(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】トルク測定装置を含む可変コンプライアンス金属ホイール
(51)【国際特許分類】
B60B 9/04 20060101AFI20240902BHJP
G01L 3/14 20060101ALI20240902BHJP
B60C 7/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B60B9/04
G01L3/14 G
B60C7/00 H
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021020916
(22)【出願日】2021-02-12
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】521065908
【氏名又は名称】エイチティーアール エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】パパントニウ ヴァシリオス
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-083244(JP,A)
【文献】特開2017-190129(JP,A)
【文献】特開2016-107751(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0110024(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0263251(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 9/04
G01L 3/14
B60C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変コンプライアンス非空
気圧ホイール
(以下、単に「ホイール」ともいう。)であって、
車両のシャーシに取り付けられ、
前記ホイールの回転軸となる
固定の管状ボディ(32)と、
前記管状ボディに取り付けられ、前記
管状ボディに対して相対的に自由に回転でき、ハブを形成する管状部材であって、前記ホイールの幅方向
における異なる2つの側面に面する
、前記ハブの両側
面の周縁
部に一連の取り付けロッド(12,13)を備える管状部材と、
前記ホイールの外周縁部を形成し、相互接続され、互いに自由に回転でき、前記ホイールの動作中に地面と接触するキャタピラ状の多数のタイル(5)と、
前記ハブの特定の側面の特定の取り付けロッド(12,13)と
ホイール幅方向において同じ側のタイル
(5)の端縁とを接続する、複数の接続スプリング部材(3,4,6,7,8,9,10,11)であって、前記管状
のハブと前記タイル
(5)の間に周方向に取り付けられ、前記ハブ(1,2)とタイル(5)を互いに接続するように構成された、複数の接続スプリング部材とを備え、
前記ハブを形成する前記管状部材が、2つの部分に分割されており、それぞれの部分がもう一方に対して相対的に自由に回転でき、
前記各部分には前記ハブが分割された分割ハブ(1,2)がそれぞれ形成されており、それぞれの部分が半数の
前記取り付けロッド(12、13)及び
前記接続スプリング
部材(3、4、6、7、8、9、10、11)を前記ホイールの幅方向
側面上に
おいてそれぞれ支持していることを特徴とする、可変コンプライアンス非空気圧ホイール。
【請求項2】
前記ホイールに半径方向に沿った荷重がかかった場合に、前記
接続スプリング部材(3,4,6,7,8,9,10,11)が、前記ホイールの半径方向に沿った
当該接続スプリング部材の曲げを促進する湾曲状に形成されていることを特徴とし、
同時に、前記
接続スプリング部材が、前記ホイールの軸方向に沿った前記ホイールの剛性の増加に寄与するために、前記ホイールの幅方向に実質的な幅を有し、その結果、前記ホイールの軸方向に沿った変形を回避することを特徴とする、請求項1に記載の可変コンプライアンス非空気圧ホイール。
【請求項3】
湾曲した前記
接続スプリング部材(3,4,6,7,8,9,10,11)が、湾曲形状の凹部側が常に同一の周方向を向いており、2つの前記分割ハブのうち、第1の分割ハブに取り付けられていることを特徴とし、また、前記ホイールを側面から見た場合に、2つの前記
分割ハブのそれぞれの
接続スプリング
部材の凹部側が互いに対向するように、2つの前記分割ハブのうち、第2の分割ハブの湾曲形状スプリングの凹部側の面が、前記第1
の分割ハブのスプリングの凹部側の面と対向していることを特徴とする、請求項2に記載の可変コンプライアンス非空気圧ホイール。
【請求項4】
2つの前記分割ハブ(1,2)が、互いに数度の相対的な逆回転が可能であり、該逆回転は、
前記ホイール
各側面それぞれの分割ハブに取り付けられた前記
接続スプリング
部材の凹部を、周方向に沿って接近させる方向であるとともに、同一タイルに取り付けられた前記
接続スプリング部材各対の
分割ハブ上における取り付け位置を、周方向に沿って接近させる方向であることを特徴とする、請求項3に記載の可変コンプライアンス非空気圧ホイール。
【請求項5】
前記各
接続スプリング部材(3,6,7,8,9,10,11)が、2つの取り付け点の間
にある湾曲形状ボディならびに、前記
接続スプリング部材の一部であるが、前記
分割ハブへの取り付け点の後ろに形成された、湾曲テールによって形成されていることを特徴とし、
前記
接続スプリング部材の主
体である湾曲
形状ボディに発生した力が、前記各
分割ハブ(1,2)に設けられた取り付けロッド(12,13)及び各タイルに設けられたピンからなる、各
接続スプリング部材の2つの前記取り付け点の相対変位によって生じる一方、前記
接続スプリング部材の湾曲テールに発生した力が、各
接続スプリング部材の前記
湾曲テールと、それに隣
に配置された前記
接続スプリング部材の隣接する
湾曲形状ボディとの接触によって生じるように構成されており、また、前記
湾曲テールは、前記ホイールの
分割ハブが逆回転した場合に、隣接する前記
接続スプリング部材の湾曲形状ボディと接触することで、実質的に前記ハブの取り付けロッド上での前記
接続スプリング部材の自由な回転を制限し、特定のタイルの反対側に取り付けられた前記
接続スプリング部材の各対に伝導する力を発生させ、前記タイルを半径方向外側に押す半径方向の合力を生み出し、前記ホイールの剛性を増加させることを特徴とする請求項4に記載の可変コンプライアンス
非空気圧ホイール。
【請求項6】
前記2つ
の分割ハブ(1,2)を形成する
2つの管状部材
は、剛体レバー(17)を介して接続されており、この剛体レバー(17)は、一方の前記分割ハブ(2)に端を固定され、
他方の前記分割ハブ(1)に到達する
ものであり、
前記
他方の分割ハブが、前記剛体レバーに対して数度の相対的な回転が可能であり、
前記剛体レバー(17)が、該
剛体レバーを数度動かすことができるように前記
他方の分割ハブ(1)に組み込まれた電動部材を有することを特徴とし、
前記電動部材が、前記2つの
分割ハブ間の相対角度を変更し、前記各
接続スプリング部材の湾曲テールと、前記分割ハブの同じ側に取り付けられた隣の前記
接続スプリング部材の隣接する
湾曲形状ボディとの間の接触力を増加させることで、特定のタイルの反対側に取り付けられ、同一の前記タイルに接続された前記
接続スプリング部材の各対がそれらの間で力を発生させ、前記タイルを半径方向外側に押す半径方向の合力を生み出し、その結果、前記ホイールの剛性を増加させることを特徴とする、請求項5に記載の可変コンプライアンス
非空気圧ホイール。
【請求項7】
前記電動部材が電気的であり、前記ホイールの固定
された回転軸から前記ホイールの回転
する前記分割ハブに向けての電力及び信号を伝達する、連続回転電気接続部(スリップリング)(20)によって電力供給されることを特徴とし、
前記電動部材が、電気モータ(21)と、前記ホイールの剛性変動に必要な非常に重要な力を発生させるために高負荷ボールねじアセンブリの回転を操作する、高減速ギアボックス(22)とを備えることを特徴とし、
前記
高負荷ボールねじアセンブリが、最終的に、自転車型チェーン(24)を介して前記分割ハブを接続する前記剛体レバーに係合し、その結果、2つの前記分割ハブ間に非常に大きな力を発生させることを可能にすることを特徴とする、請求項6に記載の可変コンプラインス
非空気圧ホイール。
【請求項8】
前記車両のシャーシに取り付けられ、前記ホイールの回転軸となる前記固定
の管状ボディ(32)が中空であり、2つの前記回転する分割ハブのうちの1つに固定された、平歯車を介して内歯駆動歯車に係合するホイール駆動電気モータ(27)を備えている一方で、前記ホイール駆動電気モータが、車軸を形成する前記固定
の管状ボディの内部の回転自在なジョイント(43)に取り付けられており、該ジョイントにおける数度の自由な回転が可能であることを特徴とし、
前記
ホイール駆動電気モータの数度の自由回転が、必ずしも前記平歯車から前記内歯
駆動歯車への伝達を介して前記分割ハブを動かすことなく、前記
ホイール駆動電気モータ
のアセンブリ全体の数度の回転ならびに一対の
ばね(36,37)の変形を生み出すように、前記
ホイール駆動電気モータ(27)によって発生したトルクに比例して変形する
前記一対の
ばね(36,37)によって拘束されることを特徴とし、
前記
ホイール駆動電気モータ(27)の数度の回転及び前記一対のばねの変形が、前記
ホイール駆動電気モータ(27)のボディの軸方向に取り付けられた、古典的なポテンショメータ(41)又はロータリエンコーダ装置によって測定されること、又は一対の結合機構(40)を介した前記
ホイール駆動電気モータのボディから、発生したトルクを電気信号へ変換する前記ポテンショメータ(41)又はロータリエンコーダに向けて伝達されることを特徴とする、請求項1に記載の可変コンプライアンス
非空気圧ホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の属する技術分野
本発明は、加圧された空気を充填せずに使用することができ、動作中にその可撓性を変動させる能力ならびに動作中に車軸によって発生した又は車軸に付与されるトルクを測定する能力を有する非空気圧タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連する技術の説明
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】US 6170544 B1 Hottebart Jan.9、2001は、変形可能な非空気圧ホイールに関係する
【文献】US 2017/0120671 A1 Miles et al. May 4、2017は、部分的に適合するハブを備えた非空気圧タイヤに関係する
【文献】US 2018/0072095 A1 Anderfaas et al. Mar.15、2018は、可変コンプライアンスホイールに関係する
【文献】US 8950451 B2 Akihiko Abe Feb.10、2015は、非空気圧ホイールに関係する
【文献】US 20020096237 A1 Buhroe et al. Jul. 25、2002は、コンプライアントリムホイール及びアセンブリに関係する
【文献】US 2009/0211675 A1 Louden B. Aug. 27、2009は、非空気圧タイヤアセンブリに関係する
【文献】US 2014/0110024 A1 Anderfaas et al. Apr. 24、2014は、可変コンプライアンスホイールに関係する
【文献】US 2016/0193876 A1 Kyo et al. Jul. 7、2016は、非空気圧タイヤに関係する
【文献】US 2011/0240193 A1 Matsuda et al. Oct. 6、2011は、非空気圧タイヤ及びその製造方法に関係する
【文献】US 2009/0033051 A1 Ahnert S. Feb. 5、2009は、モジュラーサスペンションを備えたベビーカーのホイールに関係する
【文献】US 2009/0294000 A1 Cron S.M. Dec. 3は、2009、非空気圧アセンブリのための可変剛性スポークに関係する
【文献】US 2016/0016426 A1 Endicott J.M. Jan. 21、2016は、取り外し可能なハブを備えた非空気圧ホイールアセンブリに関係する
【文献】US 2004/0069385 A1 Timoney et al. Apr. 15、2004は、ホイールに関係する
【文献】US 2016/0214435 A1 Schaedler et al. Jul. 8、2016は、非空気圧タイヤを備えたホイールアセンブリに関係する
【0004】
非空気圧ホイールの分野では、多くの重要な特許が出願されている。非空気圧ホイールは、パンクによるホイール故障などの短所を回避しながら、道路の凹凸からの衝撃吸収に関し空気圧タイヤの長所を有する。近年の特許出願には、上記一覧表に示すように、車軸に取り付けられるアタッチメントボディと、アタッチメントボディを外側からタイヤ径方向に囲むように構成されたリング状ボディと、アタッチメントボディとリング状ボディとの間にタイヤ周方向に配置された複数の接続部材とを含む非空気圧タイヤが提案されている。さらに、近年、惑星探査に金属ホイールを使用する研究が行われている。なぜなら、大気のない又は大気が非常に薄い惑星では、ゴムを迅速に劣化させ、空気で膨らませたタイヤを役に立たない状態にし得る放射線が存在するため、空気圧タイヤの使用は不可能だからである。
【0005】
さらに、ホイール駆動用の電動モータによって車軸に発生するトルクを測定する場合、高減速比ギアボックスを使用すると、発生するトルクを測定するために、連続回転電気接続部(スリップリング)と組み合わせたトルクセンサの使用を必要とするという技術課題がある。このアセンブリは、規模がかなり大きく、価格及び質量が増加する。他方、遠隔地又は他の惑星で動作する無人ローバーにホイールが取り付けられている場合、トルクの測定は、車両の安全にとって特に重要である。
【発明の概要】
【0006】
3.発明の簡単な説明
本発明は、空気圧タイヤのように振る舞うことができるだけでなく、ホイールが動いているときでも動作することができる、ホイールの内側に支持された機構によってその半径方向の剛性を変更することができる非空気圧ホイールの設計、ならびにホイールの駆動系に組み込むことができ、その動作中にホイールによって発生するか、又は、ホイールに及ぼされるトルクを監視することができる、単純なトルクセンサの解決策から構成されている。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
4.最新技術に対する進歩
本発明は、非空気圧ホイールの剛性調節に対する解決策ならびに非空気圧ホイールの変形可能スポークとして使用される弾性材料(金属、樹脂など)に関連する耐久性の問題に対する解決策を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、剛性調節の特定の機能に合わせて調整される、特別に設計されたリーフスプリング部材を提案し、これらのスプリングを支持するハブディスクの逆回転によるホイールの半径方向の可撓性の変更を可能にする、特別に設計された形状と組み合わさり、動作中の所望の耐久性要求を提示する。
【発明の効果】
【0009】
そのようにして、提案された発明は、路面状態及び車軸荷重に応じて、非空気圧ホイールに関連する耐久性の問題ならびにホイール剛性調節の問題の両方を解決する。本発明は、ホイールが動作中であっても、ハブディスクの電動による逆回転を通して、ホイールの半径方向剛性を調節するための、技術的に実行可能で単純な解決策を提供する。最後に、本発明は、動作中に車軸に発生する、又は及ぼされるトルクを測定するための単純かつロバストな解決策を提案する。このトルクは、荒れた地形、特に遠隔環境又は他の惑星を移動する無人電動車両の動作の安全性に必要とされる特徴である。このような場合、例えば、ホイールがブロックされた場合、トルクセンサは、車両の制御装置に通知し、ホイールのモータへの損傷を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
5.図面の簡単な説明
他の目的、特徴、及び利点は、本発明の精神から逸脱することなく、好ましい実施形態の以下の説明及び添付の図面から当業者に想起されるだろう。
【
図1】
図1は、1つのタイルに接続された2つのスプリング部材が取り付けられている、2つに分割されたホイールのハブを提示する。
【
図2】
図2は、3対のスプリングが取り付けられた、2つに分割されたハブアセンブリの側面図を提示し、2つのスプリング間の相対角度は弛緩位置にある。
【
図3】
図3は、3対のスプリングが取り付けられた、2つに分割されたハブアセンブリの側面図を提示し、2つのスプリング間の相対角度は予荷重位置にある。
【
図5】
図5は、第1ハブを繋ぎ、第2ハブに力を伝達する剛体レバーを備えた、2つに分割されたホイールのハブの分解図を提示する。
【
図5.1】
図5.1は、スプリングを備えた組み立て済みのハブならびにハブを繋げる剛体レバーを提示する。
【
図5.2】
図5.2は、スプリングとタイルを備えた組み立て済みのハブならびに2つのハブを繋ぐ剛体レバーを提示する。
【
図6】
図6は、スプリングの予荷重機構に電力を供給するために使用されるスリップリング及び組み立て前の(prior to assembly)予荷重機構の詳細を提示する。
【
図7】
図7は、ハブを繋ぐ剛体レバーに接続された、完全に組み立てられた予荷重機構を提示する。
【
図8】
図8は、駆動モータと内部の歯車を備えたホイールの固定中空軸を提示する。
【
図9】
図9は、絶縁された駆動モータ及びギアボックスアセンブリならびにトルク測定システムを提示する。
【
図10】
図10は、モータ機構及びトルク測定システムの背面図を提示する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
6.好ましい実施形態の開示
以下、
図1~
図11を参照して、本発明に係る非空気圧タイヤの一実施形態について説明する。
【0012】
図1は、分割ハブ1及び分割ハブ2からなる、2つに分割されたホイールのハブを提示し、その各々の上に、リーフスプリング3及び4が、それぞれ、取り付けロッドによって、それらの周縁における複数の穴のうちの1つに取り付けられる。スプリングは、取り付けロッドの周りを自由に回転することができる。スプリングは共に単一のタイル5に接続されて示されており、タイルと隣接するタイルとを接続する自由回転ジョイントとして機能する自由回転ジョイントも介して接続されているため、ホイールの地面と接触する部分となる円形の多重タイルキャタピラチェーンを形成する。2つに分割されたハブの間の相対角度は、それぞれのハブの各スプリングの取り付け点をより近づけ、また、2つのスプリング3及び4のそれぞれの凹部の距離を減少させるように変更することができる。このような角度変更の効果をより良く理解するために、
図2及び
図3を提示する必要がある。
【0013】
図2は、2つに分割されたハブの同じ要素の側面図を提示し、今回のみ3つのスプリング6、7及び8がハブ2の3つの隣接する取り付けロッドに取り付けられ、別の3つのスプリング9、10、11がハブ1の3つの隣接する取り付けロッドに取り付けられており、スプリングの各対がホイール周縁の3つの隣接するタイルに接続される(ハブ1、2は側面から見られる)。この図において、ハブ1とハブ2の間の相対角度は完全な弛緩位置にあり、各ハブ上のスプリング8、9の取り付け点12、13は、最大距離にある。また、各スプリングの湾曲したテール(例えば、スプリング7のテール14)は、それぞれが隣接するスプリングの本体と接触していないことが分かる(テール14がスプリング6の本体と接触していない、など)。この場合、全てのスプリングにゼロの予荷重状態が存在する。タイル、例えば、スプリング8、9によって支持されたタイルに及ぼされる半径方向の力は、スプリングの変形を容易に生じさせる。スプリングは、それぞれのジョイントの周りを自由に回転し、その場合トルクが伝達されないので、この場合のホイールアセンブリは、ホイールの周縁にトルクを伝達できないことに注意しなくてはならない。したがって、ここでは、このケースがスプリングの状態の例として示されている。この状態は、ホイールの製造中に目にすることができるが、動作中にホイールを使用する間は回避される。動作中、トルクをホイールの周縁に伝達できるようにするために、スプリングは少なくとも最小値で予荷重されなければならない。
【0014】
この状況は
図3に誇張して描かれている。
図3では、2つのハブの相対角度が数度変更されている。この回転により、スプリング8、9の取り付け点12、13はそれぞれ大きく接近している。これらの新しい位置は、各スプリングのテールを、隣接するスプリングのそれぞれの本体に接触させ、したがって、各スプリング部材を、同じタイルに接続された、反対側のハブの対応するスプリング(例えば、スプリング8と9)に対して予荷重をかけさせる。スプリングの各対から生じる合力は、ホイールの周縁を増加させるように、各タイルを半径方向に沿って押す。タイルは全て相互接続されているので、ホイールの周縁は変化しないが、全てのスプリングによって生じる合力は、ホイールの見かけの半径方向剛性を増加させる。なぜなら、与えられた半径方向荷重に対して、予荷重をかけられたスプリングの変形には、今やはるかに大きな力を必要とするからである。しかしながら、取り付けロッド12及び13が互いに非常に接近した、この誇張された状態では、ホイールハブはホイール周縁に重要なトルクを再び伝達することができない。非常に重要なトルクは、ホイールを回転させる代わりに、再びスプリング対を回転させることになるだろう。したがって、各ホイールアセンブリの理想的な予荷重範囲条件は、
図2に示す位置と
図3に示す位置との間の中間位置にあり、個々のスプリング剛性及びホイールに伝達したいトルクに依存する。本発明において開示された原理に従って構築された直径0.34mのホイールに対して実施される試験に基づき、250Nオーダーの軸荷重に対して、そのようなホイールにおける見かけの剛性の4倍の増加を達成することができる。これは、「完全に予荷重された」スプリング状態と「最小限に予荷重された」スプリング状態との間の、車軸にかかる所定の荷重に対するハブの垂直変位(弾性ホイールの全変形量の差異(250Nのオーダー)が400%であることを意味する。言い換えれば、本発明において開示された原理に基づいて達成された可撓性の変動は、400%のオーダーとすることができる(最小限に予圧されたホイールの撓みが、完全に予圧されたホイールの撓みより4倍大きいことを提示する)。地面と接触するホイール周縁部に影響を及ぼし、したがって、ホイールの接地圧に影響を及ぼし、ゆるい土壌などに対するホイールの牽引能力(traction capacity)を増加させるため、ホイールの撓みの度合いは一般に重要である。
【0015】
図4には、スプリング要素の好ましい実施形態が提示されている。スプリングは、適切な形状の湾曲部12からホイールの各ハブのロッドに取り付けられ、この湾曲部は取り付けロッドの周りでスプリングの自由な回転を可能にするのに十分な大きさであるが、スプリングはロッドから外れることはない。同様にして、スプリング15の他端は、タイルのジョイント上に取り付けられ、固定ロッドの周りのスプリングの自由な回転を可能にするが、ロッドから外れることはない。またスプリングは、凹部及び凸部を提示する湾曲部16を備える。スプリングは、取り付け部12に近接し、スプリングの凹部の反対方向に配置された、自由に湾曲したテール14をさらに備える。テールの役割は、上の
図3に描写されており、2つに分割されたハブが逆回転する場合、テールが隣接するスプリング本体上に押しつけられ、スプリングの回転を阻止するとともにスプリングの予荷重に寄与し、ホイールの剛性の増加を生じさせていることを示している。
【0016】
ハブのこの逆回転によって発生する力は、使用されるスプリングの剛性に依存する。提示された実施形態について、全体のホイールの剛性は、2.5kN/mから10kN/mまで変化する値を有し、具体的な実施形態については、300Nmのオーダーで、ハブの逆回転のための重要なトルクの発生を必要とする。このトルクは2つのハブの間における残差制約(residual constraint)であり、保存されなければならない。そうでなければ、ホイールは予め設定された剛性を失い、より柔軟になる。
【0017】
2つのハブの間でこの重要なトルクを伝達するために、強力な剛体レバーが使用され、
図5に示されている。この図では、様々な部品をよりよく理解することができるように、2つのハブが分解して示されている。ハブを繋げる剛体レバーは17であり、固定パッド18を介してハブ2上に取り外せないように固定され、かつ可撓性変動機構に係合する開口部19を横切り、ハブ1に向かって延びている。
図5.1は、タイルのない組み立て済みの全てのスプリングを備えた組み立て済みのハブ及びハブ1から延びる連結レバー17を提示する。
図5.2は、スプリング及びタイルを備えた組み立て済みのハブを提示する。
【0018】
図6は、可撓性変動機構を提示する。この機構がハブ1上に固定され、ホイールの回転と共に回転するプレート28に取り付けられている。プレートは、モータ21を備え、モータ21は、ホイール32の中心の軸に固定された、連続的に回転する電気接続部(スリップリング)20によって供給される電力を使用する。モータ21は、平歯車を介して補助減速歯車列(supplementary reduction gear-train)22に係合し、補助減速歯車列22は、最終的に、レバー17が取り付けられた二重自転車型チェーン(double bicycle-type chain)24を引っ張る重負荷用ボールねじ(heavy duty ball-screw)駆動部23に係合する。スリップリング20を介して電力供給されるモータの回転によって、レバー17に非常に重要な力を発生させることが可能であり、2つのハブの逆回転を生じさせ、その結果、ホイールの剛性を増加させる。
【0019】
図7は、組み立て済みでハブ1の側面に固定された可撓性変動機構を提示しており、二重チェーン24が剛体連結レバー17に取り付けられ、ハブ1に対する相対運動を引き起こしている。また
図7は、剛性変動動作中のホイールの所望の剛性を正確に調節することを可能にするために、ねじ上のボールねじ駆動部のテンショニングチャリオット(tensioning chariot)の位置を追跡するために使用される、リニアポテンショメータ25を提示する。また、ポテンショメータ信号は、スリップリング20を介して、ホイールを動作させるために使用することができるマイクロプロセッサベースの制御装置に向けて伝達される。
【0020】
図8は、ホイールアセンブリの幅方向に沿った切断図を提示しており、ここで、分割ハブ1及び2を視認でき、可撓性変動モータ21は、図の後ろ側に示されているが、スリップリング20もまた、可撓性変動モータに電力を供給するように示されている。ホイール32の固定中空軸も示され、ホイールの駆動モータ27を備えており、この駆動モータは、平歯車31、30及び29を介して、ハブ2の内側に固定された内歯歯車26に係合し、ホイールが回転するための駆動力を伝達する。中空の円形部33は、中空軸32の内側に固定され、駆動モータを支持すると同時に、モータがその内部で自由に回転することを可能にする。
【0021】
図9は、駆動系のアセンブリをより詳細に提示し、モータ27は、長手方向に支持されているが、中空部33の内側で自由に回転することができ、半円形の部分39及び34は、歯車を支持し、中空軸32の内側で固定され、十字形レバー35は、モータ27の前側に固定され、モータと一緒に回転することもできる。
【0022】
図10は、他方向からの組み立て図を提示しており、2つの滑り軸受43は、部品33(
図10には不図示)内側でのモータの自由回転を支持し、十字形部品35は、2つの螺旋状スプリング36及び37の助けを借りて位置に保持されている。螺旋状スプリングの他端は、歯車列を支持し、中空軸32の内側に固定された部品38及び39上に固定されている。モータがホイールを運動状態となるようにトルクを発生させる場合、平歯車31は歯車列上で係合し、このトルクを伝達する際に役立つ。反動により、この同じトルクはモータ27の本体に伝達され、次いで、モータが逆方向に回転し、スプリング36及び37の内部で発生した力がモータの本体の回転を停止するまで伝達される。モータの運動は、十字形レバー部35及び結合機構40を介してレバー41に向けて伝達され、レバーは、回転ポテンショメータ42の回転軸上に固定される。このレバーは、部品34上にも固定され、中空軸32の内側に接続されている。このようにして、モータ27によって生じたトルク、又はホイール上で外部的に生じ、最終的にモータに伝達されるトルク(モータが電力を受けていない場合であっても)は、ポテンショメータによって測定される。したがって、歯車列31、30及び29の内部で発生し、最終的に内歯歯車26に伝達され、ホイールを回転動作させる力(effort)は、ポテンショメータ42で監視することができる。トルク測定の精度は、歯車列29、 30、 31及び26に存在する非線形クーロン摩擦に依存することに注意しなくてはならない。この歯車列に大きな摩擦が存在すると、トルクの測定精度が変わることがある。最良の結果を得るために、歯車列に使用される伝達比は、歯車の品質、使用される潤滑剤の種類、環境条件、汚染などに応じて、30:1を超えてはならない。本実施形態は、20:1のギア比を有し、30Nmのオーダーでホイール周縁にトルクを発生させ測定する能力を有する。
【0023】
図11は、スプリング、タイル及びテンション機構を備えた組み立て済みホイールを提示する。