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▶ 宮下 正博の特許一覧

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  • 特許-鍵盤楽器演奏譜 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】鍵盤楽器演奏譜
(51)【国際特許分類】
   G09B 15/00 20060101AFI20240902BHJP
   G10G 1/02 20060101ALI20240902BHJP
   B42D 15/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
G09B15/00 C
G10G1/02
B42D15/00 331K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020106614
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022001903
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】720005079
【氏名又は名称】宮下 正博
(72)【発明者】
【氏名】宮下 正博
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-230786(JP,A)
【文献】特開平10-069215(JP,A)
【文献】実開昭56-026767(JP,U)
【文献】特開2015-060207(JP,A)
【文献】特開2009-258462(JP,A)
【文献】特開2019-179158(JP,A)
【文献】特開2002-372967(JP,A)
【文献】DTMに必須!?ピアノロールって何?打ち込みで知っておきたい仕組みを紹介!楽譜との違いは?,[online],2018年11月16日,<URL:https://web.archive.org/web/20181116100521/https://yugo-music.jp/article-11262.html>,2023年12月27日検索
【文献】(DAW;基礎)ピアノロールで音程の名称を勉強しよう1-音楽教室運営奮闘記,[online],2018年11月06日,<URL:https://www.terrax.site/entry/2018/11/06/%28DAW;基礎%29ピアノロールで音程の名称を勉強しよう1★>,2023年12月27日検索
【文献】ポリリズムを徹底解説![組み合わせのまとめもアリ]|KHUFRUDAMO NOTES - Official Web Site,[online],2019年10月11日,<URL:https://khufrudamonotes.com/polyrhythm-map>,2023年12月27日検索
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 15/00
G10G 1/02
B42D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵盤楽器の鍵盤配列に合わせて白鍵盤を示す白色枠と黒鍵盤を示す白色以外の枠とを複数個分横に並べることで鍵盤楽器の鍵盤表示図として構成し、1つの鍵盤表示図を1行として複数行で1小節グループを構成し、複数の小節グループを縦に並べて鍵盤楽器演奏譜のレイアウトとして構成する鍵盤楽器演奏譜であって、鍵盤楽器演奏譜のレイアウト上に曲の演奏時に打鍵するべき鍵盤枠内に打鍵する指記号として文字、記号、図を配置し、打鍵操作する左右の手を直線や曲線により左手右手境界線として表示し、練習中の箇所を特定することを可能にする記載をしていることを特徴とする鍵盤楽器演奏譜。
【請求項2】
請求項1記載の鍵盤楽器演奏譜において、演奏曲における五線譜で示された楽譜の曲の拍子と楽譜全体に記載された個々の音符における最短拍数から1小節内の鍵盤表示図行数を算出し、1小節を構成することを特徴とする鍵盤楽器演奏譜。
【請求項3】
請求項1または2記載の鍵盤楽器演奏譜において、各小節グループの区切り部分に、鍵盤表示図行の鍵盤枠に対応した音階表記をした行を挿入し、打鍵する鍵盤の音程を確認しやすくすることを特徴とする、鍵盤楽器演奏譜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鍵盤楽器演奏練習に利用する鍵盤楽器演奏譜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、楽譜を読めない人でも鍵盤楽器演奏練習が可能となる鍵盤図を利用した楽譜が開発されており、視覚的・直観的に曲の演奏における鍵盤操作を確認し練習することが可能となっている。
【0003】
電子的な鍵盤楽器においては演奏指示の機能として、曲の演奏における時間経過に沿って押鍵すべき鍵盤位置とタイミングを示すピアノロール(図10参照)を表示する機能が発明されている。
【0004】
ピアノロール(図10参照)を利用した鍵盤楽器演奏の流れを示す方法はインターネットの動画サイトにも投稿されており、曲の流れに従って操作鍵盤と指操作を確認することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-72399号公報
【文献】特開2004-199010号公報
【文献】特開平9-305171号公報
【文献】特開2004-101576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ピアノに代表される鍵盤楽器で曲の演奏ができるようになるには、音楽教室などに通うなどの方法で1時間前後もしくは数時間に及ぶ専門家からの指導を多くの期間にわたって継続する必要があると理解されている。この方法では定期的に受講時間や移動時間として相当な時間を確保して継続することにより、ようやく曲の演奏が可能となる。しかしながら指導を受けるための受講時間や移動時間の確保が難しい者にとっては、聴き覚えのある曲でさえ鍵盤楽器での演奏を実現することが困難な状況にあり鍵盤楽器で曲の演奏をすることは不可能であると結論付けてしまう。
近年、音楽や楽器演奏が脳を活性化したり日常のストレスを軽減したする効果があることと共に、高齢者における認知症リスクを抑制する効果があることが確認されている。世の人々が人生100年時代を迎える中、鍵盤楽器演奏未経験者が本願発明の鍵盤楽器演奏譜を活用することを通して、身近にある鍵盤楽器での演奏練習に夢中になることができる可能性を広げることができる。
【0007】
鍵盤楽器演奏未経験者が従来技術の鍵盤図を利用した楽譜を見て鍵盤楽器の演奏練習をすることは、従来の楽譜からの鍵盤演奏操作の解釈判断を不要としている点は助けとなっているが、次の2点の問題がある。
【0008】
世の中には様々な鍵盤数を有した鍵盤楽器が存在する。代表的な例では、49鍵盤、61鍵盤、76鍵盤、88鍵盤がある。従来技術の鍵盤図を利用した楽譜においては、必ずしも演奏練習する本人が使用する鍵盤数全体が表示されておらず、演奏対象鍵盤の位置を示した記号から解釈判断する思考をしながら、演奏練習する本人が使用する鍵盤楽器の鍵盤数全体の中から操作鍵盤位置を特定する必要があり、操作するべき鍵盤の解釈判断を誤る可能性がある。
【0009】
従来技術の鍵盤図を利用した楽譜においては、操作する際の左右の手を文字で表現しておりここで解釈判断を要する。また、打鍵操作する指が発明者が特定する番号や文字に限定した表現となっており、鍵盤楽器演奏練習者の認識特性に合わせた解釈変換となっていない。これらの解釈変換においては、誤った解釈をして誤った演奏として記憶してしまう可能性がある。
【0010】
鍵盤図を利用した楽譜で鍵盤楽器演奏練習した場合において解釈判断を誤ったまま曲の練習を継続した場合は、解釈の誤りに気付いた段階で身についた演奏操作の一部の箇所を鍵盤図を利用した楽譜で再確認して練習しなおすことが必要となる。こうした解釈判断の誤りによる練習のやり直しは鍵盤楽器演奏未経験者にとって、演奏習得までの期間を長期化させ精神的な疲労を生じさせることとなり著しくやる気を損なうものとなる。 また、曲の演奏を完成させる忍耐力が自分には備わっていないと判断してしまう要因にもなる。
【0011】
例えば図10に示すピアノロール表示機能に関する発明においては、操作する楽器の鍵盤位置を示す工夫がされており操作する鍵盤を誤る可能性は少ないと考えるが、表示機能を有する楽器を利用しなければ演奏経験のない曲の一部や全体の練習をすることができない。
【0012】
動画投稿サイトにおける鍵盤楽器演奏実演動画においては、実際の演奏音を聞きながら演奏操作を確認することができる点が良いが、演奏操作を覚えるまではパソコンやスマートフォンで対象曲の動画における特定の小節を再生、停止、戻し、先送りなどの操作を繰り返す必要がある。鍵盤楽器演奏練習時には、演奏操作練習で指を配置した鍵盤から手を放し動画サイトの操作を行う必要があるため、連続した演奏フレーズの指操作を確認する上では非効率であり記憶定着の妨げにもなる。この問題となる操作は、両手で演奏する曲を練習する場合にはさらに複雑になる。
【0013】
鍵盤図を利用した楽譜においては、鍵盤楽器未経験者本人や家族などの身近な人が五線譜に記述された楽譜を読む基礎知識を保有していたとしても、自力で鍵盤図への記述を行うような汎用書式が提供されておらず、自力で鍵盤図を利用した楽譜を作成することは困難であり、専門家にその作成を委託する必要がある。
【0014】
本発明の目的は、鍵盤楽器演奏未経験者が演奏したい曲について鍵盤楽器での演奏を覚えたり、一度覚えた曲の一部や全体の演奏操作を忘れた際の確認を容易にする鍵盤楽器演奏譜の書式とその利用方法の提供を通して、音楽基礎知識の無い方が好きな曲の鍵盤楽器の演奏練習を5分や10分などの隙間時間を活用して可能とすることで、曲の演奏練習を継続可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以上の課題を解決するために本願発明は、図1に示すように、鍵盤楽器演奏未経験者が演奏練習に活用する鍵盤楽器演奏参考資料として構成した。これを鍵盤楽器演奏譜と呼ぶ。
【0016】
鍵盤楽器演奏譜では、鍵盤楽器演奏未経験者が演奏練習で使用する鍵盤楽器(図2)の鍵盤数に応じた鍵盤枠の列全体を配置した鍵盤配列表示図(以下、鍵盤表示図とする)( 図3)として1行を配置し鍵盤図表示行1とする。鍵盤図表示行の中には鍵盤枠2があり鍵盤図枠における白鍵盤2aには白を配色、黒鍵盤2bには白以外を配色する。白黒鍵盤に対応する鍵盤枠内に演奏操作する指3を示す指記号(図4)を記述する。以上のように鍵盤楽器全体の中からどの位置に演奏操作する鍵盤が存在するかを直観的に判断する。1小節分を拍数に応じた複数行の鍵盤表示図を縦に配置することで1単位の小節グループ4として構成し(図5)、1単位の 小節グループを縦に複数単位配置して曲の流れに応じて縦に時系列に演奏操作を記述する。1小節グループ内を構成する行については、行数に応じて目印として行数の 2分の1に小節内中心行線5と複数行毎の線6に太線で次の鍵盤表示図との境界線を描くなどの目印を付加することで、拍数の正確な認識を補助する。小節グループ4の直上と直下にはドレミファソラシドやCDEFGABなどの音階7を配置することで、操作する鍵盤の音程を確認しやすくする。
演奏操作する左右の手を識別するために各行の鍵盤表示図内に境界線を記述し、演奏操作の流れに従って鍵盤楽器演奏譜上の各小節グループ内の鍵盤表示図上を縦断して接続した線として記述し、左手右手境界線8とする。左右の手を交差して演奏する箇所については境界線と楕円を組み合わせることで左手右手境界線8aとして表現する。操作する鍵盤の音の長さを示したい場合については指記号を記載した次の鍵盤表示行から複数行にわたって下向きの矢印直線9を引いて表現する。
【0017】
鍵盤楽器演奏譜内に記載する鍵盤操作の指記号の割り振りについては、鍵盤楽器演奏譜を使って曲を演奏する人に対して事前に希望を確認することを通して最も認識しやすく解釈判断の労力が不要となるものを採用する。特に希望がない場合においては(図4)に示した日本語表記での演奏練習者向け推奨表記を採用する。
【0018】
鍵盤楽器演奏の練習を曲の途中の小節から進める際に、鍵盤楽器演奏譜上の演奏操作記載箇所を確認する関連情報として、歌詞・演奏箇所メモ10へ対象となる小節と行に対応して冒頭からの小節数や冒頭からの行数を記載し、歌唱曲であれば対応した歌詞を記載する。また、コードメモ11へのコード和音表記を記載する。こうした情報を鍵盤表示図の左右に記載しておくことで、即座に該当する曲の部分を判断することが可能となる。
【0019】
演奏する楽曲に関する従来の楽譜を元に、鍵盤楽器演奏譜を作成することが可能である。曲の鍵盤楽器演奏譜を作成する際に最も重要となるのが、鍵盤楽器演奏譜の1小節グループ内の鍵盤表示行数を何行に決定するかである。この行数を算出するために、楽曲に関する従来の楽譜に記載された、拍子を示す分数12(図6)(楽譜3/4拍子の例)や12a(図7)(楽譜4/4拍子の例)と楽譜全体における最も短い拍数の音符13(図6)(8分音符の例)13a(図7)(16分音符の例)を変数とした計算式(図8)を示す。この式を活用して鍵盤楽器演奏譜の1小節を構成する鍵盤表示行の行数を算出して鍵盤楽器演奏譜における1小節グループの行数を決定する。
【0020】
演奏対象曲の従来の楽譜内に連符表記されている箇所がある場合は、基本単位となる小節グループ内の行数を連符数に応じて増やす。
【0021】
鍵盤楽器演奏譜作成者が利用するひな形を次の条件で作成する。鍵盤楽器演奏未経験者が演奏練習で使用する鍵盤楽器(図2)の鍵盤数に応じた鍵盤枠の列全体を配置した鍵盤表示図(図3)として1行を配置し鍵盤図表示行1とする。鍵盤図表示行の中には鍵盤枠2があり鍵盤図枠における白鍵盤2aには白を配色、黒鍵盤2bには白以外を配色する。次に計算式(図8)を活用して、楽曲に関する従来の楽譜に記載された拍子を示す分数と楽譜全体における最も短い拍数の音符を変数として導き出し、1小節グループ内の鍵盤表示行数分の鍵盤図表示行を縦に並べて配置する。1小節グループ内を構成する鍵盤図表示行については、行数に応じて目印として行数の2分の1に小節内中心行線5と複数行毎の線6に太線で次の鍵盤表示図との境界線を描くなどの目印を付加することで、拍数の正確な認識を補助する。小節グループ4の直上と直下にはドレミファソラシドやCDEFGABなどの音階7を配置することで、操作する鍵盤の音程を確認しやすくする。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、鍵盤楽器演奏未経験者が曲の鍵盤楽器演奏を覚える際や一度演奏を覚えた曲の一部や全体の演奏操作を忘れた際の確認を短時間で誤解のリスクが少なく実施できることを容易にする。
【0023】
鍵盤楽器演奏譜の書式とその利用方法の提供を通して、音楽基礎知識のない方が好きな曲の鍵盤楽器の演奏練習を5分や10分などの隙間時間を活用して可能とすることで、曲の演奏練習が継続可能となる。
【0024】
日常生活において鍵盤楽器演奏を習う時間を定期的かつ継続的に確保することが困難である理由から、鍵盤楽器での曲演奏をあきらめていた方々へ鍵盤楽器での曲演奏を実現する機会を提供する。
【0025】
近年、音楽や楽器演奏が脳を活性化させたり日常のストレスを軽減する効果があることと共に、高齢者における認知症リスクを抑制する効果があることが確認されている。世の人々が人生100年時代を迎える中、鍵盤楽器演奏未経験者が家族が利用していたなどの理由で身近にある鍵盤楽器を使って曲の演奏練習に夢中になることができる可能性を高める。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】鍵盤楽器演奏譜の構造(61鍵盤/4分の4拍子、8分音符版の例)である。
図2】世の中にある鍵盤楽器の鍵盤の図(61鍵盤の例)である。
図3】本願発明における演奏鍵盤を記載する最小行単位となる鍵盤表示図(61鍵盤の例)である。
図4】鍵盤を操作する指を表現した指記号の例-日本語表記での演奏練習者向け推奨表記である。
図5】1小節を構成する小節グループ(61鍵盤/4分の4拍子、8分音符版の例)である。
図6】4分の3拍子8分音符楽譜例である。
図7】4分の4拍子16分音符楽譜例である。
図8】鍵盤楽器演奏譜の1小節内行数算出式である。
図9】本発明のひな形(白紙フォーム)の例(61鍵盤 4分の4拍子 16分音符版の例)
図10】ピアノロールの一般的な例である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本願発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
図1は、本願発明である鍵盤表示図を用いた鍵盤楽器演奏譜の実施形態である全体構造を示した図である。
【実施例1】
【0029】
まず最初に本願発明である鍵盤楽器演奏譜の書式作成に関する実施形態を図を使って説明する。
【0030】
世の中には様々な鍵盤数を持った鍵盤楽器が存在する。鍵盤楽器の鍵盤数の代表的な例として、49鍵盤、61鍵盤、76鍵盤、88鍵盤がある。曲の演奏方法を記述する鍵盤楽器演奏譜では、鍵盤表示部(鍵盤表示)1を鍵盤楽器演奏練習者が利用する鍵盤楽器(図2)の鍵盤数に対応して、49鍵盤、61鍵盤、76鍵盤、88鍵盤など鍵盤枠の列数全体を配置した鍵盤配列表示図(以下、鍵盤表示図とする)(図3)として1行を配置し鍵盤図表示行1とすることで、曲の演奏箇所に応じて打鍵操作する鍵盤が配置されている領域や該当鍵盤の位置情報を直観的にかつ解釈判断の誤りの可能性を排除して提供する。
【0031】
鍵盤図表示行1の中には鍵盤枠2があり鍵盤図枠における白鍵盤2aには白を配色、黒鍵盤2bには白以外を配色する。
【0032】
鍵盤楽器演奏譜では1小節分を拍数に応じた複数行の鍵盤表示図を縦に配置することで1単位の小節グループ4として構成し(図5)、1単位の小節グループを縦に複数単位配置して曲の流れに応じて縦に時系列に演奏操作を記述する。1小節グループ内を構成する行については、行数に応じて目印として行数の2分の1に小節内中心行線5と複数行毎の線6に太線で次の鍵盤表示図との境界線を描くなどの目印を付加することで、拍数の正確な認識を補助する。
【0033】
演奏する楽曲に関する従来の楽譜を元に、鍵盤楽器演奏譜を作成することが可能である。曲の鍵盤楽器演奏譜を作成する際に最も重要となるのが、鍵盤楽器演奏譜の1小節グループ内の鍵盤表示行数を何行に決定するかである。この行数を算出するために、楽曲に関する従来の楽譜に記載された、拍子を示す分数12(図6)(楽譜3/4拍子の例)や12a(図7)(楽譜4/4拍子の例)と楽譜全体における最も短い拍数の音符13(図6)(8分音符の例)13a(図7)(16分音符の例)を変数とした計算式(図8)を示す。この式を活用して鍵盤楽器演奏譜の1小節を構成する鍵盤表示行の行数を算出して鍵盤楽器演奏譜における1小節グループの行数を決定する。
【0034】
小節グループ4の直上と直下にはドレミファソラシドやCDEFGABなどの音階7を配置することで、操作する鍵盤の音程を確認しやすくする。以上で、本発明のひな形(白紙フォーム)の例(61鍵盤 4分の4拍子 16分音符版の例)(図9)のような、鍵盤楽器演奏譜の書式が完成する。
【実施例2】
【0035】
実施例1で作成した鍵盤楽器演奏譜の書式上に曲の演奏操作方法を記述する実施形態を図を使って説明する。
【0036】
曲の演奏操作する左右の手を識別するために各行の鍵盤表示図内に右手左手境界線8を記述し、曲の演奏操作の流れに従って鍵盤楽器演奏譜上の各小節グループ内の鍵盤表示図上を縦断して接続した線として記述し、左手右手境界線8とする。左右の手を交差して演奏する箇所については境界線と楕円を組み合わせることで左手右手境界線8aとして表現する。
【0037】
鍵盤図表示行1内の白黒鍵盤に対応する鍵盤枠内に曲の演奏操作をする指3を示す指記号(図4)を記述する。鍵盤楽器演奏譜内に記載する鍵盤操作の指記号の割り振りについては、鍵盤楽器演奏譜を使って曲を演奏する人へ事前に要望を確認することを通して、文字、記号、図形を活用して最も認識しやすく解釈判断の誤りを減少させ直観的に理解しやすい表現で提供する。特に希望がない場合においては(図4)に示した日本語表記での演奏練習者向け推奨表記を採用する。
【0038】
操作する鍵盤の音の長さを示したい場合については指記号を記載した次の鍵盤表示行から複数行にわたって下向きの矢印直線9を引いて表現する。
【0039】
鍵盤楽器演奏の練習を曲の途中の小節から進める際に、鍵盤楽器演奏譜上の演奏操作記載箇所を確認する関連情報として、歌詞・演奏箇所メモ10へ対象となる小節と行に対応して冒頭からの小節数や冒頭からの行数を記載し、歌唱曲であれば対応した歌詞を記載する。また、コードメモ11へのコード和音表記を記載する。こうした情報を鍵盤表示図の左右に記載しておくことで、即座に該当する曲の部分を判断することが可能となる。
【0040】
演奏対象曲の従来の楽譜内に連符表記されている箇所がある場合は、基本単位となる小節グループ内の行数を連符数に応じて増やす。
【実施例3】
【0041】
実施例1と実施例2で作成した本願発明である鍵盤楽器演奏譜を利用した鍵盤楽器の演奏練習または演奏に関する実施形態を図を使って説明する。
【0042】
鍵盤楽器演奏練習の実施者は本願発明で作成された曲の鍵盤楽器演奏譜を紙に印刷したり、電子機器に表示して演奏する際に参照しやすい位置に置き、参照しながら鍵盤楽器の演奏練習または演奏を行う。適宜、練習曲の音源を再生し聴いて確認する。本願発明の鍵盤楽器演奏練習に関する実施形態の1つを(図1)にて示す。
【0043】
盤楽器演奏譜を利用した鍵盤楽器の演奏練習または演奏。
鍵盤楽器演奏譜に記載された曲において、練習したい小節グループ4の最初の行に配置された鍵盤表示図の1行目に記載された指記号3と右手左手境界線8より、操作する鍵盤位置と鍵盤を操作する左手、右手の指を認識して、鍵盤楽器の鍵盤を打鍵して音を発生させる。
この際、発生させた音を鍵盤を指で押さえる操作を続けることにより伸ばしたい場合は、その行の次の行から下に音の長さを示す矢印直線9が引かれていたら、矢印線が引かれている行数の間鍵盤を押さえたままで音の発生を継続させる。
次に1行下に配置された鍵盤表示図の行に記載された指記号3と右手左手境界線8を確認して、次に打鍵する鍵盤位置と鍵盤を操作する左手、右手の指を認識して、鍵盤楽器の鍵盤を打鍵して音を発生させる。この際、発生させた音を鍵盤を指で押さえる操作を続けることにより伸ばしたい場合は、その行の次の行から下に音の長さを示す矢印直線9が引かれていたら、矢印線が引かれている行数の間鍵盤を押さえたままで音の発生を継続させる。
以下、鍵盤楽器演奏譜上で次の行に移り順次この演奏操作を繰り返す。操作する鍵盤の打鍵タイミングを理解しやすくするために適宜曲の音源を再生して確認する。
【産業上の利用可能性】
【0044】
鍵盤楽器演奏譜においては、演奏操作する鍵盤位置、操作する左右の手、操作する指という3つの解釈判断の誤りを防止する仕掛けを採用した鍵盤楽器演奏譜を演奏練習の参照資料として演奏練習するため、短時間でも曲の一部分である特定の小節の練習を誤解なく実施することができる。このことにより、まとまった演奏練習時間の確保が難しい人にとっても曲の演奏練習が継続しやすくなり、曲全体の鍵盤楽器演奏の習得をしやすくすることが可能となり、鍵盤楽器演奏未経験者が本願発明の鍵盤楽器演奏譜を活用することを通して、身近にある鍵盤楽器での演奏練習に夢中になることができる可能性を広げることが可能となる。
【0045】
従来技術では楽譜を解釈することができる音楽基礎知識を保有する者が、自らもしくは鍵盤楽器演奏未経験者のために鍵盤図を利用した演奏資料を記述しようと考えても、記述したり電子機器で作成する上で汎用的なひな形が提示されておらず、相当の労力をかけて描くか発明者本人などの専門家に記述や作成を依頼する必要があったが、本発明では汎用的書式を提供する事ができるため、音楽基礎知識を有する者が鍵盤楽器演奏未経験者のために鍵盤楽器演奏譜を記述したり作成したりして提供する事が可能となる。
【0046】
本発明である鍵盤楽器演奏譜の構造を印刷、表示する目的のひな形として曲のMIDIデータをインプットとした鍵盤楽器演奏譜作成プログラムの仕様とすることも可能となり、鍵盤楽器演奏未経験者が鍵盤楽器演奏に取り組み始めるきっかけを広げ、日常で鍵盤楽器演奏を楽しむ人々のすそ野を広げることが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
1.鍵盤図表示部(鍵盤図表示行)
2.鍵盤枠
2a.鍵盤枠における白鍵盤
2b.鍵盤枠における黒鍵盤
3.演奏操作指記述
4.小節グループ
5.小節内中心行線
6.複数行毎の線
7.音階表示域
8.左手右手境界線
8a.クロスハンド(交差型)左手右手境界線
9.音の長さを示す矢印直線
10.歌詞・演奏箇所メモ欄
11.コードメモ欄
12.従来の楽譜に記載された、拍子を示す分数(楽譜3/4拍子の例)
12a.従来の楽譜に記載された、拍子を示す分数(楽譜4/4拍子の例)
13.楽譜全体における最も短い拍数の音符(8分音符の例)
13a.楽譜全体における最も短い拍数の音符(16分音符の例)
14.拍子を示す分数
15.対象曲楽譜内における最短拍数音符の音符名に付いている数字
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10