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特許7546907ベルトコンベヤに於けるベルトの蛇行調整装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ベルトコンベヤに於けるベルトの蛇行調整装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 15/64 20060101AFI20240902BHJP
   B65G 43/02 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B65G15/64
B65G43/02 E
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020213273
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099484
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】504385982
【氏名又は名称】株式会社JRC
(74)【代理人】
【識別番号】100077470
【弁理士】
【氏名又は名称】玉利 冨二郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 實
(72)【発明者】
【氏名】小谷 孝典
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-135508(JP,U)
【文献】特開昭58-193807(JP,A)
【文献】実開昭58-110609(JP,U)
【文献】実開昭48-112077(JP,U)
【文献】中国実用新案第201023942(CN,Y)
【文献】韓国登録特許第10-1220913(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 15/64
B65G 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトコンベヤに於けるテールプーリのセンタ支軸の突出両端に設けた軸受に出力軸の前方に向く先端をそれぞれ自在継手を介し接続し、この両出力軸の末端部に設けてある雄ネジをコンベヤフレームに支持させてある両ウォーム減速機のウォームホイールの中心に設けた雌ネジにねじ込み、上記ウォームホイールに前記ウォームホイールの可逆駆動用モーターを有するウォームギヤを噛合し、また上記テールプーリの前方のキャリヤ側ベルトの両側に前記キャリヤ側ベルトの蛇行検知手段を設け、両出力軸は前記可逆駆動用モーターによって個別に押し出し及び引き戻し動作を制御され、前記蛇行検知手段でベルトの蛇行とその度合いが検知されると、蛇行度合いに応じて、並列する出力軸を同時にかつ個別に、停止、押し出し動作、又は引き戻し動作とそれらの動作距離を制御することで、ベルトのテンションを適正範囲内に収めつつ、テールプーリを所定角度傾動させてベルトの蛇行を打ち消すことを特徴とするベルトコンベヤに於けるベルトの蛇行調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベルトコンベヤに於けるベルトの蛇行を調整すること以外に、ベルトを緊張させることもできる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンベヤ設備には、機長の大小やベルト幅の大小のようにそれぞれ異なった仕様条件のコンベヤがあり、いずれの場合もコンベヤベルトを駆動する装置と、そのために必要なベルトを緊張させる既知の装置や方法がある。
【0003】
なかでも操業上管理難度の高いものに、機長の短いコンベヤや搬送速度の速いコンベヤがあげられる。
【0004】
特に、機長の短いコンベヤは一般的にベルトの周回する回数が速いので、ベルトが安定し難くその分落荷や蛇行する確率が高いと言われている。
【0005】
その中でも、ベルトの蛇行する率も多いので管理者はベルトを安定させるのに大変苦労するし、不安定な状態のベルトは特にベルトの幅方向の両側縁部(一般的には、ベルトの耳という)が損傷し易く、更に不安定操業や操業停止、落荷の要因となることが多い。
【0006】
そこで、キャリヤ側ベルトを支承するキャリヤローラの支承各ローラスタンドを旋回自在に支持して、この各ローラスタンドをローラスタンドの旋回ローラとベルトの側縁との接触にともないベルトの蛇行を修正するように旋回させる方式がある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0007】
ところで、特許文献1及び2の方式によると、キャリヤベルトの全長の点在位置毎に旋回ローラスタンドを設けるので、装置が大掛かりになって、大幅なコストアップになる等の問題があり、また機長が長尺なベルトコンベヤの蛇行修正に効果があるのに対し、機長が短いコンベヤには、効果がないなどの問題もあった。
【0008】
そこで、上述の問題を解決するために、ベルトコンベヤに於けるテールプーリの中心線上の支軸の片端をベルトコンベヤのベルトの走行方向に移動させ、かつ支軸のもう片端をベルトコンベヤのベルトの走行方向の反対方向に移動させて、テールプーリを傾動させることにより上記コンベヤベルトの蛇行を修正するよにした方式が知られている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2008-127177号公報
【文献】特開2008-308252号公報
【文献】特開昭60-242111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献3の方式によるベルトコンベヤの蛇行調整方式によると、コンベヤベルトのテールプーリの両端に回動自在に取り付けられ、ベルトの緊張方向に摺動可能に設置された両軸受が、油圧シリンダに接続され、シリンダの作用にともない両軸受の片方がベルトの走行方向前方に、もう片方がベルトの走行方向後方にスライドするようにしてある。
【0011】
この方式は、コンベヤベルトの運転中に蛇行にともない走行ベルトが偏位すると、テールプーリより回転軸に加わるコンベヤベルトの張力の分布は、片方の軸受には小さく、もう片方の軸受には大きく負荷分布され、この負荷配分された圧力を圧力センサーにて検知し、夫々の圧力信号を差圧演算器に入力し、その差圧が計算されて、この値が制御装置に入力され、次いで差圧信号に基づきソレノイドを励磁する電流を送って油圧弁を切り換えて一方のシリンダを縮退し、もう片方のシリンダを伸長させるので、構造が複雑になると共に、ベルトの蛇行を瞬時に修正する対応に問題があった。
【0012】
すなわち、シリンダの一方を伸長させ、もう一方を縮退させる方式のため、ヘッドプーリの傾動停止位置の正確な停止性に油圧の圧縮のバラツキにともなう問題があった。
【0013】
そこで、この発明は、上述の問題をなくするようにしたベルトコンベヤに於けるベルトの蛇行調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、この発明は、ベルトコンベヤに於けるテールプーリのセンタ支軸の突出両端に設けた軸受に出力軸の前方に向く先端をそれぞれ自在継手を介し接続し、この両出力軸の末端部に設けてある雄ネジをコンベヤフレームに支持させてある両ウォーム減速機のウォームホイールの中心に設けた雌ネジにねじ込み、上記ウォームホイールに前記ウォームホイールの可逆駆動用モーターを有するウォームギヤを噛合し、また上記テールプーリの前方のキャリヤ側ベルトの両側に前記キャリヤ側ベルトの蛇行検知手段を設け、両出力軸は前記可逆駆動用モーターによって個別に押し出し及び引き戻し動作を制御され、前記蛇行検知手段でベルトの蛇行とその度合いが検知されると、蛇行度合いに応じて、並列する出力軸を同時にかつ個別に、停止、押し出し動作、又は引き戻し動作とそれらの動作距離を制御することで、ベルトのテンションを適正範囲内に収めつつ、テールプーリを所定角度傾動させてベルトの蛇行を打ち消す構成を採用する。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、この発明のベルトコンベヤに於けるベルトの蛇行調整装置によれば、ベルトコンベヤのキャリヤ側ベルトが何らかの要因により蛇行すると、その蛇行が検知手段により検知され、検知にともない作用するウォーム減速機により、例えば一方の出力軸が押し出され、もう一方の出力軸が引き戻されることによってテールプーリが傾動するので、ベルトの蛇行を自動的に調整する効果がある。
【0016】
そして、出力軸の押し出しと引き戻しとにウォーム減速機を使用しているので、ウォーム減速機の運転停止と同時にウォームホイールの回転が停止してロック状態になり、正確な停止位置を保障することができる。
【0017】
なお、両出力軸は前記可逆駆動用モーターによって個別に押し出し及び引き戻し動作とその動作距離をを制御されているので、両出力軸の動作量を調整することにより、ベルトのテンションを適正範囲内に収めながらテールプーリを所定角度傾動させてベルトの蛇行を打ち消すことができると共に、ベルトが蛇行を伴わない場合でもベルト全体のテンションが適正値から外れたり外れそうな場合、両出力軸の動作量調整によりベルトのテンションを適正値に修正することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の実施形態を示す平面図である。
図2】同上の要部を示す一部切欠拡大平面図である。
図3】同上の拡大正面図である。
図4】駆動に関する情報の流れを示す平面図である。
図5】制御に関する情報の流れを示す平面図である。
図6】検知手段の正面図である。
図7】同上の側面図である。
図8】蛇行調整装置の動作チャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すAは、ベルトコンベヤである。
【0020】
上記のベルトコンベヤAは、周知のように、後方のテールプーリ1と前方のヘッドプーリ(図示省略)と、このテールプーリ1とヘッドプーリの間にかけ渡した無端状のベルト3とからなり、上記ベルト3のキャリヤ側ベルト3の下面点在位置をトラフ型などのキャリヤローラ(図示省略)で、また上記ベルト3のリターン側ベルト3の下面点在位置をリターンローラ(図示省略)で支承してある。
【0021】
また、図1に示すように、テールプーリ1の軸芯に貫通させたセンタ支軸4の両端部を上記テールプーリ1の両端部内に組み込んである軸受(図示省略)により軸承すると共に、センタ支軸4の突出両端に軸受5を設ける。
【0022】
さらに、この各軸受5には、自在継手6を介し末端が後方に向く出力軸7の先端が連結してある。
【0023】
また、上記の各出力軸7は、図1,2,3に示すように末端側途中の外周に雄ネジ8を設けて、この雄ネジ8を、コンベヤフレーム9に据え付けてあるウォーム減速機10のウォームホイール11の中心の雌ネジ12にねじ込み、上記ウォームホイール11に噛み合うウォームギヤ13をモーター14により可逆駆動することで、上記の出力軸7が上記ベルト3の走行方法、走行反対方向(押し、引き)にスライドするので、上記のテールプーリ1が傾動する。
【0024】
その結果、テールプーリ1の傾動にともないベルト3には、蛇行修正方向の力が作用する。
【0025】
図中15は、出力軸7に介在してある前記出力軸7の押し、引きの型のロードセルで、このロードセル15は、出力軸7に加わる力を測定することで軸受5への張力を測定すると共に、ベルトや、プーリ或いは付帯設備の保護を目的とする。
【0026】
また、テールプーリ1により反転したキャリヤ側ベルト3の両側縁の外側には、蛇行するベルト3の外側縁(ベルトの耳)に接して押し倒しにともない蛇行を検知する検知手段Sが設けてある。
【0027】
上記の検知手段Sとしては、ケース16の可動軸17に下端を支持させてあるレバー18の上端に設けてあるタッチ回転体19にベルト3の側縁が当接することで、ベルト3の蛇行量が検知されるようになっている。
【0028】
上述の検知は、上記ベルト3の蛇行にともない回転体19の押し倒し角度によって判断するようになっている。すなわち、上記判断にともなって、出力軸7を押し出し、引き戻しの作用をウォーム減速機10に伝達するようになっている。
【0029】
なお、上述のレバー18の倒れ角度が大きくなるにともないベルト3の蛇行量が大きくなる。
【0030】
そこで、レバー18の倒れ角度の増加にともない、危険状態の増加を着色ランプの点滅で警告するようにしておくと(図示省略)、危険度を目視することができる。
【0031】
また、図4に示すように、駆動に関する制御ユニットの機側制御盤21からウォーム減速機10のモーター14に第1回路22を介しモーター14に接続されて、ベルト3の蛇行修正方向にモーター14を運転するようになっている。
【0032】
さらに、図5に示すように、位置及び牽引力に関する制御ユニットの機側制御盤23からウォーム減速機10のロードセル15及びエンコーダ24に第2回路25が接続されている。
【0033】
エンコーダ24は、モーター14の回転方向および回転数をカウントすることにより、テールプーリ1の軸受5の位置を把握、認識しており、第2回路25を介し制御ユニットに軸受5の位置情報を送っている。
【0034】
なお、ベルト3の蛇行要因がなくなると、片方出力軸7の押し出しと、もう片方出力軸7との押し、引きがなくなる。
【0035】
上記のように構成することで、ベルトコンベヤAのキャリヤ側ベルト3に蛇行が発生すると、その蛇行が検知手段Sで検知され、両側のウォーム減速機10、10のウォームホイール11、11の一方が左回転し、もう一方が右回転して、並列する片方の出力軸7がキャリヤ側ベルト3の走行方向に、もう片方の出力軸7がキャリヤ側ベルト3の走行方向の逆方向に雄ネジ8と雌ネジ12との噛合にともないスライドさせる。
【0036】
なお、ウォーム減速機10の動作停止時にはウォームホイール11の回動を停止するロック作用のため、両出力軸7の微動がなく、確実な停止位置を保証する。
【0037】
上記のように、ベルトコンベヤAのベルト3の蛇行に対しすばやく対応することができると共に、ベルトの蛇行度合いに応じてウォーム減速機10を用いることによりテールプーリ1を蛇行修正に適切な傾動角度になるように制御することができる。
【0038】
勿論、同時にベルト3の全体の張力を調整する必要がある場合は、例えば、前記のように両側のウォーム減速機10、10のウォームホイール11、11を逆回転させつつ、両側の出力軸7、7のスライド量に差を付けたり、または、一方側の軸受5の位置を動かさず、残りのもう片側の軸受5を押し出し、引き戻ししたり、又は、両側の軸受5を同時に押し出し若しくは引き戻しをしつつ、その移動量に差をつけることで、全体の張力を調整しつつベルト3の蛇行調整ができる。
【0039】
要するに片方軸受5の押し出し・引き戻し量と、もう片方軸受5の押し出し・引き戻し量の適宜な調整により、テールプーリ1を傾動させて、この傾動にともないベルト3に蛇行を修正する力が働いてリターン側のベルト3の蛇行を修正しつつ、ベルトコンベヤのベルトテンション値を常に適正かつ自動的に維持することができるし、更には、蛇行調整を行わずに量軸受5、5の押し出し又は引き戻しによりテンション値のみ調整することもできる。
【0040】
図8は、この発明のベルトコンベヤに於けるベルトの蛇行調整装置の動作を示すチャート図である。
【0041】
まず、ベルト3の伸び等が発生し、テールプーリ1での緊張力が規定のテンション値から外れるとロードセル15がその値を検知し、図5第2回路25を通じて制御盤23にその情報を送り、その情報に基づき図4第1回路22を通じて両モーター14、14を駆動させて軸受5をテールプーリ1の緊張力を高める方向に移動させ、テンション値が規定値になればモーター14を停止させて軸受5の位置を固定する。
【0042】
次に、ベルト3に蛇行が発生した場合、蛇行によりベルト3の耳が図6図7の回転体19を押し倒し、ベルト片寄りスイッチが入り、更に、回転体19の倒れ角度が所定角度以上(図8実施例では20°以上)になれば、ベルト3が片寄った側のモーター14を駆動させることにより、テンションを高める方向に軸受5を移動させることで蛇行を打ち消すようにする。
【0043】
その際、図5の第2回路25に示すように、両方のエンコーダ24からの情報により両側の軸受5の位置、即ち、テールプーリ1の傾動度合いを監視しつつ行い、傾動度合いが所定値を越えた場合(図8実施例では軸受のずれ32.5mmを超えた場合)、安全のためコンベヤを停止させる。
【0044】
勿論、同時にロードセル15からの情報により、両方の軸受5におけるテンションを適切な範囲となるように監視しつつモーター14を駆動・停止させる。
【0045】
また、ベルト3の蛇行度合いが大きくなりすぎ、回転体19の倒れ角度が所定値(図8実施例では30°)を超えた場合も、安全のためコンベヤを停止させる。
【0046】
モーター14の制御駆動により、テールプーリ1を傾動させ、ベルト3の蛇行が打ち消され、回転体19へのベルト3の接触がなくなれば、モーター14の停止と、ウォーム減速機10の構造にともない、テールプーリ1の軸受5は固定され、ベルトコンベヤAは駆動を継続する。
【符号の説明】
【0047】
A ベルトコンベヤ
S 検知手段
1 テールプーリ
3 ベルト
4 センタ支軸
5 軸受
6 自在継手
7 出力軸
8 雄ネジ
9 コンベヤフレーム
10 ウォーム減速機
11 ウォームホイール
12 雌ネジ
13 ウォームギヤ
14 モーター
15 ロードセル
16 ケース
17 可動軸
18 レバー
19 回転体
21 制御盤
22 第1回路
23 制御盤
24 エンコーダ
25 第2回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8