(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物およびそれを用いた塗料
(51)【国際特許分類】
C08L 75/04 20060101AFI20240902BHJP
C08L 101/10 20060101ALI20240902BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20240902BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20240902BHJP
C09D 175/12 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C08L75/04
C08L101/10
C08K5/29
C09D175/04
C09D175/12
(21)【出願番号】P 2024031828
(22)【出願日】2024-03-04
【審査請求日】2024-03-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502371598
【氏名又は名称】KFケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114351
【氏名又は名称】吉田 和子
(72)【発明者】
【氏名】石野 庄太
(72)【発明者】
【氏名】塩田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】石川 和憲
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-064253(JP,A)
【文献】特開2004-182934(JP,A)
【文献】特開2013-082919(JP,A)
【文献】特開2002-256047(JP,A)
【文献】特許第7385322(JP,B2)
【文献】特開2017-052908(JP,A)
【文献】特開2017-066278(JP,A)
【文献】国際公開第2016/093068(WO,A1)
【文献】特開2011-252292(JP,A)
【文献】特開2019-065277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C08G 18/00- 18/87
C09D 175/00-175/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール100質量部中、アクリルポリオールが20~80質量部、ポリカーボネートポリオールが0~80質量部、ポリエステルポリオールが0~80質量部、これら以外のポリオール0~20質量部からなるポリオールと脂肪族イソシアネートから合成されるウレタンプレポリマー、潜在性硬化剤および加水分解性シリル基含有ポリマーからなる一液型湿気硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
ポリオールが、ポリカーボネートポリオール(PC)と水酸基価が60~150mgKOH/gのアクリルポリオール(AC)からなる請求項1記載の一液型湿気硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
ウレタンプレポリマー100質量部に対し、ウレタン樹脂組成物中のイソシアネート基(NCO)に対し潜在性硬化剤としてのオキサゾリジン基(OX)の当量比NCO/OXが1.0~3.0であり、加水分解性シリル基含有ビニルポリマーが3~30質量部の割合で添加された請求項
1記載の一液型湿気硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
加水分解性シリル基含有ポリマーが、ガラス転移温度Tgが0℃以上であり、水酸基を有するビニルポリマーである請求項
1記載の一液型湿気硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の一液型湿気硬化性樹脂組成物を芳香族系溶剤および/またはエステル系溶剤に溶解させた塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物およびそれを用いた塗料に関する。さらに詳しくは、硬化物が耐候性、耐衝撃性にすぐれるとともに、低汚染性を示す一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物およびそれを用いた塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
一液型湿気硬化性ウレタン樹脂は、基材との密着性、物性の調整のし易さ、取扱いのし易さなどにより、接着剤、塗料、コーティング材、トップコート、シーラントなどに利用されている。ここで、特に塗料、コーティング材、トップコートなど日光に直接曝される用途の場合には、ウレタン樹脂には高いレベルの耐候性が要求される。その一方で、塗料、コーティング材、トップコートなどでは、耐衝撃性などの外的な力に対する耐久性も要求される。
【0003】
さらに、これらの材料には、雨、雪などに直接曝されるため、雨筋などの汚れに対しても高い耐性が要求される。雨筋などの汚れを抑制する塗料、コーティング材は、それらの表面を水となじみやすい状態にし、付着した有機物が雨により洗い流されるようにする必要がある。
【0004】
特許文献1では、3つの加水分解性基がケイ素に結合した加水分解性ケイ素基を有する重合体、硬化触媒、高分子可塑剤および/または25℃における粘度が8P以上の可塑剤からなる、塗料耐汚染性にすぐれた室温硬化性組成物が提案されている。しかしながら、かかる組成物を用いて形成された塗膜は、耐候性に課題が残ってしまうことに加え、十分な硬度が得られないことから、特に硬化物の強度などの改善が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、一液型としての貯蔵安定性と硬化性とにすぐれ、硬化後においては高い耐候性と耐衝撃性にすぐれると共に、雨筋などの汚れに対し高い耐汚染性を示す一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物およびそれを用いた塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来、一液型ウレタン樹脂組成物と加水分解性シリル基を有するポリマーは、加水分解性シリル基から生成するアルコールなどにより一液型ウレタン樹脂の硬化阻害が起こるため、一液型ウレタン樹脂に加水分解性シリル基を有するポリマーを混合することはできなかった。
【0008】
本発明の目的は、ポリオール100質量部中、アクリルポリオールが20~80質量部、ポリカーボネートポリオールが0~80質量部、ポリエステルポリオールが0~80質量部、これら以外のポリオール0~20質量部からなるポリオールと脂肪族イソシアネートから合成されるウレタンプレポリマー、好ましくはポリカーボネートポリオール(PC)と水酸基価が60~150mgKOH/gのアクリルポリオール(AC)からなるポリオールとポリイソシアネートから合成されるウレタンプレポリマーに、潜在性硬化剤であるオキサゾリジンおよび加水分解性シリル基を有するポリマーを配合せしめた湿気硬化性樹脂組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るウレタン樹脂組成物は、一液型としての貯蔵安定性にすぐれ、湿気硬化性を有することから大気中の湿気により硬化して硬化物を形成するといった特性に加え、この組成物の硬化物は、耐候性ならびに耐衝撃性が高く、さらには塗料表面の耐汚染性にすぐれるといった効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ポリオールと脂肪族イソシアネートから合成されるウレタンプレポリマー、好ましくはポリカーボネートポリオール(PC)と水酸基価が60~150mgKOH/gのアクリルポリオール(AC)からなるポリオールとポリイソシアネートから合成されるウレタンプレポリマー、潜在性硬化剤および加水分解性シリル基含有ポリマーから構成される。
【0011】
ポリオールとしては、ヒドロキシル基を1分子当たり2~10個有するもの、例えばポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリ(メタ)アクリルポリオールなどが挙げられ、好ましくはポリカーボネートポリオールまたはポリエステルポリオールの少なくとも1種のポリオールとポリ(メタ)アクリルポリオールとからなるものが用いられる。
【0012】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えばエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメチロールなどの脂肪族多価アルコールの少なくとも1種と、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキレンカーボネートまたはジアルキルカーボネートとを反応させて得られるものが挙げられる。ここで、アルキレン基またはジアルキル基の炭素数は2~10である。かかるポリカーボネートポリオールとしては、好ましくは数平均分子量Mnが500~3000ものが用いられ、市販品、例えばUBE製品ETERNACOLL UH-50、UH-100、UH-200、UH-300、PH-50、PH-100、PH-200、PH-300、UC-100、UM-90U、東ソー製品ニッポラン981、980R、982R、965,963、964、968などをそのまま用いることができる。
【0014】
ポリエステルポリオールとしては、例えば水酸基を2個以上有する化合物と多塩基カルボン酸との反応物を用いることができる。
【0015】
水酸基を2個以上有する化合物としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ビスフェノールAやビスフェノールF、そのアルキレンオキサイド付加物などを用いることができる。このうち、耐候性の点から好ましくは2,4-ジエチル-1,5ペンタンジオールまたは2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオールの少なくとも1種が用いられる。
【0016】
多塩基カルボン酸としては、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、ダイマー酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などを用いることができる。このうち、より一層すぐれた生地への接着性、フィルム強度といった観点から、好ましくはフタル酸が用いられる。
【0017】
ポリエステルポリオールの数平均分子量Mnとしては、より一層優れた接着性、機械物性が得られる点から、500~50,000の範囲が好ましく、例えば市販品であるDIC製品ポリライトシリーズ、東ソー製品ニッポランシリーズ、ADEKA製品アデカニューエースシリーズなどの室温で液状のものから固体のものをそのまま用いることができる。
【0018】
アクリルポリオールとしては、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーの単独重合体や共重合体または水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに重合性不飽和結合を有する他のモノマーを共重合させた、所定の水酸基値を有するものなどが例示される。一液型湿気硬化性ウレタン樹脂に用いられるアクリルポリオール中の水酸基としては、1分子中に平均で2~10個あることが好ましい。
【0019】
水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸エステル、グリセリンの(メタ)アクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンの(メタ)アクリル酸モノエステルなどのトリオールの(メタ)アクリル酸モノエステルなどが挙げられる。これらはいずれかを単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。
【0020】
重合性不飽和結合を有する他のモノマーを併用することもでき、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミドなどの不飽和アミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリルなどが挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらの中でも、耐候性の点で、好ましくは(メタ)アクリル酸アルキルおよび/または(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルなどの(メタ)アクリル酸エステルが用いられる。
【0021】
ウレタンプレポリマーとしては、耐候性の点から脂肪族イソシアネートを主に使用することが必須であり、具体的には、脂肪族または脂環式ポリイシソアネートが用いられる。かかるポリイシソアネートとしては、例えば水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水素添加XDI、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,8-ジイソシアナトメチルオクタン、リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネートおよびこれらの変性体(ビユレット、アロファネート、イソシアヌレート体)、トリメチロールプロパン付加体などの誘導体等が、好ましくは塗膜の耐候性および強度の観点からイソホロンジイソシアネートおよびその誘導体が挙げられる。
【0022】
ウレタンプレポリマーの合成に際しては、水酸基含有オキサゾリジンを残存するイソシアネート基に対し0.5当量以下の割合で用いることもできる。水酸基含有オキサゾリジンとしては、2-イソプロピル-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、2-(1-メチルブチル)-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、N-ヒドロキシエチル-2-フェニルオキサゾリジン、2-(p-メトキシフェニル)-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジンなどのヒドロキシアルキルオキサゾリジンなどが、好ましくは貯蔵安定性、硬化性および硬化後の物性の点から、2-イソプロピル-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジンが用いられる。これらのヒドロキシアルキルオキサゾリジンは、相当するアルデヒドまたはケトンとヒドロキシアルキルアミンとから公知の方法により合成される。
【0023】
アクリルポリオールの水酸基価としては、40~150 mgKOH/g、好ましくは60~150 mgKOH/gであることが好ましい。この値未満では、塗膜の硬度が低下する傾向があり、耐汚染性が低下する。この値を超えると塗膜が硬くなりすぎ、脆くなる傾向がある。
【0024】
また、アクリルポリオールのTgとしては、-70~100℃以下が好ましい。100℃を超えると塗膜の耐衝撃性が低下する。アクリルポリオールのTgが低くても、水酸基の数を増やすことにより機械的な物性は制御可能であるので、同時に使用するポリオールの物性に合わせて適宜選択することができる。
【0025】
アクリルポリオールは、例えば市販品、亜細亜工業製品エクセロールシリーズ、DIC製品アクリデックシリーズのA-801-P(Tg:50℃、水酸基価:47、酸価1~4)、WBU1218(Tg:100g℃、水酸基価:55、酸価1~3)などをそのまま使用することができる。
【0026】
以上の各成分は、ポリオール100質量部中、アクリルポリオールが20~80質量部、ポリカーボネートポリオールが0~80質量部、ポリエステルポリオールが0~80質量部であることが好ましく、粘度、機械的物性を調整のために0~20質量部の範囲で、これ以外のポリオールを使用することもできる。
【0027】
ウレタンプレポリマーには、潜在性硬化剤および加水分解性シリル基含有ポリマーが配合される。
【0028】
潜在性硬化剤としては、水酸基含有オキサゾリジンが用いられる。水酸基含有オキサゾリジンとしては、前記ウレタンプレポリマーで例示されたオキサゾリジンなどが挙げられる。ここで、水酸基含有オキサゾリジンをポリイソシアネートと予め反応させたオキサゾリジン化合物、好ましくはイソシアネート基(NCO)に対して、水酸基含有オキサゾリジン(OH)をNCO/OH=1/0.1~1/1の比で反応させた化合物を配合することもできる。ここで、ポリイソシアネートとしては、好ましくは脂肪族ポリイソシアネートが用いられる。
【0029】
ウレタン樹脂組成物中のイソシアネート基(NCO)とオキサゾリジン基(OX)の当量比は、好ましくはNCO/OX=1.0~3.0である。NCO/OX当量比が1.0未満ではオキサゾリジンがイソシアネート基に対し過剰になるため、硬化時に未反応のアミノ基が残ることとなり、耐候性を悪化させる原因になる。一方、NCO/OX当量比が3.0を超えると、硬化剤であるオキサゾリジン基がイソシアネート基に比べ大幅に少なくなるため、硬化性が悪化するようになる。
【0030】
加水分解性シリル基含有ポリマーの加水分解性基としては、他にハロゲン基やアルコキシル基があるが、反応の制御のしやすさからアルコキシシリル基であることが好ましい。主鎖がポリオキシアルキレンやポリ(メタ)アクリルであり、その末端または側鎖にアルコキシシリル基を有するポリマーが好適に使用することができる。具体的には、カネカ製のMSポリマー、XMAP、ゼムラックなどが好適に挙げられ、好ましくはガラス転移温度が0℃以上で、さらに水酸基を有する加水分解性シリル基含有ビニルポリマーが好適に用いられる。ガラス転移温度を0℃以上にすることにより、塗膜の硬度が上がり、耐汚染性に優れるようになり、また水酸基を有することにより、ビニルポリマーがウレタン樹脂と化学的に結合され、塗膜の耐候性だけでなく、機械的物性も向上させることができる。
【0031】
このような加水分解性シリル基含有ビニルポリマーは、ウレタンプレポリマー100質量部に対し、3~30質量部の割合で配合され、好ましくは5~20質量部の割合で配合される。これ未満の配合割合では、生成するシラノールの量が不十分で、十分な耐汚染性が得られず、一方これ以上の配合割合では、生成するアルコールなどの影響で、ウレタンプレポリマー中のイソシアネートの反応が阻害され、あわせて加水分解性シリル基含有ビニルポリマーの物性が反映されてしまい、十分な機械的強度の塗膜が得られにくくなる。
【0032】
以上の必須配合成分に加えて、塗膜表面を親水化することにより耐汚染性を高めるべく、好ましくは3級アミン、アンモニウム、カルボン酸塩、ポリエチレングリコールなどの親水性基を有する化合物、例えばコリンクロライド、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、4-(2-モルホリノエトキシ)アニリン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、1-メチルピペラジン、N,N,N’-トリメチルエチレンジアミン、1-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチルイミダゾリウムクロライド、ポリエチレングルコールモノメチルエーテル、オレイン酸ナトリウムなどを、ウレタンプレポリマー100質量部に対し、約1~10質量%程度配合することができる。これは、市販品、例えば日本乳化剤製品アミノイオンAS200、同AS400、広栄化学製品反応型イオン液体IL-OH2、同IL-OH9をそのまま用いることができる。
【0033】
以上の成分よりなる湿気硬化性ウレタン樹脂組成物は、芳香族系溶剤および/またはエーテル系溶剤に、塗膜厚確保、作業性の観点から、固形分濃度が40~80質量%となるように溶解させて塗料を形成させる。
【0034】
溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、ソルベントナフサ100、ソルベントナフサ150などの芳香族系炭化水素類、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエーテル類が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0035】
さらにその他の添加剤として、レベリング剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、チクソ剤、たれ止め剤、艶消し材、充填剤などが適宜用いられる。ここで、チクソ剤はとしては、好ましくは微粉シリカ、アマイド系チクソ剤、ウレア系チクソ剤が挙げられる。
【0036】
さらに、その他の添加剤として、好ましくはオキサゾリジンの加水分解促進触媒としてのカルボン酸、スルホン酸が使用され、貯蔵安定性、硬化性の点から特に炭素数が6以上の脂肪族カルボン酸が用いられる。
【実施例】
【0037】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0038】
実施例1
(1) 攪拌機、温度計、還流冷却装置および窒素導入管を備えた4口フラスコに、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテートを66.7g仕込み、窒素置換しながら92℃に加熱昇温した。次いで、メチルメタクリレート60.0g、2-ヒドロキシエチルメタクリレート27.8g、メチルアクリレート10.0g、アクリル酸2.2g、n-ドデシルメルカプタン0.02gおよび第3ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート2.9gの混合液を、4時間かけて供給した。供給終了1時間後および2時間後に、第3ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートをそれぞれ0.2g添加し、さらに2時間反応させ、アクリルポリオールA(数平均分子量Mn1920、水酸基価 120mgKOH/g、Tg 70℃、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート60質量%溶液)を得た。
【0039】
(2) 攪拌羽根を有する容量500mlのセパラブルフラスコに、アクリルポリオールA 83.3g(50.0g相当)、乾燥したポリエステルポリオール(DIC製品ポリライトOD-X-2420;水酸基価 58.0mgKOH/g)20gおよび乾燥したポリカーボネートジオール(ETERNACOLL PH-200、水酸基価 55.5mgKOH/g)30.0gを芳香族系溶剤(新日本化学製品R100)110gに溶解した後、イソホロンジイソシアネート 42.6gおよびジブチルジラウレート 0.02gを添加し、室温で1時間攪拌した。次いで、2-イソプロピル-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジン 5.0gを添加し、窒素気流下、80℃まで徐々に昇温し、80℃で2時間反応させ、ウレタンプレポリマーA 257.6g(55.4質量%溶液)を得た。
【0040】
(3) ウレタンプレポリマーA(55.4質量%溶液) 257.4g
(ウレタンプレポリマー142.6g相当)
レベリング剤(ビックケミー・ジャパン製品BYK-UV3576) 0.2g
紫外線吸収剤(チバガイギー社製品UV1164) 5g
光安定剤(チバガイギー社製品HALS292) 5g
硬化剤 34.6g
[2-イソプロピル-3-(2-ヒドロキシエチル)
オキサゾリジン2モルとヘキサメチレン
ジイソシアネート1モルとの付加体;分子量486.68]
加水分解性シリル基含有ビニルポリマー 14.2g
(カネカ製品ゼムラックYC4150;50wt%溶液
ガラス転移温度Tg 20℃)
オクチル酸 0.03g
以上の混合物を十分に攪拌し、透明な一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(E型粘度計 100rpmにおける25℃での粘度 314mPa・s)を得た。なお、イソシアネート基/オキサゾリジン基(NCO/OX)の当量比は、1.10である。
【0041】
実施例2
実施例1の工程(3)において、さらにアミノイオンAS200(日本乳化剤製品)1.5gが用いられ、一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(NCO/OX当量比 1.10、E型粘度計 100rpmにおける25℃での粘度 330mPa・s)を得た。
【0042】
実施例3
実施例1の工程(3)において、加水分解性シリル基含有ビニルポリマー量が7.1gに変更されて用いられ、一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(NCO/OX当量比 1.11、E型粘度計100rpmにおける25℃での粘度 306mPa・s)を得た。
【0043】
実施例4
実施例1の工程(3)において、加水分解性シリル基含有ビニルポリマー量が38.4gに変更されて用いられ、一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(NCO/OX当量比 1.06、E型粘度計 100rpmにおける25℃での粘度 348mPa・s)を得た。
【0044】
実施例5
実施例1の工程(2)において、ポリエステルポリオールが用いられず、ポリカーボネートポリオール量が50.0gに、またイソホロンジイソシアネート量が42.4gに、それぞれ変更されて得られたウレタンプレポリマーB 257.4g(142.4g相当)がウレタンプレポリマーAの代わりに用いられ、また同工程(3)において、硬化剤量が34.3gに変更されて用いられ、一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(NCO/OX当量比 1.10、E型粘度計 100rpmにおける25℃での粘度 314mPa・s)を得た。
【0045】
比較例1
(1) 攪拌羽根を有する容量500mlのセパラブルフラスコに、アクリルポリオール(東亜合成製品ARUFON UH-2000;水酸基価 20mgKOH/g、Tg -55℃)50.0gおよびポリテトラメチレングリコール(三菱ケミカル製品;水酸基価 56mgKOH/g)50.0gを芳香族系溶剤(R100) 92gに溶解した後、イソホロンジイソシアネート 18.4gおよびジブチルジラウレート 0.02gを添加し、室温で1時間攪拌した。次いで、2-イソプロピル-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジン 2.0gを添加し、窒素気流下、80℃まで徐々に昇温し、80℃で2時間反応させ、ウレタンプレポリマーC 212.4g(55.7質量%溶液)を得た。
【0046】
(2) ウレタンプレポリマーC(55.7質量%溶液) 212.6g
(ウレタンプレポリマー118.4g相当)
レベリング剤(BYK-UV3576) 0.2g
紫外線吸収剤(UV1164) 5g
光安定剤(HALS292) 5g
硬化剤 15.4g
[2-イソプロピル-3-(2-ヒドロキシエチル)
オキサゾリジン2モルとヘキサメチレン
ジイソシアネート1モルとの付加体;分子量486.68]
加水分解性シリル基含有ビニルポリマー 11.8g
(ゼムラックYC4150)
オクチル酸 0.03g
以上の混合物を十分に攪拌し、透明な一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(E型粘度計 100rpmにおける25℃での粘度 295mPa・s)を得た。なお、イソシアネート基/オキサゾリジン基(NCO/OX)の当量比は、1.08である。
【0047】
比較例2
実施例1の工程(2)において、イソホロンジイソシアネート量が41.8gに変更され、また同工程(3)において加水分解性シリル基含有ビニルポリマーを用いることなく、一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(NCO/OX当量比 1.08、E型粘度計 100rpmにおける25℃での粘度 302mPa・s)を得た。
【0048】
参考例
実施例2の工程(3)において、加水分解性シリル基含有ビニルポリマーを用いることなく、一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(NCO/OX当量比 1.12、E型粘度計 100rpmにおける25℃での粘度 298mPa・s)を得た。
【0049】
以上の各実施例および比較例で得られた一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物を用いて、耐候性試験、耐衝撃性試験および耐汚染性試験を行った。
〔耐候性試験〕
アクリルポリオール(東亜合成製品アルフォンUH2041) 200.0g、芳香族系溶剤(新日本化学製品R100)200.0g、イソホロンジイソシアネート 94.1gおよびジブチルジラウレート 0.3gの反応物に3-アミノプロピルトリエトキシシラン3.0gを反応して得られたウレタン系プライマーを0.15mmの厚さで塗布したニチハ製窯業系サイディングボードに、一液湿気硬化性ウレタン樹脂組成物を0.3mmの厚さで塗布し、23(±2)℃、50(±10)%RHの環境下で2週間硬化、養生して得られた一液湿気硬化性ウレタン樹脂層が形成されたサイディングボードについて、以下の通り試験および評価が行われた。
試験機:岩崎電気製アイスーパーUVテスター
試験条件:紫外線照度:150±8mW/cm2
温度:63℃
波長:295~450nm
サイクル:63℃±3℃、50%RH、4時間照射⇒4時間結露
試験結果評価:1600時間変化なしをA、1200時間変化なしをB、800時間変化なしを
C、800時間で白化あるいはクラックが発生をDと評価
〔耐衝撃性試験〕
試験方法:JIS K5600-5-3(1999年)塗料一般試験方法、第5部:塗膜の機械的性質、第
3節:耐おもり落下性における、デュポン式に準拠
50mm×50mmにカットした厚さ2mmのアクリル樹脂上に、一液湿気硬化性ウ
レタン樹脂組成物を0.3mmの厚さになるように塗布し、23(±2)℃、50(±
10)%RHの環境下で2週間硬化、養生させた。次いで、塗布面が上となるよ
うに半径6.35mmの撃ち型と受け台とを取り付け、300gの重りを40cm、30cm
または20cmの高さより落下させ、塗膜の外観を観察
試験結果評価:高さ40cmで塗膜にクラックが発生しないものをA、高さ30cmで塗膜にク
ラックが発生しないものをB、高さ20cmで塗膜にクラックが発生しない
ものをC、高さ20cmで塗膜にクラックが発生するものをDと評価
〔耐汚染性試験〕
試験方法:厚さ1mmのアルミ板(100×300mm)に、白色下塗り塗料(KFケミカル製品セミ
フロンバインダーSi II)を0.1mmの厚さで塗布して16時間乾燥させ、さら
に、一液湿気硬化性ウレタン樹脂組成物を0.3mmの厚さで塗布し、23(±2)
℃、50(±10)%RHの環境下で1週間硬化、養生させた試験板の垂直試験面
が200mmとなるように角度120°で折り曲げ、茨城県つくば市にて、試験面
が垂直、上向きとなるよう架台に設置し、6カ月間の暴露後の汚染状態を目
視にて評価
試験結果評価:雨筋汚れがみられないものをAA、雨筋汚れが極わずか見られるものを
A、雨筋汚れが見られるものをB、雨筋汚れが著しいものをCと評価
【0050】
以上の実施例および比較例で得られた結果は、次の表に示される。
表
実施例 比較例
評価項目 1 2 3 4 5 1 2 参考例
耐候性 A A A A A B A A
耐衝撃性 A A A B A A A A
耐汚染性 A AA A A A A C B
【要約】
【課題】 一液型としての貯蔵安定性と硬化性とにすぐれ、硬化後においては高い耐候性と耐衝撃性にすぐれると共に、雨筋などの汚れに対し高い耐汚染性を示す一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物およびそれを用いた塗料を提供する。
【解決手段】 ポリオールと脂肪族イソシアネートから合成されるウレタンプレポリマーに、潜在性硬化剤であるオキサゾリジンおよび加水分解性シリル基を有するポリマーを配合せしめた湿気硬化性樹脂組成物。
【選択図】 なし