(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】電動弁制御装置および電動弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20240902BHJP
F16K 37/00 20060101ALI20240902BHJP
H02P 8/24 20060101ALI20240902BHJP
H02K 37/14 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
F16K31/04 A
F16K37/00 D
H02P8/24
H02K37/14 535Y
(21)【出願番号】P 2022093270
(22)【出願日】2022-06-08
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻原 開
(72)【発明者】
【氏名】成川 文太
(72)【発明者】
【氏名】萩元 大志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 竜也
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-110409(JP,A)
【文献】特開2021-110395(JP,A)
【文献】特開平08-326952(JP,A)
【文献】特開2001-012633(JP,A)
【文献】特開2003-329698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/04
F16K 37/00
H02P 8/24
H02K 37/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記電動弁が、弁口を有する弁本体と、前記弁口と向かい合う弁体と、前記弁本体に接合されたキャンと、前記弁体を移動させるためのステッピングモーターと、前記キャンの外側に配置された第1磁気センサーおよび第2磁気センサーと、を有し、
前記ステッピングモーターが、前記キャンの内側に配置された円筒形状のマグネットローターと、前記キャンの外側に配置されたステーターと、を有し、
前記マグネットローターの外周面には、複数のN極と複数のS極とが周方向に等間隔で交互に配置され、
前記複数のN極および前記複数のS極の総数をnとし、自然数をNとし、前記マグネットローターの軸方向から見たときの前記マグネットローターの軸と前記第1磁気センサーとを結ぶ線と前記軸と前記第2磁気センサーとを結ぶ線とがなす角度をθとしたとき、次の式(1)を満たし、
(1) θ=(360/n)×N+(360/2n)
前記第1磁気センサーおよび前記第2磁気センサーの出力信号が、二値信号であり、
前記電動弁制御装置が、前記第1磁気センサーおよび前記第2磁気センサーの出力信号、ならびに、前記マグネットローターが回転しているときの前記出力信号の期待値である出力信号期待値情報に基づいて、前記マグネットローターの回転が規制されたことを検出することを特徴とする電動弁制御装置。
【請求項2】
前記電動弁制御装置が、前記第1磁気センサーの出力信号が第1値から第2値に変化したタイミングと、前記第2磁気センサーの出力信号が第1値から第2値に変化したタイミングと、に基づいて、前記マグネットローターの回転方向を検出する、請求項1に記載の電動弁制御装置。
【請求項3】
前記電動弁と、請求項1
または請求項2に記載の電動弁制御装置と、を有する電動弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁制御装置、ならびに、電動弁および電動弁制御装置を有する電動弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、従来の電動弁の一例を開示している。電動弁は、例えば、エアコンシステムに組み込まれる。電動弁は、ケースと、ローターと、ステーターと、1つのホールICと、を有している。ローターは、ケースの内側に配置されている。ローターは、駆動用磁気ドラムと、検出用磁気ドラムと、を有している。ステーターは、ケースの外側に配置されている。ローターとステーターとは、ステッピングモーターを構成している。ホールICは、ケースの外側に配置されている。ホールICの出力信号は、検出用磁気ドラムが生じる磁界に応じた信号(二値信号)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動弁は、エアコン制御装置によって制御される。エアコン制御装置は、例えば、電動弁の初期化時に、ステッピングモーターにパルスを入力してローターを一方向に回転させる。ローターが基準位置に到達するとストッパ機構によってローターの一方向への回転が規制される。エアコン制御装置は、ホールICの出力信号が変化したときからパルスをカウントする。そして、エアコン制御装置は、パルス数に基づいてセット/リセットされるフラグを用いてローターの一方向への回転が規制されたことを検出し、つまり、ローターが基準位置に到達したことを検出する。そのため、エアコン制御装置の処理が複雑である。
【0005】
そこで、本発明は、マグネットローターの回転が規制されたことを比較的簡易に検出できる電動弁制御装置および電動弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電動弁制御装置は、
電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記電動弁が、弁口を有する弁本体と、前記弁口と向かい合う弁体と、前記弁本体に接合されたキャンと、前記弁体を移動させるためのステッピングモーターと、前記キャンの外側に配置された第1磁気センサーおよび第2磁気センサーと、を有し、
前記ステッピングモーターが、前記キャンの内側に配置された円筒形状のマグネットローターと、前記キャンの外側に配置されたステーターと、を有し、
前記マグネットローターの外周面には、複数のN極と複数のS極とが周方向に等間隔で交互に配置され、
前記複数のN極および前記複数のS極の総数をnとし、自然数をNとし、前記マグネットローターの軸方向から見たときの前記マグネットローターの軸と前記第1磁気センサーとを結ぶ線と前記軸と前記第2磁気センサーとを結ぶ線とがなす角度をθとしたとき、次の式(1)を満たし、
(1) θ=(360/n)×N+(360/2n)
前記第1磁気センサーおよび前記第2磁気センサーの出力信号が、二値信号であり、
前記電動弁制御装置が、前記第1磁気センサーおよび前記第2磁気センサーの出力信号、ならびに、前記マグネットローターが回転しているときの前記出力信号の期待値である出力信号期待値情報に基づいて、前記マグネットローターの回転が規制されたことを検出することを特徴とする。
【0007】
本発明において、
前記電動弁制御装置が、前記第1磁気センサーの出力信号が第1値から第2値に変化したタイミングと、前記第2磁気センサーの出力信号が第1値から第2値に変化したタイミングと、に基づいて、前記マグネットローターの回転方向を検出する、ことが好ましい。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る電動弁制御装置は、
電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記電動弁が、弁口を有する弁本体と、前記弁口と向かい合う弁体と、前記弁本体に接合されたキャンと、前記弁体を移動させるためのステッピングモーターと、前記キャンの外側に配置された第1磁気センサーおよび第2磁気センサーと、を有し、
前記ステッピングモーターが、前記キャンの内側に配置された円筒形状のマグネットローターと、前記キャンの外側に配置されたステーターと、を有し、
前記マグネットローターの外周面には、複数のN極と複数のS極とが周方向に等間隔で交互に配置され、
前記電動弁制御装置が、前記第1磁気センサーおよび前記第2磁気センサーの出力信号に基づいて、前記マグネットローターの位置および回転方向を検出することを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る電動弁装置は、前記電動弁と、前記電動弁制御装置と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、マグネットローターの複数のN極および複数のS極の総数をnとし、自然数をNとし、マグネットローターの軸方向から見たときのマグネットローターの軸と第1磁気センサーとを結ぶ線と前記軸と第2磁気センサーとを結ぶ線とがなす角度をθとしたとき、次の式(1)を満たす。
(1) θ=(360/n)×N+(360/2n)
これにより、第1磁気センサーおよび第2磁気センサーの一方がマグネットローターの外周面に配置された1つの磁極と向かいあうとき、他方がマグネットローターの外周面における磁極と磁極との間の部分と向かいあう。
そして、第1磁気センサーおよび第2磁気センサーの出力信号が二値信号であり、電動弁制御装置が、第1磁気センサーおよび第2磁気センサーの出力信号、ならびに、マグネットローターが回転しているときの出力信号の期待値である出力信号期待値情報に基づいて、マグネットローターの回転が規制されたことを検出する。
【0011】
このようにしたことから、電動弁制御装置は、第1磁気センサーおよび第2磁気センサーの出力信号とその期待値である出力信号期待値情報との比較によって、マグネットローターが回転しているか否かを判定できる。そのため、マグネットローターの回転についての判定に基づいて、マグネットローターの回転が規制されたことを比較的簡易に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施例に係る電動弁装置を有するエアコンシステムのブロック図である。
【
図4】センサー基板および基板支持部材の斜視図である。
【
図5】センサー基板および基板支持部材の他の斜視図である。
【
図6】第1磁気センサーと第2磁気センサーとの配置を説明する図である。
【
図7】ステーターの極歯と第1磁気センサーと第2磁気センサーとの位置関係を模式的に示す図である。
【
図9】マイクロコンピューター、ステッピングモーター、第1磁気センサーおよび第2磁気センサーを説明する図である。
【
図10】マグネットローターとステーターとの位置関係を模式的に示す図である(パルスP[1]入力時)。
【
図11】マグネットローターとステーターとの位置関係を模式的に示す図である(パルスP[2]入力時)。
【
図12】マグネットローターとステーターとの位置関係を模式的に示す図である(パルスP[3]入力時)。
【
図13】マグネットローターとステーターとの位置関係を模式的に示す図である(パルスP[4]入力時)。
【
図14】マグネットローターとステーターとの位置関係を模式的に示す図である(パルスP[5]入力時)。
【
図15】マグネットローターとステーターとの位置関係を模式的に示す図である(パルスP[6]入力時)。
【
図16】マグネットローターとステーターとの位置関係を模式的に示す図である(パルスP[7]入力時)。
【
図17】マグネットローターとステーターとの位置関係を模式的に示す図である(パルスP[8]入力時)。
【
図18】第1磁気センサーおよび第2磁気センサーの出力信号期待値情報の一例を示す図である。
【
図19】第1磁気センサーおよび第2磁気センサーの出力信号期待値情報、ならびに、第1磁気センサーおよび第2磁気センサーの出力信号の一例を示す図である。
【
図20】マグネットローターの閉弁方向の回転が規制されている状態におけるマグネットローターの動きを説明する図である。
【
図21】マグネットローターの閉弁方向の回転が規制されている状態におけるマグネットローターの動きを説明する図である。(
図20の続き)。
【
図22】電動弁制御装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施例に係る電動弁装置について、各図を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施例に係る電動弁装置を有するエアコンシステムのブロック図である。
図2は、電動弁および電動弁制御装置を有する電動弁装置の断面図である。
図3は、電動弁のステーターユニットの断面図である。
図4、
図5は、電動弁のセンサー基板および基板支持部材の斜視図である。
図6は、電動弁の第1磁気センサーと第2磁気センサーとの配置を説明する図である。
図6は、キャン、マグネットローター、ステーター、センサー基板、第1磁気センサーおよび第2磁気センサーを上方から見た図である。
図6において、キャンとマグネットローターとをステーターの上面を含む平面で切断した断面で示し、センサー基板、第1磁気センサーおよび第2磁気センサーを破線で示す。
図6において、マグネットローターのN極を斜線領域で模式的に示し、S極をドット領域で模式的に示す。
図7は、電動弁のステーターの極歯と第1磁気センサーと第2磁気センサーとの位置関係を模式的に示す図である。
図8は、電動弁制御装置の制御基板の斜視図である。
図9は、マイクロコンピューター、ステッピングモーター、第1磁気センサーおよび第2磁気センサーを説明する図である。
図9Aは、マイクロコンピューター、ステッピングモーター、第1磁気センサーおよび第2磁気センサーの接続関係を模式的に示す。
図9Bは、ステッピングモーターに入力されるパルスの一例を示す。
図2~
図6、
図8において、矢印Xで示すX方向が左右方向であり、矢印Yで示すY方向が前後方向であり、矢印Zで示すZ方向が上下方向である。矢印Xにおいて「X」の文字がある方が右方向であり、矢印Yにおいて「Y」の文字がある方が前方向であり、矢印Zにおいて「Z」の文字がある方が上方向である。
【0015】
本実施例に係る電動弁装置1は、電動弁5と、電動弁制御装置(以下、単に「制御装置100」という。)と、有している。
【0016】
電動弁装置1は、例えば、
図1に示すエアコンシステム400に組み込まれる。エアコンシステム400は、配管405を介して順に接続された圧縮機401、凝縮器402、電動弁装置1(電動弁5)および蒸発器403を有している。エアコンシステム400は、エアコン制御装置410を有している。エアコン制御装置410は、電動弁装置1(制御装置100)と通信バス420を介して通信可能に接続されている。エアコン制御装置410は、電動弁装置1を用いて配管405を流れる冷媒の流量を制御する。
【0017】
図2~
図5に示すように、電動弁5は、弁本体10と、キャン20と、駆動機構30と、弁体40と、ステーターユニット50と、センサー基板90と、第1磁気センサー91と、第2磁気センサー92と、を有している。
【0018】
弁本体10は、例えば、アルミニウム合金などの金属製である。弁本体10は、本体部材11と、支持部材12と、を有している。本体部材11は、直方体形状を有している。本体部材11は、取付孔11aを有している。取付孔11aは、本体部材11の上面11bに配置されている。支持部材12は、円筒形状を有している。支持部材12の下部は、取付孔11aに配置されている。支持部材12は、本体部材11にねじ構造により取り付けられている。支持部材12の上部は、本体部材11の上面11bから突出している。本体部材11は、弁室14と、流路15と、流路16と、弁口17と、弁座18と、を有している。流路15は、弁室14に接続されている。流路16は、弁口17を介して弁室14に接続されている。弁座18は、弁室14において弁口17を囲んでいる。
【0019】
キャン20は、例えば、ステンレスなどの金属製である。キャン20は、上端が塞がれかつ下端が開口した円筒形状を有している。キャン20の下端は、円環板形状の接続部材13を介して支持部材12の上部に接合されている。
【0020】
駆動機構30は、弁体40を上下方向(軸線L方向)に移動させる。駆動機構30は、マグネットローター31と、弁軸ホルダー32と、ガイドブッシュ33と、弁軸34と、を有している。
【0021】
マグネットローター31は、円筒形状を有している。マグネットローター31の外径は、キャン20の内径より若干小さい。マグネットローター31の外周面には、複数の磁極(複数のN極、複数のS極)が配置されている。複数のN極および複数のS極は、上下方向に延在している。複数のN極および複数のS極は、周方向に等間隔で交互に配置されている。本実施例において、マグネットローター31は12個のN極と12個のS極とを有しており、磁極の総数は24である。隣り合うN極とS極との間隔(角度)は、15度である。
【0022】
弁軸ホルダー32は、上端が塞がれかつ下端が開口した円筒形状を有している。弁軸ホルダー32の上部には支持リング35が固定されている。支持リング35は、マグネットローター31と弁軸ホルダー32とを連結している。弁軸ホルダー32の内周面には、雌ねじ32cが設けられている。
【0023】
ガイドブッシュ33は、第1円筒部33aと、第2円筒部33bと、を一体的に有している。第2円筒部33bの外径は、第1円筒部33aの外径より小さい。第2円筒部33bは、第1円筒部33aの上端に同軸に連設されている。第2円筒部33bの外周面には、雄ねじ33cが設けられている。雄ねじ33cは、弁軸ホルダー32の雌ねじ32cと螺合される。第1円筒部33aは、弁本体10の支持部材12に設けられた嵌合孔12aに圧入されている。ガイドブッシュ33は、弁本体10と結合されている。
【0024】
弁軸ホルダー32には、可動ストッパ32sが固定されている。ガイドブッシュ33の第1円筒部33aには、固定ストッパ33sが固定されている。可動ストッパ32sと固定ストッパ33sとが接すると、弁軸ホルダー32(すなわちマグネットローター31)の閉弁方向への回転が規制される。可動ストッパ32sと固定ストッパ33sとは、ストッパ機構38を構成する。ストッパ機構38は、マグネットローター31の閉弁方向への回転を規制する。
【0025】
弁軸34は、第1部分34aと、第2部分34bと、を一体的に有している。第1部分34aおよび第2部分34bは、円柱形状を有している。第2部分34bの径は、第1部分34aの径より小さい。第2部分34bは、第1部分34aの上端に同軸に連設されている。第2部分34bは、弁軸ホルダー32を貫通している。第2部分34bには、抜け止め用のプッシュナット36が取り付けられている。弁軸34は、ガイドブッシュ33の内側および支持部材12の内側に配置されている。第1部分34aの下端は、弁室14に配置されている。第1部分34aと第2部分34bとの間に段部34dが形成されている。段部34dと弁軸ホルダー32と間には、閉弁ばね37が配置されている。閉弁ばね37は、圧縮コイルばねである。閉弁ばね37は、弁軸34を下方に向けて押している。
【0026】
弁体40は、弁室14に配置されている。弁体40は、弁口17と上下方向に向かい合っている。弁体40は、弁口17を開閉する。弁体40は、弁軸34の下端に接続されている。弁軸34と弁体40とは、例えば、円柱形状のワークピースを切削加工して、一体的に形成される。
【0027】
ステーターユニット50は、ステーター60と、ハウジング70と、ケース80と、を有している。
【0028】
ステーター60は、円筒形状を有している。ステーター60は、A相ステーター61と、B相ステーター62と、を有している。
【0029】
A相ステーター61は、内周側に複数のクローポール型の極歯61a、61bを有している。極歯61aの先端は下方に向いており、極歯61bの先端は上方に向いている。極歯61aと極歯61bとは、周方向に等間隔で交互に配置されている。本実施例において、A相ステーター61は、極歯61aを12個有し、極歯61bを12個有している。互いに隣り合う極歯61aと極歯61bとの間の角度は、15度である。A相ステーター61のコイル61cが通電されると、極歯61aと極歯61bとは互いに異なる極性となる。
【0030】
B相ステーター62は、内周側に複数のクローポール型の極歯62a、62bを有している。極歯62aの先端は下方に向いており、極歯62bの先端は上方に向いている。極歯62aと極歯62bとは、周方向に等間隔で交互に配置されている。本実施例において、B相ステーター62は、極歯62aを12個有し、極歯62bを12個有している。互いに隣り合う極歯62aと極歯62bとの間の角度は、15度である。B相ステーター62のコイル62cが通電されると、極歯62aと極歯62bとは互いに異なる極性となる。
【0031】
A相ステーター61とB相ステーター62とは、同軸に配置されている。A相ステーター61とB相ステーター62とは、互いに接している。軸線L方向から見たときに互いに隣り合うA相ステーター61の極歯61aとB相ステーター62の極歯62aとの間の角度は、7.5度である。A相ステーター61のコイル61cおよびB相ステーター62のコイル62cは、複数の端子65と接続されている。
【0032】
ハウジング70は、合成樹脂製である。ハウジング70は、円筒形状を有している。ハウジング70は、射出成形によって成形されている。ハウジング70は、ステーター60を収容している。ハウジング70は、ステーター60と一体成形(インサート成形)されている。なお、ステーター60とハウジング70とを別々に作製し、ハウジング70の内側にステーター60を嵌め込んでもよい。ハウジング70の内面およびステーター60の内周面によって画定される内側空間74にキャン20が配置される。ステーター60とマグネットローター31とは、ステッピングモーター66を構成する。
【0033】
ハウジング70は、基板空間75を有している。基板空間75は、横方向(軸線Lと直交する方向)に延在している。基板空間75は、内側空間74に隣接して配置されている。内側空間74と基板空間75との間に隔壁76が設けられている。隔壁76は、内側空間74と基板空間75とを区画している。隔壁76の横断面(軸線Lと直交する断面)は、キャン20の外周面に沿う円弧形状を有している。
【0034】
ケース80は、合成樹脂製である。ケース80は、直方体箱形状を有している。ケース80は、ハウジング70に接合されている。ケース80の内側の空間85は、開口80aを通じて、基板空間75と接続されている。ケース80の上部には、コネクタ83が設けられている。
【0035】
図4、
図5にセンサー基板90を示す。センサー基板90は、電子部品が実装されるプリント基板である。センサー基板90は、基板空間75に収容されている。センサー基板90は、横方向と平行に配置されている。センサー基板90の第1端部90aは、ケース80の空間85に配置されている。センサー基板90の第2端部90bは、隔壁76の近傍に配置されている。センサー基板90には、基板支持部材95が取り付けられている。基板支持部材95の円筒部97の内側にケース80のボス87が配置され、センサー基板90は、基板支持部材95を介して、ボス87に取り付けられている。センサー基板90には、第1磁気センサー91と、第2磁気センサー92と、が実装されている。
【0036】
第1磁気センサー91および第2磁気センサー92は、ホールICである。第1磁気センサー91および第2磁気センサー92の出力信号K(K1、K2)は、二値信号である。第1磁気センサー91および第2磁気センサー92は、センサー基板90の第2端部90bに配置されている。第1磁気センサー91および第2磁気センサー92は、軸線Lに対して等距離に配置されかつ軸線L周りに互いに間隔をあけて配置されている。
【0037】
第1磁気センサー91および第2磁気センサー92は、キャン20および隔壁76を介してマグネットローター31と径方向に並んでいる。換言すると、第1磁気センサー91および第2磁気センサー92は、キャン20および隔壁76を介して、マグネットローター31と径方向(横方向)に向かい合うように配置されている。
【0038】
図6に第1磁気センサー91と第2磁気センサー92との配置の一例を示す。
図6において、線M1は、軸線Lと第1磁気センサー91の磁気検知部とを結ぶ線であり、線M2は、軸線Lと第2磁気センサー92の磁気検知部とを結ぶ線である。線M1および線M2は、軸線Lと直交する。マグネットローター31の複数の磁極の数をnとし、自然数をNとし、マグネットローター31の軸方向(軸線L方向)から見たときの線M1と線M2とがなす角度をθとしたとき、次の式(1)を満たす。
(1) θ=(360/n)×N+(360/2n)
【0039】
本実施例において、n=24、N=1、θ=22.5度である。
(1a) θ=(360/24)×1+(360/(2×24))=22.5
または、n=24、N=3、θ=52.5度でもよい。
(1b) θ=(360/24)×3+(360/(2×24))=52.5
または、n=24、N=6、θ=97.5度でもよい。
(1c) θ=(360/24)×6+(360/(2×24))=97.5
または、n=30、N=2、θ=30度でもよい。
(1d) θ=(360/30)×2+(360/(2×30))=30
【0040】
式(1)を満たすことで、第1磁気センサー91がマグネットローター31の複数の磁極(N極、S極)のうちの1つと径方向に向かい合ったとき、第2磁気センサー92がマグネットローター31の外周面におけるN極とS極との間の部分と径方向に向かい合う。または、第2磁気センサー92がマグネットローター31の複数の磁極(N極、S極)のうちの1つと径方向に向かい合ったとき、第1磁気センサー91がマグネットローター31の外周面におけるN極とS極との間の部分と径方向に向かい合う。なお、第1磁気センサー91の出力信号K1と第2磁気センサー92の出力信号K2とが互いに異なるタイミングで変化するように第1磁気センサー91と第2磁気センサー92とが配置されていれば、式(1)を満たさなくてもよい。
【0041】
図7にA相ステーター61とB相ステーター62と第1磁気センサー91と第2磁気センサー92との位置関係の一例を示す。
図7に示すように、A相ステーター61とB相ステーター62とを径方向に見たとき、A相ステーター61の極歯61aの中心と第1磁気センサー91の磁気検知部とが線L1上に配置され、B相ステーター62の極歯62aの中心と第2磁気センサー92の磁気検知部とが線L2上に配置される。線L1および線L2は、軸線Lと平行である。
【0042】
第1磁気センサー91および第2磁気センサー92の出力信号Kは、マグネットローター31の磁極が生じる磁界の向きに応じた信号である。具体的には、第1磁気センサー91および第2磁気センサー92は、S極を検知したとき出力信号KとしてL信号(第1値)を出力し、N極を検知したとき出力信号KとしてH信号(第2値)を出力する。
【0043】
電動弁5において、本体部材11(弁口17、弁座18)、支持部材12、接続部材13、キャン20、マグネットローター31、弁軸34、弁体40、ステーター60(A相ステーター61、B相ステーター62)は、それぞれの中心軸が軸線Lに一致する。
【0044】
電動弁5において、マグネットローター31が閉弁方向に回転すると、弁軸ホルダー32の雌ねじ32cとガイドブッシュ33の雄ねじ33cとのねじ送り作用によってマグネットローター31および弁軸ホルダー32が下方に移動する。弁軸ホルダー32が、閉弁ばね37を介して弁軸34を下方に押す。弁軸34および弁体40が下方に移動して弁体40が弁座18に接する。このときのマグネットローター31の位置は、閉弁位置Rcである。この状態からマグネットローター31が閉弁方向にさらに回転すると、閉弁ばね37が圧縮されてマグネットローター31および弁軸ホルダー32がさらに下方に移動する。弁体40は下方に移動しない。そして、可動ストッパ32sが固定ストッパ33sに接すると、マグネットローター31の閉弁方向への回転が規制される。このときのマグネットローター31の位置は、基準位置Rxである。
【0045】
電動弁5において、マグネットローター31が開弁方向に回転すると、弁軸ホルダー32の雌ねじ32cとガイドブッシュ33の雄ねじ33cとのねじ送り作用によってマグネットローター31および弁軸ホルダー32が上方に移動する。弁軸ホルダー32が、プッシュナット36を上方に押す。弁軸34および弁体40が上方に移動して弁体40が弁座18から離れる。マグネットローター31が開弁方向にさらに回転すると、マグネットローター31が全開位置Rzに到達する。マグネットローター31が全開位置Rzにあるとき、弁体40が弁口17から最も離れる。
【0046】
制御装置100は、制御基板110と、マイクロコンピューター120と、を有している。
【0047】
図8に制御基板110を示す。制御基板110は、電子部品が実装されるプリント基板である。制御基板110は、ケース80の空間85に収容されている。制御基板110は、上下方向に平行に配置されている。制御基板110は、センサー基板90に対して直角である。制御基板110は、センサー基板90の第1端部90aの近傍に配置されている。制御基板110は、接続端子93を介してセンサー基板90と接続されている。制御基板110には、ステーター60の複数の端子65が接続されている。ケース80のボス87が制御基板110の貫通孔112に配置され、制御基板110はボス87に取り付けられている。制御基板110には、マイクロコンピューター120が実装されている。
【0048】
図1、
図9Aに示すように、マイクロコンピューター120は、例えば、中央処理装置であるCPU121、不揮発性メモリ122、モータードライバ123、作業用メモリ124、通信モジュール125などを1つのパッケージに集積した組み込み機器用のマイクロコンピューターである。マイクロコンピューター120は、電動弁5の制御を司る。なお、不揮発性メモリ、作業用メモリ、通信モジュールおよびモータードライバは、マイクロコンピューター120に外部接続される個別の電子部品であってもよい。
【0049】
CPU121は、不揮発性メモリ122に格納されたプログラムを実行し、各種機能部として機能する。作業用メモリ124は、各種機能部で用いられる変数を格納する。通信モジュール125は、通信バス420を介してエアコン制御装置410と接続される。モータードライバ123は、ステッピングモーター66と接続されている。具体的には、
図9Aに示すように、モータードライバ123は、A相ステーター61のコイル61cおよびB相ステーター62のコイル62cと接続されている。モータードライバ123は、パルスPに応じた駆動電流をコイル61cおよびコイル62cに供給する。
【0050】
ステッピングモーター66にパルスP(P[1]~P[8])が入力されることによりマグネットローター31が回転する。具体的には、ステッピングモーター66のステーター60にパルスPに応じた駆動電流が供給されることによりマグネットローター31が回転する。本明細書において、「ステッピングモーター66にパルスPが入力されること」は、「ステッピングモーター66のステーター60にパルスPに応じた駆動電流が供給されること」と同義である。パルスPは、昇順または降順で繰り返しステッピングモーター66に入力される。すなわち、パルスP[1]~P[8]は、1周期分のパルスPであり、ステッピングモーター66に所定の順番で繰り返し入力される複数個のパルスPである。
【0051】
本実施例において、ステッピングモーター66の励磁モードは1-2相励磁であり、ステッピングモーター66のステップ角は3.75度である。マグネットローター31が基準位置Rxにあるとき、可動ストッパ32sと固定ストッパ33sとが接し、マグネットローター31の閉弁方向の回転が規制される。マグネットローター31を基準位置Rxから全開位置Rzまで回転させるために必要なパルス数(初期化数)は500である。
【0052】
ステッピングモーター66には、
図9Bに示すパルスP[1]~P[8]が順番に入力される。
図10~
図17に、パルスP[1]~P[8]が入力されたときのマグネットローター31とステーター60との位置関係の一例を模式的に示す。
図10~
図17において、マグネットローター31の磁極およびステーター60の極歯を模式的に示している。
図10~
図17の上図において、径方向外方が上方に対応し、径方向内方が下方に対応する。
図10~
図17において、マグネットローター31とステーター60(A相ステーター61、B相ステーター62)との位置関係を把握しやすくするため、基準となる極歯61aおよび基準となるマグネットローター31の磁極(S極)に印(黒丸)を付している。
【0053】
ステッピングモーター66にパルスPを昇順(P[1]~P[8]の順番)で入力すると、マグネットローター31が閉弁方向(
図10~
図17において時計方向)に回転する。ステッピングモーター66にパルスPを降順(P[8]~P[1]の順番)で入力すると、マグネットローター31が開弁方向(
図10~
図17において反時計方向)に回転する。
【0054】
図18に、第1磁気センサー91および第2磁気センサー92の出力信号期待値情報J(J1、J2)の一例を示す。出力信号期待値情報Jは、ステッピングモーター66にパルスP[1]~P[8]が入力されたときの第1磁気センサー91および第2磁気センサー92の出力信号Kの期待値である。出力信号期待値情報Jは、不揮発性メモリ122に格納されている。
図18において、「L」はL信号を示し、「H」はH信号を示し、「*」は、「L」または「H」のどちらでもよいこと(任意値)を示す。公差などの影響により、電動弁5では「*」において「L」または「H」のどちらかが出力される。
図18の上段が、第1磁気センサー91の出力信号期待値情報J1であり、
図18の下段が、第2磁気センサー92の出力信号期待値情報J2である。
【0055】
ステッピングモーター66にパルスP[1]が入力されたときの第1磁気センサー91の出力信号Kの期待値は「L」であり、第2磁気センサー92の出力信号Kの期待値は「*」である。
ステッピングモーター66にパルスP[2]が入力されたときの第1磁気センサー91の出力信号Kの期待値は「L」であり、第2磁気センサー92の出力信号Kの期待値は「L」である。
ステッピングモーター66にパルスP[3]が入力されたときの第1磁気センサー91の出力信号Kの期待値は「*」であり、第2磁気センサー92の出力信号Kの期待値は「L」である。
ステッピングモーター66にパルスP[4]が入力されたときの第1磁気センサー91の出力信号Kの期待値は「H」であり、第2磁気センサー92の出力信号Kの期待値は「L」である。
ステッピングモーター66にパルスP[5]が入力されたときの第1磁気センサー91の出力信号Kの期待値は「H」であり、第2磁気センサー92の出力信号Kの期待値は「*」である。
ステッピングモーター66にパルスP[6]が入力されたときの第1磁気センサー91の出力信号Kの期待値は「H」であり、第2磁気センサー92の出力信号Kの期待値は「H」である。
ステッピングモーター66にパルスP[7]が入力されたときの第1磁気センサー91の出力信号Kの期待値は「*」であり、第2磁気センサー92の出力信号Kの期待値は「H」である。
ステッピングモーター66にパルスP[8]が入力されたときの第1磁気センサー91の出力信号Kの期待値は「L」であり、第2磁気センサー92の出力信号Kの期待値は「H」である。
【0056】
本実施例において、マグネットローター31が閉弁方向に回転しているとき、パルスP[1]~P[8]に対応して、第1磁気センサー91が出力信号K1として「LLHHHHLL」を出力し、第2磁気センサー92が出力信号K2として「LLLLHHHH」を出力する。マグネットローター31が開弁方向に回転しているとき、パルスP[8]~P[1]に対応して、第1磁気センサー91が「LLHHHHLL」を出力し、第2磁気センサー92が「HHHHLLLL」を出力する。出力信号K1および出力信号K2は、マグネットローター31の回転に応じて変化する。そのため、制御装置100は、出力信号K1および出力信号K2に基づいて、マグネットローター31の位置および回転方向を検出できる。マグネットローター31の位置は、例えば、基準位置Rxからの回転角度である。
【0057】
第1磁気センサー91および第2磁気センサー92の検出値である出力信号Kが出力信号期待値情報Jと一致するとき、マグネットローター31が回転している。第1磁気センサー91および第2磁気センサー92の少なくとも一方の出力信号Kが出力信号期待値情報Jと一致しないとき、マグネットローター31が回転していない。
【0058】
次に、電動弁装置1において、マグネットローター31を閉弁方向に回転させたときの第1磁気センサー91および第2磁気センサー92の出力信号Kについて、
図19~
図21を参照して説明する。
図19は、時刻T1~T409における出力信号期待値情報Jおよび出力信号Kの一例を示す図である。
図20、
図21は、マグネットローター31の閉弁方向の回転が規制されている状態におけるマグネットローター31の動きを説明する図である。
図20、
図21において、マグネットローター31とステーター60(A相ステーター61、B相ステーター62)との位置関係を把握しやすくするため、基準となる極歯61aおよび基準となるマグネットローター31の磁極(S極)に印(黒四角)を付している。
図20、
図21において、右方向が閉弁方向であり、左方向が開弁方向である。
図20A~
図20E、
図21A~
図21Dは、
図19の時刻T401~T409に対応する。
【0059】
一定の時間間隔(時刻T1~T400)で制御装置100がステッピングモーター66にパルスPを昇順で繰り返し入力すると、マグネットローター31が閉弁方向にステップ角ずつ回転する。そして、時刻T401において、制御装置100がステッピングモーター66にパルスP[1]を入力すると、
図20Aに示すように、マグネットローター31が基準位置Rxに位置付けられ、可動ストッパ32sが固定ストッパ33sに接する。基準位置Rxにおいて、マグネットローター31は閉弁方向への回転が規制される。
図19に示すように、時刻T1~T401におけるパルスPの入力後にマグネットローター31は閉弁方向に回転し、出力信号Kは出力信号期待値情報Jと一致する。
【0060】
時刻T402、T403、T404、T405において、制御装置100がステッピングモーター66にパルスP[2]、P[3]、P[4]、P[5]を入力すると、
図20B~
図20Eに示すように、マグネットローター31は閉弁方向に回転せず、出力信号Kが変化しない。そのため、
図19に示すように、時刻T402、T403におけるパルスPの入力後の出力信号Kは出力信号期待値情報Jと一致するが、時刻T404、T405におけるパルスPの入力後の出力信号Kは出力信号期待値情報Jと一致しない。具体的には、出力信号K1が出力信号期待値情報J1と一致しない。
図19において、出力信号期待値情報Jと一致しない出力信号Kをハッチングで示す。
【0061】
時刻T406において、制御装置100がステッピングモーター66にパルスP[6]を入力すると、
図20Aに示すように、マグネットローター31が開弁方向に回転する。マグネットローター31の回転角度は、ステップ角の3倍の角度である。出力信号KはパルスP[6]に応じた値となる。そのため、
図19に示すように、時刻T406におけるパルスPの入力後の出力信号Kは出力信号期待値情報Jと一致する。
【0062】
時刻T407、T408、T409において、制御装置100がステッピングモーター66にパルスP[7]、P[8]、P[1]を入力すると、
図21B~
図21Dに示すように、マグネットローター31が閉弁方向にステップ角ずつ回転する。そのため、
図22に示すように、時刻T407、T408、T409におけるパルスPの入力後の出力信号Kは出力信号期待値情報Jと一致する。時刻T409におけるパルスPの入力後にマグネットローター31は再び基準位置Rxに位置付けられ、ストッパ機構38によりマグネットローター31の閉弁方向への回転が規制される。
【0063】
これ以降、パルスP[1]~P[8]の入力に応じて、出力信号Kが時刻T401~T408と同じ変化を繰り返す。
【0064】
なお、ここでは制御装置100がステッピングモーター66にパルスPを昇順で入力する場合について説明したが、パルスPを降順で入力した場合にマグネットローター31の開弁方向の回転が規制されたときも、出力信号Kの変化態様は上記と同様である。
【0065】
したがって、制御装置100は、パルスPの入力後に取得した第1磁気センサー91および第2磁気センサー92の出力信号Kを出力信号期待値情報Jと比較することで、マグネットローター31が回転しているか否かを判定できる。制御装置100は、この判定に基づいて、マグネットローター31の回転が規制されたことを検出できる。
【0066】
次に、制御装置100の処理(マグネットローター31を基準位置Rxに位置付ける処理)の一例について、
図22のフローチャートを参照して説明する。
【0067】
制御装置100(具体的にはCPU121)は、ステッピングモーター66にパルスPを昇順で入力する(S110)。制御装置100は、第1磁気センサー91および第2磁気センサー92の出力信号Kを取得する(S120)。制御装置100は、入力したパルスPに対応する出力信号期待値情報Jを不揮発性メモリ122から読み出し、出力信号Kと出力信号期待値情報Jとを比較する(S130)。制御装置100は、出力信号Kと出力信号期待値情報Jとが一致したとき(S130でY)、マグネットローター31が回転していると判定して、次のパルスPを入力する(S110に戻る)。制御装置100は、出力信号Kと出力信号期待値情報Jとが一致しないとき(S130でN)、マグネットローター31が回転していないと判定し、マグネットローター31の閉弁方向の回転が規制されたことを検出する(S140)。これにより、制御装置100は、マグネットローター31が基準位置Rxに位置付けられたものとして処理を終了する。
【0068】
制御装置100は、マグネットローター31の閉弁方向への回転がストッパ機構38によって規制されたことを検出可能である。これ以外にも、制御装置100は、例えば、マグネットローター31の回転が冷媒に混入した異物などによって規制されたことも検出可能である。
【0069】
電動弁5において、マグネットローター31の回転規制の類型は、(i)ストッパ機構38による回転規制、(ii)弁ロックによる回転規制、および、(iii)ローターロックによる回転規制、を含む。(i)では、マグネットローター31が基準位置Rxにあるとき、可動ストッパ32sと固定ストッパ33sとが接し、マグネットローター31の閉弁方向の回転が規制される。(ii)では、弁口17と弁体40との間に異物が挟まり、弁体40が移動できなくなり、マグネットローター31の回転が規制される。(iii)では、キャン20の内周面とマグネットローター31の外周面との隙間に異物が挟まり、マグネットローター31の回転が規制される。
【0070】
(i)において、マグネットローター31は、開弁方向に回転可能である。(ii)において、マグネットローター31は、弁軸ホルダー32の雌ねじ32cとガイドブッシュ33の雄ねじ33cとの間の遊びの分だけ回転可能である。そのため、(i)、(ii)では、パルスPを順番に入力してマグネットローター31を一方向(閉弁方向または開弁方向)に回転させ、マグネットローター31の回転が規制された後もパルスPの入力を続けると、マグネットローター31が一時的に他方向に回転し、再度一方向に回転する動作(以下、「反転動作」という。)を繰り返す。
【0071】
(iii)において、マグネットローター31はいずれの方向にも回転できない。そのため、(iii)では、パルスPを順番に入力してマグネットローター31を一方向(閉弁方向または開弁方向)に回転させ、マグネットローター31の回転が規制された後もパルスPの入力を続けると、マグネットローター31はいずれの方向にも回転しない。
【0072】
そのため、制御装置100は、マグネットローター31の回転規制を検出したとき、反転動作があると、マグネットローター31の回転規制が(i)、(ii)であると判断でき、反転動作がないと、マグネットローター31の回転規制が(iii)であると判断できる。制御装置100は、マグネットローター31が(iii)でありかつマグネットローター31を他方向に回転させても回転規制が解消されない場合、電動弁5の異常を示す情報をエアコン制御装置410に送信するようにしてもよい。
【0073】
本実施例に係る電動弁装置1は、電動弁5と制御装置100とを有する。電動弁5が、弁口17を有する弁本体10と、弁口17と向かい合う弁体40と、弁本体10に接合されたキャン20と、弁体40を移動させるためのステッピングモーター66と、第1磁気センサー91と、第2磁気センサー92と、を有する。ステッピングモーター66が、キャン20の内側に配置された円筒形状のマグネットローター31と、キャン20の外側に配置されたステーター60と、を有する。マグネットローター31の外周面には、複数のN極と複数のS極とが周方向に等間隔で交互に配置される。第1磁気センサー91および第2磁気センサー92が、キャン20の外側に配置され、マグネットローター31と径方向に並ぶ。複数のN極および複数のS極の総数をnとし、自然数をNとし、軸線L(マグネットローター31の軸)と第1磁気センサー91とを結ぶ線M1と軸線Lと第2磁気センサー92とを結ぶ線M2とがなす角度をθとしたとき、次の式(1)を満たす。
(1) θ=(360/n)×N+(360/2n)
第1磁気センサー91および第2磁気センサーの出力信号Kが、二値信号である。制御装置100が、出力信号Kおよび出力信号期待値情報Jに基づいて、マグネットローター31の回転が規制されたことを検出する。
【0074】
このようにしたことから、第1磁気センサー91および第2磁気センサー92の出力信号Kとその期待値である出力信号期待値情報Jとの比較によって、マグネットローター31が回転しているか否かを判定できる。そのため、マグネットローター31の回転についての判定に基づいて、マグネットローター31の回転が規制されたことを比較的簡易に検出できる。
【0075】
制御装置100は、第1磁気センサー91および第2磁気センサー92の出力信号Kに基づいて、マグネットローター31の回転方向を検出するようにしてもよい。
【0076】
例えば、
図19に示すように、制御装置100が、ステッピングモーター66にパルスPを昇順で入力すると、マグネットローター31は閉弁方向に回転し、P[2]、P[3]、P[4]の入力に応じて第1磁気センサー91の出力信号K1が「L」から「H」に変化し、P[4]、P[5]、P[6]の入力に応じて第2磁気センサー92の出力信号K2が「L」から「H」に変化する。
【0077】
または、制御装置100が、ステッピングモーター66にパルスPを降順で入力すると、マグネットローター31は開弁方向に回転し、P[2]、P[1]、P[8]の入力に応じて第2磁気センサー92の出力信号K2が「L」から「H」に変化し、P[8]、P[7]、P[6]の入力に応じて第1磁気センサー91の出力信号K1が「L」から「H」に変化する。
【0078】
すなわち、マグネットローター31が閉弁方向に回転しているとき、第1磁気センサー91の出力信号Kが「L」から「H」に変化したあと、第2磁気センサー92の出力信号Kが「L」から「H」に変化する。マグネットローター31が開弁方向に回転しているとき、第2磁気センサー92の出力信号Kが「L」から「H」に変化したあと、第1磁気センサー91の出力信号Kが「L」から「H」に変化する。
【0079】
このことから、制御装置100は、第1磁気センサー91の出力信号KがL信号(第1値)からH信号(第2値)に変化したタイミングと、第2磁気センサー92の出力信号KがL信号(第1値)からH信号(第2値)に変化したタイミングと、に基づいて、マグネットローター31の回転方向を比較的簡易に検出することができる。なお、L信号を第2値とし、H信号を第1値としてもよい。
【0080】
第1磁気センサー91の出力信号K1および第2磁気センサー92の出力信号K2は、マグネットローター31の回転に応じて変化する。そのため、制御装置100は、出力信号K1および出力信号K2に基づいて、マグネットローター31の位置(基準位置Rxからの回転角度)および回転方向を検出できる。そして、制御装置100は、マグネットローター31の位置または回転方向に基づいて、マグネットローター31の回転が規制されたことを検出してもよい。
【0081】
本実施例において、制御装置100が電動弁5を制御するものであったが、エアコン制御装置410が直接的に電動弁5を制御してもよい。この場合、エアコン制御装置410が、電動弁制御装置である。
【0082】
本明細書において、「円筒」や「円柱」等の部材の形状を示す各用語は、実質的にその用語の形状を有する部材にも用いられている。例えば、「円筒形状の部材」は、円筒形状の部材と実質的に円筒形状の部材とを含む。
【0083】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1…電動弁装置、5…電動弁、10…弁本体、11…本体部材、11a…取付孔、11b…上面、12…支持部材、12a…嵌合孔、13…接続部材、14…弁室、15、16…流路、17…弁口、18…弁座、20…キャン、30…駆動機構、31…マグネットローター、32…弁軸ホルダー、32c…雌ねじ、32s…可動ストッパ、33…ガイドブッシュ、33a…第1円筒部、33b…第2円筒部、33c…雄ねじ、33s…固定ストッパ、34…弁軸、34a…第1部分、34b…第2部分、34d…段部、35…支持リング、36…プッシュナット、37…閉弁ばね、38…ストッパ機構、40…弁体、50…ステーターユニット、60…ステーター、61…A相ステーター、61a、61b…極歯、61c…コイル、62…B相ステーター、62a、62b…極歯、62c…コイル、65…端子、66…ステッピングモーター、70…ハウジング、74…内側空間、75…基板空間、76…隔壁、80…ケース、80a…開口、83…コネクタ、85…空間、87…ボス、90…センサー基板、90a…第1端部、90b…第2端部、93…接続端子、95…基板支持部材、97…円筒部、91…第1磁気センサー、92…第2磁気センサー、100…電動弁制御装置、110…制御基板、112…貫通孔、120…マイクロコンピューター、121…CPU、122…不揮発性メモリ、123…モータードライバ、124…作業用メモリ、125…通信モジュール、L…軸線、J、J1、J2…出力信号期待値情報、K、K1、K2…出力信号