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特許7546774切断装置用のインペラ、および該インペラを備えた切断装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】切断装置用のインペラ、および該インペラを備えた切断装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/28 20060101AFI20240830BHJP
   B26D 1/36 20060101ALI20240830BHJP
   B26D 7/18 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
B26D3/28 620P
B26D1/36 G
B26D3/28 620K
B26D7/18 D
【請求項の数】 38
(21)【出願番号】P 2023524848
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-08
(86)【国際出願番号】 US2020056835
(87)【国際公開番号】W WO2022086536
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】504444120
【氏名又は名称】アーシェル ラボラトリーズ,インク.
(73)【特許権者】
【識別番号】523143040
【氏名又は名称】ペプシコ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バーバー,キース アラン
(72)【発明者】
【氏名】バクスター,コーレイ エバレット
(72)【発明者】
【氏名】ガン,レベッカ グリン
【審査官】飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-534201(JP,A)
【文献】特表2014-528849(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0239831(US,A1)
【文献】実開昭61-033676(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 1/36
B26D 3/28
B26D 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断ヘッド内に同軸に取り付けられるよう構成され、前記切断ヘッドの軸を中心に回転するインペラであって、
前記インペラは、
上面、下面、および外周部を有する、下部プレートと、
前記インペラの回転時に、前記下部プレート上に配置された材料を前記インペラの径方向外方に向けて移動させるよう、前記下部プレートとともに構成された複数のパドルと
を有し、
前記複数のパドルの少なくとも1つのパドルは、前記下部プレートの前記外周部に隣接する外径部を有し、
前記下部プレートに位置する第1排出孔を少なくとも有し、前記第1排出孔は、前記下部プレートの前記上面において前記外周部に沿って前記第1排出孔を完全に閉じる壁部を有し、前記第1排出孔は、前記下部プレートを貫通して前記上面に接続される通路を形成し、前記上面上の異物は、前記通路を通って前記インペラから排出される、インペラ。
【請求項2】
前記第1排出孔は、前記下部プレートの前記外周部に沿って配置された長手方向の寸法を有する、請求項1に記載のインペラ。
【請求項3】
前記第1排出孔は、円形状の断面を有する、請求項1に記載のインペラ。
【請求項4】
前記複数のパドルの少なくとも1つは、該パドルの前記外径部から前記インペラの径方向外方に伸長する複数のポストを備える、請求項1に記載のインペラ。
【請求項5】
前記複数のポストは、前記複数のパドルの少なくとも1つのパドルの前記外径部に沿って間隔を空けて配置され、前記複数のポストの間に間隙を形成し、該パドルの最下部の範囲には下部剪断縁とポストとが備えられておらず、異物が通過して該パドルの前記外径部の周辺から排出されるための第2間隙が形成されている、請求項4に記載のインペラ。
【請求項6】
前記複数のパドルの少なくとも1つのパドルの前記第2間隙は、該パドルに付随する前記第1排出孔に隣接しており、前記第2間隙は、前記異物が該インペラから排出される際に通過する前記通路の一部を形成している、請求項5に記載のインペラ。
【請求項7】
前記パドルの少なくとも1つのパドルの前記外径部は、前記第1排出孔と連続している、請求項1に記載のインペラ。
【請求項8】
前記パドルの少なくとも1つのパドルは、前記インペラの回転時に材料と接触する面を有し、前記第1排出孔は、該パドルの前記面に隣接して配置されるとともに、該パドルの前記面に沿って伸長する、請求項1に記載のインペラ。
【請求項9】
前記第1排出孔は、前記下部プレートの前記上面に対して垂直ではない壁部を有する、請求項1に記載のインペラ。
【請求項10】
前記第1排出孔は、前記下部プレートの前記上面に対して垂直ではない径方向の最外壁部を有する、請求項1に記載のインペラ。
【請求項11】
前記第1排出孔の前記径方向の最外壁部は、前記下部プレートの前記上面から前記下面にかけて、垂直方向から25度以下の角度で径方向内方に向けて傾斜する、請求項10に記載のインペラ。
【請求項12】
前記第1排出孔の前記径方向の最外壁部は、前記下部プレートの前記上面から前記下面にかけて径方向外方に向けて傾斜する、請求項10に記載のインペラ。
【請求項13】
前記第1排出孔は、約8mm(5/16インチ)以上の最小断面寸法を有する、請求項1に記載のインペラ。
【請求項14】
前記第1排出孔は、約30mm(約1.2インチ)の最大径寸法を有する、請求項1に記載のインペラ。
【請求項15】
前記第1排出孔の径方向寸法および周方向寸法は、それぞれ、約8mm以上30mm以下(約5/16インチ以上1.2インチ以下)と、約8mm以上50mm以下(約5/16インチ以上2インチ以下)である、請求項1に記載のインペラ。
【請求項16】
前記第1排出孔の径方向寸法および周方向寸法は、それぞれ、約9.5mm以上12.5mm以下(約3/8以上0.5インチ以下)と、約19mm以上約32mm以下(約0.75インチ以上1.25インチ以下)である、請求項1に記載のインペラ。
【請求項17】
前記複数のパドルの少なくとも1つのパドルの前記外径部は、前記下部プレートの前記外周部から間隔を空けて配置されるおり、前記外径部と前記外周部との間には径方向間隙が存在する、請求項1に記載のインペラ。
【請求項18】
前記第1排出孔の少なくとも一部は、前記下部プレートの前記外周部と前記複数のパドルの少なくとも1つのパドルの前記外径部との間の前記径方向間隙内に位置する、請求項17に記載のインペラ。
【請求項19】
前記複数のパドルの少なくとも1つのパドルの前記外径部は、前記下部プレートの前記外周部に隣接しており、前記第1排出孔は、前記外径部および前記外周部に隣接している、請求項1に記載のインペラ。
【請求項20】
環状の切断ヘッドと、前記切断ヘッドに対する回転方向に前記切断ヘッドの軸を中心とした回転を可能に、前記切断ヘッド内に同軸に取り付けられたインペラとを備える切断装置であって、前記切断ヘッドは複数の刃部を有し、該複数の刃部のそれぞれは、前記インペラの回転方向とは反対方向に、前記インペラに対して径方向内方に向けて伸長しており、前記インペラは、
上面、下面、および外周部を有する下部プレートと、
前記インペラの回転時に、前記下部プレート上に配置された材料を前記インペラの径方向外方に向けて移動させるよう、前記下部プレートとともに構成された複数のパドルとを有し、前記パドルの少なくとも1つのパドルは、前記下部プレートの前記外周部に隣接する外径部を有し、
前記下部プレートに位置する少なくとも第1排出孔を有し、前記第1排出孔は、前記下部プレートの前記上面において前記外周部に沿って前記第1排出孔を完全に閉じる壁部を有し、前記第1排出孔は、前記下部プレートを貫通して伸長して前記上面に接続された通路を形成し、前記上面上の異物は、前記通路を通って前記インペラから排出される、切断装置。
【請求項21】
前記第1排出孔は、前記下部プレートの前記外周部に沿って配置されたの長手方向の寸法を有する、請求項20に記載の切断装置。
【請求項22】
前記第1排出孔は、円形状の断面を有する、請求項20に記載の切断装置。
【請求項23】
前記複数のパドルのうちの少なくとも1つのパドルの前記外径部から前記インペラの径方向外方に伸長する複数のポストをさらに備える、請求項20に記載の切断装置。
【請求項24】
前記複数のポストは、前記複数のパドルの少なくとも1つのパドルの前記外径部に沿って間隔を空けて配置され、前記複数のポストの間に間隙を形成し、前記複数のパドルのうちの少なくとも1つのパドルの最下部の範囲には、下部剪断縁とポストとは備えられておらず、異物が通過して前記複数のパドルの少なくとも1つのパドルの前記外径部の周囲から前記異物が排出されるための第2間隙が形成されている、請求項23に記載の切断装置。
【請求項25】
前記複数のパドルのうちの少なくとも1つのパドルの前記第2間隙は、前記複数のパドルの少なくとも1つのパドルに付随する前記第1排出孔に隣接しているため、前記第2間隙は、異物が前記インペラから排出される際に通過する前記通路の一部を形成している、請求項24に記載の切断装置。
【請求項26】
前記複数のパドルのうちの少なくとも1つのパドルの前記外径部は、前記第1排出孔と連続している、請求項20に記載の切断装置。
【請求項27】
前記複数のパドルのうちの少なくとも1つのパドルは、前記インペラの回転時に材料と接触する面を有し、前記第1排出孔は、該パドルの前記面に隣接して配置されるとともに、該パドルの前記面に沿って伸長する、請求項20に記載の切断装置。
【請求項28】
前記第1排出孔は、前記下部プレートの前記上面に対して垂直ではない壁部を有する、請求項20に記載の切断装置。
【請求項29】
前記第1排出孔は、前記下部プレートの前記上面に対して垂直ではない径方向の最外壁部を有する、請求項20に記載の切断装置。
【請求項30】
前記第1排出孔の前記径方向の最外壁部は、前記下部プレートの前記上面から前記下面にかけて、直角から25度以下の角度で径方向内方に向かって傾斜する、請求項29に記載の切断装置。
【請求項31】
前記第1排出孔の前記径方向の最外壁部は、前記下部プレートの前記上面から前記下面にかけて径方向外方に向かって傾斜する、請求項29に記載の切断装置。
【請求項32】
前記第1排出孔は、約8mm(約5/16インチ)以上の最小断面寸法を有する、請求項20に記載の切断装置。
【請求項33】
前記第1排出孔は、約30mm(約1.2インチ)の最大径寸法を有する、請求項20に記載の切断装置。
【請求項34】
前記第1排出孔の径方向寸法および周方向寸法は、それぞれ、約8mm以上30mm以下(約5/16インチ以上1.2インチ以下)と、約8mm以上50mm以下(約5/16インチより大きく2インチ以下)である、請求項20に記載の切断装置。
【請求項35】
前記第1排出孔の径方向寸法および周方向寸法は、それぞれ、約9.5mm以上12.5mm以下(約3/8インチ以上0.5インチ以下)と、約19mm以上32mm以下(約0.75以上1.25インチ以下)である、請求項20に記載の切断装置。
【請求項36】
前記複数のパドルのうちの少なくとも1つのパドルの前記外径部は、前記下部プレートの前記外周部から間隔を空けて配置されており、前記外径部と前記外周部との間には径方向間隙が存在する、請求項20に記載の切断装置。
【請求項37】
前記第1排出孔の少なくとも一部は、前記下部プレートの前記外周部と前記複数のパドルのうちの少なくとも1つのパドルの前記外径部との間の前記径方向間隙内に位置する、請求項36に記載の切断装置。
【請求項38】
前記複数のパドルのうちの少なくとも1つのパドルの前記外径部は、前記下部プレートの前記外周部に隣接しており、前記第1排出孔は、前記外径部および前記外周部に隣接している、請求項20に記載の切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品をスライスすることを含む、製品を切断するための装置に関する。具体的には、本発明は、切断装置に用いるインペラに関する。
【背景技術】
【0002】
野菜、果実、乳製品、肉製品などの食品をスライスし、細断し、粒状にするためのさまざまな装置が知られている。このような目的に広く使用されている装置は、アーシェル・ラボラトリーズ,インク.から、「モデルCC(Model CC(登録商標))」のブランド名で市販されている。モデルCCシリーズの装置は、遠心タイプのスライサを備え、さまざまな食品のスライスを高い生産能力で行うことができる。モデルCCシリーズの装置は、均一なスライス、千切り、細断、および粒状化を行うのに適している。モデルCCシリーズの装置の構成および態様に関しては、米国特許第3,139,128号公報、米国特許第3,139,129号公報、米国特許第5,694,824号公報、米国特許第6,968,765号公報、米国特許第7,658,133号公報、米国特許第8,161,856号公報、米国特許第9,193,086号公報、米国特許第9,193,086号公報、米国特許第10,456,943号公報、および、米国特許出願公開第2016/0361831号において明示されており、これらのすべての内容は、本明細書に参照として組み込まれる。
【0003】
図1は、モデルCCシリーズの装置10を模式的に示す断面図である。装置10は、略環状の切断ヘッド12と、切断ヘッド12内に同軸に取り付けられたインペラ14とを有する。インペラ14は、切断ヘッド12の中心軸と一致する回転軸17を有し、ハウジング18内に収容され、かつ、ギアボックス16に連結されたシャフト(図示せず)を介して、回転軸17を中心に回転駆動される。切断ヘッド12は、ギアボックス16の上方にあるサポートリング15に取り付けられ、インペラ14が回転する際には静止している。製品は、インペラ14の上方に位置するホッパ11を介して、切断ヘッド12およびインペラ14に運ばれる。作動時に、ホッパ11が製品をインペラ14に運ぶと、遠心力により、製品は外方に移動し、切断ヘッド12の周囲に沿って取り付けられた切断刃部(図示せず)との係合部へ運ばれる。インペラ14は、実質的に径方向を向いたパドル13を備え、それぞれのパドル13は、インペラ14が回転するにしたがって、製品と係合し、かつ、製品を径方向外方に向けさせ、切断ヘッド12の刃部に接触させるための面を有する。モデルCCシリーズの装置の構成および操作に関するその他の特徴に関しては、上記の公報に開示されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
図2は、図1に模式的に示した装置10を含む、モデルCCシリーズのスライス装置に使用される切断ヘッド12の具体的かつ非限定的な例を取り出して示す図である。図2に示した切断ヘッド12について、図1を参照して説明されるインペラ14を備えた、図1に示したスライス装置10を参照にしつつ説明する。切断ヘッド12およびインペラ14の同軸配置に基づいて、「軸方向」、「周方向」、「径方向」などの相対的な用語、および、これらに関連する表現が、図2に示された切断ヘッド12を説明するために以下で使用される。
【0005】
図2に示されるように、切断ヘッド12は、略環状で、その周囲に取り付けられた切断刃部20を備える。図2では、刃部20は、フラットなスライスを生産するために直線状の刃先を備える、このような刃先を「フラットな刃部」と記述するが、切断ヘッド12には、たとえば、波形、千切り、細断、あるいは粒状の製品を生産するために、刃に対して垂直方向から見てピークおよび谷を交互に備えた周期的パターンからなる「波形刃部」を含むがこれに限定されない、他の形状の刃部を使用することもできる。それぞれの刃部20は、切断ヘッド12内でのインペラ14の回転方向とは逆方向であって、径方向内方に突出し、刃部の径方向に関して最も内側には刃先が設けられている。切断ヘッド12は、下部支持リング22および上部支持リング24をさらに備え、これらの間には、周方向に間隔をあけて配置され、下部および上部支持リングに対してファスナ36で固定された支持セグメント(シュー26)をさらに備える。それぞれのシュー26は、切断ヘッド12の切断ステーションを形成する。
【0006】
切断ヘッド12の刃部20は、ナイフアセンブリ28によってそれぞれのシュー26に固定される。それぞれのナイフアセンブリ28は、支持リング22および24の間でこれらに取り付けられたナイフホルダ30と、刃部20を固定するためにナイフホルダ30の径方向外面に配置されたクランプ32とを含む。それぞれの刃部20は、1つのナイフホルダ30の径方向外側面によって支持され、対応するクランプ32はナイフホルダ30上にあるため、刃部20は、ナイフホルダ30と、ナイフホルダ30と向き合うクランプ32の径方向内面との間に位置する。クランプ32に対してナイフホルダ30の方向に向けて力を加えることにより、クランプ32は、刃部20のうちの刃先に隣接する部分にクランプ力を付与する。
【0007】
図2は、それぞれのシュー26に固定されたゲート40をさらに示す。食品は、ゲート40を横切ってから、後続するシュー26に取り付けられた刃部20に接する。刃部20の刃先および先行するゲート40の後縁により、刃部20によって生産されるスライスの厚さを決定するゲート開口部が形成される。
【0008】
図3は、図1に模式的に示した装置10を含む、モデルCCシリーズのスライス装置に使用されるインペラ14の具体的かつ非限定的な例を取り出して示す図である。図3は、異なる数のパドル13をインペラ14の別の位置に取り付けることができるよう、追加の取付孔34を設けることができることを示している。また、取付孔34の配置は、パドル面の外径側の範囲の最も外側で終端するインペラ13の径方向に関するそれぞれのパドルの向きまたはピッチを決定する。
【0009】
遠心タイプのモデルCCシリーズの装置は、その用途に対して最適に機能するが、装置のメンテナンスに関する改良を含む、さらなる改良が継続的に要求かつ追及されている。非限定的な例として、ジャガイモなどの食品に頻繁に付随する石やその他の破片との衝突によって損傷を受けやすい刃先を有する、刃部20の交換が挙げられる。図3および図4は、インペラ14のパドル13に、パドル13の外径部に沿って間隔を空けて配置された複数のポスト42を備え、複数の間隙44を形成するアプローチを示す。これらの間隙を通じて、石やその他の破片が、インペラ14のパドル13または切断ヘッド12の刃部20を損傷することなく切断ヘッド12から排出される。ポスト42は、それぞれのパドル13の外径部の表面にねじ込むことによって、交換可能である。図3および図4に示したように、パドル13の最上部および最下部の範囲にはポスト42は存在しておらず、その代わりに、切断ヘッド12の周囲における堆積物の蓄積を抑制する上部剪断縁46および下部剪断縁48を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、少なくとも、食品に適した遠心タイプのスライス装置を含む、さまざまな製品の切断装置と、そのような装置に適用可能なインペラを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、インペラは、切断ヘッドの軸を中心として回転することが可能に、該切断ヘッド内に同軸に取り付けられている。前記インペラは、上面、下面、および外周部を有する下部プレートと、該下部プレートとともに構成された複数のパドルとを含み、該パドルは、下部プレート上に配置された材料を、前記インペラの回転時の遠心力の勢いで、該インペラの径方向外方に向けて移動させるよう構成される。前記複数のパドルのうちの少なくとも1つのパドルは、前記下部プレートの前記外周部に隣接する外径部を有する。少なくとも第1排出孔が前記下部プレートに配置され、該第1排出孔は、前記下部プレートの前記上面に前記外周部に沿って該第1排出孔を完全に閉じる壁部を有する。前記第1排出孔は、前記下部プレートを貫通して、前記上面に接続された通路を形成し、前記上面にある異物は、前記通路を通って前記インペラから排出されることが可能となっている。
【0012】
上述した構成のインペラと該インペラを備えた切断装置の技術的な特徴により、非限定的な例としてはジャガイモなどの食品など、切断する材料または製品に付随する石やその他の異物が切断装置の刃部およびナイフホルダに衝突して損傷を与える可能性を低減させることができる。
【0013】
本発明の他の態様および利点は、以下の詳細な説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、模式的に示した従来の遠心タイプのスライス装置の部分側面図である。
図2図2は、図1に示したスライス装置に使用された切断ヘッドの詳細を示す斜視図である。
図3図3は、図1に示したスライス装置に使用されたタイプのインペラと、図2に示した切断ヘッドとを示す斜視図である。
図4図4は、図3に示したインペラの1つのパドルを示す詳細側面図である。
図5図5は、図1に示した遠心タイプのスライス装置および図2に示した切断ヘッドに適用可能なインペラの第1の実施形態を示す斜視図である。
図6図6は、図5に示したインペラの1つのパドルを示す詳細図である。
図7図7は、図5および図6に示したインペラの排出孔を示す断面図である。
図8図8は、図5に示したインペラ内における石の軌跡を示す斜視図である。
図9図9Aは、図5に示したインペラの排出孔を通過する石の軌跡を示す詳細側面図であり、図9Bは、代替的なインペラにおいて、異なる構成の排出孔を通過する石の軌跡を示す詳細側面図である。
図10図10は、図5に示したインペラの排出孔を通過する石の代替的な軌跡を示す詳細側面図である。
図11図11は、図5図10に示したタイプの典型的な排出孔を模式的に示す図である。
図12図12A図12Cは、図5に示したインペラに適用可能である、代替的な排出孔の構成および代替的なパドルについての非限定的な実施形態を示す詳細側面図である。
図13図13Aおよび図13Bは、図5に示したインペラに適用可能である代替的なパドルの構成を模式的に示す図である。
図14図14Aおよび図14Bは、図5に示したインペラに適用可能である代替的な排出孔の配置および構成を模式的に示す図である。
図15図15は、図1に示した遠心タイプのスライス装置に適用可能な下部プレートの第2の実施形態を示す図である。
図16図16は、図1に示した遠心タイプのスライス装置に適用可能な下部プレートの第3の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図5図16は、図1に示した遠心タイプのスライス装置10および図2に示した切断ヘッドを含むさまざまな切断装置に使用可能なインペラとその部品、あるいは、該装置に交換および変更を施した構造の非限定的な実施形態を模式的に示す。便宜上、本発明の非限定的な実施形態は、図1および図2に示した環状の切断ヘッド12を備える、図1に示したスライス装置10を参照して図示し、説明する。したがって、以下の説明は、スライス装置10および切断ヘッド12を参照して、主に本発明の特定の特徴に焦点を当てているが、以下に詳述しないその他の特徴については、構造、機能、材料などを含めて、図1図3、および図4に示したインペラを参照して説明したのと実質的に同様である。ただし、本発明は、その他のタイプの切断装置にも適用可能である。そのような装置は特に食品のスライスに最適であるが、図示したインペラを他のタイプのさまざまな材料を切断する切断装置に使用することも本発明の範囲内である。
【0016】
図示した実施形態に関する以下の説明を容易にするため、図1に示したインペラ14によって表される、切断ヘッド12内のインペラの方向に関して相対的な用語が使用される。図1に示した装置10の切断ヘッド12およびインペラ14の同軸配置に基づき、相対的な用語には、「軸方向」、「周方向」、「径方向」などが含まれる、これらと同様の語も、図示された非限定的な実施形態を説明する上で利用され得る。そのような相対的な用語はすべて、図示された実施形態を説明するために有用であるが、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0017】
図5図6、および図7は、本発明の第1の非限定的な実施形態によるインペラ60を模式的に示す図である。図1図3、および図4に示したインペラ14と同様に、インペラ60は、実質的に径方向を向いたパドル62を備え、それぞれのパドル62は、インペラ60が回転軸を中心に回転するにともない、製品に係合して、該製品を切断ヘッド12の刃部20に向けて径方向外方に導く面64を有する。より具体的には、インペラ60に入った製品は、インペラ60の回転により発生した遠心力によって径方向外方に移動され、製品がパドル62に接触すると、径方向外方へに移動していた製品は、パドル62によって、切断ヘッド12の刃部20に移動される。図5図6、および図7に示した非限定的な実施形態におけるパドル62は、下部プレート66と、環状の上部プレート68との間に配置されている。インペラ60は、下部プレート66と上部プレート68との間に取り付けられ固定された、個別に形成されたパドル62から構成されてもよく、あるいは、パドル62は、下部プレート66と上部プレート68と一体の部品としてキャスト成形されることもできる。前者の場合は、インペラ60およびその部品はキャスト成形以外の工程によって形成することができ、一般的に使用されるMAB合金に加えて、さまざまな材料で形成することができる。
【0018】
図5図6、および図7に示した非限定的な実施形態では、パドル62は、下部プレート66と上部プレート68に機械加工された、それぞれ対応する取付孔74にボルト70およびピン72で個別に取り付けられるが、下部プレート66と上部プレート68とが、たとえばポストまたは接続ロッドなど、任意の適切な手段によって連結された結果として、パドル62のいずれかが下部プレート66あるいは上部プレート68の一方のみに直接的に取り付けられ、下部プレート66あるいは上部プレート68の他方に間接的に取り付けられることも、本発明の範囲内である。図5に示したように、下部プレート66および/または上部プレート68に追加の取付孔74を設け、異なる数のパドル62をインペラ60に取り付けることができる。取付孔74の配置は、パドル面64の最も外径側にある範囲で終端するインペラ60の径方向に関するそれぞれのパドル面64の向きまたはピッチを決定する。取付孔74の配置は、パドル面64のピッチが負(それぞれのパドル62の面64は、インペラ60の径方向を向いておらず、それぞれのパドル面64の径方向の最も内側にある範囲は、インペラ60の径方向に対してインペラ60の回転方向から離れる方向に傾斜している)、中立(それぞれのパドル62の面64は、インペラ60の径方向を向いている)、または、正(それぞれのパドル62の面64は、インペラ60の径方向を向いておらず、それぞれのパドル面64の径方向の最も内側にある範囲は、インペラ60の径方向に対してインペラ60の回転方向に向けて傾斜している)となるように選択することができる。
【0019】
図6は、パドル62の1つを示し、パドル62の外径部78は、下部プレート66の外周部67に近接している。図5図6、および図7に示した非限定的な実施形態では、パドル62の外径部78は、下部プレート66の外周部67に隣接しているが、外周部67とは接続してはいないため、外径部78と外周部67との間には、径方向の間隙または距離が存在する。それぞれのパドル62の外径部78は、略直線状であり、インペラの軸方向に配置される(図6の上部から底部)。パドル62の好適な寸法は、加工される食品のサイズに部分的に依存するため、大幅に変更可能である。図示したように、それぞれのパドル62の最も内径側の範囲は、上部プレート68に近づくにつれて径方向外方に湾曲しているが、直線状を含むその他の形状および輪郭を有することもできる。図5および図6は、それぞれのパドル62の面64に設けられた、任意の特徴である軸方向の溝80をさらに示す。溝80は、円形あるいは球形の製品がパドル62と係合する際に回転することを抑制することを可能とする。
【0020】
図5図6、および図7に示した非限定的な実施形態では、パドル62は、外径部78から伸長し、外径部78に沿って間隔を空けて配置された複数のポスト82を備える。ポスト82により複数の間隙84が形成され、異物(切断する材料または製品に付随するおよび/またはこれらに予め含まれていた石や、その他あらゆるタイプの混入物)は、間隙84を通って、パドル62または刃部20および切断ヘッド12のナイフホルダ30を損傷することなく通過することが可能となっている。ポスト82は、たとえば、それぞれのパドル62の外径部78に交換可能に螺合することができる。ポスト82は略円錐形の形状を有しており、その円錐形の輪郭がパドル62の面64と同一平面に存在するような角度を有することができる。図5および図6から明らかなように、それぞれのパドル62の最上部は、ポスト82を有しておらず、その代わりに、それぞれのパドル62の外径部78から突出する上部剪断縁86(図4に示した上部剪断縁46に相当)を有する。それぞれのパドル62の最下部は、その外径部78によって全体が形成され、図4に示した下部剪断縁48と、ポスト82とをいずれも有しておらず、外径部78のうちのパドル62の最も下に位置するポスト82の下方にある部分に沿って、より大きな間隙88を形成している。図5および図6に示した具体的かつ非限定的な構成では、上部剪断縁86およびポスト82の遠位端は、パドル62の最も外径側にある部分を画定し、より大きな間隙88は、比較的大きな石やその他の異物をパドル62およびその外径部78の周囲から排出するために通過させることができる下部開口部を形成する。図5図6、および図7は非限定的な実施形態を示しているため、ポスト82の数および配置、下部剪断縁(たとえば、図4に示した下部剪断縁48に相当)の具備、および、いずれかのまたはすべてのポストおよび/または剪断縁の省略を含む、その他の構成も採ることが可能である。
【0021】
図5図6、および図7は、下部プレート66に形成された複数の排出孔90を示す。排出孔90は、下部プレート66の外周部67に沿って、それぞれのパドル62の外径部78に近接して、かつ、間隔を空けて配置され、石やその他の異物を通過でき、その後で切断ヘッド12に接触することなく、インペラ60から排出させることができる通路を形成する。したがって、排出孔90は、インペラ60のパドル62と、切断ヘッド12の刃部20およびナイフホルダ30とに損傷が加わるリスクを回避または少なくとも低減させることができる。図5においては、複数の排出孔90が、取付孔74によって実現されるパドル62のさまざまな位置に対応して選択できるように配置されている。パドル62が代替的な位置を採らない場合には、それぞれの排出孔90ごとに単一のパドル62を配置することもできる。
【0022】
排出孔90は取付孔74とは異なる機能を有するため、そのサイズ、形状、および/またはインペラ60の下部プレート66における位置は、取付孔74とは異なる。図5に示したように、排出孔90は、下部プレート66の外周部67に隣接して配置され、外径部78および/またはパドル62の面64に近接あるいは連続して配置され、その長手方向の寸法が、下部プレート66の外周部67に沿って周方向を向くように配置されている。図5図6、および図7に示した非限定的な実施形態から明らかであるように、排出孔90のいくつかあるいはすべては、1つ以上のパドル62の外径部78のすぐ隣にあるいは選択的に連続するよう形成されるため、それぞれの排出孔90の少なくとも一部は、1つ以上のパドル62の外径部78の径方向のすぐ外側に、つまり、外径部78とインペラ60の外周部67との間に存在する。追加的に、1つ以上のパドル62の外径部78は、排出孔90の径方向内側部分の上を径方向に突出することもできるが、パドル62の外径部78が排出孔90の上を径方向に突出しないように構成することもできる。より大きな間隙88がパドル62の下端に存在する場合には、それぞれの間隙88は、排出孔90に隣接する、あるいは、排出孔90の1つと連続するため、それぞれの間隙88は、石やその他の異物がインペラ60から排出される通路の一部を形成するとともに、次に後続するパドル62まで異物を移動させ、該後続するパドル62に付随する排出孔90を通ってインペラ60から排出させるための別の通路を形成する。
【0023】
図5図7に示したように、排出孔90は下部プレート66の上面66Aにおいて外周部67と交わらず、上面66Aにおいて外周部67から径方向内側に間隔を空けて配置され、下部プレート66の上面66Aにおいて外周部67に沿ってそれぞれの排出孔90を完全に閉じる壁部96を形成する。図6および図7からより明らかであるように、排出孔90は、上面66Aおよび下面66Bとの間で下部プレート66を垂直に完全に貫通するため、壁部96は、下部プレート66の外周部67の全体に沿って排出孔90を完全に閉じている。排出孔90の径方向の最内壁部92および/または径方向の最外壁部94は、下部プレート66の上面66Aに対して垂直であってもよいが、図6および図7においては、排出孔90の径方向の最内壁部92および径方向の最外壁部94は、下部プレート66の上面66Aに対して垂直ではない。さらに、図示のように、排出孔90の径方向の最外壁部94は傾斜しているため、上部プレート面66Aにおいて、それぞれの排出孔90の径方向で最も外側にある部分は、下部プレート面66Bにおける排出孔90の径方向で最も外側の部分よりも径方向外側に存在する。そのため、排出孔90は、上面66Aから下面66Bにかけて径方向内側に向けて傾斜している。下部プレート66の外周部67を形成する面は、下部プレート66の上面66Aに対して垂直であってもよいが、図5図7に示した特定の実施形態においては、外周部67の表面はテーパ状となっており、それぞれの排出孔90の径方向の最外壁部94の傾斜角(α)は、外周部67の表面とほぼ相補的に傾斜している。このため、壁部96は、下部プレート66の上面66Aと下面66Bとの間で均一の厚さを有する。構造上の強度のためには有益であるが、壁部は必ずしも均一な厚さを有していなくてもよい。たとえば、排出孔90が上面66Aから下面66Bにかけて径方向外方に向けて傾斜する構成とすることもできる。
【0024】
排出孔90にはさまざまな形状を採用できるが、実用的には、長手方向が下部プレート66の外周部67に沿って周方向に向くように配置された長円形状に形成され、下部プレート66の閉じた周囲との組み合せにより、石やその他の異物が刃部20または切断ヘッドの他の部品に接触することなく排出孔90から排出されることを可能にする。切断する製品の形状および/またはサイズ、並びに、接触する可能性のある異物の形状およびサイズに応じて、排出孔90にはさまざまなサイズや形状を採用し得る。ジャガイモなどの根菜類を含む、デンプンを含有する製品をスライスする際に考慮すべき点は、スライスの工程で放出されるデンプンが排出孔90を塞ぐ可能性があることである。この理由から、ジャガイモをスライスする際の排出孔90の径方向および/または周方向を含む、下部プレート66の上面66Aおよび下面66Bに平行な平面における最小断面寸法は、約4.5mm(約3/16インチ)であると考えられる。フライドポテトおよびポテトチップスを生産するために一般的に使用されるサイズのジャガイモをスライスする場合には、許容範囲内のスライスを行うためには、排出孔90の最大径方向寸法(インペラ60の径方向における排出孔90の幅)は約30mm(約1.2インチ)であると考えられる。より一般的には、特に好適な径方向の寸法は、約8mm(約5/16インチ)以上約30mm(約1.2インチ)以下で、周方向の寸法は約8mm(約5/16インチ)以上約50mm(約2インチ)以下であり、より好ましくは、それぞれ約9.5mm(約0.375インチ)以上約12.5mm(約0.5インチ)以下で、および、約19mm(約0.75インチ)以上約32mm(約1.25インチ)以下である。実用的には、排出孔90の径方向および周方向の寸法は、約12.5mm×約25mm(約0.5インチ×1インチ)であることが好ましい。
【0025】
図8は、図5図7に示したインペラ60の回転軸に沿って垂直にインペラ60に侵入した石(あるいはその他の異物)110の典型的な軌跡を示す。石110は、インペラ60の回転によって発生した遠心力の影響下で下部プレート66の上面66Aを水平に移動し、その後、下部プレート66の排出孔90の1つを通って下方に移動する。図8に示さている複数の石110のうちの最後の2つあるいは3つは、石が製品に埋め込まれていて、切断中に取り外された場合に通過する可能性のあるルートを示している。
【0026】
図9Aは、排出孔90の1つに接触し、排出孔90を通って移動する石110の典型的な軌跡を示す。図9Aから明らかであるように、石110の軌跡は、石110が下部プレート66の上面66Aを通過後、排出孔90を通って下向きになる前に、排出孔90の径方向の最外壁部94に衝突することを示している。したがって、径方向の最外壁部94によって形成される排出孔90の縁部の状態、特に、下部プレート66の上面66Aに対する角度は、石110が径方向の最外壁部94に衝突した後は、跳ねて排出孔90を飛び出して刃部20に衝突したり、図9Aに示した隣接するナイフホルダ30の下端部に衝突したりするのではなく、排出孔90を通って落下することを促進するよう調整される。最適な角度は、排出孔90のサイズおよび形状と、異物の弾性、サイズ、および質量と、インペラ60の回転速度とに依存するが、実用的には、排出孔90が図示したように径方向内方に傾斜する場合には、直角から約25度以下の角度(α)(一般的には、下部プレート66の上面66Aに対して約65度以上)であると、異物が排出孔90を通って下方へより強制的に排出することができる。
【0027】
図9Bは、排出孔90の代替的な構成を模式的に示し、下部プレート66の上面66Aと下面66Bとの間で径方向寸法が大きくなる、テーパ状の排出孔90の潜在的な利点を明らかにしている。下部プレート66の上面66Aに対する径方向の最外壁部94の角度(α)は、石110が径方向の最外壁部94に衝突した後に排出孔90を通って落下することを促進するよう調整される。排出孔90は、図示の例では、垂直から約10度の角度(α)で径方向外向きに傾斜しているが、最適な角度は、排出孔90のサイズおよび形状と、異物の弾性、サイズ、および質量と、インペラ60の回転速度とに依存する。また、図9Bは、排出孔90の径方向の最外壁部94に相補的な傾斜を有する、下部プレート66の外周部67を形成する面と、ナイフホルダ30の下端の径方向内側面とを示す。
【0028】
図9A図9Bからさらに明らかであるように、排出孔90の径方向寸法(インペラ60の径方向における排出孔90の幅)は、石およびその他の異物が径方向最外壁部94に衝突した後、あるいは単純に下部プレート66の上面66Aから排出孔90を通って落下する際に、確実に排出孔90を通って落下するのに十分な大きさを有していなければならない。図10は、後者の場合を示す。
【0029】
図7および図9Aに示した特定の実施形態では、図示した排出孔90の壁部は、互いに異なる角度を有する複数の壁面領域によって形成される。そのような構成により、石およびその他の異物が排出孔90を通って排出されることが促進されると考えられ、これにより、刃部20、ナイフホルダ30、パドル62などが損傷するリスクを低減させるとともに、ナイフホルダ30とパドル62の外径部78との間に異物が挟まるリスクを低減させる。図11は、排出孔90の典型的な構造を示し、排出孔90の径方向の最外壁部94を含む傾斜壁部100を示す。導入壁面102は、下部プレート66の上面66Aに対して約45度の角度を有するよう配置されている。排出壁面104は、排出孔90の径方向の最外壁部94を変更することなく、排出孔90下部出口のサイズを大きくするよう機能する。図11に示した構造により、下部プレート66の下面66Bにおける排出孔90の下部出口は、排出孔90を通ってインペラ60から石およびその他の異物を排出することを促進するため、下部プレート66の上面66Aにおける排出孔90の上部入口よりも大きくなっている。図11に示した排出孔90の構造は、石110をインペラ60から排出させることに特に効果的であるが、上述した排出孔の構成に限定することなく、その他の機械加工方法および排出孔の構成を採用することもできる。
【0030】
図12A図14Bは、排出孔90の径方向の最内壁部92および径方向の最外壁部94が、インペラ60の下部プレート66の上面66Aに対して垂直である、非限定的な実施形態を示す。図12A図14Bでは、下部プレート66の外周部67を形成する面も下部プレート66の上面66Aに対して垂直であるため、排出孔90の向きは外周部67の面に対して相補的であり、壁部96は、下部プレート66の上面66Aと下面66Bとの間で均一な厚さを有する。径方向の最内壁部92および径方向の最外壁部94は互いに平行である必要はなく、外周部67の面に対して平行である必要もない。径方向の最内壁部92あるいは径方向の最外壁部94のいずれかおよび/または外周部67は、下部プレート66の上面66Aに対して傾斜すること、あるいは、垂直であることも可能である。
【0031】
また、図12A図12Cは、径方向で最も外側の範囲が異なる形状を有するパドル62を示す。図12A図12Cに示したパドル62は、図5図8に示したパドル62の径方向長さよりも短い径方向長さと、同様のサイズとを有するパドル62を共有している。図12Aに示したパドル62は、図5図8に示したパドル62と同様に、パドル62の最下部の範囲には、図4に示した下部剪断縁48と、ポスト82を有していないため、下部プレート66の上面66Aの真上に、外径部78の軸方向の面に沿って、比較的大きな石やその他の異物をパドル62の外径部78の周囲から排出するよう通過させるための、前述したような大きな間隙88が形成されている。図12Bに示したパドル62は、図5図8および図12Aに示したパドル62とは異なり、追加的なポスト82がパドル62の最下部の範囲における外径部78の軸方向の面に取り付けられているため、上面66Aの真上における外径部78の軸方向の面に沿った大きな間隙88の長さは、図5図8および図12Aに示したパドル62の間隙88の長さよりも小さい。図12Cに示したパドル62は、図5図8図12A、および図13に示したパドル62とは異なり、剪断縁86(図4の剪断縁48と同様)は、パドル62の最下部の範囲において外径部78の下方で突出しており、大きな間隙88の長さは図5図8および図12Aに示したパドル62の間隙88の長さよりも小さいため、大きな間隙88は、上面66Aの上方に存在するが、剪断縁86の高さの分だけ上面66Aから間隔を空けて配置されている。
【0032】
図13Aは、溝80およびポスト82を有さないパドル62を模式的に示す。パドル62の外径部78は、排出孔90の上を完全に突出している。さらに、パドル62は、パドル62の面64に機械加工またはその他の方法で形成されたテーパ状のレリーフによって形成され、スライス中に製品と係合する、大きな間隙88を有する。図示したように、大きな間隙88は、パドル62の外径部78のすぐ隣に、排出孔90と一致するように配置され、石110は排出孔90を通って下方に移動される。
【0033】
図13Bは、面64に溝80を有さないパドル62を模式的に示す。パドル62の外径部78は、排出孔90の上のいずれにも突出していない。さらに、パドル62は、個別に製造されてパドル62の外径部78に取り付けられる、前述したポスト82の代わりに、パドル62の外径部78から突出するポスト82が機械加工により形成されている。図示したように、最下位のポスト82は、排出孔90と一致するように間隙88を形成し、比較的大きな石やその他の異物は、間隙88を通ってパドル62の外径部78の周囲から排出される。
【0034】
図14Aおよび図14Bは、排出孔90の別の配置および構成を模式的に示す。図示した排出孔90は、スライス中に製品と係合するパドル62の面64に隣接し、面64に沿って伸長している。図14Aでは、排出孔90は長方形の形状を有するが、図14Bでは、排出孔90は半円形の形状を有する。正方形や円形など、排出孔90について上述した断面寸法を満たす形状であれば、その他の形状を採用することも可能である。
【0035】
図15および図16は、外周部67全体に沿って周方向に間隔を空けて配置された排出孔90(それぞれ、長円および円形)を有するよう製造されたインペラ60の他の非限定的な実施形態の下部プレート66を模式的に示す。場合によっては、排出孔90は、外周部67全体に沿って周方向に等間隔で配置される。いずれの場合でも、排出孔90は、排出孔90について上述したのと同様の断面寸法を有することができる。図15および図16に示した実施形態に関する、その他の構造、機能、材料などの特徴については、本質的には図5図14Bに示した実施形態に関する説明のとおりである。
【0036】
以上のように、本発明について、特定の実施形態に関して説明を行ったが、本発明の代替態様についても、当業者によって適用可能である。たとえば、スライス装置10、切断ヘッド12、インペラ60、およびこれらそれぞれの部品は、図示の態様および構造とは異なっていてもよい。スライス装置10、切断ヘッド12、および/またはインペラ60の特定の部品の機能は、異なる構造を有するが機能が類似する(必ずしも同等でなくてもよい)部品により達成されてもよく、これらの製造においては、さまざまな材料を採用することができる。さらに、本発明は、特定の実施形態の1つ以上の特徴または特性を有していない、あるいは、開示された異なる実施形態の2つ以上の特徴または特性を組み合わせた、追加的または代替的な実施形態を包含する。したがって、本発明は、本明細書に記述された実施形態または図示された実施形態に限定されない。また、図示した実施形態を説明する目的で本明細書において使用した語法および用語は、本発明の範囲を限定するものではない。したがって、本発明の範囲は本願の特許請求の範囲のみによって限定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16