(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ブレーキキャリパ
(51)【国際特許分類】
F16D 65/18 20060101AFI20240902BHJP
F16D 55/226 20060101ALI20240902BHJP
F16D 121/14 20120101ALN20240902BHJP
【FI】
F16D65/18
F16D55/226 104E
F16D121:14
(21)【出願番号】P 2021030454
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】314013327
【氏名又は名称】株式会社グロータック
(74)【代理人】
【識別番号】100155158
【氏名又は名称】渡部 仁
(72)【発明者】
【氏名】木村 将行
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-295873(JP,A)
【文献】実開平03-124034(JP,U)
【文献】特許第6219759(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/18 -65/22
F16D 55/226-55/227
F16D 121/14
F16D 125/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車のディスクブレーキに使用されるブレーキキャリパであって、
ブレーキ操作部に接続されたブレーキワイヤと連結された場合に、前記ブレーキ操作部の操作に応じて引き戻しされるブレーキワイヤから伝達される力によって回動する回動部材と、
前記回動部材から伝達される力によって、一対のブレーキパッドの少なくとも一方を、当該一対のブレーキパッドの間に配置されるディスクロータの側面を押圧する位置と前記側面から離間する位置との間で進退させるパッド駆動部と、
前記回動部材から前記パッド駆動部及び前記ブレーキパッドを介して前記ディスクロータへと伝達される力の伝達態様を変更可能な伝達態様変更手段と、
前記伝達態様変更手段で前記伝達態様を変更する際の指標となる目印とを備え
、
前記目印は、前記力の伝達態様に係る第1物理量を変更するために前記伝達態様変更手段で調整可能な前記第1物理量とは異なる第2物理量の変化量を示すものであり、前記第1物理量の変化量が等間隔となる前記第2物理量の変化量の間隔で設けられていることを特徴とするブレーキキャリパ。
【請求項2】
請求項
1において、
前記第1物理量は、前記ブレーキ操作部の操作に応じた前記回動部材又は前記パッド駆動部の動作量に対する前記ブレーキパッドが前記ディスクロータを押圧する力の増力率であるブレーキキャリパ。
【請求項3】
請求項1
及び2のいずれか1項において、
前記伝達態様変更手段は、前記ブレーキ操作部を操作していないときの前記回動部材の回動位置である初期回動位置を変更可能に構成されており、
前記目印は、前記回動部材の異なる複数の前記初期回動位置に対応する位置にそれぞれ設けられているブレーキキャリパ。
【請求項4】
請求項1乃至
3のいずれか1項において、
前記伝達態様変更手段は、前記回動部材の回動半径を変更可能に構成されており、
前記目印は、前記回動部材の異なる複数の回動半径に対応する位置にそれぞれ設けられているブレーキキャリパ。
【請求項5】
自転車のディスクブレーキに使用されるブレーキキャリパであって、
ブレーキ操作部に接続されたブレーキワイヤと連結された場合に、前記ブレーキ操作部の操作に応じて引き戻しされるブレーキワイヤから伝達される力によって回動する回動部材と、
前記回動部材から伝達される力によって、一対のブレーキパッドの少なくとも一方を、当該一対のブレーキパッドの間に配置されるディスクロータの側面を押圧する位置と前記側面から離間する位置との間で進退させるパッド駆動部と、
前記回動部材から前記パッド駆動部及び前記ブレーキパッドを介して前記ディスクロータへと伝達される力の伝達態様を変更可能な伝達態様変更手段と、
前記伝達態様変更手段で前記伝達態様を変更する際の指標となる目印とを備え、
前記伝達態様変更手段は、前記ブレーキ操作部を操作していないときの前記回動部材の回動位置である初期回動位置を変更可能に構成されており、
前記目印は、前記回動部材の異なる複数の前記初期回動位置に対応する位置にそれぞれ設けられていることを特徴とするブレーキキャリパ。
【請求項6】
請求項5において、
前記伝達態様変更手段は、前記回動部材の回動半径を変更可能に構成されており、
前記目印は、前記回動部材の異なる複数の回動半径に対応する位置にそれぞれ設けられているブレーキキャリパ。
【請求項7】
自転車のディスクブレーキに使用されるブレーキキャリパであって、
ブレーキ操作部に接続されたブレーキワイヤと連結された場合に、前記ブレーキ操作部の操作に応じて引き戻しされるブレーキワイヤから伝達される力によって回動する回動部材と、
前記回動部材から伝達される力によって、一対のブレーキパッドの少なくとも一方を、当該一対のブレーキパッドの間に配置されるディスクロータの側面を押圧する位置と前記側面から離間する位置との間で進退させるパッド駆動部と、
前記回動部材から前記パッド駆動部及び前記ブレーキパッドを介して前記ディスクロータへと伝達される力の伝達態様を変更可能な伝達態様変更手段と、
前記伝達態様変更手段で前記伝達態様を変更する際の指標となる目印とを備え、
前記伝達態様変更手段は、前記回動部材の回動半径を変更可能に構成されており、
前記目印は、前記回動部材の異なる複数の回動半径に対応する位置にそれぞれ設けられていることを特徴とするブレーキキャリパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用ディスクブレーキのブレーキキャリパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自転車等の車両に用いられるディスクブレーキとして、例えば、特許文献1記載の機械式ディスクブレーキが開示されている。
かかる機械式ディスクブレーキは、キャリパボディに、ピストンが摺動するシリンダ孔と、カムシャフトが挿通されるカムシャフト挿通孔とを備え、カムシャフトに連結されるとともに連繋手段の牽引によってカムシャフトを作動させる回動アームが回動することにより、プッシュロッドがピストンを押動し、ピストンの前進によって摩擦パッドがディスクロータに摺接されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スポーツサイクルに求められているブレーキ性能は制動力だけではなく、スピードコントロール性、制動力の立ち上がり方などのフィーリング(以下、「制動フィーリング」と称す)も大事である。制動フィーリングの良し悪しは個々人や使用状況などで異なるため、例えば、ブレーキワイヤの張り具合やブレーキパッドのディスクロータに対するクリアランス(以下、「パッドクリアランス」と称す)などを調整して、各個人が自分に合った制動フィーリングを見つけ出す必要がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1の機械式ディスクブレーキにおいて、例えば、ブレーキワイヤの張り具合やパッドクリアランスをどのように変更すればどのように制動フィーリングが変化するのかといった指標がなく調整が困難であった。
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、制動フィーリングの調整を比較的簡易に行うことが可能なブレーキキャリパを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔発明1〕 上記目的を達成するために、発明1のブレーキキャリパは、自転車のディスクブレーキに使用されるブレーキキャリパであって、ブレーキ操作部に接続されたブレーキワイヤと連結された場合に、前記ブレーキ操作部の操作に応じて引き戻しされるブレーキワイヤから伝達される力によって回動する回動部材と、前記回動部材から伝達される力によって、一対のブレーキパッドの少なくとも一方を、当該一対のブレーキパッドの間に配置されるディスクロータの側面を押圧する位置と前記側面から離間する位置との間で進退させるパッド駆動部と、前記回動部材から前記パッド駆動部及び前記ブレーキパッドを介して前記ディスクロータへと伝達される力の伝達態様を変更可能な伝達態様変更手段と、前記伝達態様変更手段で前記伝達態様を変更する際の指標となる目印と、を備える。
【0007】
〔発明2〕 さらに、発明2のブレーキキャリパは、発明1のブレーキキャリパにおいて、前記目印は、前記力の伝達態様に係る第1物理量を変更するために前記伝達態様変更手段で調整可能な前記第1物理量とは異なる第2物理量の変化量を示すものであり、前記第1物理量の変化量が等間隔となる前記第2物理量の変化量の間隔で設けられている。
【0008】
〔発明3〕 さらに、発明3のブレーキキャリパは、発明2のブレーキキャリパにおいて、前記第1物理量は、前記ブレーキ操作部の操作に応じた前記回動部材又は前記パッド駆動部の動作量に対する前記ブレーキパッドが前記ディスクロータを押圧する力の増力率である。
【0009】
〔発明4〕 さらに、発明4のブレーキキャリパは、発明1乃至3のいずれか1のブレーキキャリパにおいて、前記伝達態様変更手段は、前記ブレーキ操作部を操作していないときの前記回動部材の回動位置である初期回動位置を変更可能に構成されており、前記目印は、前記回動部材の異なる複数の前記初期回動位置に対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0010】
〔発明5〕 さらに、発明5のブレーキキャリパは、発明1乃至3のいずれか1のブレーキキャリパにおいて、前記伝達態様変更手段は、前記回動部材の回動半径を変更可能に構成されており、前記目印は、前記回動部材の異なる複数の回動半径に対応する位置にそれぞれ設けられている。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、発明1のブレーキキャリパによれば、当該ブレーキキャリパに設けられた目印を指標として、回動部材からパッド駆動部及びブレーキパッドを介してディスクロータへと伝達される力の伝達態様を変更することができる。これにより、指標が何も無い場合と比較して、簡易に伝達態様を変更することができる。その結果、簡易に制動フィーリングを変更することができる。
【0012】
さらに、発明2のブレーキキャリパによれば、力の伝達態様に係る第1物理量の変化量が等間隔となる第2物理量の位置に目印を設けるようにしたので、第1物理量の変化量を把握しながら伝達態様を変更することができる。その結果、現在の制動フィーリングを、好みの制動フィーリングにより簡易に変更することができる。
【0013】
さらに、発明3のブレーキキャリパによれば、目印を指標に、力の伝達態様に係る第1物理量として増力率を変更することができる。
さらに、発明4のブレーキキャリパによれば、目印を指標として、回動部材の初期回動位置(第2物理量としては回転部材の回転角度)を変更することで、簡易に制動フィーリングを変更することができる。
【0014】
さらに、発明5のブレーキキャリパによれば、目印を指標として、回動部材の回動半径(第2物理量としては回転部材の回転半径)を変更することで、簡易に制動フィーリングを変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施の形態に係るブレーキキャリパ1の一構成例を示す平面図である。
【
図2】第1の実施の形態に係るブレーキキャリパ1の一構成例を示す斜視図である。
【
図3】第1の実施の形態に係るブレーキキャリパ1の内部構造を示す斜視図である。
【
図5】ブレーキキャリパ1をロードバイク300に取り付けた一例を示す図である。
【
図7】(a)~(c)は、目印81b~81dに基準ピン23を合わせたときのスイングアーム4の回動位置を示す図である。
【
図8】(a)~(c)は、スイングアーム4の初期回転角度0°~30°に対応するカムシャフト5の回動位置を示す図である。
【
図9】スイングアームの初期回転角度と増力率との関係を示すグラフである。
【
図10】第2の実施の形態に係るブレーキキャリパ1Aの一構成例を示す平面図である。
【
図11】第2の実施の形態に係る調整用目盛8Aと増力率の増加量との関係を説明するための図である。
【
図12】変形例に係るブレーキキャリパ1Bの一構成例を示す平面図である。
【0016】
【
図13】(a)~(c)は、目印83b~83dに指針部45iを合わせたときのスイングアーム4Bの回動位置を示す図である。
【
図14】(a)及び(b)は、変形例に係る調整用目盛8C及び8Dの設けられたスイングアーム4C及び4Dの一構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1の実施の形態〕
〔構成〕
以下、本発明の第1の実施の形態を説明する。
図1乃至
図9は、第1の実施の形態を示す図である。
図1は、第1の実施の形態に係るブレーキキャリパ1の一構成例を示す平面図であり、
図2は、第1の実施の形態に係るブレーキキャリパ1の斜視図である。また、
図3は、第1の実施の形態に係るブレーキキャリパ1の内部構成を示す斜視図であり、
図4は、
図3のA-A線断面図である。また、
図5は、ブレーキキャリパ1をロードバイク300に取り付けた一例を示す図であり、
図6は、
図5の部分拡大図である。また、
図7(a)~(c)は、目印81b~81cに基準ピン23を合わせたときのスイングアーム4の回動位置を示す図である。
【0018】
以下、
図1中に矢印で示した面方向に基づいて構成を説明する。また、平面方向を上方向、底面方向を下方向とする。
ブレーキキャリパ1は、
図1乃至
図7に示すように、キャリパボディ2と、スイングアーム4と、カムシャフト5と、ブレーキパッド6A及び6Bと、ワイヤ調整ネジ7と、調整用目盛8と、ピストン9と、ピストン調整ネジ10とを備える。
【0019】
なお、ブレーキキャリパ1は、例えば、ロードバイク300の前輪350を支持するフロントフォーク330に取り付けられる(
図5、
図6を参照)。また、後輪の場合は、リヤフォークに取り付けられるが同様の構成となるので説明を省略する。
キャリパボディ2は、ロードバイク300の前輪350のブレーキとしてフロントフォーク330に取り付けたときにディスクロータ200を挟んで前輪350とは反対側に位置する外ボディ21と、前輪350側に位置する内ボディ22とを備える。
【0020】
外ボディ21は、平面視で略半台形状を成し、その背面側の端面に開口部を有する中空箱状に構成されている。この端面の隅には内ボディ22と接合するための複数のネジ穴部が貫通して設けられている。外ボディ21の正面側の端面は、左右中央部が正面側に半円筒状に膨らんでおり、その膨らんだ部分には、図示省略するが、その上端面を貫通するシャフト挿通孔が設けられている。さらに、外ボディ21は、右側面の下端側から右方に突出して設けられた突出部26を有する。突出部26は、ブレーキキャリパ1を、ロードバイク300のフロントフォーク330又はリヤフォーク(図示略)に取り付けるための取付板27に連結されている(
図6を参照)。
【0021】
内ボディ22は、平面視で略矩形状を成し、その正面側の端面に外ボディ21の開口部を構成する枠部と同形状の枠部から構成された開口部を有する中空箱状に構成されている。この端面の隅には外ボディ21と接合するための、外ボディ21のネジ穴部と同軸に重なる複数のネジ穴部が設けられている。
【0022】
即ち、キャリパボディ2は、外ボディ21及び内ボディ22の開口部側の端面(枠部)同士を互いのネジ穴部を同軸に重ねた状態で当接させ、外側からネジ止めすることによって構成されている。
さらに、キャリパボディ2は、その上面及び下面のやや内ボディ22側で且つ左右中央よりもやや右寄りの位置に、これらの端面をそれぞれ矩形に切り抜いて形成された開口部24を有している。
【0023】
また、内ボディ22は、右側面の上端部から右方に突出して設けられたワイヤ調整ネジ7を取り付けるためのネジ取り付け部25を有する。ネジ取り付け部25は、右方に突出するアーム部25aと、アーム部25aの先端部から上方へと延出する取り付け部25bとから構成されている。取り付け部25bには、ワイヤ調整ネジ7を螺合可能なネジ穴が左右方向に貫通して設けられている。取り付け部25bには、ブレーキレバー等のブレーキ操作部の操作に応じて引き戻しされるブレーキワイヤ100の緩み等を調整するためのワイヤ調整ネジ7が螺合されている。
【0024】
なお、
図5に示す例では、ロードバイク300のドロップハンドル310の一方の端部(前進方向を向いた右手側の端部)に取り付けられたシフト/ブレーキレバー320(以下、単に「ブレーキレバー320」と称す)が前輪350のブレーキ操作部に該当する。即ち、ブレーキレバー320を手で握ることで前輪350に対するブレーキ操作が行われる。
【0025】
ここで、ブレーキワイヤ100は、アウターケーブル101と、アウターケーブル101の内側に挿通されたインナーワイヤ102とを備える。
ワイヤ調整ネジ7は、ブレーキワイヤ100のアウターケーブル101を固定する円筒状の固定部7aと、固定部7aと同心に連結されたネジ部7bとを備えている。固定部7a及びネジ部7bのそれぞれには、ブレーキワイヤ100のインナーワイヤ102を挿通するための貫通穴(図示略)が軸心部を貫通して設けられている。即ち、インナーワイヤ102を、固定部7a及びネジ部7bの貫通穴を通してキャリパボディ2側(左側面側)に引き出すことが可能となっている。
【0026】
カムシャフト5は、キャリパボディ2のシャフト挿通孔に挿通されて略全体がキャリパボディ2内に配置されている。具体的に、カムシャフト5は、上端部が軸受51を介してキャリパボディ2内に取り付けられ、下端部が軸受52を介してキャリパボディ2内に取り付けられている。このように、カムシャフト5は、軸受51及び52を介して回転自在に取り付けられている。
【0027】
カムシャフト5の軸受51と軸受52との間の一部は、その横断面が略半円形状に構成されている(
図4を参照)。加えて、カムシャフト5は、上端部がシャフト挿通孔から外ボディ21の上端面よりも上方に突出している。この突出部54には、中央部から上方に突出する突出部54よりも小径の円柱状のシャフト上端部53が設けられている。
【0028】
スイングアーム4は、平面視で角部がRの略二等辺三角形状に構成されている。スイングアーム4には、その二等辺が形成する頂点と残りの底辺との間の略中央部から底辺側に亘って平面視で略台形状に切り抜かれた開口部42が形成されている。さらに、底辺部の左端の角部には、ワイヤ調整ネジ7に取り付けられたブレーキワイヤ100のインナーワイヤ102を固定するワイヤ固定部41が上方に突出して設けられている。
【0029】
即ち、ブレーキレバー320にてブレーキ操作可能にブレーキワイヤ100が取り付けられた状態では、ワイヤ固定部41にインナーワイヤ102の先端側が固定された状態となる。
なおさらに、スイングアーム4の開口部42よりも頂点側の中央部にカムシャフト5のシャフト上端部53を挿通するための貫通穴であるシャフト支持孔(図示略)が穿設されている。加えて、スイングアーム4の開口部42よりも頂点側の部分には、シャフト支持穴を覆う略円筒状のシャフトキャップ部45が上方に突出して設けられている。
【0030】
なお、開口部42は、シャフトキャップ部45を設けることを考慮して、正面側の辺部がシャフトキャップ部45の外周面の曲面に合わせて背面側に山なりに突出して構成されている。
スイングアーム4は、シャフト支持孔を介してカムシャフト5のシャフト上端部53に固定されることでキャリパボディ2に取り付けられている。これにより、スイングアーム4は、頂点側の一部が突出部54の端面上に載置され、他の部分がキャリパボディ2の上端面から浮いた状態となる。
【0031】
そして、ブレーキレバー320の操作に応じてインナーワイヤ102が引き戻しされると、ワイヤ固定部41を介してブレーキワイヤ100と連結されているスイングアーム4が回動し、これに連動してカムシャフト5が回動する。また、スイングアーム4の回動とともにシャフトキャップ部45も回動する。
【0032】
ブレーキパッド6A及び6Bは、背面視及び正面視で略凸字状を成す板部61A及び61Bと、板部61A及び61Bの下側の部分である下板部61Aa及び61Baの正面側及び背面側にそれぞれ設けられたパッド部62A及び62Bとを備える。加えて、板部61A及び61Bの上側の部分である上板部61Ab及び61Bbには、ガイド軸(図示略)を挿通するための挿通穴がそれぞれ設けられている。
【0033】
ブレーキパッド6A及び6Bは、パッド部62A及び62Bのパッド面を、所定間隔を空けて対向させた姿勢で、且つキャリパボディ2の上端面側の開口部24内に板部61A及び61Bの上板部61Ab及び61Bbが位置する状態でキャリパボディ2内に配置されている。ブレーキキャリパ1をロードバイク300に取り付けた状態では、パッド部62A及び62Bの間に、ディスクロータ200が配置される。パッド部62A及び62Bのパッド面と、ディスクロータ200の側面との間にはクリアランス(パッドクリアランス)が設けられており、開口部42及び開口部24からは、パッドクリアランスが目視で確認できるようになっている。なお、ディスクロータ200は、前輪350とともに回動可能にハブ351のブレーキキャリパ1側の端部に固定されている(
図6を参照)。
【0034】
ピストン9は、略楕円筒形状を成し、その正面側の面がブレーキパッド6Aの下板部61Aaの背面側の面と当接する位置に配置されている。
ピストン9は、ブレーキレバー320が操作される(握られる)ことによって回動するカムシャフト5から伝達される力によって正面側へと前進する。ピストン9は、ブレーキパッド6Aの下板部61Aaの背面に当接して配置され、前進することによってブレーキパッド6Aをガイド軸に沿って前進させる。これにより、パッド部62Aがディスクロータ200の背面側の側面を押圧するとともにブレーキパッド6Bのパッド部62Bにディスクロータ200の正面側の側面を押し付ける。これによって、パッド部62A及び62Bがディスクロータ200を両側面側から挟み込んで摺接しブレーキがかかる。また、ブレーキレバー320を握る力によって押圧する力が変化し、ブレーキの効きが変化する。
【0035】
一方、ブレーキレバー320が握られた状態から握られない状態となる(解放される)ことで、ブレーキパッド6Aは、その内側に配置された不図示の板バネ(リターンスプリング)の弾性力によってガイド軸に沿ってピストン9とともに背面側へと後退する。これによって、ブレーキが解除される。
【0036】
ピストン調整ネジ10は、ピストン9に組み込まれてピストン9の進退方向の基準位置を調整するためのネジである。ピストン調整ネジ10の背面側の面は、スイングアーム4が基準回動位置のときに、カムシャフト5の断面半円形状を構成する平端面と対向し且つこの平坦面と当接する位置に配置されている。
【0037】
一方、調整用目盛8は、ブレーキレバー320の操作に応じてスイングアーム4、カムシャフト5及びピストン9を介してブレーキパッド6Aがディスクロータ200を押圧する力の伝達態様を変更する際の指標となる目印である。
調整用目盛8は、スイングアーム4とともに回動するシャフトキャップ部45の開口部42側を向く側の上端面に設けられ、円周方向に沿って右から順に放射状に且つ等間隔に配置された4つの矩形の目印81a、81b、81c及び81dを有する。
【0038】
また、キャリパボディ2の外ボディ21の開口部24の左端部から正面側に所定距離離れた位置には、円筒形状の基準ピン23が立設されている。
目印81aと基準ピン23との位置関係は、スイングアーム4の基準回転角度(例えば、これを0°とする)にて、目印81aと基準ピン23とが平面視で径方向に対向する位置関係となるように構成されている(
図1を参照)。同様に、目印81b、81c及び81dと基準ピン23との位置関係は、
図7(a)~(c)に示すように、スイングアーム4の回転角度が、基準回転角度に対してそれぞれ「15°」、「30°」、「45°」回動した角度位置となったときに平面視で径方向に対向する位置関係に構成されている。即ち、目印81a~81dは、スイングアーム4の「15°」間隔の回動角度を示す目印となっている。
【0039】
例えば、ブレーキレバー320を握っていない状態で、目印81a~81cのいずれか1つと基準ピン23とが平面視で径方向に対向した状態となるようにブレーキワイヤ100を取り付ける。これにより、スイングアーム4の初期回転角度を、「0°」、「15°」、「30°」のいずれかに設定することができる。
【0040】
なお、この初期回転角度の変更は、例えば、大まかにはブレーキワイヤ100を取り付ける際の長さや、ワイヤ固定部41へのインナーワイヤ102の固定位置などを調整することで行う。その後の微調整は、ワイヤ調整ネジ7やピストン調整ネジ10などによって行う。即ち、ブレーキワイヤ100の張り具合やパッドクリアランスを調整することで行う。
【0041】
ここで、
図8(a)~(c)は、スイングアーム4の初期回転角度「0°~30°」に対応するカムシャフト5の回動位置を示す図である。また、
図9は、スイングアームの初期回転角度と増力率との関係を示すグラフである。
図9のグラフにおいて、横軸はスイングアームの回転角度[°]であり、縦軸は増力率[倍]である。
図1に示す基準位置「0°」のときのカムシャフト5の回動位置は、
図8(a)に示すように、カムシャフト5の平坦面がピストン調整ネジ10の背面側の面と平行に当接した状態となっている。そして、「15°」のときに
図8(b)に示す回動位置となり、ピストン9を少し押した状態となる。また、「30°」のときに
図8(c)に示す回動位置となり、ピストン9を「15°」のときよりも押した状態となる。即ち、初期回転角度が大きいほどカムシャフト5の初期回転角度が大きくなりピストン9がより前進した状態となる。
【0042】
以下、スイングアーム4の初期回転角度に対する、ブレーキパッド6A及び6Bのディスクロータの押圧力の増加量を「増力率」と称する。
図9のグラフに示すように、増力率は、スイングアーム4の初期回転角度が大きいほど大きくなる。即ち、初期回転角度を変更することで、増力率を変更することができ、これによりブレーキレバー320を握ったときの力の伝達態様を変更することができる。即ち、制動フィーリングを変更することができる。
【0043】
次に、具体例を挙げて説明する。
(設定例1)
設定例1では、スイングアーム4の初期回転角度が「0°」の位置を、ブレーキレバー320を握っていない位置(初期回動位置)とし、そこから15°の回動位置でパッド部62A及び62Bがディスクロータ200に当接するように設定する。
【0044】
この設定は、ブレーキレバー320を握っていない状態で基準ピン23が目印81aと対向する位置となり、ブレーキレバー320を握ってパッド部62A及び62Bがディスクロータ200に当接するときに基準ピン23が目印81bと対向する位置となるように、パッド部62A及び62Bの基準位置、ブレーキワイヤ100の張り具合等を調整することで行う。
【0045】
この設定とした場合、増力率は、
図9のグラフの「0°」に対応する値となる。即ち、増力率を比較的低い値に設定することができる。この場合、ブレーキレバー320を握ると比較的弱い制動力でブレーキがかかる。
(設定例2)
設定例2では、設定例1と同様の設定方法で、初期回動位置を「15°」の位置(基準ピン23が目印81bと対向する位置)として、「30°」の位置(基準ピン23が目印81cと対向する位置)が当接位置となるように設定する。この設定とした場合、増力率は、
図9のグラフの「15°」に対応する値となる。即ち、設定例1よりも大きい増力率に設定することができる。従って、設定例1と同じブレーキストロークでより強い制動力を発生することができる。
【0046】
(設定例3)
設定例3では、設定例1及び2と同様の設定方法で、初期回動位置を「30°」の位置(基準ピン23が目印81cと対向する位置)として、「45°」よりも手前の位置(基準ピン23が目印81dと対向する位置より手前の位置)が当接位置となるように設定する。この設定とした場合、増力率は、
図9のグラフの「30°」に対応する値となる。即ち、設定例2よりも大きい増力率に設定することができる。従って、設定例2より小さいブレーキストロークでより強い制動力を発生することができる。
【0047】
〔第1の実施の形態の効果〕
次に、第1の実施の形態の効果を説明する。
第1の実施の形態では、ブレーキキャリパ1を、ブレーキレバー320に接続されたブレーキワイヤ100と連結され、ブレーキレバー320の操作に応じて引き戻しされるブレーキワイヤ100から伝達される力によって回動するスイングアーム4と、一対のブレーキパッド6A及び6Bと、スイングアーム4から伝達される力によって、ブレーキパッド6Aを、これらの間に配置されるディスクロータ200の側面を押圧する位置と側面から離間する位置とに進退させる板バネ、カムシャフト5及びピストン9と、スイングアーム4からカムシャフト5、ピストン9及びブレーキパッド6A及び6Bを介してディスクロータ200へと伝達される力の伝達態様(第1の実施の形態では増力率)を変更可能なワイヤ固定部41、ワイヤ調整ネジ7及びピストン調整ネジ10と、スイングアーム4のシャフトキャップ部45に設けられた、増力率を変更する際の指標となる目印81a~81dを有する調整用目盛8とを備える構成とした。
【0048】
これにより、目印81a~81dを指標として、パッド部62A及び62Bの基準位置、ブレーキワイヤ100の張り具合等を調整することで、力の伝達態様(増力率)を変更することができる。その結果、簡易に制動フィーリングの変更や調整を行うことができる。
【0049】
また、第1の実施の形態では、さらに、スイングアーム4の回動角度に対応する位置に目印81a~81dを設ける構成とした。これにより、調整用目盛8を、任意の増力率へと変更するためにスイングアーム4の初期回動角度を設定する際の指標とすることができる。その結果、簡易にスイングアーム4の初期回動位置やブレーキストロークを任意に位置やストロークに変更することができる。
【0050】
〔対応関係〕
第1の実施の形態において、スイングアーム4は、発明1乃至4の回動部材に対応し、板バネ、カムシャフト5及びピストン9は、発明1及び2のパッド駆動部に対応し、ワイヤ固定部41、ワイヤ調整ネジ7及びピストン調整ネジ10は、発明1、3及び4の伝達態様変更手段に対応している。
【0051】
また、第1の実施の形態において、増力率が第1物理量に対応し、スイングアーム4の回転角度が第2物理量に対応している。
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
図10及び
図11は、第2の実施の形態を示す図である。以下、上記第1の実施の形態と異なる部分についてのみ詳細に説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0052】
〔構成〕
第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態において調整用目盛8を構成する目印81a~81dを等間隔に設けていたのに対して、これらの目印を増力率の変化量が等間隔となる間隔(非等間隔)に設けた点が異なる。
ここで、
図10は、第2の実施の形態に係るブレーキキャリパ1Aの一構成例を示す平面図である。また、
図11は、第2の実施の形態に係る調整用目盛8Aと増力率の増加量との関係を説明するための図である。
【0053】
第2の実施の形態に係るブレーキキャリパ1Aは、
図10に示すように、上記第1の実施の形態のブレーキキャリパ1において、調整用目盛8に代えて、調整用目盛8Aを備える構成となっている。
調整用目盛8Aは、スイングアーム4とともに回動するシャフトキャップ部45の開口部42側を向く側の上端面に設けられ、円周方向に沿って右から順に放射状に且つ非等間隔に配置された4つの矩形の目印82a、82b、82c及び82dを有する。
【0054】
目印82a~82dは、
図11の上図に示すように、基準角度「0°」に対応する目印82aに対して、目印82bが回転角度「α°」、目印82cが回転角度「β°(α<β)」、目印82dが回転角度「γ°(β<γ)」の関係となっており、且つ「α>(βーα)>(γーβ)」の関係となっている。一例を挙げると、目印82a~82dに対応する回転角度は、「α=20°」、「β=35°」、「γ=45°」となり、スイングアーム4の回転角度(初期回転角度位置)の間隔が非等間隔となるように設けられている。
【0055】
具体的に、第2の実施の形態では、
図11の下図に示すように、増力率の変化量が等間隔(リニア)となる回転角度の間隔でそれぞれ目印82a~82dを設ける構成としている。即ち、目印82a~82dに対応するスイングアーム4の初期回転角度位置と増力率の増加量とが、
図11に示す関係となるように、目印82a~82dを、非等間隔(非リニア)に設けている。
【0056】
〔第2の実施の形態の効果〕
第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態の効果に加えて以下の効果を奏する。
第2の実施の形態では、目印82a~82dを、増幅率の変化量が等間隔となる回転角度の変化量の間隔(非等間隔)に設けた。これにより、増力率の変化量を把握しながら力の伝達態様を変更することができるので、現在の制動フィーリングを、好みの制動フィーリングにより簡易に変更することができる。
【0057】
〔対応関係〕
第2の実施の形態において、スイングアーム4は、発明1乃至4の回動部材に対応し、板バネ、カムシャフト5及びピストン9は、発明1及び2のパッド駆動部に対応し、ワイヤ固定部41、ワイヤ調整ネジ7及びピストン調整ネジ10は、発明1、3及び4の伝達態様変更手段に対応している。
【0058】
また、第2の実施の形態において、増力率が第1物理量に対応し、スイングアーム4の回転角度が第2物理量に対応している。
〔変形例〕
なお、上記第1及び第2の実施の形態において、調整用目盛8及び8Aをスイングアーム4のシャフトキャップ部45に設ける構成とし、目盛位置を指す指針として基準ピン23をキャリパボディ2に設ける構成としたが、この構成に限らず、例えば、以下の構成としてもよい。
【0059】
ここで、
図12は、本変形例に係るブレーキキャリパ1Bの一構成例を示す平面図であり、
図13(a)~(c)は、目印83b~83dに指針部45iを合わせたときのスイングアーム4Bの回動位置を示す図である。
本変形例に係るブレーキキャリパ1Bは、
図12に示すように、上記実施の形態のブレーキキャリパ1において、スイングアーム4に代えてスイングアーム4Bを備え、基準ピン23に代えて指針部45iを備える構成となっている。加えて、ブレーキキャリパ1Bは、上記実施の形態の調整用目盛8に代えて、外ボディ21の平面側の端面に設けられた、調整用目盛8Bを備える構成となっている。
【0060】
指針部45iは、平面視三角形状を成し、シャフトキャップ部45の開口部42の山なり部分と重なる部分の左端に、開口部42側に頂点が向く姿勢で突出して設けられている。
調整用目盛8Bは、シャフトキャップ部45とともに回動する指針部45iの先端部と重なる位置に設けられた、指針部45iの軌道に沿って左から順に、放射状に且つ等間隔に配置された4つの矩形の目印83a、83b、83c及び83dを有する。
【0061】
目印82aと指針部45iとの位置関係は、スイングアーム4の基準回転角度「0°」にて、目印82aに指針部45iが重なる位置関係となるように構成されている(
図12を参照)。同様に、目印83b、83c及び83dと指針部45iとの位置関係は、
図13(a)~(c)に示すように、スイングアーム4の回転角度が、基準回転角度に対してそれぞれ「15°」、「30°」、「45°」回動した角度となったときに重なる位置関係に構成されている。即ち、目印83a~83dは、スイングアーム4の「15°」間隔の回転角度を示す目印となっている。
【0062】
例えば、ブレーキレバー320を握っていない状態で、目印83a~83cのいずれか1つに指針部45iが重なる状態となるようにブレーキワイヤ100を取り付ける。これにより、スイングアーム4の初期回転角度を、「0°」、「15°」、「30°」のいずれかに設定することができる。
【0063】
また、上記第1の実施の形態及びその変形例において、スイングアーム4の回転角度の「15°」間隔で目印81a~81d又は目印83a~83dを設ける構成としたが、この構成に限らない。例えば、他の角度間隔で設けてもよいし、目印の数も4つに限らず3つ以下又は5つ以上設ける構成としてもよい。例えば、2種類の力の伝達態様(例えば増力率なら大きい(HIGH)と小さい(LOW))に対応する2つの回転角度位置(例えば基準位置と別の位置)への切り替えができるように、少なくとも1つの目印を設ける構成としてもよい。
【0064】
また、上記第1及び第2の実施の形態並びにその変形例において、目盛を示す目印を設ける構成としたが、この構成に限らない。例えば、取り付け位置によって伝達態様が変わる部品について、その取り付け位置を示すネジ穴や取付穴などを目印として設けるなど他の構成としてもよい。
【0065】
また、上記第1及び第2の実施の形態並びにその変形例において、指標となる目印のみを設ける構成としたが、この構成に限らず、例えば、スイングアーム4の回転角度に対応する目印の傍に「大」「中」「小」「H」「L」などの増力率の大きさを示す文字などを表示する構成としてもよい。
【0066】
また、上記第1及び第2の実施の形態並びにその変形例において、スイングアーム4の初期回転角度を変更することで増力率を変更し、制動フィーリングを変更する構成としたが、この構成に限らない。例えば、スイングアーム4の初期回転角度に代えて又は加えて、スイングアーム4の回転半径を変更できる構成とし、この回転半径を変更する際の指標となる調整用目盛を設ける構成としてもよい。
【0067】
以下、具体例を挙げて説明する。
図14(a)及び(b)は、変形例に係る調整用目盛8C及び8Dの設けられたスイングアーム4C及び4Dの一構成例を示す斜視図である。
まず、スイングアーム4Cについて説明する。
スイングアーム4Cは、
図14(a)に示すように、平面視卵形状の厚板から構成されたアーム部40Cと、アーム部40Cの長手方向の一端寄りの位置を上下に貫通して設けられた長孔形状のシャフト支持孔43Cとを備える。また、アーム部40Cのシャフト支持孔43Cとは反対側の端部には、インナーワイヤ102を固定するためのワイヤ固定部41Cが設けられている。スイングアーム4Cは、シャフト支持孔43C内において、カムシャフト5への固定位置を変更可能に構成されている。即ち、カムシャフト5に対して、スイングアーム4Cを長手方向に沿って動かすことで、シャフト支持孔43C内におけるカムシャフト5の位置を変更することができ、また、任意の位置又は所定位置でカムシャフト5に固定可能に構成されている。これにより、固定位置を変更することによって、スイングアーム4Cの回動半径を変更することができる。
【0068】
さらに、アーム部40Cには、シャフト支持孔43Cの長手側の一方の側辺の近傍に、調整用目盛8Cが設けられている。調整用目盛8Cは、シャフト支持孔43Cの長手側の一方の側辺に沿って等間隔に設けられた、平面視三角形状の溝から構成される目印84a、84b、84c及び84dを備えている。即ち、目印84a~84dは、スイングアーム4Cの所定間隔の回転半径を示す目印となっている。具体的に、目印84aの位置で固定することで回動半径が最大となり、目印84dの位置で固定することで回動半径が最小となる。
【0069】
上記構成のスイングアーム4Cを備えるブレーキキャリパによれば、目印84a~84dを指標として、スイングアーム4Cの回動半径を変更することができる。回動半径が大きいほど、テコの原理によってより小さな力(ブレーキアームを握る力)で大きな制動力を発生することができる。これにより、スイングアーム4Cの回動半径を調整することで簡易に制動フィーリングを変更することができる。
【0070】
次に、スイングアーム4Dについて説明する。
スイングアーム4Dは、
図14(b)に示すように、平面視で略矩形状の直方体から構成されたアーム部40Dと、アーム部40Dのシャフト支持孔とは反対側の端部寄りに設けられたワイヤ固定部41Dとを備える。ワイヤ固定部41Dのワイヤ固定板の下側のアーム部40の平面側の端面上には、調整用目盛8Dが設けられている。調整用目盛8Dは、アーム部40の平面側の端面上に長手方向に沿って等間隔に設けられた、断面半円状の長溝からなる目印85a、85b、85c及び85dを備えている。即ち、インナーワイヤ102の固定位置を、目印85a、85b、85c及び85dのいずれか1つの位置に変更可能に構成されている。インナーワイヤ102の固定位置によって、スイングアーム4Dの回動半径が変化し、目印85aの溝位置で固定することで回動半径が最大となり、目印85dの溝位置で固定することで回動半径が最小となる。即ち、目印85a~85dは、スイングアーム4Dの所定間隔の回転半径を示す目印となっている。
【0071】
上記構成のスイングアーム4Dを備えるブレーキキャリパによれば、目印85a~85dを指標として、スイングアーム4Dの回動半径を変更することができ、スイングアーム4Cと同等の作用効果が得られる。
また、上記第1及び第2の実施の形態並びにその変形例において、スイングアーム4の回転角度について、等間隔又は増力率の変化量が等間隔となる非等間隔で4つの目印を設ける構成としたが、この構成に限らない。例えば、体感で解る程度に増力率が変化する変化点に対応する回転角度位置ごとに目印を設ける構成としてもよい。
【0072】
また、上記第1及び第2の実施の形態並びにその変形例において、増力率又は回動半径を変更する際の指標となる目印を設け、視覚によって各指標位置を判断する構成としたが、この構成に限らず、例えば、音や感触等の視覚以外で判断できる構成としてもよい。例えば、回転角度又は回動半径を変更したときに指標となる各位置で「カチッ」という音が鳴るようにしたり、その際の感触が手に伝わるようにしたりすることで指標となる位置を通知する。
【0073】
また、上記第1及び第2の実施の形態並びにその変形例において、機械式のディスクブレーキに採用されるブレーキキャリパを例に挙げて説明したが、この構成に限らず、本発明は、機械式と油圧式とが併用されたハイブリッド式のディスクブレーキに採用されるブレーキキャリパにも採用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1,1A,1B…ブレーキキャリパ、 2…キャリパボディ、 4,4A,4B…スイングアーム、 5…カムシャフト、 6A,6B…ブレーキパッド、 7…ワイヤ調整ネジ、 8,8A,8B,8C,8D…調整用目盛、 9…ピストン、 10…ピストン調整ネジ、 21…外ボディ、 22…内ボディ、 23…基準ピン、 24,42…開口部、 25…ネジ取り付け部、 25a,40C,40D…アーム部、 25b…取り付け部、 26,54…突出部、 27…取付板、 41,41C,41D…ワイヤ固定部、 45…シャフトキャップ部、 45i…指針部、 51,52…軸受、 53…上端部、 61A,61B…板部、 61Aa,61Ba…下板部、 61Ab,61Bb…上板部、 62A,62B…パッド部、 81a~81d,82a~82d…目印、 100…ブレーキワイヤ、 101…アウターケーブル、 102…インナーワイヤ、 200…ディスクロータ、 300…ロードバイク、 310…ドロップハンドル、 320…シフト/ブレーキレバー(ブレーキレバー)、 330…フロントフォーク、 350…前輪、 351…ハブ