(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】浄水フィルター
(51)【国際特許分類】
C02F 1/28 20230101AFI20240902BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20240902BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C02F1/28 G
C02F1/42 A
B01D39/16 A
(21)【出願番号】P 2020126526
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】酒井 麻依子
(72)【発明者】
【氏名】内藤 宣博
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-033982(JP,A)
【文献】特開平08-052347(JP,A)
【文献】特開2014-138929(JP,A)
【文献】国際公開第2020/095573(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/00、28、42
B01D24/00-35/05、35/10-37/04、39/00-41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状である活性炭成型体、及び前記活性炭成型体の径方向における内周側の側面に配置される不織布、を含む、浄水フィルターであって、
前記不織布が
繊維長が1~100mmである熱融着性短繊維
及びイオン交換繊維を含む不織布である、浄水フィルター。
【請求項2】
前記熱融着性短繊維の熱融着性成分がポリエステル系樹脂である、請求項1に記載の浄水フィルター。
【請求項3】
前記活性炭成型体が熱融着性短繊維を含む、請求項1又は2に記載の浄水フィルター。
【請求項4】
前記不織布の厚さと目付から算出される見かけ密度が0.05~0.5g/cm
3である、請求項1~3のいずれか1項に記載の浄水フィルター。
【請求項5】
前記不織布が
さらにセルロース系繊維及び動物繊維からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の浄水フィルター。
【請求項6】
前記不織布が無機繊維を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の浄水フィルター。
【請求項7】
前記活性炭成型体を構成する活性炭が繊維状活性炭である、請求項1~6のいずれか1項に記載の浄水フィルター。
【請求項8】
前記浄水フィルターがポット型浄水器用である、請求項1~7のいずれか1項に記載の浄水フィルター。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の浄水フィルターを備える、ポット型浄水器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒形状の活性炭成型体を含む浄水フィルターが知られている。該浄水フィルターとして、活性炭成型体の活性炭が一部脱落し浄化された水に混入することを防ぐべく、円筒形状における外周側側面及び内周側側面に不織布を備えさせたものが知られている。
【0003】
上記浄水フィルターとして、例えば、円筒体の内周層と外周層がそれぞれ不織布からなり、内周層と外周層の間の層が活性炭素繊維と熱溶融性繊維からなる混抄紙によって構成され、前記円筒体の両端部を熱可塑性樹脂によって固着するようにした浄水フィルターにおいて、前記不織布を構成する繊維は、繊維径10~50μmの繊維と、繊維径0.5~3μmの繊維を含み、かつ65%RH、20℃における平衡水分率が5%以上の繊維を含むことを特徴とする浄水フィルターが知られている(例えば特許文献1参照。)。該浄水フィルターによれば、通水方向からの活性炭素繊維の脱落が防止されると共に、低水圧で使用される場合においても通水初期から通水性が高いものとなるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、浄水カートリッジを備えた浄水器として、いわゆるポット型のものが知られている。このポット型浄水器は、上側に位置する原水貯留部と、下側に位置する浄水貯留部との間に浄水カートリッジを介在させる構造になっている。原水貯留部に貯留される原水は自重により浄水カートリッジを通って浄水貯留部に流れ、浄水カートリッジ内にて浄化される。
【0006】
ポット型浄水器は、原水が自重により浄水カートリッジを通るため、特許文献1で想定されている用途である冷蔵庫の自動製氷機あるいは給湯器よりも一層低水圧となる。そして、本発明者等は、特許文献1の浄水カートリッジをポット型浄水器に適用した場合、流量が低減する場合があり、浄水に時間がかかる場合があることを知得した。
【0007】
また、ポット型浄水器は、前記したように浄水カートリッジの上側に原水貯留部を備えるところ、本発明者等は、例えば、円筒状である浄水フィルターの径方向における内周側の側面から活性炭成型体の活性炭が脱落した場合、脱落した活性炭が原水貯留部又は浄水貯留部の水面に浮き上がり、ポット型浄水器のユーザーを不快にさせてしまうことを知得した。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題を解決し、例えばポット型浄水器に適用した場合にも、流量の低減を抑制し、かつ、脱落した活性炭の、浄水フィルターの径方向における内周側の側面から原水貯留部又は浄水貯留部への流入を低減することに寄与する、浄水カートリッジに関する技術を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等が検討したところ、ポット型浄水器に適用した場合の流量の低減を抑制するため、活性炭成型体の径方向における内周側の側面に配置される不織布における圧力損失を低減することが有効であることを知得した。しかしながら、本発明者等は、特許文献1の浄水カートリッジにおいて、ポット型浄水器とした場合の流量の低減を抑制すべく、円筒体の内周層と外周層としてそれぞれ配置される不織布の密度を低いものとすると、浄水フィルターの径方向における内周側の側面から原水貯留部又は浄水貯留部への活性炭の漏出が多くなりやすくなることを知得した。すなわち、ポット型浄水器に適用する場合、流量の低減を抑制することと、浄水フィルターの径方向における内周側の側面から原水貯留部又は浄水貯留部への活性炭の漏出を低減させることとは、トレードオフの関係となっていることを知得した。
【0010】
そして、本発明者等が上記課題を解決すべくさらに検討を重ねたところ、活性炭成型体の径方向における内周側の側面に、種々ある不織布の中でも、熱融着性短繊維からなる不織布を配置することにより、例えばポット型浄水器に適用した場合にも、流量の低減を抑制することに寄与し、かつ、脱落した活性炭の、浄水フィルターの径方向における内周側の側面から原水貯留部又は浄水貯留部への流入を低減することに寄与することを知得した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
【0011】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.円筒形状である活性炭成型体、及び前記活性炭成型体の径方向における内周側の側面に配置される不織布、を含む、浄水フィルターであって、
前記不織布が熱融着性短繊維を含む不織布である、浄水フィルター。
項2.前記熱融着性短繊維の熱融着性成分がポリエステル系樹脂である、項1に記載の浄水フィルター。
項3.前記活性炭成型体が熱融着性短繊維を含む、項1又は2に記載の浄水フィルター。
項4.前記不織布の厚さと目付から算出される見かけ密度が0.05~0.5g/cm3である、項1~3のいずれか1項に記載の浄水フィルター。
項5.前記不織布がイオン交換繊維、セルロース系繊維及び動物繊維からなる群より選ばれる1種以上を含む、項1~4のいずれか1項に記載の浄水フィルター。
項6.前記不織布が無機繊維を含む、項1~5のいずれか1項に記載の浄水フィルター。
項7.前記活性炭成型体を構成する活性炭が繊維状活性炭である、項1~6のいずれか1項に記載の浄水フィルター。
項8.前記浄水フィルターがポット型浄水器用である、項1~7のいずれか1項に記載の浄水フィルター。
項9.項1~8のいずれか1項に記載の浄水フィルターを備える、ポット型浄水器
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、円筒形状である活性炭成型体、及び前記活性炭成型体の径方向における内周側の側面に配置される不織布、を含む、浄水フィルターであって、前記不織布が熱融着性短繊維を含む不織布であることから、例えばポット型浄水器に適用した場合にも、流量の低減を抑制することに寄与し、かつ、脱落した活性炭の、浄水フィルターの径方向における内周側の側面から原水貯留部又は浄水貯留部への流入を低減することに寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】ケーシング及び浄水フィルターの外観斜視図。
【
図3】カートリッジ内の水の流れを説明する断面図。
【
図5】カートリッジが使用されたポット型浄水器の断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の浄水フィルターは、円筒形状である活性炭成型体、及び前記活性炭成型体の径方向における内周側の側面に配置される不織布、を含む、浄水フィルターであって、前記不織布が熱融着性短繊維を含む不織布である。
【0015】
例えば
図1において、浄水フィルター3は、円筒形状である活性炭成型体35と、活性炭成型体35の径方向における内周側の側面に配置される不織布36とを備える。また、
図1に示すように、浄水フィルター3は、活性炭成型体35の径方向における外周側の側面に配置される不織布37を備えることができる。
図1において、浄水フィルター3は、内部に空洞部を有する。以下、本発明の浄水フィルター3の各部材について詳述する。
【0016】
<活性炭成型体の径方向における内周側の側面に配置される不織布>
本発明の浄水フィルターは、活性炭成型体の径方向における内周側の側面に配置される不織布を含み、該不織布が熱融着性短繊維を含む不織布である。これにより、浄水フィルターを例えばポット型浄水器に適用した場合にも、流量の低減を抑制することに寄与し、かつ、脱落した活性炭の、浄水フィルターの径方向における内周側の側面から原水貯留部又は浄水貯留部への流入を低減することに寄与することができる。
【0017】
具体的に、本発明者等は、例えばスパンボンド不織布等の長繊維不織布は、長繊維軸方向が平面方向に多く配列するため、これを活性炭成型体の径方向における内周側の側面に配置した場合に圧力損失が比較的大きくなり、ポット型浄水器に適用した場合に流量に劣りやすくなることを知得した。そして、本発明者等は鋭意検討し、熱融着性短繊維を含む不織布とすることで、該短繊維が3次元にランダムに配列し、さらに熱融着性繊維に熱処理を加えることで熱融着繊維は比較的硬い状態で、かつ繊維軸方向が一部厚さ方向に配向した状態で不織布内に存在することとなる結果、例えばポット型浄水器に適用した場合にも、流量の低減を抑制させ、かつ、脱落した活性炭の、浄水フィルターの径方向における内周側の側面から原水貯留部又は浄水貯留部への流入を低減し得ることを見出したのである。
【0018】
熱融着性短繊維は、熱融着性成分を含む。熱融着性成分としては、融点(融点が存在しないものは軟化点、以下同じ。)が80~170℃のものが好ましく、80~140℃であるものがより好ましい。熱融着性成分の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、イソフタル酸等共重合成分が共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂が挙げられる。中でも、親水性が比較的高く、水なじみ性がより良好となることで、ポット型浄水器に適用した場合の流量、特に浄水フィルターとしての使用開始時における流量がより向上するという観点から、熱融着性成分はポリエステル系が好ましく、イソフタル酸が共重合されたポリエチレンテレフタレートとすることがより好ましい。なお、本発明において、融点とは、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製DSC7)を用い、昇温速度20℃/分で測定した融解吸収曲線の極値を与える温度を融点とする。
【0019】
熱融着性短繊維は、単一の熱融着性成分のみから構成される全融タイプ、又は鞘部に熱融着性成分、芯部に、融点が鞘部の融点よりも好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上高い合成樹脂成分を配した、芯鞘型の熱融着性短繊維が挙げられる。中でも、浄水フィルターの強度、とりわけ後述する活性炭成型体を繊維状活性炭を含むものとした場合の浄水フィルターの強度、をより高めるという観点から、芯鞘型の熱融着性短繊維とすることが好ましい。芯鞘型の熱融着性短繊維とする場合、芯成分としては特に制限されないが、例えば、融点が150~300℃、より好ましくは200~300℃であって、融点が鞘部の融点よりも20℃以上高い合成樹脂成分が挙げられる。上記合成樹脂成分の具体例としては、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0020】
熱融着性短繊維の繊維長の具体例としては、例えば、1~100mmが挙げられ、10~80mmが好ましく挙げられる。また、熱融着性短繊維の繊維径としては、例えば、1~30μmが挙げられ、10~25μmが好ましく挙げられる。また、熱融着性短繊維の繊度としては、例えば0.1~20dtexが挙げられ、より好ましくは1~10dtexが挙げられる。
【0021】
本発明の浄水フィルターにおいて、活性炭成型体の径方向における内周側の側面に備えられる、熱融着性短繊維を含む不織布は、該熱融着性短繊維のみからなるものとすることができる。これにより、浄水フィルターの強度、特に後述する活性炭成型体を繊維状活性炭を含むものとした場合の浄水フィルターの強度、をより一層高めることができる。一方で、熱融着性短繊維を含む不織布は、該熱融着性短繊維以外の他の成分を含むこともできる。活性炭成型体の径方向における内周側の側面に備えられる、熱融着性短繊維を含む不織布において、熱融着性短繊維の含有量としては、特に制限されないが、例えば、5~100質量%が挙げられ、20~100質量%が挙げられ、30~100質量%が挙げられる。
【0022】
上記熱融着性短繊維以外の他の成分としては、無機繊維が挙げられる。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、繊維状活性炭、キレート繊維、ロックウール、アルミナ繊維、チタニア繊維等が挙げられる。上記繊維は、熱融着性短繊維を含む不織布において骨材として機能し、該不織布の嵩高性をより向上させるのに寄与する。無機繊維の中でも、繊維状活性炭が好ましい。繊維状活性炭とする場合、メソ細孔率が好ましくは10%以下、より好ましくは6%以下で、かつ、比表面積が好ましくは1000m2/g以下、より好ましくは900m2/g以下の繊維状活性炭とすると、活性炭の強度が高まり、骨材としての機能がより一層高まる。
【0023】
なお、本発明において、細孔容積とは、QSDFT法(急冷固体密度汎関数法)によって算出される細孔容積をいう。QSDFT法とは、幾何学的・化学的に不規則なミクロポーラス・メソポーラスな炭素の細孔径解析を対象とした、約0.5nm~約40nmまでの細孔径分布の計算ができる解析手法である。QSDFT法では、細孔表面の粗さと不均一性による影響が明瞭に考慮されているため、細孔径分布解析の正確さが大幅に向上した手法である。本発明においては、Quantachrome社製「AUTOSORB-1-MP」を用いて窒素吸着等温線の測定、及びQSDFT法による細孔径分布解析をおこなう。77Kの温度において測定した窒素の脱着等温線に対し、Calculation modelとしてN2 at 77K on carbon[slit pore,QSDFT equilibrium model]を適用して細孔径分布を計算することで、特定の細孔径範囲の細孔容積を算出することができる。そして、活性炭の全細孔容積(m2/g)は、上記QSDFT法によって測定され、具体的には測定した窒素脱着等温線に対し、Calculation modelとしてN2 at 77K on carbon[slit pore,QSDFT equilibrium model]を適用して細孔径分布を計算することで、解析する。また、同様に、細孔径が2nm以下である細孔容積(m2/g)、細孔径が50nm以下の細孔容積についても、上記QSDFT法により、細孔径分布図の横軸Pore Widthが0.65nmにおけるCumulative Pore Volume(cc/g)の読み取り値から求める。そして、メソ細孔率は、上記細孔径が50nm以下の細孔容積から上記細孔径が2nm以下の上記全細孔容積を減ずることにより細孔径2~50nmの細孔容積を算出し、当該細孔径が2~50nmの細孔容積を、上記全細孔容積で除して、100を乗ずることにより、メソ細孔率(%)を求める。また、活性炭の比表面積は、Quantachrome社製「AUTOSORB-1-MP」を用いて77Kにおける窒素吸着等温線より、BET法によって相対圧0.1の測定点から計算する。
【0024】
また、熱融着性短繊維以外の他の成分として、イオン交換繊維、セルロース系繊維及び動物繊維からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。これらの繊維は、熱融着性短繊維を含む不織布において、親水性を向上させるのに寄与し、ポット型浄水器に適用した場合に流量の低減をより抑制することに寄与する。セルロース系繊維としては、木綿や、リネン、ラミーなどの麻繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨンなどの再生繊維、リヨセルなどの溶剤紡糸セルロース繊維、木質パルプなどが挙げられる。動物繊維としては、羊毛、アンゴラ、カシミヤ、シルク、アルパカ等が挙げられる。中でも、イオン交換繊維が好ましい。イオン交換繊維としては、弱酸型が好ましく、末端官能基がCa若しくはNaで置換されたポリアクリレート系イオン交換繊維が挙げられる。
【0025】
熱融着性短繊維を含む不織布の形態としては、特に制限されないが、例えば、湿式抄紙不織布等の湿式不織布、ニードルパンチ不織布等の乾式不織布が挙げられる。中でも、嵩高性をより一層与え、ポット型浄水器に適用した場合にも、流量を流量の低減をより抑制させ、かつ、脱落した活性炭の、浄水フィルターの径方向における内周側の側面から原水貯留部又は浄水貯留部への流入をより低減させるという観点から、ニードルパンチ不織布とすることが好ましい。
【0026】
熱融着性短繊維を含む不織布の目付としては、ポット型浄水器に適用した場合にも、流量をより多くし、かつ、脱落した活性炭の、浄水フィルターの径方向における内周側の側面から原水貯留部への流入をより低減させるという観点から、10~100g/m2が好ましく、20~80g/m2がより好ましい。また、熱融着性短繊維を含む不織布の厚さとしては、ポット型浄水器に適用した場合にも、流量をより大きくし、かつ、脱落した活性炭の、浄水フィルターの径方向における内周側の側面から原水貯留部への流入をより低減させるという観点から、0.03~1.0mmが好ましく、0.05~0.6mmがより好ましい。また、熱融着性短繊維を含む不織布の、上記目付と上記厚さから算出される見かけ密度としては、0.05~0.5g/cm3が好ましく、0.08~0.4g/cm3がより好ましい。なお、上記見かけ密度は、次のように計算される。
見かけ密度(g/cm3)=目付(g/m2)/厚さ(mm)/1000
【0027】
<活性炭成型体>
本発明の浄水フィルターは、円筒形状である活性炭成型体を備える。活性炭成型体に含まれる活性炭としては、粒状活性炭及び/又は繊維状活性炭が挙げられる。ポット型浄水器に適用した場合にも、流量をより向上させ、かつ、脱落した活性炭の、浄水フィルターの径方向における内周側の側面から原水貯留部への流入をより低減させるという観点から、活性炭成型体に含まれる活性炭としては、繊維状活性炭を含むものとすることが好ましい。
【0028】
活性炭成型体に含まれる活性炭としては、ポット型浄水器に適用した場合の流量をより向上すべく活性炭成型体の肉厚を可能な限り薄いものとした場合にも、トリハロメタン等の揮発性有機化合物の除去性能を担保しやすくする観点から、メソ細孔率が5~60%が好ましく、20~60%がより好ましい。また、同様の観点から、当該活性炭の比表面積としては、1000~1800m2/gが好ましく、1000~1600m2/gがより好ましい。一方で、活性炭成型体に含まれる活性炭を上記メソ細孔率の範囲である活性炭、とりわけ上記メソ細孔率の範囲である繊維状活性炭とする場合、比較的大きな細孔が多くなることから、活性炭自体の強度が比較的低いものとなりやすく、活性炭が脱落しやすくなる傾向がある。しかしながら、本発明の浄水フィルターにおいては、活性炭成型体の径方向における内周側の側面に、熱融着性短繊維を含む不織布を備えることから、活性炭成型体を上記メソ細孔率である活性炭を含むものとしてポット型浄水器に適用した場合にも、脱落した活性炭の、浄水フィルターの径方向における内周側の側面から原水貯留部又は浄水貯留部への流入を低減し得る。換言すれば、本発明の浄水フィルターにおいて、活性炭成型体を上記メソ細孔率である活性炭を含むものとしてポット型浄水器に適用した場合には、活性炭成型体の径方向における内周側の側面に、熱融着性短繊維を含む不織布を備えることによる技術的意義がより大きいものになるといえる。
【0029】
活性炭成型体に含まれる活性炭として粒状活性炭を含むものとする場合は、ポット型浄水器に適用した場合に、流量の低減を抑制することと、脱落した活性炭の、浄水フィルターの径方向における内周側の側面から原水貯留部又は浄水貯留部への流入を低減させることと、トリハロメタン等の揮発性有機化合物の除去性能を優れたものとすることとをより一層並立させる観点から、粒状活性炭の積算体積百分率D50が150~500μmであることが好ましく、200~400μmであることがさらに好ましい。なお、本発明において、粒状活性炭の積算体積百分率D50は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製の商品名LA-920)を用いて測定された、粉末状活性炭の粒度分布における積算値が50%となる粒度をいう。
【0030】
本発明の浄水フィルターにおいて、活性炭成型体は、活性炭以外の他の成分を含むことができる。上記他の成分として、熱融着性短繊維が挙げられる。活性炭成型体にも熱融着性短繊維を含有させることにより、活性炭成型体の径方向における内周側の側面に備えられる不織布、及び、後述する、活性炭成型体の径方向における外周側の側面に備えられる不織布との熱融着性がより一層向上する。熱融着性短繊維を含む活性炭成型体は、活性炭が、熱融着性成分によって互いに溶融接着されて形状保持された状態となる。当該熱融着性短繊維に含まれる熱融着性成分としては、融点が80~170℃のものが好ましく、80~140℃であるものがより好ましい。熱融着性成分の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、イソフタル酸等共重合成分が共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂が挙げられる。また、活性炭成型体に含み得る熱融着性短繊維として、単一の熱融着性成分のみから構成される全融タイプ、又は鞘部に熱融着性成分、芯部に、融点が鞘部の融点よりも好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上高い合成樹脂成分を配した、芯鞘型の熱融着性短繊維が挙げられる。中でも、浄水フィルターの強度、とりわけ活性炭成型体を繊維状活性炭を含むものとした場合の浄水フィルターの強度、をより高めるという観点から、芯鞘型の熱融着性短繊維とすることが好ましい。芯鞘型の熱融着性短繊維とする場合、芯部成分としては特に制限されないが、例えば、融点が150~300℃、より好ましくは200~300℃であって、融点が鞘部成分の融点よりも20℃以上高い合成樹脂成分が挙げられる。上記合成樹脂成分の具体例としては、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。また、活性炭成型体の径方向における内周側の側面に備えられる不織布に含有される熱融着性短繊維の熱融着性成分と、活性炭成型体に含有される熱融着性短繊維の熱融着性成分とを同種のものとすることが好ましい。ここで、同種とは、例えば、一方がポリエスエル系であれば他方もポリエスエル系であることを示す。
【0031】
また、活性炭成型体における活性炭以外の他の成分として、パルプが挙げられる。パルプは、活性炭成型体において、機械的強度をより向上させるのに寄与する。パルプとしては、濾水度が1~300、好ましくは10~200が挙げられる。パルプの繊維長としては、0.1~3mmが挙げられる。パルプの具体例としては、アクリル系パルプ、ポリオレフィン系パルプ、アラミド系パルプ、木質パルプ、麻パルプ等が挙げられる。
【0032】
また、活性炭成型体における活性炭以外の他の成分として、イオン交換繊維が挙げられる。イオン交換繊維としては、弱酸型が好ましく、末端官能基がCa若しくはNaで置換されたポリアクリレート系イオン交換繊維が挙げられる。
【0033】
活性炭成型体の形態としては、円筒形状であれば特に制限されないが、例えば、湿式成型された活性炭成型体、又は活性炭を含む乾式不織布又は湿式不織布が捲回された状態で成型されている活性炭成型体が挙げられる。
【0034】
具体的に、湿式成型された活性炭成型体の具体例として、活性炭を含むスラリーを調製し、該スラリーを、多数の吸引用小孔を有する成型用の型枠に流し込み、吸引用小孔を通じて吸引しながら濾過して予備成型体とし、該予備成型体を乾燥する方法(湿式成型法又はスラリー吸引法)により製造される活性炭成型体が挙げられる(以下、「スラリー吸引成型体」と略することがある。)。この場合、得られる活性炭成型体としては、例えば、活性炭が、前述したパルプと絡み合うことにより形状保持されるものが挙げられる。湿式成型された活性炭成型体とする場合、活性炭としては粒状活性炭を含むことが好ましく、粒状活性炭及び繊維状活性炭を含むことがより好ましい。また、湿式成型された活性炭成型体とする場合は、上記した活性炭以外の他の成分の中でも、パルプを含むことが好ましい。
【0035】
また、活性炭を含む乾式不織布又は湿式不織布が捲回された状態で成型されている活性炭成型体において、乾式不織布としては、エアレイド又はカード法(カードウェブ法)により得られる短繊維構造体による不織布、及び当該不織布にニードルパンチ加工を施して積層一体化したニードルパンチ不織布が挙げられる。また、湿式不織布としては、繊維状炭素材料を含む溶液を、パルパー、ビーター、リファイナーなどの装置を用いて混合、せん断し、均一に分散したスラリーを作製し、得られたスラリーをワイヤー上に流し、脱水、乾燥して得られる、湿式抄紙不織布が挙げられる。活性炭を含む乾式不織布又は湿式不織布が捲回された状態で成型されている活性炭成型体とする場合、活性炭として繊維状活性炭を含むことが好ましい。また、活性炭を含む乾式不織布又は湿式不織布が捲回された状態で成型されている活性炭成型体とする場合は、上記した活性炭以外の他の成分の中でも、熱融着性短繊維を含むことが好ましく、熱融着性繊維及びイオン交換繊維を含むことがより好ましい。
【0036】
活性炭成型体の質量(g)と体積(=π×{(外径/2)2-(内径/2)2}×高さ)から算出される見かけ密度としては、0.10~0.55(g/cm3)が挙げられ、0.15~0.5(g/cm3)が好ましく挙げられる。
【0037】
<活性炭成型体の径方向における外周側の側面に配置される不織布>
本発明の浄水フィルターは、活性炭成型体の径方向における外周側の側面にも不織布を備えることができる。当該不織布としては特に制限されないが、前述した、活性炭成型体の径方向における内周側の側面に備えられる不織布と同様の、熱融着性短繊維を含む不織布としてもよい。また、引裂強度が比較的高く、取り扱い性や加工性がより優れるという観点から、長繊維又は連続繊維からなる不織布とすることもできる。また、活性炭成型体の径方向における外周側の側面に配置される不織布は、活性炭成型体の径方向における内周側の側面に配置される不織布と同様、ポット型浄水器に適用した場合にも、流量の低減をより抑制させるという観点から、イオン交換繊維、セルロース系繊維及び動物繊維からなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0038】
長繊維又は連続繊維からなる不織布としては特に制限されないが、スパンボンド不織布とすることが好ましい。スパンボンド不織布を構成する長繊維または連続繊維としては、鞘部に熱融着性成分、芯部に、融点が鞘部の融点よりも好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上高い合成樹脂成分を配した、芯鞘型の熱融着性繊維が挙げられる。上記芯鞘型の熱融着性繊維の芯部としては、例えば融点が150~300℃、より好ましくは200~300℃であって、融点が鞘部の融点よりも20℃以上高い合成樹脂成分が挙げられ、より具体的には、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。上記芯鞘型の熱融着性繊維の鞘部としては、好ましくは融点が80~170℃、より好ましくは80~140℃であるものが挙げられ、より具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂、又はイソフタル酸等共重合成分が共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂が挙げられる。中でも、柔軟性及び活性炭成型体に対する熱融着性により優れ、取り扱い性や加工性により優れるという観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリエチレンがより好ましい。
【0039】
活性炭成型体の径方向における外周側の側面に備えられる不織布の目付としては、流量の低減をより抑制させ、かつ、脱落した活性炭の流出をより抑える観点から、10~100g/m2が好ましく、20~80g/m2がより好ましい。活性炭成型体の径方向における外周側の側面に備えられる不織布の厚さとしては、流量の低減をより抑制させ、かつ、脱落した活性炭の流出をより抑える観点から、0.03~1.0mmが好ましく、0.05~0.6mmがより好ましい。活性炭成型体の径方向における外周側の側面に備えられる不織布の上記目付と上記厚さから算出される見かけ密度としては、0.05~0.5g/cm3が好ましく、0.08~0.4g/cm3がより好ましい。
【0040】
<浄水フィルター>
図1を参照し、本発明の浄水フィルターの、活性炭成型体35の径方向における内周側の側面に配置される不織布36、活性炭成型体35、活性炭成型体35の径方向における外周側の側面に配置される不織布37、の具体的な組合せの例として、以下が挙げられる。
不織布36:熱融着性短繊維を含む不織布/活性炭成型体35:活性炭を含む乾式不織布もしくは湿式不織布が捲回された状態で成型されている活性炭成型体、又は湿式成型された活性炭成型体/不織布37:熱融着性短繊維を含む不織布
不織布36:熱融着性短繊維を含む不織布/活性炭成型体35:活性炭を含む乾式不織布もしくは湿式不織布が捲回された状態で成型されている活性炭成型体、又は湿式成型された活性炭成型体/不織布37:長繊維又は連続繊維からなる不織布
【0041】
浄水フィルターの、円筒形状における高さ(長さ)としては、10~250mmが挙げられ、20~150mmが好ましく挙げられる。また、円柱形状における外径としては、20~100mmが挙げられ、30~65mmが好ましく挙げられる。また、円柱形状における内径としては、5~90mmが挙げられ、10~55mmが好ましく挙げられる。
【0042】
本発明の浄水フィルターの製造方法としては、特に制限されない。例えば、活性炭成型体を、繊維状活性炭を含む乾式不織布又は湿式不織布が捲回された状態で成型されている活性炭成型体とする場合は、次のようにして製造することができる。まず、表面に離型処理が施された円柱状の芯を準備する。次に、当該芯に、活性炭成型体35の径方向における内周側の側面に配置される不織布36を所定の厚さとなるように1回又は複数回巻き付ける。次いで、活性炭成型体35とする繊維状活性炭及び熱融着性短繊維を含む乾式不織布又は湿式不織布を、当該不織布36の上に所定の厚さとなるように1回又は複数回巻き付ける。そして、活性炭成型体35の径方向における外周側の側面に配置される不織布37を所定の厚さとなるように1回又は複数回巻き付ける。そして、得られた、前述の芯に、外径側に向かって不織布36、活性炭成型体とする繊維状活性炭を含む乾式不織布又は湿式不織布、不織布37、の順に巻き付けたものを、炉に入れ、熱処理を施して、熱融着性短繊維の熱融着性成分等を溶融させ、冷却し、上記芯を抜き取ることで、空洞部から外周側の側面に向かって不織布36、活性炭成型体35、不織布37を備える、浄水フィルターを得ることができる。
【0043】
また、例えば、活性炭成型体を湿式成型された活性炭成型体とする場合は、次のようにして製造することができる。まず、表面に離型処理が施された円柱状の芯を準備する。次に、当該芯に、活性炭成型体35の径方向における内周側の側面に配置される熱融着性短繊維を含む不織布36を所定の厚さとなるように1回又は複数回巻き付ける。そして、芯に不織布36を巻き付けたものを、炉に入れ、熱処理を施して、熱融着性短繊維の熱融着性成分等を溶融させ、冷却し、上記芯を抜き取り、コアとする。次に、活性炭成型体の原料を準備し、活性炭成型体の原料と水と混合してスラリーを得る。次いで、例えば、多数の小孔が形成された円筒状の内管と、円筒状の外管とを備えた二重管状容器を用い、内菅の外周側の側面に準備したコアをセットして、コアをセットした内管と外管との間にスラリーを流し込み、中心部からスラリーを吸引することによって円筒型の成型体を得る。この成型体を加熱乾燥させることにより、熱融着性短繊維を含む不織布36/活性炭成型体35とする、本発明の浄水フィルターが得られる。当該浄水フィルターに、活性炭成型体35の径方向における外周側の側面に配置される不織布37を備えさせる場合は、上記得られた熱融着性短繊維を含む不織布36/活性炭成型体35を備える浄水フィルターの、活性炭成型体側表面に、径方向における外周側の側面に配置される不織布37を巻き付け、熱処理を施す等して活性炭成型体35と不織布37を一体化させればよい。
【0044】
(浄水カートリッジ)
本発明の浄水カートリッジは、前述した本発明の浄水フィルターを含むものとすることができる。浄水カートリッジとしては、例えば、
図2~4に示すように、本発明の浄水フィルター3と、浄水フィルター3を内部に含むケーシング2とを備える、浄水フィルター1とすることができる。
【0045】
図2~4を参照し、ケーシング2は、例えば、第1カバー部20と、第2カバー部22から構成される。ケーシング2は、ABS樹脂等を使用して製造することができる。また、本発明の浄水フィルター3の軸方向両端面(
図2における第1面31及び第2面33)に例えばホットメルト接着剤を塗布し、第1カバー部20の面203と上記所薄フィルター3の第1面31および第2カバー部22の面221と上記浄水フィルターの第2面33と、を液密に接着させることができる。また、
図3に示すように、浄水カートリッジ1は、第1カバー部20に形成される水流入部207から流入した原水を、本発明の浄水フィルターで浄化し、第2カバー部22に形成される水流出部223から浄水を流出するものとすることができる。なお、
図3においては、矢印の方向に水が流れる。
【0046】
(浄水器)
また、本発明の浄水器は、本発明の浄水カートリッジを備えるものとすることができる。浄水器としては、原水貯留部に貯留される原水が自重により浄水カートリッジを通って浄化されて浄水貯留部に流れる、ポット型浄水器が挙げられる。
図5にポット型浄水器の一例を示す。同図に示すように、この浄水器100は、上部に開口S1を有する筐体101を備える。筐体101は、内側に、上部が開口したタンク102を有する。タンク102は、原水を貯留するための部分であり、上部の開口S2からタンク102に原水を注ぐことができる。タンク102の底部には開口S4が形成されており、カートリッジ1は、パッキン104とともに開口S4の周縁部をシールするように取り付けられる。タンク102内の原水は、カートリッジ1内部に流入する。なお、開口S2は、開口S1よりも小さく形成されるため、開口S1は、開口S2と開口S3とに区切られる。
【0047】
原水は、カートリッジ1内部を通過した後、カートリッジ1の下方から浄水として流出し、タンク102の下方のサーバー空間103に貯められる。開口S3は、サーバー空間103から浄水を取り出すための取り出し口として機能する。
【実施例】
【0048】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0049】
(実施例1)
(1)浄水フィルターの製造
(1-1)活性炭成型体の径方向における内周側の側面に備えられる、熱融着性短繊維を含む不織布の準備
まず、熱融着性成分としてイソフタル酸が共重合されたポリエチレンテレフタレートを鞘部に、ポリエチレンテレフタレートを芯部に、配した、熱融着性短繊維を準備した。該熱融着性短繊維の、鞘部の融点は110℃、芯部の融点は260℃、繊維長は51mm、繊維径は12μm、繊度2.2dtexであった。該短繊維をカーディングして薄いウェブを形成し、該ウェブにニードルパンチ加工を施して温度175℃で熱処理、冷却することにより、短繊維が3次元にランダムに配列し該繊維同士が互いに交絡し熱融着した、活性炭成型体の径方向における内周側の側面に備えられる、熱融着性短繊維を含む不織布Aを得た。該不織布の目付は50g/m2、厚さは0.18mm、見かけ密度は0.28g/cm3であった。
【0050】
(1-2)活性炭成型体とする不織布の準備
(1-2-1)原材料の準備
活性炭成型体とする不織布を製造するにあたり、以下の原材料を準備した。
・繊維状活性炭(株式会社アドール製商品名「W-10」、メソ細孔率27%、比表面積1100m2/g)
・弱酸型ポリアクリレート系イオン交換繊維(ユニチカ株式会社製Ca置換ポリアクリレート系イオン交換繊維:商品名A-02CAU)
・熱融着性短繊維(熱融着性成分としてイソフタル酸が共重合されたポリエチレンテレフタレートを鞘部に、ポリエチレンテレフタレートを芯部に、配した、熱融着性短繊維、鞘部の融点は110℃、芯部の融点は260℃、繊維長は51mm、繊維径は12μm、繊度は2.2dtex)
【0051】
(1-2-2)活性炭を含む湿式不織布の製造
上記繊維状活性炭を78質量部、イオン交換繊維を10質量部、熱融着性短繊維を12質量部、合計100質量部を、パルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製した。得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後、プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取った。その後、熱プレスローラーでシートを110℃で熱プレスし、湿式不織布Bを得た。
【0052】
(1-3)活性炭成型体の径方向における外周側の側面に備えられる不織布の準備
スパンボンド不織布C(ユニチカ株式会社製商品名エルベス(登録商標)S0303WTO、芯部がポリエステル系樹脂からなり、鞘部がポリオレフィン系樹脂からなる芯鞘型複合繊維である連続繊維からなるスパンボンド不織布であり、堆積された連続繊維同士が、熱エンボス加工により部分的に圧着されることにより一体化された不織布、該不織布の目付30g/m2、厚さ0.23mm、見かけ密度0.13g/cm3)を準備した。
【0053】
(1-4)浄水フィルターの製造
芯として外径が23.7mmの鉄製の円筒状パイプを準備し、当該芯に、不織布Aを所定の厚さとなるように捲回し、次いで、当該不織布Aの上に、活性炭成型体とする活性炭を含む湿式不織布Bを、当該不織布Aの上に所定の厚さとなるように捲回し、さらに、活性炭を含む湿式不織布Bの上に、スパンボンド不織布Cを所定の厚さとなるように捲回した。そして、不織布A、活性炭を含む湿式不織布B、及びスパンボンド不織布Cを捲回した状態で、炉に入れ、雰囲気温度150℃で2時間熱処理を施した後、自然冷却した。その後、芯を除去した後、カット機で92mmの長さにカットし、本発明の浄水フィルターを得た。なお、浄水フィルターの高さ(長さ)L1は92mm、外径は40mm、内径は22.4mmであった。また、浄水フィルターにおける活性炭成型体は、外径が39.5mm、内径が22.8mm、質量が18.2gであり、活性炭成型体に含有される熱融着性短繊維の熱融着性成分、不織布Aの熱融着性短繊維の熱融着性成分及びスパンボンド不織布Cを構成する複合繊維のポリオレフィン系樹脂が溶融することにより、不織布Aと活性炭成型体、スパンボンド不織布Cと活性炭成型体とが融着していた。
【0054】
(2)浄水カートリッジの製造
得られた浄水フィルター3と、当該浄水フィルター3を内部に含むケーシング2と、を含む、in―outタイプの浄水カートリッジを製造した。
図2~4に示すように、ケーシング2を構成する第1カバー部20と、第2カバー部22をABS樹脂を使用して製造した。ケーシング2の成型にはMOMENT社製3Dプリンター(型番:MOMENTS)を使用した。次に、本発明の浄水フィルター3の軸方向両端面に接着剤(東亜合成製、商品名:PPET-1025)をそれぞれ1g均一に広がるように塗布し、第1カバー部20の面203および第2カバー部22の面221と、浄水フィルターと、を液密に接着し、ケーシング2内部に本発明の浄水フィルターを充填した浄水カートリッジを得た。当該浄水カートリッジ1は、第1カバー部20に形成される水流入部270から流入した原水を、本発明の浄水フィルターで浄化し、第2カバー部22に形成される水流出部223から浄水を流出するものであり、
図3に示す矢印の方向に水が流れる構造である。
【0055】
(3)浄水器の製造
図4に示すように、得られた浄水カートリッジが良好に取り付けられる、開口部S4を設けた貯留タンク102をMOMENT社製3Dプリンター(型番:MOMENTS)を使用して成型した。浄水カートリッジは、パッキン104とともに開口S4の周縁部をシールするように取り付けられるものであり、貯留タンク102に貯められた水は、浄水カートリッジ内部を通過せずにタンク102の下方のサーバー空間103へ漏出することはなかった。貯留タンク2の容量は0.7Lであった。浄水器100のその他の構成については、一般的に用いられる浄水器と同様であるので、ここでは、その詳細な説明は割愛する。
【0056】
(実施例2)
(1)浄水フィルターの製造
(1-1)活性炭成型体の径方向における内周側の側面に備えられる、熱融着性短繊維を含む不織布の準備
(1-1-1)原材料の準備
上記不織布を製造するにあたり、以下の原材料を準備した。
・熱融着性短繊維(実施例1で準備した、活性炭成型体の径方向における内周側の側面に備えられる、熱融着性短繊維を含む不織布に用いた熱融着性短繊維を準備した。)
・繊維状活性炭(株式会社アドール製商品名「A-7」、メソ細孔率4%、比表面積850m2/g)
・弱酸型ポリアクリレート系イオン交換繊維(ユニチカ株式会社製Ca置換ポリアクリレート系イオン交換繊維:商品名A-02CAU)
【0057】
(1-1-2)熱融着性短繊維を含む不織布の製造
上記熱融着性短繊維35質量部、繊維状活性炭20質量部、イオン交換繊維45質量部、合計100質量部を、混合し、カーディングして薄いウェブを形成し、該ウェブにニードルパンチ加工を施して温度110℃で熱処理、冷却することにより、短繊維が3次元にランダムに配列し該繊維同士が互いに交絡し熱融着した、活性炭成型体の径方向における内周側の側面に備えられる、熱融着性短繊維を含む不織布Dを得た。該不織布の目付は70g/m2、厚さは0.42mm、見かけ密度は0.17g/cm3であった。
【0058】
(1-2)活性炭成型体とする不織布の準備
実施例1と同一の、活性炭成型体とする不織布Bを準備した。
【0059】
(1-3)活性炭成型体の径方向における外周側の側面に備えられる不織布の準備
実施例1と同一の、活性炭成型体の径方向における外周側の側面に備えられる不織布C(スパンボンド不織布)を準備した。
【0060】
芯として外径が23.7mmの鉄製の円筒状パイプを準備し、当該芯に、不織布Dを所定の厚さとなるように捲回し、次いで、当該不織布Dの上に、活性炭成型体とする活性炭を含む湿式不織布Bを、当該不織布Dの上に所定の厚さとなるように捲回し、さらに、活性炭を含む湿式不織布Bの上に、スパンボンド不織布Cを所定の厚さとなるように捲回した。そして、不織布D、活性炭を含む湿式不織布B、及びスパンボンド不織布Cを捲回した状態で、炉に入れ、雰囲気温度150℃で2時間熱処理を施した後、自然冷却した。その後、芯を除去した後、カット機で92.0mmの長さにカットし、本発明の浄水フィルターを得た。なお、浄水フィルターの高さ(長さ)L1は92.0mm、外径は40.0mm、内径は22.4mmであった。また、浄水フィルターにおける活性炭成型体は、外径が39.5mm、内径が23.2mm、質量が17.2gであり、活性炭成型体に含有される熱融着性短繊維の熱融着性成分、不織布Dの熱融着性短繊維の熱融着性成分及びスパンボンド不織布Cを構成する複合繊維のポリオレフィン系樹脂が溶融することにより、不織布Dと活性炭成型体、スパンボンド不織布Cと活性炭成型体とが融着していた。
【0061】
(2)浄水カートリッジの製造
実施例1と同様に、浄水カートリッジを準備した。
【0062】
(3)浄水器の製造
実施例1と同様に 浄水器を準備した。
【0063】
(比較例1)
(1-1)活性炭成型体の径方向における内周側の側面に備えられる不織布の準備
実施例1において活性炭成型体の径方向における外周側の側面に備えられる不織布として準備した不織布と同一の不織布C(スパンボンド不織布)を準備した。
【0064】
(1-2)活性炭成型体とする不織布の準備
実施例1と同一の、活性炭成型体とする不織布Bを準備した。
【0065】
(1-3)活性炭成型体の径方向における外周側の側面に備えられる不織布の準備
実施例1と同一の、活性炭成型体の径方向における外周側の側面に備えられる不織布C(スパンボンド不織布)を準備した。
【0066】
(1-4)浄水フィルターの製造
芯として外径が23.7mmの鉄製の円筒状パイプを準備し、当該芯に、不織布Cを所定の厚さとなるように捲回し、次いで、当該不織布Cの上に、活性炭成型体とする活性炭を含む湿式不織布Bを、当該不織布Cの上に所定の厚さとなるように捲回し、さらに、活性炭を含む湿式不織布Bの上に、別のスパンボンド不織布Cを所定の厚さとなるように捲回した。そして、不織布C、活性炭を含む湿式不織布B、及びスパンボンド不織布Cを捲回した状態で、炉に入れ、雰囲気温度150℃で2時間熱処理を施した後、自然冷却した。その後、芯を除去した後、カット機で92.0mmの長さにカットし、比較例の浄水フィルターを得た。なお、浄水フィルターの高さ(長さ)L1は92.0mm、外径は40.0mm、内径は22.4mmであった。また、浄水フィルターにおける活性炭成型体は、外径が39.5mm、内径が22.9mm、質量が18.3gであり、活性炭成型体に含有される熱融着性短繊維の熱融着性成分、スパンボンド不織布Cを構成する複合繊維のポリオレフィン系樹脂が溶融することにより、内層側のスパンボンド不織布Cと活性炭成型体、外層側のスパンボンド不織布Cと活性炭成型体とが融着していた。
【0067】
(2)浄水カートリッジの製造
実施例1と同様に、浄水カートリッジを製造した。
【0068】
(3)浄水器の製造
実施例1と同様に浄水器を製造した。
【0069】
(比較例2)
(1)浄水フィルターの製造
(1-1)活性炭成型体とする不織布の準備
実施例1と同一の、活性炭成型体とする不織布Bを準備した。
【0070】
(1-2)活性炭成型体の径方向における外周側の側面に備えられる不織布の準備
実施例1と同一の、活性炭成型体の径方向における外周側の側面に備えられる不織布C(スパンボンド不織布)を準備した。
【0071】
(1-3)浄水フィルターの製造
芯として外径が23.7mmの鉄製の円筒状パイプを準備し、当該芯に、活性炭成型体とする活性炭を含む湿式不織布Bを所定の厚さとなるように捲回し、さらに、活性炭を含む湿式不織布Bの上に、スパンボンド不織布Cを所定の厚さとなるように捲回した。そして、活性炭を含む湿式不織布B、及びスパンボンド不織布Cを捲回した状態で、炉に入れ、雰囲気温度150℃で2時間熱処理を施した後、自然冷却した。その後、芯を除去した後、カット機で92.0mmの長さにカットし、比較例の浄水フィルターを得た。なお、浄水フィルターの高さ(長さ)L1は92.0mm、外径は40.0mm、内径は22.5mmであった。また、浄水フィルターにおける活性炭成型体は、外径が39.5mm、内径が22.4mm、質量が18.3gであり、活性炭成型体に含有される熱融着性短繊維の熱融着性成分、スパンボンド不織布Cを構成する複合繊維のポリオレフィン系樹脂が溶融することにより、外層側のスパンボンド不織布Cと活性炭成型体とが融着していた。
【0072】
(2)浄水カートリッジの製造
実施例1と同様に、浄水カートリッジを製造した。
【0073】
(3)浄水器の製造
実施例1と同様に浄水器を製造した。
【0074】
(実施例1及び2、並びに比較例1及び2の浄水フィルターの評価)
(1)流量
得られた浄水器を用い、JIS S 3201 2017 6.1 ろ過流量試験 c)1)に準じ、ろ過流量を測定、算出した。結果を表1に示す。
(2)脱落した活性炭の原水貯留部への流入の評価
上記ろ過流量の測定の際に、原水貯留部に水が溜まっている状態で、目視で脱落した活性炭の有無を確認した。結果を表1に示す。
【0075】
【0076】
表1に示すように、実施例1及び2の浄水フィルターは、円筒形状である活性炭成型体、及び前記活性炭成型体の径方向における内周側の側面に配置される不織布、を含む、浄水フィルターであって、前記不織布が熱融着性短繊維を含む不織布であることから、ポット型浄水器に適用した場合にも、流量の低減を抑制することに寄与し、かつ、脱落した活性炭の、浄水フィルターの径方向における内周側の側面から原水貯留部又は浄水貯留部への流入を低減することに寄与することができるものであった。
【0077】
一方、比較例1の浄水フィルターは、活性炭成型体の径方向における内周側の側面に熱融着性短繊維を含む不織布を備えず、連続繊維からなるスパンボンド不織布を備えるものであったことから、流量が充分でなく、浄水に時間がかかるものであった。
【0078】
また、比較例2は、活性炭成型体の径方向における内周側の側面に、熱融着性短繊維を含む不織布を備えないものであったことから、脱落した活性炭の原水貯留部への流入が認められた。
【0079】
(実施例3)
(1)浄水フィルターの製造
(1-1)活性炭成型体の径方向における内周側の側面に備えられる、熱融着性短繊維を含む不織布コアの準備
実施例1と同一の、熱融着性短繊維を含む不織布Aを準備した。次に、芯として外径が23.7mmの鉄製の円筒状パイプを準備し、当該芯に、不織布Aを所定の厚さとなるように捲回し、炉に入れ、雰囲気温度150℃で2時間熱処理を施した後、自然冷却した。その後、芯を除去した後、カット機で92mmの長さにカットし、不織布コアを得た。なお、不織布コアは、外径が26.0mm、内径が22.1mm、質量が4.91gで見かけ密度は0.36g/cm3であった。
【0080】
(1-2)活性炭成型体の径方向における外周側の側面に備えられる不織布の準備
実施例3と同一の、湿式不織布Eを準備した。
【0081】
(1-3)浄水フィルターの製造
活性炭繊維(ユニチカ製、製品名:W-10W)を57.0質量%、粒状活性炭(クラレケミカル製、製品名:GW48/100THM D50=371.1μm)を31.5質量%、粒状活性炭(クラレケミカル製、製品名:T-SB48/100、D50=363.3μm)を3質量%、バインダー繊維(日本エクスラン工業製、製品名:BiPUL)を4.5質量%を水に分散させてスラリーを得た。多数の小孔が形成された円筒状の内管と、円筒状の外管とを備えた二重管状容器を用い、内菅の外周側の側面に準備したコアをセットして、コアをセットした内管と外管との間にスラリーを流し込み、中心部からスラリーを吸引することによって円筒型の成型体を得た。その後、得られた円筒形の成型体に湿式不織布Eを捲きつけ、捲き始めと捲き終わりを250℃に加熱したアイロンで熱接着することで本発明の浄水フィルターを得た。なお、浄水フィルターの高さ(長さ)L1は92mm、外径は40mm、内径は22.2mmであった。また、浄水フィルターにおける活性炭成型体は、外径が39.8mm、内径が26.0mm、質量が20.4gであった。
【0082】
(2)浄水カートリッジの製造
実施例1と同様に、浄水カートリッジを製造した。
【0083】
(3)浄水器の製造
実施例1と同様に浄水器を製造した。
【0084】
(比較例3)
(1)浄水フィルターの製造
(1-1)活性炭成型体の径方向における内周側の側面に備えられる、熱融着性短繊維を含む不織布コアの準備
実施例1において活性炭成型体の径方向における外周側の側面に備えられる不織布として準備した不織布と同一の不織布C(スパンボンド不織布)を準備した。次に、芯として外径が23.7mmの鉄製の円筒状パイプを準備し、当該芯に、不織布Cを所定の厚さとなるように捲回し、炉に入れ、雰囲気温度150℃で2時間熱処理を施した後、自然冷却した。その後、芯を除去した後、カット機で92mmの長さにカットし、不織布コアを得た。なお、不織布コアは、外径が25.9mm、内径が22.4mm、質量が3.50gで見かけ密度は0.29g/cm3であった。
【0085】
(1-2)活性炭成型体の径方向における外周側の側面に備えられる不織布の準備
実施例3と同一の、湿式不織布Eを準備した。
【0086】
(1-3)浄水フィルターの製造
活性炭繊維(ユニチカ製、製品名:W-10W)を57.0質量%、粒状活性炭(クラレケミカル製、製品名:GW48/100THM D50=371.1μm)を31.5質量%、粒状活性炭(クラレケミカル製、製品名:T-SB48/100、D50=363.3μm)を3質量%、バインダー繊維(日本エクスラン工業製、製品名:BiPUL)を4.5質量%を水に分散させてスラリーを得た。多数の小孔が形成された円筒状の内管と、円筒状の外管とを備えた二重管状容器を用い、内菅の外周側の側面に準備したコアをセットして、コアをセットした内管と外管との間にスラリーを流し込み、中心部からスラリーを吸引することによって円筒型の成型体を得た。その後、得られた円筒形の成型体に湿式不織布Eを捲きつけ、捲き始めと捲き終わりを250℃に加熱したアイロンで熱接着することで本発明の浄水フィルターを得た。なお、浄水フィルターの高さ(長さ)L1は92mm、外径は40mm、内径は22.2mmであった。また、浄水フィルターにおける活性炭成型体は、外径が39.8mm、内径が26.2mm、質量が19.0gであった。
【0087】
(2)浄水カートリッジの製造
実施例1と同様に、浄水カートリッジを製造した。
【0088】
(3)浄水器の製造
実施例1と同様に浄水器を製造した。
【0089】
(実施例3及び比較例3の浄水フィルターの評価)
実施例1及び2、並びに比較例1及び2の浄水フィルターの評価と同じ評価をおこなった。結果を表2に示す。
【0090】
【0091】
表2に示すように、実施例3の浄水フィルターは、円筒形状である活性炭成型体、及び前記活性炭成型体の径方向における内周側の側面に配置される不織布、を含む、浄水フィルターであって、前記不織布が熱融着性短繊維を含む不織布であることから、ポット型浄水器に適用した場合にも、流量の低減を抑制することに寄与し、かつ、脱落した活性炭の、浄水フィルターの径方向における内周側の側面から原水貯留部又は浄水貯留部への流入を低減することに寄与することができるものであった。
【0092】
一方、比較例3の浄水フィルターは、活性炭成型体の径方向における内周側の側面に熱融着性短繊維を含む不織布を備えず、連続繊維からなるスパンボンド不織布を備えるものであったことから、原水が浄水フィルターを通過できなかった。
【0093】
(実施例4)
(1)浄水フィルターの製造
(1-1)活性炭成型体の径方向における内周側の側面に備えられる、熱融着性短繊維を含む不織布の準備
実施例1と同一の、熱融着性短繊維を含む不織布Aを準備した。
【0094】
(1-2)活性炭成型体とする不織布の準備
実施例1と同一の、活性炭成型体とする不織布Bを準備した。
【0095】
(1-3)活性炭成型体の径方向における外周側の側面に備えられる不織布の準備
湿式不織布E(日本製紙パピリア株式会社製商品名パールパックWX、該不織布の目付20g/m2、厚さ0.06mm、見かけ密度0.33g/cm3、熱融着性成分としてイソフタル酸が共重合されたポリエチレンテレフタレートを鞘部に、ポリエチレンテレフタレートを芯部に配した熱融着性短繊維、木材パルプ、ポリエチレンテレフタレート繊維、及びポリプロピレン繊維を含有)を準備した。
【0096】
(1-4)浄水フィルターの製造
芯として外径が23.7mmの鉄製の円筒状パイプを準備し、当該芯に、不織布Aを所定の厚さとなるように捲回し、次いで、当該不織布Aの上に、活性炭成型体とする活性炭を含む湿式不織布Bを、当該不織布Aの上に所定の厚さとなるように捲回し、さらに、活性炭を含む湿式不織布Bの上に、湿式不織布Eを所定の厚さとなるように捲回した。そして、不織布A、活性炭を含む湿式不織布B、及び湿式不織布Eを捲回した状態で、炉に入れ、雰囲気温度150℃で2時間熱処理を施した後、自然冷却した。その後、芯を除去した後、カット機で92mmの長さにカットし、本発明の浄水フィルターを得た。なお、浄水フィルターの高さ(長さ)L1は92mm、外径は40mm、内径は22.4mmであった。また、浄水フィルターにおける活性炭成型体は、外径が39.5mm、内径が22.8mm、質量が18.2gであり、活性炭成型体に含有される熱融着性短繊維の熱融着性成分、不織布Aの熱融着性短繊維の熱融着性成分及び湿式不織布Eを構成する熱融着性成分が溶融することにより、不織布Aと活性炭成型体、湿式不織布Eと活性炭成型体とが融着していた。
【0097】
(2)浄水カートリッジの製造
実施例1と同様に、浄水カートリッジを製造した。
【0098】
(3)浄水器の製造
実施例1と同様に浄水器を製造した。
【0099】
(実施例4の浄水フィルターの評価)
実施例1及び2、並びに比較例1及び2の浄水フィルターの評価と同じ評価をおこなった。結果を表3に示す。
【0100】
【0101】
表3に示すように、実施例4の浄水フィルターは、円筒形状である活性炭成型体、及び前記活性炭成型体の径方向における内周側の側面に配置される不織布、を含む、浄水フィルターであって、前記不織布が熱融着性短繊維を含む不織布であることから、ポット型浄水器に適用した場合にも、流量の低減を抑制することに寄与し、かつ、脱落した活性炭の、浄水フィルターの径方向における内周側の側面から原水貯留部又は浄水貯留部への流入を低減することに寄与することができるものであった。
【符号の説明】
【0102】
1 カートリッジ
2 ケーシング
3 浄水フィルター
20 第1カバー部
21 側壁部
22 第2カバー部
31 第1面
32 側周部
33 第2面
34 空洞部
35 活性炭成型体
36 活性炭成型体の径方向における内周側に配置される不織布
37 活性炭成型体の径方向における外周側に配置される不織布
203 面
207 流入部
208 第1突部(第1接触部)
221 面
223 流出部
224 第2突部(第2接触部)
230 空間
300 シート