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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】冷却炉
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/30 20060101AFI20240830BHJP
   F27B 9/24 20060101ALI20240830BHJP
   F27B 9/12 20060101ALI20240830BHJP
   F27D 7/06 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
F27B9/30
F27B9/24 R
F27B9/12
F27D7/06 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024048759
(22)【出願日】2024-03-25
【審査請求日】2024-03-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】ノリタケ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 雄太
(72)【発明者】
【氏名】吉金 隆宏
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-094174(JP,A)
【文献】特開2003-226913(JP,A)
【文献】特開平08-226771(JP,A)
【文献】特開2013-130366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱処理された被搬送物が供給されるものであって、側壁を有する搬送室と、
前記搬送室内を冷却するための冷却源と、
前記搬送室内に設けられ、前記側壁の壁面に対して直交する長尺なものであって前記被搬送物を搬送するための複数本の搬送ローラーと、を備え、
前記複数本の搬送ローラーは、相互に間隔を置いて一列に並べられたものであり、
前記側壁には、前記複数本の搬送ローラーのうちの2本以上の一部の端部が挿入可能な大きさの貫通孔が設けられ、
前記貫通孔内には、前記一部の搬送ローラーの各端部が挿入された複数個のローラー孔を有する断熱シール部材が設けられ、
前記断熱シール部材は、前記断熱シール部材の外周面が前記貫通孔の内周面に接触した状態で前記貫通孔内に設けられ、
前記一部の搬送ローラーの各端部は、前記端部の外周面が前記ローラー孔の内周面に接触した状態で前記ローラー孔内に挿入されていることを特徴とする冷却炉。
【請求項2】
前記断熱シール部材は、前記一部の搬送ローラーの端部を挟んで相互に対向する2つの分割断熱シール部材に分割されていることを特徴とする請求項1に記載の冷却炉。
【請求項3】
前記2つの分割断熱シール部材のそれぞれは、前記側壁の厚さ方向に相互に重なる複数の断熱シール板に分割されていることを特徴とする請求項2に記載の冷却炉。
【請求項4】
前記側壁には、前記貫通孔の端面のうち互いに隣接する2つの前記ローラー孔間に対応する部分を覆う覆い部材が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の冷却炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱処理された被搬送物を搬送室内で搬送しながら冷却する冷却炉に関する。
【背景技術】
【0002】
上記冷却炉には搬送室内に複数本の搬送ローラーを設置した構成のものがある。これら複数本の搬送ローラーは相互に間隔を置いて一列に並べられたものであり、各搬送ローラーの端部は貫通孔を通して搬送室の外部に突出している。これら各貫通孔は搬送室の側壁に設けられたものであり、各搬送ローラーの端部は搬送室の外部で軸受によって回転可能に支持されている。これら複数本の搬送ローラーは加熱処理された被搬送物を支持するものであり、被搬送物は複数本の搬送ローラーが回転操作されることに応じて搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-30848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では被搬送物が高重量化される傾向にあり、各搬送ローラーを径大化することに応じて各搬送ローラーが被搬送物の重量で歪むことを防止していた。しかしながら、各搬送ローラーには加熱処理された被搬送物からの熱等が作用するので、径大な搬送ローラーが熱膨張することに応じて側壁の貫通孔の内周面に干渉する虞があった。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、搬送ローラーが熱膨張することによって側壁の貫通孔の内周面に干渉することを防止することが可能な冷却炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の冷却炉の要旨とするところは、(a)加熱処理された被搬送物が供給されるものであって側壁を有する搬送室と、(b)前記搬送室内を冷却するための冷却源と、(c)前記搬送室内に設けられ前記側壁の壁面に対して直交する長尺なものであって前記被搬送物を搬送するための複数本の搬送ローラーとを備え、(d)前記複数本の搬送ローラーは相互に間隔を置いて一列に並べられたものであり、(e)前記複数本の搬送ローラーは相互に間隔を置いて一列に並べられたものであり、(f)前記側壁には前記複数本の搬送ローラーのうちの2本以上の一部の端部が挿入可能な大きさの貫通孔が設けられ、(g)前記貫通孔内には前記一部の搬送ローラーの各端部が挿入された複数個のローラー孔を有する断熱シール部材が設けられ、(h)前記断熱シール部材は前記断熱シール部材の外周面が前記貫通孔の内周面に接触した状態で前記貫通孔内に設けられ、(i)前記一部の搬送ローラーの各端部は前記端部の外周面が前記ローラー孔の内周面に接触した状態で前記ローラー孔内に挿入されていることにある。
【0007】
第2の発明の冷却炉の要旨とするところは、第1の発明において、(a)前記断熱シール部材は前記一部の搬送ローラーの端部を挟んで相互に対向する2つの分割断熱シール部材に分割されていることにある。
【0008】
第3の発明の冷却炉の要旨とするところは、第2の発明において、(a)前記2つの分割断熱シール部材のそれぞれは前記側壁の厚さ方向に相互に重なる複数の断熱シール板に分割されていることにある。
【0009】
第4の発明の冷却炉の要旨とするところは、第3の発明において、(a)前記側壁には前記貫通孔の端面のうち互いに隣接する2つの前記ローラー孔間に対応する部分を覆う覆い部材が設けられていることにある。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、複数本の搬送ローラーのうち2以上の一部の端部が挿入可能な大きさの貫通孔が側壁に設けられている。このため、搬送ローラーの外周面および貫通孔の内周面間の間隔が大きくなるので、搬送ローラーが熱膨張することによって貫通孔の内周面に干渉することが防止される。この貫通孔内には断熱シール部材が設けられ、断熱シール部材には複数本の搬送ローラーのうち2以上の前記一部に応じた個数のローラー孔が設けられている。これら各ローラー孔内には搬送ローラーの各端部が挿入されている。この断熱シール部材の外周面が貫通孔の内周面に接触し、各ローラー孔の内周面が搬送ローラーの端部の外周面に接触しているので、搬送室の内部から側壁の長大な貫通孔を通って外部に熱が逃げることが防止される。
【0011】
第2の発明によれば、断熱シール部材が複数本の搬送ローラーのうち2以上の一部の端部を挟んで相互に対向する2つの分割断熱シール部材に分割されているので、断熱シール部材を2つの分割断熱シール部材に分割することによって前記一部の本数の搬送ローラーから除去することが可能になる。このため、断熱シール部材を前記一部の本数の搬送ローラーから引抜く作業が不要になるので、断熱シール部材の除去作業が容易になる。
【0012】
第3の発明によれば、2つの分割断熱シール部材のそれぞれが側壁の厚さ方向に相互に重なる複数の断熱シール板に分割されているので、複数の断熱シール板を単位枚数毎に側壁の貫通孔内に挿入することによって断熱シール部材を貫通孔内で構成することが可能になる。このため、側壁の厚さ方向に厚肉な断熱シール部材を貫通孔内に無理に挿入する作業が不要になるので、断熱シール部材の貫通孔内に対する設置作業が容易になる。
【0013】
第4の発明によれば、貫通孔の端面のうち互いに隣接する2つのローラー孔間に対応する部分を覆う覆い部材が側壁に設けられているので、貫通孔の端面の一部を覆い部材によって覆った状態で複数の断熱シール板を単位枚数毎に貫通孔内に挿入することが可能になる。この場合に断熱シール板が貫通孔の端面を通過して貫通孔内から脱落することが防止されるので、断熱シール板の貫通孔内に対する挿入作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例に係る冷却炉を示す側面図である。
図2図1の冷却炉を図1のX2―X2線に沿って破断して示す図である。
図3図1の冷却炉の一部である図2のX3部を拡大して示す図である。
図4図1の冷却炉用の断熱シール部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しながら説明する。
【実施例
【0016】
図1の加熱炉10は磁器やセラミックス電子部品や炭素繊維等の焼成およびホーロー製品衛生陶器等の釉焼に適用されるローラーハースキルン型のものであり、工場等の床面F上に設置されるものである。この加熱炉10は被搬送物C(図2参照)の搬送方向(図1の矢印H1参照)に沿うトンネル状の炉室(図示せず)を有するものである。この炉室のうち反搬送方向側の端部には入口が設けられ、炉室のうち搬送方向側の端部には出口(いずれも図示せず)が設けられている。
【0017】
加熱炉10の炉室内には被搬送物Cを加熱処理するための複数のヒーター(図示せず)が設置されている。この炉室内には複数本の搬送用のローラー(図示せず)が設置されている。これら各ローラーは直交方向に対して平行な軸を中心に回転可能なものであり、被搬送物Cは複数本のローラーによって支持されている。この直交方向とは搬送方向に対して図1の紙面の奥行方向(図2の矢印H2参照)を称する。
【0018】
加熱炉10の複数本のローラーは共通のモーターにチェーン機構(いずれも図示せず)を介して連結されており、チェーン機構はモーターによって駆動されることに応じて複数本のローラーのそれぞれを回転操作する。これら複数本のローラーはモーターによって回転操作されることに応じて被搬送物Cを搬送方向へ搬送するものである。この被搬送物Cは搬送方向へ搬送されながら複数のヒーターによって加熱されるものであり、複数本のローラーは高温度に加熱された被搬送物Cを加熱炉10の出口から搬出する。
【0019】
床面F上には、図1に示すように、加熱炉10の搬送方向側に位置して冷却炉20が設置されている。この図1の冷却炉20は本発明の冷却炉の一部を示すものであり、冷却炉20のうち加熱炉10側の端部には入口が設けられ、冷却炉20のうち加熱炉10とは反対側の端部には出口(いずれも図示せず)が設けられている。この冷却炉20の入口は加熱炉10の出口に接続されており、加熱炉10内で加熱された被搬送物Cは加熱炉10の複数本のローラーによって加熱炉10の出口から冷却炉20の入口を通して冷却炉20内に供給される。この冷却炉20は加熱炉10からの被搬送物Cを搬送方向へ搬送しながら冷却するものであり、被搬送物Cは冷却炉20内で冷却された後に冷却炉20の出口から常温度の常圧雰囲気中に搬出される。この冷却炉20は高温度の被搬送物Cを高温度および常温度間の熱的緩衝温度に冷却するものであり、次のように構成されている。
【0020】
図1の冷却炉20は、図2に示すように、搬送方向に対して平行な四角状の炉体22を有するものであり、炉体22は2つの側壁22aと天壁22bと底壁22cを有している。2つの側壁22aは直交方向に間隔を置いて互いに対向する鉛直なものであり、底壁22cは2つの側壁22aの下端部間を連結する水平なものである。天壁22bは2つの側壁22aの上端部間を連結する水平なものであり、2つの側壁22a~底壁22cの4者間には搬送方向に対して平行なトンネル状の冷却室24が形成されている。この冷却室24は本発明の搬送室に相当する。
【0021】
炉体22は、図2に示すように、搬送方向に対して平行な四角状の断熱レンガ26および金属製のケーシング28を有している。このケーシング28は断熱レンガ26を包被するものであり、ケーシング28は断熱レンガ26の外周面を覆う四角状の外筒部28aおよび断熱レンガ26の内周面を覆う四角状の内筒部28bを有している。
【0022】
冷却室24内の天井部には、図1に示すように、複数本の冷却パイプ30が設置されている。これら複数本の冷却パイプ30は搬送方向に相互に間隔を置いて配列されたものである。これら各冷却パイプ30は前記直交方向に対して平行なものであり、図2に示すように、各冷却パイプ30の一端部にはL字状の冷媒入口管30bが接合され、各冷却パイプ30の他端部にはL字状の冷媒出口管30aが接合されている。これら各冷却パイプ30は共通の冷却装置(図示せず)から冷媒入口管30bを通して低温度の冷媒が注入されるものである(矢印IN参照)。これら各冷却パイプ30は冷媒出口管30aを通して冷媒を排出するものであり(矢印OUT参照)、冷却室24内は複数の冷却パイプ30内を流れる冷媒によって熱交換されることに応じて熱的緩衝温度に冷却される。これら各冷却パイプ30は冷却源に相当する。
【0023】
各側壁22aの外面には、図2に示すように、ローラーケース32が設置されている。これら各ローラーケース32は搬送方向に延びる細長なものであり(図1参照)、両ローラーケース32間は炉体22を挟んで前記直交方向に相互に対向配置されている。これら各ローラーケース32は、図3に示すように、炉体22側の一面のみが開口するものである。これら各ローラーケース32にはローラーケース32を周回するフランジ部32aが形成されており、各フランジ部32aおよび炉体22の側壁22a間にはローラーケース32を周回するケースシール部材34が介在されている。
【0024】
各ローラーケース32のフランジ部32aには、図3に示すように、炉体22の外側から複数のボルト36aが挿入されており、各ボルト36aの先端部はケースシール部材34およびケーシング28の外筒部28aを貫通して断熱レンガ26内に突出している。これら各ボルト36aの先端部にはナット36bが螺合されており、各ローラーケース32は複数組のボルト36aおよびナット36bによって側壁22aの外面に着脱可能に固定されている。
【0025】
2つのローラーケース32のそれぞれには、図2に示すように、中央軸受機構70が固定されている。これら2つの中央軸受機構70は炉体22を挟んで前記直交方向に互いに対向するものである。これら2つの中央軸受機構70は互いに同一に構成されたものであり、以下、1つの中央軸受機構70を対象に中央軸受機構70の構成を説明する。
【0026】
中央軸受機構70は、図3に示すように、2つの軸受板40と2つの軸受板40の上端部間に介在された上スペーサー板42と2つの軸受板40の下端部間に介在された下スペーサー板44を有している。これら2つの軸受板40は直交方向に隙間を介して相互に対向する鉛直とされたものであり、上スペーサー板42および下スペーサー板44のそれぞれは水平とされたものである。これら上スペーサー板42内および下スペーサー板44内のそれぞれには中央軸受機構70の外側から一方の軸受板40を通して複数のボルト46aが挿入されている。
【0027】
各ボルト46aの先端部は、図3に示すように、他方の軸受板40およびローラーケース32を通してローラーケース32内に突出している。これら各ボルト46aの先端部にはナット46bが螺合されており、2つの軸受板40と上スペーサー板42と下スペーサー板44の4者間は複数組のボルト46aおよびナット46bによって分解可能に相互に連結されている。
【0028】
各軸受板40には、図3に示すように、6つの軸受48が支持されている(1つのみ図示する)。これら各軸受板40の6つの軸受48は搬送方向に相互に等ピッチで配列されたものであり、中央軸受機構70は計6対の軸受48を有している。これら6対の軸受48のそれぞれには支持軸50が回転可能に支持されている。これら各支持軸50は円柱状をなすものであり、搬送方向に相互に等ピッチで配列されている。これら各支持軸50のうちローラーケース32側の一端部はローラーケース32内に突出し、各支持軸50のうちローラーケース32とは反対側の他端部は中央軸受機構70の外部に突出している。
【0029】
各支持軸50には、図3に示すように、ローラーケース32内に位置して径小部50aおよびヘッド部50bが形成されている。これら各径小部50aは支持軸50に比べて径小な円柱状をなすものであり、各ヘッド部50bは径小部50aに比べて径大な円柱状をなすものである。各支持軸50にはばね押え板60が固定されている。これら各ばね押え板60は支持軸50に比べて径大な円環状をなすものであり、各支持軸50の外周面にはばね押え板60よりも冷却室24側に位置して圧縮コイルスプリングからなる押えばね62が挿入されている。中央軸受機構70は以上のように構成されている。
【0030】
断熱レンガ26には、図3に示すように、各中央軸受機構70に対応してレンガ孔26aが形成されている。これら各レンガ孔26aは断熱レンガ26のうち側壁22aに対応する部分を前記直交方向に貫通するものであり、前記直交方向から見た場合に水平方向の長さ寸法が垂直方向の高さ寸法に比べて大きな長方形状をなしている。ケーシング28の外筒部28aは各中央軸受機構70に対応してレンガ孔カバー28cを有している。これら各レンガ孔カバー28cは外筒部28aから冷却室24側に向けて突出する四角筒状をなすものであり、各レンガ孔26aの内周面はレンガ孔カバー28cによって内側から覆われている。
【0031】
炉体22の各側壁22aは、図3に示すように、中央軸受機構70に対応して貫通孔52を有している。これら各貫通孔52はレンガ孔カバー28cの内部空間を称するものであり、本発明の貫通孔に相当する。ケーシング28の内筒部28bには各貫通孔52に対応して窓部28dが形成されている。これら各窓部28dは前記直交方向から見た場合に貫通孔52に重なる長方形状をなすものであり、各貫通孔52は窓部28dを介して冷却室24内に連通している。
【0032】
各貫通孔52内には、図3に示すように、セラミックファイバー製のローラーシール部材54が設けられている。これら各ローラーシール部材54は、図4(a)(b)に示すように、搬送方向に延びる細長な直方体形状をなすものであり、各ローラーシール部材54のうち搬送方向側の両端面のそれぞれは貫通孔52の内面に面接触している。これら各ローラーシール部材54の上面は、図3に示すように、貫通孔52の天井面に面接触しており、各ローラーシール部材54の下面は貫通孔52の底面に面接触している。これら各ローラーシール部材54は本発明の断熱シール部材に相当するものであり、各ローラーシール部材54の外周面は貫通孔52の内周面に接触している。
【0033】
各ローラーシール部材54には、図4(a)(b)に示すように、円形状をなす6つのローラー孔56が形成されている。これら各ローラーシール部材54の6つのローラー孔56は搬送方向に相互に等ピッチで一列に並ぶものであり、各ローラー孔56は本発明のローラー孔に相当する。
【0034】
各ローラーシール部材54は、図4(a)(b)に示すように、6つのローラー孔56の中心点を通る水平な直線で上分割ローラーシール部材54aおよび下分割ローラーシール部材54bの2つに分割されている。これら各組の上分割ローラーシール部材54aおよび下分割ローラーシール部材54b間は貫通孔52内で互いに接触している。これら上分割ローラーシール部材54aおよび下分割ローラーシール部材54bは本発明の2つの分割断熱シール部材に相当する。
【0035】
各上分割ローラーシール部材54aおよび各下分割ローラーシール部材54bのそれぞれはセラミックファイバーからなる複数の断熱シール板54cを直交方向に相互に重ねることから構成されたものである。これら複数の断熱シール板54cは貫通孔52内に1枚毎に挿入されることに応じて貫通孔52内で重ねられたものであり、各貫通孔52の内周面は複数の断熱シール板54cの外周面に接触している。これら各断熱シール板54cは本発明の断熱シール板に相当する。
【0036】
冷却室24内には、図1に示すように、中央軸受機構70に対応して6本の搬送ローラー58が収納されている。これら各搬送ローラー58は、図2に示すように、前記直交方向に対して平行な円筒状のセラミックスからなるものである。これら各搬送ローラー58は側壁22aの壁面に対して直交する長尺なものである。これら6本の搬送ローラー58のそれぞれの各端部は、図3に示すように、ケーシング28の窓部28dを通してローラーシール部材54のローラー孔56内に抜差し可能に挿入されている。即ち、炉体22の各側壁22aの貫通孔52は複数本の6本の搬送ローラー58の端部が挿入されたものである。
【0037】
各ローラー孔56の内周面には、図3に示すように、搬送ローラー58の外周面がその端部で接触しており、各搬送ローラー58の端部がローラー孔56の内周面に接触する圧力は搬送ローラー58が搬送モーター66(後述する)によって回転操作されることを許容する大きさに設定されている。即ち、各断熱シール部材54は6本の搬送ローラー58を上下に挟んで相互に対向する上分割断熱シール部材54aおよび下分割断熱シール部材54bの2つに分割されたものである。
【0038】
各側壁22aには、図3に示すように、貫通孔52に対応して金属板製の2つの内押え板72が固定されている。これら各内押え板72は、図4に示すように、貫通孔52の端面のうち互いに隣接する2つのローラー孔56間に対応する部分を覆うものである。これら各内押え板72は貫通孔52内に断熱シール板54cが挿入される前に複数組のボルト72aおよびナット72bによって側壁22aに着脱可能に固定されたものである。即ち、断熱シール板54cの貫通孔52に対する挿入作業は複数の内押え板72の固定状態で行われる。これら各内押え板72は断熱シール板54cの挿入作業中に断熱シール板54cが貫通孔52の端面を通過して貫通孔52の端面から脱落することを防止するものである。これら各内押え板72は本発明の覆い部材に相当する。
【0039】
各側壁22aには、図3に示すように、貫通孔52に対応して金属板製の2つの外押え板74が固定されている。これら各外押え板74は内押え板72に対して前記直交方向から対向するものであり、各外押え板74は内押え板72と同様に貫通孔52の端面のうち互いに隣接する2つのローラー孔56間に対応する部分を覆うものである。これら各外押え板74は貫通孔52内に複数の全ての断熱シール板54cが挿入された後に複数組のボルト74aおよびナット74bによって側壁22aに着脱可能に固定されたものである。これら各外押え板74は断熱シール板54cの挿入作業の完了後に断熱シール板54cが貫通孔52の端面から脱落することを内押え板72と共に防止する。
【0040】
炉体22の各ローラーケース32には、図1に示すように、中央軸受機構70の搬送方向側および反搬送方向側のそれぞれに位置して側軸受機構80が設置されている。これら計4つの側軸受機構80のそれぞれは中央軸受機構70に比べて少数の5本の搬送ローラー58を中央軸受機構70と同一の構成によって回転可能に支持するものである。
【0041】
図4(c)は各側軸受機構80用のローラーシール部材82を示すものであり、各ローラーシール部材82は5個のローラー孔56を有している。これら各ローラーシール部材82は5本の搬送ローラー58を挟んで上下に相互に対向する上分割ローラーシール部材82aおよび下分割ローラーシール部材82bの2つに分割されている。これら各上分割ローラーシール部材82aおよび各下分割ローラーシール部材82bのそれぞれは側壁22aの厚さ方向に相互に重なる複数枚の断熱シール板(図示せず)に分割されている。
【0042】
炉体22の各ローラーケース32には、図1に示すように、炉体22の入口側の端部および出口側の端部のそれぞれに位置して端軸受機構90が設置されている。これら計4つの端軸受機構90のそれぞれは側軸受機構80に比べて更に少数の4本の搬送ローラー58を中央軸受機構70と同一の構成によって回転可能に支持するものである。
【0043】
図4(d)は各端軸受機構90用のローラーシール部材92を示すものであり、各ローラーシール部材92は4個のローラー孔56を有している。これら各ローラーシール部材92は4本の搬送ローラー58を挟んで上下に相互に対向する上分割ローラーシール部材92aおよび下分割ローラーシール部材92bの2つに分割されている。これら各上分割ローラーシール部材92aおよび各下分割ローラーシール部材92bのそれぞれは側壁22aの厚さ方向に相互に重なる複数枚の断熱シール板(図示せず)に分割されている。
【0044】
冷却炉20は、図2に示すように、搬送モーター66を有している。この搬送モーター66は炉体22のうち前記直交方向の中央部に比べて一方側に偏った部分に配置されたものであり、搬送モーター66の駆動軸にはチェーン機構(図示せず)が連結されている。炉体22の計48本の支持軸50のうち搬送モーター66側の24本のそれぞれには、図3に示すように、スプロケット64が固定されており、24個のスプロケット64のそれぞれはチェーン機構に連結されている。このチェーン機構は搬送モーター66が運転されることに応じて24本の搬送ローラー58のそれぞれを互いに同一方向へ互いに同一速度で支持軸50を介して回転操作する。これら24本の搬送ローラー58はチェーン機構によって回転操作されることに応じて被搬送物Cを搬送方向へ搬送する。
【0045】
上記実施例によれば、炉体22の側壁22aの貫通孔52を複数本の24本の搬送ローラー58のうち2本以上の一部である6本の端部が挿入可能な大きさに設定した。このため、搬送ローラー58の外周面および貫通孔52の内周面間の間隔が大きくなるので、搬送ローラー58が熱膨張することによって貫通孔52の内周面に干渉することが防止される。この貫通孔52内に6個のローラー孔56を有するローラーシール部材54を設け、6本の搬送ローラー58のそれぞれの各端部をローラー孔56内に回転可能に挿入した。このローラーシール部材54の外周面を貫通孔52の内周面に接触させ、各ローラー孔56の内周面を搬送ローラー58の外周面に端部で接触させたので、搬送室24の内部から側壁22aの長大な貫通孔52を通って外部に熱が逃げることが防止される。この効果は側軸受機構80のローラーシール部材82および端軸受機構90のローラーシール部材92のそれぞれについても同様である。
【0046】
上記実施例によれば、中央軸受機構70のローラーシール部材54を6本の搬送ローラー58の端部を挟んで相互に対向する上分割ローラーシール部材54aおよび下分割ローラーシール部材54bの2つに分割した。このため、ローラーシール部材54を上分割ローラーシール部材54aおよび下分割ローラーシール部材54bの2つに分割することによって搬送ローラー58から除去することが可能になる。従って、ローラーシール部材54を6本の搬送ローラー58から引抜く作業が不要になるので、ローラーシール部材54の除去作業が容易になる。この効果は側軸受機構80のローラーシール部材82および端軸受機構90のローラーシール部材92のそれぞれについても同様である。
【0047】
上記実施例によれば、中央軸受機構70の上分割ローラーシール部材54aおよび下分割ローラーシール部材54bのそれぞれを側壁22aの厚さ方向に相互に重なる複数の断熱シール板54cに分割した。このため、複数の断熱シール板54cを1枚毎に側壁22aの貫通孔52内に挿入することによってローラーシール部材54を貫通孔52内で構成することが可能になる。従って、側壁22aの厚さ方向に厚肉なローラーシール部材54を貫通孔52内に挿入する作業が不要になるので、ローラーシール部材54の貫通孔52内に対する設置作業が容易になる。この効果は側軸受機構80のローラーシール部材82および端軸受機構90のローラーシール部材92のそれぞれについても同様である。
【0048】
上記実施例によれば、貫通孔52の端面のうち互いに隣接する2つのローラー孔56間に対応する部分を覆う内押え板72を側壁22aに設けた。このため、貫通孔52の端面の一部を内押え板72によって覆った状態で複数の断熱シール板54cを1枚毎に貫通孔52内に挿入することが可能になる。この場合に断熱シール板54cが貫通孔52の端面を通過して貫通孔52の端面から脱落することが防止されるので、断熱シール板54cの貫通孔52内に対する挿入作業が容易になる。この効果は側軸受機構80のローラーシール部材82および端軸受機構90のローラーシール部材92のそれぞれについても同様である。
【0049】
上記実施例においては、ローラーシール部材54を上分割ローラーシール部材54aおよび下分割ローラーシール部材54bの2つに分割したが、1つの部材から構成しても良い。これはローラーシール部材82およびローラーシール部材92のそれぞれについても同様である。
【0050】
上記実施例においては、中央軸受機構70のローラーシール部材54の上分割ローラーシール部材54aおよび下分割ローラーシール部材54bのそれぞれを1つの部材から構成しても良い。これは側軸受機構80のローラーシール部材82の上分割ローラーシール部材82aおよび下分割ローラーシール部材82bのそれぞれについても同様である。これは端軸受機構90のローラーシール部材92の上分割ローラーシール部材92aおよび下分割ローラーシール部材92bのそれぞれについても同様である。
【0051】
上記実施例においては、本発明を冷却炉20の計24本の搬送ローラー58のうち6本または5本または4本に適用したが、これに限定されるものではなく、要は24本の搬送ローラー58のうち2本以上の一部に適用すれば良い。
【0052】
上記実施例においては、中央軸受機構70と側軸受機構80と端軸受機構90の3者を搬送方向に向けて「端軸受機構90、側軸受機構80、中央軸受機構70、側軸受機構80、端軸受機構90」の順に配列したが、3者の配列の順序と個数と組合せはこれに限定されるものではない。
【0053】
上記実施例においては、炉体22の側壁22aの貫通孔52を搬送方向の長さ寸法が高さ寸法に比べて大きな長方形状に設定したが、これに限定されるものではなく、例えば両寸法間が互いに同一な正方形状に設定しても良い。この貫通孔52の高さ寸法に制約はなく、要は貫通孔52の長さ寸法を24本の搬送ローラー58のうち2本以上の一部が挿入可能な大きさに設定すれば良い。
【0054】
上述したのは本発明の実施例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0055】
20:冷却炉、22a:側壁、24:炉室(搬送室)、30:冷却パイプ(冷却源)、52:貫通孔、54:ローラーシール部材(断熱シール部材)、54a:上分割ローラーシール部材(分割断熱シール部材)、54b:下分割ローラーシール部材(下分割断熱シール部材)、54c:断熱シール板、56:ローラー孔、58:搬送ローラー、72:内押え板(覆い部材)、82:ローラーシール部材(断熱シール部材)、82a:上分割ローラーシール部材(分割断熱シール部材)、82b:下分割ローラーシール部材(下分割断熱シール部材)、92:ローラーシール部材(断熱シール部材)、92a:上分割ローラーシール部材(分割断熱シール部材)、92b:下分割ローラーシール部材(下分割断熱シール部材)、C:被搬送物
【要約】
【課題】搬送ローラーが熱膨張することによって貫通孔の内周面に干渉することを防止すること。
【解決手段】側壁22aの貫通孔52を6本の搬送ローラー58の端部が挿入可能な大きさに設定した。このため、搬送ローラー58の外周面および貫通孔52の内周面間の間隔が大きくなるので、搬送ローラー58が熱膨張することによって貫通孔52の内周面に干渉することが防止される。この貫通孔52内にローラーシール部材54を設け、6本の搬送ローラー58の各端部をローラーシール部材54のローラー孔56内に回転可能に挿入したので、搬送室24の内部から側壁22aの長大な貫通孔52を通って外部に熱が逃げることが防止される。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4