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  • 特許-廃棄鶏の処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】廃棄鶏の処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/10 20220101AFI20240902BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B09B3/10
B09B5/00 E ZAB
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024034144
(22)【出願日】2024-03-06
【審査請求日】2024-03-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511123429
【氏名又は名称】テクニカ合同株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 好太
(72)【発明者】
【氏名】井ノ本 佑介
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-033201(JP,A)
【文献】特開2012-024427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/10
B09B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内の底部に高吸水性ポリマーを配置する第一配置工程と、
前記処理容器内に廃棄鶏を投入する投入工程と
前記処理容器内の前記廃棄鶏の上にさらに高吸水性ポリマーを配置する第二配置工程と
を包含する廃棄鶏の処理方法。
【請求項2】
処理容器内の底部に高吸水性ポリマーを配置する第一配置工程と、
前記処理容器内に廃棄鶏と高吸水性ポリマーとを同時に投入する同時投入工程と
を包含する廃棄鶏の処理方法。
【請求項3】
前記処理容器内の前記廃棄鶏の上にさらに高吸水性ポリマーを配置する第二配置工程を包含する請求項2に記載の廃棄鶏の処理方法。
【請求項4】
前記第一配置工程における高吸水性ポリマーの使用量が前記第二配置工程における高吸水性ポリマーの使用量より多くなるように、各配置工程における高吸水性ポリマーの使用量が設定される請求項1又は3に記載の廃棄鶏の処理方法。
【請求項5】
前記高吸水性ポリマーの総使用量は、前記廃棄鶏の総重量に対して2重量%以上である請求項1~3の何れか一項に記載の廃棄鶏の処理方法。
【請求項6】
前記高吸水性ポリマーの吸水倍率は、純水を吸収する場合において、自重の100~1000倍である請求項1~3の何れか一項に記載の廃棄鶏の処理方法。
【請求項7】
前記廃棄鶏は、鳥インフルエンザの発生に伴って殺処分されたものである請求項1~3の何れか一項に記載の廃棄鶏の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺処分等により廃棄されることになった鶏の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高病原性鳥インフルエンザ(以下、単に「鳥インフルエンザ」とする。)が発生すると、都道府県知事から殺処分命令が発せられ、養鶏場において鶏の殺処分が実行されることになる。殺処分された鶏は、石灰で滅菌した後、フレコンバッグに詰められ、土中に埋設される。
【0003】
ところで、鶏が殺処分されると死後硬直が起こる。このような死後硬直した鶏をフレコンバッグに詰めると、硬直した鶏の死体がフレコンバッグを突き破ってしまうという問題があった。フレコンバッグの破損の問題(死後硬直した鶏が原因のものに限らない)は、潜在的には認識されていたものの、特に具体的な対策は採られていなかったのが現状である。しかしながら、鶏の死体を詰めたフレコンバッグが破損すると、その破損箇所から鶏の体液が漏出する可能性がある。特に、フレコンバッグを二段積みして運搬する場合などフレコンバッグに圧力がかかるような状況では、破損箇所からの体液の漏出の危険性が高まる。また、鶏の体液は感染性有機廃棄物であるため、鶏の体液が外部環境に漏出すると、二次汚染が広がることも危惧される。
【0004】
体液のような液体の感染性有機廃棄物を処理する方法としては、例えば、特許文献1のように処理対象におがくず等を混合して水分を調整する方法が知られている。特許文献1の感染性有機廃棄物の処理方法は、おがくず等を混合した感染性有機廃棄物の水分含有量を30~60%に調整し、これに微生物を混ぜて発酵させ、その発酵熱により感染性有機廃棄物を殺菌するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-153843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の感染性有機廃棄物の処理方法は、医療現場で発生した血液(医学的な理由から使用できない献血された血液)や、血液が付着した医療廃棄物を処理することを想定したものであり、養鶏場のような医療現場以外での使用は全く想定されていない。また、養鶏場において殺処分された鶏から滲み出た体液はヒトの血液とは成分が異なるため、これを特許文献1の感染性有機廃棄物の処理方法によって処理できるかは不明である。仮に、特許文献1の感染性有機廃棄物の処理方法で使用しているおがくずを鶏の死体とともにフレコンバッグに詰めたとしても、おがくずは、吸水性はあるものの保水性に乏しいため、鶏の体液を吸収できたとしても圧力がかかると容易に放出してしまうことが予想される。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、殺処分等により廃棄されることになった鶏(死後硬直した鶏)を安全且つ適切に処理できる廃棄鶏の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明にかかる廃棄鶏の処理方法の特徴構成は、
処理容器内の底部に高吸水性ポリマーを配置する第一配置工程と、
前記処理容器内に廃棄鶏を投入する投入工程と
を包含することにある。
【0009】
本構成の廃棄鶏の処理方法によれば、処理容器の底部に高吸水性ポリマーが配置されるので、処理容器に廃棄鶏を投入した後、当該廃棄鶏から体液が滲み出した場合には、処理容器の底部に配置された高吸水性ポリマーが体液を吸収することができる。そして、鶏の死後硬直によって万が一処理容器が破れたとしても、高吸水性ポリマーは吸収した鶏の体液をそのまま保持できるので、体液の処理容器外への漏出を防止することができる。また、高吸水性ポリマーは保水性に優れているため、処理容器を二段積みして運搬する場合等の圧力がかかる場合であっても、体液が処理容器の外部に漏出する虞はない。
【0010】
本発明にかかる廃棄鶏の処理方法において、
前記処理容器内の前記廃棄鶏の上にさらに高吸水性ポリマーを配置する第二配置工程を包含することが好ましい。
【0011】
本構成の廃棄鶏の処理方法によれば、処理容器の底部と上部との二箇所に高吸水性ポリマーが配置されることになるので、処理容器内で廃棄鶏は高吸水性ポリマーによって上下から挟まれた状態になる。したがって、廃棄鶏から滲み出した体液は、上下に位置する高吸水性ポリマーによって確実に吸収及び保持され、体液の処理容器外への漏出を確実に防止することができる。
【0012】
上記課題を解決するための本発明にかかる廃棄鶏の処理方法の他の特徴構成は、
処理容器内の底部に高吸水性ポリマーを配置する第一配置工程と、
前記処理容器内に廃棄鶏と高吸水性ポリマーとを同時に投入する同時投入工程と
を包含することにある。
【0013】
本構成の廃棄鶏の処理方法によれば、処理容器の底部に高吸水性ポリマーが配置され、さらに、処理容器に廃棄鶏を投入する際に廃棄鶏は高吸水性ポリマーと同時に投入されるので、廃棄鶏に高吸水性ポリマーが満遍なく付着し、当該廃棄鶏から体液が滲み出した場合には、廃棄鶏に付着した高吸水性ポリマー及び処理容器の底部に配置された吸水性ポリマーによって体液を確実に吸収することができる。また、鶏の死後硬直によって万が一処理容器が破れたとしても、高吸水性ポリマーは吸収した鶏の体液をそのまま保持できるので、体液の処理容器外への漏出を防止することができる。
【0014】
本発明にかかる廃棄鶏の処理方法において、
前記処理容器内の前記廃棄鶏の上にさらに高吸水性ポリマーを配置する第二配置工程を包含することが好ましい。
【0015】
本構成の廃棄鶏の処理方法によれば、処理容器の底部と上部との二箇所に高吸水性ポリマーが配置されることになるので、処理容器内で廃棄鶏には高吸水性ポリマーが十分に付着するうえ、高吸水性ポリマーによって上下から挟まれた状態になる。したがって、廃棄鶏から滲み出した体液は、廃棄鶏に付着した高吸水性ポリマー及び上下に位置する高吸水性ポリマーによってより確実に吸収及び保持され、体液の処理容器外への漏出を確実に防止することができる。
【0016】
本発明にかかる廃棄鶏の処理方法において、
前記第一配置工程における高吸水性ポリマーの使用量が前記第二配置工程における高吸水性ポリマーの使用量より多くなるように、各配置工程における高吸水性ポリマーの使用量が設定されることが好ましい。
【0017】
本構成の廃棄鶏の処理方法によれば、第一配置工程における高吸水性ポリマーの使用量(すなわち、底部に配置される高吸水性ポリマーの量)が第二配置工程における高吸水性ポリマーの使用量(すなわち、上部に配置される高吸水性ポリマーの量)より多くされているので、廃棄鶏から滲み出す体液の量が多くなっても、処理容器の底部で確実に体液を吸収及び保持することができる。
【0018】
本発明にかかる廃棄鶏の処理方法において、
前記高吸水性ポリマーの総使用量は、前記廃棄鶏の総重量に対して2重量%以上であることが好ましい。
【0019】
本構成の廃棄鶏の処理方法によれば、高吸水性ポリマーの総使用量を廃棄鶏の総重量に対して2重量%以上とすることで、廃棄鶏から滲み出した体液を確実に吸収及び保持することができる。
【0020】
本発明にかかる廃棄鶏の処理方法において、
前記高吸水性ポリマーの吸水倍率は、純水を吸収する場合において、自重の100~1000倍であることが好ましい。
【0021】
本構成の廃棄鶏の処理方法によれば、高吸水性ポリマーの吸水倍率が、純水を吸収する場合において、自重の100~1000倍であることにより、廃棄鶏から滲み出た体液を確実に吸収しつつ、外部の水分が処理容器内に侵入した場合でも当該水分の吸収によって過剰に膨潤することがないため、処理容器の破損が防止され、取り扱い易いものとなる。
【0022】
本発明にかかる廃棄鶏の処理方法において、
前記廃棄鶏は、鳥インフルエンザの発生に伴って殺処分されたものであることが好ましい。
【0023】
本構成の廃棄鶏の処理方法によれば、特に鳥インフルエンザの発生に伴って殺処分された鶏が死後硬直によって処理容器を破損させた場合における当該処理容器からの体液の漏出の問題について好適に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の各実施形態による廃棄鶏の処理方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の廃棄鶏の処理方法の実施形態について説明する。ただし、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0026】
本発明者らは、鶏の体液の処理方法について種々検討したところ、土木工事における泥水処理に使用される高吸水性ポリマー(SAP)が様々な性状の水を吸収できることに着目し、このような高吸水性ポリマーであれば、鶏の体液を吸収及び保持できるのではないかと考えた。そして、詳細については後述の実施例で説明するが、実際に高吸水性ポリマーを用いて鶏の体液を模した擬似体液の吸収試験及び保持試験(漏出試験)を実施し、高吸水性ポリマーには鶏の体液を吸収及び保持し得る性質があることを確認した。そして、本発明者らは、この高吸水性ポリマーの性質を利用することにより、鶏を安全且つ適切に処理し得ることを知見し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の廃棄鶏の処理方法は、廃棄されることになった鶏を高吸水性ポリマーで処理するものであり、特に、鳥インフルエンザの発生に伴って殺処分された鶏を廃棄処理するためのものである。
【0027】
<高吸水性ポリマー>
本発明で用いる高吸水性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリメタクリル酸系ポリマー、ポリ酢酸ビニル系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、カルボキシメチルセルロース系ポリマー等が挙げられる。これらのうち、好ましい高吸水性ポリマーは、ポリアクリル酸系ポリマーとして代表的なポリアクリル酸ナトリウムである。
【0028】
前記高吸水性ポリマーの吸水倍率は、純水を吸収する場合において、自重の100~1000倍であることが好ましく、200~600倍であることがより好ましい。高吸水性ポリマーの吸水倍率が上記の範囲の下限値以上であれば、廃棄鶏から滲み出た体液を確実に吸収することができる。また、高吸水性ポリマーの吸水倍率が上記の範囲の上限値以下であれば、例えば、廃棄鶏と高吸水性ポリマーとを詰めたフレコンバッグを土中に埋設したとき、雨水等の外部の水分がフレコンバッグ内に侵入したとしても、高吸水性ポリマーが吸水によって過剰に膨潤することがないため、フレコンバッグの破損を防止できるとともに、取り扱い易いものとなる。
【0029】
高吸水性ポリマーの分子量は、重量平均分子量(Mw)として、3.0×10~1.0×10が好ましい。高吸水性ポリマーの分子量が上記の範囲にあれば、廃棄鶏から滲み出た体液を確実に吸収しつつ、吸収によって過剰に膨潤することがないため、取り扱い易いものとなる。なお、高吸水性ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いた測定により、ポリスチレン換算として求めることができる。
【0030】
高吸水性ポリマーの総使用量は、廃棄鶏の総重量に対して2重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましい。高吸水性ポリマーの総使用量が廃棄鶏の総重量に対して2重量%以上であれば、廃棄鶏から滲み出した体液を確実に吸収及び保持することができる。
【0031】
<廃棄鶏の処理方法>
本発明の廃棄鶏の処理方法における基本的な原理は、処理容器内において廃棄鶏に接触させた高吸水性ポリマーが廃棄鶏から滲み出た体液を吸収し、保持するというものである。処理容器としては、代表的にはフレキシブルコンテナバッグ(以降「フレコンバッグ」と略称する。)が挙げられる。一般的な円筒形のフレコンバッグのサイズは、直径1100mm、高さ1100mm、容量1000Lである。
【0032】
以下、本発明の廃棄鶏の処理方法にかかる実施形態について、図を参照しながら説明する。図1は、各実施形態による廃棄鶏の処理方法の説明図である。
【0033】
〔第一実施形態〕
図1(a)は、第一実施形態による廃棄鶏の処理方法の説明図である。第一実施形態では、初めに処理容器であるフレコンバッグ1内の底部(下部)に高吸水性ポリマー2を配置する(第一配置工程)。第一配置工程は、フレコンバッグ1内に高吸水性ポリマー2を投入することにより行われる。次いでフレコンバッグ1内に廃棄鶏3を投入する(投入工程)。投入工程は、廃棄鶏3がフレコンバッグ2の容量の50~90%に達するまで行われるが、廃棄鶏3の投入作業は一度に行ってもよいし数回に分けて行ってもよい。
【0034】
第一実施形態によれば、フレコンバッグ1の底部に高吸水性ポリマー2が配置されるので、フレコンバッグ1に廃棄鶏3を投入する投入工程を実施した後、当該廃棄鶏3から体液が滲み出した場合には、フレコンバッグ1の底部に配置された高吸水性ポリマー2が体液を吸収することができる。そして、鶏の死後硬直によって万が一フレコンバッグ1が破れたとしても、高吸水性ポリマー2は吸収した鶏の体液をそのまま保持できるので、体液のフレコンバッグ1外への漏出を防止することができる。また、高吸水性ポリマー2は保水性に優れているため、フレコンバッグ1を二段積みして運搬する場合等の圧力がかかる場合であっても、体液がフレコンバッグ1の外部に漏出する虞はない。
【0035】
〔第二実施形態〕
図1(b)は、第二実施形態による廃棄鶏の処理方法の説明図である。第二実施形態は、第一実施形態で説明した第一配置工程及び投入工程に加えて、フレコンバッグ1内の廃棄鶏の上(上部)にさらに高吸水性ポリマー2を配置することが行われる(第二配置工程)。第二配置工程は、廃棄鶏3の上に高吸水性ポリマー2を満遍なく撒くことにより行われることが好ましい。
【0036】
第二実施形態によれば、フレコンバッグ1の底部と上部との二箇所に高吸水性ポリマー2が配置されることになるので、フレコンバッグ1内で廃棄鶏3は高吸水性ポリマー2によって上下から挟まれた状態になる。したがって、廃棄鶏3から滲み出した体液は、上下に位置する高吸水性ポリマー2によって確実に吸収及び保持され、体液のフレコンバッグ1外への漏出を確実に防止することができる。
【0037】
第二実施形態においては、第一配置工程における高吸水性ポリマー2の使用量(すなわち、底部に配置される高吸水性ポリマー2の量)が第二配置工程における高吸水性ポリマー2の使用量(すなわち、上部に配置される高吸水性ポリマー2の量)より多くなるように、各配置工程における高吸水性ポリマー2の使用量が設定されることが好ましい。このように高吸水性ポリマー2の使用量が設定されることにより、廃棄鶏3から滲み出す体液の量が多くなっても、フレコンバッグ1の底部で確実に体液を吸収及び保持することができる。
【0038】
〔第三実施形態〕
図1(c)は、第三実施形態による廃棄鶏の処理方法の説明図である。第三実施形態では、初めにフレコンバッグ1内の底部(下部)に高吸水性ポリマー2を配置する(第一配置工程)。第一配置工程は、フレコンバッグ1内に高吸水性ポリマー2を投入することにより行われる。次いでフレコンバッグ1内に廃棄鶏3と高吸水性ポリマー2とを同時に投入する(同時投入工程)。ここで、「同時に」投入するとは、廃棄鶏3と高吸水性ポリマー2とを全く同じタイミングでフレコンバッグ1に投入するケースに限られず、例えば、廃棄鶏3と高吸水性ポリマー2とを交互にフレコンバッグ1に投入するケースや、廃棄鶏3に高吸水性ポリマー2を塗した状態でフレコンバッグ1に投入するケースなど、同時投入工程を行う期間を通して廃棄鶏3と高吸水性ポリマー2とがフレコンバッグ1に投入されていれば、同時に投入したものとすることができる。同時投入工程は、廃棄鶏3がフレコンバッグ1の容量の50~90%に達するまで行われるが、廃棄鶏3の投入作業は一度に行ってもよいし数回に分けて行ってもよい。
【0039】
第三実施形態によれば、フレコンバッグ1の底部に高吸水性ポリマー2が配置され、さらに、フレコンバッグ1に廃棄鶏3を投入する際に廃棄鶏3は高吸水性ポリマー2と同時に投入されるので、廃棄鶏3の全体に高吸水性ポリマー2が満遍なく付着し、当該廃棄鶏3から体液が滲み出した場合には、廃棄鶏3に付着した高吸水性ポリマー2及びフレコンバッグ1の底部に配置された高吸水性ポリマー2によって体液を確実に吸収することができる。また、鶏の死後硬直によって万が一フレコンバッグ1が破れたとしても、高吸水性ポリマー2は吸収した鶏の体液をそのまま保持できるので、体液のフレコンバッグ1外への漏出を防止することができる。
【0040】
〔第四実施形態〕
図1(d)は、第四実施形態による廃棄鶏の処理方法の説明図である。第四実施形態は、第三実施形態で説明した第一配置工程及び同時投入工程に加えて、フレコンバッグ1内の廃棄鶏3の上(上部)にさらに高吸水性ポリマー2を配置することが行われる(第二配置工程)。第二配置工程は、廃棄鶏3の上に高吸水性ポリマー2を満遍なく撒くことにより行われることが好ましい。
【0041】
第四実施形態によれば、フレコンバッグ1の底部と上部との二箇所に高吸水性ポリマー2が配置されることになるので、フレコンバッグ1内で廃棄鶏3には高吸水性ポリマー2が十分に付着するうえ、高吸水性ポリマー2によって上下から挟まれた状態になる。したがって、廃棄鶏3から滲み出した体液は、廃棄鶏3の全体に付着した高吸水性ポリマー2及び上下に位置する高吸水性ポリマー2によってより確実に吸収及び保持され、体液のフレコンバッグ1外への漏出を確実に防止することができる。
【0042】
第四実施形態においては、第一配置工程における高吸水性ポリマー2の使用量(すなわち、底部に配置される高吸水性ポリマー2の量)が第二配置工程における高吸水性ポリマー2の使用量(すなわち、上部に配置される高吸水性ポリマー2の量)より多くなるように、各配置工程における高吸水性ポリマー2の使用量が設定されることが好ましい。このように高吸水性ポリマー2の使用量が設定されることにより、廃棄鶏3から滲み出す体液の量が多くなっても、フレコンバッグ1の底部で確実に体液を吸収及び保持することができる。
【実施例
【0043】
本発明の廃棄鶏の処理方法について、その有効性を確認するため、鶏体液吸収確認試験、及び鶏体液漏出防止確認試験を実施した。各試験について、以下に説明する。
【0044】
〔鶏体液吸収確認試験〕
この試験は、本発明の廃棄鶏の処理方法で使用する高吸水性ポリマーが鶏の体液をどの程度吸収できるかを確認するものである。ただし、廃棄鶏の体液を入手することは困難であり、安全衛生上においても問題がある。一方、生きている鶏を殺傷して体液を採取することは、動物愛護の観点から倫理的に問題となる可能性がある。そこで、本発明者らは、苦肉の策として鶏の擬似体液を調製し、これを試験に使用することとした。
【0045】
<擬似体液の調製>
鶏の水分率は、一般的な鳥類に準じて65~75重量%と推定される。また、鶏の血液量は、地上に生息する哺乳類と同等とみなして体重の10重量%と推定される。これらの推定に基づき、鶏の体液の重量は、最大で鶏の体重の70重量%と仮定した。なお、鶏の体液の組成は、血液が15重量%であり、その他体内の成分が85重量%とみなした。鶏の擬似体液の調製は、以下の手順にて行った。
(1)血液に相当する成分として、生理食塩水を調製する(塩分濃度:0.9重量%)。
(2)血液以外に相当する成分として、食用の鶏レバーをフードプロセッサに投入し、1分間粉砕してペースト状にする。
(3)生理食塩水と鶏レバーのペースト状物とを重量比で15:85の比率で混合し、これを擬似血液とする。
【0046】
<擬似体液の吸収試験>
吸収剤としてポリアクリル酸重合物を成分とする高吸水性ポリマー(商品名「SAP High Spec」、テクニカ合同株式会社製)を擬似体液に対して、1重量%、2重量%、3重量%添加した。そして、擬似体液の未攪拌時及び攪拌時における流動性から、擬似体液の吸収の有無を判断した。すなわち、擬似体液に流動性が無くなったことを以って、擬似体液が吸収されたと判断した。また、比較のため、市販のおがくず(商品名「ミニアニマン 快適ふんわりベッド」、ドギーマンハヤシ株式会社製)を擬似体液に対して、1重量%、2重量%、3重量%添加し、実施例と同様にして擬似体液の吸収の有無を判断した。
【0047】
擬似体液の吸収試験の結果を以下の表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
吸収剤として高吸水性ポリマーを使用した場合においては、擬似体液に対する高吸水性ポリマーの添加量が1重量%では、未攪拌時及び攪拌時に擬似体液に流動性が確認されたが、高吸水性ポリマーの添加量が2重量%、3重量%では、擬似体液に流動性は確認されなかった。吸収剤としておがくずを使用した場合においても、擬似体液に対するおがくずの添加量が1重量%では、未攪拌時及び攪拌時に擬似体液に流動性が確認されたが、おがくずの添加量が2重量%、3重量%では、擬似体液に流動性は確認されなかった。これらの結果から、高吸水性ポリマーは、擬似体液に対して、吸収性に優れていることが知られているおがくずと同等以上の吸収性を示した。また、擬似体液に対する高吸水性ポリマーの添加量は、2重量%以上とすることが好ましいことが分かった。
【0050】
〔鶏体液漏出防止確認試験〕
この試験は、処理容器であるフレコンバッグに廃棄鶏を収容することを想定した試験であり、死後硬直した鶏によってフレコンバッグが破れた場合に、本発明の廃棄鶏の処理方法によって、廃棄鶏から滲み出した体液の漏出を防止できるかを確認するものである。本試験においても、廃棄鶏及びその体液の入手困難性、並びに倫理上の問題から、上記の鶏体液吸収確認試験で用いた擬似体液に加えて、死後硬直した鶏を想定した擬似的な模型を使用することとした。
【0051】
<擬似的模型の準備>
鶏の体は、骨格の内側に内臓が存在し、骨格の外側に筋肉が存在し、体表は羽毛で覆われている。鶏の体液は、主に内臓や筋肉に含まれている。したがって、鶏の体液は、水を含んだスポンジのように一方向から圧力を受けただけでは容易に放出されることはない。また、鶏の体液は、鶏の体から滲み出すと、体表の羽毛である程度保持されることになる。そこで、本発明者らは、このような鶏の体に似た構造物がないか種々探索したところ、塗装用ローラーが鶏の体を上手く再現できることを発見した。塗装用ローラーは、円筒形のローラーの表面に毛が放射状に配置されている。ローラーは、死後硬直した鶏の体に近い適度な剛性を有している。また、塗装用ローラーを水に浸すと、ローラーの表面の毛に水分を保持することができる。そして、ローラーの表面の毛に保持された水分は、一方向から圧力を受けただけでは全て放出されることはない。このように、塗装用ローラーは、廃棄鶏の死後硬直した状態と、鶏の体液が滲み出る状態とを擬似的に再現する模型として好適である。
【0052】
<擬似体液の漏出試験>
一般的なフレコンバッグに廃棄鶏を満杯となるように詰めると、その重量は約1000kgとなる。そして、フレコンバッグが二段積みされると、下段のフレコンバッグの底部全体に約2000kgの荷重が掛かることになる。これは、0.19kg/cmの圧力に相当する。そこで、このような実際の条件を想定し、以下の手順にて擬似体液の漏出試験を行った。
(1)市販の塗装用ローラー(商品名「メロン(登録商標)」、サイズ4インチ(約100mm)、毛丈20mm、重量約20g、ピーアイエー株式会社製)に擬似体液45gを吸収させて廃棄鶏の擬似的模型とする(擬似体液含有率:約70重量%)。
(2)穴の開いたポリエチレン製の水切りゴミ袋(250×175×120mm、厚み0.036mm、コーナン商事株式会社製)2袋に廃棄鶏の擬似的模型を夫々4個(合計8個、擬似体液重量:360g)投入し、さらに吸収剤(高吸水性ポリマー、おがくず)を添加する。このとき、吸収剤が所定の位置(袋の下部、袋の上部及び下部、袋の全体)に配置されるようにする。各吸収剤の添加量は、廃棄鶏の擬似的模型の重量に対して2重量%とする。
(3)上記(2)の水切りゴミ袋2袋を土嚢袋に入れる。
(4)平坦な台に吸水紙を敷き、その上に底面積が78.5cmの筒を配置し、筒の中に上記(3)の土嚢袋を入れ、15.1kg重しを置く(圧力:0.19kg/cm)。
(5)30秒経過後、重しを外し、吸水紙が吸収した擬似体液の重量(漏出量)を測定する。廃棄鶏の擬似的模型に含まれていた擬似体液重量360gに対する擬似体液の漏出量の割合(百分率)を漏出率(%)とする。また、コントロールとして、吸収剤を添加しない供試体についても同様にして擬似体液の漏出率(%)を求める。
【0053】
擬似体液の漏出試験の結果を以下の表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
吸収剤を添加しなかったコントロール(試験No.6)の擬似体液の漏出率が39.7%であったのに対し、吸収剤として吸水性ポリマーを添加した試験No.1~3は、漏出率が低く抑えられていた。特に、吸収剤を袋の下部(試験No.1)及び袋の全体(試験No.3)に配置した場合、擬似体液の漏出は完全に抑えられていた(漏出率0%)。このように、吸収性ポリマーは、擬似体液の吸収性及び保持性の両方に優れているため、鶏の廃棄処理に好適に利用できると言える。
【0056】
これに対し、吸収剤としておがくずを添加した試験No.4及び5は、擬似体液の漏出が認められ、吸収性ポリマーほどの効果は得られなかった。すなわち、おがくずは、擬似体液の吸収性はあるものの、圧力を受けると吸収した擬似体液を保持できずに放出してしまった。この結果から、おがくずを鶏の廃棄処理に利用することは困難であると言える。
【0057】
以上の擬似体液の吸収試験結果、及び擬似体液の漏出試験結果より、本発明の廃棄鶏の処理方法を実施すれば、鶏の死後硬直によって万が一フレコンバッグが破れたとしても、体液のフレコンバッグ外への漏出を防止することができ、また、フレコンバッグを二段積みして運搬する場合等の圧力がかかる場合であっても、体液がフレコンバッグの外部に漏出する虞はないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の廃棄鶏の処理方法は、鳥インフルエンザの発生に伴って殺処分された鶏の廃棄処理に利用されるものであるが、その他の理由で殺処分された鶏を廃棄処理する用途においても利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 フレコンバッグ(処理容器)
2 高吸水性ポリマー
3 廃棄鶏
【要約】
【課題】殺処分等により廃棄されることになった鶏(死後硬直した鶏)を安全且つ適切に処理できる廃棄鶏の処理方法を提供する。
【解決手段】処理容器1内の底部に高吸水性ポリマー2を配置する第一配置工程と、処理容器1内に廃棄鶏3を投入する投入工程とを包含する廃棄鶏の処理方法である。当該処理方法は、処理容器1内の廃棄鶏3の上にさらに高吸水性ポリマー2を配置する第二配置工程を包含する。
【選択図】図1
図1