(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】皮膚化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20240902BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240902BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20240902BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240902BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20240902BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240902BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20240902BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20240902BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q19/00
A61K8/41
A61K8/37
A61K8/31
A61K8/73
A61K8/55
A61K8/365
A61K8/44
(21)【出願番号】P 2020035388
(22)【出願日】2020-03-02
【審査請求日】2022-12-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(72)【発明者】
【氏名】菊田 穣
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-227305(JP,A)
【文献】特開2019-172606(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0326059(US,A1)
【文献】特開平11-071259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーまたは(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマーから選ばれる1種以上
(B)
エデト酸塩、ポリリン酸塩、乳酸塩または塩化物塩から選ばれる1種以上
(C)
ソルビタン脂肪酸エステルまたはグリセリンモノ脂肪酸エステルから選ばれる1種以上
(D)25℃で液状の油性成分
(E)25℃でペースト状の油性成分
(F)ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースから選ばれる1種以上
を含有し、前記(A)成分の含有量が0.1~0.5質量%であり、前記(B)成分の含有量が0.05~0.5質量%であり、前記(C)成分の含有量が0.2~1質量%であり、前記(D)成分の含有量が3~12質量%であり、前記(E)成分の含有量が0.1~1質量%であり、前記(F)成分の含有量が0.1~0.7質量%である皮膚化粧料組成物。
【請求項2】
前記(D)成分がエステル油である請求項1に記載の皮膚化粧料組成物。
【請求項3】
前記(E)成分がワセリンである請求項1または請求項2に記載の皮膚化粧料組成物。
【請求項4】
前記(F)成分がヒドロキシエチルセルロースである請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の皮膚化粧料組成物。
【請求項5】
更に(G)トリメチルグリシンを含有し、前記(G)成分の含有量が0.5~5質量%である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の皮膚化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚化粧料組成物に関し、特に、乳化安定性が良く、経時的に流動性の低下がなく、しっとり感およびしっとり感の持続力が高く、塗布時に厚みがあって塗り心地が良く、なおかつ皮膚へのなじみの良い皮膚化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚に塗布する化粧料組成物としては、化粧水、乳液、クリームなどが挙げられ、種々の検討がなされている。中でも乳液は化粧水よりもしっとり感やしっとり感の持続力が高いだけでなく、皮膚へのなじみやクリームよりもみずみずしい感触が求められる剤型である。乳液はしっとり感、しっとり感の持続力および皮膚へのなじみを高めるために多量の油性成分を乳化して含有する必要がある。しかし、乳液は流動性のある液状を維持しなければならないため、乳化安定性を維持することが困難である。その問題を解決するために、近年、特許文献1に開示されるように、高分子乳化剤の使用が検討されている。アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体に代表される高分子乳化剤は種々の油剤を少量で安定に乳化することができるだけでなく、皮膚に塗布した際に、みずみずしい感触を得られる乳化剤である。
【0003】
しかしながら、特許文献1の技術で多量の油性成分を含有すると、油性成分の一部が乳化しきれず乳液の表面に油膜として残る場合や経時的に油滴として吐き出される場合がある。そこで、高分子乳化剤の含有量を増やして解決を試みるが、粘度が上昇し乳液の流動性を維持できなくなる場合や皮膚表面に膜を形成し、皮膚へのなじみが悪化する場合がある。上記問題を解決するため、高分子乳化剤の他に高級アルコールおよびノニオン性界面活性剤を併用した技術が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-111723号公報
【文献】特開2018-162241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の技術を用いた場合、高級アルコールやノニオン性界面活性剤により経時的に乳液の流動性が低下し、ボトルやポンプ等から出しにくくなる場合があった。また、使用感に関して高分子乳化剤は塗り広げるときにみずみずしい感触が得られる反面、塗布時の厚みがなく、塗り心地に物足りなさを感じることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、(A)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーまたは(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマーから選ばれる1種以上、(B)有機塩または無機塩から選ばれる1種以上、(C)HLBが3.0~5.0であるノニオン性界面活性剤、(D)25℃で液状の油性成分、(E)25℃でペースト状の油性成分、(F)セルロース誘導体を含有し、前記(A)成分の含有量が0.1~0.5質量%であり、前記(B)成分の含有量が0.05~0.5質量%であり、前記(C)成分の含有量が0.2~1質量%であり、前記(D)成分の含有量が3~12質量%であり、前記(E)成分の含有量が0.1~1質量%であり、前記(F)成分の含有量が0.1~0.7質量%である皮膚化粧料組成物によれば、乳化安定性が良く、経時的な流動性の低下がなく、しっとり感およびしっとり感の持続力が高く、塗布時に厚みがあって塗り心地が良く、なおかつ皮膚へのなじみの良い皮膚化粧料組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、乳化安定性が良く、経時的な流動性の低下がなく、しっとり感およびしっとり感の持続力が高く、塗布時に厚みがあって塗り心地が良く、なおかつ皮膚へのなじみの良い皮膚化粧料組成物が得られる。
【0008】
さらに、本発明によりべたつき感のない皮膚化粧料組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、含有量を示す単位は、特に明記しない限り全て質量%である。
【0010】
本発明において「流動性」とは、皮膚化粧料組成物の容器を傾けた時の流れやすさおよび容器の取り出し口からの出しやすさを指す。
【0011】
本発明において「塗布時の厚み」とは、皮膚化粧料組成物を皮膚に塗り広げるときに、一定の厚みを維持することを指し、感覚的にはつるりと滑るような感触があることを指す。
【0012】
本発明は、乳化安定性、しっとり感の持続および塗布時の厚みの観点から、(A)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーまたは(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマーから選ばれる1種以上を含有する。
【0013】
本発明に用いられる前記(A)成分のうち、塗布時の厚みおよび皮膚へのなじみの観点からアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体が好ましい。
【0014】
本発明に用いられる前記(A)成分の含有量は、好ましくは0.1~0.5%、より好ましくは0.2~0.4%がよい。前記(A)成分が0.1%未満の場合、乳化安定性が低下し、表面に油膜が残る恐れや経時的に油滴が表れる恐れがあり、しっとり感の持続、塗布時の厚みが低下する恐れがある。前記(A)成分が0.5%を超える場合、流動性および皮膚へのなじみが低下する。
【0015】
本発明は、流動性の観点から、(B)有機塩または無機塩から選ばれる1種以上を含有する。
【0016】
本発明に用いられる前記(B)成分としては、特に限定されないが、例えば、エデト酸塩、ジエチレントリアミン五酢酸塩、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸塩、クエン酸塩等のキレート剤の有機塩類、ポリリン酸塩、メタリン酸塩等のキレート剤の無機塩類、乳酸塩、酢酸塩等の有機塩類(前記キレート剤の有機塩類を除く)、塩化ナトリウム、塩化物塩、硫酸塩等の無機塩類(前記キレート剤の無機塩類を除く)が挙げられる。前記(B)成分は1種以上を含有してよい。
【0017】
本発明の前記(B)成分の塩は、特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩等が挙げられる。
【0018】
本発明に用いられる前記(B)成分のうち、前記(A)成分は多価金属イオンが存在すると、金属塩を形成し、沈殿を生じる場合やゲル化してしまう恐れがあるため、キレート剤の有機塩類およびキレート剤の無機塩類が好ましい。中でもキレート効果の高さ、汎用性の高さ、流動性の観点からキレート剤の有機塩類であるエデト酸塩が好ましい。
【0019】
本発明に用いられる前記(B)成分の含有量は、好ましくは0.05~0.5%、より好ましくは0.1~0.3%がよい。前記(B)成分が0.05%未満の場合、流動性が低下する恐れがある。前記(B)成分が0.5%を超える場合、乳化安定性が低下し、表面に油膜が残る恐れや経時的に油滴が表れる恐れがあり、塗布時の厚みが低下する。
【0020】
本発明は、乳化安定性、しっとり感および皮膚へのなじみの観点から、(C)HLBが3.0~5.0であるノニオン性界面活性剤を含有する。
【0021】
なお、「HLB」とは、親水親油バランス:Hydrophile-Lipophile Balanceの略称であって、一般的に、界面活性剤の分子が持つ親水性と親油性の相対的な強さを表すパラメーターであり、HLBの値が大きいほど親水性が強く、HLBの値が小さいほど親油性が強い。本発明に記載のHLBは実測値によるものである。測定の方法は「ハンドブック-化粧品・製剤原料-改定版 日光ケミカルズ株式会社 1977年,854~855ページ」に記載されている方法を準用した。
【0022】
本発明に用いられる前記(C)成分としては、特に限定されないが、例えば、モノイソステアリン酸ソルビタン(HLB:5.0)、モノステアリン酸ソルビタン(HLB:4.5)等のソルビタン脂肪酸エステル、親油型モノステアリン酸グリセリル(HLB:3.0)、ミリスチン酸グリセリル(HLB:3.5)等が挙げられる。前記(C)成分は1種以上を含有してよい。
【0023】
本発明に用いられる前記(C)成分のうち、流動性およびしっとり感の観点からソルビタン脂肪酸エステルが好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルの中でも、しっとり感の観点からモノイソステアリン酸ソルビタンが好ましい。
【0024】
本発明に用いられる前記(C)成分の含有量は、好ましくは0.2~1%、より好ましくは0.4~0.6%がよい。前記(C)成分が0.2%未満の場合、乳化安定性が低下し、表面に油膜が残る恐れや経時的に油滴が表れる恐れ、しっとり感および皮膚へのなじみが低下する恐れがある。前記(C)成分が1%を超える場合、流動性および皮膚へのなじみが低下する。
【0025】
本発明は、しっとり感および皮膚へのなじみの観点から、(D)25℃で液状の油性成分を含有する。
【0026】
本発明に用いられる前記(D)成分としては、特に限定されないが、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール等のエステル油、流動パラフィン、スクワラン、α-オレフィンオリゴマー等の炭化水素油、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等のシリコーン油が挙げられる。前記(D)成分は1種以上を含有してよい。
【0027】
本発明に用いられる前記(D)成分のうち、しっとり感および皮膚へのなじみの観点からエステル油が好ましく、更にしっとり感および皮膚へのなじみの観点から一価脂肪酸と一価アルコールのエステル油が好ましく、中でもミリスチン酸イソプロピルが好ましい。
【0028】
本発明に用いられる前記(D)成分の含有量は、好ましくは3~12%、より好ましくは5~10%がよい。前記(D)成分が3%未満の場合、しっとり感および皮膚へのなじみが低下する恐れがある。前記(D)成分が12%を超える場合、経時的な流動性の低下があり、皮膚へのなじみが低下する。
【0029】
本発明は、しっとり感およびしっとり感の持続の観点から、(E)25℃でペースト状の油性成分を含有する。
【0030】
なお、本発明において「25℃でペースト状」とは25℃においてワセリン様の状態であることを指す。
【0031】
本発明に用いられる前記(E)成分としては、特に限定されないが、例えば、炭化水素であるワセリン、ダイマージリノール酸ジ(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル等のエステルが挙げられる。前記(E)成分は1種以上を含有してよい。
【0032】
本発明に用いられる前記(E)成分のうち、しっとり感およびしっとり感の持続の観点からワセリンが好ましい。
【0033】
本発明に用いられる前記(E)成分の含有量は、好ましくは0.1~1%、より好ましくは0.3~0.7%がよい。前記(E)成分が0.1%未満の場合、しっとり感およびしっとり感の持続が低下する恐れがある。前記(E)成分が1%を超える場合、流動性および皮膚へのなじみが低下する。
【0034】
本発明は、しっとり感の持続および塗布時の厚みの観点から、(F)セルロース誘導体を含有する。
【0035】
本発明に用いられる前記(F)成分としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。前記(F)成分は1種以上を含有してよい。
【0036】
本発明に用いられる前記(F)成分のうち、塗布時の厚みおよび皮膚へのなじみの観点からヒドロキシエチルセルロースが好ましい。
【0037】
本発明に用いられる前記(F)成分の含有量は、好ましくは0.1~0.7%、より好ましくは0.2~0.5%がよい。前記(F)成分が0.1%未満の場合、しっとり感の持続および塗布時の厚みが低下する恐れがある。前記(F)成分が0.7%を超える場合、流動性および皮膚へのなじみが低下する。
【0038】
本発明は、前記(A)~(F)成分に加えて、べたつき抑制の観点から(G)トリメチルグリシンを含有することができる。前記(F)成分を含有することで、乳化安定性が良く、流動性、しっとり感、しっとり感の持続、塗布時の厚みに影響を与えずに、効果的にべたつきを抑制することができる。
【0039】
本発明に用いられる前記(G)成分の含有量は、好ましくは0.5~5%、より好ましくは1~3%がよい。前記(G)成分が0.5%未満の場合、べたつきを抑制する効果がない恐れがある。前記(G)成分が5%を超える場合、べたつきを生じる恐れがある。
【0040】
本発明による皮膚化粧料組成物の粘度は、容器からの出しやすさの観点から、20℃の条件下で500~7,000mPa・sであることが好ましい。
【0041】
本発明における皮膚化粧料組成物の20℃の条件下での粘度は、常法にて調製し、得られた皮膚化粧料組成物をサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、ヘリカルスタンド付きB型粘度計(モデル;デジタル粘度計TVB-10M、東機産業株式会社製)を用いて、M4号ローターにて1分間、回転速度12rpm、20℃の条件下で測定する。
【0042】
本発明における皮膚化粧料組成物のpHは、乳化安定性および流動性の観点から20℃の条件下で4.0~8.0であることが好ましい。皮膚化粧料組成物のpHが4.0未満の場合、乳化安定性が低下し、表面に油膜が残る恐れや経時的に油滴が表れる恐れがある。皮膚化粧料組成物のpHが8.0を超える場合、経時的に流動性が低下する恐れがある。
【0043】
本発明における皮膚化粧料組成物の20℃の条件下でのpHは、常法にて調製し、得られた皮膚化粧料組成物を20℃で1日間静置し調温した後に、ガラス電極式水素イオン濃度指示計(F-71、株式会社堀場製作所製)にて測定したものである。
【0044】
本発明の皮膚化粧料組成物は前記(A)~(G)成分の他に、通常の化粧料、医薬部外品、医薬品等に用いられる各種成分、例えば、界面活性剤、油性成分、保湿剤、増粘剤、薬効成分、蛋白誘導体、加水分解蛋白、安定化剤、酸化防止剤、植物性抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、防腐剤、色素、顔料、粉体、pH調整剤、紫外線吸収剤、香料等から選ばれる少なくとも1種以上を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。ただし、これら例示に限定されるものでない。
【0045】
本発明に使用する容器は、特に限定されないが、皮膚化粧料組成物が液状であることから円筒や直方体等のボトル容器に充填することが好ましい。
【0046】
本発明に使用するボトル容器の取り出し口は、円形に穴の開いた栓(以下、中栓という)やポンプ等を使用することが好ましい。
【0047】
本発明に使用する前記中栓としては、特に限定されないが、口径がΦ3~10(3~10mm)であることが好ましい。口径が3.0mm未満の場合、皮膚化粧料組成物が取り出しにくい恐れがある。口径が10.0mmを超える場合、皮膚化粧料組成物が必要以上に取り出される恐れがあり、吐出口から垂れ落ちる恐れがある。
【0048】
本発明に使用する前記ポンプとしては、特に限定されないが、1回で吐出する容量が0.1~3.0mlであることが好ましい。0.1ml未満の場合、皮膚化粧料組成物が取り出しにくい恐れがある。容量が3.0mlを超える場合、皮膚化粧料組成物が必要以上に取り出される恐れがある。
【0049】
本発明に使用する容器の材質は、特に限定されないが、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等のプラスチックおよびガラス等が挙げられる。上記の中でも、落下しても割れにくいプラスチック容器が好ましい。
【実施例】
【0050】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0051】
本明細書に示す評価試験において、皮膚化粧料組成物に含まれる成分、およびその含有量を種々変更しながら実施した。各成分の含有量を示す単位は全て質量%であり、これを常法にて調製した。
【0052】
本明細書に示す評価試験方法において、「乳化安定性」、「流動性」、「しっとり感」、「しっとり感の持続」、「塗布時の厚み」、「皮膚へのなじみ」および「べたつきのなさ」について下記の方法で評価した。
【0053】
「乳化安定性」
得られた皮膚化粧料組成物を、第一硝子株式会社製 食品140ガラス瓶に130g充填し、20℃で24時間保存した後に、油膜や液滴の有無を目視にて確認し、続けて40℃で1ヶ月保存した後、油膜や液滴の有無を目視にて確認した。
【0054】
(評価方法)
調製した皮膚化粧料組成物の表面に液滴や油膜がなければ○、油膜や液滴があれば×とした。
【0055】
「流動性」
得られた皮膚化粧料組成物を株式会社宮本製 S-150容器に150g充填し、株式会社宮本製 SS-8φ中栓(内口径φ8mm)を装着して、20℃にて48時間保存した後、逆さまにして上下に5回振り、中栓の口から皮膚化粧料組成物の出しやすさを「流動性」として以下の評価基準に従って評価した。
【0056】
(評価方法)
パネラー10名が、容器からの出しやすさについて各人が項目毎に5点(非常に良好)、4点(良好)、3点(普通)、2点(不良)、1点(非常に不良)の5段階で評価して全員の平均点を算出した後、下記判定基準に従って判定した。
【0057】
(平均点の判定基準)
4.0点以上 : 5
3.5点以上4.0点未満 : 4
3.0点以上3.5点未満 : 3
2.0点以上3.0点未満 : 2
2.0点未満 : 1
【0058】
「しっとり感」、「しっとり感の持続」、「塗布時の厚み」、「皮膚へのなじみ」および「べたつきのなさ」
パネラー10名が、室温20℃、湿度50%の条件下で1時間安静にして順化後、得られた皮膚化粧料組成物を、適量を手にとり使用し、「しっとり感」、「しっとり感の持続」、「塗布時の厚み」、「皮膚へのなじみ」および「べたつきのなさ」に関して官能評価を行った。また「しっとり感の持続」に関しては使用後5時間経過した後に官能評価を行った。
【0059】
(評価方法)
パネラー10名が、「しっとり感」、「しっとり感の持続」、「塗布時の厚み」、「皮膚へのなじみ」および「べたつきのなさ」について5点(非常に良好)、4点(良好)、3点(普通)、2点(不良)、1点(非常に不良)の5段階で評価して全員の平均点を算出した後、下記判定基準に従って判定した。
【0060】
(平均点の判定基準)
4.0点以上 : 5
3.5点以上4.0点未満 : 4
3.0点以上3.5点未満 : 3
2.0点以上3.0点未満 : 2
2.0点未満 : 1
【0061】
【0062】
表1に示す実施例1~7より、乳化安定性、流動性、しっとり感、しっとり感の持続、塗布時の厚みおよび皮膚へのなじみについて良好な結果を示した。
【0063】
【0064】
表2に示す実施例8~14より、乳化安定性、流動性、しっとり感、しっとり感の持続、塗布時の厚みおよび皮膚へのなじみについて良好な結果を示した。
【0065】
【0066】
表3に示す実施例15~19より、乳化安定性、流動性、しっとり感、しっとり感の持続、塗布時の厚みおよび皮膚へのなじみについて良好な結果を示した。
【0067】
【0068】
表4に示す実施例20~26より、乳化安定性、流動性、しっとり感、しっとり感の持続、塗布時の厚みおよび皮膚へのなじみについて良好な結果を示した。
【0069】
【0070】
表5に示す実施例27~31より、乳化安定性、流動性、しっとり感、しっとり感の持続、塗布時の厚みおよび皮膚へのなじみについて良好な結果を示した。
【0071】
【0072】
表6に示す実施例32~36より、乳化安定性、流動性、しっとり感、しっとり感の持続、塗布時の厚みおよび皮膚へのなじみについて良好な結果を示した。
【0073】
【0074】
表7に示す実施例37~40より、乳化安定性、流動性、しっとり感、しっとり感の持続、塗布時の厚み、皮膚へのなじみおよびべたつきのなさについて良好な結果を示した。
【0075】
実施例38
成 分 含有量(質量%)
(A)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.23
(B)エデト酸二ナトリウム 0.11
(C)モノイソステアリン酸ソルビタン(HLB:5.0) 0.50
(D)ミリスチン酸イソプロピル 7.50
(E)ワセリン 0.50
(F)ヒドロキシエチルセルロース 0.30
(G)トリメチルグリシン 2.00
N-オクタノイルグリシン 0.05
L-アルギニン 0.20
濃グリセリン 3.00
1,3-ブチレングリコール 7.00
フェノキシエタノール 0.30
グリセリンモノ2-エチルヘキシルエーテル 0.20
ポリオキシエチレンメチルグルコシド(20E.O.) 2.00
ジヒドロキシプロピルアルギニンHCl 0.10
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
エンテロコッカスフェカリス 0.01
デキストリン 0.01
乳酸桿菌溶解質 0.01
サクシニルアテロコラーゲン 0.01
香料 0.02
精製水 75.94
合計 100.00
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、乳化安定性が良く、経時的な流動性の低下がなく、しっとり感およびしっとり感の持続力が高く、塗布時に厚みがあって塗り心地が良く、なおかつ肌なじみの良い皮膚化粧料組成物を得ることができる。