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特許7546992グリーン水素によるグリーンエネルギー輸送システム及び輸送方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】グリーン水素によるグリーンエネルギー輸送システム及び輸送方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/12 20060101AFI20240902BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20240902BHJP
   F17C 6/00 20060101ALI20240902BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240902BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240902BHJP
   B63J 99/00 20090101ALI20240902BHJP
   C10L 3/08 20060101ALI20240902BHJP
   C01B 3/36 20060101ALI20240902BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240902BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240902BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20240902BHJP
   C25B 15/02 20210101ALI20240902BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20240902BHJP
   B63B 35/00 20200101ALN20240902BHJP
   C01B 32/50 20170101ALN20240902BHJP
【FI】
C07C1/12
C07C9/04
F17C6/00
H02J3/38 120
H02J3/38 160
H02J3/32
B63J99/00 A
C10L3/08
C01B3/36
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/23
C25B15/02
B63B25/16
B63B35/00 T
C01B32/50
【請求項の数】 37
(21)【出願番号】P 2024048549
(22)【出願日】2024-03-25
(65)【公開番号】P2024069688
(43)【公開日】2024-05-21
【審査請求日】2024-03-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523136307
【氏名又は名称】吉川 喜次
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(72)【発明者】
【氏名】吉川 喜次
【審査官】石田 傑
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-122581(JP,A)
【文献】特開2023-041049(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0054046(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B
C07C
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギーにより発電及び蓄電を行なう発電手段と、前記発電手段で得た電力を用いて水を電気分解することにより水素を生成する水電解手段と、前記水電解手段で生成した水素及びリサイクルCOを原料とするサバティエ反応によりメタンを生成するメタン合成手段と、前記メタン合成手段で生成したメタンを大気中へのCO排出を伴わない手段により水素エネルギー消費地まで輸送するメタン輸送手段と、前記メタン輸送手段で輸送されたメタン及び別途用意した酸素を原料とし、該メタンの部分酸化反応及び水蒸気改質反応を反応器内で逐次的に起こさせることで水素と一酸化炭素とを含む合成ガスを生成するプロセスである自己熱改質法により水素製造を行なうと共に該水素製造時に生成されるプロセスガスから高濃度COをリサイクルCOとして回収する水素製造・炭素回収手段と、前記リサイクルCOを大気中へのCO排出を伴わない手段により前記メタン合成手段が設けられているメタン合成基地まで輸送するCO輸送手段とから構成され、前記別途用意した酸素が前記水電解手段で生成した酸素であり、該酸素を大気中へのCO 排出を伴わない手段により前記水素エネルギー消費地まで輸送する酸素輸送手段を更に有していることを特徴とするグリーンエネルギー送システム。
【請求項2】
前記水電解手段が、固体酸化物水電解装置、プロトン交換膜水電解装置、又はアルカリ水電解装置であることを特徴とする、請求項1に記載のグリーンエネルギー輸送システム。
【請求項3】
前記メタン合成手段において、前記原料の水素を化学量論量の4モルよりも過剰な4.05~7.0モルの範囲内で反応器に導入することを特徴とする、請求項1に記載のグリーンエネルギー輸送システム。
【請求項4】
前記メタン合成手段は、前記サバティエ反応を行なう反応器の直ぐ前段に、前記原料の水素及びリサイクルCOから一酸化炭素を生成する逆水性ガスシフト反応器を有していることを特徴とする、請求項3に記載のグリーンエネルギー輸送システム。
【請求項5】
前記水電解手段で生成される水素及び酸素の圧力が30~250barAの範囲内にあることを特徴とする、請求項に記載のグリーンエネルギー輸送システム。
【請求項6】
前記水電解手段が、前記生成した水素を貯蔵する水素貯蔵システムを有していることを特徴とする、請求項に記載のグリーンエネルギー輸送システム。
【請求項7】
前記酸素輸送手段が、酸素液化手段で液化した温度-183.1~-157℃、圧力1~8barAの液化酸素を液化酸素タンカーで輸送するものである、請求項に記載のグリーンエネルギー輸送システム。
【請求項8】
前記酸素液化手段が、プロパン冷媒を用いて温度-20~-40℃まで予冷した後、20~30モル%の窒素、30~50モル%のメタン、20~30モル%のエタン若しくはエチレン、及び5~15モル%のプロパン若しくはプロピレンから構成される蒸気圧2.0~4.0barAの混合冷媒を用いて液化するものである、請求項に記載のグリーンエネルギー輸送システム。
【請求項9】
前記メタン輸送手段で輸送されたメタンの一部を原料とする固体酸化物型燃料電池方式、Allamサイクル方式又はオキシ燃料燃焼複合サイクルによる発電を行なうと共に、該発電時に発生するCOを回収する発電・炭素回収手段を更に有しており、該Allamサイクルによる発電では前記酸素輸送手段で運ばれる液化酸素を利用し、該発電・炭素回収手段で回収したCOを前記リサイクルCOに混ぜることを特徴とする、請求項に記載のグリーンエネルギー輸送システム。
【請求項10】
前記メタン輸送手段の前段及び後段に、前記メタン合成手段で生成したメタンを液体の形態で輸送すべく、前記再生可能エネルギーをエネルギー源とする電力が可変速モーター用インバーターを介して給電されるシンクロナスモーターによって駆動される回転式容積型の冷媒圧縮機を用いて該メタンを液化するメタン液化手段と、前記メタン輸送手段で輸送された液体メタンを液化メタン貯蔵タンクに受け入れた後に再ガス化する液化メタン受入・再ガス化手段とをそれぞれ更に有し、前記メタン輸送手段が前記メタン液化手段で液化した液化メタンを水素エネルギー消費地まで大気中へのCO排出を伴わない第1動力手段を駆動源とする液化メタンタンカーで輸送するものであり、
前記CO輸送手段の前段及び後段に、前記水素製造・炭素回収手段で回収したリサイクルCOを液体の形態で輸送すべく、該リサイクルCOを液化するCO液化手段と、前記CO輸送手段で輸送された液化COを液化CO貯蔵タンクに受け入れた後に再ガス化する液化CO受入・再ガス化手段とをそれぞれ更に有し、前記CO輸送手段が前記CO液化手段で得た液化COを前記メタン合成手段が設けられているメタン合成基地まで大気中へのCO排出を伴わない第2動力手段を駆動源とする液化COタンカーで輸送するものであることを特徴とする、請求項1に記載のグリーンエネルギー輸送システム。
【請求項11】
前記第1動力手段及び第2動力手段の各々が、水素若しくは液化メタンを燃料とする内燃機関、燃料電池又は二次電池であることを特徴とする、請求項10に記載のグリーンエネルギー輸送システム。
【請求項12】
前記メタン液化手段が、前記液化された液化メタンを圧力0.8~2.0barA、温度-170~-180℃の条件下でフラッシュさせるストリッパーを有しており、該ストリッパーで発生する非液化水素は前記メタン合成手段にリサイクルされて原料として再利用されることを特徴とする、請求項10に記載のグリーンエネルギー輸送システム。
【請求項13】
前記メタン液化手段が有するメタンと冷媒との熱交換を行なう熱交換器は、前記非液化水素を含むメタンの流量が設計流量に対して20%以上確保されるように設計されていることを特徴とする、請求項12に記載のグリーンエネルギー輸送システム。
【請求項14】
前記CO液化手段が、前記水素製造・炭素回収手段で回収したリサイクルCOを圧力45~80barAまで圧縮する圧縮機と、圧力10~100barAの液化メタンを再ガス化する際の冷熱を用いて温度-33~-56℃まで冷却して液化させる熱交換器とを有していることを特徴とする、請求項10に記載のグリーンエネルギー輸送システム。
【請求項15】
前記CO液化手段が、前記熱交換器で液化された液化COを圧力5.2~12.8barAまで降圧させることで動力回収する液体タービンを更に有していることを特徴とする、請求項14に記載のグリーンエネルギー輸送システム。
【請求項16】
前記CO液化手段が、前記液化COを圧力5.2~12.8barGA、温度-56~-33℃の条件下で貯蔵する断熱された球形貯蔵タンクを更に有していることを特徴とする、請求項15に記載のグリーンエネルギー輸送システム。
【請求項17】
前記メタン輸送手段が、前記メタン合成手段で生成したメタンガスを前記水素エネルギー消費地まで輸送するメタンガス用パイプラインであり、前記メタンガス用パイプライン内を流れる前記メタンガスの圧力が50~125BarAの範囲内に維持されるように、前記再生可能エネルギーをエネルギー源とする電力が可変速モーター用インバーターを介して給電されるシンクロナスモーターによって駆動される回転式容積型の圧縮機からなるメタンガスの圧縮手段が、前記メタン輸送手段としてのメタンガス用パイプラインの前段及び該メタンガス用パイプラインの中継地点に設けられており、
前記CO輸送手段が、前記水素製造・炭素回収手段で回収したリサイクルCOを前記メタン合成基地まで輸送するCO用パイプラインであり、前記CO用パイプライン内を流れる前記回収したリサイクルCOの圧力が50~125BarAの範囲内に維持されるように、前記再生可能エネルギーをエネルギー源とする電力が可変速モーター用インバーターを介して給電されるシンクロナスモーターによって駆動される圧縮機からなるCOガスの圧縮手段が、前記CO輸送手段としてのCO用パイプラインの前段及び該CO用パイプラインの中継地点に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のグリーンエネルギー輸送システム。
【請求項18】
再生可能エネルギーにより発電及び蓄電を行なう発電工程と、前記発電工程で得た電力を用いて水を電気分解することにより水素を生成する水電解工程と、前記水電解工程で生成した水素及びリサイクルCOを原料とするサバティエ反応によりメタンを生成するメタン合成工程と、前記メタン合成工程で生成したメタンを大気中へのCO排出を伴わない手段により水素エネルギー消費地まで輸送するメタン輸送工程と、前記メタン輸送工程で輸送されたメタン及び別途用意した酸素を原料とし、該メタンの部分酸化反応及び水蒸気改質反応を反応器内で逐次的に起こさせることで水素と一酸化炭素とを含む合成ガスを生成するプロセスである自己熱改質法により水素製造を行なうと共に、該水素製造時に生成されるプロセスガスから高濃度COをリサイクルCOとして回収する水素製造・炭素回収工程と、前記リサイクルCOを大気中へのCO排出を伴わない手段により前記メタン合成工程を行なうメタン合成基地まで輸送するCO輸送工程とを有し、前記別途用意した酸素が前記水電解工程で生成した酸素であり、該酸素を大気中へのCO 排出を伴わない手段により前記水素エネルギー消費地まで輸送する酸素輸送工程を更に有していることを特徴とするグリーンエネルギー輸送方法。
【請求項19】
前記再生可能エネルギーによる発電が蓄電池を具備する風力発電機で行なわれ、該蓄電池は、該風力発電機の風車定格の値に対して容量の値が106~126%の範囲内となるように設定すると共に、該蓄電池を該風車定格の20~90%の運用レンジで運転することを特徴とする、請求項18に記載のグリーンエネルギー輸送方法。
【請求項20】
前記水電解工程で生成した水素の一部を貯蔵することで、前記メタン合成工程において原料として用いる水素を一定量で供給することを特徴とする、請求項18に記載のグリーンエネルギー輸送方法。
【請求項21】
前記水電解工程における水の電気分解では、水の電気分解に必要な電力である最小電解槽負荷を前記風車定格の5~30%の範囲内に設定し、風速を変数とする前記風力発電機の発電電力が該最小電解槽負荷を下回る場合は、その不足分を前記蓄電池から補い、該発電電力が該最小電解槽負荷以上の場合は、該発電電力を用いて前記水の電気分解を行なうと共に、該発電電力のうち該最小電解槽負荷を超えている余剰電力を、前記風車定格の5~15%の範囲内で設定した上限値以下の条件で且つ前記蓄電池の運用レンジの範囲内で前記蓄電池に充電することを特徴とする、請求項19に記載のグリーンエネルギー輸送方法。
【請求項22】
前記メタン輸送工程の前後に、前記再生可能エネルギーをエネルギー源とする電力が可変速モーター用インバーターを介して給電されるシンクロナスモーターによって駆動される回転式容積型の冷媒圧縮機を用いて前記メタンを液化するメタン液化工程と、前記液化された液化メタンを液化メタン貯蔵タンクに受け入れた後に再ガス化する液化メタン受入・再ガス化工程とをそれぞれ更に有しており、前記メタン輸送工程が前記メタン液化工程で液化した液化メタンを水素エネルギー消費地の液化メタン受入基地まで大気中へのCO排出を伴わない第1動力手段を駆動源とする液化メタンタンカーにより輸送するものであり、
前記CO輸送工程の前後に、前記リサイクルCOを液化するCO液化工程と、前記CO輸送工程で輸送された液化COを前記メタン貯蔵タンクに受け入れた後に再ガス化する液化CO受入・再ガス化工程とをそれぞれ更に有し、前記CO輸送工程が前記CO液化工程で液化した液化COを大気中へのCO排出を伴わない第2動力手段を駆動源とする液化COタンカーにより前記メタン合成工程が行なわれるメタン合成基地まで輸送するものであることを特徴とする、請求項21に記載のグリーンエネルギー輸送方法。
【請求項23】
前記風力発電機が永久磁石式同期発電機であり、該風力発電機で発電した交流電圧をトランスで30~110kVまで昇圧した後にAC-DCコンバータにより直流電圧10~20kV、直流電流5.0~10.0kAの直流電力に変換し、得られた直流電力を前記冷媒圧縮機を駆動させるシンクロナスモーターに給電すると共に、前記水の電気分解を行なう電解槽にはソリッドステート変圧器で構成されるDC-DCコンバータを介して100~150Vまで降圧させて給電することを特徴とする、請求項22に記載のグリーンエネルギー輸送方法。
【請求項24】
前記液化メタン及び液化COの輸送は、それぞれ専用の低温タンカーを使用し、該輸送する液化COが圧力5.2~12.8barA、温度-56~-33℃の場合は、液化CO用の低温タンカーは、材質がアルミキルド系炭素鋼、1.5%Niニッケル鋼、又は低温用高張力ニッケル鋼であって、タンク形状が球形では3~7個のタンクを、横向き円筒形では4~8個のタンクを有することを特徴とする、請求項22に記載のグリーンエネルギー輸送方法。
【請求項25】
前記液化メタンを輸送する低温タンカーには球形タンクを3~7個有するMoss型を使用し、その材質には前記輸送する液化メタンが圧力-0.05~0.25barG、温度-162℃の場合は6-7.5%Ni鋼、8.5-9.5%Ni鋼、18-8ステンレス鋼、又はアルミ合金5083を用い、圧力8.0~12.8barA、温度-120~-130℃の場合は6-7.5%Ni鋼、8.5-9.5%Ni鋼、18-8ステンレス鋼、アルミ合金5083、又は5%Ni鋼を用いることを特徴とする、請求項24に記載のグリーンエネルギー輸送方法。
【請求項26】
前記メタン輸送工程では圧力-0.05~0.25barG、温度-162℃の液化メタンを輸送し、前記CO輸送工程では圧力5.2~12.8barA、温度-56~-33℃の液化COを輸送し、これら液化メタン及び液化COの輸送は、材質が6-7.5%Ni鋼、8.5-9.5%Ni鋼、18-8ステンレス鋼、又はアルミ合金5083であって、タンク形状が球形では3~7個のタンクを、横向き円筒形では4~8個のタンクを有する低温タンカーを共用することを特徴とする、請求項22に記載のグリーンエネルギー輸送方法。
【請求項27】
前記メタン輸送工程では圧力8.0~12.8barA、温度-120~-130℃の加圧された液化メタンを輸送し、前記CO輸送工程では圧力5.2~10.8barA、温度-56~-33℃の液化COを輸送し、これら加圧された液化メタン及び液化COの輸送は、材質が6-7.5%Ni鋼、8.5-9.5%Ni鋼、18-8ステンレス鋼、アルミ合金5083、又は5%Ni鋼であって、タンク形状が球形では3~7個のタンクを、横向き円筒形では4~8個のタンクを有する低温タンカーを共用することを特徴とする、請求項22に記載のグリーンエネルギー輸送方法。
【請求項28】
前記加圧された液化メタンは、予め加圧されたメタンガスを冷媒と熱交換させることで冷却した後、膨張手段で圧力8.0~12.8barAまで減圧させて一部をフラッシュさせることで生成することを特徴とする、請求項27に記載のグリーンエネルギー輸送方法。
【請求項29】
前記酸素輸送工程では酸素液化手段で液化した圧力1.0~13barA、温度-183.9~-149℃の液化酸素を輸送し、前記CO輸送工程では圧力5.2~10.8barA、温度-56~-33℃の液化COを輸送し、これら液化酸素及び液化COの輸送は、材質が6-7.5%Ni鋼、8.5-9.5%Ni鋼、18-8ステンレス鋼、アルミ合金5083、又は5%Ni鋼であって、タンク形状が球形では3~7個のタンクを、横向き円筒形では4~8個のタンクを有する低温タンカーを共用することを特徴とする、請求項18に記載のグリーンエネルギー輸送方法。
【請求項30】
前記低温タンカーが有する複数のタンクの各々は、タンク内上部に放出口を有する第1供給ノズル、タンク内下部に放出口を有する第2供給ノズル、タンク内上部に排出口を有する第1ベントノズル、タンク内下部に排出口を有する第2ベントノズル、及びサブマージドポンプ用カラムの吐出ノズルを有し、これら5個のノズルを用いて下記S1~S6の操作を繰り返すことで液化メタン及び液化COを交互に輸送することを特徴とする、請求項26又は27に記載のグリーンエネルギー輸送方法。
(S1)第1供給ノズルからタンク内に置換用ガスとして低温のメタンガスを導入しながらサブマージドポンプを運転することで該球形タンク内の液化メタンをアンローディングし、該アンローディングの完了後も引き続きメタンガスを導入してタンク内を加圧する。
(S2)第2供給ノズルによっての低温のCOガスをタンク下部から導入すると共に、タンク内のメタンガスを第1ベントノズル及びサブマージドポンプの吐出ノズルからベントすることでメタンガスを炭酸ガスに置換する。
(S3)第2供給ノズルによって低温の液化COをタンク下部から導入することでローディングを行なうと共に、タンク内のCOガスを第1ベントノズル及びサブマージドポンプの吐出ノズルからベントすることでCOガスを液体COに置換する。
(S4)第1供給ノズルからタンク内に置換用ガスとして低温のCOガスを導入しながら、サブマージドポンプを運転することで該球形タンク内の液化COをアンローディングする。
(S5)第1供給ノズル及びサブマージドポンプの吐出ノズルによって低温のメタンガスをタンク上部及びポンプカラムから導入すると共に、タンク内のCOガスを第2ベントノズルからベントすることでCOガスをメタンガスに置換する。
(S6)第1供給ノズルによってタンク上部から液化メタンを散布して該球形タンクを極低温まで冷却した後、第1ベントノズル及びサブマージドポンプの吐出ノズルからメタンガスをベントしながら第2供給ノズルから液化メタンを導入することで底部から液面が徐々に上昇するようにローディングする。
【請求項31】
前記液化メタン受入基地では液化メタンで満たされた前記複数のタンクに対して1つずつ前記S1の操作を逐次行ない、該複数のタンクの各々において該S1の操作が完了した後は、引き続きS2及びS3の操作を行なうことで、最終的に全てのタンクにおいて液化メタンのアンローディング及び液化COのローディングを行ない、
前記メタン合成基地では液化COで満たされた前記複数のタンクに対して1つずつ前記S4の操作を逐次行ない、該複数のタンクの各々において該S4の操作が完了した後は、引き続きS5及びS6の操作を行なうことで、最終的に全てのタンクにおいて液化COのアンローディング及び液化メタンのローディングを行なうことを特徴とする、請求項30に記載のグリーンエネルギー輸送方法。
【請求項32】
前記低温タンカーが有する複数のタンクの各々は、タンク内上部に放出口を有する第1供給ノズル、タンク内下部に放出口を有する第2供給ノズル、タンク内上部に排出口を有する第1ベントノズル、タンク内下部に排出口を有する第2ベントノズル、及びサブマージドポンプ用カラムの吐出ノズルを有し、これら5個のノズルを用いて下記S1~S6の操作を繰り返すことで液化酸素及び液化COを交互に輸送することを特徴とする、請求項29に記載のグリーンエネルギー輸送方法。
(S1)第1供給ノズルからタンク内に置換用ガスとして低温の酸素ガスを導入しながらサブマージドポンプを運転することで該球形タンク内の液化酸素をアンローディングし、該アンローディングの完了後も引き続き酸素ガスを導入してタンク内を加圧する。
(S2)第2供給ノズルによっての低温のCOガスをタンク下部から導入すると共に、タンク内の酸素ガスを第1ベントノズル及びサブマージドポンプの吐出ノズルからベントすることで酸素ガスを炭酸ガスに置換する。
(S3)第2供給ノズルによって低温の液化COをタンク下部から導入することでローディングを行なうと共に、タンク内のCOガスを第1ベントノズル及びサブマージドポンプの吐出ノズルからベントすることでCOガスを液体COに置換する。
(S4)第1供給ノズルからタンク内に置換用ガスとして低温のCOガスを導入しながら、サブマージドポンプを運転することで該球形タンク内の液化COをアンローディングする。
(S5)第1供給ノズル及びサブマージドポンプの吐出ノズルによって低温の酸素ガスをタンク上部及びポンプカラムから導入すると共に、タンク内のCOガスを第2ベントノズルからベントすることでCOガスを酸素ガスに置換する。
(S6)第1供給ノズルによってタンク上部から液化酸素を散布して該球形タンクを極低温まで冷却した後、第1ベントノズル及びサブマージドポンプの吐出ノズルから酸素ガスをベントしながら第2供給ノズルから液化酸素を導入することで底部から液面が徐々に上昇するようにローディングする。
【請求項33】
前記水素エネルギー消費地では液化酸素で満たされた前記複数のタンクに対して1つずつ前記S1の操作を逐次行ない、該複数のタンクの各々において該S1の操作が完了した後は、引き続きS2及びS3の操作を行なうことで、最終的に全てのタンクにおいて液化酸素のアンローディング及び液化COのローディングを行ない、
前記メタン合成基地では液化COで満たされた前記複数のタンクに対して1つずつ前記S4の操作を逐次行ない、該複数のタンクの各々において該S4の操作が完了した後は、引き続きS5及びS6の操作を行なうことで、最終的に全てのタンクにおいて液化COのアンローディング及び液化酸素のローディングを行なうことを特徴とする、請求項32に記載のグリーンエネルギー輸送システム。
【請求項34】
前記メタン輸送工程は、前記再生可能エネルギーをエネルギー源とする電力が可変速モーター用インバーターを介して給電されるシンクロナスモーターによって駆動される回転式容積型の圧縮機で前記メタンを圧縮することで得た高圧メタンガスを前記メタン合成工程が行なわれるメタン合成基地から前記水素エネルギー消費地まで敷設されたメタンガス用パイプラインで輸送する工程からなり、
前記CO輸送工程が、前記再生可能エネルギーをエネルギー源とする電力が可変速モーター用インバーターを介して給電されるシンクロナスモーターによって駆動される回転式容積型の圧縮機で前記リサイクルCOを圧縮することで得た高圧リサイクルCOを前記水素エネルギー消費地から前記メタン合成基地まで敷設されたCO用パイプラインで輸送する工程からなることを特徴とする、請求項18に記載のグリーンエネルギー輸送方法。
【請求項35】
前記メタン輸送工程が、前記再生可能エネルギーをエネルギー源とし且つ超高圧直流ケーブルを介して送電される電力か、又は買電による電力で作動するシンクロナスモーターで駆動されるメタンガス用ブースター圧縮機を用いて前記メタンガス用パイプラインの途中で前記メタンガスを昇圧する工程を更に有し、前記CO輸送工程が、前記再生可能エネルギーをエネルギー源とし且つ超高圧直流ケーブルを介して送電される電力か、又は買電による電力で作動するシンクロナスモーターで駆動されるCO用ブースター圧縮機を用いて前記CO用パイプラインの途中で前記リサイクルCOを昇圧する工程を更に有することを特徴とする、請求項34に記載のグリーンエネルギー輸送方法。
【請求項36】
前記発電工程からCO輸送工程までの全工程から大気中に放出されるCO放出量が、これら一連の工程で消費される炭素のCO換算量に対して3%以下であることを特徴とする、請求項18に記載のグリーンエネルギー輸送方法。
【請求項37】
前記3%以下のCO放出量を相殺するため、バイオマス発電又はバイオマス燃焼設備の燃焼ガスから回収したCOか、あるいはダイレクトエアキャプチャーから回収したCOを前記リサイクルCOとして利用することを特徴とする、請求項36に記載のグリーンエネルギー輸送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリーン水素によるグリーンエネルギー輸送システム及びグリーンエネルギー輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境問題への関心が高まる中、石油、石炭、液化天然ガス(以下、LNGと称する)等の有限な化石燃料の代替、地球温暖化の緩和等の対策として、風力、太陽光、太陽熱、地熱、水力、波力、バイオマス等に代表されるいわゆる再生可能エネルギーを利用した発電が注目されている。しかしながら、再生可能エネルギーによる発電は自然現象に左右されるため、これにより発電した電気を既存インフラの電力系統に連系する割合が高くなると、電圧や周波数が不安定になり、電力品質の維持に支障をきたすおそれがある。
【0003】
そこで、再生可能エネルギーを用いてCOをほとんど排出することのない、いわゆるグリーン水素製造法により水素を製造し、得られたグリーン水素をエネルギー需要の高いエネルギー消費地で主として燃料電池の原料として利用する技術が提案されている。例えば特許文献1には、風力や太陽光などの再生可能エネルギーにより発電する発電部から供給される電力を用いて水の電気分解により水素を製造する水素製造部と、該水素製造部で製造した水素を例えば水素タンクに貯蔵する水素貯蔵部と、該水素貯蔵部に貯蔵された水素を用いてエネルギー消費地において例えば燃料電池からなる水素発電部で発電する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/069993号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように水素は大量に貯蔵できるので、特許文献1の技術を採用することで不安定な再生可能エネルギーを利用して水素エネルギーの形態で安定的にエネルギーを供給することが可能になる。しかしながら、上記の風力や太陽光などに代表される再生可能エネルギーの発電設備は、風況等の自然条件、土地代、社会的影響等を考慮して、人口が密集した都市部や郊外の水素エネルギー消費地からは概して遠隔した地である極圏や砂漠地帯などに設置されることが多い。従って、かかる遠隔地から水素エネルギー消費地まで効率よく且つ低コストにエネルギーを輸送する技術が再生可能エネルギーを用いたグリーン水素製造に求められている。
【0006】
また、上記のエネルギー輸送に際して、温室効果による地球温暖化の原因の1つとして挙げられている二酸化炭素の排出を抑えることが、再生可能エネルギーを用いたグリーン水素製造法を普及させるうえで重要になる。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、再生可能エネルギーの電力を利用した遠隔地にあるグリーン水素製造設備からエネルギー消費地まで低環境負荷で且つ効率よく水素エネルギーを輸送可能なグリーンエネルギー輸送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るグリーンエネルギー搬送システムは、再生可能エネルギーにより発電及び蓄電を行なう発電手段と、前記発電手段で得た電力を用いて水を電気分解することにより水素を生成する水電解手段と、前記水電解手段で生成した水素及びリサイクルCOを原料とするサバティエ反応によりメタンを生成するメタン合成手段と、前記メタン合成手段で生成したメタンを大気中へのCO排出を伴わない手段により水素エネルギー消費地まで輸送するメタン輸送手段と、前記メタン輸送手段で輸送されたメタン及び別途用意した酸素を原料とする自己熱改質法により水素製造を行なうと共に該水素製造時に生成されるプロセスガスから高濃度COをリサイクルCOとして回収する水素製造・炭素回収手段と、前記リサイクルCOを大気中へのCO排出を伴わない手段により前記メタン合成手段が設けられているメタン合成基地まで輸送するCO輸送手段とから構成されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るグリーンエネルギー搬送方法は、再生可能エネルギーにより発電及び蓄電を行なう発電工程と、前記発電工程で得た電力を用いて水を電気分解することにより水素を生成する水電解工程と、前記水電解工程で生成した水素及びリサイクルCOを原料とするサバティエ反応によりメタンを生成するメタン合成工程と、前記メタン合成工程で生成したメタンを大気中へのCO排出を伴わない手段により水素エネルギー消費地まで輸送するメタン輸送工程と、前記メタン輸送工程で輸送されたメタン及び別途用意した酸素を原料とする自己熱改質法により水素製造を行なうと共に該水素製造時に生成されるプロセスガスから高濃度COをリサイクルCOとして回収する水素製造・炭素回収工程と、前記リサイクルCOを大気中へのCO排出を伴わない手段により前記メタン合成工程を行なうメタン合成基地まで輸送するCO輸送工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、再生可能エネルギーの電力を利用した遠隔地にあるグリーン水素製造設備からエネルギー消費地まで低環境負荷で且つ効率よく水素エネルギーを輸送することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムを示すブロックフロー図である。
図2】本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムを構成する発電手段の一具体例の構成図である。
図3】従来の配電図及び本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムを構成する発電手段における配電図の一具体例である。
図4】本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムを構成する発電手段におけるSST(ソリッドステート変圧器)の構成図の一具体例である。
図5】本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムを構成する水電解手段の一具体例である固体酸化物水電解装置の模式的な縦断面図である。
図6】本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムを構成する水電解手段の他の具体例であるプロトン交換膜水電解装置の模式的な縦断面図である。
図7図6のプロトン交換膜水電解装置の一具体例の斜視図である。
図8】本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムを構成する水電解手段の更に他の具体例であるアルカリ水電解装置の模式的な縦断面図である。
図9図1の水電解手段が好適に有する高圧水素貯蔵設備のプロセスフロー図である。
図10図9に示す高圧水素貯蔵設備の一具体例の斜視図である。
図11】本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムを構成するメタン合成手段の一具体例のプロセスフロー図である。
図12】本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムを構成するメタン液化手段の一具体例である混合冷媒プロセスのプロセスフロー図である。
図13図10のプロセスフロー図に示す主低温熱交換器を構成する伝熱管の一具体例を示す写真である。
図14】本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムを構成するメタン液化手段の他の具体例であるカスケードプロセスのプロセスフロー図である。
図15】本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムを構成するメタン液化手段の更に他の具体例であるエキスパンダープロセスのプロセスフロー図である。
図16】本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムを構成するメタン液化手段で発生する非液化水素をメタン合成手段にリサイクルするプロセスの一具体例のプロセスフロー図である。
図17】本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムを構成するメタン液化手段で加圧された液化メタンを生成するプロセスのプロセスフロー図である。
図18】本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムを構成するメタン液化手段で好適に用いられる回転容積型の冷媒圧縮機の一具体例のローター部分の正面図、底面図及び断面図である。
図19】LNGタンカーの一具体例を示す写真である。
図20】本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムを構成する液化メタン輸送手段及び液化CO輸送手段で好適に利用される低温タンカーの一具体例の側面図である。
図21】本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムを構成する液化メタン受入・再ガス化手段の一具体例のプロセスフロー図である。
図22図19のプロセスフロー図に示す気化器の一具体例の部分破断斜視図である。
図23】本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムを構成する水素製造・炭素回収手段の一具体例である自己熱改質(ATR)プロセスのプロセスフロー図である。
図24図23のプロセスフロー図に示す炭素回収手段の一具体例であるアミン吸収液プロセスのプロセスフロー図である。
図25】本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムを構成する水素製造・炭素回収手段の他の具体例である固体酸化物型燃料電池による発電のプロセスフロー図である。
図26】本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムを構成する水素製造・炭素回収手段の更に他の具体例であるAllamサイクルによる発電のプロセスフロー図である。
図27】本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムを構成する水素製造・炭素回収手段の更に他の具体例であるオキシ燃料燃焼複合サイクル方式による発電のプロセスフロー図である。
図28】本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムを構成するCO液化手段の一具体例のプロセスフロー図並びにその物質収支及び熱収支である。
図29】複数の横向き円筒タンクを備えた液化CO用の低温タンカーの一具体例を示す斜視図である。
図30】本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムを構成する発電手段に含まれる永久磁石式同期発電機を用いた風力発電機及び蓄電池の一具体例の構成図である。
図31】本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムを構成する発電手段で好適に採用される制御アルゴリズムのフローチャートである。
図32図18の低温タンカーが有する球形タンクの一具体例の縦断面図である。
図33】本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムを構成する液化メタン輸送手段及び液化CO輸送手段で利用する低温タンカーを共用する場合のローディング及びアンローディング手順を示す縦断面図である。
図34図33の手順のうち、液化メタンを液化COに入れ替える手順を4個の球形タンクを有する低温タンカーで行なう場合を示す縦断面図である。
図35図33の手順のうち、液化COを液化メタンに入れ替える手順を4個の球形タンクを有する低温タンカーで行なう場合を示す縦断面図である。
図36】米国内に張り巡らされている天然ガスパイプライン網の地図である。
図37】米国内に張り巡らされる計画のCOガスパイプライン網の地図である。
図38】本発明の第2の実施形態のエネルギー輸送システムを示すブロックフロー図である。
図39】本発明の第2の実施形態のエネルギー輸送システムを構成する発電手段における配電図の一具体例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1. 第1の実施形態(タンカー輸送方式)
1-1 グリーンエネルギー搬送システム
以下、本発明に係る再生可能エネルギーをエネルギー源とするグリーンエネルギー搬送システムの第1の実施形態について説明する。この本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムは、図1に示すように、再生可能エネルギーにより発電及び蓄電を行なう発電手段M1と、発電手段M1で得た電力を用いて水を電気分解することにより水素を生成する水電解手段M2と、該水電解手段M2で生成した水素及びリサイクルされたCOを原料とするサバティエ反応によりメタン化を行なってメタンを生成するメタン合成手段M3と、該メタン合成手段M3で生成したメタンを液体メタンの形態で輸送すべく、該再生可能エネルギーをエネルギー源とする電力が可変速モーター用インバーターを介して給電されるシンクロナスモーターによって駆動される回転式容積型の冷媒圧縮機を用いて該メタンを液化するメタン液化手段M4と、該メタン液化手段M4で液化したメタンを大気中へのCO排出を伴わない手段により水素エネルギー消費地まで輸送する液化メタン輸送手段M5と、該液化メタン輸送手段M5で輸送した液体メタンを液化メタン貯蔵タンクに受け入れた後に再ガス化する液化メタン受入・再ガス化手段M6と、該水電解手段M2で生成した酸素を液体酸素の形態で輸送すべく、該再生可能エネルギーをエネルギー源とする電力が可変速モーター用インバーターを介して給電されるシンクロナスモーターによって駆動される回転式容積型の冷媒圧縮機を用いて該酸素を液化する酸素液化手段M7と、該酸素液化手段M7で液化した酸素を大気中へのCO排出を伴わない手段により水素エネルギー消費地まで輸送する液化酸素輸送手段M8と、該液化酸素輸送手段M8で輸送した液化酸素を液化酸素貯蔵タンクに受け入れた後に再ガス化する液化酸素受入・再ガス化手段M9と、該液化メタン受入・再ガス化手段M6及び該液化酸素受入・再ガス化手段M9とでそれぞれ一旦受け入れた後に再ガス化したメタン及び酸素を原料とする自己熱改質法(Autothermal Reforming)により水素製造を行なうと共に、該水素製造時に生成されるプロセスガスから高濃度COガスをリサイクルCOとして回収する水素製造・炭素回収手段M10と、該水素製造・炭素回収手段M10で回収したリサイクルCOを大気中へのCO排出を伴わない手段によりメタン合成手段M3が設けられているメタン合成基地まで輸送するCO輸送手段M11とから構成される。なお、上記の再ガス化したメタン及び酸素を一部ずつ抜き出して互いに反応させることで発電を行なうと共に、該発電時に排出される炭素を高濃度COガスの形態で回収する発電・炭素回収手段M12を更に有してもよい。この場合は、回収した高濃度COガスは、上記の水素製造・炭素回収手段M10で回収したリサイクルCOに混ぜてメタン合成手段3で原料として用いるのが好ましい。
【0012】
なお、上記のメタン輸送手段M5は、上記のメタン液化手段M4で液化した液化メタンを大気中へのCO排出を伴わない第1動力手段を駆動源とする液化メタンタンカーで水素消費地まで輸送するものである。また、上記の水素製造・炭素回収手段M10は、回収したリサイクルCOを液体COの形態で輸送すべく、該リサイクルCOを液化する図示しないCO液化手段を有しており、メタン合成手段M3は、液化CO輸送手段M12で輸送された液化COを液化CO貯蔵タンクに受け入れた後に再ガス化する図示しない液化CO受入・再ガス化手段を有している。前者のCO液化手段には、限定するものではないが、液化メタン受入・再ガス化手段M6において液化メタンを再ガス化するときに生じる冷熱を利用してCOを液化する熱交換器を用いるのが好ましい。また、後者の液化CO受入・再ガス化手段は、限定するものではないが、液化メタン受入・再ガス化手段M6や液化酸素受入・再ガス化手段M8と同様の設備構成にすることが好ましい。この場合、液化CO輸送手段M12は、上記のCO液化手段で得た液化COをメタン合成手段M3が設けられているメタン合成サイト(基地)まで大気中へのCO排出を伴わない第2動力手段を駆動源とする液化COタンカーで輸送するものである。なお、図1中において括弧内に示す数値はエネルギー効率であり、風力発電ファームの設置場所と自己熱改質を行なう設備の設置場所が3,000海里のケースでは、水電解装置にプロトン交換膜(PEM)を採用した場合は約64%、水電解装置に固体酸化物水電解装置(SOEC)を採用した場合は約74%になる。
【0013】
上記の一連の手段のうち、水素生成手段M2、メタン合成手段M3、メタン液化手段M4、及び酸素液化手段M7をまとめてPtG複合施設(Power to Gas Complex)と称することがあり、一方、液化メタン受入・再ガス化手段M6、液化酸素受入・再ガス化手段M9、水素製造・炭素回収手段M10、及び必要に応じて設けられる発電・炭素回収手段M12をまとめて水素製造コンプレックス(Hydrogen Production Complex)と称することがある。また、上記の水素製造・炭素回収手段M10や発電・炭素回収手段M12における炭素回収をCCR(Carbon Capture and Reuse)と称することがある。この本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムは、日本及び世界で発電用燃料あるいは家庭用都市ガスとして使われているLNGの出荷基地、LNGタンカー、受入基地などの既存の多数のインフラ設備を利用できるので、化石燃料の代替エネルギーとしての実現に向けてたハードルは高くないと考えられる。以下、上記グリーンエネルギー輸送システム構成する各手段について詳細に説明する。
【0014】
発電手段M1で取り扱う再生可能エネルギーは、石油、石炭、天然ガス等の化石燃料を燃焼することで生じさせるエネルギーとは異なり、地球上で自然に起こる現象を利用して繰り返し使えるエネルギーであり、代表的な再生可能エネルギーとしては、風力発電、太陽光発電、太陽熱発電、地熱発電、水力発電、バイオマス発電、波力・潮流・潮汐発電等を挙げることができる。これら再生可能エネルギーにより発生させた電力は、最も一般的な交流電力ケーブルを用いて送電することができる。
【0015】
風力発電は、風の力で風車を回転させ、その回転運動を発電機に伝えて発電する方式である。太陽光発電は、半導体や色素で構成される太陽電池に太陽光を照射させることで光エネルギーを直接電気に変える方式である。太陽熱発電は、太陽光を反射板によって集光することで得た熱で高温蒸気を発生させ、この高温蒸気でタービンを回転させて発電する方式である。地熱発電は、地下に浸透した雨水がマグマによって加熱されて生じた蒸気を利用してタービンを回転させて発電する方式である。水力発電は、ダムなどに貯水した水が落下する力でタービンを回転させて発電する方式である。バイオマス発電は、未利用の木材資源、下水汚泥、一般廃棄物などの化石燃料以外の動植物由来の有機物資源をリサイクルして作られたバイオマス燃料を燃焼し、これにより生じる燃焼熱で生成した蒸気でタービンを回すことで電気を発生する方式である。波力・潮流・潮汐発電は、いずれも海洋エネルギーを利用した発電であり、波のエネルギーを利用した波力発電は、空気室内における海面の上下動により生じる空気流によりタービンを回転させる方式と、可動体を介して波力エネルギーを油圧に変換した後、油圧モーターを用いて発電する方式と、波のオーバーフローにより貯水池に貯留した海水を排水する際に海面との落差を利用して水車を回転して発電する方式とに大別することができる。潮流発電は、潮流の運動エネルギーを利用して水車を回転して発電する方式であり、潮汐発電は、潮汐に伴う潮位差を利用して水力発電と同様にタービンを回して発電する方式である。
【0016】
発電手段M1には、エネルギー源として上記の再生可能エネルギーのいずれを利用してもよいが、以下の説明では、夜間に発電を行なうことができない太陽光発電や太陽熱発電とは異なり、昼夜を通して安定的に発電可能であって、且つ既存のLNGのインフラ設備を利用する場合に好都合な風力発電をエネルギー源にする場合を例に挙げて説明する。なお、Cristina L. Archerらによる文献(JOURNAL OF GEOPHYSICAL RESEARCH, VOL. 110, D12110, doi:10.1029/2004JD005462, 2005)によれば、風力発電のポテンシャルは世界の全てのエネルギー需要の約5倍あると言われており、人類に必要なエネルギーを全て再生可能エネルギーでまかなえば、大気中の二酸化炭素濃度を産業革命以前のレベルに戻すことができ、地球温暖化の進行を抑制して産業革命以前の寒冷化に戻すことが期待できる。
【0017】
再生可能エネルギーとして風力発電を利用する場合は、風力発電機を複数台設置することで、全体として一つの発電所として運営するのがスケールメリットを生かせるので好ましく、このような運営形態をウインドファームと称することがある。ウインドファームは、例えば図2に示すように、定格出力2.5MW、出力電圧AC690Vの風力発電機11が、沿岸に沿った沖合か又は約40km以上離れた遠隔地に複数台設置されており、各々の出力電力は、発電機側のパッドマウント又はナセル変圧器により34.5kVの中圧(MV)に昇圧された後、集電システム12に集められ、地下又は海底の送電線13を介して変電設備14に送電される。変電設備14では、送電レベルとなる69kV以上の高圧(HV)に昇圧されて送電される。
【0018】
上記の風力発電機のタイプは、かご型誘導発電機(SCIG:Squirrel Cage Induction Generator)を用いた固定速風力発電機、又は2重給電誘導発電機(DFIG:Doubly Fed Induction Generator)若しくは永久磁石式同期発電機(PMSG:Permanent Magnet Synchronous Generator)を用いた可変速風力発電機に大別することができる。これらの中では、電力変換器を用いて系統に連系されているため系統周波数とは独立に発電機回転数を制御することが可能な可変速風力発電機が好ましく、多極化することでギアレス化が可能なPMSGがより好ましい。
【0019】
上記のウインドファームでは、例えば下記表1に示すVESTAS社製の風力発電機V236-15.0MWを略マトリックス状に1000台設置することで、15,000MWの出力キャパシティーを実現することができる。
【0020】
【表1】
【0021】
上記の風力発電機から変電設備14までの送電には交流送電と直流送電があり、経済性を考慮して適宜選択される。交流送電の場合の配電の仕組みは、例えば図3(a)に示すように、風力発電機(WT)で発電した出力電圧AC690Vをトランスで30~110kVに昇圧した後、メタン液化手段M4で使用する冷媒圧縮機の駆動用シンクロナスモーターの近くに設置されたトランスまで3相ACのケーブルで送電し、ここで10~20kVまで降圧してからVFD(Variable Frequency Drive)に給電している。VFDの内部ではAC-DCコンバータにより変換された直流電流がインバーターで変換されて可変周波数の交流電流がシンクロナスモーターに給電される。一方、水電解手段M2で使用する水の電気分解用の電解槽には、トランスにより100~150Vまで降圧してからAC-DCコンバータで変換されて100~150Vの直流電流が給電される。この交流送電の場合は、送電ケーブルは原則として3本又は3本×2になる。
【0022】
これに対して、直流送電の場合の配電の仕組みは、例えば図3(b)に示すように、風力発電機(WT)で発電した出力電圧AC690Vをトランスで30~110kVまで昇圧した後、AC-DCコンバータにより直流電圧10~20kV、直流電流5.0~10.0kAの直流電力に変換し、得られた直流電力を後段のメタン液化手段M4で使用する冷媒圧縮機の駆動用シンクロナスモーターに給電している。一方、水電解手段M2で使用する水の電気分解用の電解槽には、10~20kVでは電圧が高すぎるので、図4に示すような降圧の度合いが大きいときに好適に用いられるソリッドステート変圧器(SST:Solid State Transformer)で構成されるDC-DCコンバータによって100~150Vまで降圧してから給電している。この直流送電の場合は、送電ケーブルは原則として1本+アースあるいは2本になる。このように、交流送電をできるだけ少なくしてその代わりに直流送電を多く採用することにより、トランス及び3相ACの配線を少なくできるので、コストダウンを図ることができる。
【0023】
上記の発電手段M1の後段に位置する水電解手段M2は、発電手段M1で得た再生可能エネルギーをエネルギー源とする水の電気分解により水素を製造するものであり、このようにして製造される水素はグリーン水素とも称される。この場合の水の電気分解(水電解とも称する)を行なう装置は、電解質の種類によって、固体酸化物水電解装置(SOEC)、プロトン交換膜(PEM)水電解装置、及びアルカリ水電解装置に分類することができる。
【0024】
固体酸化物水電解装置(SOEC)は、後述する固体酸化物型燃料電池(SOFC)の逆反応により600~1100℃程度の高温で水を電気分解するものであり、図5に示すように、イットリウム等で修飾された酸化ジルコニウム等の固体酸化物からなる電解質を挟んで両側に陰極及び陽極がそれぞれ設けられた基本構造を有している。陰極側に供給された水蒸気は、水素と酸化物イオンに分解し、該酸化物イオンが電解質を通過して陽極において酸素になる。
【0025】
プロトン交換膜(PEM)水電解装置は、図6に示すように、プロトン伝導性のカチオン高分子膜からなるプロトン交換膜(PEM)を電解質とし、その両側に触媒層を介して白金担持カーボンや白金被覆チタン等からなる陰極と、酸化イリジウム被覆チタンやイリジウムルテニウムニッケル酸化物等からなる陽極とがそれぞれ設けられた基本構造を有している。なお、上記のPEMは、プロトン交換膜(Proton Exchange Membrane)のほか、固体高分子膜(Polymer Electrolyte Membrane)を意味することがある。陽極側に供給された水(HO)は、酸素とプロトン(H)とに分解され、該プロトンがプロトン交換膜を通過して陰極で電子を受け取ることで水素となる。上記構造の固体高分子膜を用いた水電解装置としては、例えば図7に示すSiemens社のSilyzer300を挙げることができる。
【0026】
アルカリ水電解装置は、図8に示すように、ガスバリア膜としての隔壁を挟んでランタンドープ酸化コバルトやニッケルコバルト酸化物等からなる陽極と、ラネーニッケル等の高表面積触媒電極からなる陰極とが対向する基本構造を有している。陰極側で水分子が水素イオンと水酸化物イオンに分解し、この水酸化物イオンが隔壁を通過して陽極側で酸素を生成する。なお、SOEC、PEM水電解装置、アルカリ水電解装置のいずれの方式を採用する場合においても、生成される水素及び酸素の圧力が30~200barAの範囲内であることが好ましい。この圧力が30barA未満では加圧圧縮機のコストおよび所用動力が過大となり、逆に250barAを超えると水素中の酸素含有量(不純物)が増え過ぎることになる。この圧力範囲は、水電解装置において複数のセルをスタックすることにより達成することができる。
【0027】
上記の水電解手段M2は、水の電気分解で生成した水素の一部を貯蔵する水素貯蔵設備を有しているのが好ましく、これにより、発電手段M1において昼夜や季節ごとで異なり得る風況などにより発電量が大きく変動しても、後段のメタン合成手段手段M3に一定量の水素を供給することが可能になる。この水素貯蔵設備の具体的な構造については特に限定はなく、高圧に圧縮して高圧水素用タンクに貯蔵してもよいし、アルカリ土類系、希土類系、チタン系等の合金からなる水素貯蔵合金を用いてもよい。高圧水素用タンクに水素を貯蔵する場合は、高圧水素による脆化を防ぐため、高圧水素用タンクの材質には、API 5L-X80などの高張力鋼、特殊ステンレス鋼、アルミニウム合金、高分子複合材料などを用いるのが好ましい。
【0028】
図9には、水電気分解M2として例えばPEMにより生成した水素を高圧水素用タンクに貯蔵する高圧水素貯蔵設備のプロセスフロー図が示されている。この図9のプロセスフロー図に示すように、高圧水素貯蔵設備11は、PEMなどの水電解手段M2で生成した例えば1.0~5.0MPaG程度、好ましくは3.0~4.0MPaG程度、より好ましくは3.5MPaG程度の水素をメタン合成手段M3に移送する配管から分岐する分岐管に設けられている。なお、図9では水電解手段M2で生成した水素を低圧スクリュー圧縮機10aで昇圧した後にメタン合成手段M3に供給しており、上記の分岐管は、この低圧スクリュー圧縮機10aの吐出側に設けられているが、この構成に限定されるものではない。
【0029】
図10には、上記の高圧水素貯蔵設備の一具体例が示されている。すなわち、この図10に示す高圧水素貯蔵設備11は、PEMなどを用いた水電解手段M2で生成した水素を低圧側スクリュー圧縮機10a及び高圧側スクリュー圧縮機10bを用いて例えば10.0~45.0MPaG程度、好ましくは15.0~20.0MPaG程度まで昇圧した高圧水素を移送する一次配管12と、該一次配管12を介して導入される高圧水素を分配するマニホールド13と、該マニホールド13によって分配された高圧水素を貯蔵する複数本のパイプで構成される貯蔵配管群14とから主として構成される。なお、高圧水素貯蔵設備11に貯蔵した高圧水素を取り出すときは、高圧側スクリュー圧縮機10bをガスエキスパンダとして用いることで動力を回収することが可能になる。この場合、気体を断熱膨張させると温度が低下し、逆に断熱圧縮させると温度が上昇するので、必要に応じて高圧側スクリュー圧縮機10bの一次側と二次側にそれぞれ熱交換器を設けて熱回収/熱廃棄してもよい。
【0030】
上記の水電解手段M2の後段に位置するメタン合成手段M3は、該水電解手段M2で生成された水素(H)と、リサイクルされた二酸化炭素(CO)とを原料として下記反応式1に示すサバティエ反応によりメタン化を行なうことでメタンを生成するものである。
[反応式1]
CO+4H=CH+2H
【0031】
上記のサバティエ反応は、例えば、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、酸化イットリウム、セリア、チタニア、ゼオライト、又はこれらを2種以上含む固溶体などからなる担体に、ニッケル系やルテニウム系などを担体基準で5~20質量%担持させることで得た触媒の存在下において例えば200~700℃程度、3.0~7.0MPaG程度の高温高圧下で反応させるため、該メタン合成手段M3には一般的に図11(a)に示すような直列に接続された複数の反応器21~24が用いられ、これにより段階的に反応を進行させる。サバティエ反応は発熱を伴うため、これら反応器21~24の各々の後段には、水を用いた蒸気発生器あるいは水を冷媒に用いた冷却器25~29が設けられている。
【0032】
なお、図11(b)に示すよう、上記のサバティエを行なう反応器21~24の直ぐ前段に、例えば、シリカ、アルミナなどからなる担体に、Cu、Fe、Mo、Kなどを担持させることで得た触媒や、BaZr0.80.2、BaCe0.2Zr0.60.16Zn0.04などの触媒の存在下において下記式2に示す逆水性ガスシフト反応を行なわせる逆水性ガスシフト反応器20を設置してもよい。
[反応式2]
CO+H=CO+H
【0033】
上記の逆水性ガスシフト反応により、COに比べて反応性の高い一酸化炭素(CO)を生成することができるので、生成ガスの一部を抜き出してCOを分離することで、オキソアルコール合成反応やフィッシャートロプシュ反応によりオキソアルコールや高級炭化水素を生成することができる。なお、サバティエ反応は発熱反応であるのに対して、逆水性ガスシフト反応は吸熱反応であるので、サバティエ反応器21~24で生じた反応熱を用いて逆水性ガスシフト反応器20への原料ガスを加熱することにより、系全体の熱効率を高めることができる。
【0034】
上記のサバティエ反応では、炭酸ガス1モルに対する水素の化学量論量は4モルであるが、この化学量論量で100%反応させることは実装置では現実的ではなく、2~4%程度の未反応ガスが生成ガス中に残留する。そのため、この生成ガスをそのまま後段のメタン液化手段M4に導入すると冷却途中で炭酸ガスが固化してドライアイスを生成し、液化設備の閉塞に繋がるため、通常のLNG液化プラントのように、メタン液化手段M4の前段にアミン溶液等を用いた炭酸ガス除去設備30を設けるのが好ましい。なお、この炭酸ガス除去設備30で除去された炭酸ガスは、後述する液化プロセスで液化されない水素とともにサバティエ反応にリサイクルすることができる。
【0035】
水素は液化されないので、後述するように、メタン合成手段M3にリサイクルされる。その際、下記表2に示すように、上記サバティエ反応における水素ガスの化学量論量である4モルよりも過剰な4.05~7.00モルの範囲内で該水素ガスを反応器に導入するのが好ましい。これにより、メタン合成の方向にサバティエ反応を進めることができるので、反応器の基数を減らすことができる。なお、水素ガスのリサイクル量が増えるとメタン液化設備や水素リサイクルコンプレッサー等のコストアップになるので、メタン合成のコストと勘案してリサイクル量が決定される。
【0036】
【表2】
【0037】
上記のメタン合成手段M3の後段に位置するメタン液化手段M4は、天然ガスの液化設備であるLNGプラントで実用化されている液化プロセスを採用することができる。メタンは臨界温度が-82℃であるため、該液化プロセスには、混合冷媒プロセス、カスケードプロセス、及びエキスパンダープロセスに代表される深冷液化プロセスが採用されており、これにより大気圧下で-162℃まで冷却することで液化することができる。上記のプロセスのいずれを採用する場合においても、メタン液化手段M4の原料となるメタンガスは、LNGプラントの原料となる天然ガスとは異なり、液化設備の腐食等のトラブルの原因となる不純物をほとんど含んでいないので、コンデンセート分離設備、水銀除去設備を省くことができる。
【0038】
混合冷媒プロセスは、プロパン冷媒による予冷の後、エタンやプロパンなどで構成される混合冷媒で冷却する方式であり、エアープロダクツ社やLinde社のライセンスにより多くのプロジェクトに採用されている。具体的には図12に示すように、混合冷媒プロセスは、先ず、原料のメタンガスをケトル型の第1熱交換機31、第2熱交換器32及び第3熱交換器33に順次導入し、プロパン多段圧縮機34で低圧段、中圧段及び高圧段の3段階にそれぞれ圧縮されたプロパン冷媒で段階的に予冷する。なお、図12には天然ガスの液化プラントでは必要となる炭化水素除去用のスクラブカラム36が示されているが、本発明の第1の実施形態のように、原料のメタンガスにメタネーション由来のものを用いる場合は、前述したように、スクラブカラム36を省くことが可能になる。また、前段の炭酸ガス除去設備30にSelexolプロセス等の非水系溶媒を用いる場合は、脱水用のドライヤー35を除去することが可能になる。
【0039】
次に、主低温熱交換器38に上記のプロパン冷媒で予冷したメタンを導入し、ここでMR圧縮機37a~37cで段階的に圧縮された混合冷媒により-140℃程度まで冷却することで液化させた後、ストリッパーとも称するフラッシュドラム39、エキスパンダー又はジュールトムソン膨張弁(J-T弁)で断熱膨張(等エントロピー膨張)させる。なお、上記の主低温熱交換器38は、例えば図13に示すLinde社製の主低温熱交換器のように直径10mm程度のアルミニウム製の伝熱管がコイル状に心棒に巻き付けられて圧力容器内に収められた構造を有している。
【0040】
なお、この図13に示すような構造のいわゆるコイル型熱交換器は、上記非液化水素を含むメタンの最小流量が設計流量に対して20%以上確保されることが好ましい。その理由は、流量が設計流量の20%を下回ると、圧力損失が設計時の約4%以下となってチューブ内で気液分離が生じたり、重力で液相が逆流したりして熱交換器の性能が発揮されなくなるおそれがある。なお、上記のように設計流量に対して20%以上が確保されているか否かは、流動2相図を作成することで確認することができる。
【0041】
カスケードプロセスは、図14に示すように、原料のメタンガスを第1熱交換器41,第2熱交換器42、及び第3熱交換器43に順次導入することによって、プロパンコンプレッサー44で圧縮されるプロパン冷媒系、エチレンコンプレッサー45で圧縮されるエチレン冷媒系、及びメタンコンプレッサー46で圧縮されるメタン冷媒系からなる温度レベルの異なる単一成分冷媒の冷凍サイクルによって順次冷却することで液化させた後、上記の混合冷媒プロセスと同様にフラッシュドラム47で断熱膨張させるものである。
【0042】
エキスパンダープロセスは、図15に示すように、窒素やメタン等を冷媒として用い、この冷媒をコンプレッサー51、52及びエキスパンダー53を介してそれぞれ圧縮及び膨張させながら熱交換器54に循環させると共に、この熱交換器54に原料のメタンガスを導入することで冷却することで液化させた後、上記の混合冷媒プロセスと同様にフラッシュドラム55で断熱膨張させるものである。
【0043】
上記のストリッパーの役割を担うフラッシュドラム39、47、55は、いずれも前段のメタンガスの液化設備によって液化された液化メタンを圧力0.8~2.0barA、温度-170~-184℃の条件下でフラッシュさせるものであり、該ストリッパーにより発生する非液化水素は、例えば図16に示すような構成で冷熱を回収した後にメタン合成手段M3にリサイクルして原料として再利用するのが好ましい。
【0044】
前述したように、混合冷媒を用いるコイル型熱交換器は一般的に低負荷運転の下限値が設計流量の約20%であるため、設計流量の20%よりも低負荷で運転することが望まれる場合は、コイル型熱交換器を使用しない上記のカスケードプロセスやエキスパンダープロセスを採用するのが好ましく、カスケードプロセスがより好ましい。例えば、カスケードプロセスの場合は、熱交換器のタイプにシェル&チューブ型熱交換器やクロスフロー式のプレートフィン型熱交換器を用いることで、設計流量の1~100%の範囲内で安定的に運転することが可能になる。
【0045】
上記の混合冷媒プロセス、カスケードプロセス、及びエキスパンダープロセスは、いずれも大気圧下で-160℃程度まで冷却することで液化させるものであるが、加圧下で冷却することで-120~-130℃程度で液化させることができる。この加圧された液化メタンは、例えば図17に示すような液化プロセスで生成することができる。この図17に示す液化プロセスは、予め加圧されたメタンガスを一般的なプレートフィン熱交換器、コールドボックス熱交換器などの加圧熱交換器61において冷媒と熱交換させることで冷却した後、膨張弁などの膨張手段62で圧力8.0~12.8barAまで減圧して一部をフラッシュさせることで、温度-120~-130℃の加圧された液化メタンを生成するものである。
【0046】
上記の加圧熱交換器61に導入する冷媒は、プロパン、プロピレン、エタン、二酸化炭素などの冷媒に適した物質を単成分又は多成分で用いることができ、また、この冷媒は一般的な熱交換手段及び冷媒圧縮機からなる冷却システム63で冷却することができる。なお、加圧された液化メタンの貯蔵タンク等から発生するボイルオフガスや上記の膨張手段の下流側に設けられている気液分離槽の排気ガスは、加圧された液化メタンとほぼ同じ温度を有しているので、加圧熱交換器61で冷熱回収されることで暖められた後、燃焼ガスとして利用することができる。
【0047】
上記の水電解手段M2で生成した酸素を液化する酸素液化手段M7も、上記のメタン液化手段M4と同様に混合冷媒プロセス、カスケードプロセス、又はエキスパンダープロセスを採用できるが、これらの中では混合冷媒プロセスを採用するのが好ましい。具体的には、この混合冷媒プロセスは、先ずプロパン冷媒を用いて温度-20~-40℃まで酸素を予冷した後、窒素、メタン、エタン、若しくはエチレン、及びプロパン若しくはプロピレンから構成される混合冷媒を用いて温度-183.1~-157℃、圧力1~8barAまで酸素を冷却して液化するものである。この混合冷媒には、窒素が20~30モル%、メタンが30~50モル%、エタン若しくはエチレンが20~30モル%、及びプロパン若しくはプロピレンが5~15モル%の組成を有し、蒸気圧2.0~4.0barAのものを用いるのが好ましい。
【0048】
本発明の第1の実施形態においては、メタン液化手段M4及び酸素液化手段M7において、上記のいずれの方式の液化プロセスを採用する場合においても、冷媒圧縮機にはシンクロナスモーターで駆動される回転式容積型を用いるのが好ましい。シンクロナスモーターは使用する交流電源の周波数に同期して回転するモーターであり、インバーターで交流の周波数を変えることにより回転数を自由にコントロールすることが可能になる。回転式容積型の圧縮機としては、スクリュー式の圧縮機を用いるのが好ましい。その理由は、風力発電の出力が70~100%と比較的変動が少ない場合は軸流タイプ又は遠心式を用いることができるが、この出力変動が0~100%と大きい場合に軸流タイプや遠心式を採用する場合は、0~70%の範囲で生じるサージングを避けるためにリサイクル運転が必要になり、無駄な駆動パワーが必要になるからである。この無駄を避けるため、回転式容積型圧縮機であるスクリュー式のみを用いるか、あるいは、軸流タイプや遠心式にスクリュー式を組み合わせるのが好ましい。
【0049】
上記のスクリュー式の圧縮機は、例えば図18に示すように互いに噛合するスパイラル状の突起部及びスパイラル状の溝部とがそれぞれ形成された1対のローターをケーシング内に収容した構造を有しており、該ケーシングの入口から吸い込まれたガスは、回転する1対のローターの噛み合いによって空間が減少することで徐々に昇圧され、所定の圧力を有するガスとなってケーシングの出口から排出される。
【0050】
上記のメタン液化手段M4で液化した液化メタン、及び上記の酸素液化手段M7で液化した液化酸素をそれぞれ輸送する液化メタン輸送手段M5及び液化酸素輸送手段M8としての液化タンカーには、LNGの海上輸送に使用されているLNGタンカーの技術を利用することができる。なお、LNGタンカーを利用する場合は、LNGタンカーに液化メタンや液化酸素を載積するため、該液化メタンの出荷ターミナル及び該液化酸素の出荷ターミナルにそれぞれ液化メタン貯蔵タンク及び液化酸素貯蔵タンクを設置することが必要になる。LNGタンカーは、図19に示すように、約-162℃の極低温のLNGをほぼ大気圧の状態で貯留する複数の低温タンクを備えた低温タンカーであり、その方式には複数の球形独立タンクを各々円筒形の支持部材で船体に据え付けた構造のモス(moss)型、船体構造の内側に防熱材を取り付けると共にその内面に薄膜状の金属製メンブレンを貼り付けた構造のメンブレン型、複数の方形独立タンクを強化合板製の支持材を介して船体に据え付けた構造のSPB(Self-Supporting Prismatic-Shape IMO typeB)型に分類することができる。上記の方式の中では豊富な建造実績があり経済性にも優れた図20に示すようなモス型が好ましい。
【0051】
上記の液化メタン輸送手段M5や液化酸素輸送手段M8は、大気中へのCO排出を伴わない第1動力手段を駆動源としている。このような第1動力手段としては、水素若しくは化石燃料の燃焼によるエンジン駆動(内燃機関)であって該化石燃料の燃焼の場合は該燃焼時に排出される排ガス中のCOを回収する設備を伴うものか、又はバッテリー駆動のものを挙げることができる。前者のエンジン駆動の方式には、タンクの入熱により発生するボイルオフガス若しくは重油又はこれら化石燃料の両方を燃焼してボイラーで蒸気を発生させ、得られた蒸気でタービンを回転させる蒸気タービン方式、上記のボイルオフガスや重油を燃料とするディーゼル機関で発電機を駆動し、その電気を電動モーターに給電してプロペラを回転する方式、ボイルオフガスと重油との混焼によるガス焚きディーゼル機関によりプロペラを直接駆動する方式などが挙げられる。いずれの場合においても、化石燃料の燃焼時にCOを含む燃焼排ガスが排出されるので、CO回収設備が必要になる。このCO回収設備のタイプには特に限定はなく、例えば後述するATR改質に付随して設けられるCO回収設備と同様の化学吸収液に吸収する方式を好適に採用することができる。なお、このCOを含むATR改質排ガスから回収したCOは、メタン合成手段M3において原料として再利用することができる。
【0052】
一方、後者のバッテリー駆動には繰り返し充放電することが可能な二次電池が用いられ、特にセパレーターを挟んで対向する正極と負極との間をリチウムイオンが移動することで充放電が繰り返されるリチウムイオン二次電池を用いることが好ましい。このリチウムイオン二次電池の充電は、上記の再生可能エネルギーによる発電手段M1の電気か、あるいは水素製造・炭素回収手段M7の電気を利用することで、COを発生させることなく低温タンカーを推進させることが可能になる。
【0053】
上記の液化メタン輸送手段M5で輸送された液化メタン及び液化酸素輸送手段M8で輸送された液化酸素は、それぞれ液化メタン受入・再ガス化手段M6及び液化酸素受入・再ガス化手段M9で受け入れられる。例えば液化メタン受入・再ガス化手段M6では、図21に示すように、液化メタン受入基地において液化メタンを貯蔵する液化メタンタンク73と、該液化メタンタンク73から第1ポンプ74により抜き出された液化メタンを海水等の熱媒を利用して再ガス化する気化器76a、76bとから主に構成される。気化器76a、76bで再ガス化することで生成される高圧及び低圧のメタンガスのうち、高圧メタンガスが水素製造・炭素回収手段M10に送られ、低圧メタンガスが発電・炭素回収手段M12に送られる。液化酸素受入・再ガス化手段M9も上記の液化メタン受入・再ガス化手段M6と同様の設備構成にすることができる。この場合においても、高圧酸素が水素製造・炭素回収手段M10に送られ、低圧酸素ガスが発電・炭素回収手段M12に送られる。
【0054】
以下、液化メタン受入・再ガス化手段M6について具体的に説明する。低温タンカーTからアンローディングされた液化メタンは、アンローディングアーム71及びアンローディングライン72を介して液化メタンタンク73に受け入れられる。液化メタンタンク73の構造には特に限定はなく、例えば9%Ni鋼やアルミニウム合金製の内槽と、一般的なカーボンスチール製の外槽との2重構造からなり、該内外槽間にパーライトを充填して窒素を導入した構造の地上金属2殻高床式、該地上金属2重殻高床式の外槽をカーボンスチールに代えてプレストレスドコンクリート(PC)にしたPC外槽式、コンクリート躯体の内側に保冷剤を張り、その内表面にステンレス製のメンブレンを張った構造の地下式メンブレン等を挙げることができる。
【0055】
上記の液化メタンタンク73から第1ポンプ74で抜き出された液化メタンは、高圧用の第2ポンプ75a又は低圧用のブースターポンプ75bで昇圧された後、それぞれ高圧用気化器76a又は低圧用気化器76bへ導入される。なお、液化メタンタンク73への入熱により発生するボイルオフガスは、液化メタンのアンローディング時に低温タンカーTのタンク内圧力が低下するのを抑えるため、一部がリターンガスブロワー77で昇圧されて低温タンカーTの低温タンク内に導入される。残りのボイルオフガスは、BOG圧縮機78で所定の圧力まで昇圧された後、上記の気化器76bで気化された低温のメタンガスと共に水素製造・炭素回収手段M7に送られる。なお、第2ポンプ75aで昇圧された液化メタンは、一部が抜き出されて後述するCO液化手段の冷媒として使用される。
【0056】
上記の気化器にはLNG気化器を用いることができ、その方式としては、パネル表面を流下する海水との熱交換により気化させるオープンラック式、コンクリート製の水槽内にLNGが導入される熱交換チューブを設けると共に、燃焼バーナーで発生させた高温燃焼ガスを水中に噴射させて水を温めることで気化させるサブマージド式、シェルアンドチューブ熱交換器の一方にLNGを導入すると共に、他方に海水で蒸発されたプロパン等の中間媒体を導入することで気化させる中間熱媒体式、及び空気を熱源とする空温式のうちのいずれかが一般的に採用されており、いずれを採用してもよいが、運転コストが安価であって実績が豊富な図22に示すようなオープンラック式がより好ましい。あるいは、圧縮したCOを熱源として用いることもできる。
【0057】
上記の液化メタン受入・再ガス化手段M6で再ガス化されたメタン及び液化酸素受入・再ガス化手段M9で再ガス化された酸素は、水素製造・炭素回収手段M10に送られ、ここで自己熱改質(ATR)プロセスによる水素製造が行なわれる。自己熱改質(ATR)プロセスは、下記反応式3に示す酸素によるメタンガスの部分酸化反応と、触媒存在下において下記反応式4に示す水蒸気改質反応とを1つの反応器内で逐次的に起こさせることにより水素と一酸化炭素とを含む合成ガスを生成するプロセスであり、部分酸化反応で生じる反応熱を吸熱反応である水蒸気改質反応に利用することができるので、COの排出を伴う外部からの熱エネルギー供給がほとんど不要となる。
[反応式3]
CH+2O→CO+2H
[反応式4]
CH+HO→CO+3H
【0058】
すなわち、COの排出源はプロセスガスのみで済すことができるので、自己熱改質プロセスを採用することで低環境負荷で且つ低コストでメタンから水素を製造することができる。具体的に説明すると、自己熱改質プロセスを行なうATR設備は、例えば図23に示すプロセスフロー図により構成することができる。この図23の設備は、液化メタン受入・再ガス化手段M6で再ガス化した原料のメタンをスチームと反応させて予備改質を行なうプレ改質器81と、プレ改質器81で予備改質されたプロセスガスと、液化酸素受入・再ガス化手段M9で再ガス化された酸素とを原料として例えばATRに適したクラリアント社のReforMax(登録商標)と称する触媒の存在下で自己改質反応を生じさせるATR反応器82と、ATR反応器82を出た合成ガスは水素の他にCO及びCOを含んでいるので、下記反応式5に示す反応を生じさせて改質させる第1シフト反応器83と、第1シフト反応83を出たプロセスガスを更に改質させる第2シフト反応器84と、第2シフト反応器84を出たプロセスガスを冷却することで生ずる凝縮水を分離除去する気液分離器85と、気液分離器85で水分が除去された後のプロセスガスに含まれるCOを分離する脱炭酸装置86と、脱炭酸装置86でCOが除去された後のプロセスガスが含んでいる5モル%程度の不純物を除去して99.9モル%の高純度水素を得る圧力スイング吸着(PSA)装置87とから構成される。
[反応式5]
CO+HO→CO+H
【0059】
上記のように、図23に示すプロセスフロー図において原料酸素に液化酸素受入・再ガス化手段M9で再ガス化した酸素を用いた場合のマテリアルバランスの一具体例を下記表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
上記の表3のマテリアルバランスでは原料の酸素に水電解手段M2由来の純酸素を用いたが、原料として利用する酸素はこれに限定されるものではなく、例えばATR設備に隣接する空気分離装置から供給される酸素を用いてもよい。下記表4にはかかる空気分離装置で生成した酸素を用いた場合のマテリアルバランスの一具体例を示す。
【0062】
【表4】
【0063】
上記の脱炭酸装置86で使用する脱炭酸プロセスについては特に限定はなく、アミン等の溶剤を用いて化学的にCOを吸収する化学吸収法、高圧下でメタノール等の物理吸収液にCOを吸収させる物理吸収法、COが選択的に透過する膜を用いて分離する膜分離法、モレキュラーシーブ(合成ゼオライト)などの固体の吸着剤にCOを吸着させた後、該吸着剤を減圧又は加熱することによってCOを脱離させて回収する特理吸着法などを挙げることができる。
【0064】
これらの中では化学吸収法又は物理吸着法が好ましく、アミン吸収液を用いた化学吸収法又はモレキュラーシーブを用いた物理吸着法がより好ましく、アミン吸収液を用いた化学吸収法が最も好ましい。アミン吸収液を用いた化学吸収法は、例えば図24のように、COを含んだ排ガスとアミン吸収液とを気液接触させる吸収塔91と、該吸収塔91で吸収したCOをアミン炭酸塩の形態で含むリッチアミン吸収液をリボイラー92で110~130℃程度に加熱することでCOを解離させてCO濃度99容量%(ドライベース)程度以上の高濃度COガスとして塔頂から回収すると共に、リーンアミン吸収液として再生する再生塔93と、これら吸収塔91と再生塔93との間でアミン吸収液を循環させる循環系94とから主として構成される設備によって行なわれる。
【0065】
本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムは、前述したように、液化メタン受入・再ガス化手段M6で再ガス化したメタン、及び液化酸素受入・再ガス化手段M9で再ガス化した酸素からそれぞれ一部ずつ抜き出して発電・炭素回収手段M12に送り、ここでメタンを酸素と反応させて発電を行なうと共に、該発電時に排出される炭素を高濃度COガスの形態で回収してもよい。この場合のメタンを酸素と反応させて行なう発電の方式としては、固体酸化物型燃料電池方式、Allamサイクル方式、又はオキシ燃料燃焼複合サイクル方式を挙げることができる。なお、いずれの方式を採用する場合においても、回収した高濃度COは、上記の水素製造・炭素回収手段M10で回収したリサイクルCOに混ぜてCO輸送手段M11を介してメタン合成サイトに輸送するのが好ましい。
【0066】
固体酸化物形燃料電池方式は、例えば図25に示す設備で構成することができる。すなわち、この図25に示す設備は、触媒下でメタンガスをスチームと反応させて改質させることにより水素と一酸化炭素を生成する改質装置101と、例えばジルコニアなどのセラミック製の電解質を挟んで上下方向に空気極及び燃料極を対向させた構造の平板状の単セルをn段直列に接続した多段平板型の燃料電池102、102、、、102と、最終段の燃料電池102の燃料極側から排出される排ガスを冷却して凝縮水を分離除去すること、更に脱炭酸装置によりCO濃度98容量%程度以上の高濃度COガスを回収する装置103とから主として構成される。なお、この脱炭酸装置には、前述した図24に示すアミン吸収液を用いた化学吸収法を用いることができる。
【0067】
他方、Allamサイクル方式は、超臨界COサイクル発電システムであり、図26に示すように、CO雰囲気中で燃料のメタンガスを酸素で燃焼させ、これにより発生する高温高圧のCOとスチームとの混合ガスでタービン111を回転して発電するシステムである。タービン111から排出される排ガスは、熱交換器112で冷却してスチームを凝縮水として分離除去した後、圧縮機113で圧縮することにより、メタンガス由来の炭素から生成されるCOを98容量%程度以上含む高濃度COガスとして回収することができる。
【0068】
オキシ燃料燃焼複合サイクル(Oxy-fuel combustion Combined Cycles)方式は、燃料のメタンガスを酸素及び再循環させた燃焼ガス(すなわちCO)で燃焼させることにより、排ガス中のCO濃度を90%以上にし、これによりアミン吸収液を用いた化学吸収法などのCO分離プロセスなしで、CO回収を可能にする燃焼技術を用いたものであり、図27に示すように、ガスタービンサイクルとスチームタービンサイクルとから構成される。すなわち、オキシ燃料燃焼を利用したガスタービンから排出される高温排出ガスを熱回収スチームジェネレータ(HRSG)に導入し、ここで該高温排ガスの熱エネルギーを利用して発生させたスチームをスチームタービンサイクルに利用するものである。
【0069】
上記の水素製造・炭素回収手段M10で回収したリサイクルCOは、CO液化手段に移送される。図28に示すように、CO液化手段は、リサイクルCOを圧力45~80barAまで圧縮する圧縮機121と、前述した液化メタン受入・再ガス化手段M6の第2ポンプ75aで昇圧した圧力10~100barAの液化メタンを再ガス化する際の冷熱を用いて温度-33~-56℃まで冷却して液化させる熱交換器122と、この熱交換器122で液化された液化COを圧力5.2~12.8barAまで降圧させることで動力回収する液体タービン123とを有している。なお、図28には、50barAの液化メタンを用いて65barAのリサイクルCOを液化させる場合の熱収支計算の結果が示されている。
【0070】
上記の液体タービン123で圧力5.2~12.8barAまで降圧された温度-56~-33℃の液体COは、これら圧力及び温度の条件下で液化COを貯蔵することが可能な断熱された球形貯蔵タンク124に貯留される。この球形貯蔵タンク124に貯留された液化COは、CO輸送手段としての液化COタンカーにローディングされてメタン合成基地まで輸送され、メタン合成基地で再ガス化された後、サバティエ反応の原料としてメタン合成手段M3で使用される。この液体COの再ガス化の方法については特に限定はなく、例えば温度-56~-33℃の液体COを0℃程度まで加温するのは海水又は淡水を利用し、0℃から約200℃まではサバティエ反応の生成ガスの廃熱を利用するのが好ましい。
【0071】
上記のように、液化メタンと液化COとは温度及び圧力がいずれも異なるので、これら液化メタン及び液化COの輸送は、それぞれ専用の低温タンカーを使用するのが好ましい。同様に、液化酸素と液化COとも温度及び圧力がいずれも異なるので、これら液化酸素及び液化COの輸送は、それぞれ専用の低温タンカーを使用するのが好ましい。すなわち、タンカー輸送時の液化COは、圧力5.2~12.8barA、温度-56~-33℃となるので、液化CO用の低温タンカーの材質には、材質がアルミキルド系炭素鋼、1.5%Niニッケル鋼、又は低温用高張力ニッケル鋼などの低温用鋼を用いるのが好ましい。また、タンカー輸送時の液体酸素は、圧力1.0~13.0barA、温度-183.9~-149℃となるので、液体酸素用の低温タンカーの材質には8.5-9.5%Ni鋼(JIS、SL9N590)、18-8ステンレス鋼、又はアルミ合金5083を使用するのが好ましい。上記の液化CO及び液化酸素はいずれも液化メタンに比べて液密度が高いので、タンカーの重心を低く抑えるため、図29に示すように横向きにした円筒形のタンクを例えば4~8個有する低温タンカーを用いるのが好ましい。
【0072】
一方、液化メタン用の低温タンカーには球形のタンクを3~7個有するMoss型を使用するのが好ましいが、これら球形のタンクの材質には、輸送時の液化メタンが圧力-0.05~0.25barG、温度-162℃の場合は、6-7.5%Ni鋼(JIS、SL7N590)、8.5-9.5%Ni鋼(JIS、SL9N590)、18-8ステンレス鋼、又はアルミ合金5083を用いのが好ましく、圧力8.0~12.8barA、温度-120~-130℃の場合は、6-7.5%Ni鋼、8.5-9.5%Ni鋼、18-8ステンレス鋼、アルミ合金5083、又は5%Ni鋼を用いるのが好ましい。
【0073】
上記のように、液化メタン及び液化COの輸送にそれぞれ専用の低温タンカーを用いるのではなく、共用の低温タンカーを用いることができれば、液化CO用の専用タンカーが不要になるので大幅なコストダウンになる。すなわち、PtG複合施設に設けた液化メタン出荷基地において液化メタンを積載して水素製造コンプレックスに設けた液化メタン受入基地まで液化メタンを輸送する低温タンカーと、該水素製造コンプレックスに設けた液化CO出荷基地において液化COを積載して、そこから帰路となるPtG複合施設まで液化COを輸送する低温タンカーとを共用できれば輸送コストを大幅に抑えることが可能になる。同様に、液化酸素及び液化COの輸送にそれぞれ専用の低温タンカーを用いるのではなく、共用の低温タンカーを用いることができれば大幅なコストダウンになる。上記のように共用する場合の低温タンカーにも、タンク形状が球形では3~7個のタンクを、横向き円筒形では4~8個のタンクを有する低温タンカーを用いることができる。但し、液化メタンや液化酸素は、液化COに比べて低温で輸送する必要があるので、球形タンク又は横向き円筒タンクの材質はかかる低温の液化メタンや液化酸素に耐えられることを条件として選定する必要がある。
【0074】
具体的には、液化メタンの輸送時は、圧力-0.05~0.25barA、温度-162℃の液化メタンを輸送し、液化COの輸送時は、圧力5.2~12.8barA、温度-56~-33℃の液化COを輸送する場合は、これら液化メタン及び液化COの輸送に際して共用する低温タンカーのタンク材質は、6-7.5%Ni鋼、8.5-9.5%Ni鋼、18-8ステンレス鋼、及びアルミ合金5083のうちから選択することになる。
【0075】
一方、液化メタンの輸送時は、圧力8.0~12.8barG、温度-120~-130℃の加圧された液化メタンを輸送し、液化COの輸送時は、圧力5.2~10.8barA、温度-56~-33℃の液化COを輸送する場合は、これら加圧された液化メタン及び液化COの輸送に際して共用する低温タンカーのタンク材質は、6-7.5%Ni鋼、8.5-9.5%Ni鋼、18-8ステンレス鋼、アルミ合金5083、及び5%Ni鋼のうちから選択することになる。このように加圧された液化メタンの状態で輸送することで、6-7.5%Ni鋼、8.5-9.5%Ni鋼、18-8ステンレス鋼、及びアルミ合金5083よりも安価な5%Ni鋼を使用することが可能となる。
【0076】
また、液化酸素の輸送時は圧力1.0~13.0barA、温度-183.9~-149℃の液化酸素を輸送し、液化COの輸送時は圧力5.2~18.8barA、温度-56~-33℃の液化COを輸送する場合は、これら液化酸素及び液化COの輸送に際して共用する低温タンカーのタンク材質は、6-7.5%Ni鋼、8.5-9.5%Ni鋼、18-8ステンレス鋼、アルミ合金5083、又は5%Ni鋼のうちから選択することになる。
【0077】
1-2 グリーンエネルギー搬送方法
次に、上記の本発明の第1の実施形態のエネルギー搬送システムを用いて実施されるエネルギー搬送方法について説明する。この本発明の第1の実施形態のエネルギー搬送システムを用いたエネルギー搬送方法は、再生可能エネルギーにより発電及び蓄電を行なう発電工程と、発電工程で得た電力を用いて水を電気分解することにより水素を生成する水電解工程と、該水電解工程で生成した水素及びリサイクルされたCOを原料とするサバティエ反応によりメタン化を行ってメタンを生成するメタン合成工程と、メタン合成工程で生成したメタンを液化メタンの形態で輸送すべく、該再生可能エネルギーをエネルギー源とする電力が可変速モーター用インバーターを介して給電されるシンクロナスモーターによって駆動される回転式容積型の冷媒圧縮機を用いて該メタンを液化するメタン液化工程と、メタン合成工程で生成したメタンをメタン液化工程で液化した後に大気中へのCO排出を伴わない手段により水素エネルギー消費地まで輸送する液化メタン輸送工程と、液化された液化メタンを液化メタン貯蔵タンクに受け入れた後に再ガス化する液化メタン受入・再ガス化工程と、該水電解工程で生成した酸素を液化酸素の形態で輸送すべく、該再生可能エネルギーをエネルギー源とする電力が可変速モーター用インバーターを介して給電されるシンクロナスモーターによって駆動される回転式容積型の冷媒圧縮機を用いて該酸素を液化する酸素液化工程と、該酸素液化工程で液化した酸素を大気中へのCO排出を伴わない手段により水素エネルギー消費地まで輸送する液化酸素輸送工程と、該液化酸素輸送工程で輸送した液化酸素を液化酸素貯蔵タンクに受け入れた後に再ガス化する液化酸素受入・再ガス化工程と、該液化メタン受入・再ガス化工程及び該液化酸素受入・再ガス化工程とでそれぞれ一旦受け入れて再ガス化したメタン及び酸素を原料とする自己熱改質法により水素製造を行なうと共に、該水素製造時に生成されるプロセスガスから高濃度COガスをリサイクルCOとして回収する水素製造・炭素回収(CCR)工程と、水素製造・炭素回収工程で回収したリサイクルCOを大気中へのCO排出を伴わない手段によりメタン合成工程を行なうメタン合成基地まで輸送するCO輸送工程とを有する。なお、上記の再ガス化したメタン及び酸素を一部ずつ抜き出して互いに反応させることで発電を行なうと共に、該発電時に排出される炭素を高濃度COガスの形態で回収する発電・炭素回収(CCR)工程を更に有していてもよい。
【0078】
上記のメタン輸送工程は、メタン液化工程で液化した液化メタンを水素エネルギー消費地まで大気中へのCO排出を伴わない第1動力手段を駆動源とする液化メタンタンカーにより輸送するものである。また、水素製造・炭素回収工程は、ここで回収されるリサイクルCOを液体COの形態で輸送すべく、該リサイクルCOを液化するCO液化工程を有しており、メタン合成工程は、液化CO輸送工程で輸送された液化COを液化CO貯蔵タンクに受け入れた後に再ガス化する液化CO受入・再ガス化工程を有している。この場合、CO輸送工程は、上記のCO液化工程で液化した液化COを大気中へのCO排出を伴わない第2動力手段を駆動源とする液化COタンカーによりメタン合成工程が行なわれるメタン合成基地まで輸送するものである。上記の大気中へのCO排出を伴わない第2動力手段とは、前述した液化メタン輸送手段M5の場合と同様に、水素若しくは化石燃料の燃焼によるエンジン駆動(内燃機関)であって、該化石燃料の燃焼の場合は該燃焼時に排出される排ガス中のCOを回収する設備を伴うもの、又はリチウムイオン二次電池に代表されるバッテリー駆動のものを挙げることができる。
【0079】
上記の再生可能エネルギーにより発電を行なう発電工程では、エネルギー源として風力発電、太陽光発電、太陽熱発電、地熱発電、水力発電、バイオマス発電、波力・潮流・潮汐発電等の再生可能エネルギーのいずれを利用してもよいが、風力発電機が好適に採用される。この場合、上記の風力発電機が具備する蓄電池は、該風力発電機の風車定格の値に対して容量の値が106~126%の範囲内となるように設定すると共に、該蓄電池を該風車定格の20~90%の運用レンジで運転するのが好ましい。なお、図30には、永久磁石式同期発電機を用いた風力発電機及び蓄電池の一具体例の構成図が示されている。
【0080】
上記の水電解工程における水の電気分解では、水の電気分解に必要な電力である最小電解槽負荷を上記風車定格の5~30%の範囲内に設定し、風速を変数とする上記の風力発電機の発電電力が該最小電解槽負荷を下回る場合は、その不足分を上記蓄電が行なわれる蓄電池から補い、該発電量電力が該最小電解槽負荷以上の場合は、該発電電力を用いて上記水の電気分解を行なうと共に、該発電電力のうち該最小電解槽負荷を超えている余剰電力を、上記風車定格の5~15%の範囲内で設定した上限値以下の条件で且つ上記蓄電池の運用レンジの範囲内で上記蓄電池に充電するように制御するのが好ましい。これにより、メタン液化工程においてメタンの液化設備の操業を原則として停止することなく運転することができる。
【0081】
図31には、上記の制御を行なうアルゴリズムの一具体例がフローチャートで示されている。すなわち、このアルゴリズムは、風力発電の発電量(y)が最小電解槽負荷(e1)を超えている場合、風車定格の5~15%の範囲内で定めた電池容量上限(e2)、電池容量比から定まる運転範囲上限値(b1)、及び現状の電池充電量(bh)で定まる余剰電力(ex)を蓄電池に1次輸出して充電すると共に、発電量(y)から余剰電力(ex)を引いた電力を例えばPEM水電解装置に給電する。一方、風力発電の発電量(y)が最小電解槽負荷(e1)以下の場合は、現状の電池充電量(bh)の値に応じて蓄電池から電力を取り出して該PEM水電解装置に給電する。これにより、3.0m/s以下の風速が20時間以上続くアブノーマルな状況でない限り、メタン液化工程においてメタンの液化設備を止める必要がない。
【0082】
次に、前述したように、液化メタンの輸送と液化COの輸送に際して低温タンカーを共用する場合に、これら液化メタン及び液化COをローディング/アンローディングする手順について、取り扱う液化メタンの貯蔵条件が圧力-0.05~0.25barG、温度-162℃であり、液化COの貯蔵条件が圧力5.2~12.8barA、温度-56~-33℃の場合を例に挙げて説明する。上記の低温タンカーが有する複数のタンクの各々は、図32に示すように、タンク内上部に放出口を有する第1供給ノズルN1、タンク内下部に放出口を有する第2供給ノズルN2、タンク内上部に排出口を有する第1ベントノズルV1、タンク内下部に排出口を有する第2ベントノズルV2、及びサブマージドポンプ用カラムの吐出ノズルL1を有し、これら5個のノズルを用いて図33に示すように、下記S1~S6の操作を繰り返すことで液化メタン及び液化COを交互に輸送することができる。
【0083】
(S1)「液化メタンアンローディング」
第1供給ノズルN1からタンク内に置換用ガスとして例えば-50℃の低温のメタンガスを導入しながらサブマージドポンプを運転することで、該球形タンク内の液化メタンをアンローディングし、該アンローディング完了後も引き続きメタンガスを導入してタンク内を例えば6.92barAまで加圧する。
【0084】
(S2)「コールドCOガスによるホットメタンガスの置換」
第2供給ノズルN2によって例えば圧力6.92barA、温度-50℃の低温のCOガスをタンク下部から導入すると共に、タンク内のメタンガスを第1ベントノズルV1及びサブマージドポンプの吐出ノズルL1からベントすることでメタンガスを炭酸ガスに置換する。この置換時のメタンガスとCOガスの密度比は1:2.75である。
【0085】
(S3)「COガスベントを伴う液化COローディング」
第2供給ノズルN2によって例えば圧力6.92barA、温度-50℃の低温の液化COをタンク下部から導入することでローディングを行なうと共に、タンク内のCOガスを第1ベントノズルV1及びサブマージドポンプの吐出ノズルL1からベントすることでCOガスを液体COに置換する。
【0086】
(S4)「液化COアンローディング」
第1供給ノズルN1からタンク内に置換用ガスとして例えば-50℃の低温のCOガスを導入しながら、サブマージドポンプを運転することで該タンク内の液化COをアンローディングする。
【0087】
(S5)「コールドメタンガスによるコールドCOガスの置換」
第1供給ノズルN1及びサブマージドポンプの吐出ノズルL1によって例えば圧力6.92barA、温度-50℃の低温のメタンガスをタンク上部及びポンプカラムから導入すると共に、タンク内のCOガスを第2ベントノズルV2からベントすることでCOガスをメタンガスに置換する。この置換時のメタンガスとCOガスの密度比は1:2.75である。
【0088】
(S6)「液化メタンローディング」
第1供給ノズルN1によってタンク上部から液化メタンを散布して該タンクを例えば-130℃の極低温まで冷却した後、第1ベントノズルV1及びサブマージドポンプの吐出ノズルL1からメタンガスをベントしながら第2供給ノズルN2から液化メタンを導入することで底部から液面が徐々に上昇するようにローディングする。
【0089】
次に加圧された液化メタン及び液化COをローディング/アンローディングする手順について、取り扱う加圧された液化メタンの貯蔵条件が圧力8.0~12.8barA、温度-120~-130℃であり、液化COの貯蔵条件が圧力5.2~10.8barA、温度-56~-33℃の場合を例に挙げて説明する。
【0090】
(S1)「液化メタンアンローディング」
第1供給ノズルN1からタンク内に置換用ガスとして例えば-50℃の低温のメタンガスを導入しながらサブマージドポンプを運転することで該タンク内の加圧された液化メタンをアンローディングし、該アンローディング完了後も引き続きメタンガスを導入してタンク内を例えば10barAまで加圧する。
【0091】
(S2)「コールドCOガスによるホットメタンガスの置換」
第2供給ノズルN2によって例えば圧力10barA、温度-40℃の低温のCOガスをタンク下部から導入すると共に、タンク内のメタンガスを第1ベントノズルV1及びサブマージドポンプの吐出ノズルL1からベントすることでメタンガスを炭酸ガスに置換する。この置換時のメタンガスとCOガスの密度比は1:2.75である。
【0092】
(S3)「COガスベントを伴う液化COローディング」
第2供給ノズルN2によって例えば圧力10barA、温度-40℃の低温の液化COをタンク下部から導入することでローディングを行なうと共に、タンク内のCOガスを第1ベントノズルV1及びサブマージドポンプの吐出ノズルL1からベントすることでCOガスを液体COに置換する。
【0093】
(S4)「液化COアンローディング」
第1供給ノズルN1からタンク内に置換用ガスとして例えば-40℃の低温のCOガスを導入しながら、サブマージドポンプを運転することで該タンク内の液化COをアンローディングする。
【0094】
(S5)「コールドメタンガスによるコールドCOガスの置換」
第1供給ノズルN1及びサブマージドポンプの吐出ノズルL1によって例えば圧力10barA、温度-40℃の低温のメタンガスをタンク上部及びポンプカラムから導入すると共に、タンク内のCOガスを第2ベントノズルV2からベントすることでCOガスをメタンガスに置換する。この置換時のメタンガスとCOガスの密度比は1:2.75である。
【0095】
(S6)「液化メタンローディング」
第1供給ノズルN1によってタンク上部から液化メタンを散布して該タンクを例えば-90℃の極低温まで冷却した後、第1ベントノズルV1及びサブマージドポンプの吐出ノズルL1からメタンガスをベントしながら第2供給ノズルN2から液化メタンを導入することで底部から液面が徐々に上昇するようにローディングする。
【0096】
液化メタン受入基地では、液化メタンで満たされた上記の複数のタンクに対して1つずつ上記操作S1を逐次行ない、該複数のタンクの各々において操作S1が完了した後は、引き続き操作S2及び操作S3を行なうことで、最終的に全てのタンクにおいて液化メタンのアンローディング及び液化COのローディングを行なうことができる。
【0097】
一方、メタン合成基地では、液化COで満たされた上記の複数のタンクに対して1つずつ上記操作S4を逐次行ない、該複数のタンクの各々において操作S4が完了した後は、引き続き操作S5及び操作S6を行なうことで、最終的に全てのタンクにおいて液化COのアンローディング及び液化メタンのローディングを行なうことができる。なお、上記のアンローディング/ローディングの操作は加圧された液化メタンの場合でも同じである。
【0098】
低温タンカーが球形タンクを4個有する場合について具体的に説明すると、液化メタン受入基地においては、図34に示すように、液化メタンで満たされた4個の球形タンクに対して、先ず第1フェーズではタンク1のみに操作S1を行ない、第2フェーズでは操作S1をタンク1から2に切り替えてタンク1では操作S2を行ない、第3フェーズでは操作S1をタンク2から3に切り替えると共に操作S2をタンク1から2に切り替えてタンク1では操作S3を行ない、第4フェーズでは操作S1をタンク3から4に切り替えると共に操作S2をタンク2から3に切り替えてタンク2では操作S3を行ない、第5フェーズでは操作S2をタンク3から4に切り替えると共に操作S3をタンク2から3に切り替え、第6フェーズでは操作S3をタンク3から4に切り替える。
【0099】
同様に、液化メタン受入基地においては、図35に示すように、液化COで満たされた4個の球形タンクに対して、先ず第7フェーズではタンク1のみに操作S4を行ない、第8フェーズでは操作S4をタンク1から2に切り替えてタンク1では操作S5を行ない、第9フェーズでは操作S4をタンク2から3に切り替えると共に操作S5をタンク1から2に切り替えてタンク1では操作S6を行ない、第10フェーズでは操作S4をタンク3から4に切り替えると共に操作S5をタンク2から3に切り替えてタンク2では操作S6を行ない、第11フェーズでは操作S5をタンク3から4に切り替えると共に操作S6をタンク2から3に切り替え、第12フェーズでは操作S6をタンク3から4に切り替える。
【0100】
なお、上記の発電工程からCO輸送工程までの全工程から大気中に放出されるCO放出量が、これら一連の工程で消費される炭素のCO換算量に対して3%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。この好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下のCO放出量を相殺するため、バイオマス発電又はバイオマス燃焼設備の燃焼ガスから回収したCOか、あるいはダイレクトエアキャプチャー(DAC)から回収したCOを上記リサイクルCOとして利用するのが好ましい。これにより、本発明の実施形態のグリーンエネルギー輸送に、これらバイオマス発電若しくはバイオマス燃焼設備、又はダイレクトエアキャプチャーを含めた全体で考えた場合はCO放出量がゼロになる。
【0101】
また、液化酸素の輸送と液化COの輸送に際して図32の構造を有する低温タンカーを共用する場合も、上記と同様に、以下の操作を繰り返すことで液化酸素及び液化COを交互に輸送することができる。
(S1)第1供給ノズルからタンク内に置換用ガスとして低温の酸素ガスを導入しながらサブマージドポンプを運転することで該球形タンク内の液化酸素をアンローディングし、該アンローディング完了後も引き続き酸素ガスを導入してタンク内を加圧する。
(S2)第2供給ノズルによっての低温のCOガスをタンク下部から導入すると共に、タンク内の酸素ガスを第1ベントノズル及びサブマージドポンプの吐出ノズルからベントすることで酸素ガスを炭酸ガスに置換する。
(S3)第2供給ノズルによって低温の液化COをタンク下部から導入することでローディングを行なうと共に、タンク内のCOガスを第1ベントノズル及びサブマージドポンプの吐出ノズルからベントすることでCOガスを液体COに置換する。
(S4)第1供給ノズルからタンク内に置換用ガスとして低温のCOガスを導入しながら、サブマージドポンプを運転することで該球形タンク内の液化COをアンローディングする。
(S5)第1供給ノズル及びサブマージドポンプの吐出ノズルによって低温の酸素ガスをタンク上部及びポンプカラムから導入すると共に、タンク内のCOガスを第2ベントノズルからベントすることでCOガスを酸素ガスに置換する。
(S6)第1供給ノズルによってタンク上部から液化酸素を散布して該球形タンクを極低温まで冷却した後、第1ベントノズル及びサブマージドポンプの吐出ノズルから酸素ガスをベントしながら第2供給ノズルから液化酸素を導入することで底部から液面が徐々に上昇するようにローディングする。
【0102】
上記の液化酸素受入基地では、液化酸素で満たされた複数のタンクに対して1つずつ上記S1の操作を逐次行ない、該複数のタンクの各々において該S1の操作が完了した後は、引き続きS2及びS3の操作を行なうことで、最終的に全てのタンクにおいて液化酸素のアンローディング及び液化COのローディングを行なうことができる。一方、上記の酸素液化基地では、液化COで満たされた複数のタンクに対して1つずつ上記S4の操作を逐次行ない、該複数のタンクの各々において該S4の操作が完了した後は、引き続きS5及びS6の操作を行なうことで、最終的に全てのタンクにおいて液化COのアンローディング及び液化酸素のローディングを行なうことができる。
【0103】
2. 第2の実施形態(パイプライン輸送方式)
2-1 グリーンエネルギー搬送システム
上記した本発明の第1の実施形態のエネルギー輸送システムは、低温タンカーを介してメタン及びCOを海上輸送するものであるが、ユーラシア大陸内、北米大陸内、及び南米大陸内のように、PtGコンプレックスと水素製造コンプレックスとが同じ大陸内に存在する場合は上記の海上輸送が不要になる。この場合は、低温タンカーでの輸送に代えてパイプラインを介して高圧ガスの状態でメタンガス及びCOガスを輸送するのが好ましい。なお、この場合の水素エネルギー消費地で使用する酸素は、パイプラインを介してPtGコンプレックスから水素製造コンプレックスに輸送してもよいし、水素製造コンプレックスに隣接して設けた空気分離装置から供給してもよい。以下の説明では、空気分離装置で生成した酸素を用いることを前提として説明を行なう。
【0104】
例えば北米大陸においては、図36に示すような天然ガスパイプライン網が米国内に張りめぐらされており、また、図37に示すようなCOガスパイプライン網を張り巡らせる計画がある。米国内でメタンガスやCOガスを輸送する場合は、この天然ガスパイプライン網やCOガスパイプライン網のインフラを利用することが考えられる。以下、かかるパイプラインによるメタンガスやCOガスの輸送を伴う本発明の第2の実施形態のグリーンエネルギー輸送システムについて説明する。なお、このようなパイプラインを用いたグリーンエネルギー輸送システムをグリーンパイプラインガスループと称することがある。
【0105】
すなわち、本発明の第2の実施形態のエネルギー輸送システムは、図38に示すように、再生可能エネルギーによる発電手段M21と、水電解手段M22と、メタン合成手段M23と、メタンガスの圧縮手段M24と、メタン輸送手段M25と、水素製造・炭素回収手段M26と、COガスの圧縮手段M27と、CO輸送手段M28とから構成される。なお、図38中において括弧内に示す数値はエネルギー効率である。上記手段のうち、発電手段M21、水電解手段M22、メタン合成手段M23、及び水素製造・炭素回収手段M26は、それぞれ前述した本発明の第1の実施形態の発電手段M1、水素生成手段M2、メタン合成手段M3、及び水素製造・炭素回収手段M10とほぼ同じであるので、以降は主としてメタンガスの圧縮手段M24、メタン輸送手段M25、COガスの圧縮手段M27、及びCO輸送手段M28について説明する。
【0106】
メタン輸送手段M25は、メタン合成手段M23で生成したメタンガスをメタン合成サイトから水素エネルギー消費地まで輸送するメタンガス用パイプラインである。このメタンガス用パイプラインの内側を流れるメタンガスの圧力が50~125BarA程度の範囲内に維持されるように、上記再生可能エネルギーをエネルギー源とし、可変速モーター用インバーターを介して給電される電力で作動するシンクロナスモーターで駆動される回転式容積型の圧縮機からなるメタンガスの圧縮手段M24が、上記メタン輸送手段M25としてのメタンガス用パイプラインの前段及び該メタンガス用パイプラインにおいて適度な間隔をあけて配置された1又は複数箇所の中継地点に設けられている。また、メタン輸送手段M25の後段には、好ましくは該メタンガス用パイプラインで輸送されたメタンガスを測定対象とする計量機及びガス組成分析機が設けられている。
【0107】
CO輸送手段M28は、水素製造・炭素回収手段M26で回収したリサイクルCOを水素エネルギー消費地からメタン合成サイトまで輸送するCO用パイプラインである。このCO用パイプラインにおいても上記のメタンガス用パイプラインと同様に、その内部を流れるリサイクルCOの圧力が50~125BarA程度の範囲内に維持されるように、上記再生可能エネルギーをエネルギー源とし、可変速モーター用インバーターを介して給電される電力で作動するシンクロナスモーターで駆動される圧縮機からなるCOガスの圧縮手段M27が、上記のCO輸送手段M28としてのCO用パイプラインの前段及び該CO用パイプラインにおいて適度な間隔をあけて配置された1又は複数箇所の中継地点に設けられている。
【0108】
上記のようにメタンガス用パイプラインの敷設距離が長い場合に設けられるメタンガス用ブースター圧縮機には、その動力として風力発電からの超高圧直流送電(HVDC)をシンクロナスモーター用のVFDに給電するのが好ましいが、買電よる電力を該シンクロナスモーター用のVFDに給電してもよい。同様に、上記のCO用パイプラインの敷設距離が長い場合に設けられるCO用ブースター圧縮機にも、その動力として風力発電からの超高圧直流送電(HVDC)をシンクロナスモーター用のVFDに給電するのが好ましいが、買電よる電力を該シンクロナスモーター用のVFDに給電してもよい。
【0109】
2-2 グリーンエネルギー搬送方法
次に、上記の本発明の第2の実施形態のエネルギー搬送システムを用いて実施されるエネルギー搬送方法について説明する。この本発明の第2の実施形態のエネルギー輸送システムを用いたエネルギー輸送方法は、再生可能エネルギーにより発電及び蓄電を行なう発電工程と、該発電工程で得た電力を用いて水を電気分解することにより水素を生成する水電解工程と、該水電解工程で生成した水素及びリサイクルされたCOを原料とするサバティエ反応によりメタン化を行ってメタンガスを生成するメタン合成工程と、該メタン合成工程で生成したメタンガスを大気中へのCO排出を伴わない手段により水素エネルギー消費地まで輸送するメタン輸送工程と、該メタン輸送工程で輸送されたメタンガス及び別途用意した酸素を原料とする自己熱改質法により水素製造を行なうと共に、該水素製造時に生成されるプロセスガスから高濃度COをリサイクルCOとして回収する水素製造・炭素回収工程と、該回収したリサイクルCOを大気中へのCO排出を伴わない手段により該メタン合成工程を行なうメタン合成基地まで輸送するCO輸送工程とを有している。
【0110】
上記の一連の工程のうち、上記のメタン輸送工程は、再生可能エネルギーをエネルギー源とする電力が可変速モーター用インバーターを介して給電されるシンクロナスモーターによって駆動される回転式容積型の圧縮機で該メタンガスを圧縮することで得た高圧メタンガスを上記のメタン合成工程が行なわれるメタン合成基地から上記の水素エネルギー消費地まで敷設されたメタンガス用パイプラインで輸送する工程からなる。また、上記のCO輸送工程は、再生可能エネルギーをエネルギー源とする電力が可変速モーター用インバーターを介して給電されるシンクロナスモーターによって駆動される回転式容積型の圧縮機で該リサイクルCOを圧縮することで得た高圧リサイクルCOを該水素エネルギー消費地から該メタン合成基地まで敷設されたCO用パイプラインで輸送する工程からなる。
【0111】
上記のメタン輸送工程においては、該再生可能エネルギーをエネルギー源とし且つ超高圧直流ケーブルを介して送電される電力か、又は買電による電力で作動するシンクロナスモーターで駆動されるメタンガス用ブースター圧縮機を用いて該メタンガス用パイプラインの途中で該メタンガスを昇圧する工程を有してもよい。同様に、上記のCO輸送工程においては、該再生可能エネルギーをエネルギー源とし且つ超高圧直流ケーブルを介して送電される電力か、又は買電による電力で作動するシンクロナスモーターで駆動されるCO用ブースター圧縮機を用いて該CO用パイプラインの途中で該リサイクルCOを昇圧する工程を有してもよい。
【0112】
上記の再生可能エネルギーとして例えば風力発電機をエネルギー源とする場合の配電の仕組みとしては、例えば図39に示すように、該風力発電機(WT)で発電した出力電圧AC690Vをトランスで30~110kVまで昇圧した後、AC-DCコンバータにより110~230kVの超高圧直流電力に変換し、超高圧電流ケーブルを介して送電した後、シンクロナスモーターの近くに設置されたDC-DCコンバータで10~20kVまで降圧すればよい。
【符号の説明】
【0113】
1 風力発電機
2 集電システム
3 送電線
4 変電所
10a 低圧スクリュー圧縮機
10a 高圧スクリュー圧縮機
11 高圧水素貯蔵設備
12 一次配管
13 マニホールド
14 貯蔵配管群
21、22、23、24 反応器
25、26、27、28、29 冷却器
30 炭酸ガス除去設備
31、41 第1熱交換器
32、42 第2熱交換器
33、43 第3熱交換器
34 プロパン多段圧縮機
35 ドライヤー
36 スクラブカラム
37a、37b、37c MR圧縮機
38 主低温熱交換器
39、47、55 フラッシュドラム
44 プロパンコンプレッサー
45 エチレンコンプレッサー
46 メタンコンプレッサー
51、52 コンプレッサー
53 エキスパンダー
54 熱交換器
61 加圧熱交換器
62 膨張手段
63 冷却システム
71 アンローディングアーム
72 アンローディングライン
73 液化メタンタンク
74 第1ポンプ
75a 第2ポンプ
75b ブースターポンプ
76a 高圧用気化器
76b 低圧用気化器
77 リターンガスブロワー
78 BOG圧縮機
81 プレ改質器
82 ATR反応器
83 第1シフト反応器
84 第2シフト反応器
85 気液分離器
86 脱炭酸装置
87 圧力スイング吸着装置
91 吸収塔
92 リボイラー
93 再生塔
94 循環系
101 改質装置
102 燃料電池
103 凝縮器
111 タービン
112 熱交換器
113 圧縮機
121 圧縮機
122 熱交換器
123 液体タービン
124 球形貯蔵タンク
L1 吐出ノズル
N1 第1供給ノズル
N2 第2供給ノズル
V1 第1ベントノズル
V2 第2ベントノズル
T 低温タンカー
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