防止することができ、それにより円周方向に沿ったばね座金5と圧力リング3間の相対的な滑走を制限することができる。好ましくは、離隔部部分34の幅は、内部支持歯形部52の幅と略同一であり、これは、ばね座金5と圧力リング3間の相対的な滑走をできるだけ多く除去可能にする。
【0056】
図10に示した実施形態において、制限突出部33は、圧力リング3の半径方向内部の縁部に配列される。制限突出部33が圧力リング3の他の位置に、例えば、圧力リング3の半径方向中間位置に配列されることができる。制限突出部33が圧力リング3の半径方向中間位置に配列される時、ばね座金5の内部支持歯形部52の長さがそれにより減少されることができる。その反対の場合にも同様である。
【0057】
図8に示した実施形態との異なる差異点は、図10に示した圧力リング3が回転防止歯形部31を具備しないことである。前述したように、ばね座金5の支持歯形部51は、第1リング1の第1溝12にフィッティングされることができ、内部支持歯形部52は、制限突出部33にフィッティングされることができる。従って、図10に示した実施形態において、圧力リング3と入力部材110間の回転を防止する機能がばね座金5によって間接的に実現される。
【0058】
図9および図10に示したトルクリミッター100を組立てる段階は、第1実施形態によるトルクリミッター100を組立てる段階と同様であるため、ここでは重複する説明は省略する。
【0059】
前述かつ図示した構造は、本発明の単純な例示に過ぎず、希望の最終結果を獲得するために同一または類似の機能を表す他の構造によって代替可能なことを理解すべきである。また、前述かつ図示した実施形態は、単に本発明の非制限的な例を構成するものとしてみなすべきであり、請求の範囲によって定義される範囲内で多様な方式で修正可能なことを理解すべきである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10