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特許7546838水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物を除去するための処理剤、及び当該処理剤の製造方法
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  • 特許-水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物を除去するための処理剤、及び当該処理剤の製造方法 図1
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  • 特許-水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物を除去するための処理剤、及び当該処理剤の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物を除去するための処理剤、及び当該処理剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/22 20060101AFI20240902BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B01J20/22 B
B01J20/34 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019199239
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2020075246
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2022-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2018209475
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(72)【発明者】
【氏名】加藤 諒
(72)【発明者】
【氏名】林田 和也
(72)【発明者】
【氏名】稗田 真人
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特表平03-504099(JP,A)
【文献】特開2007-020540(JP,A)
【文献】特開昭63-224735(JP,A)
【文献】特開2001-218824(JP,A)
【文献】特開昭55-024545(JP,A)
【文献】特公昭47-008281(JP,B1)
【文献】特開昭57-118031(JP,A)
【文献】特開昭57-144080(JP,A)
【文献】特開平05-098842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/20
B01J 45/00
C02F 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液に含まれる遷移金属を除去するための処理剤であって、
活性炭にキノリノール化合物が担持していることを特徴とする、処理剤であり、
前記キノリノール化合物が、2-キノリノール、4-キノリノール、8-キノリノール、2-メチル-8-ヒドリキシキノリン、5-フルオロー8-ヒドリキシキノリン、5-クロロ-8-ヒドリキシキノリン、5-ブロモー8-ヒドリキシキノリン、5-フエニルー8-ヒドロキシキノリン、8-ヒドロキシキノリン-5-カルボン酸、8-ヒドロキシキノリン-5-カルボン酸メチルエステル、8-ヒドロキシ-5-キノリルメチルケトン、8-ヒドロキシ-5-キノリルビニルケトン、8-ヒドロキシ-5-キノリルフエニルケトン、5-トリフロオロメチル-8-ヒドロキシキノリン、5-メトキシー8-ヒドロキシキノリン、5-フエノキシ-8一ヒドロキシキノリン、5-トリメチルシリルー8-ヒドロキシキノリン、5-シアノー8-ヒドロキシキノリン、5-ニトロ-8-ヒドロキシキノリン、5-ジメチルアミノー8-ヒドロキシキノリン、8-ヒドロキシキノリン-5-スルホン酸、8-ヒドロキシキノリノールから選択される1種以上の化合物であり、
前記遷移金属が、第一遷移金属、第二遷移金属の何れかであり、
第一遷移金属が、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)から選択される1種以上であり、
第二遷移金属が、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)から選択される1種以上である、処理剤。
【請求項2】
前記水溶液が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩のアルカリ水溶液である請求項に記載の処理剤。
【請求項3】
前記水溶液が、エッチング廃液、またはめっき廃液である請求項に記載の処理剤。
【請求項4】
水溶液に含まれる遷移金属を除去するための処理剤を製造する方法であって、
前記遷移金属が、第一遷移金属、第二遷移金属の何れかであり、
第一遷移金属が、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)から選択される1種以上であり、
第二遷移金属が、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)から選択される1種以上であり
キノリノール化合物と溶剤と活性炭とを接触させ、活性炭にキノリノール化合物を担持させる工程(接触工程)を含んでなる、
活性炭にキノリノール化合物が担持していることを特徴とする、水溶液に含まれる遷移金属を除去するための処理剤の製造方法であって、
前記キノリノール化合物が、2-キノリノール、4-キノリノール、8-キノリノール、2-メチル-8-ヒドリキシキノリン、5-フルオロー8-ヒドリキシキノリン、5-クロロ-8-ヒドリキシキノリン、5-ブロモー8-ヒドリキシキノリン、5-フエニルー8-ヒドロキシキノリン、8-ヒドロキシキノリン-5-カルボン酸、8-ヒドロキシキノリン-5-カルボン酸メチルエステル、8-ヒドロキシ-5-キノリルメチルケトン、8-ヒドロキシ-5-キノリルビニルケトン、8-ヒドロキシ-5-キノリルフエニルケトン、5-トリフロオロメチル-8-ヒドロキシキノリン、5-メトキシー8-ヒドロキシキノリン、5-フエノキシ-8一ヒドロキシキノリン、5-トリメチルシリルー8-ヒドロキシキノリン、5-シアノー8-ヒドロキシキノリン、5-ニトロ-8-ヒドロキシキノリン、5-ジメチルアミノー8-ヒドロキシキノリン、8-ヒドロキシキノリン-5-スルホン酸、8-ヒドロキシキノリノールから選択される1種以上の化合物である。
【請求項5】
前記水溶液が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩のアルカリ水溶液である請求項4に記載の処理剤の製造方法。
【請求項6】
前記水溶液が、エッチング廃液、またはめっき廃液である請求項4に記載の処理剤の製造方法。
【請求項7】
前記溶剤が、ヘテロ原子を有するものである請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ヘテロ原子を有する溶剤が、水、エーテル類、アルコール類、ケトン類、酢酸エステル類、アミド類、ニトリル類およびハロゲン化炭化水素類から成る群から選択される溶剤である、請求項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記接触工程の後にて前記活性炭を乾燥処理に付す、請求項4に記載の処理剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物を除去するための処理剤に関すると共に、当該処理剤の製造方法にも関する。より詳細には、本発明は、水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属を除去するための処理剤に関すると共に、かかる処理剤を製造する方法にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体ウェーハやカラーフィルター等の電子部品の製造においては、ウェーハ表面のエッチングによる平面化、レジスト材の除去、あるいは表面を洗浄するため等に水酸化アルカリ金属が使用されている。これら電子部品の製造に使用される水酸化アルカリ金属は、半導体ウェーハの劣化、半導体デバイスの特性の低下等を防ぐため、ニッケル、クロム、鉄、および銅等の金属不純物を含まない高純度の水酸化アルカリ金属を用いることが要求されている。またこの他、医療用や化粧品等においてもこのような不純物を含まない薬剤の要求が高まっている。
【0003】
水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液に含まれる金属不純物を低減する方法として、陽イオン交換膜を用いた水酸化ナトリウム水溶液の電解による精製方法が知られている(特許文献1)。この方法によれば、水酸化ナトリウム水溶液中の金属不純物は10ppb以下にできるとされている。しかし、この方法は設備投資が高額となり、装置が複雑になるために精製コストが高く、運転管理が難しいという欠点がある。
【0004】
また、N-メチルグルカミン基を有するキレート樹脂により粗水酸化アルカリ金属水溶液中の鉄、ニッケル、銅、マンガン、および/またはクロム等の重金属を除去することを特徴とする高純度水酸化アルカリ金属水溶液の製造方法が記載されている(特許文献2)。また、官能基としてアミジノ基を有するイオン交換樹脂を用いて粗水酸化アルカリ金属水溶液中のアルカリ土類金属を除去することを特徴とする高純度水酸化アルカリ金属の製造方法が記載されている(特許文献3)。しかし、これら方法では、特殊なキレート樹脂が大量に必要となり高額となる点や処理に用いたキレート樹脂の処理方法の問題点が挙げられる。
【0005】
さらに、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸から選ばれる1種の酸もしくは2種以上の混酸によって予め賦活化されている平均アスペクト比が10以上、比表面積が1000m/g以上、かつ細孔容積が0.45ml/g以上である繊維状活性炭を、アルカリ水溶液と接触させて、アルカリ水溶液中からアルカリ金属およびアルカリ土類金属以外の金属不純物を除去することを特徴とする、アルカリ水溶液の精製方法が記載されている(特許文献4)。
【0006】
しかし、上記精製方法では、アルカリ水溶液中の、鉄、ニッケル、モリブデン、銅から選ばれる金属不純物を除去対象としており、他の金属不純物を除去するためには、さらに別のキレート樹脂等を用いて処理を行う必要が生じる。
水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物を効率的に除去でき、安価で簡便に用いることのできる処理剤の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-317285号公報
【文献】特開2008-31009号公報
【文献】特許第4996172号公報
【文献】特許第4125344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明者は、従前の水溶液に含まれるニッケル、クロム、鉄、および銅等の金属不純物の除去する処理剤には、克服すべき課題が依然あることに気付き、そのための対策を取る必要性を見出した。具体的には以下の課題があることを本願発明者が見出した。
【0009】
水溶液に含まれるニッケル、クロム、鉄、および銅等の金属不純物の一般的な処理剤として、キレート樹脂や処理を施した活性炭等を用いて不純物を除去する方法があるが、当該除去方法では水溶液に含まれる微量のニッケル、クロム、鉄、および銅等の金属不純物を十分に除去することができない点に鑑みた。具体的には、従来の水溶液に含まれる金属不純物を除去するための処理剤に関しては、特殊なキレート樹脂や複数の処理工程を経る必要があり、作業効率の点やニッケル、クロム、鉄、および銅等の金属不純物の除去率の点で好適であるといえない場合があることを見出した。
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みて試されたものである。即ち、本発明の主たる目的は、水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物の除去能力を有した窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物を活性炭の微細孔表面上に担持することで、水溶液に含まれるマグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、アルミニウム(Al)、水銀(Hg)、鉛(Pb)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、タングステン(W)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、錫(Sn)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)等の金属不純物を容易で除去効率(特に処理剤の単位重量当たりの除去効率)に優れる処理剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者は、従来技術の延長線上で対応するのではなく、新たな方向で対処することによって上記課題の解決を試みた。その結果、上記主たる目的が達成された水溶液に含まれる金属不純物を除去するための処理剤、及びその製造方法の発明に至った。
【0012】
本発明では、水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物を除去するための処理剤であって、活性炭に窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物が担持していることを特徴とする、処理剤が提供される。
【0013】
また、本発明では、水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物を除去するための処理剤の製造方法も提供される。かかる本発明の製造方法は、窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物と溶剤と活性炭とを接触させ、活性炭に窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物を担持させる工程(接触工程)を含んで成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の処理剤は、水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物(例えば、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、アルミニウム(Al)、水銀(Hg)、鉛(Pb)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、タングステン(W)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、錫(Sn)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)等)に対する除去効率、特に処理剤の単位重量当りの除去効率がより好適となっている。より具体的には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物のアルカリ水溶液や金属エッチング工程の廃液やめっき廃液等の水溶液に含まれる微量(数十ppbから数百ppm)の金属不純物を効率的に除去する際に好適となっている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】活性炭の細孔を模式的に示した断面図である。
図2】本発明の製造方法の技術思想を表した模式図である。
図3】本発明の1つの例示として、活性炭に担持された窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物の遷移金属、または典型金属の除去機構を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物(例えば、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、アルミニウム(Al)、水銀(Hg)、鉛(Pb)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、タングステン(W)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、錫(Sn)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)等)を除去するための処理剤、及びその製造方法を詳細に説明する。必要に応じて図面を参照して説明を行うものの、図示する内容は、本発明の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比等は実物と異なり得る。
【0017】
(本発明の水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物を除去するための処理剤)
本発明の水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物を除去するための処理剤は、窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物が担持された活性炭から構成されている。本発明に係る水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物を除去するための処理剤は、液相系に使用するものである。
【0018】
本明細書で説明される「水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物を除去するための処理剤」とは、広義には、遷移金属、または典型金属の金属不純物の除去または低減が求められる水溶液と共に使用され、かかる水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物をその水溶液から除去処理または低減処理するための処理剤のことを指している。狭義には、「水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物を除去するための処理剤」は、遷移金属、または典型金属の金属不純物の除去または低減が求められる水溶液と接触させることで、その水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物を当該溶液中から除去または低減できる固形状処理剤を意味している。
【0019】
本発明の水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物を除去するための処理剤は、活性炭に担持された窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物を少なくとも有する。換言すれば、本発明の好適な処理剤では、ベース材となる活性炭に対して「窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物」が固着されている。ここでいう「固着」とは、活性炭と「窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物」との間の相互の親和性等に好ましくは起因して「窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物」が活性炭に存在していると考えられ得る態様を実質的に意味している。よって、本明細書でいう「担持」および「固着」といった用語は、活性炭の外表面および/または細孔の近傍に窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物が存在している態様を少なくとも包含しており、「窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物」が活性炭の外表面および/または細孔に直接取り付けられている態様のみを必ずしも意味するものではない。また、本発明における「担持」および「固着」は、活性炭の表面および/または細孔の少なくとも一部に窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物、好ましくは「窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物」が存在していればよく、「窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物」が表面および細孔の全体にわたって必ずしも存在していなくてもよい。但し、好ましい態様では、活性炭の外表面および細孔内の全体に及んで「窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物」が存在し、かかる化合物が活性炭に特に偏在なく担持されている。
【0020】
「窒素原子含有複素環式化合物」は、窒素原子を含有する化合物である。より具体的には、「窒素原子含有複素環式化合物」は、1つ以上の窒素原子を含有する化合物を指している。なお、本発明において、窒素原子含有複素環式化合物には、後述する含窒素有機化合物は含まないものとする。本発明の処理剤につき、そのベース材となる活性炭を定性分析すれば、窒素原子含有複素環式化合物の存在を同定できることを意味している。あくまでも例示であるが、本発明の処理剤を製造する際に用いる溶液中のUVスペクトルを測定することを通じて、活性炭へのN原子を含む複素環式化合物の担持を間接的に確認できる。
【0021】
「含窒素有機化合物」は、窒素を含む有機化合物である。より具体的には、「含窒素有機化合物」は、窒素原子を含有する有機化合物を指している。なお、本発明において、含窒素有機化合物には、先に記述した窒素原子含有複素環化合物はふくまないものとする。本発明の処理剤につき、本発明の処理剤を製造する際に用いる溶液中のUVスペクトルを測定することを通じて、活性炭へのN原子を含む複素環式化合物の担持を間接的に確認できる。
【0022】
本発明の処理剤では、活性炭のベース材に窒素原子含有複素環式化合物が少なくとも担持されている。換言すれば、活性炭上に存在し得る窒素原子含有複素環式化合物としては、ジアザビシクロノネン化合物、イミダゾピリジン化合物、トリアゾール化合物、ピリジン化合物、ジピリジン化合物、ビピリジン化合物、テルピリジン化合物、フェナントロリン化合物、キノリン化合物、イソキノリン化合物、キノリノール化合物、アミジン化合物及びグアニジン化合物等を例示することができる。中でも、ビピリジン化合物、キノリノール化合物、フェナントロリン化合物が好ましい。
【0023】
本発明で用いるビピリジン化合物としては、2,2’-ビピリジン、4,4’-ジヘキシル-2,2’-ビピリジン、4,4’-ジヘプチル-2,2’-ビピリジン、4,4’-ジオクチル-2,2’-ビピリジン、4,4’-ジノニル-2,2’-ビピリジン、4,4’-ジデシル-2,2’-ビピリジン、4,4’-ジカルボキシ-2,2’-ビピリジン、4,4’-ビス(p-ブチルスチリル)-2,2’-ビピリジン、4,4’-ビス(p-イソブチルスチリル)-2,2’-ビピリジン、4,4’-ビス(p-sec-ブチルスチリル)-2,2’-ビピリジン、4,4’-ビス(p-ペンチルスチリル)-2,2’-ビピリジン、4,4’-ビス(p-ヘキシルスチリル)-2,2’-ビピリジン、4,4’-ビス(p-イソヘキシルスチリル)-2,2’-ビピリジン、4,4’-ビス(p-ヘプチルスチリル)-2,2’-ビピリジン、4,4’-ビス(p-オクチルスチリル)-2,2’-ビピリジン、4,4’-ビス(p-ブトキシスチリル)-2,2’-ビピリジン、4,4’-ビス(p-イソブトキシスチリル)-2,2’-ビピリジン、4,4’-ビス(p-sec-ブトキシスチリル)-2,2’-ビピリジン、4,4’-ビス(p-ペンチルオキシスチリル)-2,2’-ビピリジン、4,4’-ビス(p-ヘキシルオキシスチリル)-2,2’-ビピリジン、4,4’-ビス(p-イソヘキシルオキシスチリル)-2,2’-ビピリジン、4,4’-ビス(p-ヘプチルオキシスチリル)-2,2’-ビピリジン、4,4’-ビス(p-オクチルオキシスチリル)-2,2’-ビピリジン、4,4’-ジピリジル、ジ(4-ピリジル)メタン、ジ(2-ピリジル)メタン、1,2-ジ(4-ピリジル)エタン、1,2-ジ(2-ピリジル)エタン、1,3-ジ(4-ピリジル)プロパン、1,4-ジ(4-ピリジル)ブタン、1,5-ジ(4-ピリジル)ペンタン、1,6-ジ(4-ピリジル)ヘキサン等を例示することができる。
【0024】
また、キノリノール化合物としては、2-キノリノール、4-キノリノール、8-キノリノール等のキノリノール類;2-メチル-8-ヒドリキシキノリン等のアルキルキノリノール類;5-フルオロー8-ヒドリキシキノリン、5-クロロ-8-ヒドリキシキノリン、5-ブロモー8-ヒドリキシキノリン等のハロゲン化キノリノール類;5-フエニルー8-ヒドロキシキノリン等のアリールキノリノール類;8-ヒドロキシキノリン-5-カルボン酸等のカルボキシル置換キノリノール類;8-ヒドロキシキノリン-5-カルボン酸メチルエステル等のエステル置換キノリノール類;8-ヒドロキシ-5-キノリルメチルケトン、8-ヒドロキシ-5-キノリルビニルケトン、8-ヒドロキシ-5-キノリルフエニルケトン等のアルキルまたはアルケニルまたはアリール力ルボニル置換キノリノール類;5-トリフロオロメチル-8-ヒドロキシキノリン等のフルオロアルキルキノリノール類;5-メトキシー8-ヒドロキシキノリン、5-フエノキシ-8一ヒドロキシキノリン等のアルコキシまたはアリーロキシキノリノール類;5-トリメチルシリルー8-ヒドロキシキノリン等のトリアルキルシリルキノリノール類;5-シアノー8-ヒドロキシキノリン等のシアノキノリノール類;5-ニトロ-8-ヒドロキシキノリン等のニトロキノリノール類;5-ジメチルアミノー8-ヒドロキシキノリン等のジアルキルアミノキノリノール類;8-ヒドロキシキノリン-5-スルホン酸等のスルホン酸置換キノリノール類等を挙げることができる。
【0025】
フェナントロリン化合物としては、1,10-フェナントロリン、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、4,7-ジヒドロキシ-1,10-フェナントロリン等を挙げることができる。
【0026】
中でも、1,10-フェナントロリン、2,2-ビピリジン、8-キノリノールが好ましい。
【0027】
また、本発明の処理剤では、活性炭のベース材に含窒素有機化合物が少なくとも担持されている。換言すれば、活性炭上に存在し得る含窒素有機化合物としては、芳香族ジヒドラジド化合物等を例示することができる。芳香族ジヒドラジド化合物としては、サリチル酸ヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド、p-トルエンスルホニルヒドラジド、アミノベンズヒドラジド、4-ピリジンカルボン酸ヒドラジド、1,5-ナフタレンジカルボヒドラジド、1,8-ナフタレンジカルボヒドラジド、2,6-ナフタレンジカルボヒドラジド、4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、1,5-ジフェニルカルボノヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,4-トルエンジスルホニルヒドラジド等を挙げることができる。
【0028】
ある好適な態様では、窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物がビピリジン化合物、キノリノール化合物、フェナントロリン化合物、芳香族ジヒドラジド化合物である。つまり、ベースの有機多孔質材となる活性炭に担持された「窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物」が、ビピリジン化合物、キノリノール化合物、フェナントロリン化合物、芳香族ジヒドラジド化合物である。このような窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物が活性炭に含まれており、特に窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物が活性炭担持の構成元素となっていると、除去または低減の対象となる水溶液に含まれた金属不純物を除去し易くなる。
【0029】
上記窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物が例えば、ビピリジン化合物である場合、本発明の処理剤は、少なくともビピリジン化合物が活性炭に担持されており、好ましくは「2,2’-ビピリジン」が担持された活性炭から少なくとも構成されている。キノリノール化合物である場合、本発明の処理剤は、少なくともキノリノール化合物が活性炭に担持されており、好ましくは「8-キノリノール」が担持された活性炭から少なくとも構成されている。フェナントロリン化合物である場合、本発明の処理剤は、少なくともフェナントロリン化合物が活性炭に担持されており、好ましくは「1,10-フェナントロリン」が担持された活性炭から少なくとも構成されている。芳香族ジヒドラジド化合物である場合、本発明の処理剤は、少なくとも芳香族ジヒドラジド化合物が活性炭に担持されており、好ましくは「1,5-ジフェニルカルボノヒドラジド」が担持された活性炭から少なくとも構成されている。
【0030】
本発明の処理剤では、被担持材として活性炭が用いられている。つまり、本発明の処理剤は、処理剤の大部分(処理剤の見掛け体積の大部分)を成すベース材として有機炭素材を含んで成る。
【0031】
活性炭は、細孔(特に微細孔)を有する有機多孔質体である。それゆえ、本発明では好ましくは「窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物」と「有機多孔質体」とから組み合わされたハイブリッド型の処理剤(水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物を除去するための処理剤)が供されている。
【0032】
本発明に係る処理剤の活性炭は、細孔を備えており、かかる細孔が、いわゆるミクロ孔(またはマイクロ孔)、メソ孔およびマクロ孔の少なくとも1つの範疇に入るものであってよい。あくまでも例示にすぎないが、本発明において活性炭の多孔質体を構成する孔の直径は、0.01nm~500nmの範囲あるいは0.1nm~250nmもしくは0.1nm~50nmの範囲であってよい。
【0033】
本発明において活性炭の形態は、種々の形態であってよく、例えば粉末状、粒状、繊維状および/または柱形状(例えば円柱状)等であってよい。活性炭は、処理剤のベース材に相当するので、処理剤の全体形態を造っている。よって、本発明の処理剤もまた、好ましくは粉末状、粒状、繊維状、柱形状(例えば円柱状)等の形態を有する。
【0034】
本発明に係る処理剤の活性炭の種類は、上述の細孔が供されるものであれば特に限定されるものでなく、例えばいわゆる薬品賦活またはガス賦活の活性炭であってよい。活性炭自体の原料も、最終的に活性炭として上述の細孔が供されるものであれば特に限定されるものでなく、木炭、ヤシ殻炭、石炭(例えば亜炭、褐炭、瀝青炭および/または無煙炭等)、オガ屑、木材チップ、草炭(例えばビート)、石炭ピッチならびに石油ピッチから成る群から選択される原料であってよい(なお、繊維状活性炭については、レーヨン、アクリロニトリルおよび/またはフェノールが原料となっていてもよい)。
【0035】
ある好適な態様の処理剤では、窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物が活性炭の細孔に少なくとも存在している。つまり、好ましくは活性炭自体の表面積増大に寄与する細孔内に「窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物」が少なくとも設けられている。“少なくとも”ゆえ、細孔内のみならず、その外側となる活性炭の外表面に対して「窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物」が存在していてよい。
【0036】
好ましくは、本発明の処理剤では、活性炭10のミクロ孔12、メソ孔14およびマクロ孔16の少なくとも1つに「窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物」が存在している(図1参照)。より好ましくは、活性炭10の少なくともミクロ孔12およびメソ孔14の双方、少なくともメソ孔14およびマクロ孔16の双方、または、少なくともミクロ孔12およびマクロ孔16の双方に窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物が存在している。更に好ましくは、活性炭10のミクロ孔12、メソ孔14およびマクロ孔16の全てに窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物が存在している。本明細書において「ミクロ孔」、「メソ孔」および「マクロ孔」といった用語は、国際純正応用化学連合:IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)の分類に従ったものを意味している。より具体的には、本発明において「ミクロ孔」は細孔サイズが2nm以下の細孔を意味し、「メソ孔」は細孔サイズが2nm(2nm含まず)~50nm(50nm含まず)の細孔を意味し、また、「マクロ孔」は細孔サイズが50nm以上の細孔を意味している。なお、かかる細孔サイズは、ガス吸着法又はまたは水銀圧入法で測定されるサイズを指しており、特にマクロ孔については水銀圧入法で測定される細孔サイズを意味し、メソ孔およびミクロ孔はガス吸着法で測定される細孔サイズを意味している。
【0037】
特に活性炭の細孔の内部(すなわち、ミクロ孔、メソ孔およびマクロ孔の少なくとも1つ)にまで至るように「窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物」が存在することによって、より多くの「窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物」が担持された活性炭がもたらされ得る。これは、単位重量当りでより多くの窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物が含まれた処理剤となることを意味している。後述するように、活性炭に担持された窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物自体は、水溶液中に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物に対して親和性が高く、遷移金属、または典型金属の金属不純物を処理剤に結合または引き寄せる等の作用で水溶液中に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物を除去または減少させるのに資する。よって、単位重量当りでより多くの「窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物」を含んだ処理剤となっていることは、処理剤の単位重量でより多くの遷移金属、または典型金属の金属不純物を除去または低減できることを意味している。したがって、本発明の処理剤は、より向上した除去効率(処理剤の単位重量当りで捉えた場合の除去効率)を有し得る。
【0038】
換言すれば、好適な本発明の処理剤では、“窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物”が活性炭ベース材に担持されている。“窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物”を備えた処理剤の場合、除去または低減が求められる水溶液中に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物がより除去・低減されやすくなる。特に、活性炭に担持されている窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物、より具体的には、ビピリジン化合物、キノリノール化合物、フェナントロリン化合物、芳香族時ヒドラジド化合物の場合、水溶液(例えば、アルカリ水溶液中または金属エッチング工程の廃液やめっき廃液)中から効率的に遷移金属、または典型金属の金属不純物を除去または低減され易くなる。特定の理論に拘束されるわけではないが、窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物と金属が強固な錯結合をし、活性炭表面上に窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物が担持されたまま、金属錯体が生成するためと考えられる。
【0039】
本発明に係る処理剤は、特に水溶液の処理剤である。つまり、本発明の処理剤は、水溶液に用いる処理剤であって、その水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物を除去または低減するために用いる処理剤である。
【0040】
本発明にかかる処理剤は、遷移金属、または典型金属の金属不純物を含有する水溶液に用いることができる。ここで、遷移金属、または典型金属の金属不純物を含有する水溶液とは、pHが1から14の範囲にある遷移金属、または典型金属の金属不純物を含有する水溶液のことを意味し、好ましくはpHが1.5から14の範囲である遷移金属、または典型金属の金属不純物を含有する水溶液であり、より好ましくはpHが2から14の範囲である遷移金属、または典型金属の金属不純物を含有する水溶液である。より具体的には、金属エッチング工程の廃液やメッキ廃液またはアルカリ水溶液等を例示することができる。
【0041】
本発明にかかる処理剤は、アルカリ水溶液に用いることができる。ここで、アルカリ水溶液としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩等塩基性物質の水溶液が用いられる。アルカリ金属としては、例えばナトリウム、カリウム等が、アルカリ土類金属としては、例えばカルシウム等が挙げられる。かかるアルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等が、アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等が、アルカリ金属の重炭酸塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等がそれぞれ挙げられる。アルカリ土類金属の水酸化物としては、例えば水酸化カルシウム等が、炭酸塩としては、例えば炭酸カルシウム等が挙げられる。なお、ここでアルカリ水溶液とは、pH8を超える水溶液であればよく、pH9以上を超える水溶液が好ましく、pH11を超える水溶液がより好ましく、pH12を超える水溶液がさらに好ましい。
【0042】
本発明の処理剤を用いることのできるアルカリ水溶液として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液等を例示することができる。アルカリ水溶液中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度としては、0.1~60重量%であり、1~50重量%が好ましい。
【0043】
アルカリ水溶液としては、ボーキサイト等のアルミナ含有鉱石が溶解した水溶液、または、アルミン酸塩をアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)の水溶液に溶解した水溶液などを例示することができる
【0044】
また、本発明にかかる処理剤は、金属エッチング工程の廃液やめっき廃液に用いることができる。より具体的には、塩化銅や塩化鉄によるエッチング後の水洗液や銅めっき、亜鉛めっき、ニッケルめっき、カドミウムめっき、錫めっき、クロムめっき等の廃液を例示することができる。なお、ここで、金属エッチング工程の廃液やめっき廃液とは、pH1以下pH8を超えないものであればよく、pH3以上pH8を超えないものが好ましく、pH5以上pH8を超えないものがより好ましい。
【0045】
本発明は、好適には窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物と活性炭有機物とから構成された遷移金属、または典型金属の金属不純物を含む水溶液の処理剤といった点で特徴を有する。つまり、当業者の一般認識からすると相互の接合・固定化等の点で互いに相性が良くないものと考えられていた窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物および活性炭有機物から構成されており、かかるユニークな構成が本発明の“水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物を除去するための処理剤”を成している。好ましくは本発明の処理剤は、水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物を除去するための処理剤となっている。このような処理剤では、活性炭に担持された「窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物」は、水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物に対して活性ポイントを有するように効果的に働くことになり得、かかる活性ポイントまたはその近傍に遷移金属、または典型金属の金属不純物を結合させるまたは引き寄せておく作用がより効果的に奏され得る。
【0046】
本発明の処理剤は、水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物を除去に用いるものである。水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物であれば特に制限なく除去することが可能である。
【0047】
処理に用いる水溶液に含まれる遷移金属としては、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)等の第一遷移金属、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)等の第二遷移金属、タンタル(Ta)、タングステン(W)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)等の第三遷移金属を例示することができる。
【0048】
処理に用いる水溶液に含まれる典型金属としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等の第2族元素、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)等の第12族元素、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)等の第13族元素、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)等の第14族元素、ヒ素(Hs)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等の第15族元素等を例示することができる。
【0049】
中でも、第一遷移金属、第二遷移金属、第12族元素、第13族元素、第14族元素が好ましい。なお、処理に用いる水溶液含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物の化学種は特に限定されず、例えば、水溶液中に金属イオンの状態であってもよく、水溶液中にコロイド状態であってもよく、複合酸化物であっても、水溶液中から取り除くことが可能である。好ましくは水溶液中で金属イオンの状態であることである。
【0050】
本発明の処理剤は、水溶液中に含まれる金属不純物として、例えば、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、アルミニウム(Al)、水銀(Hg)、鉛(Pb)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、タングステン(W)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、錫(Sn)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)を好適に除去することができ、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)、ルテニウム(Ru)をより好適に除去することができる。
【0051】
処理に用いることのできる水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物の濃度は特に制限されないが、0.05から100ppmの範囲であれば問題なく除去することができ、0.1から5ppmの範囲であることが好ましい。なお、水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物の濃度は溶液中に含まれる各金属不純物の濃度を意味する。また、本発明の水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物の濃度は、一般的な測定方法で測定することができる。例えば、滴定法やICP発光分光分析法等を例示することができる。
【0052】
本発明の処理剤を用いて遷移金属、または典型金属の金属不純物を除去した水溶液に含まれる各金属の濃度は1~100ppbの範囲である。この範囲の金属不純物であれば、問題なく、電子部品の製造等に用いることができる。また、本発明の処理剤で遷移金属、または典型金属の金属不純物を除去した水溶液に含まれる金属の濃度も、一般的な測定方法で測定することができる。例えば、滴定法やICP発光分光分析法等を例示することができる。
【0053】
(本発明の水溶液に含まれる遷移金属、または典型金属の金属不純物を除去するための処理剤の製造方法)
本発明の製造方法は、上述の処理剤を得るための方法である。かかる製造方法は、複数の原料を好適に組み合わせて用いることを特徴とする。
【0054】
具体的には、本発明の製造方法は、窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物と溶剤と活性炭とを互いに接触させ、活性炭に窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物とを担持させる工程(接触工程)を含んで成る、活性炭に窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物が担持していることを特徴とするものである。
【0055】
かかる製造方法においては、窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物と溶剤と活性炭とを接触させることを通じて、窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物を活性炭に担持させるといった特徴を有する。
【0056】
接触工程
本発明の製造方法における接触工程では、窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物と溶剤と活性炭とを接触させ、活性炭に窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物を担持させる。なお、接触工程において、窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物と溶剤と活性炭を接触させる方法は、一般的に用いられる方法であれば、特に制限なく用いることができる。
【0057】
接触工程で用いる溶剤は、水、エーテル類、アルコール類、ケトン類、酢酸エステル類、アミド類、ニトリル類およびハロゲン化炭化水素類からなるから成る群から選択される溶剤であってよく、水、ニトリル類、アルコール類、ケトン類からなる群より選択される溶剤が好ましい。すなわち、単体溶剤として溶剤を用いることのみならず、それら媒体の種々の組合せから成る混合溶剤として溶剤を用いてもよい。
【0058】
ある好適な態様では、活性炭の細孔内に窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物をより効率的および/またはより多く担持させることができる点で、例えば、溶剤が二塩化エチレン、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、n-プロパノール、クロロホルム、エタノール、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、メタノール、アセトニトリル、酢酸、ジメチルホルムアミド、エチレングリコール、ジメチルスルホキシドおよび水からなる群より選択される少なくとも1種であってよい。
【0059】
本処理剤の製造方法における接触工程に用いる溶剤として、水、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ジオキサン、アセトン、メタノールおよびアセトニトリルからなる群より選択される少なくとも1種であってよい。また、より好ましいものとして、水、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ジオキサン、アセトン、メタノールおよびアセトニトリルからなる群より選択される少なくとも1種であってよい。更に好ましいものとして、水、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ジオキサン、アセトンおよびメタノールからなる群より選択される少なくとも1種であってよい。
【0060】
本発明の製造方法では上述した窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物を用いることができる。中でも、ビピリジン化合物、キノリノール化合物、フェナントロリン化合物、芳香族ジヒドラジド化合物が好ましい
【0061】
本発明の製造方法では窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物と溶剤と活性炭とを互いに接触させることになる。これにより、窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物が担持された活性炭を得ることができる。用いられる窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物としては、例えば、ビピリジン化合物、キノリノール化合物、フェナントロリン化合物、芳香族ジヒドラジド化合物等であってよい。窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物が、ビピリジン化合物、キノリノール化合物、フェナントロリン化合物、芳香族ジヒドラジド化合物である場合、ビピリジン化合物、キノリノール化合物、フェナントロリン化合物、芳香族ジヒドラジド化合物と溶剤と活性炭とを互いに接触させることになる。これにより、ビピリジン化合物、キノリノール化合物、フェナントロリン化合物、芳香族ジヒドラジド化合物が担持された活性炭を得ることができる。用いられるビピリジン化合物、キノリノール化合物、フェナントロリン化合物、芳香族ジヒドラジド化合物としては、上述したもの(0023から0027に記載)を適宜用いることができる。
【0062】
本発明の製造方法で用いる活性炭は、例えば粉末状、粒状、繊維状および/または柱形状(例えば円柱状)等であってよい。活性炭の種類は、細孔を備えるものであれば特に限定されるものでなく、例えばいわゆる薬品賦活またはガス賦活の活性炭であってよい。活性炭の由来となる原料も、特に限定されるものでなく、木炭、ヤシ殻炭、石炭(例えば亜炭、褐炭、瀝青炭および/または無煙炭等)、オガ屑、木材チップ、草炭(例えばビート)、石炭ピッチならびに石油ピッチから成る群から選択される原料であってよい(なお、繊維状の活性炭については、レーヨン、アクリロニトリルおよび/またはフェノールが原料となっていてもよい)。
【0063】
好ましくは、本発明の製造方法で用いる活性炭10は、ミクロ孔12、メソ孔14およびマクロ孔16の少なくとも1つの細孔を含んでいる(図1参照)。このような活性炭をおよび「窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物」と共に用いると、活性炭表面への担持化に加えてまたはそれに代えて、活性炭の少なくともミクロ孔12およびメソ孔14の双方、少なくともメソ孔14およびマクロ孔16の双方、または、少なくともミクロ孔12およびマクロ孔16の双方に窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物を担持化させることができる。より好ましくは、活性炭10のミクロ孔12、メソ孔14およびマクロ孔16の全てに窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物を担持化できる。ここでいう「ミクロ孔」、「メソ孔」および「マクロ孔」といった用語は、上述したように国際純正応用化学連合(IUPAC)の分類に従ったものである。より具体的には、本発明の製造方法で用いる活性炭における「ミクロ孔」は細孔サイズ(特にガス吸着法で測定されるサイズ)が2nm以下の細孔を意味し、「メソ孔」は細孔サイズ(特にガス吸着法で測定されるサイズ)が2nm(2nm含まず)~50nm(50nm含まず)の細孔を意味し、また、「マクロ孔」は細孔サイズ(特に水銀圧入法で測定されるサイズ)が50nm以上の細孔を意味している。
【0064】
本発明のおける接触工程における窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物と溶剤と活性炭の接触温度は適宜調整すればよく、例えば、0℃~100℃の範囲であり、室温(25℃)~60℃の範囲が好ましい。また、窒素原子含有複素環式化合物、または含窒素有機化合物と溶剤と活性炭の接触時間は1分から数時間の範囲であればよく、10分~4時間程度が好ましい。
【0065】
本発明の製造方法は、種々の態様で具現化することができる。例えば、接触工程の後に得られる活性炭を乾燥処理に付してよい。つまり、接触工程で得られた活性炭を乾燥に付してよい。これにより、活性炭に付着した余分な溶剤等を気化除去させることができる。例えば、接触工程の後の活性炭を大気圧下で40~200℃程度の温度の熱処理条件下に付してよい。あるいは、接触工程の後に得られる活性炭を減圧下または真空下に置いてもよい。減圧下または真空下に置く場合では、減圧度または真空度を溶剤の飽和蒸気圧以下に維持することによって溶剤を蒸発させる。必要に応じて「熱処理」と「減圧下または真空下」とを組み合わせてもよい。
【0066】
(より具体的な製法の例示)
窒素原子含有複素環式化合物が、ビピリジン化合物(例えば、2,2-ビピリジン)となる場合、および溶剤として、ケトン系の溶剤を用いる場合を例として、本発明の製造方法をより具体的に例示しておく。
【0067】
まず、ビピリジン化合物とケトン系の溶剤とから活性炭接触用の液体を調製する。例えば、撹拌処理に付すことを通じて、ビピリジン化合物をケトン系の溶剤(例えばアセトンなど)に溶解させた溶液を調製し、かかる調製液体を活性炭と接触させる。より具体的には、粒状の活性炭を充填した容器に対して「ビピリジン化合物をアセトンに溶解させて得られる調製溶液」を供すことで接触処理を行ってよい。前記接触処理によって、ビピリリジン化合物が担持した活性炭が得られる。接触処理後の活性炭は乾燥処理に付してよく、例えば加熱乾燥に付してよい。以上の工程を経ることによって、「ビピリジン化合物」が担持された活性炭とから構成される処理剤を得ることができる。
【0068】
窒素原子含有複素環式化合物が、キノリノール化合物(例えば、8-キノリノール)となる場合、および溶剤として、ケトン系の溶剤を用いる場合を例として、本発明の製造方法をより具体的に例示しておく。
【0069】
まず、キノリノール化合物とケトン系の溶剤とから活性炭接触用の液体を調製する。例えば、撹拌処理に付すことを通じて、キノリノール化合物をケトン系の溶剤(例えばアセトンなど)に溶解させた溶液を調製し、かかる調製液体を活性炭と接触させる。より具体的には、粒状の活性炭を充填した容器に対して「キノリノール化合物をアセトンに溶解させて得られる調製溶液」を供すことで接触処理を行ってよい。前記接触処理によって、キノリノール化合物が担持した活性炭が得られる。接触処理後の活性炭は乾燥処理に付してよく、例えば加熱乾燥に付してよい。以上の工程を経ることによって、「キノリノール化合物」が担持された活性炭とから構成される処理剤を得ることができる。
【0070】
窒素原子含有複素環式化合物が、フェナントロリン化合物(例えば、1,10-フェナントロリン・一水和物)となる場合、および溶剤として、ケトン系の溶剤を用いる場合を例として、本発明の製造方法をより具体的に例示しておく。
【0071】
まず、フェナントロリン化合物とケトン系の溶剤とから活性炭接触用の液体を調製する。例えば、撹拌処理に付すことを通じて、フェナントロリン化合物をケトン系の溶剤(例えばアセトンなど)に溶解させた溶液を調製し、かかる調製液体を活性炭と接触させる。より具体的には、粒状の活性炭を充填した容器に対して「フェナントロリン化合物をアセトンに溶解させて得られる調製溶液」を供すことで接触処理を行ってよい。前記接触処理によって、フェナントロリン化合物物が担持した活性炭が得られる。接触処理後の活性炭は乾燥処理に付してよく、例えば加熱乾燥に付してよい。以上の工程を経ることによって、「フェナントロリン化合物」が担持された活性炭とから構成される処理剤を得ることができる。
【0072】
含窒素有機化合物が、芳香族ジヒドラジド化合物(例えば、1,5-ジフェニルカルボノヒドラジド)となる場合、および溶剤として、ケトン系の溶剤を用いる場合を例として、本発明の製造方法をより具体的に例示しておく。
【0073】
まず、芳香族ジヒドラジド化合物とケトン系の溶剤とから活性炭接触用の液体を調製する。例えば、撹拌処理に付すことを通じて、芳香族ジヒドラジド化合物をケトン系の溶剤(例えばアセトンなど)に溶解させた溶液を調製し、かかる調製液体を活性炭と接触させる。より具体的には、粒状の活性炭を充填した容器に対して「芳香族ジヒドラジド化合物をアセトンに溶解させて得られる調製溶液」を供すことで接触処理を行ってよい。前記接触処理によって、芳香族ジヒドラジド化合物が担持した活性炭が得られる。接触処理後の活性炭は乾燥処理に付してよく、例えば加熱乾燥に付してよい。以上の工程を経ることによって、「芳香族ジヒドラジド化合物」が担持された活性炭とから構成される処理剤を得ることができる。
【0074】
このようにして得られた処理剤では、アルカリ水溶液(特にはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液)または金属エッチング工程の廃液やめっき廃液等に含まれる金属不純物(特にはマグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、アルミニウム(Al)、水銀(Hg)、鉛(Pb)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、タングステン(W)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、錫(Sn)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb))を特に効果的に除去できる。
【0075】
以上、本発明の各種態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく、特許請求の範囲に規定される範囲から逸脱することなく種々の変更が当業者によって為され得ることを理解されよう。
【0076】
例えば、本発明では、その構成要素として活性炭が用いられているが、同様の有機系多孔質材と捉えることができる材料があれば、それを処理剤のベース材として用いることができる。
【実施例
【0077】
本発明に関連して各種試験を実施した。
【0078】
(処理剤Aの製造方法)
ビーカーに1.8gの1,10-フェナントロリン・一水和物(東京化成工業(株)製)、35gのアセトン(富士フィルム和光純薬(株)製)を仕込み、室温(約25℃)および大気圧の条件下でスターラー(アズワン製、型式RSH-1AN)を用いて約30分間撹拌に付すことによって、1,10-フェナントロリン・一水和物がアセトン溶液に溶解した処理溶液を得た。そこに十分に乾燥させた活性炭20g(クラレケミカル製:クラレコールGW40/20)を加え、10分間静置した。次いで、この活性炭をロータリーエバポレーター(アズワン製、型式NA-2VGS)で40℃、1時間乾燥させた。この活性炭をオルガノ製ピュアライトPRO-0100で精製した超純水100gと混合し、ロータリーエバポレーター(アズワン製、型式NA-2VGS)で70℃、3時間乾燥させた。以上の工程によって処理剤Aを得た。
【0079】
(処理剤Bの製造方法)
ビーカーに1.56gの2、2-ビピリジン(東京化成工業製)、35gのアセトン(富士フィルム和光純薬(株)製)を仕込み、室温(約25℃)および大気圧の条件下でスターラー(アズワン製、型式RSH-1AN)を用いて約30分間撹拌に付すことによって、2、2-ビピリジンがアセトン溶液に溶解した処理溶液を得た。そこに十分に乾燥させた活性炭20g(クラレケミカル製:クラレコールGW40/20)を加え、10分間静置した。次いで、この活性炭をロータリーエバポレーター(アズワン製、型式NA-2VGS)で40℃、1時間乾燥させた。この活性炭をオルガノ製ピュアライトPRO-0100で精製した超純水100gと混合し、ロータリーエバポレーター(アズワン製、型式NA-2VGS)で70℃、3時間乾燥させた。以上の工程によって処理剤Bを得た。
【0080】
(処理剤Cの製造方法)
ビーカーに1.45gの8-キノリノール(東京化成工業(株)製)、35gのアセトン(富士フィルム和光純薬(株)製)を仕込み、室温(約25℃)および大気圧の条件下でスターラー(アズワン製、型式RSH-1AN)を用いて約30分間撹拌に付すことによって、8-キノリノールがアセトン溶液に溶解した処理溶液を得た。そこに十分に乾燥させた活性炭20g(クラレケミカル製:クラレコールGW40/20)を加え、10分間静置した。次いで、この活性炭をロータリーエバポレーター(アズワン製、型式NA-2VGS)で40℃、1時間乾燥させた。この活性炭をオルガノ製ピュアライトPRO-0100で精製した超純水100gと混合し、ロータリーエバポレーター(アズワン製、型式NA-2VGS)で70℃、3時間乾燥させた。以上の工程によって処理剤Cを得た。
【0081】
(処理剤Dの製造方法)
ビーカーに2.42gの1,5-ジフェニルカルボノヒドラジド(東京化成工業(株)製)、35gのアセトン(富士フィルム和光純薬(株)製)を仕込み、室温(約25℃)および大気圧の条件下でスターラー(アズワン製、型式RSH-1AN)を用いて約30分間撹拌に付すことによって、1,5-ジフェニルカルボノヒドラジドがアセトン溶液に溶解した処理溶液を得た。そこに十分に乾燥させた活性炭20g(クラレケミカル製:クラレコールGW40/20)を加え、10分間静置した。次いで、この活性炭をロータリーエバポレーター(アズワン製、型式NA-2VGS)で40℃、1時間乾燥させた。この活性炭をオルガノ製ピュアライトPRO-0100で精製した超純水100gと混合し、ロータリーエバポレーター(アズワン製、型式NA-2VGS)で70℃、3時間乾燥させた。以上の工程によって処理剤Dを得た。
【0082】
(実施例1)
かかる被検液(pH7.0)を、オルガノ製ピュアライトPRO-0100で精製した超純水30mLと塩化ニッケル(II)六水和物(富士フィルム和光純薬(株)製)6.56mgを混合して調整した。処理剤A1gをこの被検液30mLに添加し、振とうすることで金属除去試験を実施した。具体的には、処理剤の入った被検液を振とう機で10分間振とうして得られた溶液を回収し、次いで、被検液中のニッケルの除去効果を把握するため、回収溶液のニッケル濃度について求めた。
【0083】
回収溶液のニッケル濃度は、吸光光度法で測定した。具体的には、回収溶液0.5mLにオルガノ製ピュアライトPRO-0100で精製した超純水5mL及び0.01mLのホウ酸緩衝液(東亜DKK(株)製)を加え、更に10mgのジメチルグリオキシム(富士フィルム和光純薬(株)製)を加えて撹拌に付した。これにより回収溶液中に含まれるNi(II)を赤色に発色させた。かかる発色回収溶液について530nmの吸光度の測定を行い、ニッケル濃度レベルを間接的に確認した。結果を表1に示す。
【0084】
吸光度の測定には、HITACHI製、型式U-1800の試験機を用いた。かかる吸光度(無次元)の値が高いほど、ニッケル濃度が高いことを示している一方、吸光度の値が低いほど、ニッケル濃度が低いことを示している。また、吸光度が“0”の場合は、回収溶液中にニッケルが存在していないことを示している。
【0085】
(実施例2)
かかる被検液(pH7.0)を、オルガノ製ピュアライトPRO-0100で精製した超純水30mLと塩化鉛(II)(富士フィルム和光純薬(株)製)4.03mgを混合して調整した。処理剤C1gをこの被検液30mLに添加し、振とうすることで金属除去試験を実施した。具体的には、処理剤の入った被検液を振とう機で30分間振とうして得られた溶液を回収し、次いで、被検液中の鉛の除去効果を把握するため、回収溶液の鉛濃度について求めた。
【0086】
回収溶液の鉛濃度は、吸光光度法で測定した。具体的には、回収溶液1mLに、0.05mLのホウ酸緩衝液(東亜DKK(株)製)を加え、更に5mgのジチゾン(富士フィルム和光純薬(株)製)と0.05mLのトルエン(富士フィルム和光純薬(株)製)及び4mLのクロロホルム(富士フィルム和光純薬(株)製)を加えて撹拌に付した。これにより得られた回収溶液の有機層中に含まれる鉛を赤色に発色させた。かかる発色回収溶液について520nmの吸光度の測定を行い、鉛濃度レベルを間接的に確認した。結果を表1に示す。
【0087】
吸光度の測定には、HITACHI製、型式U-1800の試験機を用いた。かかる吸光度(無次元)の値が高いほど、鉛濃度が高いことを示している一方、吸光度の値が低いほど、鉛濃度が低いことを示している。また、吸光度が“0”の場合は、回収溶液中に鉛が存在していないことを示している。
【0088】
(実施例3)
かかる被検液(pH7.0)を、オルガノ製ピュアライトPRO-0100で精製した超純水30mLと塩化亜鉛(II)(富士フィルム和光純薬(株)製)6.28mgを混合して調整した。処理剤C1gをこの被検液30mLに添加し、振とうすることで金属除去試験を実施した。具体的には、処理剤の入った被検液を振とう機で30分間振とうして得られた溶液を回収し、次いで、被検液中の鉛の除去効果を把握するため、回収溶液の亜鉛濃度について求めた。
【0089】
回収溶液の亜鉛濃度は、吸光光度法で測定した。具体的には、回収溶液0.1mLに、0.05mLのホウ酸緩衝液(東亜DKK(株)製)を加え、オルガノ製ピュアライトPRO-0100で精製した超純水を5mL加えた。この溶液1mLに対して更に5mgのジンコン(富士フィルム和光純薬(株)製)を加えて撹拌に付した。これにより得られた回収溶液中に含まれる亜鉛を青色に発色させた。かかる発色回収溶液について620nmの吸光度の測定を行い、亜鉛濃度レベルを間接的に確認した。結果を表1に示す。
【0090】
吸光度の測定には、HITACHI製、型式U-1800の試験機を用いた。かかる吸光度(無次元)の値が高いほど、亜鉛濃度が高いことを示している一方、吸光度の値が低いほど、亜鉛濃度が低いことを示している。また、吸光度が“0”の場合は、回収溶液中に亜鉛が存在していないことを示している。
【0091】
(実施例4)
かかる被検液(pH7.0)を、オルガノ製ピュアライトPRO-0100で精製した超純水30mLとアルミン酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製)30mgを混合して調整した。処理剤C1gをこの被検液30mLに添加し、振とうすることで金属除去試験を実施した。具体的には、処理剤Cの入った被検液を振とう機で30分間振とうして得られた溶液を回収し、次いで、被検液中のアルミニウムの除去効果を把握するため、回収溶液のアルミニウム濃度について求めた。
【0092】
回収溶液のアルミニウム濃度は、吸光光度法で測定した。具体的には、回収溶液1mLにオルガノ製ピュアライトPRO-0100で精製した超純水4mLを加えて、さらに8-キノリノール(東京化成工業(株)製)を5mg添加し、撹拌に付した。これにより得られた回収溶液中に含まれるアルミニウムを黄色に発色させた。かかる発色回収溶液について390nmの吸光度の測定を行い、アルミニウム濃度レベルを間接的に確認した。結果を表1に示す。
【0093】
吸光度の測定には、HITACHI製、型式U-1800の試験機を用いた。かかる吸光度(無次元)の値が高いほど、アルミニウム濃度が高いことを示している一方、吸光度の値が低いほど、アルミニウム濃度が低いことを示している。また、吸光度が“0”の場合は、回収溶液中にアルミニウムが存在していないことを示している。
【0094】
(実施例5)
かかる被検液(pH7.0)を、オルガノ製ピュアライトPRO-0100で精製した超純水30mLとクロム酸カリウム(富士フィルム和光純薬(株)製)37.3mgを混合して調整した。処理剤Dをカラム(材質PPから成る円筒形カラム、カラム内径20mm、カラム高さ60mm)に5gに充填し、かかる充填カラムに対して室温(約25℃)および大気圧の条件下で被検液を滴下することによって金属除去試験を実施した。具体的には、処理剤Dが充填されたカラムに対して約3mL/minの速度条件下で被検液を30mL滴下し、次いで、処理剤Dに接触した後で得られる溶液を回収した。処理剤Dによる被検液中の6価クロムの除去効果を把握するため、回収溶液の6価クロム濃度について求めた。
【0095】
回収溶液の6価クロム濃度は、吸光光度法で測定した。具体的には、回収溶液0.1mLに0.5mLの10w/v%硫酸(林純薬工業(株)製)及び、ルガノ製ピュアライトPRO-0100で精製した超純水4.5mLを加え、更に10mgの1,5-ジフェニルカルボノヒドラジド(東京化成工業(株)製)を加えて撹拌に付した。これにより回収溶液中に含まれる6価クロムを赤色に発色させた。かかる発色回収溶液について542nmの吸光度の測定を行い、6価クロムレベルを間接的に確認した。結果を表1に示す。
【0096】
吸光度の測定には、HITACHI製、型式U-1800の試験機を用いた。かかる吸光度(無次元)の値が高いほど、6価クロム濃度が高いことを示している一方、吸光度の値が低いほど、6価クロム濃度が低いことを示している。また、吸光度が“0”の場合は、回収溶液中に6価クロムが存在していないことを示している。
【0097】
(実施例6)
かかる被検液(pH10.0)を、オルガノ製ピュアライトPRO-0100で精製した超純水90mLとガリウム標準液(富士フイルム和光純薬(株)製)10ml、32%水酸化ナトリウム((株)大阪ソーダ製)300μlを混合して調整した。処理剤Cをカラム(材質PPから成る円筒形カラム、カラム内径20mm、カラム高さ60mm)に5gに充填し、かかる充填カラムに対して室温(約25℃)および大気圧の条件下で被検液を滴下することによって金属除去試験を実施した。具体的には、処理剤Cが充填されたカラムに対して約3mL/minの速度条件下で被検液を30mL滴下し、次いで、処理剤Cに接触した後で得られる溶液を回収した。処理剤Cによる被検液中のガリウムの除去効果を把握するため、回収溶液のガリウム濃度について求めた。
【0098】
回収溶液のガリウム濃度は、ICP発光分析で測定した。具体的には、回収溶液50μLに電子工業用35%塩酸を2.5ml加え、更にオルガノ製ピュアライトPRO-0100で精製した超純水を用いて総量50mLまでメスフラスコを用いて秤量した。これをICP発光分析装置により回収溶液中に含まれるガリウム濃度レベルを確認した。結果を表1に示す。
【0099】
吸光度の測定には、HITACHI製、型式U-1800の試験機を用いた。かかる吸光度(無次元)の値が高いほど、ガリウム濃度が高いことを示している一方、吸光度の値が低いほど、ガリウム濃度が低いことを示している。また、吸光度が“0”の場合は、回収溶液中にガリウムが存在していないことを示している。
【0100】
(実施例7)
かかる被検液(pH10.0)を、オルガノ製ピュアライトPRO-0100で精製した超純水97mLとルテニウム標準液(関東化学(株))3ml、32%水酸化ナトリウム((株)大阪ソーダ製))100μlを混合して調整した。処理剤A1gをこの被検液20mLに添加し、振とうすることで金属除去試験を実施した。具体的には、処理剤の入った被検液を振とう機で24時間振とうして得られた溶液を回収し、次いで、被検液中のルテニウムの除去効果を把握するため、回収溶液のルテニウム濃度について求めた。
【0101】
回収溶液のルテニウム濃度は、ICP発光分析で測定した。具体的には、回収溶液2.5mLに電子工業用35%塩酸を2.5ml加え、更にオルガノ製ピュアライトPRO-0100で精製した超純水を用いて総量50mLまでメスフラスコを用いて秤量した。これをICP発光分析装置により回収溶液中に含まれるルテニウム濃度レベルを確認した。結果を表1に示す。
【0102】
吸光度の測定には、HITACHI製、型式U-1800の試験機を用いた。かかる吸光度(無次元)の値が高いほど、ルテニウム濃度が高いことを示している一方、吸光度の値が低いほど、ルテニウム濃度が低いことを示している。また、吸光度が“0”の場合は、回収溶液中にルテニウムが存在していないことを示している。
【0103】
(実施例8)
かかかる被検液(pH10.0)を、オルガノ製ピュアライトPRO-0100で精製した超純水97mLとルテニウム標準液(関東化学(株))3ml、32%水酸化ナトリウム((株)大阪ソーダ製))100μlを混合して調整した。処理剤C1gをこの被検液20mLに添加し、振とうすることで金属除去試験を実施した。具体的には、処理剤の入った被検液を振とう機で24時間振とうして得られた溶液を回収し、次いで、被検液中のルテニウムの除去効果を把握するため、回収溶液のルテニウム濃度について求めた。実施例7と同様の方法で回収液中のルテニウム濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0104】
(比較例1)
処理剤Aの5gに代えて活性炭(クラレケミカル製:クラレコールGW40/20)1g用いたこと以外は、実施例1と同じ「ニッケル除去試験」を行った。結果を表1に示す。
【0105】
(比較例2)
処理剤Cの1gに代えて活性炭(クラレケミカル製:クラレコールGW40/20)1g用いたこと以外は、実施例2と同じ「鉛除去試験」を行った。結果を表1に示す。
【0106】
(比較例3)
処理剤Cの1gに代えて活性炭(クラレケミカル製:クラレコールGW40/20)1g用いたこと以外は、実施例3と同じ「亜鉛除去試験」を行った。結果を表1に示す。
【0107】
(比較例4)
処理剤Cの1gに代えて活性炭(クラレケミカル製:クラレコールGW40/20)1g用いたこと以外は、実施例4と同じ「アルミニウム除去試験」を行った。結果を表1に示す。
【0108】
(比較例5)
処理剤Dの5gに代えて活性炭(クラレケミカル製:クラレコールGW40/20)5g用いたこと以外は、実施例5と同じ「6価クロム除去試験」を行った。結果を表1に示す。
【0109】
(比較例6)
処理剤Cの1gに代えて活性炭(クラレケミカル製:クラレコールGW40/20)1g用いたこと以外は、実施例6と同じ「ガリウム除去試験」を行った。結果を表1に示す。
【0110】
(比較例7)
処理剤Aの1gに代えて活性炭(クラレケミカル製:クラレコールGW40/20)1g用いたこと以外は、実施例7と同じ「ルテニウム除去試験」を行った。結果を表1に示す。
【0111】
上記実施例および比較例の結果を以下の表1に示す。
【0112】
(実施例9)
かかる被検液(pH14.0)を、48%水酸化ナトリウム水溶液((株)大阪ソーダ製)100mLと塩化ニッケル(II)六水和物(富士フィルム和光純薬(株)製)1.95mgを混合して調整した。処理剤Aをカラム(材質PPから成る円筒形カラム、カラム内径20mm、カラム高さ60mm)に5gに充填し、かかる充填カラムに対して室温(約25℃)および大気圧の条件下で被検液を滴下することによって金属除去試験を実施した。具体的には、処理剤Aが充填されたカラムに対して約3mL/minの速度条件下で被検液を30mL滴下し、次いで、処理剤Aに接触した後で得られる溶液を回収した。処理剤Aによる被検液中のニッケルの除去効果を把握するため、回収溶液のニッケル濃度について求めた。
【0113】
回収溶液のニッケル濃度は、吸光光度法で測定した。具体的には、回収溶液1mLに5mLの10w/v%硫酸(林純薬工業(株)製)及び、0.5mLのホウ酸緩衝液(東亜DKK(株)製)を加え、更に10mgのジメチルグリオキシム(富士フィルム和光純薬(株)製)と10mgのペルオキソ二硫酸カリウム(富士フィルム和光純薬(株)製)を加えて撹拌に付した。これにより回収溶液中に含まれるNi(II)を赤色に発色させた。かかる発色回収溶液について530nmの吸光度の測定を行い、ニッケル濃度レベルを間接的に確認した。(表2における「ニッケル濃度」)。
【0114】
吸光度の測定には、HITACHI製、型式U-1800の試験機を用いた。かかる吸光度(無次元)の値が高いほど、ニッケル濃度が高いことを示している一方、吸光度の値が低いほど、ニッケル濃度が低いことを示している。また、吸光度が“0”の場合は、回収溶液中にニッケルが存在していないことを示している。
【0115】
(実施例10)
処理剤Aの5gに代えて処理剤Bを5g用いたこと以外は、実施例9と同じ「ニッケル除去試験」を行った。結果を表2に示す。
【0116】
(実施例11)
処理剤Aの5gに代えて処理剤Cを5g用いたこと以外は、実施例9と同じ「ニッケル除去試験」を行った。
【0117】
(実施例12)
かかる被検液(pH14.0)を、48%水酸化ナトリウム水溶液((株)大阪ソーダ製)100mLと塩化鉛(II)(富士フィルム和光純薬(株)製)30mgを混合して調整した。処理剤C1gをこの被検液100mLに添加し、振とうすることで除去試験を実施した。具体的には、処理剤の入った被検液を振とう機で30分間振とうして得られた溶液を回収し、次いで、被検液中の鉛の除去効果を把握するため、回収溶液の鉛濃度について求めた。
【0118】
回収溶液の鉛濃度は、吸光光度法で測定した。具体的には、回収溶液3mLに26mLの10w/v%硫酸(林純薬工業(株)製)及び、3mLのホウ酸緩衝液(東亜DKK(株)製)を加え、オルガノ製ピュアライトPRO-0100で精製した超純水を加えて50mLまでメスアップした溶液を調整した。この溶液4mLに対して更に5mgのジチゾン(富士フィルム和光純薬(株)製)と1mLのトルエン(富士フィルム和光純薬(株)製)及び3mLのクロロホルム(富士フィルム和光純薬(株)製)を加えて撹拌に付した。これにより得られた回収溶液の有機層中に含まれる鉛を赤色に発色させた。かかる発色回収溶液について520nmの吸光度の測定を行い、鉛濃度レベルを間接的に確認した。(表2における「鉛濃度」)。
【0119】
吸光度の測定には、HITACHI製、型式U-1800の試験機を用いた。かかる吸光度(無次元)の値が高いほど、鉛濃度が高いことを示している一方、吸光度の値が低いほど、鉛濃度が低いことを示している。また、吸光度が“0”の場合は、回収溶液中に鉛が存在していないことを示している。
【0120】
(実施例13)
かかる被検液(pH14.0)を、48%水酸化ナトリウム水溶液((株)大阪ソーダ製)100mLと塩化亜鉛(II)(富士フィルム和光純薬(株)製)60mgを混合して調整した。処理剤C1gをこの被検液100mLに添加し、振とうすることで除去試験を実施した。具体的には、処理剤の入った被検液を振とう機で30分間振とうして得られた溶液を回収し、次いで、被検液中の鉛の除去効果を把握するため、回収溶液の亜鉛濃度について求めた。
【0121】
回収溶液の亜鉛濃度は、吸光光度法で測定した。具体的には、回収溶液3mLに26mLの10w/v%硫酸(林純薬工業(株)製)及び、3mLのホウ酸緩衝液(東亜DKK(株)製)を加え、オルガノ製ピュアライトPRO-0100で精製した超純水を加えて50mLまでメスアップした溶液を調整した。この溶液1mLに対して更に5mgのジンコン(林純薬工業(株)製)と0.5mLのホウ酸緩衝液ホウ酸緩衝液(東亜DKK(株)製)及び5mLのオルガノ製ピュアライトPRO-0100で精製した超純水を加えて撹拌に付した。これにより得られた回収溶液中に含まれる亜鉛を青色に発色させた。かかる発色回収溶液について620nmの吸光度の測定を行い、亜鉛濃度レベルを間接的に確認した。(表2における「亜鉛濃度」)。
【0122】
吸光度の測定には、HITACHI製、型式U-1800の試験機を用いた。かかる吸光度(無次元)の値が高いほど、亜鉛濃度が高いことを示している一方、吸光度の値が低いほど、亜鉛濃度が低いことを示している。また、吸光度が“0”の場合は、回収溶液中に亜鉛が存在していないことを示している。
【0123】
(実施例14)
かかる被検液(pH14.0)を、48%水酸化ナトリウム水溶液((株)大阪ソーダ製)100mLとアルミン酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製)30mgを混合して調整した。処理剤C1gをこの被検液100mLに添加し、振とうすることで除去試験を実施した。具体的には、処理剤の入った被検液を振とう機で30分間振とうして得られた溶液を回収し、次いで、被検液中のアルミニウムの除去効果を把握するため、回収溶液のアルミニウ濃度について求めた。
【0124】
回収溶液のアルミニウム濃度は、吸光光度法で測定した。具体的には、回収溶液0.25mLに2.5mLの10w/v%硫酸(林純薬工業(株)製)及び、1mLのホウ酸緩衝液(東亜DKK(株)製)を加えて、さらに8-キノリノール(東京化成工業(株)製)を5mg添加し、撹拌に付した。これにより得られた回収溶液中に含まれるアルミニウムを黄色に発色させた。かかる発色回収溶液について390nmの吸光度の測定を行い、アルミニウム濃度レベルを間接的に確認した。(表2における「アルミニウム濃度」)。
【0125】
吸光度の測定には、HITACHI製、型式U-1800の試験機を用いた。かかる吸光度(無次元)の値が高いほど、アルミニウム濃度が高いことを示している一方、吸光度の値が低いほど、アルミニウム濃度が低いことを示している。また、吸光度が“0”の場合は、回収溶液中にアルミニウムが存在していないことを示している。
【0126】
(実施例15)
かかる被検液(pH14.0)を、48%水酸化ナトリウム水溶液((株)大阪ソーダ製)100mLとクロム酸カリウム(富士フィルム和光純薬(株)製)37.3mgを混合して調整した。処理剤Dをカラム(材質PPから成る円筒形カラム、カラム内径20mm、カラム高さ60mm)に5gに充填し、かかる充填カラムに対して室温(約25℃)および大気圧の条件下で被検液を滴下することによって金属除去試験を実施した。具体的には、処理剤Dが充填されたカラムに対して約3mL/minの速度条件下で被検液を30mL滴下し、次いで、処理剤Dに接触した後で得られる溶液を回収した。処理剤Dによる被検液中の6価クロムの除去効果を把握するため、回収溶液の6価クロム濃度について求めた。
【0127】
回収溶液の6価クロム濃度は、吸光光度法で測定した。具体的には、回収溶液0.25mLに3mLの10w/v%硫酸(林純薬工業(株)製)及び、0.5mLのホウ酸緩衝液(東亜DKK(株)製)を加え、更に10mgの1,5-ジフェニルカルボノヒドラジド(東京化成工業(株)製)を加えて撹拌に付した。これにより回収溶液中に含まれる6価クロムを赤色に発色させた。かかる発色回収溶液について542nmの吸光度の測定を行い、6価クロムレベルを間接的に確認した。(表2における「6価クロム濃度」)。
【0128】
吸光度の測定には、HITACHI製、型式U-1800の試験機を用いた。かかる吸光度(無次元)の値が高いほど、6価クロム濃度が高いことを示している一方、吸光度の値が低いほど、6価クロム濃度が低いことを示している。また、吸光度が“0”の場合は、回収溶液中に6価クロムが存在していないことを示している。
【0129】
(比較例8)
処理剤Aの5gに代えて活性炭(クラレケミカル製:クラレコールGW40/20)5g用いたこと以外は、実施例9と同じ「ニッケル除去試験」を行った。結果を表2に示す。
【0130】
(比較例9)
処理剤Cの1gに代えて活性炭(クラレケミカル製:クラレコールGW40/20)1g用いたこと以外は、実施例12と同じ「鉛除去試験」を行った。結果を表2に示す。
【0131】
(比較例10)
処理剤Cの1gに代えて活性炭(クラレケミカル製:クラレコールGW40/20)1g用いたこと以外は、実施例13と同じ「亜鉛除去試験」を行った。結果を表2に示す。
【0132】
(比較例11)
処理剤Cの1gに代えて活性炭(クラレケミカル製:クラレコールGW40/20)1g用いたこと以外は、実施例14と同じ「アルミニウム除去試験」を行った。結果を表2に示す。
【0133】
(比較例12)
処理剤Dの5gに代えて活性炭(クラレケミカル製:クラレコールGW40/20)5g用いたこと以外は、実施例15と同じ「6価クロム除去試験」を行った。結果を表2に示す。
【0134】
上記実施例および比較例の結果を以下の表に示す。
【0135】
この結果より、本処理剤を用いることにより、溶液に含まれる金属不純物を活性炭よりも効率的に除去することが可能であることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明に係る処理剤は、金属不純物の除去または低減が求められる様々な分野に利用することができる。特に高純度アルカリ水溶液が求められる分野に用いるアルカリ水溶液の処理や金属エッチング工程の廃液やめっき廃液中の遷移金属、または典型金属の金属不純物の低減に用いることができる。
図1
図2
図3