(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】電磁波を用いた炎症性疾患の治療、抑制、および予防のための治療装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
A61N5/10 D
A61N5/10 U
A61N5/10 M
A61N5/10 N
(21)【出願番号】P 2023552330
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 KR2022004049
(87)【国際公開番号】W WO2022203382
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-08-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0037565
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521141394
【氏名又は名称】オーエックスオーム レイ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】チョン, クン スー
(72)【発明者】
【氏名】ギム, セ フン
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ホン スー
(72)【発明者】
【氏名】イ, カン パ
(72)【発明者】
【氏名】ペク, ス ジ
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-523687(JP,A)
【文献】特表2011-520233(JP,A)
【文献】特開昭62-255893(JP,A)
【文献】特開2002-000745(JP,A)
【文献】特開2010-075338(JP,A)
【文献】特表2004-501730(JP,A)
【文献】特開2019-141581(JP,A)
【文献】特表2010-538986(JP,A)
【文献】特表2019-510074(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0370317(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象体の炎症性疾患を治療、抑制、または予防するための電磁波治療装置であって、
電源部と、
前記電源部から電源が供給され、0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波を前記対象体に照射する照射部と、
前記照射部から照射される電磁波の波長または線量を調節する制御部と、
を含み、
前記照射部は、アノード(anode)、カソード(cathode)を含むチューブに対応し、前記アノードと前記電源部の一側が連結され、前記カソードと前記電源部の他側が連結されるものであり、
前記カソードは、カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube, CNT)が凝集されて第1方向に延長された構造の単位ヤーンを複数含むCNT構造体からなるエミッタを含む、
電磁波治療装置。
【請求項2】
前記照射部から照射される電磁波に対して、0.05nm未満の波長を有する電磁波を遮断するフィルターをさらに含む、請求項1に記載の電磁波治療装置。
【請求項3】
前記照射部の少なくとも一部を覆う保護部をさらに含む、請求項1に記載の電磁波治療装置。
【請求項4】
前記照射部の末端と前記対象体の距離L(m)を測定できる距離測定部をさらに含む、請求項1に記載の電磁波治療装置。
【請求項5】
前記照射部の末端と前記対象体の距離を調節する位置調節部をさらに含む、請求項4に記載の電磁波治療装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記距離測定部から測定された距離に基づいて、前記位置調節部を制御することによって、前記照射部の末端と前記対象体の距離を調節する、請求項5に記載の電磁波治療装置。
【請求項7】
前記電磁波の照射範囲または強さを調節する視準器をさらに含む、請求項1に記載の電磁波治療装置。
【請求項8】
前記視準器は、前記制御部によって制御されるものである、請求項7に記載の電磁波治療装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記電源部から前記照射部に供給される電圧または電流を制御するものである、請求項1に記載の電磁波治療装置。
【請求項10】
前記制御部から出力する信号を表示するモニタリング装置をさらに含む、請求項1に記載の電磁波治療装置。
【請求項11】
前記対象体の皮膚または体内に直接電磁波を照射する、請求項1に記載の電磁波治療装置。
【請求項12】
前記照射部から発生した電磁波を前記対象体の体内に直接照射できるように、前記照射部に連結されたアプリケーター(applicator)をさらに含む、請求項1に記載の電磁波治療装置。
【請求項13】
前記チューブは、少なくとも1つのゲートをさらに含み、前記少なくとも1つのゲートに前記制御部の一側または他側のうち少なくとも1つが連結されるものである、請求項1に記載の電磁波治療装置。
【請求項14】
前記対象体の炎症性疾患は、インターロイキン(Interleukin, IL)-1β、IL-6、および腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor, TNF)-αのうち少なくとも1つを含む生体指標によって媒介される疾患または脂質蓄積障害である、請求項1に記載の電磁波治療装置。
【請求項15】
前記対象体の炎症性疾患は、自己免疫疾患または自己炎症性疾患である、請求項1に記載の電磁波治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象体の炎症性疾患を治療、抑制、または予防するための電磁波治療装置、その作動方法、およびそれを用いた対象体の炎症性疾患の治療、抑制、または予防方法に関する。本発明は、また、対象体の炎症性疾患の治療、抑制、または予防用であって、電磁波およびその用途、それを対象体に照射する段階を含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁波は、ガンマ線、x-線、紫外線、可視光線、赤外線、電波などがあり、通信、電子分野をはじめ多くの産業用、科学的および医療領域において使用される。赤外線および可視光線範囲の電磁波は、一般的に高い温度で材料を加熱する電気エネルギー源から生成され、暖房、リモコン、照明などの光源として使用される。紫外線範囲の電磁波は、一般的にガスを電気放電によって加熱して生成され、殺菌、ポリマーの架橋などの分野において使用される。
【0003】
x-線やガンマ線は、医療、食品、浄水、および保安などの多様な産業分野において肉眼では確認できない部分を識別するための目的として使用される。また、x-線やガンマ線の高-エネルギー特性を用いて癌細胞などを死滅する治療目的として使用されることもあり、このような治療方法としては、放射線を人体内部に照射する外部放射線治療法(external radiotherapy;teletherapy)と患部周囲に電磁波源を設置して治療する小線源治療法(brachytherapy)に区分される。
【0004】
従来の電磁波を用いた治療法は、高-エネルギーを加えて疾患を有する細胞が死滅することで、化学療法などのような従来の治療法よりも優れた効果を示す長所を有するが、疾患を有する細胞付近の正常細胞も共に死滅されるため、患者に副作用を引き起こし得るという問題点も同時に伴う。
【0005】
一方、炎症は、物理的な外傷、有害な化学物質、感染、生体内代謝産物中の刺激性物質によって引き起こされる組織損傷に対して、局所的に現れる正常な生体内の防衛機制が作用して発現する。このような炎症は、正常な場合には生体の正常な構造および機能を回復させるが、そのようにできない場合には慢性炎症のような疾患状態として進行することもあり、最近多くの疾患が体内炎症反応の問題によって発生するということが知られている。このような炎症性疾患を治療するために、多様な化学療法が使用されているが、副作用を伴う場合が多く、一時的な症状緩和にとどまる場合も多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述したような技術的問題を解消することができる、0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波を対象体に照射して、対象体の炎症性疾患を治療、抑制、または予防するための電磁波治療装置、その作動方法、およびそれを用いた治療方法を提供しようとする。
【0007】
本発明は、対象体の炎症性疾患の治療、抑制、または予防用であって、0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波、その用途、およびそれを対象体に照射する方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの実施形態において、対象体の炎症性疾患を治療、抑制、または予防するための電磁波治療装置が提供される。
【0009】
本発明の1つの実施形態に係る対象体の炎症性疾患を治療、抑制、または予防するための電磁波治療装置は、
電源部と、
前記電源部から電源が供給され、0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波を前記対象体に照射する照射部と、
前記照射部から照射される電磁波の波長または線量を調節する制御部と、を含むことができる。
【0010】
1つの具体的な形態において、前記電磁波治療装置は、前記照射部に対して0.05nm以下の波長を有する電磁波を遮断するフィルターをさらに含むことができる。
【0011】
1つの具体的な形態において、前記電磁波治療装置は、前記照射部の少なくとも一部を覆う保護部をさらに含むことができる。
【0012】
1つの具体的な形態において、前記電磁波治療装置は、前記照射部の末端と前記対象体の距離L(m)を測定できる距離測定部をさらに含むことができ、前記照射部の末端と前記対象体の距離を調節する位置調節部をさらに含むことができる。また、前記制御部は、前記距離測定部から測定された距離に基づいて前記位置調節部を制御することによって、前記照射部の末端と前記対象体の距離を調節することができる。
【0013】
1つの具体的な形態において、前記電磁波治療装置は、電磁波の照射範囲または強さを調節する視準器をさらに含むことができ、前記視準器は前記制御部によって制御され得る。
【0014】
1つの具体的な形態において、前記制御部は、前記電源部から前記照射部に供給される電圧または電流を制御することができる。
【0015】
1つの具体的な形態において、前記電磁波治療装置は、前記制御部から出力する信号を表示するモニタリング装置をさらに含むことができる。
【0016】
1つの具体的な形態において、前記制御部は、前記照射部の末端と前記対象体の距離L(m)と、前記照射部の出力電圧V(V)または出力電流I(A)と、照射時間t(秒)と、のうち少なくとも1つを調節することによって、前記対象体に吸収される電磁波線量を満足するように制御することができる。
【0017】
1つの具体的な形態において、前記電磁波治療装置は、前記対象体の皮膚または体内に直接電磁波を照射するものであり得、前記照射部から発生した電磁波を前記対象体の体内に直接照射できるように、前記照射部に連結されたアプリケーター(applicator)をさらに含むことができる。
【0018】
1つの具体的な形態において、前記照射部は、アノード(anode)、カソード(cathode)を含むチューブに対応し、前記アノードと前記電源部の一側が連結され、前記カソードと前記電源部の他側が連結されるものであり得、前記チューブは、少なくとも1つのゲートをさらに含み、前記少なくとも1つのゲートに前記制御部の一側または他側のうち少なくとも1つが連結されるものであり得る。前記カソードは、カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube;CNT)を含むものであり得、前記カソードは、前記CNTが凝集されて第1方向に延長された構造の単位ヤーン(yarn)を複数含むCNT構造体からなるものであり得、前記CNT構造体は、前記単位ヤーンそれぞれの先端が前記第1方向と同一の方向に向かうものであり得る。
【0019】
1つの具体的な形態において、前記対象体の炎症性疾患は、インターロイキン(Interleukin;IL)-1β、IL-6、および腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor;TNF)-αのうち少なくとも1つを含む生体指標によって媒介される疾患または脂質蓄積障害であり得、前記脂質蓄積障害は、ニーマンピック病A型、B型、C型と、ゴーシェ病II型と、ファブリー病と、ガングリオシドーシス、テイ-サックス病と、サンドホフ病と、クラッベ病と、異染性白質ジストロフィー、またはコレステロールエステル蓄積症、ウォルマン病と、を含むことができる。
【0020】
1つの具体的な形態において、前記対象体内において測定される下記指標のうち少なくともいずれか1つが正常な場合に比べて高く測定されるものであり得、前記対象体に前記電磁波を照射した後、前記対象体内において測定される下記指標のうち少なくともいずれか1つを減少させることができる。
-血液内IL-1βの発現量と、
-血液内IL-6の発現量と、
-血液内TNF-αの発現量と、
-細胞内IL-1βを発現するmRNAの発現量と、
-細胞内IL-6を発現するmRNAの発現量と、
-細胞内TNF-αを発現するmRNAの発現量と、
-細胞内脂質蓄積量。
【0021】
1つの具体的な形態において、前記対象体の炎症性疾患は、自己免疫疾患または自己炎症性疾患であり得、前記自己免疫疾患は、加齢黄斑変性(AMD)と、炎症性皮膚疾患、乾癬、アトピー性皮膚炎と、全身性強皮症、硬化症と、炎症性腸疾患に関連した反応、クローン病、潰瘍性大腸炎と、呼吸窮迫症候群、成人型呼吸窮迫症候群、ARDSと、皮膚炎と、髄膜炎と、脳炎と、ぶどう膜炎と、大腸炎と、糸球体腎炎と、アレルギー状態、湿疹、喘息、T-細胞の浸潤、慢性炎症反応に関連した他の状態と、アテローム性動脈硬化と、白血球接着不全症と、関節炎、関節リウマチ、炎症性関節炎、小児リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎と、全身性エリテマトーデス(SLE)と、ループス腎炎(LN)と、糖尿病、I型糖尿病、インスリン依存型糖尿病と、多発性硬化症と、レイノー症候群と、自己免疫性甲状腺炎と、アレルギー性脳脊髄炎と、シェーグレン症候群、小児糖尿病と、結核と、サルコイドーシスと、多発性筋炎と、肉芽腫症と、血管炎において典型的に発見されるサイトカインおよびT-リンパ球によって媒介される急性および遅延型過敏症に関連した免疫反応と、悪性貧血、アジソン病と、白血球漏出に関連した疾病と、中枢神経系炎症性障害と、多臓器損傷症候群と、溶血性貧血と、クリオグロブリン血症、クームス陽性貧血と、重症筋無力症と、抗原-抗体複合体媒介疾患と、抗-糸球体基底膜疾患と、抗リン脂質抗体症候群と、アレルギー性神経炎と、バセドウ病と、ランバート-イートン筋無力症候群と、水疱性類天疱瘡と、天疱瘡と、自己免疫性多内分泌腺症と、ライター症候群と、スティッフパーソン症候群と、ベーチェット病と、巨細胞性動脈炎と、免疫複合体型腎炎と、IgA腎症と、IgM多発性神経症と、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)または自己免疫性血小板減少症と、を含むことができ、前記自己炎症性疾患は、家族性地中海熱(FMF)と、TNF受容体-関連周期熱症候群(TRAPS)と、高IgD症候群および周期熱症候群(HIDS)と、全身型若年性特発性関節炎(スチル病)と、クリオピリン-関連周期性症候群(CAPS)と、家族性寒冷自己炎症性症候群と、マックル-ウェルズ症候群と、インターロイキン-1受容体拮抗分子欠損症(DIRA)と、新生児期発症多臓器系炎症性疾患(NOMID)と、慢性乳児神経皮膚関節炎症候群(CINCA)と、を含むことができる。
【0022】
本発明の1つの実施形態において、前述した対象体の炎症性疾患を治療、抑制、または予防するための電磁波治療装置の作動方法が提供される。
【0023】
本発明の1つの実施形態に係る前記電磁波治療装置の作動方法は、
前記対象体に電磁波が照射されるように前記照射部を位置させる段階と、
前記照射部から電磁波を前記対象体に照射する段階と、を含むことができる。
【0024】
1つの具体的な形態であって、前記電磁波治療装置の作動方法において、前記電磁波治療装置は、前記照射部から発生した電磁波を前記対象体の体内に直接照射できるように、前記照射部に連結されたアプリケーターをさらに含むことができ、
前記アプリケーターを前記対象体の体内に挿入する段階と、
前記照射部から電磁波を前記対象体の体内に照射する段階と、を含むことができる。
【0025】
本発明の1つの実施形態において、前述した対象体の炎症性疾患を治療、抑制、または予防するための電磁波治療装置を用いた、対象体の炎症性疾患の治療、抑制、または予防方法に提供される。
【0026】
本発明の1つの実施形態において、対象体の炎症性疾患を治療、抑制、または予防するために0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波およびその用途が提供される。
【0027】
本発明の1つの実施形態において、対象体の炎症性疾患を治療、抑制、または予防するための方法であって、0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波を前記対象体に照射する段階を含む方法を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、ソフトx-線と呼ばれる0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波を対象体に照射することで、従来の電磁波治療において発生する正常細胞の死滅などの副作用なく炎症性疾患を効果的に治療、抑制、または予防することができる。
【0029】
本発明の効果は、言及した効果に制限されず、言及されていないさらに他の効果は請求の範囲の記載から当該技術分野の通常の技術者に明確に理解され得るだろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】一実施形態に係る対象体に電磁波を照射する装置の主要構成を示す概略図である。
【
図2】細胞生存力を測定して電磁波の細胞毒性の有無を確認したグラフであって、0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波を細胞にそれぞれ0、5、10、および20分間照射した後に培養したとき、細胞の生存の有無を示したものである。
【
図3】炎症反応が誘導されていない正常細胞群、炎症反応が誘導された炎症誘導細胞群、炎症反応が誘導された炎症誘導細胞群に電磁波を照射した細胞群から、ウエスタンブロットを用いて炎症性反応を示すサイトカインであるIL-1βタンパク質の発現量を比較した結果およびグラフ(
図3のA)、免疫細胞化学および蛍光イメージングを用いてIL-1βタンパク質の発現量を比較した結果およびグラフ(
図3のB)、およびリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応を用いて炎症性反応を示すものとして知られたIL-1β、IL-6、TNF-αタンパク質を発現させるmRNAの細胞内発現量を比較したグラフ(それぞれ
図3のCないし
図3のE)である。
【
図4】炎症反応が誘導されていない正常細胞群、炎症反応が誘導された炎症誘導細胞群、炎症反応が誘導された炎症誘導細胞群に電磁波を照射した細胞群の細胞内脂質蓄積量を3Dホログラムで確認したイメージ(
図4のA)およびこれを定量化して細胞内脂質蓄積量を比較したグラフ(
図4のB)である。
【
図5】炎症を誘導した動物モデルに対して、患部以外の部位に電磁波を照射した場合、体内IL-1βの発現量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下では、本発明の実施形態とその理解を助け、その実施のための具体的な説明、実施形態、および図面を通じて、本発明の意図、作用、および効果を詳述することにする。但し、以下の説明および実施形態は、前述したように本発明の理解を助けるために例示として提示されたものであって、これに限り発明の権利範囲が定められるか、限定されるものではない。
【0032】
本発明を具体的に説明する前に、本明細書および請求の範囲に使用された用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者は、その自身の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に基づいて、本発明の技術的思想に符合する意味と概念によって解釈されなければならない。
【0033】
したがって、本明細書に記載された実施形態の構成は、本発明の最も好ましい1つの実施形態に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点において、これらを代替できる多様な均等物と変形例が存在し得ることを理解しなければならない。
【0034】
本明細書において、単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味を有さない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」、または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解しなければならない。
【0035】
本明細書に記載された「・・・部」などの用語は、少なくとも1つの機能や動作を処理する単位を意味し、これはハードウェアまたはソフトウェアとして具現されるか、ハードウェアとソフトウェアの組み合せによって具現され得る。
【0036】
本明細書において、用語「対象体」とは、ヒトまたはウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、またはネコのような非-ヒト哺乳動物またはその一部であって、本発明の電磁波治療装置の電磁波対象となる特定部分を含むが、これに制限されない。好ましくは、対象体はヒトまたは身体の一部であって、本発明の電磁波治療装置の電磁波対象となる特定部分である。
【0037】
本明細書において、用語「治療」、「治療している」、「治療する」や、「抑制」、「抑制している」、および「抑制する」とは、その目的が好ましくない生理学的変化または障害、例えば、炎症性疾患の成長、発生、または拡散を遅らせるものである治療的処置を指称する。本発明の目的上、有利または好ましい治療または抑制効果は、疾患の発生または再発防止、症状の緩和、疾患の任意の直接または間接的な病理学的結果の縮小、転移の予防、疾患進行速度の減少、疾患状態の改善または軽減、および快方または改善された予後を含む。一部の実施形態において、電磁波治療装置および電磁波は、疾患の発生を遅延させるか、疾患の進行を遅らせることに使用される。
【0038】
本明細書において、用語「予防」、「予防している」、「予防する」とは、事件の発生可能性、即ち、その目的が好ましくない生理学的変化または障害、例えば、炎症性疾患の発生可能性を対象体において減少させることを意味するが、事件の発生可能性が100%除かれることは要求されない。
【0039】
実施形態を説明することにおいて、当該技術分野においてよく知られており、本発明と直接関連していない技術内容に関しては説明を省略し、これは不必要な説明を省略することで本発明の要旨を曖昧にせず、さらに明確に伝えるためである。同様の理由として、添付した図面の一部の構成要素は、誇張、省略、または概略的に図示された。また、各構成要素の大きさは、実際の大きさを全的に反映するものではない。
【0040】
本発明の1つの実施形態において、対象体の炎症性疾患を治療、抑制、または予防するための電磁波治療装置は、電源部と、照射部と、制御部と、を含む。
【0041】
電源部は照射部に電源を供給し、電源部は制御部に電源をさらに供給することができる。電源部が供給する電源は、直流電源または交流電源であり得る。電源部は、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、全固体リチウム電池のようなバッテリーを含むことができる。例えば、電源部は、PWMインバータ、絶縁トランス、および昇圧回路(倍電圧回路または平滑回路)のうち少なくとも1つを含むことができ、この場合、バッテリーによって発生する直流電源が、PWMインバータによって交流電源に変換され得る。また、変換された交流電源が絶縁トランスによって昇圧され、昇圧回路によって高圧の交流電源が出力され得る。1つの具体的な形態において、電源部は、直流電源を単純供給することができる。
【0042】
照射部は、電源部に電気的に連結され、電源部から電源が供給され電磁波を対象体に照射する。1つの具体的な形態において、照射部は、電源部から電源が供給され、特定波長を有する電磁波を対象体に照射することができ、0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波を対象体に照射することができる。しかし、照射部から発生する電磁波は特定波長に局限されず、後述するフィルターなどの他の構成によって、対象体に到達する前に特定波長として限定されることもあり得る。
【0043】
制御部は、トランシーバー、メモリ、およびプロセッサーのうち少なくとも1つを含むことができる。1つの具体的な形態において、電源部および照射部は、トランシーバー、メモリ、およびプロセッサーのうち少なくとも1つを含むこともできる。プロセッサーは、明細書全般において叙述される少なくとも1つの方法を遂行することができ、メモリは、明細書全般において叙述される少なくとも1つの方法を遂行するための情報を保存することができ、プロセッサーによって遂行されるプログラムのコードはメモリに保存され得る。メモリは、揮発性メモリまたは不揮発性メモリであり得る。
【0044】
照射部から照射される電磁波の波長または線量は、制御部によって調節され得る。例えば、制御部は、照射部が特定波長、具体的には、0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波を照射するように照射部を制御することができる。また、制御部は、照射部が特定線量、即ち、特定電圧および電流で電磁波を照射するように、照射部を制御することができる。または、制御部は、照射部から照射される電磁波の照射時間を制御することができる。
【0045】
本発明において、0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波は、ソフトx-線に対応され得る。または、本発明においてx-線中から0.01nm以上0.05nm未満の波長範囲の高-エネルギーx-線を除いた残りに該当するソフトx-線に対応され得る。
【0046】
1つの具体的な形態において、本発明の対象体の炎症性疾患を治療、抑制、または予防するための電磁波治療装置は、電源部と、電源部から電源が供給され、0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波を対象体に照射する照射部と、照射部から照射される電磁波の波長または線量を調節する制御部と、を含むことができる。
【0047】
本発明の1つの実施形態において、対象体の炎症性疾患を治療、抑制、または予防するための電磁波治療装置は、照射部から照射される電磁波に対して0.05nm以下の波長を有する電磁波を遮断するフィルターをさらに含むことができる。照射部から照射される電磁波は、制御部によって0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波だけを照射するように調節され得る。または、照射部を0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波だけを照射するx-線チューブで構成して、0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波が対象体に照射されるようにすることができる。しかし、理論的制限に縛られず、照射部から照射される電磁波には0.05nm未満の波長を有する電磁波が含まれる可能性が十分ある。0.05nm未満の波長を有する電磁波を対象体に照射する場合、照射時間、照射部の末端と対象体の距離、出力電圧、および電流などを適切に調節して対象体の治療効果を十分に達成することができるが、高-エネルギーx-線による副作用が発生する可能性もある。したがって、1つの具体的な形態において、電磁波治療装置は、0.05nm未満の波長を有する電磁波を遮断するフィルターをさらに含むことができる。ここで、「遮断」とは、該当電磁波の透過を完全に遮断することは当然のこと、副作用の発生を減少させる程度に透過率を低下させることを含むものとして理解することができる。フィルターの種類は、特に制限されず、当該技術分野の通常の技術者が選択することができる。
【0048】
本発明の1つの実施形態において、対象体の炎症性疾患を治療、抑制、または予防するための電磁波治療装置は、照射部の少なくとも一部を覆う保護部をさらに含むことができる。保護部は、照射部から照射される電磁波が対象体に向かう方向以外の周辺環境または照射対象になる対象体の特定部分の外に照射されることを防止することができる。照射部から発生する電磁波は、0.05nm以上10nm以下の電磁波、即ち、ソフトx-線であって、対象体に向かう方向以外の周辺環境に照射される場合、周辺環境に予想できない危害が発生し得る。前述した電磁波治療装置は、照射部の少なくとも一部を覆う保護部を含むことによって、照射部から照射される電磁波がその照射の目的である対象体に向かってのみ、照射され得るようにして、前述した問題を防止することができる。また、照射部は、少なくとも一部が保護部によって覆われることによって、外部の環境に起因した物理的、化学的、または光学的衝撃などからも保護され得る。
【0049】
1つの具体的な形態において、保護部は、ポリマーなどの絶縁性物質を含むことができるが、これに制限されない。保護部は、照射部の少なくとも一部を覆うように絶縁性フィルムを付着するか、液状または半-固体状の絶縁物質を噴射またはコーティングして被覆することによって形成することができる。保護部は、照射部の側面全体を覆うように形成することができる。保護部の厚さは特に限定されない。保護部の厚さは、照射部から照射される電磁波が対象体に向かう方向以外の周辺環境などに照射されないように遮断できる範囲において定められ得る。
【0050】
1つの具体的な形態において、電磁波治療装置は、照射部から照射される電磁波に対して0.05nm未満の波長を有する電磁波を遮断するフィルターを含むことができる。フィルターは、照射部に含まれるか、照射部の一端に位置するか、保護部の一端に位置し得るが、これに制限されず、照射部と対象体の間に位置して照射部から照射される電磁波の0.05nm未満の波長を有する電磁波が対象体に伝達されないようにするか、伝達される量を減少させ得る位置に存在すれば十分である。
【0051】
本発明の1つの実施形態において、対象体の炎症性疾患を治療、抑制、または予防するための電磁波治療装置は、照射部の末端と対象体の距離L(m)を測定できる距離測定部をさらに含むことができる。距離測定部は、照射光と反射光の強さの比率が照射部の末端と対象体の距離の関数として示された特性を用いて距離を測定する方式であるか、光の速度を考慮して飛行時間(time-of-flight)を算出し、照射部の末端と対象体の距離を算出する方式を用いることができるが、これに制限されず、当該技術分野の通常の技術者は、距離を測定できる他の構成を選択することができる。
【0052】
ここで、照射部の末端は、電磁波治療装置から対象体に電磁波が照射される末端部位を意味し、原則的には照射部を意味する。但し、照射部から対象体との間の電磁波進行方向内に他の構成要素、例えば、保護部、フィルター、およびアプリケーターなどが存在する場合には、照射部の末端は、該当構成要素の中から対象体と最も近くに位置する構成要素の対象体と最も近い端部を意味する。
【0053】
前記距離測定部は、照射部に密着して存在するか、照射部から一定距離を離隔して位置することができるが、これに制限されず、照射部の末端と対象体の距離を測定できる位置に存在すれば十分である。
【0054】
1つの具体的な形態において、対象体の炎症性疾患を治療、抑制、または予防するための電磁波治療装置は、照射部の末端と対象体の距離を調節する位置調節部をさらに含むことができる。具体的には、照射部の末端と対象体の距離を調節する位置調節部は、照射部が対象体に対して相対的に移動できるようにする経路部からなり得る。例えば、照射部は、照射部の少なくとも一部を覆う保護部に対して相対的に移動できるようにする経路部、例えば、ガイドレール、溝などに沿って位置を変更して対象体との距離を調節することができるが、これに制限されない。
【0055】
1つの具体的な形態において、制御部は、距離測定部から測定された距離に基づいて位置調節部を制御することによって、照射部の末端と対象体の距離を調節することができる。具体的には、制御部は、距離測定部から測定された距離データが入力された後、目的とする治療効果を示す照射部の末端と対象体の距離を達成するために位置調節部を制御して、照射部の末端と対象体の距離を特定値として調節することができる。例えば、制御部は、位置調節部に連結されてモーター、ピストンなど、当該技術分野の通常の技術者が選択することができるが、これに制限されない装置を活用して照射部の位置を変更することによって、照射部の末端と対象体の距離を調節することができる。
【0056】
制御部は、制御部に入力された値を、対象体との距離、照射時間、出力電圧、および電流などを変数とする電磁波照射モデルに適用した後、目的とする治療効果を達成するために適した対象体との距離を維持するように位置調節部を制御することができる。制御部は、制御部に入力された値を前記モデルに適用した後、目的とする治療効果を達成するために照射時間、出力電圧、および電流などを制御するために、照射部や電源部を追加で制御することができる。
【0057】
本発明の1つの実施形態において、対象体の炎症性疾患を治療、抑制、または予防するための電磁波治療装置は、電磁波の照射範囲または強さを調節する視準器をさらに含むことができる。例えば、視準器は、光学物品、即ち、電磁波を屈折させるか、少なくとも1つの軸で電磁波の各分布を変化させるか、少なくとも1つの軸で電磁波の焦点に影響を与えるか、またはその他に電磁波の性質に影響を与える任意の要素を示すことができ、鏡およびその他の反射表面、レンズ、プリズム、ライトガイド、グレーティング(grating)などを含むことができるが、これに制限されない。
【0058】
例えば、視準器は、制御部によって制御され得る。制御部を通じて視準器を調節して対象体に対する電磁波の照射範囲や強さを調節して、目的とする炎症性疾患の治療、抑制、または予防効果を達成することができる。また、制御部は、制御部に入力された値を前記モデルに適用した後、目的とする治療効果を達成するために視準器を制御することができる。
【0059】
本発明の1つの実施形態において、対象体の炎症性疾患を治療、抑制、または予防するための電磁波治療装置の制御部は、電源部から照射部に供給される電圧または電流を制御することができる。具体的には、制御部が電源部から照射部に供給される電圧または電流を制御することによって、照射部から照射される電磁波の照射の有無、照射時間、照射領域、照射波長、および照射の強さのうち少なくとも1つを制御することができる。
【0060】
本発明の電磁波治療装置は、制御部から出力する信号を表示するモニタリング装置をさらに含むことができる。制御部から出力する信号は、電源部から照射部に供給される印加電圧の有無、印加電圧の時間、電圧、電流、距離測定部から測定された照射部の末端と対象体との間の距離、位置調節部の作動の有無などがあり得るが、これに制限されない。
【0061】
本発明の1つの実施形態において、対象体に吸収される電磁波の線量は、1回治療当たり1ないし100mGyの範囲である。具体的には、対象体に吸収される電磁波の線量は、1回治療当たり1ないし50mGyの範囲であり得、さらに具体的には、対象体に吸収される電磁波の線量は、1回治療当たり10ないし15mGyの範囲であり得る。本発明において、「1回照射」とは、対象体に電磁波を時間的に絶え間なく連続的に照射することを意味し、「1回治療」とは、対象体に電磁波を照射する一連の行為であって、1回照射または複数回の照射を含むことができる。対象体に吸収される電磁波の1回治療当たりまたは1回照射当たりの線量が低い場合、本発明の電磁波治療装置が目的とする効果を十分に達成することができず、対象体に吸収される電磁波の1回治療当たりまたは1回照射当たりの線量が非常に高ければ、対象体に電磁波のエネルギー蓄積が発生するため、細胞の損傷、死滅などの細胞毒性効果が発生するか、皮膚の損傷、または癌の発症などの副作用が発生し得るため好ましくない。対象体に吸収される電磁波の線量は、対象体に直接吸収される電磁波の線量を測定することができ、照射部の一端や照射部から一定距離に離隔した位置に電磁波線量測定部を追加でさらに含めることができ、または照射部の末端と対象体の距離、照射部の電磁波出力電圧、電流、および照射時間の関数から電磁波の線量を算出することができる。例えば、対象体に対する電磁波の1回治療時に電磁波を2回以上照射する場合のように、1回治療当たりに複数回の電磁波を照射する場合、1回治療時の対象体に吸収される電磁波の線量を一定に維持するために1回照射時の電磁波の線量をさらに小さくすることができ、そのために照射部の末端と対象体の距離、照射部の電磁波出力電圧、電流、および照射時間を調節することができる。
【0062】
1つの具体的な形態において、制御部は、前記照射部の末端と前記対象体の距離L(m)と、照射部の出力電圧V(V)、出力電流I(A)、または出力電力P(W)と、照射時間t(秒)と、のうち少なくとも1つを調節することによって、対象体に吸収される電磁波線量を満足するように制御することができる。1つの具体的な形態において、照射部の末端と対象体の距離L(m)は、1×10-6ないし3mの範囲、具体的には、1×10-5ないし2mの範囲、より具体的には、1×10-3ないし1mの範囲であり得る。照射部の出力電圧V(V)は、1×10-3ないし50kVの範囲、具体的には、0.01ないし40kVの範囲、さらに具体的には、0.1ないし25kVの範囲であり得る。照射部の出力電流I(A)は、1×10-3ないし100mAの範囲、具体的には、5×10-3ないし70mAの範囲、さらに具体的には、0.01ないし50mAの範囲であり得る。照射部の出力電力P(W)は、1×10-6ないし5000Wの範囲、具体的には、5×10-5ないし2800Wの範囲、具体的には、1×10-3ないし1000Wの範囲、さらに具体的には、1ないし20Wの範囲であり得る。電磁波の照射時間t(秒)は、0.001ないし1000秒の範囲、具体的には、0.005ないし800秒の範囲、さらに具体的には、0.01ないし600秒の範囲であり得る。対象体に吸収される電磁波の線量は、照射部の末端と対象体の距離L(m)、照射部の出力電圧V(V)、出力電流I(A)、出力電力P(W)、照射時間t(秒)の範囲それぞれを変更することによって調節することができ、5種類の指標の組み合わせを通じて目的とする電磁波の線量を決定することができる。
【0063】
本発明の1つの実施形態において、電磁波治療装置から照射される電磁波は、対象体、具体的には対象体の皮膚に照射され得る。ここで、対象体の皮膚は、炎症性疾患が発症しているので、その治療または抑制が要求される患部または患部の付近の皮膚組織であり得、炎症性疾患の発症が予想される皮膚であるかもしれない。また、電磁波を対象体の皮膚に照射するときに、対象体において発症した炎症性疾患は、電磁波が照射される皮膚以外の部位において発症したものであり得る。例えば、関節内部に炎症性疾患が発症した場合、対象体の関節部位の皮膚または対象体の任意の部位に電磁波を照射することができる。
【0064】
また、電磁波治療装置から照射される電磁波は、対象体の体内に直接電磁波を照射するものであり得る。ここで、対象体の体内に直接電磁波を照射する場合、炎症性疾患を発症するため、その治療または抑制が要求される患部に直接照射するか、炎症性疾患の発症が予想される部位に直接照射することでき、または炎症性疾患が発症した部位以外の体内部位に電磁波を照射することができる。
【0065】
このように、電磁波が照射される対象体の部位は、皮膚または体内であり得、患部または患部以外の部位であり得る。
【0066】
本発明の1つの実施形態において、電磁波治療装置は、照射部から発生した電磁波を対象体の体内に直接照射できるように照射部に連結されたアプリケーターをさらに含むことができる。例えば、アプリケーターは、対象体の体内に直接挿入され得るように考案された管の形態、例えば、光ファイバーの形態であって、照射部から発生した電磁波をアプリケーターの内面に形成された通路に沿って対象体の体内に照射させることができる。または、照射部は、アプリケーターによって覆われることにより、対象体の体内に直接挿入され得、照射部から照射された電磁波はアプリケーターを透過して対象体の体内に直接照射され得る。しかし、アプリケーターは、前記例示に制限されず、当該技術分野の通常の技術者は、照射部から発生した電磁波を対象体の体内に直接照射できる構成を選択することができる。
【0067】
本発明の1つの実施形態において、照射部は、アノード(anode)およびカソードを含むチューブを含むことができる。この場合、アノードと電源部の一側が連結され、カソードと電源部の他側が連結されるため、アノードおよびカソードを含むチューブに電源部から電源が供給され得る。1つの具体的な形態において、アノードおよびカソードを含むチューブは、少なくとも1つのゲート(gate)をさらに含むことができ、少なくとも1つのゲートに制御部の一側または他側のうち少なくとも1つが連結され得る。ゲートは、グリッド(grid)、ワイヤー(Wire)、またはピンホール(pin-hole)構造のゲートのうちいずれか1つであり得る。また、ゲートは、1つ以上のワイヤーおよび1つ以上の空いた空間からなされてもよい。チューブ内にゲートが存在する場合において、ゲートは1つであり得、複数個のゲートからなる多重ゲート(multi-gate)であってもよい。ゲートは、電子の放出を誘導することができ、チューブに印加される電圧に基づいてカソードから電子が放出され得る。
【0068】
1つの具体的な形態において、カソードはCNTを含むものであり得る。具体的には、カソードは、CNTで構成されたエミッタ(emitter)に対応され得る。この場合、カソードの電界放出素子、即ち、エミッタは、複数のCNTが凝集されて第1方向に延長された構造の単位ヤーンを複数含むCNT構造体からなるものであり得る。この場合、CNT構造体は、単位ヤーンそれぞれの先端が第1方向と同一の方向に向かうように設計され得る。このように設計されたチューブの場合、構造体の先端を通じて放出される大部分の電子が、各CNTおよび単位ヤーンが延長された方向である第1方向に放出され得る利点がある。したがって、金属ターゲットと電子の衝突を通じてx-線を発生させるx-線チューブに適用されたとき、大部分の電子を目的とする衝突部分に集中させられるという利点を有する。
【0069】
但し、これは、照射部を構成する一例示に過ぎないものであって、照射部が必ずCNTで構成されたエミッタに対応するカソードを含む必要があるわけではなく、前述のように照射部は、0.05nm以上10nm以下の波長範囲の電磁波を照射することができ、これを外れた波長の電磁波も照射することができるが、この範囲から外れた波長の電磁波は前述したフィルターをさらに含む構成によって遮断され得る。
【0070】
本発明の1つの実施形態において、電磁波治療装置によって治療、抑制、または予防される対象体の炎症性疾患は、生体指標によって媒介される疾患であり得る。前記生体指標は、対象体において炎症代謝反応を媒介するか、炎症性疾患を引き起こす全ての生体内物質を意味し、具体的にはIL、TNFなどを含むことができ、より具体的にはIL-1β、IL-6、およびTNF-αのうち少なくとも1つであり得るが、これに制限されない。本発明の1つの実施形態において、電磁波治療装置によって治療、抑制、または予防される対象体の炎症性疾患は、脂質蓄積障害であり得る。
【0071】
本発明において、電磁波治療装置によって炎症性疾患が治療、抑制、または予防される対象体は、対象体内において測定される下記指標のうち少なくともいずれか1つが、正常な場合に比べて高く測定されるものであり得る。1つの具体的な形態において、対象体に本発明に係る電磁波治療装置から照射される電磁波を照射した後、対象体内において測定される下記指標のうち少なくとも1つは、電磁波を照射する前に測定された下記指標の値よりも減少し得る。
-血液内IL-1βの発現量と、
-血液内IL-6の発現量と、
-血液内TNF-αの発現量と、
-細胞内IL-1βを発現するmRNAの発現量と、
-細胞内IL-6を発現するmRNAの発現量と、
-細胞内TNF-αを発現するmRNAの発現量と、
-細胞内脂質蓄積量。
【0072】
ここで、「正常」である場合は、炎症性疾患を有していないものと診断された対象体であるか、炎症性疾患が発生する可能性がないものと診断された対象体を意味し得る。
【0073】
本発明の1つの実施形態において、電磁波治療装置によって治療、抑制、または予防される対象体の炎症性疾患は、自己免疫疾患または自己炎症性疾患であり得る。具体的には、自己免疫疾患は、加齢黄斑変性(AMD)と、炎症性皮膚疾患、乾癬、アトピー性皮膚炎と、全身性強皮症、硬化症と、炎症性腸疾患に関連した反応、クローン病、潰瘍性大腸炎と、呼吸窮迫症候群、成人型呼吸窮迫症候群、ARDSと、皮膚炎と、髄膜炎と、脳炎と、ぶどう膜炎と、大腸炎と、糸球体腎炎と、アレルギー状態、湿疹、喘息、T-細胞の浸潤、慢性炎症反応に関連した他の状態と、アテローム性動脈硬化と、白血球接着不全症と、関節炎、関節リウマチ、炎症性関節炎、小児リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎と、全身性エリテマトーデス(SLE)と、ループス腎炎(LN)と、糖尿病、I型糖尿病、インスリン依存型糖尿病と、多発性硬化症と、レイノー症候群と、自己免疫性甲状腺炎と、アレルギー性脳脊髄炎と、シェーグレン症候群、小児糖尿病と、結核と、サルコイドーシスと、多発性筋炎と、肉芽腫症と、血管炎において典型的に発見されるサイトカインおよびT-リンパ球によって媒介される急性および遅延型過敏症に関連した免疫反応と、悪性貧血、アジソン病と、白血球漏出に関連した疾病と、中枢神経系炎症性障害と、多臓器損傷症候群と、溶血性貧血と、クリオグロブリン血症、クームス陽性貧血と、重症筋無力症と、抗原-抗体複合体媒介疾患と、抗-糸球体基底膜疾患と、抗リン脂質抗体症候群と、アレルギー性神経炎と、バセドウ病と、ランバート-イートン筋無力症候群と、水疱性類天疱瘡と、天疱瘡と、自己免疫性多内分泌腺症と、ライター症候群と、スティッフパーソン症候群と、ベーチェット病と、巨細胞性動脈炎と、免疫複合体型腎炎と、IgA腎症と、IgM多発性神経症と、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)または自己免疫性血小板減少症と、を含むものであり得る。
【0074】
免疫関連および炎症性疾患は、正常な生理状態において傷害または損傷に反応し、傷害または損傷から復旧を開始し、外来有機体に対する先天性および後天性防御を始めることに重要な非常に複雑かつ、様々な多重相互連結された生物学的経路の症状または結果である。疾患または病理状態は、これらの正常な生理学的経路が反応の強度に直接関係するものであって、非正常的な調節または過度な刺激の結果、自身に対する反応、またはその組み合わせとして、追加の傷害または損傷を引き起こす場合に発生する。
【0075】
自己炎症性疾患は、家族性地中海熱(FMF)と、TNF受容体-関連周期熱症候群(TRAPS)と、高IgD症候群および周期熱症候群(HIDS)と、全身型若年性特発性関節炎(スチル病)と、クリオピリン-関連周期性症候群(CAPS)と、家族性寒冷自己炎症性症候群と、マックル-ウェルズ症候群と、IL-1受容体拮抗分子欠損症(DIRA)と、新生児期発症多臓器系炎症性疾患(NOMID)と、慢性乳児神経皮膚関節炎症候群(CINCA)と、を含むものであり得る。
【0076】
脂質蓄積障害は、ニーマンピック病A型、B型、C型と、ゴーシェ病II型と、ファブリー病と、ガングリオシドーシス、テイ-サックス病と、サンドホフ病と、クラッベ病と、異染性白質ジストロフィー、肝炎、肝がん、肝硬変、非アルコール性脂肪肝、またはコレステロールエステル蓄積症、ウォルマン病と、を含むものであり得る。
【0077】
本発明に係る電磁波治療装置は、対象体の炎症性疾患を治療、抑制、または予防するために、公知された炎症性疾患治療用組成物と共に使用され得る。具体的には、対象体に炎症性疾患治療用組成物を投与した後、本発明に係る電磁波治療装置を用いて電磁波を対象体に照射して、炎症性疾患治療の効果をさらに上昇させることができる。または、対象体の患部に炎症性疾患治療用組成物を塗布した後、本発明に係る電磁波治療装置を用いて電磁波を対象体に照射して、炎症性疾患治療の効果をさらに上昇させることができる。
【0078】
本発明は、前述の電磁波治療装置の作動方法を提供し、対象体に電磁波が照射されるように照射部を位置させる段階と、照射部から電磁波を対象体に照射する段階と、を含むことができる。1つの具体的な形態において、前述の電磁波治療装置は、照射部から発生した電磁波を対象体の体内に直接照射できるように照射部に連結されたアプリケーターをさらに含むことができ、その作動方法は、アプリケーターを対象体の体内に挿入する段階と、照射部から電磁波を対象体の体内に照射する段階と、を含むことができる。ここで、アプリケーターは、本明細書において定義した通りである。
【0079】
本発明は、0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波を対象体に照射する段階を含む、対象体の炎症性疾患を治療、抑制、または予防するための方法を提供する。また、本発明は、前述の電磁波治療装置を用いた対象体の炎症性疾患の治療、抑制、または予防方法を提供する。追加的には、本発明は、0.05nm以上10nm以下の波長を有し、対象体の炎症性疾患を治療、抑制、または予防するための、電磁波およびその対象体の炎症性疾患の治療、抑制、または予防用としての用途を提供する。
【0080】
(実施例)
以下では、実施例を詳述し、これを通じて本発明の作用および効果を立証する。しかし、以下の実施例は、発明の例示として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるものではない。
【0081】
実施例1:電磁波の照射時間に係る細胞生存力の確認
0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波を細胞に照射する場合、細胞死滅などの毒性が存在するか否かを確認するために、次の実験を実施した。
【0082】
RAW264.7マクロファージを10%のウシ胎児血清(FBS)および1%のペニシリン-ストレプトマイシンを含有した高-ブドウ糖Dulbeccoの変形したEagle’s培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium;DMEM)において、37±2℃および5%のCO2において培養した。細胞を96well-plateに1X104cell/wellの密度でシーディング(seeding)し、0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波を0.07mの距離、4.9Wの電磁波の出力電力下において、それぞれ5分、10分、および20分間照射した後、電磁波の追加照射なく24時間、37±2℃、および5%のCO2において培養した。以後、細胞を37±2℃においてXTT試薬と共に2時間培養した後、iMARKマイクロプレートリーダー(Bio-Rad,Hercules,CA,USA)を用いて450nmにおける細胞生存力を測定した。
【0083】
その結果、
図2に示されたように、0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波を照射時間を変えてRAW264.7マクロファージに照射した場合、電磁波を照射していないRAW264.7マクロファージと比較して、細胞生存力の側面において有意な差が生じないことを確認した。したがって、0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波を細胞に照射しても細胞死滅や細胞損傷などのような細胞毒性を示さないことを確認した。
【0084】
実施例2:LPS処理されたRAW264.7マクロファージの炎症反応に対する電磁波の効果の確認
炎症反応が誘導された細胞に0.05nm以上10nm以下の電磁波を照射したときに、誘発される分子水準の変化を通じて、炎症反応の治療効果を確認するために、次の実験を実施した。
【0085】
ウェスタンブロッティング
RAW264.7マクロファージを6well-plateに1X105cell/wellの密度でシーディングし、24時間培養した後、炎症反応を誘導するために500μMのリポ多糖(Lipopolysaccharide;LPS)で3時間処理した。LPS処理されたRAW264.7マクロファージに0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波を0.07mの距離、4.9Wの電磁波の出力電力下において、10分間照射した後、電磁波の追加照射なく21時間、37±2℃、および5%のCO2において培養した。ウェスタンブロッティングを遂行するために、LPS処理されていない正常のRAW264.7マクロファージ群、LPS処理されたRAW264.7マクロファージ群、およびLPS処理後に電磁波を照射したRAW264.7マクロファージ群からそれぞれタンパク質を抽出した後、タンパク質定量試薬(protein assay reagent)(Bio-Rad,Hercules,CA,USA)を用いて抽出されたタンパク質の濃度を測定した。前記抽出されたタンパク質サンプルをSDS緩衝液と1:1の比率で混ぜて希釈させた後、10分間加熱してタンパク質を変形させた。前記タンパク質サンプルを12%のSDS-PAGEの各列当たり30μgでローディングし、電気泳動を通じて分離した後、PVDF(polyvinylidene fluoride)膜(Millipore,Bedford,MA,USA)に電気的に移動させた。前記PVDF膜を0.05%のTween20および5%のウシ血清アルブミン(bovine serum albumin;BSA)を含むPBS溶液に室温において2時間浸漬してブロック(blocking)し、前記PVDF膜を1:1000に希釈した抗-IL-1β抗体で処理した後、4℃において16時間以上反応させた。抗体処理されたPVDF膜をhorseradish peroxidase-conjugated 2次抗体と常温において1時間培養させた後、enhanced chemiluminescence(ECL)試薬を処理して識別できるようにした。ECL試薬処理に係る発現の分析は、ImageJプログラムを用いた。
【0086】
前記過程によって正常のRAW264.7マクロファージ群、LPS処理されて炎症反応が誘導されたRAW264.7マクロファージ群、およびLPS処理後に0.05nm以上10nm以下の電磁波を処理したRAW264.7マクロファージ群からIL-1βのタンパク質発現ウェスタンブロッティングを確認した(
図3のAの左側図面、順番にそれぞれ「正常」、「炎症誘導」、「炎症誘導+X-ray」)。IL-1βの発現量をウェスタンブロッティングの結果のイメージ分析を通じて相対定量分析した結果、LPS処理されて炎症反応が誘導されたRAW264.7マクロファージ群は、正常のRAW264.7マクロファージ群に比べてIL-1βの発現量が329.8(±17.1)%増加した。一方、0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波を処理したRAW264.7マクロファージ群は、炎症反応が誘導されたRAW264.7マクロファージ群に比べてIL-1βの発現量が297.8(±14.2)%減少したため、著しい炎症反応の減少効果を示し、正常細胞群と比較しても有意な差を示さなかった。したがって、炎症反応が誘導された細胞において0.05nm以上10nm以下の電磁波を照射する場合、IL-1βタンパク質の発現が減少することを確認し、その結果、0.05nm以上10nm以下の電磁波は、細胞の炎症反応を減少させることを確認した。
【0087】
免疫細胞化学
RAW264.7マクロファージを8chamberに5X103cell/wellの密度で24時間シーディングした後、500μMのLPSで3時間処理して炎症反応を誘導した。以後、0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波を0.07mの距離、4.9Wの電磁波の出力電力下において、10分間照射した後、電磁波の追加照射なく21時間、37±2℃、および5%のCO2において培養した。その後、LPS処理されていない正常のRAW264.7マクロファージ群、LPS処理されたRAW264.7マクロファージ群、およびLPS処理後に電磁波を照射したRAW264.7マクロファージ群を4%のホルマリンで10分間固定し、0.1%Triton X-100溶液で細胞膜を溶解した後、1:1000に希釈された抗-IL-1β抗体およびAlexa Fluor 488-接合二次抗体(励起波長:591nm、発光波長:614nm)と常温において1時間培養させた。核は、4’、6-ジアミノ-2-フェニルインドール(励起波長:358nm、発光波長:461nm)で染色した。蛍光顕微鏡(K1-fluo,Nanoscope system,Daejeon,Korea)を用いて蛍光イメージを得て、ImageJを使用して蛍光強度を測定および分析した。
【0088】
その結果、
図3のBのように、免疫細胞化学分析を通じたIL-1βタンパク質発現の分析においても、LPS処理されていない正常のRAW264.7マクロファージ群と比較してLPS処理されたRAW264.7マクロファージ群は、IL-1βの発現が357.3(±23.2)%増加したが、0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波を処理したRAW264.7マクロファージ群は、LPS処理されたRAW264.7マクロファージ群に比べてIL-1βの発現が173.1(±8.1)%減少したため、著しい発現減少効果を示した。したがって、炎症反応が誘導された細胞に0.05nm以上10nm以下の電磁波を照射する場合、炎症性因子であるIL-1βタンパク質の発現が減少することを確認し、その結果、0.05nm以上10nm以下の電磁波は、細胞の炎症反応を減少させることを確認した。
【0089】
リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)
LPS処理されていない正常のRAW264.7マクロファージ群、LPS処理されたRAW264.7マクロファージ群、およびLPS処理後に電磁波を照射したRAW264.7マクロファージ群においてTRIzol試薬を使用して総RNAを分離した。Superscript III First Strand cDNA合成キットを使用して、1μgの総RNAからcDNAを合成した。リアルタイムPCRをSYBR Green PCRミックスを使用してApplied Biosystems 7500 Fast Real-Time PCRシステム(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,USA)で遂行した。cDNAの増幅は、95℃において10分間初期変性後、95℃において10秒間40サイクルの変性、60℃において30秒間のアニーリング(annealing)、72℃において30秒間の延長する段階を含む。増幅に使用したプライマーは、下表1の通りである。相対mRNA水準は、2-ΔΔCt方法を使用して計算し、β-アクチンで正規化した。
【表1】
【0090】
その結果、
図3のCのように、正常のRAW264.7マクロファージ群に比べてLPS処理されたRAW264.7マクロファージ群は、IL-1βタンパク質を発現するmRNAの水準が260(±57.6)%増加したが、0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波を処理したRAW264.7マクロファージ群は、IL-1βタンパク質を発現するmRNAの水準がLPS処理されたRAW264.7マクロファージ群に比べて29.2(±11.8)%減少したため、著しく低いmRNA水準を示した(
図3のC)。
【0091】
また、
図3のD、
図3のEのように、正常のRAW264.7マクロファージ群に比べてLPS処理されたRAW264.7マクロファージ群は、IL-6およびTNF-αを発現するmRNAそれぞれの水準が613.1(±175)%および455.4(±80.0)%増加したが、0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波を処理したRAW264.7マクロファージ群は、IL-6およびTNF-αを発現するmRNAそれぞれの水準が17.4(±15.9)%および58.8(±16)%減少したため、著しく低いmRNA水準を示した(
図3のD、
図3のE)。
【0092】
したがって、炎症反応が誘導された細胞に0.05nm以上10nm以下の電磁波を照射する場合、炎症反応を引き起こすIL-1β、IL-6、TNF-αタンパク質を発現させるmRNAの水準が著しく減少することを確認し、その結果、0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波は、細胞の炎症反応を減少させることを確認した。
【0093】
脂質蓄積分析
RAW264.7マクロファージをトモディッシュ(tomidish)に24時間シーディングした後、500μMのLPSで3時間処理して炎症反応を誘導した。以後、0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波を0.07mの距離、4.9Wの電磁波の出力電力下において、10分間照射した後、電磁波の追加照射なく21時間、37±2℃、および5%のCO2において培養した。その後、LPS処理されていない正常のRAW264.7マクロファージ群、LPS処理されたRAW264.7マクロファージ群、およびLPS処理後に電磁波を照射したRAW264.7マクロファージ群のlive細胞イメージをTomocube HT-1S顕微鏡(Tomocube,Daejeon,Korea)を用いて獲得した。Tomostudio softwareを用いて細胞の3D屈折率(refractive index,RI)分布に基づいて細胞内脂質の蓄積程度を分析した。
【0094】
その結果、
図4のように、細胞内に蓄積された脂質滴の量を3Dホログラム分析で確認した結果、LPS処理されたRAW264.7マクロファージ群に比べて0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波を処理したRAW264.7マクロファージ群の脂質の分布が著しく減少することを確認したため(
図4のA)、脂質蓄積量を定量的に比較した場合においても、0.017(±0.012)%減少して、著しい脂質蓄積量の減少を示すことを確認した(
図4のB)。したがって、炎症反応が誘導された細胞に0.05nm以上10nm以下の電磁波を照射する場合、炎症反応に関連した細胞内の脂質蓄積量が著しく減少することを確認し、その結果、0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波は、炎症反応を治療、抑制、または予防できることを確認した。
【0095】
実施例3:炎症誘導動物モデルにおける炎症性因子分析
8週齢のオスC5BL/6マウス(Orient Bio InC.、京畿道、大韓民国)を統制された環境(室温(24±2℃)、湿度40±2%、12時間の明/暗周期)において、水と食物(AIN 93Gの公式に従う)に自由に接近できるよう個別に収容した。1週間安定化させた後、5mg/kgのLPSをマウスの腹腔に投与し、4時間後に一部マウスに対して0.05nm以上10nm以下の波長を有する電磁波を0.05mの距離、4.9Wの電磁波の出力電力下において、10分間照射した。LPS投与4時間後、電磁波を照射していないマウスおよび電磁波を照射したマウスの心臓から血液をヘパリンチューブで取り出した後、10分間12,000gにおける遠心分離を通じて血漿を収得した。
【0096】
酵素結合免疫吸着測定検査(enzyme-linked immunosorbent assay, ELISA; R&D systems)を用いて炎症性サイトカインであるIL-1βの発現量を確認した。収得したマウス血漿サンプルと50μL標準のIL-1βコーティング上清液を96well-plateに入れて常温において反応させた後、1X wash bufferで3回洗浄した。100μLの接合体(conjugate)を96well-plateに入れて常温において1時間反応させ、再び1X wash bufferで3回洗浄した後、基質を追加し、暗状態の常温において30分間反応させた。停止液(stop solution)を追加した後、分光光度計(spectrophotometer)で450nmの波長における吸光度を測定し、対照群と比較してIL-1βタンパク質の量を算出した。
【0097】
その結果、
図5に示すように、LPS処理されて炎症が誘導されたマウスに0.05nm以上10.0nm以下の波長を有する電磁波を処理した場合、電磁波を処理していない炎症が誘導されたマウスに比べてIL-1βのタンパク質の量が有意に減少することを確認することができる。したがって、0.05nm以上10.0nm以下の波長を有する電磁波を動物モデルに直接照射する場合においても、炎症性疾患を治療または抑制できることを確認した。
【0098】
前記結果から、対象体の患部以外の部位に0.05nm以上10nm以下の電磁波を照射する場合でも、対象体から炎症反応を誘導する因子の量を効果的に減少させられることを確認した。即ち、0.05nm以上10nm以下の電磁波が対象体の全身に照射されたとき、十分に炎症性疾患を治療、抑制、または予防できることを確認した。
【0099】
以上、本発明の実施例を参照して説明したが、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、前記内容に基づいて本発明の範疇内において多様な応用および変形を行うことが可能である。