IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社成光工業の特許一覧

特許7546899セルロースナノファイバーの繊維の粉体を含有するホットメルト接着剤
<>
  • 特許-セルロースナノファイバーの繊維の粉体を含有するホットメルト接着剤 図1
  • 特許-セルロースナノファイバーの繊維の粉体を含有するホットメルト接着剤 図2
  • 特許-セルロースナノファイバーの繊維の粉体を含有するホットメルト接着剤 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】セルロースナノファイバーの繊維の粉体を含有するホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20240902BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240902BHJP
   C09J 193/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J11/08
C09J193/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020150213
(22)【出願日】2020-09-08
(65)【公開番号】P2022044861
(43)【公開日】2022-03-18
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】500439548
【氏名又は名称】株式会社成光工業
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【弁理士】
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】秋澤 成久
(72)【発明者】
【氏名】松尾 光祐
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-199526(JP,A)
【文献】特開2019-099655(JP,A)
【文献】特表2020-521013(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0090156(US,A1)
【文献】特表2008-505988(JP,A)
【文献】特表平08-509259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースナノファイバーの繊維の粉体を、加熱溶融させた松脂でコーティングする工程と、
エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、合成ゴム樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂の少なくとも一つの熱可塑性樹脂を加熱溶融させる工程と、
当該加熱溶融させた熱可塑性樹脂の中に、前記松脂でコーティングされたセルロースナノファイバーの繊維と、カルナバ蝋、椿オイル、ヤシ油の少なくともいずれかを含む植物性油脂を入れて混練させた後、グルースティックを生成する工程と、
を備えたことを特徴とするホットメルト接着剤の製造方法。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂を加熱溶融させる工程が、前記松脂の溶融温度よりも低い温度で熱可塑性樹脂を加熱溶融させるものである請求項1に記載のホットメルト接着剤の製造方法。
【請求項3】
前記セルロースナノファイバーの繊維、平均粉体長さが200nm~2000nmの範囲内で構成されるものである請求項1に記載のホットメルト接着剤の製造方法
【請求項4】
前記セルロースナノファイバーの繊維、平均径が3nm~10nmの範囲内で構成されるものである請求項1に記載のホットメルト接着剤の製造方法
【請求項5】
エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、合成ゴム樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂の少なくとも一つの熱可塑性樹脂と、
松脂でコーティングされたセルロースナノファイバーの繊維の粉体と、
カルナバ蝋、椿オイル、ヤシ油の少なくともいずれかを含む植物性油脂と、
を含むホットメルト接着剤。
【請求項6】
前記セルロースナノファイバーの繊維が、平均粉体長さが200nm~2000nmの範囲内で構成されるものである請求項5に記載のホットメルト接着剤。
【請求項7】
前記セルロースナノファイバーの繊維が、平均径が3nm~10nmの範囲内で構成されるものである請求項5に記載のホットメルト接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤に関するものであり、より詳しくは、低温下でも接着性に優れ、また、接着面を強固に保持できるようにしたホットメルト接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、物流の増加により、段ボールで梱包された商品の流通が非常に多くなってきている。このような段ボールを用いて商品を流通させる場合、一般的に、段ボールの中に商品を入れるとともに、その後、段ボールの封函部分を接着剤などで接着させてから流通させるようにしている。
【0003】
ところで、このような段ボールの封函部分を接着剤で接着させる場合、出荷までの短時間のうちに固化させる必要があるとともに、流通時において、その接着部分を強固に保持させておくことが必要とされる。
【0004】
これに対して、段ボールの封函部分などを接着させる場合、一般的には、澱粉糊(特許文献1)やホットメルトなどを用いた接着剤(特許文献2)などが使用されるが、澱粉糊を用いた接着方法では、乾燥時間が5分から10分程度と非常に遅く、短時間のうちに出荷させることができない。また、物流で使用される段ボールには撥水加工が施されているため、水溶性の澱粉糊は馴染まず、また、糊に含まれる揮発成分が揮発して固化した場合、輸送時に段ボールに変形圧力がかかると、図1の上図に示すように、糊にクラックが入って接着部分が剥がれ易くなるといった問題があった。
【0005】
一方、ホットメルトによって接着させる場合、主成分となるポリ酢酸ビニルやオレフィンなどの樹脂を溶かして常温下で固化させることができるため、瞬時に接着面を接着させることができるというメリットがある。しかしながら、ダンボールの表面は撥水剤が施されて平滑化しているため、図2の上図に示すように、段ボールの封函部分の端部から剥がす方向の力が掛かると、簡単、かつ、綺麗な状態で接着部分が剥がれてしまうといった問題がある。また、ホットメルトの接着剤に使用される樹脂は、常温で瞬時に固化する樹脂が用いられるため、極寒地などにおいては、大きく収縮してしまい、接着部分が剥がれてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-249414号公報
【文献】特開2020-094145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、瞬時に接着部分を固化させることができるとともに、低温下でも接着性に優れ、また、接着面を強固に保持できるようにしたホットメルト接着剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、セルロースナノファイバーの繊維の粉体を、加熱溶融させた松脂でコーティングする工程と、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、合成ゴム樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂の少なくとも一つの熱可塑性樹脂を加熱溶融させる工程と、当該加熱溶融させた熱可塑性樹脂の中に、前記松脂でコーティングされたセルロースナノファイバーの繊維と、カルナバ蝋、椿オイル、ヤシ油の少なくともいずれかを含む植物性油脂を入れて混練させた後、グルースティックを生成する工程と、を用いてホットメルト接着剤を生成するようにしたものである。
【0009】
このように構成すれば、接着部分に端部から剥がす方向の力が働いた場合であっても、セルロースナノファイバーの繊維によって、その力を種々の方向に逃がすことができ、接着部分が均一な方向で剥がれてしまうようなことがなくなるとともに、寒冷地においても、セルロースナノファイバーによって樹脂の収縮を抑えて接着状態を保持させることができるようになる。特に、ベースとなる樹脂にセルロースナノファイバーを馴染ませ、且つ塗布時でも樹脂に拡散した状態でフィラーが絡まることがなく、接着剤が固化しても分散を保持させることができるようになる。また、植物性油脂を含有させることで、樹脂の収縮を抑えることができるとともに、樹脂だけを用いた場合よりも融点を低くすることができ、また、接着剤を溶融させる際に粘度を低く抑えることができる。さらには、接着後における匂いを少なくすることができ、加えて、植物性油脂は、固形化してもパラフィン、エチレン酢酸ビニル樹脂よりも軟質で粘りがあるため、固形化後のクラックの発生も少なくすることができる。
【0010】
また、このような発明において、前記熱可塑性樹脂を加熱溶融させる場合、前記松脂の溶融温度よりも低い温度で熱可塑性樹脂を加熱溶融させる。
【0011】
さらに、前記セルロースナノファイバーの繊維として、平均粉体長さが0.2μm~2μmの範囲内で構成されるものを用いる。
【0012】
また、前記セルロースナノファイバーの繊維として、平均径が3nm~10nmの範囲内で構成されるものを用いる。
【0013】
このような大きさの繊維を用いれば、樹脂による接着と、剥がす際の応力の分散や、収縮の防止などを図ることができるようになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、接着部分に端部から剥がす方向の力が働いた場合であっても、セルロースナノファイバーの繊維によって、その力を種々の方向に逃がすことができ、接着部分が均一な方向で剥がれてしまうようなことがなくなるとともに、寒冷地においても、セルロースナノファイバーによって樹脂の収縮を抑えて接着状態を保持させることができるようになる。特に、ベースとなる樹脂にセルロースナノファイバーを馴染ませ、且つ塗布時でも樹脂に拡散した状態でフィラーが絡まることがなく、接着剤が固化しても分散を保持させることができるようになる。また、植物性油脂を含有させることで、樹脂の収縮を抑えることができるとともに、樹脂だけを用いた場合よりも融点を低くすることができ、また、接着剤を溶融させる際に粘度を低く抑えることができる。さらには、接着後における匂いを少なくすることができ、加えて、植物性油脂は、固形化してもパラフィン、エチレン酢酸ビニル樹脂よりも軟質で粘りがあるため、固形化後のクラックの発生も少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態と従来のホットメルト接着剤の断面概要を示す比較図
図2】同形態における剥離状態を示す比較図
図3】本発明の一実施の形態であるホットメルト接着剤の試験データを示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
【0017】
この実施の形態におけるホットメルト接着剤は、例えば、紙や段ボールなどを接着させるもので、グルーガンを用いて加熱・溶融させ、常温下で接着させるようにしたものである。そして、特徴的に、そのホットメルト接着剤を、70℃から160℃の範囲内で溶融する樹脂や、セルロースナノファイバーの繊維を備えて生成し、これによって、接着部分の端部から剥がす方向に力が働いた場合であっても、その力をセルロースナノファイバーの繊維の軸方向に分散させ、接着部分が綺麗に剥がれてしまうことを防止するとともに、冷温下においても、そのセルロースナノファイバーの繊維によって樹脂の収縮を抑えて、接着部分が剥がれないようにしたものである。以下、本実施の形態について、詳細に説明する。
【0018】
まず、ホットメルト接着剤に使用される樹脂は、グルーガンによって加熱・溶着できるようにしたものであって、溶融温度が70℃から160℃(好ましくは、80℃から110℃)の範囲内の熱可塑性樹脂として、例えば、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、合成ゴム樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂などが用いられる。このうち、エチレン酢酸ビニル樹脂(溶融温度約85℃から110℃)は、段ボールや化粧箱、紙、布、木材、プラスチックなどの接着に適しており、段ボールなどの紙製品の接着に好適に使用することができる。一方、ポリオレフィン樹脂(溶融温度約100℃から160℃)は、プラスチックの接着に適しており、またポリアミド樹脂(溶融温度約145℃から155℃)は、耐熱性や耐油性、難燃性が必要とされる電子部品の接着に適しており、合成ゴム樹脂(溶融温度約90℃から110℃)は、再剥離可能な低粘着性が要求される部分の接着に適しており、アクリル樹脂(溶融温度約90℃)は、柔軟性に富むプラスチックやゴム、フィルム、シート、コート紙、アルミ蒸着フィルムなどの接着に適しており、ポリウレタン樹脂(溶融温度約120℃から140℃)は、耐熱性や強い接着強度や耐久性が要求される部分の接着に適しており、これらの用途に応じて適宜選択して使用される。なお、接着用途として、段ボールなどの封函として使用する場合は、ポリ酢酸ビニル樹脂や、ポリオレフィン樹脂などを用いるのがよい。
【0019】
この樹脂のフィラーの構成は、セルロースナノファイバーの繊維や、そのセルロースナノファイバーをコーティングする松脂や植物性油脂などが用いられる。
【0020】
このうち、セルロースナノファイバーの繊維は、紙の原料である木材パルプをナノレベルまで細かく粉砕したものであって、樹脂が接着部分から剥がれるのを防止するとともに、低温下での樹脂の収縮を防止することを主目的として使用される。このとき、セルロースナノファイバーの繊維長が長すぎたり、あるいは、その成分含有量が多すぎると、接着部分と樹脂の間にセルロースナノファイバーが挟まり込んでしまい、接着性能が悪くなる。一方、繊維長が短すぎたり、あるいは、成分含有量が少なすぎると、撥水剤が塗布された段ボールや、平滑化された接着部分に接着させた場合、接着剤が一気に剥がれてしまう。そこで、この実施の形態では、セルロースナノファイバーの平均繊維長として200nmから2000nm、平均繊維径3nm~10nmの範囲内の繊維を用いるものとし、その成分含有量として、樹脂100重量部に対して0.01重量部から0.2重量部の範囲内で含有させるようにしておく。
【0021】
一方、このセルロースナノファイバーの繊維を樹脂に混入させる場合、セルロースナノファイバーの繊維の塊によって接着力が弱くなる部分が生じる可能性があり、また、セルロースナノファイバーが樹脂に馴染まなくなる。そこで、セルロースナノファイバーの表面をあらかじめコーティングさせておき、これによって、接着力を高めるようにするとともに、樹脂に馴染みやすくさせるようにしている。ここで、コーティング剤として、松脂などを用いるようにし、あらかじめ、セルロースナノファイバーと松脂を3本ロール機に入れ、加熱状況下で液化させながらコーティングさせるようにしておく。
【0022】
また、植物性油脂は、樹脂の収縮を抑えて接着を安定させる働きや、融点を低くする働きや、溶着させる際の粘度を低くする粘度調整剤としての働き、有臭の樹脂を無臭にする働きを有するものなどが用いられる。具体的には、室温では柔らかく滑らかな個体であって、溶融点が100℃よりも低い植物性蝋として、亜麻仁油、ダルマン樹脂、ヒバ油、紅花油、桐油、カルナバ蝋、サトウキビ蝋、パーム蝋、カンデリラ蝋、ホホバ油、大豆油、椿オイルなどが用いられるが、ここでは、非常に硬く、融点が82℃から86℃程度のカルナバ蝋を用いる。この植物性油脂としては、樹脂100重量部に対して、5重量部から10重量部の範囲内で含有させるようにする。
【0023】
また、これ以外に、熱安定剤、防腐剤、防カビ剤、充填剤、界面活性剤、着色剤などを必要に応じて充填させることもできる。
【0024】
次に、このホットメルト接着剤の製造方法について説明する。
【0025】
まず、平均粒子長として200nmから2000nm、平均径が3nm~10nmの範囲内のセルロースナノファイバーの繊維の粉体を用意し、これとコーティング剤としての松脂を混合させて、三本ロール機に入れる。このとき、後に使用する樹脂100重量部に対して、セルロースナノファイバーの繊維を0.01重量部から0.2重量部とし、コーティング剤としての松脂を5重量部から15重量部として混練させる。この混練においては、三本ロール機の温度を110℃程度にしておき、溶融温度が150℃付近の松脂は完全溶融せず半ペースト状であり、完全な液化にさせていないため、仕込み部分の後ロールと中間ロールで圧縮とより強いせん断力が加えられる。中間ロールと仕上の前ロールとの間で、粉砕や混練・分散・脱泡などを行うようにしてセルロースナノファイバーの繊維の表面に松脂をコーティングさせる。そして、このように松脂をコーティングさせたセルロースナノファイバーの繊維は前ロールから最終的に原料を削ぐドクターナイフ(削ぎ刃)の部分で冷却されながらフレーク状で回収される。
【0026】
次に、このようにフレーク状にしたセルロースナノファイバーの繊維を、植物性油脂などとともに140℃程度に加熱溶融させたベースとなる樹脂の中に入れ、ミキサーで混練させる。このとき、セルロースナノファイバーの繊維は、溶融温度がベースとなる樹脂よりも高い溶融温度を持つ松脂によってコーティングされているため、松脂のマトリクスを保持した状態でベースとなる樹脂中で拡散・分散させることができるようになる。
【0027】
そして、所定時間ミキサーで混練させた後、押出成形機によってスティック状のグルースティックを成形する。
【0028】
このように成形されたグルースティックを用いて段ボール、または布、プラスチック、金属などを接着させる場合、グルースティックをグルーガンにセットし、加熱・溶融させる。このとき、植物性油脂によって溶融温度が低くなるため、植物性油脂がない場合に比べて比較的粘度を低くした状態で薄く、凹凸がないように接着剤を塗布することができるようになる。また、植物性油脂の含有濃度を少なくすれば粘性を上げることもできる。
【0029】
そして、このようにグルーガンによって樹脂を溶融させて段ボールなどを接着させ、室温に冷却させることによって、接着部分を固化させる。
【0030】
このとき、接着部分の端部から段ボールを剥がすように力が加えられると、ホットメルト接着剤に含まれるセルロースナノファイバーの繊維によって、その力が繊維の長手方向に沿って分散され(図1の下図および図2の下図参照)、接着部分が一気に剥がれてしまうようなことがなくなる。これに対して、セルロースナノファイバーを含有しないホットメルト接着剤の場合、接着部分の端部から剥がそうとした場合、一気に接着部分が剥がれてしまうことになる。また、寒冷地などにおいても、固化した樹脂がセルロースナノファイバーの繊維によって収縮することがなく、接着部分の剥離、また接着剤にクラックが入ることなどがなくなる。
【0031】
このように上記実施の形態によれば、セルロースナノファイバーの繊維の粉体を、加熱溶融させた松脂でコーティングする工程と、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、合成ゴム樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂の少なくとも一つの熱可塑性樹脂を加熱溶融させる工程と、当該加熱溶融させた熱可塑性樹脂の中に、前記松脂でコーティングされたセルロースナノファイバーの繊維と、カルナバ蝋、椿オイル、ヤシ油の少なくともいずれかを含む植物性油脂を入れて混練させた後、グルースティックを生成するようにしたので、接着部分に端部から剥がす方向の力が働いた場合であっても、セルロースナノファイバーの繊維によって、その力を種々の方向に逃がすことができ、接着部分が均一な方向で剥がれてしまうようなことがなくなるとともに、寒冷地においても、セルロースナノファイバーによって樹脂の収縮を抑えて接着状態を保持させることができるようになる。特に、ベースとなる樹脂にセルロースナノファイバーを馴染ませ、且つ塗布時でも樹脂に拡散した状態でフィラーが絡まることがなく、接着剤が固化しても分散を保持させることができるようになる。また、植物性油脂を含有させることで、樹脂の収縮を抑えることができるとともに、樹脂だけを用いた場合よりも融点を低くすることができ、また、接着剤を溶融させる際に粘度を低く抑えることができる。さらには、接着後における匂いを少なくすることができ、加えて、植物性油脂は、固形化してもパラフィン、エチレン酢酸ビニル樹脂よりも軟質で粘りがあるため、固形化後のクラックの発生も少なくすることができる。
【0032】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0033】
例えば、上記実施の形態では、段ボールを接着させる場合について説明したが、これ以外に、木材、プラスチック、金属、布、ワックスを含侵させた表面処理品などを接着する場合についても使用することができる。
【実施例1】
【0034】
次に、本実施の形態によるホットメルト接着剤を用いた接着状態の比較例を図3を用いて説明する。
【0035】
試験例では、樹脂として、サンプル1およびサンプル2として、ポリ酢酸ビニル樹脂(EVA)40重量部、ソイ油脂ハード40重量部、ソイ油脂ソフト10重量部、カルナバ蝋5重量部、ヤシ油2重量部、椿オイル3重量部(合計100重量部)を有する樹脂を用い、これにフィラー無しのサンプル1と、フィラー有りのサンプル2を比較した。フィラーとしては、針葉樹セルロースナノファイバー0.5重量部、竹セルロースナノファイバー0.5重量部、松脂高温タイプ13重量(合計14重量部)を加えるようにした。サンプル1とサンプル2とを比較すると、引張強度が、フィラーを加えたサンプル2では3.78(N/平方ミリメートル)と強く、フィラーを加えないサンプル1では、2.33(N/平方ミリメートル)と低くなっていることが分かる。なお、両サンプルでは、氷点下40℃で24時間放置した場合であっても、接着面でのひび割れは確認されなかった。
【0036】
次に、樹脂としてポリ酢酸ビニル樹脂(EVA)のみを用い、フィラーを配合しない従来品のサンプル3と比較した場合、引張強度が1.21(N/平方ミリメートル)と小さく、また、氷点下40℃においては、ひび割れは少ないものの、一部ひび割れが確認された。
【0037】
図3に示すように、従来の樹脂のみのホットメルト接着剤に比べて、植物性油脂を加えた場合の方が、氷点下におけるひび割れも少なく、また、引張強度も強くなることが分かり、さらに、これにセルロースナノファイバーの繊維の粉体を配合した場合の方が、さらに引張強度も向上することが分かった。
図1
図2
図3