(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】掃除口蓋及びそれを備えた衛生設備機器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/02 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
(21)【出願番号】P 2021000459
(22)【出願日】2021-01-05
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古賀 悠
(72)【発明者】
【氏名】矢部 博
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-175204(JP,A)
【文献】実開昭49-135131(JP,U)
【文献】特開2003-003552(JP,A)
【文献】特開2015-143421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 11/02
E03C 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛生設備機器の排水路と連通した掃除口を塞ぐ掃除口蓋であって、
前記掃除口に挿入可能であり、前記排水路の内側面に係止する差込部と、
前記掃除口の外側面をシールして前記掃除口を塞ぐシール部と、
前記差込部と前記シール部とを繋ぐ、連繋部と、
前記差込部と前記シール部とを近接させることで前記掃除口蓋を前記掃除口に固定する挟持固定部材と、を備え、
前記連繋部は、前記掃除口より径が小さい小経部と、前記掃除口より径が大きい大径部と、を有し、
前記挟持固定部材により、前記差込部と前記シール部を近接させる際、前記掃除口の開口端を前記小経部から前記大径部へと誘導する誘導部を有することを特徴とする掃除口蓋及びそれを備えた衛生設備機器。
【請求項2】
前記誘導部は、小径部から大径部を滑らかに繋いでいることを特徴とする請求項1に記載の掃除口蓋及びそれを備えた衛生設備機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生設備機器の排水路の内部と連通して外部に開口した掃除口を塞ぐ掃除口蓋、及び、それを備えた衛生設備機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛生設備機器においては、きわめて多量のペーパーあるいは紙おむつなどの衛生部材、トイレットペーパーの芯などの異物を投入された場合や、誤ってペンや携帯電話や尿瓶の蓋などの異物を便器ボウル部内へ落とされた場合などに、そのまま洗浄動作等が行われてしまうと、衛生設備機器のトラップ内に異物が詰まってしまったり、処理できない異物を排水配管に排出してしまうという不具合が発生することがある。そのままの状況で更に数回続けて洗浄を行うと、汚水が逆流して、使用者が戸惑ってしまう恐れがある。
【0003】
このように衛生設備機器のトラップ内に異物が詰まってしまった場合には、トラップ内に詰まった異物を取り除く必要がある。衛生設備機器を取り外すことなく、感染性の汚物が衛生設備機器外にもたらされてしまうリスクを避けながらトラップ内の異物を除去するための方策として、トラップ内に連通する掃除口を設けた衛生設備機器というものが用いられている。通常、衛生設備機器の掃除口は掃除口蓋によりふさがれているが、衛生設備機器内に異物つまりが発生した場合には、掃除口蓋を衛生設備機器より取り外し、衛生設備機器内の異物を除去できるようにしている。
【0004】
衛生設備機器の掃除口蓋として、掃除口の内径寸法より大きく掃除口の外側から差し込んで排水路の内側面に係止する差込部と、掃除口の内径寸法より大きく掃除口の外側端面に当接シールして掃除口を塞ぐシール部と、掃除口の内径寸法より小さく差込部とシール部との間を繋ぐ筒状の連繋部と、連繋部内に配設され差込部とシール部とが近接するように作用して当該掃除口蓋を掃除口に挟持固定する挟持固定部材と、を備えたものが知られている(特許文献1)。
【0005】
差込部、連繋部及びシール部の各々は、有底筒状の一体的なパッキン部材の一部として構成され得る。
【0006】
また、挟持固定部材は、差込部を排水路側から支持可能な挿入部と、シール部を外側から支持可能なキャップと、を有しており、挿入部とキャップとを互いに近接ないし離反させることによって、差込部とシール部とを互いに近接ないし離反させるようになっている。
【0007】
更に、パッキン部材の厚み(差込部とシール部との間の厚み)を低減するために、パッキン部材において、挿入部の挿入作業を許容する空間を保証する収納部と、挿入部を排水路側から支持可能な自立補助部と、を設けることが提案されている(特許文献2)。この構成では、収納部を利用してパッキン部材内に挿入された挿入部が、自立補助部に移動されてから、挟持固定部材に対する操作が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-3552号公報
【文献】特開2015-143421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本件発明者によれば、施工者が掃除口蓋の挟持固定部材の締め込み作業を行う際、掃除口蓋が掃除口の中心に対してしてずれた状態で締めこまれることがあったため、パッキン部材が適切な変形をせず、挟持固定部材が掃除口に対して傾くことや、シール性が掃除口の全周で一定にならず、漏気や漏水が起こることを知見した。この問題を従来の掃除口の構成のまま施工者が防ごうとすると、外から見ると分かりにくい掃除口蓋と掃除口の位置関係を施工者のかなりの配慮を有しながら組付けを行ってもらう他なく、施工者に屈みながら狭い空間で作業させる時間を長く強要させる結果となり、相当な労力を施工者に強いてしまう。
【0010】
本発明は、以上の背景に基づいてなされたものである。本発明の目的は、掃除口蓋と掃除口の位置関係が施工者から分かりにくいにも関わらず、特段の配慮無く挟持固定部材を締めこむだけで適正な掃除口蓋の組付けができ、施工者が施工者の組付け時の屈みながら狭い空間で作業させる時間を減らしつつ、漏気や漏水をより確実に防止することが可能である掃除口蓋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、衛生設備機器の排水路と連通した掃除口を塞ぐ掃除口蓋であって、前記掃除口に挿入可能であり、前記排水路の内側面に係止する差込部と、前記掃除口の外側面をシールして前記掃除口を塞ぐシール部と、前記差込部と前記シール部とを繋ぐ、連繋部と、前記差込部と前記シール部とを近接させることで前記掃除口蓋を前記掃除口に固定する挟持固定部材と、を備え、前記連繋部は、前記掃除口より径が小さい小経部と、前記掃除口より径が大きい大径部と、を有し、前記挟持固定部材により、前記差込部と前記シール部を近接させる際、前記掃除口の開口端を前記小経部から前記大径部へと誘導する誘導部を有することを特徴とする掃除口蓋及びそれを備えた衛生設備機器である。
【0012】
このような構成により、シール性が掃除口の全周で一定にならないことや、パッキン部材が意図していない形状変化をすることによる漏気や漏水が起こってしまうことを解決できる。
具体的には、施工者が掃除口蓋の挟持固定部材の締め込み作業を行う際、差込部とシール部とを近接させる。その際、従来だと、掃除口蓋が掃除口の中心に対してしてずれた状態で締めこまれていくことがあったため、掃除口蓋が適切な変形をせず、挟持固定部材が掃除口に対して傾くことや、シール性が掃除口の全周で一定にならず、漏気や漏水が起こる可能性があった。
一方、本発明では、連繋部の一部が掃除口の径より小さいことで、掃除口蓋が掃除口に入れやすく、シールを行う際に、誘導手段により掃除口開口端よりも径の大きな大径部に誘導することができ、大径部が掃除口開口端に圧迫されることにより、シール性を向上させつつ、適切なシール位置へと誘導することができる。そのため、施工性を良好にしながら、適切なシールを行うことができため、掃除口蓋と掃除口の位置関係が施工者から分かりにくいにも関わらず、特段の配慮無く挟持固定部材を締めこむだけで適正な掃除口蓋の組付けができる。そのため、施工者が施工者の組付け時の屈みながら狭い空間で作業させる時間を減らしつつ、漏気や漏水をより確実に防止することが可能である。
【0013】
また、前記誘導部は、小径部から大径部を滑らかに繋いでいることが好ましい。
【0014】
このような構成により、施工者が掃除口蓋の挟持固定部材の締め込み作業を行い、差込部とシール部とを互いに近接させる際、誘導部が掃除口に当たりながら締めこまれていくため、誘導部が掃除口蓋を大径部に誘導していく。そのため、パッキン部材が正常な形状変化をし、シール性が全周で略一定となるような適切なシールが行えるため、掃除口蓋と掃除口の位置関係が施工者から分かりにくいにも関わらず、特段の配慮無く挟持固定部材を締めこむだけで適正な掃除口蓋の組付けができる。そのため、施工者が施工者の組付け時の屈みながら狭い空間で作業させる時間を減らしつつ、漏気や漏水をより確実に防止することが可能である。
【0015】
また、前記誘導部は、前記シール部を下、前記差込部を上とし、前記掃除口蓋を上面視した際、前記パッキン部材の中心をまたぐよう対角した位置に設けられていることが好ましい。
【0016】
このような構成により、施工者が掃除口蓋の挟持固定部材の締め込み作業を行い、差込部とシール部とを互いに近接させる際、パッキン部材の長手方向を回転軸にして回転させた際の角度に関係なく、誘導部が掃除口に当たり傾斜が掃除口蓋を中心に誘導していく。そのため、パッキン部材が正常な形状変化をし、シール性が全周で略一定となるような適切なシールが行えるため、掃除口蓋と掃除口の位置関係が施工者から分かりにくいにも関わらず、特段の配慮無く挟持固定部材を締めこむだけで適正な掃除口蓋の組付けができる。そのため、施工者が施工者の組付け時の屈みながら狭い空間で作業させる時間を減らしつつ、漏気や漏水をより確実に防止することが可能である。
【0017】
また、前記掃除口蓋は、一対の前記誘導部と直交する位置に前記誘導部よりも厚さが薄い薄肉部を備えることが好ましい。
【0018】
このような構成により、施工者が掃除口蓋の挟持固定部材の締め込み作業を行い、差込部とシール部とを互いに近接させる際、誘導部がガイドの役割をしながら掃除口蓋は潰れるよう変形するが、その変形に伴って薄肉部がくの字に折りたたまれるよう変形する事により、傾斜部や他端部に大きな力が加わることを抑制でき、掃除口蓋の破損を防ぐことが可能である。
【発明の効果】
【0019】
このような構成により、シール性が掃除口の全周で一定にならないことや、パッキン部材が意図していない形状変化をすることによる漏気や漏水が起こってしまうことを解決できる。
具体的には、施工者が掃除口蓋の挟持固定部材の締め込み作業を行う際、差込部とシール部とを近接させる。その際、従来だと、掃除口蓋が掃除口の中心に対してしてずれた状態で締めこまれていくことがあったため、掃除口蓋が適切な変形をせず、挟持固定部材が掃除口に対して傾くことや、シール性が掃除口の全周で一定にならず、漏気や漏水が起こる可能性があった。
一方、本発明では、連繋部の一部が掃除口の径より小さいことで、掃除口蓋が掃除口に入れやすく、シールを行う際に、誘導手段により掃除口開口端よりも径の大きな大径部に誘導することができ、大径部が掃除口開口端に圧迫されることにより、シール性を向上させつつ、適切なシール位置へと誘導することができる。そのため、施工性を良好にしながら、適切なシールを行うことができため、掃除口蓋と掃除口の位置関係が施工者から分かりにくいにも関わらず、特段の配慮無く挟持固定部材を締めこむだけで適正な掃除口蓋の組付けができる。そのため、施工者が施工者の組付け時の屈みながら狭い空間で作業させる時間を減らしつつ、漏気や漏水をより確実に防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態による、掃除口蓋が設置された水洗大便器を示す分解斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による、パッキン部材が設置された水洗大便器の掃除口を示す断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による、挟持固定部材が収納部に挿入された状態のパッキン部材が設置された水洗大便器の掃除口を示す断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態による、挟持固定部材が自立補助部に挿入された状態のパッキン部材が設置された水洗大便器の掃除口を示す断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態による、掃除口蓋が固定された水洗大便器の掃除口を示す断面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態による、パッキン部材の正面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態による、掃除口蓋が固定された水洗大便器の掃除口を示す正面図である。
【
図8】本発明の第1実施形態による、カバー部材が設けられた挟持固定部材の挿入部を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態による衛生設備機器の掃除口蓋を、添付図面を参照して説明する。
【0022】
(構成)
本発明の第1実施形態において、衛生設備機器は水洗大便器1であり、壁掛け式、床置式等どちらにおいても適用できる。
図1は、本発明の第1実施形態による掃除口蓋が設置された水洗大便器を示す分解斜視図であり、床置き式の水洗大便器である。
【0023】
掃除口2は、水洗大便器1の排水路(トラップ)4(
図2参照)の最高位より下流側に設置されており、水洗大便器1の側面から水洗大便器1の排水路4の内部に詰まった異物等の場所を発見し回収するためのものである。掃除口2の位置は、実施例に示すような水洗大便器1の側面に限定されず、水洗大便器1の排水路4に連通する部位であれば水洗大便器1の背面であってもよい。掃除口2を水洗大便器1の排水路4の最高位よりも下流側に設けることで、水洗大便器1の非洗浄時においては、掃除口2のある箇所まで水洗大便器1の溜水は来ていない。そのため、非洗浄時に掃除口蓋6を開けることがあっても、溜水が掃除口2より流出して床面などを汚すおそれはない。
【0024】
図2は、本発明の第1実施形態による掃除口蓋6のパッキン部材8が設置された水洗大便器1の掃除口2を示す断面図であり、
図3は、本発明の第1実施形態による掃除口蓋6の挟持固定部材10が収納部8eに挿入された状態のパッキン部材8が設置された水洗大便器1の掃除口2を示す断面図であり、
図4は、本発明の第1実施形態による掃除口蓋6の挟持固定部材10が自立補助部8fに挿入された状態のパッキン部材8が設置された水洗大便器1の掃除口2を示す断面図であり、
図5は、本発明の第1実施形態による掃除口蓋6が固定された水洗大便器1の掃除口2を示す断面図であり、
図7は、本発明の第1実施形態による掃除口蓋6が固定された水洗大便器1の掃除口2を示す正面図である。
【0025】
図1乃至
図8に示すように、本実施形態の掃除口蓋6は、衛生設備機器の一例である水洗大便器1の排水路4の内部と連通して外部に開口した掃除口2を塞ぐ掃除口蓋であり、パッキン部材8と、挟持固定部材10と、を備えている。
【0026】
パッキン部材8は、EPDM(エチレンプロピレンゴム)などの合成ゴムによって製造されており、平面視で円形のシール部8aと、シール部8aに連続した筒状の連繋部11と、連繋部11に連続した平面視で略長方形状の凸領域を有する差込部8cと、を有する袋状(有底筒状)の一体部材である。
【0027】
シール部8aは、掃除口2の内径寸法より大きい面を有し、当該面によって掃除口2の外側面をシールして掃除口2を塞ぐようになっている。
【0028】
差込部8cは、掃除口2の外側から排水路4に向かって挿入可能である一方で、掃除口2の内径寸法より大きい面を有し、当該面によって排水路4の内側面に係止するようになっている。
【0029】
差込部8cとシール部8aとを繋ぐ筒状の連繋部11は、掃除口2の内径寸法より細い小径部11bと、掃除口の内径寸法より大きい大径部11cを有する。
【0030】
挟持固定部材10は、差込部8cとシール部8aとを互いに近接ないし離反させることで掃除口蓋6を掃除口2に固定ないし固定解除するようになっている。具体的には、挟持固定部材10は、差込部8cを排水路4側から支持可能な挿入部10cと、シール部8aを外側から支持可能なキャップ10aと、を有しており、挿入部10cとキャップ10aとを互いに近接ないし離反させることによって、差込部8cとシール部8aとを互いに近接ないし離反させるようになっている。
【0031】
更に、パッキン部材8には、その内部において、挟持固定部材10がシール部8aに設けられた開口部8dから挿入される作業を行い易くするための空間を提供する収納部8eと、シール部8aとは反対側において挟持固定部材10を支持することができる自立補助部8fと、連通部11とシール部の間にあって、キャップを下、差込部を上とし前記掃除口蓋を上面視した際、パッキン部材の中心をまたぐよう対角した位置に2箇所誘導部11aが外側に掃除口の内部から外側に上り傾斜している誘導部11aと、が設けられている。自立補助部8fは、収納部8eに比べ、シール部8aから近い位置に設けられている。
【0032】
掃除口2の外側面に当接されるシール部8aの外縁部には、円周方向に延びる第1凸部20が形成されている。また、差込部8cには、掃除口2に取付けられた状態で排水路4の内面と接触する第2凸部24が、一体的に4カ所突設されている。なお、第1凸部を第2凸部と同様に4カ所突設させてもよく、第2凸部を第1凸部と同様に円周方向に延びるよう形成させてもよい。
【0033】
挟持固定部材10は、挿入部10c及びキャップ10aに加えて、ネジ10sを有している。
【0034】
挿入部10cは、長辺が掃除口2の内径寸法よりも長くなっており、中央部が折り曲げられてシール部8aの側に突出する折り曲げ部材10bと、長辺が折り曲げ部材10bとほぼ同じ長さの平板状の補強部材10fと、が溶接や圧入などの方法で一体化されて構成されている。折り曲げ部材10bの中央には、六角形穴10dが開設されており、六角形穴10dには、ナット26が挿入されて固定されている。
【0035】
キャップ10aは、キャップ本体10mとC型座金(座金)10wとを有している。キャップ本体10mは、凹部を有する略椀形状の金属部材であり、パッキン部材8の開口部8dより大きな外径寸法を有しており、中央には、ネジ10sが挿通されるネジ孔10tが設けられている。ネジ孔10tは、ネジ10sの頭部の外径よりも大きく開口している。
【0036】
C型座金10wは、金属製であり、ネジ10sの頭部の外径よりも大きな外径寸法を有しており、ネジ10sの頭部の外径よりも小さく開口したネジ挿通孔10xと、ネジ挿通孔10xから径方向外側に向けて切り欠かれたスリット部10yと、を有している。
【0037】
また、本実施形態では、挿入部10cの長辺方向の両端部(上方側端部及び下方側端部となって差込部8cを支持する機能を担う)に、それぞれカバー部材30が設けられている。
【0038】
本実施形態のカバー部材30は、溶融した樹脂に挿入部10cをディッピングすることによって形成されている。これにより、
図8に示すように、カバー部材30の先端部には、凸部が形成されており、カバー部材30の外周部は、R形状を有している。なお、カバー部材の製造は、ディッピングに限定されず、インジェクション成形などで形成してもよい。
【0039】
また、本実施形態のカバー部材30は、差込部8cを支持するべく当該差込部8cに当接する挿入部10cの領域より広い範囲に、設けられている。
【0040】
(取付)
掃除口2への掃除口蓋6の取付は、以下のように行われる。
【0041】
まず、
図2に示すように、パッキン部材8の収納部8e、自立補助部8f及び差込部8cが、掃除口2の外側から内側へ(排水路4に向かって)挿入される。
【0042】
次に、パッキン部材8のシール部8aに設けられた開口部8dを介して、挟持固定部材10の挿入部10cが、筒状の連繋部11内に挿入される。そして、収納部8eによって提供されるパッキン部材8内の空間を利用して、挿入部10cは一旦、収納部8eの内部にまで挿入される(
図3参照)。
【0043】
挿入部10cの長辺の長さは、小径部11b及び差込部8cの内径寸法よりも大きいため、挿入部10cは傾けた状態でパッキン部材8内へ挿入される。一方、挿入部10cの長辺の長さは、収納部8eの内径寸法より小さいため、
図3に示すように、挿入部10cは、収納部8eの内側において、その傾き状態を解除することができる。
【0044】
次に、
図4に示すように、挟持固定部材10の全体が、掃除口蓋6の開口部8d側へと引っ張り戻される。この操作によって、傾き状態が解除されていた挿入部10cが、収納部8eの内部から自立補助部8fへと移動される。
【0045】
この際、図示のように、本実施形態では、自立補助部8fと収納部8eとが傾斜面を介して連結されているため、挿入部10cは当該傾斜面に沿って円滑に移動され得る。
【0046】
また、本実施形態の自立補助部8fは、その内径寸法が挿入部10cの外径寸法より大きくなるように差込部8cの奥方側に設けられた格納部8gと、その内径寸法が挿入部10cの外径寸法より小さくなるように格納部8gと収納部8eとの間で周設された突起部8hと、を有している。
【0047】
このような構成により、挟持固定部材10の全体を掃除口蓋6の開口部8d側へ引っ張り戻す際、挿入部10cは、自立補助部8fの突起部8hを乗り越えて格納部8gへと移動する。そして、突起部8hが挿入部10c(の補強部材10f)と当接することで、当該挿入部10cを支持して、挿入部10cが傾き状態となることを防ぐ(自立を補助する)。
【0048】
その後、
図5及び
図7に示すように、パッキン部材8のシール部8aが掃除口2の外側面と当接された状態で、キャップ本体10mがパッキン部材8の上方から被せられる。そして、キャップ本体10mの中央に開設されたネジ孔10tとネジ12の頭部との間に、C型座金10wのスリット部10yが差し込まれる。スリット部10yは、ネジ挿通孔10xに繋がっており、当該スリット部10yを介して、ネジ12がネジ挿通孔10xを挿通する位置に調整される。(C型座金10wのネジ挿通孔10xの開口径は、ネジ12の頭部の外径より小さい。)
【0049】
次に、ネジ12を回転させることによって、ネジ12と螺合しているナット26の働きによって、キャップ本体10mへ近づく方向へ挿入部10cの補強部材10fが移動される。この時、差込部8cとシール部8aとを互いに近接させる際、小径部11bから大径部11cに掃除口2が誘導部11aの傾斜にガイドされながら締めこまれていくため、傾斜によって掃除口蓋6がパッキン部材8に及ぼす力が掃除口蓋6の中心方向に向き、掃除口蓋6を、小径部11bから大径部11c、また掃除口2の中心に誘導していく。そのため、パッキン部材8が掃除口2の周縁部と適切な当たり方をするため、パッキン部材8が正常な形状変化をし、シール性が全周で略一定となるような適切なシールが行えるため、掃除口蓋6と掃除口2の位置関係が施工者から分かりにくいにも関わらず、特段の配慮無く挟持固定部材10を締めこむだけで適正な掃除口蓋6の組付けができる。そのため、施工者が施工者の組付け時の屈みながら狭い空間で作業させる時間を減らしつつ、漏気や漏水をより確実に防止することが可能である。
【0050】
また、掃除口蓋6は、さらに、誘導部11aを直線で結んだ線と直交する位置に誘導部11aよりも厚さが薄い薄肉部8jを備えている。ここでいう厚さとは、掃除口蓋6を上面視で見た際、掃除口蓋6の中心から外側に延びる方向に対する厚さのことを言う。これにより、施工者が掃除口蓋6の挟持固定部材10の締め込み作業を行い、差込部8cとシール部8aとを互いに近接させる際、誘導部11aがガイドの役割をしながら2か所の誘導部11aが近づくようにパッキン部材8は潰れるよう変形するが、その変形に伴って薄肉部8jがくの字に折りたたまれるよう変形する、つまり2か所の薄肉部8jが互いに離れるよう変形するにより、傾斜部や他端部に大きな力が加わることを抑制でき、掃除口蓋6の破損を防ぐことが可能である。なお、誘導部11a及び薄肉部8jの数は2つ以上でもよい。
【0051】
この結果、掃除口蓋6の差込部8cに設けられた第2凸部24が排水路4の内面と密着し、また、掃除口蓋6のシール部8aに設けられた第1凸部20が掃除口2の外側面と密着する。これにより、掃除口蓋6が掃除口2に固定され、掃除口2が有効にシールされる。
【0052】
ネジ12を回転させる時(六角棒スパナが用いられる)、当該ネジ12は、ナット26に向かって押し付けられながら回転されることが好ましい。本実施形態では、自立補助部8fの突起部8hによって挿入部10cが支持されることで、ネジ12がナット26に向かって押し付けられる状態を提供可能となっている。これにより、ネジ12の操作性(施工性)が向上されている。
【0053】
(作用効果)
以上の通り、本実施形態の掃除口蓋6によれば、掃除口2が突出していない水洗大便器1にも効果的に使用することができ、施工性も高い。
【0054】
また、本実施形態の掃除口蓋6によれば、挿入部10cの上方側端部にカバー部材30を設けたことにより、挿入部10cの上方側端部(のカバー部材30)と差込部8cとをより確実に当接させることができる(両者の掛り代を増大させることができる)。このため、掃除口蓋6が下方側へ片寄せ状態となった場合においても、挟持固定部材10が掃除口蓋6を掃除口2に固定する機能がより確実なものとなり、パッキン部材8の変形をもたらして隙間が発生して漏気や漏水することをより確実に防止することができる。
【0055】
また、本実施形態の掃除口蓋6によれば、挿入部10cの下方側端部についても、カバー部材30が設けられている。これにより、掃除口蓋6が上方側へ片寄せ状態となった場合においても、挟持固定部材10が掃除口蓋6を掃除口2に固定する機能がより確実なものとなり、漏気や漏水をより確実に防止することができる。
【0056】
また、本実施形態の掃除口蓋6によれば、カバー部材30の先端部に凸部が設けられている(
図8参照)。これにより、挿入部10cの挿入作業中などにおいて、挿入部10cが連繋部11の内側等に接触する際、当該凸部が先に接触するため、挿入部10cを円滑に移動させることができる。この作用は、凸部を含むカバー部材30が樹脂(滑らかな材料の一例)で製造されているために、より効果的である。また、差込部8cと挿入部10cのずれを防ぐために凸部を含むカバー部材30を摩擦係数の高い樹脂で製造した場合も、カバー部材と連繋部11の内側等との接触面積を凸部によって抑えることができるため、円滑に移動させることができる。
【0057】
また、本実施形態の掃除口蓋6によれば、差込部8cを支持するべく当該差込部8cに当接する挿入部10cの領域より広い範囲に、カバー部材30が設けられている。これにより、差込部8cに当接する挿入部10cの領域において、カバー部材30が設けられた部分と設けられていない部分とで段差や摩擦力差が生じない。これにより、挟持固定部材10の操作中においてカバー部材30が脱離する等の不具合が発生し難い。
【0058】
また、本実施形態の掃除口蓋6によれば、カバー部材30の外周部はR形状を有している(
図8参照)。これにより、挿入部10cの挿入作業中などにおいて、挿入部10cが連繋部11の内側等に接触する際、R形状を有する外周部が接触するため、挿入部10cを円滑に移動させることができ、また、カバー部材30は軟質であるため、連繋部11が損傷する可能性を低減することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 水洗大便器
2 掃除口
4 排水路
6 掃除口蓋
8 パッキン部材
8a シール部
8c 差込部
8d 開口部
8e 収納部
8f 自立補助部
8g 格納部
8h 突起部
8j 薄肉部
10 挟持固定部材
10a キャップ
10b 折り曲げ部材
10c 挿入部
10d 六角形穴
10e 挿入部
10f 補強部材
10m キャップ本体
10s ネジ
10t ネジ孔
10w C型座金
10x ネジ挿通孔
10y スリット部
11 連繋部
11a 誘導部
11b 小径部
11c 大径部
12 ネジ
20 第1凸部
24 第2凸部
26 ナット
30 カバー部材