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特許7546984狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20240902BHJP
   A61B 5/1455 20060101ALI20240902BHJP
   G01N 21/359 20140101ALI20240902BHJP
【FI】
G01N21/17 610
A61B5/1455
G01N21/359
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023547675
(86)(22)【出願日】2022-01-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 KR2022000921
(87)【国際公開番号】W WO2022181994
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0026703
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523297963
【氏名又は名称】メディシングス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】キム,セ ファン
(72)【発明者】
【氏名】ラム,ジェシ ホウ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ア ラム
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-520182(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0023172(US,A1)
【文献】特表平10-513088(JP,A)
【文献】特開2017-187493(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0351635(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0209089(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/61
A61B 5/00 - A61B 5/398
A61B 9/00 - A61B 10/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線(Near Infrared Ray、NIR)が浸透したときに散乱(scttering)が発生する混濁媒質(turbid meida)において近赤外線(NIR)に基づく拡散反射分光法(Diffuse Reflectance Spectroscopy、DRS)を用いて組織(tissue)の水分(water)及び脂質(lipid)の含有量を定量化(quantify)することができるように構成される、狭帯域(narrow-band)拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法であって、
拡散反射分光法(DRS)を用いて測定対象に対する拡散反射率(diffuse reflectance)の測定が行われる測定段階と、
前記測定段階で測定されたデータを収集し、分析を行うことにより、前記測定対象の水と脂質含有量を算出する分析段階と、を含む処理が、専用のハードウェア、又はコンピュータを含むデータ処理手段を介して行われるように構成され、
前記測定段階は、
900~1000nmの近赤外線帯域のみを用いて前記測定対象に対する周波数領域光子移動(Frequency Domain Photon Migration、FDPM)測定が行われるように構成され
さらに、前記測定段階は、
光源に連結されたソース光ファイバー(source fiber)及び分光器(spectrometer)の検出光ファイバー(detection fiber)が所定の距離で離隔して搭載されるポリ乳酸(polylatic acid、PLA)プローブと、
前記測定対象とそれぞれの前記光ファイバーとの接触を防止するために、所定の厚さを有する透明プラスチックで形成され、前記プローブと前記測定対象の表面との間に配置されるバリアーと、を含んでなるDRS装置を用いて行われるように構成されることを特徴とする、狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法。
【請求項2】
前記分析段階は、
前記測定対象に対する理論的反射率(reflectance)をRとし、測定反射率(measured reflectance)をRmとし、前記測定対象の吸収(absorption)をμとし、前記測定対象の換算散乱(reduced scattering)をμ’とする場合(μ’>>μ)、
下記の数式を用いて、μ’=1.0mm-1と仮定し、関数fzeroを含む数値ソルバー(numerical solver)を適用して、理論的反射率(R)と測定反射率(Rm)との差が最小化されるようにするμを選択し、μスペクトルを算出する処理が行われるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法。
【数1】
【請求項3】
前記分析段階は、
最小二乗法(Least-Square Minimization、LSM)を用いて、前記数式によって算出されたμと下記の数式によって予測された吸収スペクトルμa,fitとを比較することにより、前記測定対象の水分濃度(CH2O)及び脂質濃度(CFAT)をそれぞれ算出する処理が行われるように構成されることを特徴とする、請求項に記載の狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法。
【数2】

(ここで、CH2OはHOの濃度、εH2OはHOの吸光係数、CFATはFATの濃度、εFATはFATの吸光係数、SFはスケーリング係数(scaling factor)をそれぞれ示す)
【請求項4】
前記分析段階は、
前記測定対象の水分比率(ratio of water fraction)をRH2Oとし、前記測定対象の脂肪比率(ratio of fat fraction)をRFATとする場合、下記の数式を用いて前記測定対象の水分比率及び脂肪比率をそれぞれ算出する処理が行われるように構成されることを特徴とする、請求項に記載の狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法。
【数3】
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法をコンピュータに実行させるように構成されるプログラムが記録されたコンピュータで読み取り可能な記録媒体。
【請求項6】
体成分(body composition)測定方法であって、
請求項1~のいずれか一項に記載の狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法を用いて測定対象の水分及び脂質含有量を測定するように構成される体成分測定システムを実現するシステム構築段階と、
前記体成分測定システムを用いて測定対象の水分及び脂質含有量を測定する測定段階と、
を含んでなることを特徴とする、体成分測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混濁媒質(turbid media)において水分(water)と脂肪(lipid)の含有量を定量化(quantify)する方法に関し、さらに詳細には、例えば、生体組織(bodily tissue)のように、近赤外線(Near Infrared Ray、NIR)が浸透したときに散乱が発生する混濁媒質(turbid media)において非侵襲的な(non-invasive)方法によって水分(water)と脂質(lipid)の含有量を定量化(quantify)することが可能な方法を提示していない従来技術の体成分(body composition)測定装置及び方法の問題点を解決するために、近赤外線(NIR)に基づく拡散反射分光法(Diffuse Reflectance Spectroscopy、DRS)を用いて組織(tissue)の水分及び脂質の含有量を正確に定量化することができるように構成される、狭帯域拡散反射分光法(narrow-band DRS)を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法に関する。
【0002】
また、本発明は、組織の水分と脂肪の含有量を測定するために周波数領域及び時間領域の拡散光学分光法(Diffuse Optical Spectroscopy、DOS)又は赤外線分光法(Infrared spectroscopy)を用いることによりハードウェアの構成が複雑になり、量産及び販売に制約があるという限界があった従来技術の分光法及びこれを用いた体成分測定装置及び方法の問題点を解決するために、900~1000nmの近赤外線帯域のみを使用する狭帯域拡散反射分光法(narrow-band DRS)を用いて、従来に比べてより簡単な構成で組織の水分と脂肪の含有量を正確に定量化することができるように構成される、狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、組織構造と生理学的反応を理解するにあたり、水分と脂肪の光学的検出が非常に重要であり、すなわち、例えば、乳がん研究において、水分と脂肪は、腫瘍をモニタリングし、組織類型(tissue type)を区別し、切除縁(resection margine)を決定するための重要なバイオマーカー(bio marker)として適用できる。
【0004】
また、最近では、例えば、フィットネス及び体重減量のためのスポーツ医学(sports medicine)分野、患者の水分補給(patient hydration)調節(regulate)のための救急医学(emergency medicine)分野、美容(cosmetic)及び皮膚科治療(dermatological treatments)分野などのように、様々な分野で組織の水分と脂肪の定量化に対する関心が高まっている。
【0005】
しかし、このように組織の水分と脂肪の定量化に対する重要性にも拘らず、組織の水分と脂肪の定量化のための従来技術の装置は、体成分(body composition)の定量化を妨げる要因(重量、大きさ、コストなど)を持っている。
【0006】
より詳細には、現代医学で使用可能な「標準(gold stadard)」装置には、磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging、MRI)、コンピュータ断層撮影(Computed Tomograhy、CT)及び二重エネルギーX線吸収法(dual energy X-ray absorptiometry)などがあり、ここで、体脂肪を推定する最も簡単な方法の一つは、スキンフォールドキャリパース(skinfold calipers)を用いる方法であるが、このようなスキンフォールドキャリパースを用いる方法は、その再現性(reproducibility)と正確性(accuracy)において論争の余地がある。
【0007】
また、最近では、人体に微細な電流を流したときに発生するインピーダンスを測定して体成分を推定する身体インピーダンス装置(body impedance device)が提示されたことがあるが、これは、特定の組織部位の測定が必要であるときに使用し難いという欠点がある。
【0008】
したがって、日常的臨床(routine clinical)又は個人的医療(personal health)手続き(procedure)として組織構成分析(tissue compositional anaylsis)の適用を拡大するためには、進入障壁が低く、正確であるうえ、非侵襲的(non-invasive)な方法が求められる。
【0009】
ここで、従来、近赤外線(NIR)における組織分光法(tissue spectroscopy)は、非侵襲的光学方式(optical modality)であって、生物学的散乱媒体(biological scattering media)において水分と脂肪を検出するのに特に適したことが証明されている。
【0010】
すなわち、可視光線及び赤外線照射光(interrogating light)は、一般に強い水分吸収によって真皮層(dermal layer)に制限されるが、これに対し、近赤外線波長(600~1000nm)の光源は、脂肪及び筋肉組織への深い光浸透(light penetration)が可能なスペクトルウィンドウ(spectral window)に落ちる。
【0011】
しかし、組織の水分と脂肪を決定するNIR装置は、周波数領域及び時間領域拡散光学分光法(Diffuse Optical Spectroscopy、DOS)を用いることにより、高周波変調発生器(high-frequency modulation generator)やピコ秒光子検出器(picosecond photon detector)などの複雑な装備が含まれるので、マス市場(mass market)に進入し難いという問題がある。
【0012】
また、従来、900~1600nmの波長ウィンドウ(wavelength window)内で複数の水分及び脂肪吸収スペクトル特徴の利点を有する連続波法(continuous-wave method)が提示されているが、赤外線分光法(Infrared spectroscopy)を用いるためには、零下の条件下で動作するインジウムガリウムヒ素(Indium Gallium Arsenide、InGaAs)分光器などの検出器が必要であるが、1000nm以上の水による吸収は、光学照射深さを制限して皮膚及び皮下層を介したより深い接近を難しくする。
【0013】
このため、上述した従来技術の問題点を解決するためには、既存に提示された従来技術の内容に基づいて組織の水分と脂肪を推定するためのハードウェア構成が簡略化されたDRS(Diffuse Reflection spectroscopy)装置及び方法を提示することが好ましいが、依然として、それらの要求をすべて満たす装置又は方法は提示されていない実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためのもので、その目的は、生体組織(bodily tissue)のように、近赤外線(Near Infrared Ray、NIR)が浸透したときに散乱(scattering)が発生する混濁媒質(turbid media)において非侵襲的な(non-invasive)方法によって水分(water)と脂質(lipid)の含有量を定量化(quantify)することが可能な方法を提示していない従来技術の体成分(body composition)測定装置及び方法の問題点を解決するために、近赤外線(NIR)に基づく拡散反射分光法(Diffuse Reflectance Spectroscopy、DRS)を用いて組織(tissue)の水分及び脂質の含有量を正確に定量化することができるように構成される、狭帯域拡散反射分光法(narrow-band DRS)を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法を提供することにある。
【0015】
また、本発明の他の目的は、組織の水分と脂肪の含有量を測定するために周波数領域及び時間領域の拡散光学分光法(Diffuse Optical Spectroscopy、DOS)又は赤外線分光法(Infrared spectroscopy)を用いることにより、ハードウェアの構成が複雑になり、量産及び販売に制約があるという限界があった従来技術の分光法及びこれを用いた体成分測定装置及び方法の問題点を解決するために、900~1000nmの近赤外線帯域のみを使用する狭帯域拡散反射分光法(narrow-band DRS)を用いて、従来に比べてより簡単な構成で組織の水分と脂肪の含有量を正確に定量化することができるように構成される、狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明によれば、近赤外線(Near Infrared Ray、NIR)が浸透したときに散乱(scattering)が発生する混濁媒質において近赤外線(NIR)に基づく拡散反射分光法(Diffuse Reflectance Spectroscopy、DRS)を用いて組織(tissue)の水分(water)及び脂質(lipid)の含有量を定量化(quantify)することができるように構成される狭帯域(narrow-band)拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法において、拡散反射分光法(DRS)を用いて測定対象に対する拡散反射率(diffuse reflectance)の測定が行われる測定段階と、前記測定段階で測定されたデータを収集し、分析を行うことにより、前記測定対象の水と脂質含有量を算出する分析段階と、を含む処理が、専用のハードウェア、又はコンピュータを含むデータ処理手段を介して行われるように構成され、前記測定段階は、900~1000nmの近赤外線帯域のみを用いて前記測定対象に対する周波数領域光子移動(Frequency Domain Photon Migration、FDPM)測定が行われるように構成されることを特徴とする、狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法が提供される。
【0017】
ここで、前記測定段階は、光源に連結されたソース光ファイバー(source fiber)及び分光器(spectrometer)の検出光ファイバー(detection fiber)が所定の距離で離隔して搭載されるポリ乳酸(polylatic acid、PLA)プローブと、前記測定対象とそれぞれの前記光ファイバーとの接触を防止するために、所定の厚さを有する透明プラスチックで形成され、前記プローブと前記測定対象の表面との間に配置されたバリアーと、を含んでなるDRS装置を用いて行われるように構成されることを特徴とする。
【0018】
また、前記分析段階は、前記測定対象に対する理論的反射率(reflectance)をRとし、測定反射率(measured reflectance)をRmとし、前記測定対象の吸収(absorption)をμとし、前記測定対象の換算散乱(reduced scattering)をμ’とする場合(μ’>>μ)、下記の数式を用いて、μ’=1.0mm-1と仮定し、MATLAB関数fzeroを含む数値ソルバー(numerical solver)を適用して、理論的反射率Rと測定反射率Rmとの差が最小化されるようにするμを選択し、μスペクトルを算出する処理が行われるように構成されることを特徴とする。
【0019】
【数1】
【0020】
また、前記分析段階は、最小二乗法(Least-Square Minimization、LSM)を用いて、前記数式によって算出されたμと下記の数式を用いて予測された吸収スペクトルμa,fitとを比較することにより、前記測定対象の水分濃度(CH2O)及び脂質濃度(CFAT)をそれぞれ算出する処理が行われるように構成されることを特徴とする。
【0021】
【数2】
【0022】
(ここで、CH2OはHOの濃度、εH2OはHOの吸光係数、CFATはFATの濃度、εFATはFATの吸光係数、SFはスケーリング係数(scaling factor)をそれぞれ示す。)
また、前記分析段階は、前記測定対象の水分比率(ratio of water fraction)をRH2Oとし、前記測定対象の脂肪比率(ratio of fat fraction)をRFATとする場合、下記の数式を用いて前記測定対象の水分比率及び脂肪比率をそれぞれ算出する処理が行われるように構成されることを特徴とする。
【0023】
【数3】
【0024】
また、本発明によれば、上述した狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法をコンピュータに実行させるように構成されるプログラムが記録されたコンピュータで読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0025】
また、本発明によれば、体成分(body comosition)測定装置において、測定対象の水分及び脂質含有量を測定するように構成される測定部と、前記測定部の測定結果を表示及び伝達するためのディスプレイ又は出力手段を含む出力部と、を含んでなり、前記測定部は、上述した狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法を用いて測定対象の水分及び脂質含有量を測定するように構成されることを特徴とする、体成分測定装置が提供される。
【0026】
また、本発明によれば、体成分(body composition)測定方法において、上述した狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法を用いて測定対象の水分及び脂質含有量を測定するように構成される体成分測定システムを実現するシステム構築段階と、前記体成分測定システムを用いて測定対象の水分及び脂質含有量を測定する測定段階と、を含んでなることを特徴とする、体成分測定装置が提供される。
【発明の効果】
【0027】
上述したように、本発明によれば、近赤外線(NIR)に基づく拡散反射分光法(DRS)を用いて組織の水分及び脂質含有量を正確に定量化することができるように構成される狭帯域拡散反射分光法(narrow-band DRS)を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法が提供されることにより、生体組織のように近赤外線(NIR)が浸透したときに散乱が発生する混濁媒質において非侵襲的な方法によって水分と脂質の含有量を定量化することが可能な方法が提示されていない従来技術の体成分測定装置及び方法の問題点を解決することができる。
【0028】
また、本発明によれば、上述したように900~1000nmの近赤外線帯域のみを使用する狭帯域拡散反射分光法を用いて、従来に比べてより簡単な構成で組織の水分と脂肪の含有量を正確に定量化することができるように構成される狭帯域拡散反射分光法(narrow-band DRS)を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法が提供されることにより、組織の水分と脂肪含有量を測定するために周波数領域及び時間領域の拡散光学分光法(DOS)又は赤外線分光法を用いることでハードウェア構成が複雑になり、量産及び販売に制約があるという限界があった従来技術の分光法及びこれを用いた体成分測定装置及び方法の問題点を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態における、エマルジョンファントム及びブタサンプルに対する測定のための構成を概略的に示す図である。
図2】600~1050nmの波長範囲における水(HO)及び脂質(FAT)に対する吸収係数を示す図である。
図3】体積別エマルジョンファントムの組成を予測されたRFAT及びRH2Oに従って表にまとめて示す図である。
図4】計算された相対吸収とフィッティング成分を示す図である。
図5】RH2O及びRFATの値を計算された予想値と比較して示す図である。
図6】吸収スペクトルに対する様々な換算散乱プロファイルの効果と発色団フィッティングを示す図である。
図7】互いに異なるμ’仮定を有する3つのシナリオのそれぞれについて、P2に対して計算されたRH2O及びRFATを示す図である。
図8】2つの互いに異なる空間位置において生体外ブタサンプルを光学的に測定した結果をそれぞれ示す図である。
図9】本発明の実施形態による狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法の全体的な構成及び処理フローを概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して、本発明による狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法の具体的な実施形態について説明する。
【0031】
ここで、以下に説明する内容は、本発明を実施するための一実施形態に過ぎず、本発明は、以下に説明する実施形態の内容に限定されるものではないことに留意すべきである。
【0032】
また、以下の本発明の実施形態についての説明において、従来技術の内容と同一又は類似するか、或いは当業者のレベルで容易に理解及び実施し得ると判断される部分については、説明を簡略化するためにその詳細な説明を省略したことに留意すべきである。
【0033】
すなわち、本発明は、後述するように、生体組織のように近赤外線(NIR)が浸透したときに散乱が発生する混濁媒質において非侵襲的な方法によって水分と脂質の含有量を定量化することが可能な方法が提示されていない従来技術の体成分測定装置及び方法の問題点を解決するために、近赤外線に基づく拡散反射分光法(DRS)を用いて組織の水分及び脂質含有量を正確に定量化することができるように構成される、狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法に関する。
【0034】
また、本発明は、後述するように、組織の水分と脂肪含有量を測定するために周波数領域及び時間領域の拡散光学分光法(DOS)又は赤外線分光法を用いることによりハードウェア構成が複雑になり、量産及び販売に制約があるという限界があった従来技術の分光法及びこれを用いた体成分測定装置及び方法の問題点を解決するために、900~1000nmの近赤外線帯域のみを使用する狭帯域拡散反射分光法(narrow-band DRS)を用いて従来に比べてより簡単な構成で組織の水分と脂肪の含有量を正確に定量化することができるように構成される、狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法に関する。
【0035】
次に、図面を参照して、本発明による狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法の具体的な内容について説明する。
【0036】
すなわち、本発明者らは、後述するようにして、900~1000nmの近赤外線帯域のみを使用する狭帯域拡散反射分光法を用いて、従来に比べてより簡単な構成で組織の水分と脂肪の含有量を正確に定量化することができるように構成される、狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法を提示しており、その実際性能を検証するために、水と油成分の多様な混合比率を持つ混濁エマルジョンファントム(emulsion phantom)を通じて媒質の多様な散乱の仮定に対する測定を行い、その結果を600~1000nmの近赤外線光源を用いて混濁媒質における水分と脂肪を定量化することができる従来技術の代表的な方法である既存のFDPM(frequency-domain photon migration)システムと比較して検証した。
【0037】
しかも、本発明者らは、後述するようにして、本発明による狭帯域拡散反射分光法を用いた定量化方法の水分と脂肪測定性能を生体外(ex-vivo)ブタサンプルにおいても検証した。このために、生体外(ex-vivo)ブタサンプルに対する本発明による測定結果を、分析化学方法(analytical chemical method)によって生体外ブタサンプルから直接水分を抽出した結果と比較して検証した。
【0038】
より詳細には、まず、図1を参照すると、図1は、本発明の実施形態における、エマルジョンファントム及びブタサンプルに対する測定のための構成を概略的に示す図である。
【0039】
図1に示した構成において、タングステン-ハロゲンランプに連結されたソース光ファイバー(source fiber)が分光器検出光ファイバー(spectrometer detection fiber)と離隔して固定され、2つのファイバーは3Dプリントされた黒色プローブに搭載され、厚さ約0.025mmの透明プラスチックバリアーがプローブと測定面との間に配置されて構成されている。
【0040】
より詳細には、本発明の実施形態において、DRS測定は、50μmの光ファイバーと直径1mmのソリッドコア集光ファイバー(solid-core collection fiber)からなる直径3mmのソース光ファイバーバンドル(source optical fiber bundle)(R Specialty Optical Fibers LLC、Williamsburg、VA)を用いて行われた。タングステン-ハロゲンランプ(HL-2000-FHSA、Ocean Optics Inc.、Largo、FL)は、分光計(HS2048XL-U2、Avantes、Apeldoorn、Netherlands)が拡散反射率(diffuse reflectance)を検出する間に定常状態(steady-state)の広帯域光(broadband light)を提供し、光ファイバーは、3Dプリントされたポリ乳酸(polylactic acid、PLA)プローブによって19.5mmのソース検出器分離器(source-detector separation)に固定され、キャリブレーション(calibration)は、反射率標準(SRS-02-020、Labsphere Inc.、North Sutton、NH)を用いて行われた。サンプルと光ファイバーの表面との接触を防止するために、図1に示すように、サンプルとプローブとの間に薄い(約0.025mm)透明プラスチックバリアーが配置された。
【0041】
また、透明プラスチックバリアーは、キャリブレーション過程中にも存在し、周波数領域光子移動(Frequency Domain Photon Migration、FDPM)データは、仮定散乱(assuming scattering)に対する測定された散乱(measured scattering)使用の影響(impact)を示すために特定のサンプルでキャプチャされた。
【0042】
ここで、FDPMは、従来技術の文献等によって広く知られている。すなわち、FDPMは、レーザー光がMHz~GHz領域で変調及び検出される非侵襲的定量光学方法(non-invasive quantitative optical method)であって、検出された振幅減衰(amplitude decay)及び位相遅延光学パラメータ(phase delayed optical parameter)を分析することにより、混濁媒質の吸収(absorption)(μ)及び換算散乱(reduced scattering)(μ’)がそれぞれのレーザー波長で計算でき、FDPM用ハードウェアは、複数の400μmの光ファイバーを共通出力(common output)に結合する光ファイバーバンドル(optical fiber bundle)を用いて誘導される659nm、690nm、791nm及び829nmの中心レーザー波長を持つレーザーダイオード制御のためのカスタム回路で構成されている(R Specialty Optical Fibers LLC、Williamsburg、VA)。
【0043】
しかも、50~500MHzの範囲を掃引(sweeping)するレーザー変調(lasermodulation)は、ネットワーク分析器(network analyer)(TR1300/1、Copper Mountain Technologies、Indianapolis、Indiana)によって提供され、変調された光の検出は、アバランシェフォトダイオード(avalanche photodiode)(S12023-10 with C5658、Hamamatsu Photonics KK、浜松市、日本)を用いて収集された。FDPMキャリブレーションは、特定の(characterized)光学特性(optical property)を有するシリコーンベースのファントム(silicone-based phantom)が使用された。
【0044】
また、900~1000nmの範囲の散乱プロファイル(scattering profile)を計算するために電力法則(power law)が使用されており、装置を動作させるためにノートパソコン(HP Elitebook 735 G6、Hewlett-Packard、Palo Alto、CA)が使用されている。データ分析は、カスタムMATLAB 2016aコードとExcel(Microsoft Excel)によって同一のノートパソコンを用いて行われた。
【0045】
続いて、データ処理について説明すると、本発明者らは、測定されたサンプルの水分及び脂肪含有量を単一ソース-検出ペア(source-detection pair)で本発明の実施形態によるDRS方法を用いて推定した。このとき、900~1000nmの波長領域で水(HO)及び脂質(FAT)の発色団吸光係数(chromophore extinction coefficients)を考慮した。このような波長範囲には、図2に示すように、HO及びFATスペクトルピークが含まれる。
【0046】
すなわち、図2を参照すると、図2は、600~1050nmの波長範囲における水(HO)及び脂質(FAT)に対する吸収係数(absorption coefficient)を示す図である。
【0047】
図2において、水(HO)に対する吸収係数は黒線で表示されており、脂質(FAT)に対する吸収係数は灰色線で表示されている。この作業において、データ分析は、ハイライト表示されているように、HO及びFATスペクトルピーク(spectral peak)を含む900~1000nm帯域に制限された。
【0048】
ここで、混濁サンプル(turbid sample)に対する理論的な反射率(reflectance)(R)は、下記の[数式1]に示すように、外挿境界条件(extrapolated boundary conditions)を有するμ及びμ’に関連する拡散モデルを用いて表すことができる。
【0049】
[数式1]
【数4】
【0050】
ここで、c及びcは、空気-サンプルインターフェース(air-sample interface)に関連する定数であり、フルエンス(fluence)
【0051】
【数5】
【0052】
及びフラックス(flux)
【0053】
【数6】
【0054】
はそれぞれ、次の通りである。
【0055】
【数7】
【0056】
また、拡散定数(diffusion constant)DはD=[3(μ+μ’)]-1であり、有効減衰(effective attenuation)μeffはμeff=(μ/D)1/2であり、等方性ソース深さ(isotropic source depth)ZはZ=1/(μa+μ’)であり、ゼロフルエンス外挿距離(zero fluence extrapolated distance)zはz=(2D(1+Reff))/(1-Reff)である。
【0057】
ここで、Reffは空気とサンプルの屈折率(refractive index)に基づく定数であり、このモデルの適用はμ’がμよりも遥かに大きいと仮定する。
【0058】
さらに、補正された測定反射率(calibrated measured refectance)(Rm)は、一般に単位のない強度(unitless intensity)で表現されるが、μスペクトルは、下記[数式2]に示すように、μ’=1.0mm-1と仮定し、MATLAB関数fzeroなどの数値ソルバー(numerical solver)を適用して計算できる。
【0059】
[数式2]
【数8】
【0060】
ここで、Rは上記の[数式1]からの理論的反射率であり、それぞれの波長に対して、RmとRとの差が最小化されるようにμが選択されてμスペクトルが生成され、このようなμスペクトルは散乱仮定(scattering assumption)により実際絶対単位(true absolute units)で直ちに表現できないが、μの形状(shape)は依然としてサンプルの相対発色団濃度(relative chromophore concentration)に関連する情報を提供することができ、900~1000nmの領域に脂質及び水分消滅係数ピークが含まれていることにより、下記[数式3]のようにして、スペクトル特徴(spectral feature)に合わせることで発色団の濃度を求めることができる。
【0061】
[数式3]
【数9】
【0062】
すなわち、上記の[数式3]は、HO濃度(CH2O)と吸光係数(εH2O)との積(product)、FAT濃度(CFAT)と吸光係数(εFAT)との積、及びスケーリング係数(scaling factor、SF)の線形結合(linear combination)の結果として予想される吸収スペクトル(μa,fit)を示すもので、CH2O、CFAT及びSFに対する値は、上記の[数式3]を用いて予測されたμと、上記の[数式2]を用いて計算されたμとを比較する最小二乗法(Least-Square Minimization、LSM)によって求められることができる。
【0063】
このとき、SFは、最小化過程中に波長依存性(wavelength dependance)が使われないオフセット定数であり、このようなSFを用いて、絶対値の代わりにμの形状に合わせて発色団の濃度が求められ得る。
【0064】
最後の段階で、水分比率(ratio of water fraction)RH2Oは、RH2O=CH2O/(CH2O+CFAT)によって計算され、脂肪比率(ratio of fat fraction)RFATは、RFAT=CFAT/(CH2O+CFAT)によって計算される。
【0065】
また、後述するように、本発明による方法は、絶対的な光学特性(sbsolute optical property)に相対的に関係ない(relatively agnostic)ので、μ’仮定の選択は特に重要ではなく、RH2O及びRFATの計算は共通のμスペクトルベースの比率であるので、単一距離(single-distance)DRS測定のみが要求される。
【0066】
次に、エマルジョンファントム(emulsion phantom)の製作について説明すると、本発明の実施形態において、本発明者らは、大豆レシチン(soy lecithin)を乳化剤(emulsifier)として用いて、様々な大豆油(soybean oil)と蒸留水(distilled water)の比率を有する650mLのエマルジョンファントムセットを製作し(和光純薬工業株式会社、大阪、日本)、それぞれのファントムは、油中水エマルジョン(water-in-oil emulsions)で作られたが、従来技術の文献によって提示されているように、エマルジョンファントムの水と脂質の比率を高めると、散乱特性を大幅に増加させることができる。これは、主に水中油混合物(oil-in-water mixture)の形成によるものであるので、図3の表に示すように、全てのファントムを油中水に維持するために最大0.6のRH2Oが達成され
【0067】
すなわち、図3を参照すると、図3は、体積別エマルジョンファントムの組成を予測されたRFAT及びRH2Oに従って表にまとめて示す図である。
【0068】
図3において、大豆油と蒸留水の体積は別々に測定され、それぞれのファントムに対して大豆レシチンがオイル体積重量の2%で添加された。大豆レシチンの高い粘性(viscous consistency)によりオイルをまず60℃に加熱した後、計量ビーカーの側面に付着して残りうるレシチンを移すために使用された。オイル-レシチン混合物を60℃で1時間超音波処理(sonicated)(Bransonic CPX3800H-E、Emerson Electric、Danbury、CT)し、均質化(homogenization)のために、従来技術では、ブレンド後に真空チャンバーを用いて気泡を除去したが、本実施形態では、真空機能が内蔵されたブレンダー(i8800、Jiaxiang Electric Co.、LTD、Guangdong、China)が使用された。
【0069】
次に、生体外(Ex-vivo)ブタモデルについて説明すると、本発明者らは、地域屠殺場で腹部部位(abdominal area)の2つのブタ片(porcine slab)の供給を受け(それぞれ約12×10×5cm)、実験現場への輸送中に、サンプルは低温に保たれたが、水の損失を防ぐために凍結せず、測定前にブタ片が室温に達するまで放置した。光学ポスト(optical post)を用いてDRSプローブを装着し、測定中にサンプルと接触するように位置させ、各ブタサンプルから2つの異なる測定部位が選択された。それぞれの測定部位は、測定中の光漏れを最小限に抑えるためにサンプルのエッジから3cm以上離れており、2つの測定位置は3cm離隔しており、2つの位置でDRSデータをキャプチャした後、各光学測定部位の中央に3cmサイズの立方体(cube)を切除し、切除された組織は直ちに水分(MOI)分析のために処理された。
【0070】
次いで、組織水分抽出(tissue moisture extraction)について説明すると、生体外(in vitro)ブタ組織のMOI(Multiplicity Of Infection)フラクション(fraction)は、Association of Official Analytical Chemists(950.46 AOAC)の方法に基づいて定量化学(quantitative chemistry)を用いて決定された。すなわち、高精度スケール(AS 220.R2、Radwag、Radom、Poland)を用いて各3cm部分(section)の重量を測定した後、均質化されるまで別途サンプルをブレンドし、各サンプルから重複を抽出し、アルミニウム皿の重量を測定した後、サンプルを125℃で4時間機械式オーブン(Heratherm OMS60、Thermo Scientific、Waltham、MA)に位置させて加熱した後、サンプルをデシケーター(desiccator)(Nalgene 5312-0230、Thermo Scientific、Waltham、MA)に入れて冷却させた。各サンプルの最終重量は、高精度天秤を用いて記録され、MOIは下記[数式4]のようにして計算された。
【0071】
[数式4]
【数10】
【0072】
ここで、ω(s)iは加熱前のサンプルの初期重量、ω(s)fは加熱後の最終サンプルの重量をそれぞれ示す。
【0073】
次に、図4を参照して、上述のようにして行われた測定結果について説明する。
【0074】
すなわち、図4を参照すると、図4は、計算された相対吸収(relative absorption)とフィッティング成分(fitting component)を示す図である。
【0075】
図4において、左段(column)は、相対吸収係数(relative absorption coefficient)を円で表しており、発色団フィッティング(chromophore fit)は実線で表しており、各発色団の吸収寄与度(absorption contribution)は、HOが四角形、FATが三角形で右段に表示されており、SFはスペクトル的に平坦な点線で表示されている。
【0076】
図4に示すように、吸収スペクトル(absorption spectra)と発色団(chromophore)は、それぞれのエマルジョンファントムに対して900~1000nmの波長にフィット(fit)され、全てのデータに対して、μ’は1.0mm-1と設定された。976nmでの水スペクトルピークは、ファントムシリーズ(phantom series)が進行するにつれて、930nmでの脂質ピークに比べて上昇することを確認することができ、全体吸収に対する各フィッティング成分(fitting component)の吸収寄与度も一緒に表示される。
【0077】
また、図5を参照すると、図5は、復元(recovered)されたRH2O及びRFATの値を、図3の表に示すような計算された予想値と比較して示す図である。
【0078】
図5において、多様なRH2O及びRFATを有する5つのエマルジョンファントムに対する測定を行い、測定されたRH2O(三角形で表示)とRFAT(円で表示)を、実線で表示された予想値と比較した結果を示しており、実際比率(true ratio)と比較した平均誤差は、2つのパラメータとも3.7±3.0%であり、RFAT及びRH2Oに対しては、趨勢線(trend line)が計算されて2つのメートリックに対する決定係数(coefficient of determination)R=0.99となる。
【0079】
すなわち、図5に示すように、脂肪に富んだ生物学的サンプル(adipose-rich biological samples)において、RH2O及びRFATはそれぞれCH2O及びCFATに接近し、結晶係数がR=0.99である予想値と比較してRH2O及びRFATの両方に対して非常に線形的な傾向(highly linear trend)が観察された。各パラメータに対するRH2O及びRFAT誤差は1.1%~8.4%の範囲であり、5つのエマルジョンファントムにわたって平均誤差は3.7±3.0%であった。
【0080】
さらに、本発明者らは、上記の[数式2]を用いて補正された反射率を吸収に変換した。
【0081】
すなわち、図6を参照すると、図6は、吸収スペクトルに対する様々な換算散乱プロファイルの効果と発色団フィッティングを示す図である。
【0082】
図6において、吸収スペクトルは円で表示されており、発色団フィッティングは実線で表示されており、水と脂質ピークにおける吸収値は、四角形マーカーを用いて表示されている。
【0083】
また、図6の(a)はFDPM装置を用いて測定された散乱を示し、図6の(b)はμ’=1.0mm-1と仮定して換算散乱を示し、図6の(c)はμ’=2.0mm-1と仮定して換算散乱を示している。
【0084】
図6に示すように、ファントムP2に対して、a)FDPMデータから誘導される(derived)測定されたμ’、b)波長依存性のないμ’=1.0mm-1の仮定、c)波長依存性のないμ’=2.0mm-1の仮定の、3つの互いに異なるμ’値が使用された。ここで、μスペクトルの値だけでなく、それぞれFAT及びHO吸収ピークであるμ(976nm)に対するμ(930nm)値もμ’の選択に影響される。
【0085】
しかも、図7を参照すると、図7は、互いに異なるμ’仮定を有する3つのシナリオのそれぞれについて、P2に対して計算されたRH2O及びRFATを示す図である。
【0086】
すなわち、図7において、1)FDPMで測定された換算散乱を用いた場合、2)μ’を1.0mm-1と仮定した場合、3)μ’を2.0mm-1と仮定した場合にデータ集合から復元されたRH2O及びRFATをそれぞれ表示しており、図6に示すように、互いに異なるμ’sパラメータが互いに異なるμスペクトルを生成するにも拘らず、FATとHOの比率は1%以内で一貫して維持された。
【0087】
次に、図8を参照すると、図8は、2つの互いに異なる空間位置(spatial locations)で生体外(ex-vivo)ブタサンプルを光学的に測定した結果をそれぞれ示す図である。
【0088】
ここで、図8において、各光学測定の中心から約3cmの組織を切除してMOIを計算し、本発明の実施形態によるDRS技法(サンプル当たりn=18)を用いて計算されたRH2Oと、分析化学方法で抽出されたMOI(サンプル当たりn=4)とを比較して示している。
【0089】
図8に示すように、本発明者らは、MOIを計算することができるようにするために、4つのブタ腹部組織サンプルを脱水させた。このとき、2つのサンプルは腹部Aから切除されたのに対し、他の2つの異なるサンプルは腹部Bから採取された。腹部Aは厚い脂肪表面層(adiose surface layer)を有することが観察され、腹部Bは著しく細くなったことが観察された。分析化学方法で誘導されたDRS及びMOIを用いて推定されたRH2Oは、図8に示す通りである。
【0090】
上述したように、本発明では、散乱媒質においてRH2O及びRFATを復元する本発明の実施形態によるDRS方法を評価するために、様々な水と油の比率を用いて一連のファントムを製作した。脂質及び水分吸収ピークとしてそれぞれ知られた930nm及び976nmを含むように900~1000nmの波長領域が選択された。
【0091】
また、従来技術の文献などに提示された技術内容は、定量的接近方式を用いて混濁媒質の水分と脂肪を測定するが、これに対し、本発明の実施形態によるDRS技術は、基本的な拡散反射率(basic diffuse reflectance)に基づくものであり、波長に対する相対的な光の強度を測定する技術であり、絶対的な光学的特性がないにも拘らず、強度スペクトル(intensity spectrum)の形状(shape)は、水と脂肪を推定するために測定されたサンプル内の発色団(chromophore)に対する情報を提供し続けることができる。
【0092】
しかも、図4に示すように、図示されたμスペクトルは、推定された散乱により絶対的であると見なされることができないが、予想通りにファントムシリーズが進行するにつれて、脂質ピークに比べて水ピークが上昇することを確認することができ、[数式3]によってCH2O、CFAT及びSFの線形組み合わせをフィッティングして相対発色団濃度を復元することができる。
【0093】
ここで、SFを含むと、相対吸収スペクトルの形状に合わせるための絶対値のディエンファシス(de-emphasis)が可能であるが、それにも拘らず、相対スペクトルにおいて発色団濃度を直接決定しようとする試みは、水と脂質値の不正確さを引き起こす。
【0094】
したがって、本発明では、共通相対吸収スペクトルに基づく比率RH2O及びRFATパラメータを導入しており、本発明の実施形態によるDRS接近方式を用いて、知られているオイルと水の比率から計算された実際値と比較して非常に線形的な趨勢(R=0.99)と予想結果(3.7±3.0%の誤差)との優れた一致を発見した。
【0095】
しかも、本発明の実施形態による接近方式は、広帯域DOS及び時間領域DOSを活用した従来技術の内容と比較して線形性と精度の結果は類似するが、著しく低い複雑度を有する光学ハードウェアを使用するので、基本的には、100nm光源(900nm~1000nm)と分光計のみで構成できる。このようなハードウェア要求事項は、本発明の技術に基づいて携帯用及びウェアラブルタイプのセンサーを開発する際に、追加の波長最適化研究によってさらに減少できると期待される。
【0096】
また、補正された反射率測定は、[数式1]に示すように、吸収に関連することができるが、サンプルの光学的特性に対する事前情報なしに、本発明では、相対吸収を計算するために散乱プロファイルを仮定し、本発明の実施形態による方法が散乱仮定に鈍感であることを観測した。
【0097】
すなわち、散乱プロファイルの選択は結果吸収スペクトルに影響を及ぼすが、最終的なRH2O及びRFATの結果は1%の差にのみ変更された。これは、次の通りに説明できる。
【0098】
第一に、RH2OとRFATは、同じ相対吸収スペクトルを基準とする比率であり、これは、RH2O及びRFATが平坦(smooth)で連続的な(continuous)変化であって、吸収スペクトルに影響を及ぼす散乱仮定の選択に強健(robust)にする。
【0099】
第二に、Mie理論から分かるように、μ’(λ)の波長依存性は、波長が増加するにつれて弱くなり、900~1000nmの領域で散乱プロファイルがほぼ平坦になる(nearly flat)。したがって、[数式2]を実現するときに、負(negative)のμ(λ)を計算しない限り、μ’(λ)仮定の効果は最小限に抑えられる。
【0100】
しかも、本発明の実施形態では、生体外ブタサンプルにおいて光学的に測定されたRH2Oを検証するために、分析化学方法によって組織から水分含有量を直接抽出した。このために、「サンプルA」と「サンプルB」の2部位のブタ組織が使用された。「サンプルA」は、「サンプルB」(~0.3mm)よりも一層厚い上部脂肪層(~2cm)を有することが観察された。
【0101】
また、本発明の実施形態において、ソース-検出器の構成において平均光学浸透深さと光学信号の95%以上がサンプルに入射された後、1cm以内に含まれた可能性が高いが、MOI分析のために、脱水計算のために十分なサンプル質量を確保するように、各サンプルから遥かに大きい3cmの体積を除去した。
【0102】
したがって、RH2OとMOIとの一部の不一致は、分析ボリュームの差異によるものとして説明でき、サンプルAに対して、DRS敏感度は、脂肪含有量が高く、水分含有量が低い最高脂肪層(top adipose layer)に制限できたが、これに対し、MOI分析の場合、著しく脂肪の少ない組織(lean tissue)が含まれた。
【0103】
実際に、サンプルAに対するRH2Oは、腹部脂肪組織において0.15~0.3の水分比率を示した従来技術の内容と一致し、0.43のMOI値は、混合された脂肪-筋肉組成を示す可能性が高く、サンプルBの場合、さらに薄い脂肪の存在により光学及びMOI抽出方法の組織体積はいずれも、脂肪の少ない組織が支配的なサンプルが含まれているので、密接に一致した。
【0104】
以上、上述した本発明の実施形態において、本発明者らは、900~1000nmの波長領域の近赤外線(NIR)を用いて局所組織(local tissue)の水分及び脂質含有量などの体成分(body composition)を正確に測定可能であって簡単なハードウェア構成で量産及び販売ができるように構成される狭帯域DRS法を提示しており、様々な脂質と水混合物(lipid and water mixture)を持つエマルジョンファントム(emulsion phantom)を用いて提示された方法の性能を確認した。
【0105】
これと共に、測定項目が散乱仮定に敏感ではないため、絶対散乱定量化の必要性が除去されたことを示しており、本発明が絶対散乱仮定(absolute scattering assumption)に対する堅牢性(robustness)の利点を有することを証明した。さらに、生体外(ex-vivo)ブタサンプル(porcine sample)を用いて分析化学方法(analytical chemical method)で直接水抽出を行い、本発明のDRS結果と比較することにより、本発明に提示されたDRS方法が医療分野だけでなく、フィットネスや個人及び家庭用として幅広く活用可能であることを証明した。
【0106】
したがって、上述したような内容から、本発明の実施形態による狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法を容易に実現することができる。すなわち、図9を参照すると、図9は、本発明の実施形態による狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法の全体的な構成及び処理フローを概略的に示すフローチャートである。
【0107】
図9に示すように、本発明の実施形態による狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法は、大きく、レーザー光を用いて測定対象の拡散反射率(diffuse reflectance)を測定するように構成されるDRS測定装置を用いて、DRS測定装置に測定対象を位置させ、測定対象に対するDRS測定を行う測定段階(S10)と、上記の段階(S10)で測定されたデータを収集し、分析を行うことにより、測定対象の水と脂質含有量を算出する分析段階(S20)と、を含んで構成できる。
【0108】
ここで、上述した測定段階(S10)は、図1を参照して上述したように構成されるDRS測定装置を用いて測定が行わる。このとき、上述したDRS測定装置は、900~1000nmの近赤外線帯域のみを用いて測定対象に対するFDPM測定が行われるように構成できる。
【0109】
また、上述した分析段階(S20)は、図2及び[数式1]~[数式3]を参照して上述したようにして、測定段階(S10)で測定されたデータに基づいて測定対象の水と脂肪含有量を算出する処理が、専用のハードウェア、又は、好ましくは、コンピュータを含むデータ処理手段を用いて行われるように構成できる。
【0110】
したがって、上述したようにして、本発明の実施形態による狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法を実現することができる。それにより、本発明によれば、近赤外線(NIR)に基づく拡散反射分光法(DRS)を用いて組織の水分及び脂質含有量を正確に定量化することができるように構成される狭帯域拡散反射分光法(narrow-band DRS)を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法が提供されることにより、生体組織のように近赤外線(NIR)が浸透したときに散乱が発生する混濁媒質で非侵襲的な方法によって水分と脂質の含有量を定量化することができる方法が提示されていない従来技術の体成分測定装置及び方法の問題点を解決することができる。
【0111】
また、本発明によれば、上述したように900~1000nmの近赤外線帯域のみを使用する狭帯域拡散反射分光法(narrow-band DRS)を用いて、従来に比べてより簡単な構成で組織の水分と脂肪の含有量を正確に定量化することができるように構成される狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法が提供されることにより、組織の水分と脂肪含有量を測定するために周波数領域及び時間領域の拡散光学分光法(DOS)又は赤外線分光法を用いることでハードウェア構成が複雑になり、量産及び販売に制約があるという限界があった従来技術の分光法及びこれを用いた体成分測定装置及び方法の問題点を解決することができる。
【0112】
以上、上述した本発明の実施形態によって、本発明に係る狭帯域拡散反射分光法を用いた混濁媒質における水分及び脂質含有量定量化方法の詳細な内容について説明したが、本発明は、上述した実施形態に記載されている内容にのみ限定されるものではない。よって、本発明は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって設計上の必要及びその他の多様な要因に応じて様々な修正、変更、結合及び置換などが可能であるのは、当たり前であるというべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9