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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】照光加飾部材
(51)【国際特許分類】
   G09F 13/12 20060101AFI20240902BHJP
   G09F 13/04 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
G09F13/12
G09F13/04 J
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022186713
(22)【出願日】2022-11-22
(65)【公開番号】P2024075333
(43)【公開日】2024-06-03
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】516145574
【氏名又は名称】ウェッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】細矢 伸人
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/199165(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/087859(WO,A1)
【文献】特許第6978149(JP,B1)
【文献】特開2011-110817(JP,A)
【文献】特開2006-078216(JP,A)
【文献】特開2020-160900(JP,A)
【文献】特表2017-514164(JP,A)
【文献】特開2015-127504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 13/12
G09F 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照光加飾部材の製造方法であり、前記照光加飾部材は、
立体形状の樹脂成形体でなる透光性の基材と、
前記基材の第1の面を覆う遮光層と、
前記遮光層を覆い前記照光加飾部材の照光時及び非照光時の外観色となる着色層と、を備え、
前記遮光層は、遮光性ナノ粒子を含有する乾燥塗膜と、前記乾燥塗膜を除去した凹部により形成した照光表示部とを有し、
前記着色層は、前記凹部を含む前記遮光層を覆う平坦面として形成されており、
前記照光表示部は、前記基材の第2の面から照光しない非照光時には前記着色層により視認不能として隠蔽されており、照光時には前記着色層を通じて視認可能に照光表示される、照光加飾部材の製造方法であって、
前記遮光性ナノ粒子を含有する塗料を塗工することで前記遮光層を形成する工程と、
レーザー加工により前記乾燥塗膜を除去することで前記凹部を形成する工程と、
塗料を塗工することで前記着色層を形成する工程と、を含む、
照光加飾部材の製造方法。
【請求項2】
前記遮光層は、前記基材に前記遮光性ナノ粒子を保持する定着層を含
前記遮光層を形成する前記工程は、塗料を塗工することで前記定着層を形成する工程を含む、
請求項1記載の照光加飾部材の製造方法
【請求項3】
前記定着層は、前記照光表示部の照光表示に照光色を付与する第1の有色層である、
請求項2記載の照光加飾部材の製造方法
【請求項4】
前記着色層は、前記遮光層から漏れ出る光を遮光する遮光性を有する、
請求項1記載の照光加飾部材の製造方法
【請求項5】
前記着色層は、前記遮光層を覆う単層又は積層された複合層である、
請求項1記載の照光加飾部材の製造方法
【請求項6】
前記複合層は、少なくとも1つの第2の有色層を含む、
請求項5記載の照光加飾部材の製造方法
【請求項7】
前記第2の有色層は、前記照光表示部が照光表示される照光色を付与する色彩を有する、
請求項6記載の照光加飾部材の製造方法
【請求項8】
前記乾燥塗膜は、膜厚が5μm未満である、
請求項1記載の照光加飾部材の製造方法
【請求項9】
請求項1~請求項8何れか1項記載の製造方法により得られる照光加飾部材と、前記照光加飾部材へのタッチ操作を検知するタッチセンサ用のセンサシートとを備える、入力装置。
【請求項10】
請求項9記載の入力装置を備える機器。
【請求項11】
請求項1~請求項8何れか1項記載の製造方法により得られる照光加飾部材を外装部材として備える機器。
【請求項12】
照光加飾部材の製造方法であって、
遮光性ナノ粒子を含有する塗料をスプレー塗装することで前記遮光性ナノ粒子を含有する乾燥塗膜でなる遮光層を立体形状の樹脂成形体でなる透光性の基材に形成する工程と、
レーザー加工により前記乾燥塗膜を除去することで照光表示部となる凹部を前記遮光層に形成する工程と、
塗料をスプレー塗装することで着色層を形成する工程と、を含む、
ここで前記着色層は、前記凹部を含む前記遮光層を覆う平坦面として形成され、前記照光加飾部材の照光時及び非照光時の外観色となる、
照光加飾部材の製造方法。
【請求項13】
前記遮光層を形成する前記工程は、塗料をスプレー塗装することで前記遮光性ナノ粒子を保持するための定着層を形成する工程を含む、
請求項12に記載の照光加飾部材の製造方法。
【請求項14】
前記遮光層を形成する前記工程と、前記凹部を形成する前記工程と、前記着色層を形成する前記工程とで、前記基材を保持する治具を共用する、
請求項12に記載の照光加飾部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照光により文字や図形等を表示する照光加飾の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
照光加飾部材は、主に機器の外観部材として使用されており、光をその裏面に照らすと、照光前に視認できなかった加飾要素(文字、記号、図形、模様等)が、照光を伴って表示されて視認可能になる部材である。具体的には、例えば、照光式表示板は、非照光時は表面が外観色を呈する一方で、照光時は表面の外観色の中に、加飾要素が照光を伴って浮かび上がるようにして表示される。こうした照光加飾の技術は、例えば「ブラックアウト加飾」と呼ばれる。
【0003】
ここで、本開示(本明細書及び特許請求の範囲の明示の記載に加え、当該明示の記載又は技術常識に基づき当業者が導き得る記載を含む。)において記載する「ブラックアウト加飾」との用語は、非照光時には加飾要素が隠蔽されて視認できず、照光時に加飾要素が照光を伴って視認可能になるという意味である。したがって、その用語は、非照光時に加飾要素を隠蔽する色を「黒色」のみに限定する趣旨ではなく、黒色を含む多様な色彩により隠蔽されるものを含み得る。
【0004】
ブラックアウト加飾のための従来の照光加飾部材には、例えば、透光性の基材に、めっき層と着色層とを積層するものが知られている。めっき層は遮光層として機能する。めっき層には、めっき層を除去した凹部によって形成される照光表示部を有する。着色層は、凹部を含めてめっき層を覆うように形成されており、非照光時には着色層の色彩が照光式表示板の外観を呈し、照光時には照光加飾部材の裏面を照光する光が、凹部と着色層を透過することによって、照光表示部が照光表示される。
【0005】
このような従来の照光加飾部材について、本出願人は次の課題を指摘した(特許文献1)。即ち、着色層が照光表示部をなす凹部に入り込むようにして積層されることにより、着色層にはその凹部の輪郭に沿うような段差が発生する。非照光時にその段差(その段差により生じる影を含む。)は、非照光時に、外観上、照光表示部が存在することを視認できてしまう。このため、非照光時に隠蔽効果の高いブラックアウト加飾を実現できない、という課題である。そして、本出願人は、この課題を特許文献1に記載の照光式表示板により解決した。
【0006】
その照光式表示板は、照光表示部を形成するめっき層の縁を、平面視で円弧状に除去された複数の凹部により形成するものである。複数の凹部によって照光表示部の縁を、直線ではなく、凹凸が連続する縁として形成することにより、段差とその周囲との境界線を不明瞭にすることができ、非照光時であっても段差を見え難くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6211134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、新たなブラックアウト加飾を実現する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、透光性の基材と、前記基材の第1の面を覆う遮光層と、前記遮光層を覆う着色層とを備える照光加飾部材である。前記遮光層は、遮光性ナノ粒子を含有する乾燥塗膜と、前記乾燥塗膜を除去した凹部により形成した照光表示部とを有する。前記着色層は、前記凹部を含むように前記遮光層を覆う平坦面として形成されている。即ち、着色層は、照光表示部の輪郭に沿った段差を視認不能な面として形成されている。したがって、前記照光表示部は、前記基材の第2の面から照光しない非照光時には前記着色層により視認不能として隠蔽されており、照光時には前記着色層を通じて視認可能に照光表示される。
【0010】
本開示の一態様において、前記遮光層は、前記基材に前記遮光性ナノ粒子を保持する定着層を含む。定着層によれば、遮光性ナノ粒子の基材に対する付着性を向上できる。
【0011】
本開示の一態様において、前記定着層は、前記照光表示部の照光表示に照光色を付与する第1の有色層である。この定着層によれば、遮光性ナノ粒子を担持する機能と、照光色を付与する機能とを併せ持つことができる。
【0012】
本開示の一態様において、前記着色層は、前記遮光層から漏れ出る光を遮光する遮光性を有する。遮光層は、遮光性ナノ粒子を含有する乾燥塗膜により形成されており、遮光性ナノ粒子どうしの間に形成される隙間を通じて、遮光層の外部に光が漏れ出ることがある。つまり、遮光層や遮光性ナノ粒子は、完全なる遮光だけでなく、完全には遮光できないものを含む。前記着色層によれば、遮光層から漏れ出た光が着色層を透過して外部に光漏れすることを防ぐことができる。
【0013】
本開示の一態様において、前記着色層は、前記遮光層を覆う単層又は積層された複合層である。着色層を単層とする構成によれば、単層とした場合、製造工数とコストを低減できる。着色層を複合層とする構成によれば、層ごとに異なる機能的特徴(色、物性等)を付与できる。
【0014】
複合層の具体例を例示列挙すると、着色層を遮光層側から順に第1の層、第2の層とした場合、第1の層を黒色の有色層とし、第2の層を耐引っかき性、耐衝撃性、耐候性等に優れる無色透明の保護層として構成し得る。この場合、第1の層である黒色は、照光表示部の隠蔽色、照光加飾部材の外観色として機能し得る。また、第1の層は照光表示部の凹部を埋める透光性の目地埋め層とし、第2の層は照光表示部の隠蔽色、照光加飾部材の外観色を呈する有色層等として構成し得る。複合層は、2層以上の複数の層により構成し得る。
【0015】
本開示の一態様において、前記複合層は、少なくとも1つの第2の有色層を含む。この複合層によれば、第2の有色層を照光表示部の隠蔽色、照光加飾部材の外観色等として構成し得る。
【0016】
本開示の一態様において、前記第2の有色層は、前記照光表示部が照光表示される照光色を付与する色彩を有する。この第2の有色層によれば、照光表示部の照光表示として使用する色を、第2の有色層として選択する色によって自由に設定することができる。
【0017】
本開示の一態様において、前記乾燥塗膜は、膜厚が5μm未満である。この乾燥塗膜によれば、遮光層の膜厚が薄いため、照光表示部が凹部であることにより着色層の上面(外観面)に発生し得る段差を、無くすことができるか、または人目で外観を視認することによっては気づかない程度の高さにまで低くすることが可能となる。
【0018】
本開示の一態様は、前記何れかの照光加飾部材と、前記照光加飾部材へのタッチ操作を検知するタッチセンサ用のセンサシートとを備える入力装置である。これによれば、非照光時の照光表示部の隠蔽効果が高いブラックアウト加飾を備える入力装置を実現できる。
【0019】
本開示の一態様は、前記入力装置を備える機器である。これによれば、非照光時の照光表示部の隠蔽効果が高いブラックアウト加飾を有する入力装置を備える機器を実現できる。
【0020】
本開示の一態様は、前記何れかの照光加飾部材を外装部材として備える機器である。これによれば、非照光時の照光表示部の隠蔽効果が高いブラックアウト加飾を有する機器を実現できる。
【0021】
本開示の一態様による照光加飾部材、入力装置、機器は、一例として、家電用、産業用、車載用、遊戯用、家庭用等の各種の電気機器における外観の加飾部分又は当該電気機器における入力操作部に使用し得る。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、新たなブラックアウト加飾を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本開示の一態様を例示する実施形態に基づき明瞭に説明するため、その説明に必要な図面を簡単に説明する。図面は、実施形態を例示するものにすぎず、本開示の実施形態の範囲を限定するためのものではない。当業者は、特段の発明能力を用いることなく、本開示の図面に基づいて他の関連する実施形態の図面を得ることができる。また、図面は実施形態の理解を容易にするために簡略に記載するものであり、実施例の大きさを反映するものではなく、また複数の図面に記載された同一の要素の寸法は必ずしも一致するように記載していない。
【0024】
図1】一実施形態による照光加飾部材の外観斜視図。
図2図1BのII-II線に沿う要部断面図。
図3】一実施形態による照光加飾部材の製造方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示にて例示する一態様について、各種の実施形態に基づき、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
本開示に含む全ての実施形態及び選択可能な実施形態は、互いに組み合わせて新たな実施形態を形成してもよい。また、本開示に含む全ての技術的特徴及び選択可能な技術的特徴は、互いに組合わせることにより新たな技術的特徴を形成できる。
【0027】
本開示で使用する用語「又は」は包括的な用語として使用される。例えば、「A又はB」は「A、B、又はAとBの両方」を意味する。「A」、「B」、「AとBの両方」は、いずれもそれぞれが「A又はB」を満たす。
【0028】
本開示の説明において、明確な定義や限定がない限り、「取付」、「連結」、「接続」、「固定」などの用語は、広義に理解される。例えば、固定接続、取外し可能な接続、一体的な接続は、いずれもそれらの用語に含まれ得る。また、直接的な接続、中間物が介在する間接的な接続も、それらの用語に含まれ得る。これと同様に、明確な定義や限定がない限り、「積層する」、「被覆する」、「覆う」、「重なる」などの用語は、広義に理解される。例えば、それらの用語は、対象物どうしが直接接触して積層等する形態、対象物どうしの間に中間物が介在して積層等する形態の何れもが、それらの用語に含まれ得る。当業者は、本開示での上記用語の具体的な意味を、具体的な状況に応じて理解することができる。
【0029】
本開示において「第1」、「第2」および「第n」(nは整数)と記載する場合、それらは、異なる構成要素を区別するために用いるものであり、特定の順序や優劣等を示すために用いるものではない。また、各実施形態で共通する構成で同一の効果を奏するものについては、同一符号を付して重複説明を省略する。
【0030】
本開示の実施形態の説明において、「中心」、「縦方向」、「横方向」、「長さ」、「幅」、「厚さ」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「鉛直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「時計回り」、「反時計回り」、「軸方向」、「径方向」、「周方向」等の用語及びそれらの用語を含む用語で表された方向又は位置関係は、図面に基づくものであり、実施形態を便宜的に及び簡略に説明するためのものにすぎない。したがって、明確な定義や限定がない限り、特定の構造要素やその使用が、必ずしも特定の方向を有したり、特定の方向に構成されることを明示又は暗示するものではなく、特許請求の範囲及び実施形態を限定するものではないと理解すべきである。
【0031】
本開示において「約」、「およそ」、「略(ほぼ)」、「実質的に」との用語を使用する場合、それらの用語が修飾する数値、構造要素については、その数値とその数値を中心とする前後の数値を含み得るものとして、またその構造要素及びその構造要素と同視できるものを含み得るものとして理解される。例えば「約3」、「約0.1」と記載する場合、本開示で主張する技術的特徴、技術的意義を有する限り、「3」とそれに連続する数値(例えば2、4等)も「約3」に含み得る。また、「約0.10」とそれに連続する数値(例えば0.09、0.11等)も「約0.10」に含み得る。また、「Aと実質的に同一のB」という場合、BがAと完全同一である場合のほか、本開示で主張する技術的特徴、技術的意義を有する限り、Bが相違点を有していても「実質的」の範囲に含み得る。
【0032】
本開示に含む「範囲」に関する記載は、下限(値)及び上限(値)の形式で限定される。また、「所定範囲」は、特定の範囲の境界を画定する1つの下限(値)と1つの上限(値)とを選定して限定される。このように限定される「範囲」は、下限又は上限としての端値を含んでも含まなくてもよく、任意に組み合わせてもよい。即ち、任意の下限と任意の上限とを組み合わせて1つの範囲を形成してよい。
【0033】
理解を容易にする例示として、あるパラメータAに対して5~11と8~10の範囲が列挙された場合、5~10と8~11の範囲も含まれる。理解を容易にするための例示として、列挙された最小範囲値が10と20で、かつ最大範囲値が30と40と50である場合、10~30、10~40、10~50、20~30、20~40、20~50の各範囲は、すべて把握し得るものである。
【0034】
本開示において、別段の記載がない限り、数値範囲「x~y」は、xないしyの間のすべての実数の組み合わせを含み得るようにするための簡略表現である。ここでx、yはいずれも実数である。理解を容易にするための例示として、数値範囲「1~3」は、本開示において「1~3」の間の全ての実数が列挙されていることを意味しており、「1~3」はそれらの数値の組み合わせの簡略表現である。
【0035】
また、パラメータAについてA≧3の整数であると記載する場合、そのパラメータAは、例えば、整数3、4、5、6、7、8、9、10などであることを実質的に開示している。
【0036】
照光加飾部材1の説明
【0037】
照光加飾部材1は、各種機器の外観部材として使用される。照光加飾部材1の裏面に機器の内部光源からの光を照らすと、照光前に視認できなかった加飾要素(文字、記号、図形、模様等)が、照光を伴って表示されて、加飾要素が視認可能になる(ブラックアウト加飾)。より具体的には、照光加飾部材1は、非照光時は表面が外観色を呈しており、加飾要素を視認することはできない。そして、照光時は、表面の外観色の中に、加飾要素が照光を伴って浮かび上がるようにして表示される。
【0038】
従来の照光加飾部材は、背景技術で説明したように、着色層が照光表示部をなす凹部に入り込むようにして積層される。このため着色層には、その凹部の輪郭に沿うような段差が発生し、非照光時にその段差(その段差により生じる影を含む。)によって照光表示部を判別できる程度に視認できてしまうため、非照光時に隠蔽効果の高いブラックアウト加飾を実現できない。前述のように本出願人は、非照光時の段差を見え難くする技術を、既に提案している(前掲、特許文献1)。
【0039】
非照光時の段差を隠蔽する方法としては、例えば、段差が消える程度にまで着色層の層厚を十分に厚く形成することが考えられる。しかしながら、着色層を厚く形成すればするほど、照光表示部の凹部から着色層の表面までの距離が長くなるため、照光表示部での照光表示がぼやけてしまい、鮮明な照光表示を損ねてしまうおそれがある。
【0040】
また、本出願人が提案した前述の照光加飾部材は、遮光層としてめっき層を使用する。このため、照光加飾部材をタッチパネルの外観部材として使用しようとしても、導電性のめっき層が静電容量の検出を阻害することから、タッチパネルの外装部材(化粧部材、外観部材)として使用することができず、用途が照光加飾のみに限定されてしまう。
【0041】
遮光層としてめっき層を使用しない場合には、遮光機能の代替手段が必要となる。この場合、例えば、遮光性の高い黒色顔料を含む着色層によって遮光層を形成することが考えられる。しかしながら、黒色顔料を含む遮光層で遮光する場合には、遮光層の層厚を相当厚く形成しなければならない。そうすると、遮光層を除去して形成する凹部の高さ(遮光層の層厚に対応する高さ)が高くなってしまい、そこに入り込んで積層される着色層に生じる段差もまた大きくなって、非照光時に隠蔽効果の高いブラックアウト加飾を実現できない。さらに、段差が消える程度に遮光層の層厚を厚くすると、前述のように鮮明な照光表示を損ねるおそれがある。
【0042】
以下、本実施形態を説明する。しかしながら、以下の説明は、特許請求の範囲の記載を限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが、本開示で例示する解決手段として必須であるとは限らない。したがって、本開示の一態様による他の実施形態では、前述の既存の照光加飾部材の課題をすべて解決するものではないものとして、構成することもできる。
【0043】
照光加飾部材1の全体構成
【0044】
照光加飾部材1は、図1Aで示すように、非照光時には、外観上、照光表示部を視認することができない。そして、図1Bで示すように、照光加飾部材1の裏面2から光源(内部光源)からの光に照らされると、外観面となる表面3に照光表示部4が視認可能に照光表示される。
【0045】
図1Bでは、照光表示部4として英文字「A」を例示している。しかしながら、照光表示部4は、文字、記号、線図、模様又はそれらの任意の組み合わせなど、任意の照光表示として構成することができる。また、照光表示部4は、1又は複数設けることができ、その大きさは任意である。さらに、図1Bでは、非照光時に視認可能な照光表示部が無い照光加飾部材1を例示している。しかしながら、非照光時に視認可能な1又は複数の照光表示部を設けてもよい。
【0046】
照光加飾部材1は、図2で示すように、基材5と、定着層6と、遮光層7と、着色層8とを備える。
【0047】
基材5の構成
【0048】
基材5は、透光性の樹脂よりなる平板状の樹脂部材又は樹脂フィルムを使用することができる。基材5の材料としては、PC/ABS(ポリカーボネート/アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂材料を用いることができる。基材5は無色透明のものの他、有色透明や、乳白色等、透光性を有するものであれば色彩を有するものであってもよい。基材5となる樹脂板又は樹脂フィルムは、変形不能な硬質樹脂でも、変形可能な柔軟性を有する軟質樹脂であってもよい。
【0049】
基材5は、その形状を問わない。基材5は、例えば、図1で示す平板形状、湾曲形状又は平板形状と湾曲形状との組み合わせ、さらに立体形状であってもよい。様々な形状の基材5を使用可能とすることで、多様な機器に使用できる照光表示を行うことが可能となる。
【0050】
基材5となる樹脂部材は、具体的には、照光表示をする機器の外装部品又は内蔵部品として用いられる樹脂成形体となり得る。基材5となる樹脂フィルムは、照光表示をする機器の外装部品又は内蔵部品として用いられる樹脂フィルムとなり得る。このように基材5を機器の外装部品又は内蔵部品として用いることにより、照光加飾部材1は、機器の外装部品又は内蔵部品として用いることができる。この場合、機器は、民生電気機器、車載用装備、建築電気機器、産業用電気機器などを例示することができるが、それらに限定されず、照光表示を有する照光表示機器とすることができる。
【0051】
定着層6の構成
【0052】
定着層6は、基材5を覆う層である。定着層6は、基材5に対する遮光層7の固着力を高める機能を有する。遮光層7は、遮光性ナノ粒子を含有する乾燥塗膜により形成されており、基材5に対する固着力が乏しい。本発明者が銀ナノ粒子を含有する塗料をスプレーで基材5に直接吹付けて、膜厚が約5μmの遮光層7を形成したところ、その遮光層7は指で軽く触る程度で容易に基材5から剥離し得るほどに固着力に乏しい。定着層6は、そのような遮光層7を基材5に保持する機能を有する。
【0053】
定着層6の厚さ(Z方向)は、7μm以上20μm以下とすることができる。定着層6の厚さが7μm未満であると、遮光層7を基材5に対して保持する固着力が低下する。一方、定着層6の厚さが20μmを超えると、定着層6の一部に塗膜の厚い溜まり部分が発生したり、気泡が発生したりするおそれがある。それにより照光加飾部材1の外観は悪化してしまう。
【0054】
定着層6は、プライマー層であり、樹脂材である基材5に対する遮光層7の固着力を高めることができるものであれば、どのような組成のものでもよい。定着層6は、無色透明、有色透明、無色半透明、有色半透明又は有色とすることができる。このうち、有色透明、有色半透明又は有色とする場合、つまり有色の定着層6とする場合には、照光表示部4からの照光表示に照光色を付与することができる。このような定着層6は「第1の有色層」を構成する。
【0055】
定着層6は、含有する顔料によって調色することができ、それにより照光表示部4の照光色を変えることができる。これは、例えば、照光加飾部材1に複数の照光表示部4を設け、照光表示部4をごとに異なる照光色で照光させる構成とする場合に、特に有用である。この場合、機器の内部に備えるLED等の光源Lは1つで良く、1つの光源でそれぞれの照光表示部4を異なる照光色で照光することができる。
【0056】
一つの例示として、定着層6は、黒色又はその他の暗色(本開示で「暗色」という。)とすることができる。定着層6を暗色とすることで、遮光層7に到達する光量を低減できるため、照光加飾部材1の照光表示部4以外の部位(非照光部9)からの光漏れをより確実に低減することができる。暗色の定着層6により光量を低減する目的は、非照光部9での光漏れが起き難くするための補助的な光量調整である。つまり、光源からの照光輝度が高い場合に、照光を暗色の定着層6で少し弱めて遮光層7に届く光量を調整することにある。そもそも黒色顔料を含有する単層塗膜では完全な遮光は不可能であり、逆に定着層6による遮光性が高いと照光表示部4での照光表示が光量不足となってしまうのである。
【0057】
遮光層7の構成
【0058】
遮光層7は、定着層6の表面を覆う層である。遮光層7は、照光表示部4を有する。照光表示部4は、その照光表示の形状に対応する乾燥塗膜を除去した凹部として形成されている。遮光層7は、非照光部9について、光源Lからの光を遮光する機能を有する。遮光層7は、遮光性ナノ粒子を含有する乾燥塗膜により形成されている。
【0059】
遮光層7の膜厚は、約5μm未満、より好ましくは約1μm以下、さらに好ましくは約0.5μm以下とすることができる。膜厚が約5μm以上であると、後述する着色層8を積層した状態で、照光表示部4を形成する凹部に着色層8が入り込み、着色層8の表面に照光表示部4の全部又は一部の形状に対応する段差が発生するおそれがある。そうすると、非照光時に隠蔽性の高い照光表示部4を得られない。本発明者の知見によれば、膜厚約5μm未満の遮光層7であれば、そのような段差の発生を回避し得ることを試作により確認している。また、膜厚が約1μm以下、さらに約0.5μm以下であれば、照光表示部4を形成する凹部における段差を充分に低くすることができるため、前述した着色層8での段差の発生を、より確実に回避することができる。
【0060】
膜厚の数値に付した「約」は、その前後の数値を含み得ることを意味する。例えば、乾燥塗膜の膜厚0.5μmで遮光層7を形成する場合でも、製造装置や使用する塗料に応じて変動し得る公差の違いや、遮光層7を形成する基材5の形状によって膜厚がばらつくことがあるため、事実上0.5μmの均一な膜厚を形成することは不可能であって、それを平均値として記載することも難しい。膜厚の数値に付した「約」は、前述した各数値の技術的意義を奏し得る限り、当該数値による本発明の技術的範囲に属することを示すものである。前述の基材5の形状によって膜厚がばらつく場合としては、例えば、立体形状の基材5に形成した角部、曲率半径の小さい屈曲部等がある。前者では塗料溜まりが発生して膜厚が設計値よりも厚くなり得て、後者では屈曲面によって塗料が僅かに流れて膜厚が設計値よりも薄くなり得る。
【0061】
遮光性ナノ粒子は、遮光層7に遮光性を付与する。遮光性ナノ粒子としては、光輝性粒子、白色系粒子、暗色系粒子などのように、遮光層7の光の透過を防ぐように光を反射したり、光の反射を低減したりする光学的特性を有する表面を有するものが使用される。
【0062】
具体的な遮光性ナノ粒子の物質としては、錫、銅、銀、金、鉄、プラチナ、亜鉛、アルミニウム、アンチモン、インジウム、ケイ素、ジルコニア、マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属、それらの金属を含む合金、又は金属酸化物などを例示列挙できるが、これらに限定されない。また、遮光性ナノ粒子の物質としては、カーボン材料、具体的にはアセチレンブラック、カーボンナノファイバー、ブラックパール(登録商標)、バルカン(登録商標)、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、フラーレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むものを例示できるが、それらに限定されない。それらの遮光性ナノ粒子の粒子形状は、球状、鱗片状、棒状、不定形状等、特に制限はない。
【0063】
遮光性ナノ粒子の大きさは、ナノメートル(nm)オーダー(以下、ナノオーダーという。)の大きさのものを選択し得る。遮光層7に含有する粒子がマイクロメートル(μm)オーダー(以下、μmオーダーという。)だと、遮光層7の層厚に対して粒径のサイズが大きすぎてしまい、小さなナノメートルオーダーの粒子が集合することによる遮光性と比較すると、遮光性が低下してしまう。通常は、遮光性ナノ粒子の材料カタログに記載された大きさのカタログ値でナノオーダーのものであればよい。球状であれば直径が、鱗片状、棒状、不定形状であれば、長手方向に沿う長さがナノオーダーの大きさであればよいが、これらに限定されない。ナノオーダーとは、μmに到達しないサイズであることを意味する。例えば球状のアルミナノ粒子800nmのもの、球状の銀ナノ粒子だと50~80nmのものを例示できるが、これらに限定されない。即ち、遮光性ナノ粒子は、ナノオーダーの大きさであって、遮光性を発揮することができ、遮光層7として非照光時の照光表示部4の隠蔽効果を奏することができればよい。また、そうした隠蔽効果を奏することができれば、遮光性ナノ粒子の一部として不可避的にμmオーダーの粒子が含まれていてもよい。
【0064】
遮光性ナノ粒子の添加量は、遮光性を発揮できる量であれば特に制限はなく、一般的には遮光層7を形成する液状塗料の全質量100質量%に対して5~80質量%とすることができる。
【0065】
遮光性ナノ粒子は、遮光層7に遮光性を付与する。遮光性ナノ粒子は、遮光層7を形成する乾燥塗膜に不連続遮光膜を形成する。不連続遮光膜とは、例えばアルミ蒸着のめっき層のように物質として一連一体の金属膜が生成されることとの違いを説明するための用語である。乾燥塗膜中の遮光性ナノ粒子は、遮光性ナノ粒子どうしが膜厚方向(Z方向)で重なり合い、又は遮光性ナノ粒子どうしが膜面方向(X方向、Y方向)で隣接し合うことで、不連続遮光膜が形成される。したがって、遮光性ナノ粒子どうしの間には、膜厚方向又は膜面方向で不規則に不定形な粒子間隙が生じ得る。この粒子間隙は、光源からの光が遮光層7を透過する光路となり得る。したがって、遮光性ナノ粒子の添加量は、添加する遮光性ナノ粒子の材料や形状に応じて異なり、遮光層7から光が透過せずに遮光性を発揮できる量ということになる。
【0066】
遮光層7の遮光性は、着色層8の側への光漏れを完全に遮断できることが好ましいが、完全に遮断できなくてもよい。すなわち、遮光層7での遮光性が不完全であっても、遮光層7を覆う着色層8によって遮光層7を透過した光を遮光できれば良い。よって、遮光層7による「遮光」とは、完全な遮光だけでなく、不完全な遮光をも含む用語である。
【0067】
遮光層7は、図2で示すように、照光表示部4を形成する凹部4aを有する。図1Bでは英文字「A」の形状で乾燥塗膜が除去された凹部4aが形成されている。凹部4aは、レーザー加工によって遮光層7の乾燥塗膜を除去することにより形成される。凹部4aを形成する縁は、レーザー光の照射痕として形成されている。
【0068】
使用するレーザー波長としては、例えば1100nm以下のファイバレーザーなどを使用できる。レーザー光は、遮光層7の遮光性ナノ粒子に反応してこれを除去することにより、乾燥塗膜を除去する。この乾燥塗膜の除去では、遮光層7の下の定着層6を除去しない。定着層6まで除去すると、照光表示部4を形成する凹部4aの高さが、遮光層7の膜厚と定着層6の膜厚とを含むことになり、非照光時の照光表示部4の隠蔽効果を阻害する段差が形成されやすくなるからである。但し、使用するレーザー光の波長、出力パワー又は加工スピードにもよるが、レーザー光で遮光層7を除去する際に不可避的に定着層6にダメージを与えてしまうことは起こり得ることであるが、このような場合でも前述の段差が生じなければよい。したがって、凹部4aは、遮光層7の膜厚の高さだけで形成されない場合もあり得る。これとは逆に、照光表示部4の内部に部分的に遮光層7の乾燥塗膜を除去し切れていない部分が生じることもあり得る。
【0069】
着色層8の構成
【0070】
着色層8は、凹部4aを含む遮光層7の上面7aを覆う層である。上面7aは、照光表示部4の輪郭に沿った段差を視認不可能な平坦面として形成されており、非照光時に照光表示部4が目視によって視認できない構成となっている。
【0071】
着色層8は、照光加飾部材1の外観色となり、遮光層7の照光表示部4を隠蔽する。着色層8の色は、膜厚方向(Z方向)で照光表示部4と重なる位置においては、照光表示部4の照光色を付与する要素となる。照光表示部4の照光色は、光源Lの色に応じて、前述の定着層6の色と、着色層8の色のうちの1つ又はそれらの組合せにより構成することができる。
【0072】
着色層8は、選択する色に応じて遮光性を付与することができる。この場合、着色層8は、例えば、暗色とすることができる。前述のように遮光層7は、遮光性ナノ粒子どうしの微小な隙間を通じて光源Lの光を透過することがあるため、単層での完全な遮光は難しい。そこで着色層8を暗色として遮光性を付与することにより、遮光層7を透過する光が照光加飾部材1の非照光部9から外部に漏れ出ないようにできる。ここでいう着色層8の遮光性とは、あくまで遮光層7の遮光性を補完するための補助的なものであり、着色層8自体が高い遮光性を持つことを意味するものではない。着色層8の遮光性が高くなればなるほど、照光表示部4での照光表示が暗くなってしまい、鮮明な照光表示が得られないおそれがあるからである。
【0073】
また、着色層8に前述の遮光性を付与するために、前述した光輝性粒子を含む乾燥塗膜(メタリック層)により構成することもできる。着色層8が光輝性粒子を含有することで、遮光層7を透過した光を遮光層7に向けて反射させることができ、それにより非照光部9での光漏れを抑制することができる。他方、照光加飾部材1の外観を光沢色とすることができ、高級感を高めることができる。
【0074】
以上は着色層8に補助的な遮光性を付与することを重視する構成であるが、暗色系塗料や光輝性粒子を含む塗料以外の色の塗料を使用してもよい。この場合、照光加飾部材1の外観デザインに応じて、その全部又は一部について異なる色としても良い。さらに、ブラックアウト加飾を実現することができる限り、即ち非照光時に照光表示部4を隠蔽できる限り、照光加飾部材1の全部又は一部が間接照明のように照光するようなデザインとなるように、着色層8(着色層8と定着層6と遮光層7)を構成してもよい。
【0075】
着色層8の膜厚は、約5μm以上約30μm以下とすることができる。着色層8の厚さが約5μm未満であると塗装としての機能が不十分となり、肌目等が悪化するおそれがある。また着色層8の厚さが約30μmを超えると照光加飾部材1の外観が悪化したり、透光性が劣化するおそれがある。「約」の意味は、遮光層7の膜厚で説明したのと同じである。
【0076】
着色層8は、単層又は複合層として形成することができる。複合層は2以上の層を積層して形成される。具体的には、2層構成とする場合、例えば、遮光層7に積層する第1の層と、第1の層に積層する第2の層とすることができる。第1の層と第2の層は、異なる色又は特性を有するものとして構成できる。
【0077】
例えば、第1の層は透明層とし、第2の層は外観色となる有色層(本発明における「第2の有色層」)とすることができる。例えば、基材5が無色透明の場合、第1の層を有色透明層(例えば、白色透明層)とすることにより、光源Lの光を拡散することで照光表示部4の視認性を向上することができる。また、外観色となる第2の有色層に含まれる複数の顔料のうち特定の顔料(一例として、マゼンダ顔料)による照光表示の色味を調整したい場合(照光表示で見える特定の顔料を弱めたり強めたりして調整したい場合)に、第1の層の透明層をその反対色の顔料(一例として、シアン顔料)を含む有色透明層とすることで、照光表示の色味補正が可能となる。
【0078】
また、第1の層は外観色となる有色層(本発明における「第2の有色層」)とし、第2の層は透明層とすることができる。この場合には、外観側に位置する透明層(第2の層)により奥行き感のある照光表示とすることができる。これらの第1の層と第2の層の組み合わせは例示であり、積層のバリエーションはそれらに限定されず、三層以上の構成としてもよい。また、複合層とする場合の着色層8の膜厚は、複合層全体として5μm以上30μm以下とすることができる。
【0079】
製造方法の説明〔図3
【0080】
照光加飾部材1の製造方法の例について説明する。照光加飾部材1は、塗装とレーザー加工の2つの工程で行われる。
【0081】
図3Aで示すように、先ず、治具100に基材5をセットする。基材5は、治具100が有する凹形状の載置部101にセットされる。治具100は、塗装台200に皿ねじ300により固定される。基材5の表面に定着層6と遮光層7とを、その順序で塗装して形成する。定着層6は、スプレー塗装により形成することができるが、これに限定されない。なお、後述する着色層8を含めて、本開示にいう「塗装」はスプレー塗装や刷毛塗等による塗工だけでなく「印刷」を含み、例えばインクジェットプリンタによる印刷、シルクスクリーン印刷、パッド印刷等も利用し得る。
【0082】
次に、図3Bで示すように、治具100を塗装台200から外してレーザー加工機の加工テーブル400に皿ねじ300で固定する。そして遮光層7の照光表示部4を除去するレーザー加工を行う。これにより図3Cで示すように、照光表示部4に対応する凹部4aが形成される。
【0083】
続けて、治具100を加工テーブル400から外して塗装台200に皿ねじ300で固定する。そして、図3Dで示すように、遮光層7の上に着色層8を塗装して形成する。このようにして照光加飾部材1を製造することができる。
【0084】
以上の製造方法では、治具100を塗装工程とレーザー加工工程とで共用する。つまり治具100から加工対象物である基材5を一度も取外すことなく照光加飾部材1を製造することができる。したがって、塗装工程とレーザー加工工程との間で工程を跨いで異なる加工をしても、加工対象物としての基材5に対する位置精度を担保することができ、高品質な照光加飾部材1を得ることができる。また、治具100を皿ねじ300を使って塗装台200と加工テーブル400に固定するので、皿ねじ300の頭部のテーパーにより、治具100が所定位置に誘導されることで、治具100に対する位置精度も担保することができ、前述した基材5に対する位置精度を高めることに寄与することができる。
【0085】
照光加飾部材1の効果
【0086】
照光加飾部材1の効果を例示列挙して説明するが、それらに限定されない。
【0087】
照光加飾部材1は、透光性の基材5と、基材5の第1の面を覆う遮光層7と、遮光層7を覆う着色層8とを備える。遮光層7は、遮光性ナノ粒子を含有する乾燥塗膜と、乾燥塗膜を除去した凹部4aにより形成した照光表示部4とを有する。着色層8は、凹部4aを含むように遮光層7を覆う平坦面として形成されている。
【0088】
このため、照光表示部4は、非照光時には着色層8により視認不能として隠蔽され、照光時には着色層8を通じて視認可能に照光表示される。このため、非照光時における照光表示部4の隠蔽効果の高いブラックアウト加飾を実現することができる。
【0089】
着色層8の「平坦面」は、非照光時に凹部4aの段差が視認できない程度の平坦さを有する面であればよいという趣旨である。凹部4aに着色層8が入り込むことにより、照光表示部4の全部又は一部の形状に対応して段差が生じるとしても、それが非照光時に段差として視認できない程度の僅かなものであれば、それは実質的に前述の「平坦面」に含まれる。
【0090】
遮光層7は遮光性ナノ粒子を含有する乾燥塗膜で形成されている。このため、照光加飾部材1は、静電容量方式のタッチセンサ用のセンサシートと組み合わせることにより、入力装置の外装部品又は内蔵部品として使用することができる。したがって、非照光時における照光表示部4の隠蔽効果の高いブラックアウト加飾を有するタッチセンサ装置(入力装置)を実現することができる。
【0091】
遮光層7は、基材5に遮光性ナノ粒子を保持する定着層6を含む。定着層6によれば、遮光性ナノ粒子の基材に対する付着性を向上できる。
【0092】
定着層6は、照光表示部4の照光表示に照光色を付与する第1の有色層とすることができる。この定着層6によれば、遮光性ナノ粒子を担持する機能と、照光色を付与する機能とを併せ持つことができる。
【0093】
着色層8は、遮光層7から漏れ出る光を遮光する遮光性を有する。遮光層7は、遮光性ナノ粒子を含有する乾燥塗膜により形成されており、遮光性ナノ粒子どうしの間に形成される隙間を通じて、遮光層7の外部に光が漏れ出ることがある。着色層8によれば、遮光層7から漏れ出た光が着色層8を透過して、非照光部9から外部に光漏れするのを防止できる。
【0094】
着色層8は、遮光層7を覆う単層又は積層された複合層である。着色層8を単層とする構成によれば、単層とした場合、製造工数とコストを低減できる。着色層8を複合層とする構成によれば、層ごとに異なる機能的特徴(色、物性等)を付与できる。
【0095】
着色層8としての複合層は、少なくとも1つの第2の有色層を含む。この複合層によれば、第2の有色層を照光表示部4の隠蔽色、照光加飾部材1の外観色等として構成し得る。
【0096】
着色層8の第2の有色層は、照光表示部4が照光表示される照光色を付与する色彩を有する。この第2の有色層によれば、照光表示部4の照光表示として使用する色を、第2の有色層として選択する色によって自由に設定することができる。
【0097】
遮光層7の乾燥塗膜は、膜厚が5μm未満である。この乾燥塗膜によれば、遮光層7の膜厚が薄いため、照光表示部4が凹部4aであることにより着色層8の上面(外観面)に発生し得る段差を、無くすことができるか、または人目で外観を視認することによっては気づかない程度の高さにまで低くすることが可能となる。
【0098】
変形例
【0099】
前記実施形態では、基材5の上面5a(第1の面、外観側の面)に、定着層6と、遮光層7と、着色層8とを順に積層して設ける構成を例示したが、第1の変形例として、基材5の上面5aに着色層8を設け、基材5の下面5b(第2の面、光源側の面)に定着層6と遮光層7とを順に積層して設けることもできる。即ち、着色層8は遮光層7を覆うものであるが、基材5を介して間接的に覆うものも含み得る。この場合の遮光層7には、さらにそれを光源側で覆う保護層を設けることができる。
【0100】
第2の変形例として、基材5の下面5bに着色層8と、定着層6と、遮光層7とを順に積層して設けることもできる。
【0101】
但し、いずれも基材5の下面5bに遮光層7を設ける第1、第2の変形例では、遮光層7の照光表示部4を透過する光が、基材5に進入して拡散することにより、前記実施形態と比較すると、鮮明な照光表示を得にくくなる。逆を言えば、前記実施形態は、基材5の上面5aに遮光層7を設けるので、基材5を透過した光が照光表示部4を透過するので、第1の変形例と比較すると、より鮮明な照光表示を得ることができる。
【0102】
また、第1の変形例では、基材5の両面に層形成する加工が必要となるため、一方側のみの加工でよい前記実施形態と比較すると、工数と層数が多くなり製造の労力の面とコスト面で劣ってしまう。逆を言えば、前記実施形態は、基材5の片面だけに層形成する加工を行うため、第1の変形例と比較して、より容易に製造でき、コスト面でも有利である。
【0103】
さらに、第2の変形例では、基材5の下面5bにのみ層形成するものであるが、基材5の上面5aに層形成する前記実施形態と比較すると、照光表示部4を透過した光が基材5の厚みを透過するので、照光表示がぼやけるおそれがある。逆を言えば、前記実施形態は、基材5の上面5aにのみ層形成するため、第2の変形例と比較すると、照光表示部4が視認者側により近く位置することから、より鮮明な照光表示を得ることができる。
【0104】
入力装置の説明
【0105】
照光加飾部材1は、照光加飾部材1へのタッチ操作を検知する静電容量式のタッチセンサ用のセンサシートを備えることで、入力装置として構成することができる。この入力装置は、例えば照光加飾部材1の裏面2にセンサシートを取付けることができる。これによれば照光加飾部材1による優れたブラックアウト加飾を有する入力装置を実現することができる。
【0106】
機器の説明
【0107】
照光加飾部材1又は入力装置は、様々な機器に搭載することができる。機器としては、民生電気機器、車載機器、建築電気機器、産業用電気機器などを例示することができるが、それらに限定されず、照光表示を有する照光表示機器とすることができる。
【符号の説明】
【0108】
1 照光加飾部材
2 裏面
3 表面
4 照光表示部
4a 凹部
5 基材
5a 上面(第1の面)
5b 下面(第2の面)
6 定着層
7 遮光層
7a 上面
8 着色層
9 非照光部
100 治具
101 載置部
200 塗装台
300 皿ねじ
400 加工テーブル
L 光源
図1
図2
図3