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特許7546957加熱装置、ガス処理装置及び金属回収システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】加熱装置、ガス処理装置及び金属回収システム
(51)【国際特許分類】
   F27D 17/00 20060101AFI20240902BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20240902BHJP
   F27D 3/10 20060101ALI20240902BHJP
   F27B 7/00 20060101ALI20240902BHJP
   F27D 7/02 20060101ALI20240902BHJP
   F27D 7/06 20060101ALI20240902BHJP
   F23G 7/06 20060101ALI20240902BHJP
   F23J 15/06 20060101ALI20240902BHJP
   F23J 15/08 20060101ALI20240902BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20240902BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20240902BHJP
   F27B 7/06 20060101ALN20240902BHJP
   F27D 11/02 20060101ALN20240902BHJP
【FI】
F27D17/00 105A
F27D21/00 A
F27D17/00 104D
F27D3/10
F27B7/00
F27D7/02
F27D7/06 B
F23G7/06 B
F23J15/06
F23J15/08
F23J15/00 Z
B01D46/00 D
F27B7/06
F27D11/02 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023010081
(22)【出願日】2023-01-26
(65)【公開番号】P2024106028
(43)【公開日】2024-08-07
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000217583
【氏名又は名称】株式会社タナベ
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】六町 謙三
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 陽
(72)【発明者】
【氏名】河南 省平
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-011924(JP,A)
【文献】特開2017-112078(JP,A)
【文献】特開2001-009411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 7/00-15/02
B09B 1/00- 5/00
F23G 5/20- 5/22
F27B 5/00- 7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属含有物中の金属を回収するにあたり当該金属含有物を加熱する加熱装置において、
金属含有物を加熱する加熱炉と、
前記加熱炉に過熱蒸気又は不活性気体を供給する供給手段と、
前記加熱炉内のガスを当該加熱炉外に排出する大気開放されたガス排出部を備え、
前記ガス排出部が大気開放されることによって、前記加熱炉の内部が常圧又は正圧に保持され、
前記加熱炉の下流側に、当該加熱炉を通過した金属含有物を当該加熱炉外に排出する排出側二段ダンパが設けられた、
ことを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
金属含有物中の金属を回収するにあたり当該金属含有物を加熱する加熱装置において、
金属含有物を加熱する加熱炉と、
前記加熱炉に過熱蒸気又は不活性気体を供給する供給手段と、
前記加熱炉内のガスを当該加熱炉外に排出する大気開放されたガス排出部を備え、
前記ガス排出部が大気開放されることによって、前記加熱炉の内部が常圧又は正圧に保持され、
前記加熱炉の上流側に、当該加熱炉内に金属含有物を投入する投入側二段ダンパが設けられた、
ことを特徴とする加熱装置。
【請求項3】
金属含有物中の金属を回収するにあたり当該金属含有物を加熱する加熱装置と共に使用されるガス処理装置であって、
前記加熱装置は、金属含有物を加熱する加熱炉と、前記加熱炉に過熱蒸気又は不活性気体を供給する供給手段と、前記加熱炉内のガスを当該加熱炉外に排出する大気開放されたガス排出部を備え、
前記ガス排出部が大気開放されることによって、前記加熱炉の内部が常圧又は正圧に保持され、
前記加熱装置の大気開放されたガス排出部の排出方向先方に配置され、当該ガス排出部から排出されたガスを吸引する吸引手段と、
前記吸引手段と接続され、当該吸引手段で吸引されたガス中の粒子を回収する集塵手段を備えた、
ことを特徴とするガス処理装置。
【請求項4】
金属含有物中の金属を回収するにあたり当該金属含有物を加熱する加熱装置と共に使用されるガス処理装置であって、
前記加熱装置は、金属含有物を加熱する加熱炉と、前記加熱炉に過熱蒸気又は不活性気体を供給する供給手段と、前記加熱炉内のガスを当該加熱炉外に排出する大気開放されたガス排出部を備え、
前記ガス排出部が大気開放されることによって、前記加熱炉の内部が常圧又は正圧に保持され、
前記加熱炉の下流側に、当該加熱炉を通過した金属含有物を当該加熱炉外に排出する排出側二段ダンパが設けられ、
前記加熱装置の大気開放されたガス排出部の排出方向先方に配置され、当該ガス排出部から排出されたガスを吸引する吸引手段と、
前記吸引手段と接続され、当該吸引手段で吸引されたガス中の粒子を回収する集塵手段を備えた、
ことを特徴とするガス処理装置。
【請求項5】
金属含有物中の金属を回収するにあたり当該金属含有物を加熱する加熱装置と共に使用されるガス処理装置であって、
前記加熱装置は、金属含有物を加熱する加熱炉と、前記加熱炉に過熱蒸気又は不活性気体を供給する供給手段と、前記加熱炉内のガスを当該加熱炉外に排出する大気開放されたガス排出部を備え、
前記ガス排出部が大気開放されることによって、前記加熱炉の内部が常圧又は正圧に保持され、
前記加熱炉の上流側に、当該加熱炉内に金属含有物を投入する投入側二段ダンパが設けられ、
前記加熱装置の大気開放されたガス排出部の排出方向先方に配置され、当該ガス排出部から排出されたガスを吸引する吸引手段と、
前記吸引手段と接続され、当該吸引手段で吸引されたガス中の粒子を回収する集塵手段を備えた、
ことを特徴とするガス処理装置。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載のガス処理装置において、
大気開放されたガス排出部から排出されたガスを取り込む集塵フードを備えた、
ことを特徴とするガス処理装置。
【請求項7】
請求項記載のガス処理装置において、
集塵フードの周囲のガスを検知するガス検知器を備えた、
ことを特徴とするガス処理装置。
【請求項8】
請求項記載のガス処理装置において、
集塵フードと集塵手段の間に、当該集塵フードを通過したガスを加熱する二次加熱手段と当該集塵フードを通過したガスを冷却する冷却手段の双方又はいずれか一方が設けられた、
ことを特徴とするガス処理装置。
【請求項9】
請求項記載のガス処理装置において、
集塵フードの取込み口の開口面積がガス排出部の排出口の開口面積よりも大きい、
ことを特徴とするガス処理装置。
【請求項10】
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載のガス処理装置において、
集塵手段として、耐熱温度200℃~900℃の集塵手段が用いられた、
ことを特徴とするガス処理装置。
【請求項11】
金属含有物中の金属を回収する金属回収システムにおいて、
熱装置と請求項3から請求項5のいずれか1項に記載のガス処理装置を備え、
前記加熱装置は、金属含有物を加熱する加熱炉と、前記加熱炉に過熱蒸気又は不活性気体を供給する供給手段と、前記加熱炉内のガスを当該加熱炉外に排出する大気開放されたガス排出部を備え、
前記ガス排出部が大気開放されることによって、前記加熱炉の内部が常圧又は正圧に保持された、
ことを特徴とする金属回収システム。
【請求項12】
金属含有物中の金属を回収する金属回収システムにおいて、
請求項1又は請求項2記載の加熱装置と、
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載のガス処理装置を備えた、
ことを特徴とする金属回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属を含む物品(以下「金属含有物」という)から金属を回収する際に用いる加熱装置、ガス処理装置及び金属回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
2015年9月の国連サミットにおいて、持続可能な開発目標(SDGs)が採択されて以降、その目標の達成に向けた取り組みが求められている。金属含有物を取り扱う業界では、金属含有物に含まれる金属のリサイクルや有効利用が求められている。
【0003】
従来、金属含有物から金属を回収する際に用いる手段として、加熱装置の内筒内に供給された過熱水蒸気によって有機物を除去し、金属を回収する方法(特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-194618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
過熱水蒸気によって有機物を除去する金属回収装置では、加熱装置の内筒内に外気が流入すると、その外気によって金属が酸化し、金属の回収効率が低下することがある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、金属の酸化を抑制可能な加熱装置、ガス処理装置及び金属回収システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[加熱装置]
本発明の加熱装置は、金属含有物中の金属を回収するにあたり、当該金属含有物を加熱する装置であって、金属含有物を加熱する加熱炉と、加熱炉に過熱蒸気又は不活性気体を供給する供給手段と、加熱炉内のガスを当該加熱炉外に排出する大気開放されたガス排出部を備え、加熱炉の内部が常圧又は正圧に保持されたものである。
【0008】
[ガス処理装置]
本発明のガス処理装置は、本発明の加熱装置と共に使用されるガス処理装置であって、加熱装置の大気開放されたガス排出部の排出方向先方に配置され、当該ガス排出部から排出されたガスを吸引する吸引手段と、当該吸引手段と接続され、当該吸引手段で吸引されたガス中の粒子を回収する集塵手段を備えたものである。
【0009】
[金属回収システム]
本発明の金属回収システムは、金属含有物中の金属を回収するシステムであって、本発明の加熱装置と本発明のガス処理装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガス排出部を大気開放して加熱炉の内部を常圧又は正圧にすることによって加熱炉内への外気の流入を防止し、金属の酸化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】金属回収システムの一例を示す概要説明図。
図2】集塵フード及びコントロールダンパの一例を示す説明図。
図3】(a)は制御装置でコントロールダンパを制御する場合の入出力信号の説明図、(b)は制御装置で誘引ブロワを制御する場合の入出力信号の説明図、(c)は制御装置で供給装置を制御する場合の入出力信号の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
本発明の実施形態の一例を、図面を参照して説明する。本発明の金属回収システム100は、金属含有物中の金属を回収するシステムである。本願において、金属含有物とは、金属を含有する物をいい、たとえば、金属缶や金属コーティングされた包装材、シュレッダーダスト等が含まれる。より具体的には、アルミ缶や金属コーティングされた紙パック、自動車シュレッダーダスト(ASR)等の廃棄物や端材が含まれる。
【0013】
一例として図1に示す金属回収システム100は、加熱装置30と、供給装置41と、排出装置42と、ガス処理装置50と、制御装置80を備えている。
【0014】
[加熱装置]
前記加熱装置30は、金属含有物を過熱蒸気(この実施形態では、過熱水蒸気の場合を一例とする)で加熱して有機分と金属類に分離する装置である。一例として図1に示す加熱装置30は、金属含有物を加熱する加熱炉10と、加熱炉10に過熱水蒸気を供給する供給手段(この実施形態では、過熱水蒸気供給手段20)を備えている。
【0015】
この実施形態の加熱炉10は、処理対象である金属含有物が供給される内筒11と、内筒11の外周に設けられた外筒12を備えている。
【0016】
内筒11と外筒12の摺動部分の隙間には、外筒12外への加温空気の流出による結露の発生等を防止する外筒シール14が設けられている。外筒シール14には、たとえば、内部に板バネを挟み込んだシート等を用いることができる。このほか、外筒シール14には、耐熱シートや断熱材などを用いることもできる。いずれも、熱せられた外筒12内の温度に耐えうる耐熱性を備えたものを用いる必要がある。
【0017】
内筒11は金属含有物を熱分解する熱分解炉として機能する部分である。内筒11は、たとえば、耐熱ステンレス鋼等で構成することができる。図1に示すように、この実施形態の内筒11は横長の筒状であり、長手方向両端寄りの位置に間隔をあけて設けられた支持装置15によって、回転可能に支持されている。
【0018】
内筒11内には、後述する過熱水蒸気供給手段20で製造された過熱水蒸気を内筒11内に導入する導入管16が設けられている。導入管16の内筒11内に位置する部分には、複数の噴出孔16aが設けられ、過熱水蒸気供給手段20から供給された過熱水蒸気が当該噴出孔16aから内筒11内に噴出されるようにしてある。
【0019】
前記過熱水蒸気供給手段20は、過熱水蒸気を生成して、内筒11内に供給する装置である。この実施形態の過熱水蒸気供給手段20は、必要量の水蒸気を生成するボイラ21と、処理対象の処理に必要な温度へ水蒸気を昇温する過熱水蒸気生成装置22を備えている。ボイラ21には水供給装置23が接続され、当該水供給装置23からボイラ21に水が供給されるようにしてある。
【0020】
過熱水蒸気供給手段20では、水供給装置23から常温(たとえば、20℃程度)の水がボイラ21に供給され、その水がボイラ21で加熱されて140℃程度の蒸気にされる。ボイラ21で生成された蒸気は、過熱水蒸気生成装置22で更に加熱されて300℃以上の過熱水蒸気となり、導入管16を通じて内筒11内に供給される。
【0021】
ボイラ21には、バーナ加熱式の小型貫流蒸気ボイラをはじめ、各種のボイラを用いることができる。また、過熱水蒸気生成装置22には、第二種圧力容器に適用可能なバーナ加熱式のスーパヒータをはじめ、各種の装置を用いることができる。
【0022】
このほか、ボイラ21には、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)・液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas)・液体燃焼バーナのほか、電気式や水素、アンモニア燃焼バーナ等を用いることもできる。
【0023】
なお、この実施形態では、内筒11内に過熱水蒸気を充満させる場合を一例としているが、内筒11内には、過熱水蒸気に代えて、不活性気体を充満させるようにすることもできる。
【0024】
ここで言う不活性気体とは、化学的に安定で、他の元素や化合物と容易に反応しない、いわゆる不活性ガスを言い、たとえば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、窒素、二酸化炭素又はフルオロカーボン(可燃性ガスを除く。)等が含まれる。なお、内筒11内に不活性気体を充満させる場合、過熱水蒸気供給手段20に代えて、不活性気体供給手段を供給手段として用いることができる。
【0025】
前記内筒11内では、過熱水蒸気雰囲気中で金属含有物に付着する有機分の除去が行われ、有機分除去後の金属類を短時間で連続的に回収することができる。内筒11内に過熱水蒸気を導入し、充満させることによって金属の酸化を抑制し、金属含有物の酸化反応を最低限に抑えることができる。
【0026】
図示は省略しているが、内筒11内には処理対象である金属含有物を撹拌するためのスクレッパー(撹拌具)が設けられ、金属含有物を撹拌しながら連続処理を行えるようにしてある。なお、この実施形態では、内筒11が回転式の場合を一例としているが、内筒11は固定式のボックスチャンバー等で代替することもできる。
【0027】
前記外筒12は、内筒11を加温するヒーティング装置として機能する部分である。図1に示すように、この実施形態の外筒12は内筒11と同様の横長筒状の部材である。外筒12は、内筒11と異なり、回転しないように構成されている。
【0028】
外筒12の内部には、内筒11を加熱すると共に内筒11内の温度を保持するための熱源として、電気ヒータ12aが内蔵されている。熱源として電気ヒータ12aを用いることで、内筒11内の温度コントールを高精度で行うことができる。電気ヒータ12aを用いる加熱方式に代えて、バーナ加熱や廃熱(熱風)を用いた間接加熱方式を採用することもできる。
【0029】
外筒12は内筒11の長さよりも短く、内筒11の長手方向両端は外筒12の長手方向両端よりも外側に突出している。内筒11の長手方向一端側には供給フード18が、他端側には排出フード19が設けられている。
【0030】
回転する内筒11と回転しない供給フード18の摺動部分の隙間及び回転する内筒11と回転しない排出フード19の摺動部分の隙間には、外部の空気(外気)が流入するのを防止する内筒シール17が設けられている。
【0031】
この実施形態では、内筒シール17として、内筒11と供給フード18の摺動部分の隙間に配置された供給側内筒シール17aと、内筒11と排出フード19の摺動部分の隙間に配置された排出側内筒シール17bが設けられている。
【0032】
内筒シール17にはいわゆるメタルシールを用いることができる。具体的には、内筒11と供給フード18の摺動部分の接触部、あるいは、内筒11と排出フード19の摺動部分の接触部に潤滑油としてグリスが充填され、金属面同士をすり合わせた構造のシール部材を用いることができる。
【0033】
内筒シール17には、メタルシールのほか、Vリング型のシールパッキンやカーボンシール、グランドパッキンシール構造のシール部材等を用いることもできる。なお、Vリング型のシールパッキンやカーボンシールを用いる場合は、窒素パージを行うのが好ましい。
【0034】
前記排出フード19は、内筒11内のガスを内筒11外に排出する排出口を備えたガス排出部19aと、内筒11内で処理された金属含有物の処理物を排出する処理物排出部19bを備えている。ガス排出部19aは排出フード19の上端側に、処理物排出部19bは排出フード19の下端側に設けられている。なお、ガス排出部19aには、意図せずガスが漏出する隙間は含まない。
【0035】
加熱装置30の上流側には、金属含有物を外気から遮断しつつ内筒11内に供給する供給装置41が設けられている。また、加熱装置30の下流側には、排出フード19の処理物排出部19bから排出された処理物を外気から遮断しつつ加熱装置30外に排出する排出装置42が設けられている。
【0036】
前記供給装置41は、処理対象である金属含有物を内筒11内に供給する装置である。この実施形態の供給装置41は、二段ダンパ(投入側二段ダンパ)41aとシュート41bを備えている。二段ダンパ41aは二段に重ねられた二つのボックスを備えている。それぞれのボックスにはダンパが設けられ、両ボックスのダンパを交互に開閉することで、外気を遮断しながら金属含有物を内筒11内に投入できるようにしてある。
【0037】
この実施形態では、二段ダンパ41aの下段のボックスにガス充填機41cが接続され、下段のボックス内に窒素ガス等の不活性気体を充填できるようにしてある。下段のボックスに不活性気体を充填することで、処理対象の金属含有物と共に流入する空気量を最小限に抑え、加熱装置30内の酸化反応を最小限に抑えることができる。
【0038】
この実施形態では、二段ダンパ41aから排出された金属含有物がシュート41bを通じて内筒11に供給されるようにしているが、内筒11内への金属含有物の供給には、スクリューフィーダや振動フィーダ等を用いることもできる。
【0039】
前記排出装置42は、加熱装置30での処理が完了した処理物を加熱装置30外に排出する装置である。この実施形態の排出装置42は、供給装置41と同様の二段ダンパを備えている。二段ダンパ(排出側二段ダンパ)42aは二段に重ねられた二つのボックスを備えている。それぞれのボックスにはダンパが設けられ、両ボックスのダンパを交互に開閉することで、外気を遮断しながら金属含有物を排出できるようにしてある。
【0040】
この実施形態では、排出装置42が二段ダンパを備えたものである場合を一例としているが、処理対象(処理物)の形状によっては、二段ダンパに代えて、ロータリーバルブやスライドゲート等を用いることもできる。
【0041】
[ガス処理装置]
次にガス処理装置50について説明する。前記ガス処理装置50は、加熱装置30から排出されたガスを回収して処理する装置である。ガス処理装置50は、加熱装置30の下流側に設けられている。
【0042】
この実施形態のガス処理装置50は、大気開放されたガス排出部19aから排出されたガスを取り込む集塵フード51と、ガス排出部19aから排出されたガスを吸引する誘引ブロワ(吸引手段)52と、誘引ブロワ52で吸引されたガス中の粒子を回収する集塵装置(集塵手段)53を備えている。
【0043】
図2に示すように、前記集塵フード51は、大気開放されたガス排出部19a(図1)から排出されたガスを取り込む取込み口51a側から、ガスを送出する送出口51b側に向けて先細りとなる陣笠形状(漏斗状)の部材である。集塵フード51は耐熱ステンレス鋼等で構成することができる。
【0044】
この実施形態では、集塵フード51の取込み口51aの開口面積を、ガス排出部19aの排出口の開口面積よりも大きくしてある。このようにすることで、ガス排出部19aから排出されるガスが集塵フード51で確実に回収され、集塵フード51の周囲に漏れにくくなるというメリットがある。
【0045】
図2に示すように、集塵フード51の送出口51bには、ガス流量調整用の弁を備えたコントロールダンパ54が接続されている。コントロールダンパ54には、後述する制御装置80から入力される信号によって動作するコントロールモータ55が接続されている。コントロールモータ55の動作によって、コントロールダンパ54の弁の開閉度が調整されるようにしてある。
【0046】
図1に示すように、集塵フード51は、取込み口51aがガス排出部19aに対向する向きで設けられている。本実施形態のガス排出部19aは大気開放されており、集塵フード51とガス排出部19aは接続されていない。したがって、集塵フード51とガス排出部19aの間には、常時大気が存在する状態である。
【0047】
この実施形態のように、ガス排出部19aを大気開放して加熱装置30とガス処理装置50を縁切りすると共に、誘引ブロワ52でガスを吸引することによって、内筒11内の過熱水蒸気雰囲気圧力を大気圧以上(常圧又は正圧)に保持することができる。これにより、内筒11内を過熱水蒸気で充満させ、内筒シール17部分からの内筒11内への大気の流入を防止することができる。
【0048】
また、ガス排出部19aを大気開放することで、圧力損失の大きな内筒シール17部分から過熱水蒸気がリークしにくくなり、内筒シール17部分での結露が生じず、安定運転が可能になる。
【0049】
前記ガス排出部19aから排出されたガスは誘引ブロワ52の吸引力によって周辺の空気と共に集塵フード51内に取り込まれ、取込み口51aから送出口51bに向けて移動する。
【0050】
図2に示すように、この実施形態の集塵フード51には、ガス検知器81が設けられている。ガス排出部19aからのガス排出量が集塵フード51内に取り込まれるガス取り込量よりも多いと、ガスが集塵フード51の周囲に漏出するおそれがある。ガス検知器81は、集塵フード51の周囲のガスを検知するものである。
【0051】
ガス検知器81での検知信号は、後述する制御装置80に送信されるようにしてある。検知信号を受信した制御装置80は、当該検知信号に基づいて各種機器を制御する。具体的な制御内容については後述する。なお、ガス検知器81としては、たとえば、CO検知器(一酸化炭素センサ)等を用いることができる。
【0052】
集塵フード51に取付けられたコントロールダンパ54の送出口51b側には、ガスが通過するガス通路56が接続されている。ガス通路56の先方には集塵装置53が接続されている。送出口51bから送出されたガスはガス通路56を通って集塵装置53に導入される。
【0053】
前記集塵装置53は、送り込まれたガスを処理する装置である。この実施形態では、集塵装置53として耐熱温度が900℃程度のセラミックフィルタを用いている。集塵フード51に取り込まれたガスは、周辺の空気との燃焼反応によって発熱することがあるが、耐熱性に優れるセラミックフィルタを用いることで、発熱に起因する不具合を防止することができる。
【0054】
集塵装置53としてセラミックフィルタを用いる場合、耐熱温度200℃以上(好ましくは、200℃~900℃、より好ましくは800℃~900℃)のものの中から選択することで、前述の不具合防止というメリットを得ることができる。
【0055】
なお、集塵装置53にはセラミックフィルタ以外のものを用いることもできる。たとえば、ガスを冷却する冷却塔等を設けて、耐熱温度(たとえば、ろ布の場合は200℃以下)まで冷却できる場合には、セラミックフィルタに代えて、布式の集塵装置53を用いることもできる。
【0056】
なお、集塵フード51と集塵装置53の間には、集塵フード51を通過したガスを処理する第二ガス処理装置60を設けることもできる。第二ガス処理装置60は、たとえば、ガスを加熱して二次燃焼する二次燃焼塔(二次加熱手段)61、ガスを集塵装置53が耐えうる温度まで冷却する冷却塔(冷却手段)62等で構成することができる。二次燃焼塔61と冷却塔62は双方設けることもいずれか一方のみを設けることもできる。
【0057】
二次燃焼塔61としては、たとえば、バーナ燃焼装置を備えた内面キャスタブル構造のチャンバーボックスや、内部に電気ヒータを備えた加熱方式のもの等を、冷却塔62としては、たとえば、水と圧縮空気の二流体による冷却機構を備えた内面キャスタブル構造のチャンバーボックスや、希釈エア又は外部冷却機構を備えた間接冷却方式のもの等を用いることができる。
【0058】
なお、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則」に適用する設備の場合、原則として二次燃焼塔61と冷却塔62は必須の構成となるが、それ以外の場合、二次燃焼塔61と冷却塔62は必要に応じて設ければよい。
【0059】
集塵装置53の下流側には、ガス排出部19aから排出されたガスを集塵フード51内に誘引する誘引ブロワ52が設けられている。この実施形態では、誘引ブロワ52として、モータ駆動によって羽根車が回転する吸引式の排気ファンを用いているが、誘引ブロワ52は、ガス排出部19aから排出されたガスを吸引できるものであればこれ以外であってもよい。
【0060】
図1に示すように、集塵装置53と誘引ブロワ52の間には廃熱ボイラ71を設けることもできる。廃熱ボイラ71はガス処理の過程で発生した廃熱を回収し、エネルギー源として利用するものである。
【0061】
廃熱ボイラ71を設けることで廃熱を有効利用することができ、CO排出量の削減やカーボンニュートラルのほか、燃料費の大幅削減に貢献することができる。
【0062】
図1に示すように、廃熱ボイラ71には給水装置72が接続され、廃熱ボイラ71に水が供給されるようにすることができる。廃熱ボイラ71と過熱水蒸気生成装置22の間には蒸気通路73が設けられ、廃熱ボイラ71で生成された蒸気が過熱水蒸気生成装置22に供給されるようにしてある。
【0063】
廃熱ボイラ71及び給水装置72は、過熱水蒸気供給手段20におけるボイラ21及び水供給装置23に代えて又はこれらと共に用いることができる。廃熱ボイラ71及び給水装置72を用いる場合、給水装置72から常温(たとえば、20℃程度)の水が廃熱ボイラ71に供給され、その水が廃熱ボイラ71で加熱されて140℃程度の蒸気にされる。廃熱ボイラ71で生成された蒸気は、過熱水蒸気生成装置22で加熱されて300℃以上の過熱水蒸気となり、導入管16を通じて内筒11内に導入される。
【0064】
このように、過熱水蒸気供給手段20のボイラ21及び水供給装置23とは別に廃熱ボイラ71及び給水装置72を設けることで、過熱水蒸気生成装置22に蒸気を供給するルートが二本確保され、一方のルートが故障した場合でも、システム全体を停止することなく動作させ続けられるというメリットがある。なお、給水装置72を設ける代わりに、水供給装置23からボイラ21に水を送る供給管を分岐させ、水供給装置23から廃熱ボイラ71に水を供給できるようにしてもよい。
【0065】
[制御装置]
次に制御装置80について説明する。制御装置80は、前述のガス検知器81の検知信号に基づいて、たとえば、コントロールダンパ54や誘引ブロワ52、供給装置41等の各種機器を制御する装置である。
【0066】
制御装置80でコントロールダンパ54を制御する場合、図3(a)のように、制御装置80の入力側にガス検知器81を、出力側にコントロールダンパ54を駆動するコントロールモータ55を接続する。
【0067】
制御装置80は、ガス検知器81から入力される検知信号が予め設定した上限閾値を超えた場合、コントロールモータ55にコントロールダンパ54を所定量開く旨の信号を出力する。
【0068】
前記信号を受信したコントロールモータ55は、コントロールダンパ54を所定量開いてガスの流路を広げる。これにより、ガスの吸引量が増加し、集塵フード51外へのガスの漏出量を低減させることができる。
【0069】
なお、開かれたコントロールダンパ54は、適宜設定される条件を満たしたときに、所望量閉じるようにすることができる。たとえば、ガス検知器81から入力される検知信号が上限閾値に達しない状態が所定時間以上続いた場合に、コントロールダンパ54を所定量閉じる旨の信号がコントロールモータ55に出力され、コントロールダンパ54が所定量閉じるようにすることができる。
【0070】
制御装置80で誘引ブロワ52を制御する場合、図3(b)のように、制御装置80の入力側にガス検知器81を、出力側に誘引ブロワ52を接続する。制御装置80は、ガス検知器81から入力される検知信号が予め設定した上限閾値を超えたときに、誘引ブロワ52のモータの回転数を上げる旨の信号を出力する。
【0071】
前記信号を受信した誘引ブロワ52はモータの回転数を上げ、誘引ブロワ52によるガスの吸引量を増加させる。これにより、集塵フード51外へのガスの漏出量を低減させることができる。制御装置80による誘引ブロワ52の制御は、いわゆるインバータ制御であり、省エネ効果が期待できる。
【0072】
制御装置80で供給装置41を制御する場合、図3(c)のように、制御装置80の入力側にガス検知器81を、出力側に供給装置41を接続する。制御装置80は、ガス検知器81から入力される検知信号が予め設定した上限閾値を超えたときに、供給装置41による供給量を低減する又は供給を停止する旨の信号を出力する。
【0073】
前記信号を受信した供給装置41は、二段ダンパ41aの開閉速度を遅くしたり停止したりすることで、処理対象である金属含有物の内筒11内への供給量を低減又は供給を停止する。これにより金属含有物の燃焼量が低減し、ガス排出部19aからのガスの排出量が低減し、集塵フード51外へのガスの漏出量を低減させることができる。
【0074】
前記コントロールダンパ54、誘引ブロワ52、供給装置41の制御は、いずれか一つだけ行うことも、二つ以上を並行して行うこともできる。また、ここで説明した制御は一例であり、制御装置80ではこれら以外の制御が行われるようにすることもできる。
【0075】
たとえば、制御装置80の出力側に警報機を接続し、ガス検知器81から入力される検知信号が予め設定された上限閾値を超えた場合に、当該警報機に警報を発する旨の信号が出力されるようにすることができる。これにより、ガス漏出を作業者に知らせることができる。警報機の制御は、コントロールダンパ54や誘引ブロワ52、供給装置41等の制御とは別に、又はこれらの制御と共に行うこともできる。
【0076】
(その他の実施形態)
前記実施形態の構成は一例であり、本発明の加熱装置、ガス処理装置及び金属回収システムは、本実施形態の構成に限定されるものではない。本発明の加熱装置、ガス処理装置及び金属回収システムは、所期の目的を達成できる範囲で、構成の追加、省略、入れ替え等の変更を加えることができる。
【0077】
最後に、本実施形態の金属回収システムにより得られる効果について説明する。従来、過熱水蒸気によって有機物を除去する金属回収装置は知られていた。従来の金属回収装置では、加熱装置の内筒内を過熱水蒸気で充満させると共に、内筒内を負圧に制御していた。
【0078】
ところが、内筒内を負圧に制御すると、内筒内に外気が流入して金属の酸化ロスが大きくなり、金属回収効率の低下を招いていた。この問題を解決するため、シール部材を設けるなどの対策を取っていたが、内筒内への外気の流入を完全に抑えるのは難しいのが実情であった。
【0079】
内筒内への外気の流入を阻止するため、内筒内を常圧又は正圧にすることが考えられるが、内筒内を常圧又は正圧にすると、有機分を含むガスが過熱水蒸気と共に圧力損失の大きなシール部から外部に流出するおそれがある。
【0080】
流出したガスは大気で冷やされて結露し、水滴として加熱装置周辺に滴り落ちることがある。このときに滴り落ちる水滴はガス化した有機物を含むものであることから、これによって工場環境が悪化するおそれがある。
【0081】
内筒内を常圧又は正圧にすることにはこのようなリスクがあることから、これまでは、内筒内を負圧に制御するのが一般的であり、内筒11内を常圧又は正圧にすることは当業者に敬遠されていた。
【0082】
本発明では、内筒11内のガスを内筒11外に排出するガス排出部19aを大気開放するという今までにない構成を採用することにより、内筒11内を常圧又は正圧にする際に生じる有機分を含むガスの流出という課題を解決し、負圧制御時よりも高い金属回収率を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の加熱装置30、ガス処理装置50及び金属回収システム100は、金属缶や金属コーティングされた包装材、シュレッダーダスト等、金属類と有機分が混在する各種廃棄物や端材から、金属を回収する装置として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
10 加熱炉
11 内筒
12 外筒
12a 電気ヒータ
14 外筒シール
15 支持装置
16 導入管
16a 噴出孔
17 内筒シール
17a 供給側内筒シール
17b 排出側内筒シール
18 供給フード
19 排出フード
19a ガス排出部
19b 処理物排出部
20 過熱水蒸気供給手段
21 ボイラ
22 過熱水蒸気生成装置
23 水供給装置
30 加熱装置
41 供給装置
41a 二段ダンパ(投入側二段ダンパ)
41b シュート
41c ガス充填機
42 排出装置
42a 二段ダンパ(排出側二段ダンパ)
50 ガス処理装置
51 集塵フード
51a 取込み口
51b 送出口
52 誘引ブロワ(吸引手段)
53 集塵装置(集塵手段)
54 コントロールダンパ
55 コントロールモータ
56 ガス通路
60 第二ガス処理装置
61 二次燃焼塔(二次加熱手段)
62 冷却塔(冷却手段)
71 廃熱ボイラ
72 給水装置
73 蒸気通路
80 制御装置
81 ガス検知器
100 金属回収システム
図1
図2
図3