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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】剛性可変変形体および剛性可変機構
(51)【国際特許分類】
   B25J 18/06 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
B25J18/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021020338
(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2022123192
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 将広
(72)【発明者】
【氏名】恩田 一生
(72)【発明者】
【氏名】高橋 知也
(72)【発明者】
【氏名】多田隈 建二郎
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-356279(JP,A)
【文献】特開平05-015485(JP,A)
【文献】国際公開第2020/018934(WO,A1)
【文献】特開平06-201958(JP,A)
【文献】特開2009-112537(JP,A)
【文献】特開2011-208708(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0067158(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い可撓性の変形体本体と、
3つ以上から成り、細長く、非伸縮性または難伸縮性の素材から成り、前記変形体本体の周方向に沿って互いに間隔をあけて配置され、それぞれ前記変形体本体の側面に沿って前記変形体本体の先端部から後端部まで伸びるよう設けられた袋体と、
各袋体を支持するよう前記変形体本体に設けられた支持手段と、
各袋体の内部に流体を供給可能、かつ、各袋体の内部から前記流体を排出可能に設けられた流体供給排出手段とを有し、
前記支持手段は、前記変形体本体の側面に、前記変形体本体の長さ方向に沿って所定の間隔で設けられた複数の支持部材を有し、
各支持部材は、各袋体に対応して前記変形体本体の長さ方向に沿って貫通して設けられた複数の支持孔を有し、各支持孔に各袋体を通して支持しており、
各支持孔は、各袋体の内部から前記流体を排出した状態のとき、各袋体をその長さ方向に沿って移動可能、かつ、各袋体の内部に前記流体を供給したとき、各袋体が内周部に押し当てられて固定可能な形状および大きさを有しており、
前記支持手段は、各袋体の内部から前記流体を排出した状態で前記変形体本体を曲げたとき、各袋体が前記変形体本体の側面の形状に沿うよう、各袋体をその長さ方向に沿って移動可能に支持すると共に、前記流体供給排出手段により各袋体の内部に前記流体を供給したとき、各袋体を固定可能に構成されていることを
特徴とする剛性可変変形体。
【請求項2】
各支持孔は、前記内周部に、内側に向かって突出するよう設けられた1または複数の突起を有していることを特徴とする請求項記載の剛性可変変形体。
【請求項3】
各袋体は、内部から前記流体を排出した状態のとき扁平形状を成し、
各支持孔は、前記変形体本体の長さ方向に対して垂直な断面が、前記変形体本体の周方向に沿って細長い形状を成し、それぞれ前記扁平形状の各袋体を貫通可能に、前記扁平形状の各袋体の幅より大きい幅、および、前記扁平形状の各袋体の厚みより大きい高さを有していることを
特徴とする請求項1または2記載の剛性可変変形体。
【請求項4】
各支持孔は、幅方向の両端部で前記高さが小さく、幅方向の中央部で前記高さが大きい形状を成していることを特徴とする請求項記載の剛性可変変形体。
【請求項5】
前記変形体本体は、その長さ方向に沿って、後端から先端まで伸びる貫通孔を有していることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の剛性可変変形体。
【請求項6】
細長い可撓性の変形体本体と、
2つ以上から成り、細長く、長さ方向に非伸縮性または難伸縮性の素材から成り、それぞれ前記変形体本体の側面に沿って、前記変形体本体の後端部から先端部を通って、前記変形体本体の反対側の後端部まで伸びるよう設けられた長尺袋状体と、
3つ以上から成り、それぞれ各長尺袋状体の前記変形体本体の片側の後端部から先端部までの部分から成り、前記変形体本体の周方向に沿って互いに間隔をあけて配置された袋体と、
各袋体を支持するよう前記変形体本体に設けられた支持手段と、
各袋体の内部に流体を供給可能、かつ、各袋体の内部から前記流体を排出可能に設けられた流体供給排出手段とを有し、
前記支持手段は、各袋体の内部から前記流体を排出した状態で前記変形体本体を曲げたとき、各袋体が前記変形体本体の側面の形状に沿うよう、各袋体をその長さ方向に沿って移動可能に支持すると共に、前記流体供給排出手段により各袋体の内部に前記流体を供給したとき、各袋体を固定可能に構成されていることを
特徴とする剛性可変変形体。
【請求項7】
前記変形体本体は、長さ方向に対して垂直方向に捻れるよう構成されており、
前記支持手段は、各袋体の内部から前記流体を排出した状態で前記変形体本体を捻ったとき、各袋体が前記変形体本体の側面の形状に沿うよう、各袋体をその長さ方向に沿って移動可能に支持するよう構成されていることを
特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の剛性可変変形体。
【請求項8】
前記変形体本体は、変形に対して元の形状に戻す力が働く弾性を有していることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の剛性可変変形体。
【請求項9】
細長い可撓性の変形体本体と、
3つ以上から成り、細長く、非伸縮性または難伸縮性の素材から成り、前記変形体本体の周方向に沿って互いに間隔をあけて配置され、それぞれ前記変形体本体の側面に沿って前記変形体本体の先端部から後端部まで伸びるよう設けられた袋体と、
各袋体を支持するよう前記変形体本体に設けられた支持手段と、
各袋体の内部に流体を供給可能、かつ、各袋体の内部から前記流体を排出可能に設けられた流体供給排出手段とを有し、
前記支持手段は、前記変形体本体の側面に、前記変形体本体の長さ方向に沿って所定の間隔で設けられた複数の支持部材を有し、
各支持部材は、各袋体に対応して前記変形体本体の長さ方向に沿って貫通して設けられた複数の支持孔を有し、各支持孔に各袋体を通して支持しており、
各支持孔は、各袋体の内部から前記流体を排出した状態のとき、各袋体をその長さ方向に沿って移動可能、かつ、各袋体の内部に前記流体を供給したとき、各袋体が内周部に押し当てられて固定可能な形状および大きさを有しており、
前記流体供給排出手段で各袋体の内部から前記流体を排出したとき、各袋体が前記変形体本体の側面の形状に沿うよう、前記支持手段が各袋体をその長さ方向に沿って移動可能に支持することにより、前記変形体本体を湾曲可能に設けられ、前記流体供給排出手段で各袋体の内部に前記流体を供給したとき、前記支持手段が各袋体を固定して、前記変形体本体が固定されるよう構成されていることを
特徴とする剛性可変機構。
【請求項10】
細長い可撓性の変形体本体と、
2つ以上から成り、細長く、長さ方向に非伸縮性または難伸縮性の素材から成り、それぞれ前記変形体本体の側面に沿って、前記変形体本体の後端部から先端部を通って、前記変形体本体の反対側の後端部まで伸びるよう設けられた長尺袋状体と、
3つ以上から成り、それぞれ各長尺袋状体の前記変形体本体の片側の後端部から先端部までの部分から成り、前記変形体本体の周方向に沿って互いに間隔をあけて配置された袋体と、
各袋体を支持するよう前記変形体本体に設けられた支持手段と、
各袋体の内部に流体を供給可能、かつ、各袋体の内部から前記流体を排出可能に設けられた流体供給排出手段とを有し、
前記流体供給排出手段で各袋体の内部から前記流体を排出したとき、各袋体が前記変形体本体の側面の形状に沿うよう、前記支持手段が各袋体をその長さ方向に沿って移動可能に支持することにより、前記変形体本体を湾曲可能に設けられ、前記流体供給排出手段で各袋体の内部に前記流体を供給したとき、前記支持手段が各袋体を固定して、前記変形体本体が固定されるよう構成されていることを
特徴とする剛性可変機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性可変変形体および剛性可変機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変形可能な柔軟な状態と、高剛性の状態とを切り替える機構を利用して、例えば、柔軟時に対象物に押し付けてその形状になじませ、その状態で高剛性に切り替えることにより、対象物を把持するグリッパや、体内に挿入る際や体内から取り出す際に柔軟な状態にしておき、体内の組織を鉗子で採取する際などに高剛性の状態に切替可能な内視鏡などが提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1または2参照)。
【0003】
このような剛性を切り替える機構として、例えば、粉体や複数のワイヤ等に負圧を与えることでジャミング転移現象を起こし、剛性を高める機構が開発されている(例えば、非特許文献1乃至4参照)。この機構では、例えば、粉体を用いた場合には、大変形が可能であり、対象物の形状に良くなじむという特徴を有している。また、数珠を通るワイヤに張力を加えることにより、剛性を高める機構も開発されている(例えば、特許文献1、非特許文献1、2、5または6参照)。この機構は、数珠を硬い材料で構成することにより、高強度化・高耐久化が可能であるという特徴を有している。
【0004】
また、複数の連結部材を一列に並べて互いに回転可能に連結して成り、各連結部材の連結部分(間接部分)が、厚み方向に所定の間隔をあけて櫛状に積層した複数の薄板を有し、隣り合う連結部材が、その薄板同士を噛み合わせて連結されており、その薄板の厚み方向に荷重を加えることにより、関節部分の剛性を高めるものも開発されている(例えば、非特許文献7または8参照)。また、同様に、複数の連結部材を一列に並べて互いに回転可能に連結して成り、各連結部材の連結部分(間接部分)が、径方向に所定の間隔をあけて同心円状に積層した複数の円筒を有し、連結部材の各円筒に噛み合う同心円状の複数の円筒を2組有するジョイントにより各連結部材が連結されており、あるいは、隣り合う連結部材の各円筒を噛み合わせて連結されており、各円筒の径方向に荷重を加えることにより、関節部分の剛性を高めるものも開発されている(例えば、非特許文献7または8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-202376号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Ario Loeve, Paul Breedveld, Jenny Dankelman, “Scopes Too Flexible … and Too Stiff”, IEEE Pulse, 2010, Volume 1, Issue 3, p.26-41, DOI: 10.1109/MPUL.2010.939176
【文献】Loic Blanc, Alain Delchambre and Pierre Lambert, “Flexible Medical Devices: Review of Controllable Stiffness Solutions”, Actuators, 2017, 6, 23, DOI: 10.3390/act6030023
【文献】Yong-Jae Kim and Shanbao Cheng, “A Novel Layer Jamming Mechanism With Tunable Stiffness Capability for Minimally Invasive Surgery”, IEEE TRANSACTIONS ON ROBOTICS, August 2013, Vol. 29, No. 4, p.1031-1042
【文献】藤田政宏、藤本敏彰、清水杜織、高根英里、小松洋音、多田隈建二郎、昆陽雅司、田所諭、「房状ジャミング膜グリッパ機構」、ロボティクス・メカトロニクス講演会2018、June 2018、2P1-J06
【文献】Amir Degani and Howie Choset, “Highly Articulated Robotic Probe for Minimally Invasive Surgery”, IEEE International Conference on Robotics and Automation Orlando, May 2006, p.4167-4172
【文献】藤本敏彰、清水杜織、藤田政宏、高根英里、林聡輔、渡辺将広、多田隈建二郎、昆陽雅司、田所諭、「1次元柔剛切替メカニズムを活用したトーラスグリッパ機構 ― 線状ジャミング転移機構を基軸とした構造例」、第36回日本ロボット学会学術講演会、2018年、RSJ2018A C3K1-01
【文献】向出陸央、清水杜織、小澤悠、高橋知也、渡辺将広、多田隈建二郎、昆陽雅司、田所諭、「径方向層状ジャミング機構」、2019年、第37回日本ロボット学会学術講演会予稿集、1I1-06
【文献】Rio Mukaide, Masahiro Watanabe, Kenjiro Tadakuma, Yu Ozawa, Tomoya Takahashi, Masashi Konyo, and Satoshi Tadokoro, “Radial-Layer Jamming Mechanism for String Configuration”, IEEE Robotics and Automation Letters, [online], 30 March 2020, DOI: 10.1109/LRA.2020.2983679
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1乃至4に記載のジャミング転移現象を利用した剛性可変機構は、負圧を利用するものであり、圧力を0.1MPa程度まで低下させるのが限界であるため、高剛性化に限界があるという課題があった。また、特許文献1、非特許文献1、2、5および6に記載のワイヤ方式による剛性可変機構では、長尺化すると、数珠とワイヤとの接触面積が増えるため、摩擦による力の損失が大きくなり、特に先端部で高剛性状態にするのが困難になるという課題があった。
【0008】
また、非特許文献7および8に記載の複数の薄板や複数の円筒を噛み合わせて関節部分の剛性を高める可変剛性機構では、柔軟な状態のときでも、各連結部分で一方向にしか曲げることができず、任意の方向に曲げることができないという課題があった。
【0009】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、柔軟な状態のときに任意の方向に曲げることができ、高剛性状態のときの剛性を高めることが可能で、長尺化しても全体を高剛性状態にすることができる剛性可変変形体および剛性可変機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る剛性可変変形体は、細長い可撓性の変形体本体と、3つ以上から成り、細長く、非伸縮性または難伸縮性の素材から成り、前記変形体本体の周方向に沿って互いに間隔をあけて配置され、それぞれ前記変形体本体の側面に沿って前記変形体本体の先端部から後端部まで伸びるよう設けられた袋体と、各袋体を支持するよう前記変形体本体に設けられた支持手段と、各袋体の内部に流体を供給可能、かつ、各袋体の内部から前記流体を排出可能に設けられた流体供給排出手段とを有し、前記支持手段は、各袋体の内部から前記流体を排出した状態で前記変形体本体を曲げたとき、各袋体が前記変形体本体の側面の形状に沿うよう、各袋体をその長さ方向に沿って移動可能に支持すると共に、前記流体供給排出手段により各袋体の内部に前記流体を供給したとき、各袋体を固定可能に構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る剛性可変機構は、細長い可撓性の変形体本体と、3つ以上から成り、細長く、非伸縮性または難伸縮性の素材から成り、前記変形体本体の周方向に沿って互いに間隔をあけて配置され、それぞれ前記変形体本体の側面に沿って前記変形体本体の先端部から後端部まで伸びるよう設けられた袋体と、各袋体を支持するよう前記変形体本体に設けられた支持手段と、各袋体の内部に流体を供給可能、かつ、各袋体の内部から前記流体を排出可能に設けられた流体供給排出手段とを有し、前記流体供給排出手段で各袋体の内部から前記流体を排出したとき、各袋体が前記変形体本体の側面の形状に沿うよう、前記支持手段が各袋体をその長さ方向に沿って移動可能に支持することにより、前記変形体本体を湾曲可能に設けられ、前記流体供給排出手段で各袋体の内部に前記流体を供給したとき、前記支持手段が各袋体を固定して、前記変形体本体が固定されるよう構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る剛性可変変形体および剛性可変機構は、各袋体の内部から流体を排出した状態で可撓性の変形体本体を曲げると、変形体本体の側面の形状に沿うよう、支持手段で支持された各袋体を、その長さ方向に沿って移動させることができる。例えば、変形体本体の曲がりの内側の袋体を、変形体本体の長さ方向に沿った長さが短くなるよう移動させ、変形体本体の曲がりの外側の袋体を、変形体本体の長さ方向に沿った長さが長くなるよう移動させることができる。この状態のとき、流体供給排出手段で各袋体の内部に流体を供給することにより、各袋体を膨らませて支持手段により固定することができる。また、各袋体が膨らんだ状態から、流体供給排出手段で各袋体の内部の流体を排出することにより、各袋体を元の状態に戻して移動可能にすることができる。
【0013】
このように、本発明に係る剛性可変変形体および剛性可変機構は、各袋体の内部から流体を排出した状態のとき、変形体本体を任意の方向に曲げたり真っ直ぐにしたりすることができ、柔軟な状態にすることができる。また、各袋体の内部に流体を供給したとき、任意の方向に曲げた状態や真っ直ぐにした状態で固定することができ、高剛性の状態にすることができる。本発明に係る剛性可変変形体および剛性可変機構は、変形体本体を固定可能な圧力以上の圧力の範囲で、各袋体に供給する流体の圧力を調節することにより、変形体本体の剛性を変えることができる。このように、本発明に係る剛性可変変形体および剛性可変機構は、各袋体を膨張させて剛性を高めるものであり、負圧を利用するものと比べて、高剛性状態のときの剛性をより高めることができる。また、各袋体の内部の圧力は一定であるため、変形体本体や各袋体の長さを長くして長尺化しても、全体を高剛性状態にすることができる。
【0014】
本発明に係る剛性可変変形体および剛性可変機構は、空気などの流体により、変形体本体の剛性を変えることができるため、軽量化を図ることができる。このため、機器や人体に取り付けても負担になりにくく、使いやすい。本発明に係る剛性可変変形体および剛性可変機構は、長尺で、曲げなどの変形を伴い、柔軟な状態と高剛性状態とを切り替える必要がある用途であれば、いかなるものにでも利用することができる。例えば、所定の形状で固定する機能を利用して、ロボットアームや索状体やホースなどの位置決め装置として利用することができる。また、剛性可変機能を利用し、四肢や胴体に取り付けて、トレーニング機器やリハビリ機器、VR機器として利用することもできる。また、人工筋肉やアシストスーツ、内視鏡などにも利用することができる。
【0015】
本発明に係る剛性可変変形体および剛性可変機構で、前記変形体本体は、その長さ方向に沿って、後端から先端まで伸びる貫通孔を有していてもよい。この場合、変形体本体は筒状を成し、例えば、コイルバネ、柔軟素材から成る筒体、蛇腹を有する筒体、編み組チューブなどから成っていてもよい。これらの場合、貫通孔にカメラや鉗子などを挿入して、内視鏡として利用することができる。また、貫通孔に腕や足を挿入して、アシストスーツとして利用することができる。また、細長く、所定の形状に変形可能な形状変化体を貫通孔に入れ、各袋体の内部から流体を排出した状態で形状変化体を変形させることにより、変形体本体を所定の形状にすることができる。なお、変形体本体は、貫通孔を有していなくてもよい。
【0016】
本発明に係る剛性可変変形体および剛性可変機構で、各袋体は、変形体本体の外側面に沿って設けられていてもよく、変形体本体が筒状を成す場合には、変形体本体の内側面に沿って設けられていてもよい。各袋体が変形体本体の内側面に沿って設けられている場合には、各袋体を変形体本体で覆って保護することができる。
【0017】
本発明に係る剛性可変変形体および剛性可変機構で、各袋体の内部から流体を排出した状態で変形体本体を曲げたときに、各袋体が変形体本体の外側面の形状に沿うように支持するための支持手段の構成や、各袋体の内部に流体を供給したときに、各袋体が支持手段に固定される構成は、いかなる構成であってもよい。例えば、前記支持手段は、前記変形体本体の側面に、前記変形体本体の長さ方向に沿って所定の間隔で設けられた複数の支持部材を有し、各支持部材は、各袋体に対応して前記変形体本体の長さ方向に沿って貫通して設けられた複数の支持孔を有し、各支持孔に各袋体を通して支持しており、各支持孔は、各袋体の内部から前記流体を排出した状態のとき、各袋体をその長さ方向に沿って移動可能、かつ、各袋体の内部に前記流体を供給したとき、各袋体が内周部に押し当てられて固定可能な形状および大きさを有していてもよい。この場合、各支持部材の支持孔の内周部と各袋体との間の摩擦抵抗等により、各袋体を固定することができる。また、各支持部材や各支持孔が粘着部を有し、各袋体の内部に流体を供給したとき、各袋体が膨らむことにより、各袋体が粘着部に接触して固定されるよう構成されていてもよい。また、例えば、支持手段が、細長い伸縮可能な可撓性の部材から成り、変形体本体の側面に、変形体本体の長さ方向に沿って設けられ、その長さ方向に貫通して支持孔が設けられていてもよい。また、支持手段が、変形体本体の側面に、変形体本体の長さ方向に沿って設けられた溝や、変形体本体の外側縁部に、変形体本体の長さ方向に沿って設けられた貫通孔から成り、その溝や貫通孔が支持孔を成していてもよい。
【0018】
各支持部材が支持孔を有する場合、各支持孔は、前記内周部に、摩擦抵抗を大きくするための凹凸や、内側に向かって突出するよう設けられた1または複数の突起を有していてもよい。また、各袋体が、外表面に摩擦抵抗を大きくするための凹凸を有していてもよい。これらの場合、各袋体が各支持孔の内周部に押し当てられたとき、各袋体をより強固に固定することができる。
【0019】
また、各支持部材が支持孔を有する場合、各袋体は、内部から前記流体を排出した状態のとき扁平形状を成し、各支持孔は、前記変形体本体の長さ方向に対して垂直な断面が、前記変形体本体の周方向に沿って細長い形状を成し、それぞれ前記扁平形状の各袋体を貫通可能に、前記扁平形状の各袋体の幅より大きい幅、および、前記扁平形状の各袋体の厚みより大きい高さを有していてもよい。さらに、各支持孔は、幅方向の両端部で前記高さが小さく、幅方向の中央部で前記高さが大きい形状を成していてもよい。これらの場合、各袋体が各支持孔の内周部に押し当てられたとき、各支持孔の内周部と各袋体の外表面との接触面積を増やしたり、各支持孔の内周部と各袋体の外表面とを接触しやすくしたりすことができ、より強固に各袋体を固定することができる。
【0020】
本発明に係る剛性可変変形体および剛性可変機構は、2つ以上から成り、細長く、長さ方向に非伸縮性または難伸縮性の素材から成り、それぞれ前記変形体本体の側面に沿って、前記変形体本体の後端部から先端部を通って、前記変形体本体の反対側の後端部まで伸びるよう設けられた長尺袋状体を有し、各袋体は、それぞれ各長尺袋状体の前記変形体本体の片側の後端部から先端部までの部分から成っていてもよい。この場合、各袋体の内部から流体を排出した状態で変形体本体を曲げたとき、変形体本体の曲がりの外側に位置する各長尺袋状体の一方の袋体が、変形体本体の長さ方向に沿った長さが長くなるよう移動するのに伴い、変形体本体の曲がりの内側に位置する各長尺袋状体の他方の袋体を、変形体本体の長さ方向に沿った長さが短くなるよう移動させることができ、スムーズに変形させることができる。
【0021】
また、長尺袋状体を有する場合、変形体本体の長さ方向に対して垂直な軸を中心として回転可能に、各長尺袋状体に対応して変形体本体の先端部に複数設けられローラを有し、各長尺袋状体は、その長さ方向に移動可能に、対応するローラに巻き掛けられていてもよい。このとき、変形体本体を曲げたときに、各長尺袋状体をよりスムーズに移動させることができる。
【0022】
本発明に係る剛性可変変形体および剛性可変機構で、前記変形体本体は、長さ方向に対して垂直方向に捻れるよう構成されており、前記支持手段は、各袋体の内部から前記流体を排出した状態で前記変形体本体を捻ったとき、各袋体が前記変形体本体の側面の形状に沿うよう、各袋体をその長さ方向に沿って移動可能に支持するよう構成されていてもよい。この場合、変形体本体を曲げた状態だけでなく、捻った状態でも剛性を高めて固定することができる。
【0023】
本発明に係る剛性可変変形体および剛性可変機構で、前記変形体本体は、変形に対して元の形状に戻す力が働く弾性を有していることが好ましい。この場合、変形体本体を曲げたり捻ったりして変形させ、各袋体の内部に流体を供給して剛性を高めた状態から、各袋体の内部の流体を排出することにより、変形体本体を元の形状に戻すことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、柔軟な状態のときに任意の方向に曲げることができ、高剛性状態のときの剛性を高めることが可能で、長尺化しても全体を高剛性状態にすることができる剛性可変変形体および剛性可変機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態の剛性可変変形体の斜視図である。
図2】本発明の実施の形態の剛性可変変形体の(a)平面図、(b)右側面図、(c)正面図である。
図3】本発明の実施の形態の剛性可変変形体の(a)図2(a)に示すA-A線断面図、(b)図2(b)に示すB-B線断面図、(c)図2(b)に示すC-C線断面図である。
図4】本発明の実施の形態の剛性可変変形体の、(a)長尺袋状体の内部から流体を排出したとき、(b)長尺袋状体の内部に流体を供給したときの、支持部材での長尺袋状体の状態を示す断面図である。
図5】本発明の実施の形態の剛性可変変形体の、長尺袋状体の内部に流体を供給したときの、図2(a)に示すA-A線断面図である。
図6】本発明の実施の形態の剛性可変変形体の、変形体本体を曲げたときの状態を示す平面図である。
図7】本発明の実施の形態の剛性可変変形体の、変形体本体を捻ったときの状態を示す平面図である。
図8】本発明の実施の形態の剛性可変変形体の第1の変形例の、袋体の内部に流体を供給したときの、(a)縦断面図、(b)支持部材での袋体の状態を示す断面図である。
図9】本発明の実施の形態の剛性可変変形体の第2の変形例の、(a)各長尺袋状体が、変形体本体の外側面に沿って設けられた構成を示す縦断面図、(b)各長尺袋状体が、変形体本体の内側面に沿って設けられた構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図9は、本発明の実施の形態の剛性可変変形体を示している。本発明の実施の形態の剛性可変機構は、本発明の実施の形態の剛性可変変形体により好適に実施可能である。
図1乃至図3に示すように、剛性可変変形体10は、変形体本体11と長尺袋状体12と支持手段13と流体供給排出手段14とを有している。
【0027】
変形体本体11は、細長く、真っ直ぐに伸びたコイルバネから成っている。変形体本体11は、長さ方向に沿って湾曲可能な可撓性を有し、また、長さ方向に対して垂直方向に捻れるよう構成されている。また、変形体本体11は、弾性を有し、湾曲したとき、真っ直ぐに戻す方向に力が働き、捻ったとき、その捻りを戻す方向に力が働くよう構成されている。
【0028】
長尺袋状体12は、2つから成り、細長く、長さ方向に非伸縮性または難伸縮性の素材から成っている。長尺袋状体12は、両端が開口しており、内部に流体などを収納可能になっている。長尺袋状体12は、内部に何も収納していないとき、扁平形状を成している。
【0029】
支持手段13は、変形体本体11の外側面に、変形体本体11の長さ方向に沿って所定の間隔で設けられた複数の支持部材21を有している。各支持部材21は、薄い円環形状を成し、変形体本体11の外径と同じ内径を有している。各支持部材21は、内側に変形体本体11を挿入した状態で、変形体本体11に固定されている。各支持部材21は、周方向に沿って等間隔で、厚みを貫通して設けられた4つの支持孔22を有している。各支持部材21は、4つの支持孔22が、それぞれ他の支持部材21の対応する各支持孔22と共に、変形体本体11の長さ方向に沿って真っ直ぐに並ぶよう設けられている。
【0030】
図4に示すように、各支持孔22は、各支持部材21の周方向に沿って細長い形状を成し、扁平形状の各長尺袋状体12の幅よりやや大きい幅、および、扁平形状の各長尺袋状体12の厚みより大きい高さを有している。また、各支持孔22は、幅方向の両端部で各長尺袋状体12の厚みとほぼ同じ高さを成し、幅方向の中央部で高さが大きい形状を成している。また、各支持孔22は、幅方向の中央部の内周部に、内側に向かって突出するよう対向して設けられた複数対の突起23を有している。図4に示す具体的な一例では、突起23は、3対設けられている。各対の突起23は、先端部の間隔が各長尺袋状体12の厚みよりやや大きくなるよう設けられている。
【0031】
図1乃至図3に示すように、変形体本体11の最も先端側の2つの支持部材21a,21bは、互いに連結されており、先端から2番目の支持部材21aが、変形体本体11の先端位置付近に配置され、最も先端側の支持部材21bが、変形体本体11の先端より突出した位置に配置されている。先端から2番目の支持部材21aは、対向する1対の支持孔22の内側の先端寄りの位置に、その各支持孔22の長さ方向に平行かつ、変形体本体11の長さ方向に対して垂直な軸を中心として回転可能に設けられた1対の第1ローラ24aを有している。また、最も先端側の支持部材21bは、対向する2対の支持孔22のうち、各第1ローラ24aの回転軸に対して垂直方向に伸びる1対の支持孔22の内側の先端寄りの位置に、各第1ローラ24aの回転軸に対して垂直かつ、変形体本体11の長さ方向に対して垂直な軸を中心として回転可能に設けられた1対の第2ローラ24bを有している。
【0032】
各長尺袋状体12は、それぞれ変形体本体11の長さ方向に沿って、各支持部材21に支持されて取り付けられている。一方の長尺袋状体12は、各支持部材21の対向する2対の支持孔22のうちの一方の対の支持孔22に挿入され、他方の長尺袋状体12は、他方の対の支持孔22に挿入されている。一方の長尺袋状体12は、変形体本体11の外側面に沿って、変形体本体11の後端部から、各対の一方の支持孔22に挿入されて先端部まで伸び、各第1ローラ24aに巻き掛けられて、変形体本体11の先端部から、各対の他方の支持孔22に挿入されて、変形体本体11の反対側の後端部まで伸びるよう設けられている。一方の長尺袋状体12は、最も後端側の支持孔22から、先端から2番目の支持部材21aの支持孔22まで挿入され、各支持部材21により支持されている。他方の長尺袋状体12も同様に、変形体本体11の外側面に沿って、変形体本体11の後端部から、各対の一方の支持孔22に挿入されて先端部まで伸び、各第2ローラ24bに巻き掛けられて、変形体本体11の先端部から、各対の他方の支持孔22に挿入されて、変形体本体11の反対側の後端部まで伸びるよう設けられている。他方の長尺袋状体12は、最も後端側の支持孔22から、最も先端側の支持部材21bの支持孔22まで挿入され、各支持部材21により支持されている。各長尺袋状体12は、先端側で、それぞれ各第1ローラ24aおよび各第2ローラ24bに巻き掛けられて、互いに接触しないよう交差して取り付けられている。また、各長尺袋状体12は、各第1ローラ24aおよび各第2ローラ24bの回転により、長さ方向に沿って、一端から他端に向かって、および、他端から一端に向かって移動可能になっている。
【0033】
流体供給排出手段14は、変形体本体11の後端側に配置され、各長尺袋状体12の両端の開口から、各長尺袋状体12の内部に流体を供給可能、かつ、各長尺袋状体12の内部の流体を排出可能に設けられている。具体的な一例では、流体は空気であるが、空気以外の気体や液体であってもよい。
【0034】
これにより、剛性可変変形体10は、図1図2図3および図4(a)に示すように、流体供給排出手段14により各長尺袋状体12の内部から流体を排出した状態と、図4(b)および図5に示すように、流体供給排出手段14により各長尺袋状体12の内部に流体を供給した状態とに変化可能になっている。図1図2図3および図4(a)に示すように、剛性可変変形体10は、各長尺袋状体12の内部から流体を排出した状態のとき、各支持部材21に対して各長尺袋状体12がその長さ方向に沿って移動可能に構成されている。また、剛性可変変形体10は、図4(b)および図5に示すように、各長尺袋状体12の内部に流体を供給したとき、膨らんだ各長尺袋状体12に各支持孔22の各突起23が食い込み、各長尺袋状体12が各支持部材21に固定されるよう構成されている。
【0035】
次に、作用について説明する。
剛性可変変形体10は、変形体本体11の外側面に沿って所定の間隔で設けられた各支持部材21により各長尺袋状体12が支持されており、図6に示すように、各長尺袋状体12の内部から流体を排出した状態で可撓性の変形体本体11を曲げると、変形体本体11の外側面の形状に沿うよう、各支持部材21に対して各長尺袋状体12をその長さ方向に沿って移動させることができる。例えば、変形体本体11の曲がりの外側に位置する各長尺袋状体12の部分が、変形体本体11の長さ方向に沿った長さが長くなるよう移動するのに伴い、変形体本体11の曲がりの内側に位置する各長尺袋状体12の部分を、変形体本体11の長さ方向に沿った長さが短くなるよう移動させることができ、スムーズに変形させることができる。また、図7に示すように、各長尺袋状体12の内部から流体を排出した状態で可撓性の変形体本体11を捻ると、変形体本体11の外側面の形状に沿うよう、各支持部材21に対して各長尺袋状体12をその長さ方向に沿って移動させることができる。これらの状態のとき、流体供給排出手段14で各長尺袋状体12の内部に流体を供給することにより、各長尺袋状体12を膨らませて各支持部材21に固定することができる。また、各長尺袋状体12が膨らんだ状態から、流体供給排出手段14で各長尺袋状体12の内部の流体を排出することにより、各長尺袋状体12を元の状態に戻して各支持部材21に対して移動可能にすることができる。
【0036】
このように、剛性可変変形体10は、各長尺袋状体12の内部から流体を排出した状態のとき、変形体本体11を任意の方向に曲げたり捻ったり真っ直ぐにしたりすることができ、柔軟な状態にすることができる。また、各長尺袋状体12の内部に流体を供給したとき、任意の方向に曲げた状態や捻った状態や真っ直ぐにした状態で固定することができ、高剛性の状態にすることができる。剛性可変変形体10は、変形体本体11を固定可能な圧力以上の圧力の範囲で、各長尺袋状体12に供給する流体の圧力を調節することにより、変形体本体11の剛性を変えることができる。このように、剛性可変変形体10は、各長尺袋状体12を膨張させて剛性を高めるものであり、負圧を利用するものと比べて、高剛性状態のときの剛性をより高めることができる。また、各長尺袋状体12の内部の圧力は一定であるため、変形体本体11や各長尺袋状体12の長さを長くして長尺化しても、全体を高剛性状態にすることができる。
【0037】
剛性可変変形体10は、変形体本体11が弾性を有しているため、変形体本体11を曲げたり捻ったりして変形させ、各長尺袋状体12の内部に流体を供給して剛性を高めた状態から、各長尺袋状体12の内部の流体を排出することにより、変形体本体11を元の形状に戻すことができる。また、各長尺袋状体12がそれぞれ各第1ローラ24aおよび各第2ローラ24bに巻き掛けられているため、変形体本体11を曲げるときや真っ直ぐに戻すときに、各長尺袋状体12をスムーズに移動させることができ、変形動作をスムーズに行うことができる。また、剛性可変変形体10は、各長尺袋状体12の内部に流体を供給した状態のとき、各長尺袋状体12が各支持孔22の各突起23に押し付けられて、各突起23が各長尺袋状体12に食い込むため、各長尺袋状体12を強固に固定することができる。
【0038】
また、従来のジャミング転移現象やワイヤを利用した剛性可変機構では、高剛性の状態のとき、その保持力を超える外力が加わると変形し、元の形状には戻れないため、意図しない外力がかかる用途には適さなかった。これに対し、剛性可変変形体10は、剛性を高めて固定した状態で、変形体本体11を曲げたり捻ったりしたとき、各長尺袋状体12に供給した流体の圧力により、変形体本体11が固定時の状態に戻る弾性を示すようにすることができる。このため、剛性可変変形体10は、高剛性状態のときに意図しない外力がかかる用途であっても、好適に使用することができる。
【0039】
なお、剛性可変変形体10は、各支持孔22が突起23を有するものではなく、各支持孔22の内周部に、摩擦抵抗を大きくするための凹凸を有していてもよい。この場合、各長尺袋状体12の内部に流体を供給した状態のとき、各支持孔22の内周部と各長尺袋状体12の外表面との接触面積を増やすことができ、各支持孔22の内周部と各長尺袋状体12との間の摩擦抵抗により、各長尺袋状体12を強固に固定することができる。また、各長尺袋状体12の外表面に摩擦抵抗を大きくするための凹凸を有していてもよい。この場合にも、各長尺袋状体12の内部に流体を供給した状態のとき、各支持孔22の内周部と各長尺袋状体12との間の摩擦抵抗により、各長尺袋状体12を強固に固定することができる。また、各支持孔22の内周部に粘着部を有していてもよい。この場合、各長尺袋状体12の内部に流体を供給した状態のとき、各長尺袋状体12が粘着部に接触するため、各長尺袋状体12を固定することができる。
【0040】
また、剛性可変変形体10は、各長尺袋状体12が2つの場合に限らず、3つ以上であってもよい。この場合、長尺袋状体12の数に合わせて、各支持部材21の支持孔22の数や、先端側のローラの数を増やせばよい。
【0041】
また、図8に示すように、剛性可変変形体10は、長尺袋状体12ではなく、変形体本体11の外側面に沿って変形体本体11の先端部から後端部まで伸びるよう設けられた3つ以上の袋体31を有していてもよい。このとき、各袋体31は、細長く、非伸縮性または難伸縮性の素材から成り、変形体本体11の外周に沿って互いに間隔をあけて配置されている。また、各袋体31は、先端側の開口が塞がれており、先端部31aが、最も先端側の支持部材21の各支持孔22より先端側に配置されて、その各支持孔22を通過できないよう形成されている。なお、第1ローラ24aや第2ローラ24bは不要である。また、図1に示す剛性可変変形体10では、各長尺袋状体12の変形体本体11の片側の後端部から先端部までの部分が、それぞれ袋体31に対応している。
【0042】
この袋体31を有する場合、各袋体31の内部から流体を排出した状態で可撓性の変形体本体11を曲げると、変形体本体11の外側面の形状に沿うよう、各支持部材21に対して各袋体31をその長さ方向に沿って移動させることができる。例えば、変形体本体11の曲がりの内側の袋体31を、変形体本体11の長さ方向に沿った長さが短くなるよう移動させ、変形体本体11の曲がりの外側の袋体31を、変形体本体11の長さ方向に沿った長さが長くなるよう移動させることができる。また、各袋体31の内部から流体を排出した状態で可撓性の変形体本体11を捻っても、変形体本体11の外側面の形状に沿うよう、各支持部材21に対して各袋体31をその長さ方向に沿って移動させることができる。これらの状態のとき、流体供給排出手段14で各袋体31の内部に流体を供給することにより、各袋体31を膨らませて各支持部材21に固定することができる。また、各袋体31が膨らんだ状態から、流体供給排出手段14で各袋体31の内部の流体を排出することにより、各袋体31を元の状態に戻して各支持部材21に対して移動可能にすることができ、変形体本体11を元の形状に戻すことができる。
【0043】
また、この袋体31を有する場合、図8に示すように、各袋体31は、後端部に、後端側に付勢するよう設けられたバネ32を有していてもよい。この場合、変形体本体11を曲げたとき、その曲がりの内側の袋体31を、変形体本体11の長さ方向に沿った長さが短くなるよう、容易に移動させることができる。また、バネ32による付勢力を、変形体本体11の弾性による復元力よりも小さくしておくことにより、各袋体31の内部の流体を排出したとき、変形した変形体本体11を、バネ32の付勢力に抗して元の形状に戻すことができる。なお、この場合、各袋体31の先端部31aが、最も先端側の支持部材21に押し付けられて固定された状態になっている。
【0044】
また、この袋体31を有する場合、図8に示すように、剛性可変変形体10は、変形体本体11の長さ方向に沿って、後端から先端まで伸びる貫通孔33を有していてもよい。この場合、図1に示す剛性可変変形体10のように、変形体本体11の先端側で長尺袋状体12が交差していないため、変形体本体11の先端側に向かって、貫通孔33を開放することができる。図8に示す一例では、変形体本体11がコイルバネ32から成っているため、その内側が貫通孔33を成している。また、図8に示す一例では、その貫通孔33に可撓性のパイプ34が挿入されている。これらの場合、例えば、貫通孔33やパイプ34にカメラや鉗子などを挿入可能に構成することにより、内視鏡として利用することができる。また、貫通孔33やパイプ34に腕や足を挿入可能に構成することにより、アシストスーツとして利用することができる。また、細長く、所定の形状に変形可能な形状変化体を貫通孔33やパイプ34に入れ、各袋体31の内部から流体を排出した状態で形状変化体を変形させることにより、変形体本体11を所定の形状にすることができる。
【0045】
また、図8に示すように、剛性可変変形体10は、各袋体31の外側に、各袋体31や変形体本体11等を覆う保護カバー35を有していてもよい。同様に、図1に示す剛性可変変形体10でも、各長尺袋状体12の外側に、各長尺袋状体12や変形体本体11等を覆う保護カバー35を有していてもよい。保護カバー35は、曲げや捻れの変形に追従可能に、柔軟な素材から成ることが好ましい。
【0046】
また、剛性可変変形体10で、変形体本体11は、コイルバネに限らず、図9に示すような蛇腹を有する筒体や、柔軟素材から成る筒体、編み組チューブなどから成っていてもよい。また、剛性可変変形体10は、図9(a)に示すような、各長尺袋状体12が、それぞれ変形体本体11の外側面に沿って設けられた構成に限らず、図9(b)に示すように、支持部材21が、変形体本体11の内側面に設けられ、各長尺袋状体12が、各支持部材21に支持されて、それぞれ変形体本体11の内側面に沿って、変形体本体11の先端部から後端部まで伸びるよう設けられていてもよい。この場合、各長尺袋状体12を変形体本体11で覆って保護することができる。
【0047】
剛性可変変形体10は、長尺で、曲げや捻りなどの変形を伴い、柔軟な状態と高剛性状態とを切り替える必要がある用途であれば、いかなるものにでも利用することができる。例えば、所定の形状で固定する機能を利用して、ロボットアームや索状体やホースなどの位置決め装置として利用することができる。また、剛性可変機能を利用し、四肢や胴体に取り付けて、トレーニング機器やリハビリ機器、VR機器として利用することもできる。また、人工筋肉やアシストスーツ、内視鏡などに利用することもできる。
【符号の説明】
【0048】
10 剛性可変変形体
11 変形体本体
12 長尺袋状体
13 支持手段
21 支持部材
22 支持孔
23 突起
24a 第1ローラ
24b 第2ローラ
14 流体供給排出手段

31 袋体
32 バネ
33 貫通孔
34 パイプ
35 保護カバー


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9