(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】センサシステム、センサ及び機械制御方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/18 20060101AFI20240902BHJP
G08C 17/00 20060101ALI20240902BHJP
G08C 19/00 20060101ALI20240902BHJP
G05B 19/05 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
G05B19/18 W
G08C17/00 B
G08C19/00 U
G05B19/05 L
(21)【出願番号】P 2020181270
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】512319232
【氏名又は名称】株式会社KMC
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】安部 新一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 声喜
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-209420(JP,A)
【文献】特開2004-227261(JP,A)
【文献】特開2018-147136(JP,A)
【文献】特開平05-281102(JP,A)
【文献】特開2020-017182(JP,A)
【文献】特開2019-145151(JP,A)
【文献】特開2005-190386(JP,A)
【文献】特表2019-512770(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0002274(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0262392(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18-19/416
G05B 19/04-19/05
G08C 13/00-25/04
G05B 23/00-23/02
B23Q 17/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサと、
機械制御部及び第1のメモリを有する専用コントローラにより制御される
工作機械に配置された前記複数のセンサがそれぞれ接続される複数の第1の接続部と、
無線インターフェースと、
第2のメモリと、
前記複数の第1の接続部に接続された前記複数のセンサより出力され、前記第2のメモリに書き込まれた複数の検出結果を纏めて電文を作成し、前記電文を前記無線インターフェースを介して出力するプロセッサと、
を有する子タグと、
前記子タグが出力した前記電文に含まれる前記複数の検出結果を、前記専用コントローラが受信可能な通信規格に変換し、変換後の前記複数の検出結果を、前記専用コントローラの前記第1のメモリに書き込む変換部を有するコンピュータと、
を具備し、
前記専用コントローラの前記機械制御部は、前記コンピュータにより前記第1のメモリに書き込まれた前記複数の検出結果に基づき、前記工作機械を制御
し、
各前記複数のセンサは、
センサ本体と、
前記センサ本体への電源供給及び電源遮断を切り替える第1のスイッチと、
前記子タグの前記第1の接続部に接続される第2の接続部と、を有し、
前記第1のスイッチは、前記センサ本体へ所定期間の電源供給及びその他の期間の電源遮断を一定間隔で繰り返し、
前記センサ本体は、電源が供給される毎に、前記センサ本体が取得した前記検出結果を、前記子タグの前記第2のメモリに書き込む
センサシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサシステムであって、
前記子タグが出力した前記電文を受信し、前記コンピュータに転送する第1の親タグ
をさらに具備するセンサシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセンサシステムであって、
前記子タグが出力した前記電文に含まれる前記複数の検出結果に基づき、前記工作機械の傾向値を算出して出力する傾向値管理装置
をさらに具備するセンサシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のセンサシステムであって、
前記傾向値管理装置は、さらに、前記工作機械の専用コントローラから機械制御に関するデータを受信して出力する
センサシステム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のセンサシステムであって、
前記子タグが出力した前記電文を受信し、前記傾向値管理装置に転送する第2の親タグ
をさらに具備するセンサシステム。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のセンサシステムであって、
前記工作機械は、スピンドルを有し、
前記複数のセンサは、前記スピンドルに配置される
センサシステム。
【請求項7】
請求項
1乃至6の何れか一項に記載のセンサシステムであって、
前記子タグは、前記
プロセッサへの電源供給及び電源遮断を切り替える第2のスイッチをさらに有し、
前記第2のスイッチは、前記プロセッサへ所定期間の電源供給及びその他の期間の電源遮断を一定間隔で繰り返し、
前記プロセッサは、電源が供給される毎に、前記第2のメモリに書き込まれた前記複数の検出結果を読み出して前記電文を作成及び出力する
センサシステム。
【請求項8】
請求項
7に記載のセンサシステムであって、
前記複数のセンサは、1以上の第1のセンサを含み、
各前記1以上の第1のセンサは、前記センサ本体として、振動及び/又は加速度を検出する第1のセンサ本体を有し、
前記第1のセンサ本体が閾値より大きい振動及び/又は加速度を検出すると、前記第1のセンサの前記第1のスイッチは、前記第1のセンサ本体への電源供給及び電源遮断を開始する
センサシステム。
【請求項9】
請求項
8に記載のセンサシステムであって、
前記第1のセンサ本体が前記閾値より大きい振動及び/又は加速度を検出すると、前記第1のセンサ本体は、第1の信号を前記子タグに送信し、
前記子タグの前記プロセッサが前記第1の信号を受信すると、前記第2のスイッチは、前記プロセッサへの電源供給及び電源遮断を開始する
センサシステム。
【請求項10】
請求項
9に記載のセンサシステムであって、
前記複数のセンサは、
第2のセンサを含み、
前記第2のセンサは、前記センサ本体として、振動及び/又は加速度以外の要素を検出する第2のセンサ本体を有し、
前記子タグの前記プロセッサが前記第1の信号を受信すると、前記プロセッサは、第2の信号を前記第2のセンサに送信し、
前記第2のセンサが前記第2の信号を受信すると、前記第2のセンサの前記第1のスイッチは、前記第2のセンサ本体への電源供給及び電源遮断を開始する
センサシステム。
【請求項11】
請求項
10に記載のセンサシステムであって、
前記第1のセンサ本体が前記閾値より大きい振動及び/又は加速度を所定時間以上検出しない場合、前記第1のセンサの前記第1のスイッチは、前記第1のセンサ本体への電源供給を停止する
センサシステム。
【請求項12】
請求項
11に記載のセンサシステムであって、
前記第1のセンサ本体が前記閾値より大きい振動及び/又は加速度を所定時間以上検出しない場合、前記第1のセンサ本体は、第3の信号を前記子タグに送信し、
前記子タグの前記プロセッサが前記第3の信号を受信すると、前記第2のスイッチは、前記プロセッサへの電源供給を停止する
センサシステム。
【請求項13】
請求項
12に記載のセンサシステムであって、
前記子タグの前記プロセッサが前記第3の信号を受信すると、前記プロセッサは、第4の信号を前記第2のセンサに送信し、
前記第2のセンサが前記第4の信号を受信すると、前記第2のセンサの前記第1のスイッチは、前記第2のセンサ本体への電源供給を停止する
センサシステム。
【請求項14】
請求項1乃至
13の何れか一項に記載のセンサシステムであって、
前記専用コントローラ
をさらに具備するセンサシステム。
【請求項15】
複数のセンサと、
機械制御部及び第1のメモリを有する専用コントローラにより制御される
工作機械に配置された前記複数のセンサがそれぞれ接続される複数の第1の接続部と、
無線インターフェースと、
第2のメモリと、
前記複数の第1の接続部に接続された前記複数のセンサより出力され、前記第2のメモリに書き込まれた複数の検出結果を纏めて電文を作成し、前記電文を前記無線インターフェースを介して出力するプロセッサと、
を有する子タグと、
前記子タグが出力した前記電文に含まれる前記複数の検出結果を、前記専用コントローラが受信可能な通信規格に変換し、変換後の前記複数の検出結果を、前記専用コントローラの前記第1のメモリに書き込む変換部を有するコンピュータと、
を具備し、
前記専用コントローラの前記機械制御部は、前記コンピュータにより前記第1のメモリに書き込まれた前記複数の検出結果に基づき、前記工作機械を制御する
センサシステムに含まれる各前記複数のセンサであって、
センサ本体と、
前記センサ本体への電源供給及び電源遮断を切り替える第1のスイッチと、
前記子タグの前記第1の接続部に接続される第2の接続部と、を有し、
前記第1のスイッチは、前記センサ本体へ所定期間の電源供給及びその他の期間の電源遮断を一定間隔で繰り返し、
前記センサ本体は、電源が供給される毎に、前記センサ本体が取得した前記検出結果を、前記子タグの前記第2のメモリに書き込む
センサ。
【請求項16】
機械制御部及び第1のメモリを有する専用コントローラにより制御される
工作機械に配置された複数のセンサがそれぞれ接続される複数の第1の接続部と、無線インターフェースと、第2のメモリと、を有する子タグが、前記複数の第1の接続部に接続された前記複数のセンサより出力され、前記第2のメモリに書き込まれた複数の検出結果を纏めて電文を作成し、前記電文を前記無線インターフェースを介して出力し、
コンピュータが、前記子タグが出力した前記電文に含まれる前記複数の検出結果を、前記専用コントローラが受信可能な通信規格に変換し、変換後の前記複数の検出結果を、前記専用コントローラの前記第1のメモリに書き込み、
前記専用コントローラの前記機械制御部が、前記コンピュータにより前記第1のメモリに書き込まれた前記複数の検出結果に基づき、前記工作機械を制御
する機械制御方法であって、
各前記複数のセンサは、
センサ本体と、
前記センサ本体への電源供給及び電源遮断を切り替える第1のスイッチと、
前記子タグの前記第1の接続部に接続される第2の接続部と、を有し、
前記機械制御方法は、さらに、
前記第1のスイッチは、前記センサ本体へ所定期間の電源供給及びその他の期間の電源遮断を一定間隔で繰り返し、
前記センサ本体は、電源が供給される毎に、前記センサ本体が取得した前記検出結果を、前記子タグの前記第2のメモリに書き込む
機械制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に配置されるセンサと、センサから検出結果を収集する子タグと、検出結果を出力するコンピュータと、検出結果に基づき工作機械を制御する機械制御方法とに関する。本発明は、子タグ、センサ及びコンピュータを有するセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の分野では、各部位にセンサが配置される。センサの検出結果はPLC(Programmable Logic Controller)を有する配電盤を介して専用コントローラやコンピュータに入力される。近年では、様々なセンサを用いてしかもリアルタイムに時々刻々と変化するデータを収集することが要求されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、工作機械の内部の高速スピンドルのデータを収集し、メンテナンスコスト・ダウンタイム削減、メンテナンスサイクルの最適化、寿命管理を実現させることが望まれる。しかしながら、工作機械の内部のスピンドルのデータを収集し、機械制御と連携させるにあたり、例えば、以下の課題が挙げられる。
【0005】
(1)回転するスピンドル内部(回転する主軸内やスピンドル本体内)設置されたセンサから有線での情報を出力することが、物理的に困難である。(2)スピンドル内の情報を安定的に収集し情報を自発的に収集ファイリングする仕組みが無い。(3)センサを仮に無線化しても、無線化されたセンサからの情報を、工作機械にダイレクトに連携する仕組みが無い。(4)旧いスピンドルへ後付でセンサを設置しても、専用コントローラは、旧い機械及びセンサに対応出来ない。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、回転する主軸内やスピンドル本体内での情報収集を無線化してスピンドルの詳細データを取得し、工作機械を制御する専用コントローラとの連携を可能にするシステムを構築することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係るセンサシステムは、
機械制御部及び第1のメモリを有する専用コントローラにより制御される前記工作機械に配置された複数のセンサがそれぞれ接続される複数の第1の接続部と、
無線インターフェースと、
第2のメモリと、
前記複数の第1の接続部に接続された前記複数のセンサより出力され、前記第2のメモリに書き込まれた複数の検出結果を纏めて電文を作成し、前記電文を前記無線インターフェースを介して出力するプロセッサと、
を有する子タグと、
前記子タグが出力した前記電文に含まれる前記複数の検出結果を、前記専用コントローラが受信可能な通信規格に変換し、変換後の前記複数の検出結果を、前記専用コントローラの前記第1のメモリに書き込む変換部を有するコンピュータと、
を具備し、
前記専用コントローラの前記機械制御部は、前記コンピュータにより前記第1のメモリに書き込まれた前記複数の検出結果に基づき、前記工作機械を制御する。
【0008】
本発明によれば、子タグは、工作機械に配置された複数のセンサが出力した複数の検出結果を纏めた電文を、無線で出力する。コンピュータは、無線で出力された電文に含まれる複数の検出結果を、変換して専用コントローラの第1のメモリに書き込む。これにより、専用コントローラは、複数のセンサより出力された検出結果に基づき、工作機械を制御することができる。
【0009】
センサシステムは、前記子タグが出力した前記電文を受信し、前記コンピュータに転送する第1の親タグをさらに具備してもよい。
【0010】
これにより、本発明に係る無線センサシステムは、複数の子タグから第1の親タグへの電文の送受信を簡単な構成で実現できる。
【0011】
センサシステムは、前記子タグが出力した前記電文に含まれる前記複数の検出結果に基づき、前記工作機械の傾向値を算出して出力する傾向値管理装置をさらに具備してもよい。
【0012】
これにより、本発明に係る無線センサシステムは、傾向値管理装置が算出した傾向値の汎用性を高めることができる。これにより、工作機械のスピンドルの寿命管理と、スピンドルの適正運転方法を見出し、その情報を分析することが可能になり、スピンドルの改良進化を加速させることを図れる。
【0013】
前記傾向値管理装置は、さらに、前記工作機械の専用コントローラから機械制御に関するデータを受信して出力してもよい。
【0014】
これにより、本発明に係る無線センサシステムは、専用コントローラからの機械制御に関するデータの汎用性を高めることができる。これにより、益々、工作機械のスピンドルの寿命管理と、スピンドルの適正運転方法を見出し、その情報を分析することが可能になり、スピンドルの改良進化を加速させることを図れる。
【0015】
センサシステムは、前記子タグが出力した前記電文を受信し、前記傾向値管理装置に転送する第2の親タグをさらに具備してもよい。
【0016】
これにより、本発明に係る無線センサシステムは、複数の子タグから複数の親タグ(第1の親タグ及び第2の親タグ)への電文の送受信を簡単な構成で実現できる。
【0017】
前記工作機械は、スピンドルを有し、前記複数のセンサは、前記スピンドルに配置されてもよい。
【0018】
本発明によれば、子タグを無線化したので、工作機械のスピンドルなどの回転する部分に、センサ及び子タグを配置し、スピンドルの振動及び/又は加速度や温度を検出することができる。
【0019】
センサシステムは、
前記複数のセンサをさらに具備し、各前記複数のセンサは、
センサ本体と、
前記センサ本体への電源供給及び電源遮断を切り替える第1のスイッチと、
前記子タグの前記第1の接続部に接続される第2の接続部と、を有し、
前記第1のスイッチは、前記センサ本体へ所定期間の電源供給及びその他の期間の電源遮断を一定間隔で繰り返し、
前記センサ本体は、電源が供給される毎に、前記センサ本体が取得した前記検出結果を、前記子タグの前記第2のメモリに書き込む。
【0020】
センサ本体は、所定期間電源供給される他の大部分の時間は、電源が遮断されスリープしているため、省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。また、センサ本体は、子タグに制御されて電源供給及び電源遮断を繰り返すのではなく、自発的に電源供給及び電源遮断を繰り返すため、子タグとの通信量が少なくて済み、省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。
【0021】
前記子タグは、前記プロセッサ本体への電源供給及び電源遮断を切り替える第2のスイッチをさらに有し、
前記第2のスイッチは、前記プロセッサへ所定期間の電源供給及びその他の期間の電源遮断を一定間隔で繰り返し、
前記プロセッサは、電源が供給される毎に、前記第2のメモリに書き込まれた前記複数の検出結果を読み出して前記電文を作成及び出力する。
【0022】
子タグは、所定期間電源供給される他の大部分の時間は、電源が遮断されスリープしているため、省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。子タグは、センサが第2のメモリに書き込んでおいた検出結果を、電文作成及び出力時に読み出す。このため、子タグは、センサに検出結果の送信を要求する必要が無いのでセンサとの通信量が少なくて済み、さらに省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。また、子タグは常に検出結果の受信をスタンバイしておく必要が無いので、子タグの電源が遮断されスリープしている期間を長くすることができるため、さらに省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。
【0023】
前記複数のセンサは、1以上の第1のセンサを含み、
各前記1以上の第1のセンサは、前記センサ本体として、振動及び/又は加速度を検出する第1のセンサ本体を有し、
前記第1のセンサ本体が閾値より大きい振動及び/又は加速度を検出すると、前記第1のセンサの前記第1のスイッチは、前記第1のセンサ本体への電源供給及び電源遮断を開始する。
【0024】
閾値は、例えば、工作機械が運転を開始する際に生じる微弱な振動程度の値であり、工作機械が自動運転する際に生じる振動より小さい。スリープ中に、第1のセンサ本体が微弱な振動及び/又は加速度を検出できるように、第1のセンサ本体に微弱な電流を供給しておけばよいため、省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。第1のセンサ本体は、子タグに制御されて電源供給を開始するのではなく、振動の検出をトリガとして、自発的に電源供給を開始するため、子タグとの通信量が少なくて済み、さらに省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。
【0025】
前記第1のセンサ本体が前記閾値より大きい振動及び/又は加速度を検出すると、前記第1のセンサ本体は、第1の信号を前記子タグに送信し、
前記子タグの前記プロセッサが前記第1の信号を受信すると、前記第2のスイッチは、前記プロセッサへの電源供給及び電源遮断を開始する。
【0026】
子タグは、電源供給を開始するために、常に第1のセンサ本体の検出結果をモニタする必要が無く、第1のセンサ本体による第1の信号をトリガとして、自発的に電源供給及び電源遮断を開始するため、第1のセンサとの通信量が少なくて済み、省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。
【0027】
前記複数のセンサは、1以上の第2のセンサを含み、
各前記1以上の第2のセンサは、前記センサ本体として、振動及び/又は加速度以外の要素を検出する第2のセンサ本体を有し、
前記子タグの前記プロセッサが前記第1の信号を受信すると、前記プロセッサは、第2の信号を前記第2のセンサに送信し、
前記第2のセンサが前記第2の信号を受信すると、前記第2のセンサの前記第1のスイッチは、前記第2のセンサ本体への電源供給及び電源遮断を開始する。
【0028】
第2のセンサは、第1のセンサ本体からの第1の信号をトリガとする子タグからの第2の信号をトリガとして、自発的に電源供給及び電源遮断を開始するため、子タグとの通信量が少なくて済み、省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。
【0029】
前記第1のセンサ本体が前記閾値より大きい振動及び/又は加速度を所定時間以上検出しない場合、前記第1のセンサの前記第1のスイッチは、前記第1のセンサ本体への電源供給を停止する。
【0030】
第1のセンサ本体は、子タグに制御されて電源供給を停止するのではなく、振動を所定時間以上検出しないことをトリガとして、自発的に電源供給を停止するため、子タグとの通信量が少なくて済み、省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。
【0031】
前記第1のセンサ本体が前記閾値より大きい振動及び/又は加速度を所定時間以上検出しない場合、前記第1のセンサ本体は、第3の信号を前記子タグに送信し、
前記子タグの前記プロセッサが前記第3の信号を受信すると、前記第2のスイッチは、前記プロセッサへの電源供給を停止する。
【0032】
子タグは、電源供給を停止するために、常に第1のセンサ本体の検出結果をモニタする必要が無く、第1のセンサ本体による第3の信号をトリガとして、自発的に電源供給を停止するため、第1のセンサとの通信量が少なくて済み、省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。
【0033】
前記子タグの前記プロセッサが前記第3の信号を受信すると、前記プロセッサは、第4の信号を前記第2のセンサに送信し、
前記第2のセンサが前記第4の信号を受信すると、前記第2のセンサの前記第1のスイッチは、前記第2のセンサ本体への電源供給を停止する。
【0034】
第2のセンサは、第1のセンサ本体からの第3の信号をトリガとする子タグからの第4の信号をトリガとして、自発的に電源供給を停止するため、子タグとの通信量が少なくて済み、省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。
【0035】
センサシステムは、前記専用コントローラをさらに具備してもよい。
【0036】
本発明の一形態に係る子タグは、
機械制御部及び第1のメモリを有する専用コントローラにより制御される前記工作機械に配置された複数のセンサがそれぞれ接続される複数の第1の接続部と、
無線インターフェースと、
第2のメモリと、
前記複数の第1の接続部に接続された前記複数のセンサより出力され、前記第2のメモリに書き込まれた複数の検出結果を纏めて電文を作成し、前記電文を前記無線インターフェースを介して出力するプロセッサと、
を有する子タグと、
前記子タグが出力した前記電文に含まれる前記複数の検出結果を、前記専用コントローラが受信可能な通信規格に変換し、変換後の前記複数の検出結果を、前記専用コントローラの前記第1のメモリに書き込む変換部を有するコンピュータと、
を具備し、
前記専用コントローラの前記機械制御部は、前記コンピュータにより前記第1のメモリに書き込まれた前記複数の検出結果に基づき、前記工作機械を制御する
センサシステムに含まれる
子タグである。
【0037】
本発明の一形態に係るセンサは、
機械制御部及び第1のメモリを有する専用コントローラにより制御される前記工作機械に配置された複数のセンサがそれぞれ接続される複数の第1の接続部と、
無線インターフェースと、
第2のメモリと、
前記複数の第1の接続部に接続された前記複数のセンサより出力され、前記第2のメモリに書き込まれた複数の検出結果を纏めて電文を作成し、前記電文を前記無線インターフェースを介して出力するプロセッサと、
を有する子タグと、
前記子タグが出力した前記電文に含まれる前記複数の検出結果を、前記専用コントローラが受信可能な通信規格に変換し、変換後の前記複数の検出結果を、前記専用コントローラの前記第1のメモリに書き込む変換部を有するコンピュータと、
を具備し、
前記専用コントローラの前記機械制御部は、前記コンピュータにより前記第1のメモリに書き込まれた前記複数の検出結果に基づき、前記工作機械を制御する
センサシステムに含まれる各前記複数のセンサであって、
センサ本体と、
前記センサ本体への電源供給及び電源遮断を切り替える第1のスイッチと、
前記子タグの前記第1の接続部に接続される第2の接続部と、を有し、
前記第1のスイッチは、前記センサ本体へ所定期間の電源供給及びその他の期間の電源遮断を一定間隔で繰り返し、
前記センサ本体は、電源が供給される毎に、前記センサ本体が取得した前記検出結果を、前記子タグの前記第2のメモリに書き込む。
【0038】
本発明の一形態に係るコンピュータは、
機械制御部及び第1のメモリを有する専用コントローラにより制御される前記工作機械に配置された複数のセンサがそれぞれ接続される複数の第1の接続部と、
無線インターフェースと、
第2のメモリと、
前記複数の第1の接続部に接続された前記複数のセンサより出力され、前記第2のメモリに書き込まれた複数の検出結果を纏めて電文を作成し、前記電文を前記無線インターフェースを介して出力するプロセッサと、
を有する子タグ
が出力した前記電文に含まれる前記複数の検出結果を、前記専用コントローラが受信可能な通信規格に変換し、変換後の前記複数の検出結果を、前記専用コントローラの前記第1のメモリに書き込む変換部
を具備する。
【0039】
本発明の一形態に係る機械制御方法は、
機械制御部及び第1のメモリを有する専用コントローラにより制御される前記工作機械に配置された複数のセンサがそれぞれ接続される複数の第1の接続部と、無線インターフェースと、第2のメモリと、を有する子タグが、前記複数の第1の接続部に接続された前記複数のセンサより出力され、前記第2のメモリに書き込まれた複数の検出結果を纏めて電文を作成し、前記電文を前記無線インターフェースを介して出力し、
コンピュータが、前記子タグが出力した前記電文に含まれる前記複数の検出結果を、前記専用コントローラが受信可能な通信規格に変換し、変換後の前記複数の検出結果を、前記専用コントローラの前記第1のメモリに書き込み、
前記専用コントローラの前記機械制御部が、前記コンピュータにより前記第1のメモリに書き込まれた前記複数の検出結果に基づき、前記工作機械を制御する。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、回転する主軸内やスピンドル本体内での情報収集を無線化してスピンドルの詳細データを取得し、工作機械を制御する専用コントローラとの連携を可能にするシステムを構築することができる。
【0041】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明の一実施形態に係るセンサシステムの構成を示す。
【
図2】工作機械に配置される複数のセンサを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0044】
1.センサシステムの構成
【0045】
図1は、本発明の一実施形態に係るセンサシステムの構成を示す。
【0046】
センサシステム1は、複数のセンサ10と、1以上の子タグ20と、第1の親タグ30と、コンピュータ40と、専用コントローラ50と、第2の親タグ60と、傾向値管理装置70と、を有する。
【0047】
複数のセンサ10は、工作機械80に設置される。工作機械80は、スピンドル81と、スピンドル81を高速回転させるためのモータ82とを有する。複数のセンサ10は、より具体的には、回転体であるスピンドル81に設置される。複数のセンサ10は、1以上の第1のセンサ10Aと、1以上の第2のセンサ10Bとを有する。第1のセンサ10Aは、3軸方向の振動及び/又は加速度を検出する。第2のセンサ10Bは、例えば、温度を検出する。第2のセンサ10Bは、振動及び/又は加速度以外の要素を検出すればよく、例えば、湿度、圧力、回転数等を検出するセンサでもよい。以下、第1のセンサ10Aを振動センサ10A、第2のセンサ10Bを温度センサ10Bと称する。振動センサ10Aは、例えば1秒に1回、振動の検出結果を子タグ20に出力する。温度センサ10Bは、例えば5秒に1回、温度の検出結果を子タグ20に出力する。
【0048】
1以上の子タグ20は、それぞれ、例えば有線で、複数のセンサ10に接続される。各子タグ20は、接続された複数のセンサ10の検出結果を纏めて電文を作成し、電文を無線送信する。例えば、子タグ20は、1秒に1回、1以上の振動センサ10Aからの検出結果と、1以上の温度センサ10Bからの検出結果とを纏めて電文を作成し、出力する。
【0049】
第1の親タグ30は、コンピュータ40に例えばUSBインターフェースを介して接続される。第1の親タグ30は、子タグ20が出力した電文を受信し、受信する度に、コンピュータ40に転送する。
【0050】
コンピュータ40は、第1の親タグ30に例えばUSBインターフェースを介して接続され、専用コントローラ50にLAN等のネットワークを介して接続される。コンピュータ40の変換部41は、子タグ20が出力した電文を第1の親タグ30から受信する。コンピュータ40の変換部41は、受信した電文に含まれる複数の検出結果を、専用コントローラ50が受信可能な通信規格に変換する。コンピュータ40の変換部41は、変換後の複数の検出結果を、専用コントローラ50のメモリ51(第1のメモリ)に、ネットワークを介して書き込み、ファイリングする。
【0051】
専用コントローラ50のプロセッサ55により実現される機械制御部52は、コンピュータ40によりメモリ51に書き込まれた複数の検出結果に基づき、工作機械80をフィードバック制御する。例えば、機械制御部52は、例えば、スピンドル81の振動及び温度を示す複数の検出結果に基づき、スピンドル81の回転数を決定し、モータ82を介してスピンドル81をフィードバック制御する。また、専用コントローラ50の表示制御部53のプロセッサ55により実現されるは、コンピュータ40によりメモリ51に書き込まれた複数の検出結果をディスプレイ54に表示する。例えば、表示制御部53は、振動及び温度のグラフを作成してディスプレイ54に表示する。
【0052】
第2の親タグ60の構成及び機能は第1の親タグ30と同様である。第2の親タグ60は、傾向値管理装置70に例えばUSBインターフェースを介して接続される。第2の親タグ60は、子タグ20が出力した電文(第1の親タグ30が受信する電文と同じ)を受信し、受信する度に、傾向値管理装置70に転送する。
【0053】
傾向値管理装置70は、第2の親タグ60に例えばUSBインターフェースを介して接続され、クラウドサーバ90にインターネット等のネットワークNを介して接続される。傾向値管理装置70は、子タグ20が出力した電文を第2の親タグ60から受信する。傾向値管理装置70は、受信した電文に含まれる複数の検出結果に基づき、工作機械80の傾向値を算出する。傾向値は、例えば、メンテナンスコスト、ダウンタイム、メンテナンスサイクル、寿命管理、部品交換時期、トレーサビリティ、トラブル等に関する値である。傾向値管理装置70は、傾向値をディスプレイに表示し、例えばCSV形式でクラウドサーバ90に出力する。傾向値管理装置70は、さらに、専用コントローラ50から、工作機械80への機械制御に関するデータを受信し、例えばCSV形式でクラウドサーバ90に出力する。クラウドサーバ90は、傾向値管理装置70が出力したデータを受信し、蓄積する。傾向値管理装置70が算出した傾向値や、専用コントローラ50からの機械制御に関するデータをCSV形式で蓄積することで、これらのデータの汎用性を高めることができる。
【0054】
2.センサの種類及び配置
【0055】
図2は、工作機械に配置される複数のセンサを模式的に示す。
【0056】
スピンドル81のフロント側81Fに1個の振動センサ10Aと、4個の温度センサ10Bとが配置される。振動センサ10Aは、例えば、スピンドル81の回転軸のフロント側に配置される。4個の温度センサ10Bとして、例えば、1個の接触式温度センサがフロント内輪の前側に、別個の接触式温度センサがフロント内輪の後側に、1個の非接触式温度センサがフロント外輪の前側に、別個の非接触式温度センサがフロント外輪の後側に配置される。これら5個のセンサ10は、例えば有線で、1個の子タグ20Aに接続される。子タグ20Aの配置は図示の位置に限定されない。
【0057】
スピンドル81のリア側81Rに1個の振動センサ10Aと、4個の温度センサ10Bとが配置される。振動センサ10Aは、例えば、スピンドル81の回転軸のリア側に配置される。4個の温度センサ10Bとして、例えば、1個の接触式温度センサがリア内輪の前側に、別個の接触式温度センサがリア内輪の後側に、1個の非接触式温度センサがリア外輪の前側に、別個の非接触式温度センサがリア外輪の後側に配置される。これら5個のセンサ10は、例えば有線で、別個の子タグ20Bに接続される。子タグ20Bの配置は図示の位置に限定されない。
【0058】
センサ10は、典型的にはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems(微小電気機械システム))である。本実施形態では、センサ10をMEMSにより構成し、子タグ20を無線化したので、工作機械80のスピンドル81などの回転する部分に、センサ10及び子タグ20を配置し、スピンドル81の振動及び/又は加速度や温度を検出することができる。
【0059】
以下、各振動センサ10Aを区別する必要が無いときは、単に、振動センサ10Aと称する。各温度センサ10Bを区別する必要が無いときは、単に、温度センサ10Bと称する。振動センサ10Aと温度センサ10Bとを区別する必要が無いときは、単に、センサ10と称する。各子タグ20A、20Bを区別する必要が無いときは、単に、子タグ20と称する。
【0060】
3.センサの構成
【0061】
【0062】
センサ10は、センサ本体11と、タイマ12と、ID設定部13と、接続部14(第2の接続部)と、配線15と、スイッチ16(第1のスイッチ)とを有する。
【0063】
センサ本体11は、振動及び/又は加速度や、温度を検出する素子に相当する部分であり、例えば検出結果に応じたアナログ電圧信号を出力する。センサ本体11は、デジタル電圧信号を出力するものであってもよい。振動センサ10Aのセンサ本体11は、振動及び/又は加速度を検出する振動センサ本体11A(第1のセンサ本体)である。一方、温度センサ10Bのセンサ本体11は、温度を検出する温度センサ本体11B(第2のセンサ本体)である。
【0064】
ID設定部13は、センサ10の固有のIDが設定される。
【0065】
接続部14は、配線15を介して子タグ20と接続するための部位である。センサ10の所定の部位は接続部14を介して子タグ20との間で信号のやりとりをして、子タグ20より電源が供給される。
【0066】
タイマ12は、センサ本体11への電源供給(ウェイクアップ)及び電源遮断(スリープ)を切り替える時間が設定される。この時間は、予め設定されてもよいし、子タグ20のプロセッサ24が設定可能としてもよい。
【0067】
例えば、振動センサ10Aのタイマ12は、振動センサ本体11Aへの2ミリ秒間の電源供給と、その他の期間の電源遮断を、1秒毎に繰り返す(言い換えれば、振動センサ本体11Aが、2ミリ秒ウェイクアップし、その後(=1秒-2ミリ秒)間はスリープする)ように設定される。一方、温度センサ10Bのタイマ12は、温度センサ本体11Bへの2ミリ秒間の電源供給と、その他の期間の電源遮断を、5秒毎に繰り返す(言い換えれば、センサ本体11が、2ミリ秒ウェイクアップし、その後(=5秒-2ミリ秒)間はスリープする)ように設定される。上述の数値(2ミリ秒、1秒、5秒)は一例に過ぎず、他の数値でもよい。
【0068】
なお、スリープ中に、振動センサ本体11Aが微弱な振動及び/又は加速度を検出できるように、振動センサ本体11Aには微弱な電流が供給されている。
【0069】
スイッチ16は、タイマ12に設定された時間に従って、ハーベストタイプの外部電源(不図示)からセンサ本体11への電源供給(ウェイクアップ)及び電源遮断(スリープ)を一定間隔で繰り返す。スイッチ16を介してセンサ本体11に電源が供給される毎に、センサ本体11は、供給された電源に基づき作動し、検出結果に係る電圧信号(以下、単に「検出結果」とする。)を出力する。具体的には、センサ本体11は、電源が供給される毎に、検出結果を、接続部14及び配線15を介して子タグ20のメモリ25(第2のメモリ)に書き込む。
【0070】
4.子タグの構成
【0071】
子タグ20は、複数(本例では5個)の接続部21(第1の接続部)と、接続部21毎の増幅器22及びA/D変換器23と、プロセッサ24(マイコン)と、メモリ25(第2のメモリ)と、無線インターフェース26と、固有のIDが設定されたID設定部27と、タイマ28と、スイッチ29(第2のスイッチ)と、ハーベストタイプのバッテリBと、を有する。
【0072】
接続部21は、センサ10が配線15を介して有線接続される。接続部21は、典型的にはmicroUSB端子により構成する。
【0073】
増幅器22は接続部21を介してセンサ10から入力された信号を増幅する。増幅器22の増幅率は固定値でもよいが、信号のレベルに応じて自己調整できる構成としてもよく、またプロセッサ24経由で調整可能な構成としてもよい。
【0074】
A/D変換器23は、増幅器22で増幅された信号についてアナログ信号からデジタル信号に変換する。A/D変換器23は入力信号がデジタル信号である場合にはその信号をスルーするように構成してもよい。例えば、A/D変換器23が入力信号をデジタル信号か否かを判断してデジタル信号の場合には自律的にその信号をスルーするように構成してもよいし、プロセッサ24経由でスルー設定するように構成してもよい。
【0075】
プロセッサ24は、接続部21にセンサ10が接続されたときそのセンサ10を識別する。具体的には、プロセッサ24は、接続部21にセンサ10が接続されたとき、センサ10に設定された固有のIDをセンサ10より読み取り、そのセンサ10を識別する。
【0076】
メモリ25には、センサ本体11から検出結果が書き込まれる。メモリ25は、さらに、子タグ20に接続される可能性のあるセンサ10の固有のIDと、各センサ10の種別(温度センサ又は振動センサ)、信号のレベルと測定値との関係(例えば温度センサであれば電圧と温度との関係など)、製造会社などとの関係のデータである対応リストを記憶する。
【0077】
プロセッサ24は、上記の読み取った固有のIDとメモリ25に記憶された対応リストに基づきセンサ10の種別などを識別する。なお、子タグ20は、センサ10が接続部21に接続されたとき、センサ10による検出結果である出力信号の態様に基づきセンサ10を識別してもよい。出力信号の態様とは、例えば出力信号の波形である。出力信号の波形は、センサ10の種別(温度センサ又は振動センサ)に応じて異なる。プロセッサ24は、その信号の波形とメモリ25に予め記憶された各センサの波形との関係に基づきセンサ10を識別する。出力信号の態様とは、波形だけではなく、信号の大きさや周期などであってもよい。
【0078】
タイマ28は、プロセッサ24への電源供給(ウェイクアップ)及び電源遮断(スリープ)を切り替える時間が設定される。この時間は、予め設定されてもよいし、子タグ20のプロセッサ24が設定可能としてもよい。例えば、プロセッサ24への2ミリ秒間の電源供給と、その他の期間の電源遮断を、1秒毎に繰り返す(言い換えれば、プロセッサ24が、2ミリ秒ウェイクアップし、その後(=1秒-2ミリ秒)間はスリープする)ように、タイマ28が設定される。上述の数値(2ミリ秒、1秒)は一例に過ぎず、他の数値でもよい。
【0079】
スイッチ29は、タイマ28に設定された時間に従って、バッテリBからプロセッサ24への電源供給(ウェイクアップ)及び電源遮断(スリープ)を一定間隔で繰り返す。スイッチ29を介してプロセッサ24に電源が供給されると、プロセッサ24は、供給された電源に基づき作動する。具体的には、プロセッサ24は、電源が供給される毎に、複数の接続部21に接続された複数のセンサ10より出力された複数の検出結果を、メモリ25から読み出す。プロセッサ24は、読み出した複数の検出結果を纏めて1個の電文を作成する。プロセッサ24は、作成した電文を、無線インターフェース26を介して出力する。
【0080】
5.振動センサ、温度センサ及び子タグの動作フロー
【0081】
振動センサ10A、温度センサ10B及び子タグ20の動作をより詳細に説明する。前提として、工作機械80は運転しておらず、振動センサ10A、温度センサ10B及び子タグ20はスリープ状態である。
【0082】
【0083】
振動センサ10Aの振動センサ本体11Aは、スリープ中に、閾値より大きい振動及び/加速度を検出する(ステップS101、YES)。すると、振動センサ10Aのスイッチ16は、振動センサ本体11Aへ所定時間の電源供給(ウェイクアップ)を開始する(ステップS102)。振動センサ本体11Aは、閾値より大きい振動及び/加速度を検出すると、第1の信号を、接続部14を介して子タグ20に送信する(ステップS103)。
【0084】
閾値は、例えば、工作機械80が運転を開始する際に生じる微弱な振動程度の値であり、スピンドル81が自動運転する際に生じる振動より小さい。スリープ中に、振動センサ本体11Aが微弱な振動及び/又は加速度を検出できるように、振動センサ本体11Aに微弱な電流を供給しておけばよいため、省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。振動センサ本体11Aは、子タグ20に制御されて電源供給を開始するのではなく、振動の検出をトリガとして、自発的に電源供給を開始するため、子タグ20との通信量が少なくて済み、さらに省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。
【0085】
その後、振動センサ10Aのスイッチ16は、振動センサ本体11Aへ所定時間(2ミリ秒)の電源供給及びその他の期間(=1秒-2ミリ秒)の電源遮断を一定間隔(1秒毎)で繰り返す。振動センサ本体11Aは、電源が供給される毎に、検出結果を取得し、取得した検出結果を、子タグ20のメモリ25に書き込む。具体的には、振動センサ本体11Aは、1秒毎に2ミリ秒間ウェイクアップし、この2ミリ秒間に100回振動データ(即ち、100個の振動データ)を検出する。振動センサ本体11Aは、100個の振動データから所定の値(例えば、最大値、中間値、平均値、等)を抽出し、抽出した値を検出結果として子タグ20のメモリ25に書き込む。振動センサ本体11Aは、この動作(ウェイクアップ、検出、書き込み、スリープ)を1秒毎に繰り返す(ステップS104)。
【0086】
言い換えれば、振動センサ本体11Aは、1秒毎に2ミリ秒間ウェイクアップする他の大部分の時間は、電源が遮断されスリープしているため、省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。また、振動センサ本体11Aは、子タグ20に制御されて電源供給及び電源遮断を繰り返すのではなく、内蔵のタイマ12を基準に自発的に電源供給及び電源遮断を繰り返すため、子タグ20との通信量が少なくて済み、省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。
【0087】
【0088】
子タグ20のプロセッサ24は、スリープ中に、第1の信号(ステップS103)を、振動センサ10Aから接続部21を介して受信する(ステップS201、YES)。すると、子タグ20のスイッチ29は、プロセッサ24へ所定時間の電源供給(ウェイクアップ)を開始する(ステップS202)。プロセッサ24は、第1の信号を受信すると、第2の信号を、接続部21を介して温度センサ10Bに送信する(ステップS203)。
【0089】
子タグ20は、ウェイクアップするために、常に振動センサ本体11Aの検出結果をモニタする必要が無く、振動センサ本体11Aによる第1の信号をトリガとして、自発的に電源供給及び電源遮断を開始するため、振動センサ10との通信量が少なくて済み、省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。
【0090】
【0091】
温度センサ10Bは、スリープ中に、第2の信号(ステップS203)を、子タグ20から接続部14を介して受信する(ステップS301、YES)。すると、温度センサ10Bのスイッチ16は、温度センサ本体11Bへ所定時間の電源供給(ウェイクアップ)を開始する(ステップS302)。
【0092】
温度センサ10Bは、振動センサ本体11Aからの第1の信号をトリガとする子タグ20からの第2の信号をトリガとして、自発的に電源供給及び電源遮断を開始するため、子タグ20との通信量が少なくて済み、省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。
【0093】
その後、温度センサ10Bのスイッチ16は、温度センサ本体11Bへ所定時間(2ミリ秒)の電源供給及びその他の期間(=5秒-2ミリ秒)の電源遮断を一定間隔(5秒毎)で繰り返す。温度センサ本体11Bは、電源が供給される毎に、検出結果を取得し、取得した検出結果を、子タグ20のメモリ25に書き込む。具体的には、温度センサ本体11Bは、5秒毎に2ミリ秒間ウェイクアップし、この2ミリ秒間に1回温度データ(即ち、1個の温度データ)を検出する。温度センサ本体11Bは、検出した1個の温度データを検出結果として子タグ20のメモリ25に書き込む。温度センサ本体11Bは、この動作(ウェイクアップ、検出、書き込み、スリープ)を5秒毎に繰り返す(ステップS303)。
【0094】
言い換えれば、温度センサ本体11Bは、5秒毎に2ミリ秒間ウェイクアップする他の大部分の時間は、電源が遮断されスリープしているため、省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。また、温度センサ本体11Bは、子タグ20に制御されて電源供給及び電源遮断を繰り返すのではなく、内蔵のタイマ12を基準に自発的に電源供給及び電源遮断を繰り返すため、子タグ20との通信量が少なくて済み、省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。
【0095】
子タグ20のスイッチ29は、プロセッサ24へ所定時間(2ミリ秒)の電源供給及びその他の期間(=1秒-2ミリ秒)の電源遮断を一定間隔(1秒毎)で繰り返す。プロセッサ24は、電源が供給される毎に、複数のセンサ10の検出結果を、メモリ25から読み出す。プロセッサ24は、読み出した複数の検出結果を纏めて1個の電文を作成する。プロセッサ24は、作成した電文を、無線インターフェース26を介して出力する。プロセッサ24は、この動作(ウェイクアップ、読み出し、電文作成、送信、スリープ)を1秒毎に繰り返す(ステップS204)。
【0096】
言い換えれば、プロセッサ24は、1秒毎に2ミリ秒間ウェイクアップする他の大部分の時間は、電源が遮断されスリープしているため、省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。プロセッサ24は、センサがメモリ25に書き込んでおいた検出結果を、電文作成及び出力時に読み出す。このため、プロセッサ24は、センサ10に検出結果の送信を要求する必要が無いのでセンサ10との通信量が少なくて済み、さらに省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。また、プロセッサ24は常に検出結果の受信をスタンバイしておく必要が無いので、プロセッサ24の電源が遮断されスリープしている期間を長くすることができるため、さらに省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。
【0097】
振動センサ10Aの振動センサ本体11Aが閾値(ステップS101)より大きい振動及び/又は加速度を所定時間以上検出しないとする(ステップS105、YES)。これは、工作機械80が運転を停止したことを意味する。所定時間は、例えば、2秒間である。すると、振動センサ本体11Aは、第3の信号を、接続部14を介して子タグ20に送信する(ステップS106)。振動センサ10Aのスイッチ16は、振動センサ本体11Aへの電源供給を停止する。言い換えれば、スイッチ16は、振動センサ本体11Aへの電源を遮断して、振動センサ本体11Aをスリープ状態にする(ステップS107)。
【0098】
振動センサ本体11Aは、子タグ20に制御されて電源供給を停止するのではなく、振動を所定時間以上検出しないことをトリガとして、自発的に電源供給を停止するため、子タグとの通信量が少なくて済み、省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。
【0099】
子タグ20のプロセッサ24は、第3の信号(ステップS106)を、振動センサ10Aから接続部21を介して受信する(ステップS205、YES)。プロセッサ24は、第3の信号を受信すると、第4の信号を、接続部21を介して温度センサ10Bに送信する(ステップS206)。子タグ20のスイッチ29は、プロセッサ24への電源供給を停止する。言い換えれば、スイッチ29は、プロセッサ24への電源を遮断して、プロセッサ24をスリープ状態にする(ステップS207)。
【0100】
子タグ20は、電源供給を停止するために、常に振動センサ本体11Aの検出結果をモニタする必要が無く、振動センサ本体11Aによる第3の信号をトリガとして、自発的に電源供給を停止するため、振動センサ10Aとの通信量が少なくて済み、省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。
【0101】
温度センサ10Bは、第4の信号(ステップS206)を、子タグ20から接続部14を介して受信する(ステップS304、YES)。すると、温度センサ10Bのスイッチ16は、温度センサ本体11Bへの電源供給を停止する。言い換えれば、スイッチ16は、温度センサ本体11Bへの電源を遮断して、温度センサ本体11Bをスリープ状態にする(ステップS305)。
【0102】
温度センサ10Bは、振動センサ本体11Aからの第3の信号をトリガとする子タグ20からの第4の信号をトリガとして、自発的に電源供給を停止するため、子タグ20との通信量が少なくて済み、省エネルギーであり電源の長寿命化を図れる。
【0103】
7.結語
【0104】
本発明によれば、子タグ20は、工作機械80に配置された複数のセンサ10が出力した複数の検出結果を纏めた電文を、無線で出力する。コンピュータ40は、無線で出力された電文に含まれる複数の検出結果を、変換して専用コントローラ50のメモリ51に書き込む。これにより、専用コントローラ50は、複数のセンサ10より出力された検出結果に基づき、工作機械80を制御することができる。
【0105】
本発明によれば、傾向値管理装置70は、子タグ20が出力した電文に含まれる複数の検出結果に基づき、工作機械80の傾向値を算出する。傾向値は、例えば、メンテナンスコスト、ダウンタイム、メンテナンスサイクル、寿命管理、部品交換時期、トレーサビリティ、トラブル等に関する値である。傾向値管理装置70は、傾向値を例えばCSV形式でクラウドサーバ90に出力する。傾向値管理装置70は、さらに、専用コントローラ50から、工作機械80への機械制御に関するデータを受信し、例えばCSV形式でクラウドサーバ90に出力する。クラウドサーバ90は、傾向値管理装置70が出力したデータを受信し、蓄積する。これにより、工作機械80のスピンドル81の寿命管理と、スピンドル81の適正運転方法を見出し、その情報を分析することが可能になり、スピンドル81の改良進化を加速させることを図れる。
【0106】
本技術の各実施形態及び各変形例について上に説明したが、本技術は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0107】
1 センサシステム
10 センサ
10A 振動センサ(第1のセンサ)
10B 温度センサ(第2のセンサ)
11 センサ本体
11A 振動センサ本体
11B 温度センサ本体
12 タイマ
13 ID設定部
14 接続部
15 配線
16 スイッチ
20、20A、20B 子タグ
21 接続部
22 増幅器
23 A/D変換器
24 プロセッサ
25 メモリ
26 無線インターフェース
27 ID設定部
28 タイマ
29 スイッチ
30 第1の親タグ
40 コンピュータ
41 変換部
50 専用コントローラ
51 メモリ
52 機械制御部
53 表示制御部
54 ディスプレイ
60 第2の親タグ
70 傾向値管理装置
80 工作機械
81 スピンドル
82 モータ
90 クラウドサーバ
B バッテリ