(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】車輪支持力に基づく車両アクティブサスペンション慣性制御方法及び制御システム
(51)【国際特許分類】
B60G 17/015 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
B60G17/015 B
(21)【出願番号】P 2023517727
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(86)【国際出願番号】 CN2022085567
(87)【国際公開番号】W WO2022267621
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】202110714847.6
(32)【優先日】2021-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523095071
【氏名又は名称】燕山大学
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 丁▲選▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 爽
(72)【発明者】
【氏名】▲鞏▼ 明▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 祝新
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ 志国
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 彬
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110281727(CN,A)
【文献】特開平07-125520(JP,A)
【文献】特開2005-223970(JP,A)
【文献】特開平02-060810(JP,A)
【文献】特開平10-338013(JP,A)
【文献】特開昭63-041225(JP,A)
【文献】特開平02-237810(JP,A)
【文献】特表2010-512879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 17/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪支持力に基づく車両アクティブサスペンション慣性制御方法であって、各車輪の支持力を調整し、各サスペンションシリンダの伸縮を制御することによって、車両が垂直に受ける合力、質量中心を通る縦軸及び横軸のそれぞれの周りの合力モーメントをゼロに等しくするか又はゼロに近づけるように制御し、車両の質量中心を直線又は滑らかな曲線に沿って移動させ、車両の姿勢をほぼ安定させ続け
、
前記アクティブサスペンション慣性制御方法はインナーループ制御及びアウターループ制御を含み、インナーループ制御は各車輪支持力を制御することに用いられ、アウターループ制御はすべてのサスペンションシリンダのストロークの平均値を制御することに用いられ、インナーループ制御とアウターループ制御は互いに独立し、結合関係がなく、
前記アウターループ制御は、測定された各サスペンションシリンダのストロークに基づいてすべてのサスペンションシリンダのストローク平均値を求め、サスペンションシリンダのストロークの中央値と比較し、両者の差を目標変位量として同じ変位量の伸縮を行うように各サスペンションシリンダを制御し、すべてのサスペンションシリンダのストロークの平均値を中央値に近づけることである、ことを特徴とする車輪支持力に基づく車両アクティブサスペンション慣性制御方法。
【請求項2】
前記インナーループ制御は、動力学によって、車両が慣性測定ユニットにより測定された6次元加速度、ピッチ角及びロール角で仮想斜面平面を走行する時に各車輪が受けるべき理論支持力W
iを車輪支持力の制御目標値として求め、実測された各車輪支持力W
i
Cと比較し、両者の差ΔW
i=W
i-W
i
Cを調整量としてサーボコントローラに入力してサスペンションシリンダに対して伸縮制御を行い、各車輪の支持力を理論支持力W
iに応じて変化させることであり、i=1、2、…、mであり、mは車輪数である、ことを特徴とする
請求項1に記載の車輪支持力に基づく車両アクティブサスペンション慣性制御方法。
【請求項3】
インナーループ制御とアウターループ制御はいずれも最終的にサスペンションシリンダの変位量を制御することによって実現され、インナーループ制御のサスペンションシリンダ変位量とアウターループ制御のサスペンションシリンダ変位量は各サスペンションシリンダのサーボコントローラの入力側で重ね合わせられる、ことを特徴とする
請求項1に記載の車輪支持力に基づく車両アクティブサスペンション慣性制御方法。
【請求項4】
請求項1-3のいずれか一項に記載の車輪支持力に基づく車両アクティブサスペンション慣性制御方法を応用する制御システムであって、車体1、m個の車輪2-1、2-2、…、2-m、慣性測定ユニット3、車輪に対応するサスペンションシリンダ4-1、4-2、…、4-m及びその変位センサ5-1、5-2、…、5-mと支持力センサ6-1、6-2、…、6-m、サーボコントローラ7-1、7-2、…、7-m、電子制御ユニット8を含み、変位センサ5-1、5-2、…、5-mと支持力センサ6-1、6-2、…、6-mはそれぞれサスペンションシリンダ4-1、4-2、…、4-mに取り付けられ、サスペンションシリンダのそれぞれのストロークと支持力を測定することに用いられ、前記電子制御ユニット8はそれぞれ慣性測定ユニット3、サスペンションシリンダの変位センサ5-1、5-2、…、5-mと支持力センサ6-1、6-2、…、6-m、及びサーボコントローラ7-1、7-2、…、7-mに通信接続され、サーボコントローラ7-1、7-2、…、7-mはそれぞれサスペンションシリンダ4-1、4-2、…、4-mに接続され、サスペンションシリンダを駆動することに用いられる、ことを特徴とす
る、車輪支持力に基づく車両アクティブサスペンション慣性制御方法を応用する制御システム。
【請求項5】
支持力センサはサスペンションシリンダの車体に接続される位置に取り付けられるか、又は、サスペンションオイルシリンダ/エアシリンダのロッド側室回路及びヘッド側室回路のそれぞれに1つの支持力センサが取り付けられる、ことを特徴とする
請求項4に記載の車輪支持力に基づく車両アクティブサスペンション慣性制御方法の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両アクティブサスペンションの制御方法及び制御システムに関し、具体的には、車輪支持力を制御することによって車両のアクティブサスペンションシステムに対して慣性制御を行う方法及びそれに対応する制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
サスペンションシステムは車両シャーシーの重要な構成部分であり、その性能は車両の走行滑らかさ及び操縦安定性を直接左右している。従来の車両はほとんどパッシブサスペンションを採用しており、そのサスペンションパラメータは特定の路面条件に応じて設計され、一旦選択すると変更が困難であり、路面状況、車速などに応じて変化することが不可能であり、従って、自動車の走行性能のさらなる向上が制限されてしまう。
【0003】
アクティブサスペンションは、近年開発された、コンピュータにより制御されたサスペンション方式であり、アクティブサスペンションは車両積載量、路面状況又は上下揺れや振動状況、走行速度、例えば加速、ブレーキ、駆動、操舵などの運転パターンの変化に応じて、サスペンションの剛性及び減衰を自動的に調整したりサスペンションの伸縮を制御したりすることができ、それによって自動車の走行滑らかさ及び操縦安定性などの要件を満たす。
【0004】
アクティブサスペンション技術は主にアクティブサスペンションシステム及び制御方法の2つの部分を含む。
【0005】
アクティブサスペンションシステムはアクティブサスペンションにエネルギーを供給する装置と、作用力又は変位を制御可能な付加装置と、を含む。また、エネルギー供給方式に応じて、油圧駆動、空気圧駆動及び電気駆動の3種類に分けられる。油圧駆動サスペンションシステムは電力密度が高く、配置や取り付けが容易であるなどの利点のため、現在広く使用されており、空気圧駆動サスペンションシステムは駆動が柔らかさを有し、汚染がないなどの利点のため、ある程度使用されている。
【0006】
同じアクティブサスペンションシステムであっても、異なる制御方法を使用すると、異なる制御効果が得られる。従来のアクティブサスペンションの制御方法は主に、スカイフックダンパ制御、最適制御、プレビュー制御、適応制御、ファジー制御、ニューラルネットワーク制御、スライディングモード制御、及び免疫進化制御などを含む。
【0007】
記録によると、どのような制御方法を採用しても、車両の性能は様々な程度に改善されるが、まだうまく解決されていない問題がいくつかあり、中でも、走行滑らかさ制御と操縦安定性制御の調和が困難であるという問題は特に顕著である。車両の走行滑らかさ制御と操縦安定性制御はサスペンション設計で考慮する必要がある2つの重要な側面であり、従来の研究成果は、ほとんど異なるニーズに応じて異なる数学モデルを確立し、それぞれ独立して設計し、車両の全体的性能がこれらのサブシステム性能の合計であると考えられるが、又は数学モデルを分解し、次に組み合わせて制御を行う。数学モデルを確立する際に、走行滑らかさ制御と操縦安定性制御の同時設計を考慮しておらず、設計過程が複雑であり、より良い制御効果を得ることは困難である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記車両アクティブサスペンション技術が抱えている顕著な問題を解決するために、本発明は車輪支持力に基づく車両アクティブサスペンション慣性制御方法及び制御システムを提供し、具体的には、以下の2つの態様を含む。
【0009】
本発明の第1態様によれば、車輪支持力に基づく車両アクティブサスペンション慣性制御方法を提供し、各車輪の支持力を調整し、各サスペンションシリンダの伸縮を制御することによって、車両が垂直に受ける合力、質量中心を通る縦軸及び横軸のそれぞれの周りの合力モーメントをゼロに等しくするか又はゼロに近づけるように制御し、車両の質量中心を直線又は滑らかな曲線に沿って移動させ、車両の姿勢をほぼ安定させ続ける。
【0010】
前記慣性制御方法はインナーループ制御及びアウターループ制御を含み、インナーループ制御は各車輪支持力を制御することに用いられ、アウターループ制御はすべてのサスペンションシリンダのストロークの平均値を制御することに用いられ、インナーループ制御とアウターループ制御は互いに独立し、結合関係がない。
【0011】
前記インナーループ制御は、動力学によって、車両が慣性測定ユニットにより測定された6次元加速度、ピッチ角及びロール角で仮想斜面平面を走行する時に各車輪が受けるべき理論支持力Wiを車輪支持力制御の目標値として求め、実測された各車輪支持力Wi
Cと比較し、両者の差ΔWi=Wi-Wi
Cを調整量としてサーボコントローラに入力してサスペンションシリンダに対して伸縮制御を行い、各車輪の支持力を理論支持力Wiに応じて変化させることである。i=1、2、…、mであり、mは車輪数である。
【0012】
前記アウターループ制御は、測定された各サスペンションシリンダのストロークに基づいてすべてのサスペンションシリンダのストローク平均値を求め、サスペンションシリンダのストロークの中央値と比較し、両者の差を目標変位量として同じ変位量の伸縮を行うように各サスペンションシリンダを制御し、すべてのサスペンションシリンダのストロークの平均値を中央値に近づけることである。
【0013】
さらに、インナーループ制御とアウターループ制御はいずれも最終的にサスペンションシリンダの変位量を制御することによって実現され、インナーループ制御のサスペンションシリンダ変位量とアウターループ制御のサスペンションシリンダ変位量は各サスペンションシリンダのサーボコントローラの入力側で重ね合わせられる。
【0014】
本発明の第2態様によれば、前記車輪支持力に基づく車両アクティブサスペンション慣性制御方法のサスペンション制御システムを提供し、
図1に示すように、車体1、m個の車輪2-1、2-2、…、2-m、慣性測定ユニット3、車輪に対応するサスペンションシリンダ4-1、4-2、…、4-m及びその変位センサ5-1、5-2、…、5-mと支持力センサ6-1、6-2、…、6-m、サーボコントローラ7-1、7-2、…、7-m、電子制御ユニット8などを含む。変位センサ5-1、5-2、…、5-mと支持力センサ6-1、6-2、…、6-mはそれぞれサスペンションシリンダ4-1、4-2、…、4-mに取り付けられ、サスペンションシリンダのそれぞれのストロークと支持力を測定することに用いられる。前記電子制御ユニット8はそれぞれ慣性測定ユニット3、サスペンションシリンダの変位センサ5-1、5-2、…、5-mと支持力センサ6-1、6-2、…、6-m、及びサーボコントローラ7-1、7-2、…、7-mに通信接続される。サーボコントローラ7-1、7-2、…、7-mはそれぞれサスペンションシリンダ4-1、4-2、…、4-mに接続され、サスペンションシリンダを駆動することに用いられる。
【0015】
さらに、支持力センサはサスペンションシリンダの車体に接続される位置に取り付けられるか、又は、サスペンションオイルシリンダ/エアシリンダのロッド側室回路及びヘッド側室回路のそれぞれに1つの支持力センサが取り付けられる。
【0016】
別の実施形態では、本発明は車輪支持力に基づく車両アクティブサスペンション慣性制御方法をさらに提案し、前記制御方法は各車輪の垂直支持力を制御するためのインナーループ制御と、各サスペンションオイルシリンダのストローク平均値を制御するためのアウターループ制御と、を含み、
前記インナーループ制御は、測定された各サスペンションオイルシリンダのそれぞれの垂直支持力に基づいて、各車輪の実際垂直支持力Wi
Cを算出するステップと、測定された車両座標系の6次元加速度及び車体ピッチ角とロール角に基づいて、車両が仮想斜面平面を走行する時に各車輪が受けるべき理論垂直支持力Wiを求め、車輪の理論垂直支持力Wiを実際垂直支持力Wi
Cの制御目標値とするステップと、理論垂直支持力と実際垂直支持力との差を計算して調整量ΔWi=Wi-Wi
Cを得て、サスペンションオイルシリンダの伸縮調整量としてサーボコントローラに入力し、それによりサスペンションオイルシリンダを伸縮駆動するステップと、を含み、
前記アウターループ制御は、測定された各サスペンションオイルシリンダのストロークに基づいて前記サスペンションオイルシリンダのストローク平均値を求め、この平均値を各サスペンションオイルシリンダの中央値ストロークと比較し、サスペンションオイルシリンダの中央値ストロークとストローク平均値との差を各サスペンションオイルシリンダの統一された伸縮の目標値とし、各サスペンションオイルシリンダに同じ変位量の伸縮を行わせ、且つサスペンションオイルシリンダのストローク平均値をサスペンションオイルシリンダの中央値ストロークに等しくすることであることを特徴とする。
【0017】
各車輪の垂直支持力を調整し、各サスペンションオイルシリンダの伸縮を制御することによって、駆動力、走行抵抗、横力、重力、慣性力及び車輪の垂直支持力を含む様々な力の作用下で車両が垂直に受ける合力、質量中心を通る縦軸及び横軸のそれぞれの合力モーメントをゼロに等しくするか又はゼロに近づけ、車両の質量中心を直線又は滑らかな曲線に沿って移動させ、車両の姿勢をほぼ安定させ続ける。
【0018】
さらに、各車輪の理論垂直支持力の決定過程では、
図3に示すように、固定座標系OXYZと車両座標系oxyzを確立し、固定座標系OXYZのX軸の正の方向は車両の横方向であり、Y軸の正の方向は車両の縦方向の前向き方向であり、Z軸の正の方向は車両の垂直上向きの方向であり、固定座標系OXYZは仮想斜面平面に固定接続され、車両座標系oxyzは車両に固定接続され、固定座標系OXYZと初期位置で重なる。車両座標系の固定座標系における位置決め座標をそれぞれx、y、z、α、β、γとし、車両の質量をMとし、車両の質量中心の車両座標系oxyzにおける座標をW(x
W、y
W、z
W)とし、番号がiのサスペンションの支持点O
iの車両座標系におけるx、y座標をそれぞれb
i、L
iとし、車両の座標系のx、y、z軸に対する慣性モーメントをJ
XX、J
YY、J
ZZとし、x/y、y/z、x/z軸に対する慣性積をJ
XY、J
YZ、J
XZとする。車両座標系の仮想斜面平面内での6次元加速度をそれぞれ
【数1】
とし、測定された車体姿勢角をα、βとする。
【0019】
さらに、車輪の実際垂直支持力に対する勾配の影響を反映するために、勾配角λを仮想斜面平面の法線と鉛直線との夾角とし、車両走行方位角φを車両座標系のx軸に対する仮想斜面の勾配降下方向の夾角とする。α、βによって勾配角λ及び車両走行方位角φを計算する式は以下の通りである。
【0020】
【数2】
【数3】
式では、T
X=tanα、T
Y=tanβ/cosαである。
【0021】
さらに、各車輪の理論垂直支持力を求めるために、車輪iが仮想斜面平面の接地点で受ける駆動力をPiとし、走行抵抗をFiとし、横力をSiとし、車輪の垂直支持力をWiとし、動力学方程式を確立して解くことによって、以下のように車輪の理論垂直支持力Wiを得る。
【0022】
Wi={1 L
i -b
i}[H]
-1{A} (3)
式では、
【数4】
【数5】
であり、各式では、i=1、2、3、…、mである。
【0023】
さらに、前記車輪支持力に基づく車両アクティブサスペンション慣性制御方法では、インナーループ制御とアウターループ制御は互いに独立し、結合関係がなく、支持力を制御するインナーループ制御とアウターループ制御はいずれもサスペンションオイルシリンダのストローク変位を制御することによって実現され、インナーループ制御のサスペンションオイルシリンダの変位量とアウターループ制御のサスペンションオイルシリンダの変位量は各サスペンションオイルシリンダのサーボコントローラの入力側で重ね合わせられる。
【0024】
本発明は車輪支持力に基づく車両アクティブサスペンション慣性制御方法の制御システムをさらに提案し、車体、慣性測定ユニット、電子制御ユニット、車輪、車輪に対応するサスペンションオイルシリンダ、サスペンションオイルシリンダに対応する変位センサと支持力センサ、及びサーボコントローラを含み、慣性測定ユニット、電子制御ユニット及びサーボコントローラは車体に固定され、車輪はサスペンションオイルシリンダを介して車体に接続され、変位センサと支持力センサはサスペンションオイルシリンダに接続され、サスペンションオイルシリンダのストロークと支持力を測定することに用いられ、電子制御ユニットはそれぞれ慣性測定ユニット、サスペンションオイルシリンダの変位センサと支持力センサ、及びサーボコントローラに通信接続され、各サーボコントローラはそれぞれ対応するサスペンションオイルシリンダに接続され、サスペンションオイルシリンダを駆動することに用いられる。
【0025】
さらに、支持力センサはサスペンションオイルシリンダの車体に接続される位置に取り付けられるか、又はサスペンションオイルシリンダのロッド側室油路及びヘッド側室油路のそれぞれに1つの支持力センサが取り付けられる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る前記車輪支持力に基づくアクティブサスペンション慣性制御方法及びサスペンション制御システムは、従来のアクティブサスペンション技術と比較して以下の利点を有する。
【0027】
(1)走行滑らかさ制御と操縦安定性制御の調和と統一をよりよく実現する。本発明は、各車輪の支持力を調整し、各サスペンションシリンダの伸縮を制御することによって、車両が垂直に受ける合力、質量中心を通る縦軸及び横軸のそれぞれの周りの合力モーメントをゼロに等しくするか又はゼロに近づけるように制御し、車両の質量中心を直線又は滑らかな曲線に沿って移動させ、車両の姿勢をほぼ安定させ続ける。
【0028】
(2)車両が凹凸路面を走行する時に消費するエネルギーを低減させる。車両の走行時に質量中心の昇降や上下揺れ、姿勢の揺れが大量のエネルギーを消費するため、既存のアクティブサスペンション制御方法と比較して、本発明は、車両が凹凸路面を走行する時に質量中心の軌跡をより滑らかにすることができ、姿勢の揺れの幅を大幅に低減させ、従って、車両の走行に消費されるエネルギーを効果的に低減させることができる。
【0029】
実践したところ、本発明に係るアクティブサスペンションシステムによれば、車両の滑らかな走行に対する地面の凹凸、地質の軟硬変化、加速/ブレーキ及び操舵の乱れを効果的に抑制し、車両が複雑な路面条件で走行する滑らかさ及び操縦安定性を大幅に向上させることができることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は本発明の車輪支持力に基づくアクティブサスペンション慣性制御システムの構造原理図である。
【
図2】
図2は本発明の車輪支持力に基づく三軸車両アクティブサスペンション慣性制御システムの構造原理図である。
【
図3】
図3は本発明の三軸パッシブサスペンション車両が斜面平面を走行する動力学モデルの模式図である。
【
図4】
図4は本発明の第1実施例においてアクティブ/パッシブモードがサスペンションオイルシリンダを共有する構造模式図である。
【
図5】
図5は本発明の第1実施例において試験車両がアームを上げて走行するモードの模式図である。
【
図6】
図6は本発明の第1実施例において試験車両がアームを下げて走行するモードの模式図である。
【
図7】
図7は本発明の第1実施例において路面障害物として使用される三角形バンプの構造模式図である。
【
図8】
図8は本発明の第1実施例において片側の車輪が連続的に障害物を乗り越えるパターンの三角形バンプの配置図である。
【
図9】
図9は本発明の第1実施例において両側の車輪が連続的に障害物を乗り越えるパターンの三角形バンプの配置図である。
【
図10】
図10は本発明の第1実施例において両側の車輪が交互に障害物を乗り越えるパターンの三角形バンプの配置図である。
【
図11】
図11は本発明の第2実施例におけるアクティブサスペンションオイルシリンダの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の学術的思想は、車両の動力学原理に基づいて提案され、車両が120km/hよりも高い速度で高速道路を走行できる主な理由として、路面が非常に平坦であり、地平面の制約を受けて、車両の質量中心が1つの直線又は滑らかな曲線に沿って移動しかできず、且つ姿勢が安定し続ける。
【0032】
ニュートンの第1法則によると、車両が凹凸路面を走行する時の質量中心も1つの直線又は滑らかな曲線に沿って移動し且つ姿勢が安定し続けることを可能にするために、平坦な路面を走行する車両と同じ力を得る必要があり、少なくとも車両の垂直に沿った合力と質量中心を通る縦軸及び横軸のそれぞれの周りの合力モーメントをゼロにするか又はゼロに近づけることを確保しなければならない。これに基づいて、本発明は車輪支持力に基づくアクティブサスペンション慣性制御の原理を提案し、各車輪の支持力を制御することによって、各車輪の支持力、駆動力、走行抵抗、横力、重力及び慣性力を含む様々な力の作用下で、車両の垂直に沿った合力と質量中心を通る縦軸及び横軸のそれぞれの周りの合力モーメントをゼロに等しくするか又はゼロに近づける。
【0033】
上記要件を満たす各車輪の支持力制御目標値を見つけるために、本発明はアイディアを提案し、すなわち、仮想斜面平面を設計し、車両がこの仮想斜面平面を走行する時のピッチ角、ロール角及び質量中心での6次元加速度は車両が凹凸路面を走行する時に測定された数値に等しく、斜面平面の制約を受けるため、車両が斜面平面を走行する時、質量中心が1つの直線又は滑らかな曲線に沿って移動し、姿勢がほぼ安定し続け、これは車両が仮想斜面平面を走行する時に垂直に受ける合力と質量中心を通る縦軸及び横軸のそれぞれの周りの合力モーメントがゼロに等しい又はゼロに近いことを示す。従って、車両が仮想斜面平面を走行する時に各車輪が受ける支持力は車両が凹凸路面を走行する時の各車輪の支持力の制御目標値として適する。
【0034】
実践したところ、上記学術的思想が正確であることが証明されたが、実際の応用では、サスペンションの制御が車輪支持力の制御に過ぎず、サスペンションのストロークを制御していないため、時間の経過に伴って、一部又はすべてのサスペンションシリンダのストロークが限界ストロークに達する可能性があり、その結果、車両の乗り心地や走行滑らかさが大幅に悪化してしまうという問題がある。
【0035】
制御過程では各走査周期においてサスペンションシリンダの変位量が車両の質量中心の高さよりも遥かに小さいため、同一の走査周期において各サスペンションシリンダが同じ変位量で伸縮するとき、車輪支持力を含む車両の様々な力に影響を与えることがないと考えられる。各サスペンションが同じ変位量で統一して伸縮することによってその平均ストロークを常にサスペンションストロークの中央値に制御できると、オイルシリンダのストロークが限界ストロークに達することによる乗り心地や走行滑らかさの悪化を最大限に軽減させることができるだけでなく、将来の路面の凹凸に対する車両の適応性を向上させることができる。従って、本発明は、上記車輪支持力の制御に加えて、サスペンションの平均ストロークの制御を追加する。前者はインナーループ制御と呼ばれ、後者はアウターループ制御と呼ばれ、両者は互いに独立し、結合関係がない。
【0036】
以下、三軸(6輪)車両を例として、図面を参照しながら本発明の例示的な実施例、特徴及び方法を詳細に説明する。3つ以上の車輪を有するほかの車両はこの例と同じ方法に従って構築できる。
【0037】
(一)アクティブサスペンション制御システムのハードウェア構成
車輪支持力に基づく三軸(六輪)車両アクティブサスペンション慣性制御システムは
図2に示すように、油圧サーボ駆動の形態を使用する。システムは、車体1、6つの車輪2-1、2-2、…、2-6、慣性測定ユニット3、車輪に対応するサスペンションオイルシリンダ4-1、4-2、…、4-6及びそれに対応する変位センサ5-1、5-2、…、5-6と支持力センサ6-1、6-2、…、6-6、サーボコントローラ7-1、7-2、…、7-6、電子制御ユニット8などを含む。変位センサ5-1、5-2、…、5-6と支持力センサ6-1、6-2、…、6-6はサスペンションオイルシリンダ4-1、4-2、…、4-6に取り付けられ、それぞれ各サスペンションシリンダのストロークと支持力を測定することに用いられる。前記電子制御ユニット8はそれぞれ慣性測定ユニット3、サスペンションオイルシリンダの変位センサ5-1、5-2、…、5-6と支持力センサ6-1、6-2、…、6-6、及びサーボコントローラ7-1、7-2、…、7-6に接続される。サーボコントローラ7-1、7-2、…、7-6はそれぞれサスペンションオイルシリンダ4-1、4-2、…、4-6に接続され、サスペンションオイルシリンダを駆動することに用いられる。
【0038】
(二)車両が仮想斜面平面を走行する各車輪支持力を求める方法
1、三軸パッシブサスペンション車両の動力学モデリング
図3に示すように、車両を剛性体としてみなし、車両の質量をMとし、車両のすべてのサスペンションはいずれも独立したサスペンションであり、且つすべてのサスペンションの構造サイズ及び性能は同じである。サスペンションシステムのハードウェア構造をダンパとばねとの並列接続に簡素化し、ばねは線形ばねであり、ばねの剛性はK
Zであり、ダンパの減衰は粘性減衰であり、減衰係数はC
Zである。車両の動力学特性に対するサスペンションシステムの横方向と接線方向の弾性及び減衰の影響が小さいため、ここでサスペンションの横方向と接線方向の弾性及び減衰を無視する。右手座標系OXYZを確立し、X軸の正の方向を車両の横方向右向きの方向とし、Y軸の正の方向を車両の縦方向前向きの方向とし、Z軸の正の方向を車両の垂直上向きの方向とする。該座標系は斜面平面に固定接続され、固定座標系である。三軸車両の固定座標系における位置を決定するために、車両座標系oxyzをさらに導入し、車両座標系は固定座標系と初期位置で重なり、固定座標系における位置決め座標がそれぞれx、y、z、α、β、γである。
【0039】
車両の質量中心の車両座標系oxyzにおける座標をW(x
W、y
W、z
W)とし、番号がiのサスペンションの支持点O
iのoxyz座標系におけるx、y座標をそれぞれb
i、L
iとし、i=1、2、…、6である。車両のx、y、z軸に対する慣性モーメントをJ
XX、J
YY、J
ZZとし、x/y、y/z、x/z軸に対する慣性積をJ
XY、J
YZ、J
XZとする。慣性測定ユニット3により測定された車両座標系の固定座標系に対する6次元加速度をそれぞれ
【数6】
とし、測定された車体姿勢角をそれぞれα、βとする。車輪支持力に対する勾配の影響を正確に反映するために、勾配角及び車両走行方位角の概念をさらに導入し、勾配角は斜面平面と水平面との夾角であり、λで表され、方位角は車両座標系のx軸に対する斜面の勾配降下方向の夾角であり、φで表される。
【0040】
α、βによってλ、φを計算する変換式は以下の通りである。
【0041】
【数7】
【数8】
式では、T
X=tanα、T
Y=tanβ/cosαである。
【0042】
2、各車輪支持力の制御目標値を求める
図3において、番号がiの車輪が斜面平面の接地点で受ける駆動力、走行抵抗、横力、支持力をそれぞれP
i、F
i、S
i、W
iとし、i=1、2、…、6である。動力学方程式を確立して解くことによって式(3)を得ることができる。
【0043】
Wi={1 L
i -b
i}[H]
-1{A} (3)
式では、
【数9】
【数10】
であり、以上からわかるように、W
iは車両の6次元加速度と姿勢角の関数であり、且つ車両の座標系oxyzにおける慣性特性、各サスペンションの上支持点のoxyz座標系における位置座標に関係しているが、サスペンションの剛性、減衰に関係してない。
【0044】
(三)サスペンションシステムの慣性制御方法
車輪支持力に基づく三軸車両アクティブサスペンション慣性制御方法はインナーループ制御及びアウターループ制御の2つの部分に分けられる。
【0045】
1、インナーループ制御
まず、サスペンションオイルシリンダに取り付けられる支持力センサ6-1、6-2、…、6-6で各車輪2-1、2-2、…、2-6の実際支持力W
i
Cを測定し、i=1、2、…、6であり、次に、慣性測定ユニット3で測定された車両座標系の6次元加速度
【数11】
及び車体姿勢角α、β、を表現式(1)、(2)、(3)に代入して、車両が対応する仮想斜面平面を走行する時に各車輪が受けるべき理論支持力W
iを求め、i=1、2、…、6である。この理論支持力W
iを車輪の実際支持力W
i
Cの制御目標値とし、両者の差を求めて調整量ΔW
i=W
i-W
i
Cを得て、PID調整を行って対応するサスペンションオイルシリンダの変位量を取得し、サーボコントローラ7-1、7-2、…、7-6に入力してサスペンションオイルシリンダ4-1、4-2、…、4-6を伸縮駆動し、このような制御によって各車輪の実際支持力W
i
Cを支持力制御目標値W
iに応じて変化させる。
【0046】
2、アウターループ制御
サスペンションオイルシリンダに取り付けられる変位センサ5-1、5-2、…、5-6で各サスペンションオイルシリンダのストロークw
iを測定し、次に6つのサスペンションオイルシリンダのストロークの平均値
【数12】
を求め、i=1、2、…、6である。サスペンションオイルシリンダのストロークの中央値
【数13】
と上記サスペンションオイルシリンダのストローク平均値との差
【数14】
を各サスペンションオイルシリンダの統一された伸縮の変位量目標値として各サスペンションオイルシリンダのストロークを制御し、各サスペンションオイルシリンダに同じ変位量δの伸縮を行わせ、すべてのサスペンションオイルシリンダのストロークの平均値をサスペンションオイルシリンダのストロークの中央値
【数15】
に近づけ、S
0はサスペンションオイルシリンダの最大ストロークである。
【0047】
上記インナーループ制御とアウターループ制御は互いに独立し、結合関係がない。インナーループ制御は各車輪支持力の制御であるにもかかわらず、最終的に同様にサスペンションシリンダの変位量を制御することによって実現され、従って、インナーループ制御量とアウターループ制御量はいずれも変位量であり、重ね合わせ可能であり、
図1に示すように、重ね合わせ点は各サスペンションオイルシリンダのサーボコントローラの入力側に位置する。
【0048】
(四)本発明の具体的な実施例の有益な効果
以下、
図4-10を参照しながら本発明の第1実施例においてアクティブ/パッシブモードがサスペンションオイルシリンダを共有する手段を説明する。本発明は緊急救助車両の実用試験を経て、良好な使用効果を得た。
【0049】
1、応用の基本状況
本発明を応用した車両はある高所放水はしご消防車であり、該車は本発明を採用する前にハイドロニューマチックサスペンションシステムを使用し、このような車両は世界の業界全体でアクティブサスペンションシステムを応用しておらず、ハイドロニューマチックサスペンションシステムは現在このような車両の業界全体で応用されている最先端サスペンションシステムである。本発明を採用すると、既存のハイドロニューマチックサスペンションシステムをもとにアクティブサスペンションシステムを追加し、現在のアクティブ/パッシブサスペンションを切り替え可能な動作モードを形成した。アクティブサスペンションシステムは本発明の原理方法に従って構築され、油圧サーボにより駆動され、車輪支持力に基づくアクティブサスペンション慣性制御技術を採用した。アクティブ/パッシブサスペンション動作モードは運転室のフロントパネルのスイッチによって切り替えられ得る。
【0050】
応用する車両の基本パラメータは表1に示される。
【0051】
表1 応用する車両の基本パラメータリスト
【表1】
【0052】
図4に示すように、このような車両サスペンションシステムのアクティブ/パッシブモードはサスペンションオイルシリンダを共有した。
図4は車両の1番目の車輪サスペンションオイルシリンダの機能及び構造の模式図であり、ほかの車輪サスペンションオイルシリンダはそれと完全に同じであった。図中、サスペンションオイルシリンダ4-1は車体1と車輪2-1との間に取り付けられ、サーボアンプ7-1-1とサーボバルブ7-1-2とで構成されたサーボコントローラ7-1により駆動され、サスペンションオイルシリンダ4-1のピストンロッド内に磁歪センサ5-1が取り付けられ、車輪支持力をテストするために、サスペンションオイルシリンダのヘッド側室接続油路A及びロッド側室接続油路Bのそれぞれに1つの圧力センサ6-1-1、6-1-2が取り付けられ、両者により測定された油路圧力及びサスペンションオイルシリンダのロッド側室、ヘッド側室の面積に基づいてサスペンションオイルシリンダの支持力を算出でき、これをもとに、サスペンションリンク機構の具体的な力伝達関係に基づいて各車輪の実際支持力を算出できた。
【0053】
2、テストスキームの決定
試験項目は主に2種のサスペンションモードにおける走行滑らかさ及び操縦安定性を比較することであり、具体的にはテスト項目は以下の通りであった。
【0054】
(1)走行滑らかさテスト
車両に対してアクティブサスペンションモードとパッシブサスペンションモードで走行滑らかさテストを行い、それぞれの総合的な総加重加速度の二乗平均平方根値を計算して比較するとともに、車両が障害物を乗り越える時の車体姿勢角をテストして比較した。テスト時、車両は
図5に示すアームを上げて走行するモードであった。普通のセメント舗装上に三角形バンプ障害物を設置することによってタイヤに対する路面の励起を実現した。三角形バンプ障害物は
図7に示された。
【0055】
試験は片側の車輪が連続的に三角形バンプ障害物を乗り越えるパターン、両側の車輪が連続的に三角形バンプ障害物を乗り越えるパターン、及び両側の車輪が交互に三角形バンプ障害物を乗り越えるパターンの3種類のパターンに分けられ、各パターンにおける三角形バンプの配置方式はそれぞれ
図8、9、及び10に示された。
【0056】
(2)操縦安定性の定常円旋回テスト
車両に対してそれぞれアクティブサスペンションモードとパッシブサスペンションモードで操縦安定性の定常円旋回テストを行い、対応する車体レート・オブ・ロールを計算して比較した。テスト時、車両は
図6に示すアームを下げて走行するモードであった。アームを上げて走行するモードでテストを行わない理由として、ハイドロニューマチックサスペンションモードにおいて高い車速で操舵すると車両の横転を引き起こす可能性がある。
【0057】
(3)操縦安定性の緊急ブレーキテスト
車両に対してそれぞれアクティブサスペンションとパッシブハイドロニューマチックサスペンションの2種のモードにおいて、5km/hの車速で直進する中に急ブレーキ試験を行い、その車体ピッチ角をテストして比較した。テスト時、車両は
図5に示すアームを上げて走行するモードであった。
【0058】
3、テスト結果
上記テストスキームに従ってテストを行い、テスト結果及びテスト結論は以下の通りであった。
【0059】
(1)テスト結果は表2、表3及び表4に示された。
(2)テスト結論
【0060】
本発明のアクティブサスペンションを使用すると、元のハイドロニューマチックサスペンションと比較して、典型的な走行パターンにおける走行滑らかさ及び操縦安定性はいずれも大幅に向上した。
【0061】
(1)走行滑らかさテストについて、三角形障害物を乗り越える時、アクティブサスペンションはパッシブハイドロニューマチックサスペンションと比較して、加速度二乗平均平方根値が32.4%低減し、片側の車輪が三角形障害物を乗り越える時の平均車体ロール角が34.5%低減し、両側の車輪が三角形障害物を乗り越える時の平均車体ピッチ角が25.7%低減した。
【0062】
(2)操縦安定性の定常円旋回テストについて、アクティブサスペンションはパッシブハイドロニューマチックサスペンションと比較して、車体レート・オブ・ロールが左折時に40.8%低減し、右折時に51.2%低減した。
【0063】
(3)操縦安定性の緊急ブレーキテストについて、アクティブサスペンションはパッシブハイドロニューマチックサスペンションと比較して、車体ピッチ角ピークが64.6%低減した。
【0064】
【0065】
【0066】
表4 操縦安定性の緊急ブレーキテスト結果
【表4】
【0067】
上記テストによって得られた使用効果は
図4に示す本発明の第1実施例のサスペンションオイルシリンダの機能及び構造に基づいて得られ、サスペンションオイルシリンダの2つの室の圧力を測定することによって車輪支持力を計算し、利点は元のハイドロニューマチックサスペンションオイルシリンダの構造形態及びサイズを変更しないことである。なお、オイルシリンダに摩擦力が存在することによって、算出された車輪支持力に一定の誤差が生じる。
【0068】
代替可能な手段では、すなわち、
図11に示す本発明の第2実施例では、サスペンションオイルシリンダの車体に接続される端部に、車輪の支持力を測定するために1つの引張り圧力センサ6-1が取り付けられ、試験を行ったところ、車輪の支持力の測定精度は1%以下に達することができた。
図11におけるサスペンションオイルシリンダを使用すると、オイルシリンダに存在する摩擦力によって第1実施例で算出した車輪支持力に一定の誤差が生じるという問題を克服でき、サスペンション制御性能をさらに向上させることができる。なお、本発明の第2実施例では、サスペンションオイルシリンダの構造ひいてはサスペンションオイルシリンダの支持点の支持位置を変更するには、一定の取り付け空間が必要である。
【0069】
本明細書の説明では、用語「一実施例」、「いくつかの実施例」、「例」、「具体例」、又は「いくつかの例」などを参照する説明は、該実施例又は例を参照して説明される具体的な特徴、構造、材料又は特性が本発明の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意味する。本明細書では、上記用語の例示的な表現は必ずしも同じ実施例又は例を指すものではない。また、説明される具体的な特徴、構造、材料又は特性はいずれか1つ又は複数の実施例又は例において適宜組み合わせることができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態を説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の趣旨及び原則を逸脱せずに行われるいかなる変更、同等置換や改良などは本発明の保護範囲に含まれるべきである。