(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】微小粒子圧縮試験装置及び微小粒子圧縮試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/02 20060101AFI20240902BHJP
G01N 3/00 20060101ALI20240902BHJP
G01N 3/08 20060101ALI20240902BHJP
G01N 15/10 20240101ALI20240902BHJP
【FI】
G01N3/02 Z
G01N3/00 L
G01N3/08
G01N15/10 A
(21)【出願番号】P 2024070496
(22)【出願日】2024-04-24
【審査請求日】2024-04-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591127917
【氏名又は名称】株式会社セイシン企業
(74)【代理人】
【識別番号】100131381
【氏名又は名称】黒田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】平 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 雄也
(72)【発明者】
【氏名】小澤 昌昭
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-134191(JP,A)
【文献】特開平11-241981(JP,A)
【文献】特開2019-197005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00- 3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小粒子を圧縮して圧縮特性を試験することができる微小粒子圧縮試験装置において、
水平面内で奥行
及び前記奥行より大きい幅を有する長方形をなす試料載置範囲を
最上部に設け、前記試料載置範囲に散布された複数の微小粒子を試料として載置すると共に、前記試料載置範囲から外れて散布された微小粒子を転落させるように構成された試料載置部と、
前記試料載置範囲に載置された試料を前記試料載置範囲の奥行の向きに撮像することができる撮像部と、
前記撮像部から試料の画像情報を得て試験対象とする試料を選択すると共に、前記選択された試料の前記試料載置範囲の幅方向における位置を決定することができる画像処理部と、
前記試料載置範囲の上方に設けられ、底面が平坦に形成された圧子と、
前記圧子を保持して前記幅方向に可動にすると共に前記試料載置部に対して相対的に鉛直方向に可動にすることができ、かつ、前記画像処理部から得られた前記選択された試料の幅方向における直上の位置まで前記圧子を移動させて前記選択された試料に対して位置合わせすると共に鉛直方向に近接して前記底面を当接させたとき、前記選択された試料に試験力を付与して圧縮すると共に前記試験力の値及び前記試料載置範囲の上面から前記圧子の底面までの鉛直方向の変位を求めることができる圧縮機構部と、
前記圧縮機構部が求めた試験力の値及び変位に基づき、前記選択された試料の圧縮特性を解析することができる解析部と、
前記撮像部、前記画像処理部、前記圧縮機構部及び前記解析部の各部に接続されて、前記各部の動作を制御することができる制御部とを
備えたことを特徴とする微小粒子圧縮試験装置。
【請求項2】
前記試料載置部の形状は、複数の側面のうち
最上部に位置する1面に前記試料載置範囲を設けた角柱であることを特徴とする
請求項1に記載の微小粒子圧縮試験装置。
【請求項3】
前記試料載置範囲の奥行は、前記試料とする複数の微小粒子の中央値粒子径をdで表すときdないし10dの範囲にあり、かつ、前記圧子の底面は前記奥行以上の直径を有する円形であることを特徴とする請求項1
及び請求項2のいずれか1項に記載の微小粒子圧縮試験装置。
【請求項4】
前記圧縮機構部は、前記試料載置部及び前記圧子の少なくとも一方が鉛直方向に可動に構成されたことにより、前記圧子を前記試料載置部に対して相対的に鉛直方向に可動にしたことを特徴とする請求項1
及び請求項2のいずれか1項に記載の微小粒子圧縮試験装置。
【請求項5】
前記圧縮機構部は前記圧子を保持して前記幅方向及び鉛直方向に可動にするステージ及び前記圧子の上方又は前記試料載置範囲の下方に設けた試験力計測部を備え、前記ステージにより前記圧子を前記選択された試料に向け鉛直に下降させて前記選択された試料に試験力を付与して圧縮すると共に、付与された試験力の値を前記試験力計測部により求めることができ、
前記圧縮機構部はさらに、前記ステージの鉛直方向の下降レベルから前記鉛直方向の変位を求めることができる
ことを特徴とする請求項1
及び請求項2のいずれか1項に記載の微小粒子圧縮試験装置。
【請求項6】
前記圧縮機構部は、前記圧子を保持して前記幅方向に可動にするステージと、前記試料載置部の鉛直方向の位置を調整して前記選択された試料を前記圧子の底面と前記試料載置範囲の上面の間に固定することができる昇降部とを備え、かつ、前記固定された試料に対して電磁力負荷方式により電磁力を付与して圧縮すると共に、前記電磁力の設定値を前記試験力の値として求めることができ、
前記圧縮機構部はさらに、前記試料載置範囲の上面及び前記圧子の底面間の変位を計測することができる変位センサを備え、前記変位センサの計測値を前記鉛直方向の変位として求めることができる
ことを特徴とする請求項1
及び請求項2のいずれか1項に記載の微小粒子圧縮試験装置。
【請求項7】
試料とする微小粒子を投入されて前記試料載置範囲に散布及び載置することができる試料供給部と、前記圧子の底面及び前記試料載置範囲を清掃することができる清掃部をさらに備え、前記制御部はさらに前記試料供給部及び前記清掃部にそれぞれ接続されて前記試料供給部及び前記清掃部の動作を制御することができることを特徴とする請求項1
及び請求項2のいずれか1項に記載の微小粒子圧縮試験装置。
【請求項8】
前記試料供給部は、断面が下向きに凸状の溝をなして形成された部材の一端側に微小粒子を投入されて前記部材を振動させることにより、前記部材の他端側から前記微小粒子を散布することができ、かつ、前記部材の他端側にメッシュ状のフィルターを取り付けることができるように構成されたことを特徴とする
請求項7に記載の微小粒子圧縮試験装置。
【請求項9】
前記画像処理部は、前記撮像部から得た試料の画像情報を2値化して、粒子径、凹凸度及び円形度を含む形状特性及び前記幅方向における位置を求め、前記形状特性及び隣り合う試料間の前記幅方向における距離に基づいて試験対象とする試料を選択することができることを特徴とする請求項1
及び請求項2のいずれか1項に記載の微小粒子圧縮試験装置。
【請求項10】
前記解析部は、前記選択された試料の圧縮特性として、圧壊強度、変化率、圧縮率及び復元率を解析することができることを特徴とする請求項1
及び請求項2のいずれか1項に記載の微小粒子圧縮試験装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記清掃部に前記圧子の底面及び前記試料載置範囲を清掃させ、
前記試料供給部に投入された試料を前記試料載置範囲に散布及び載置させ、
前記試料載置範囲に載置された試料を前記撮像部に撮像させ、
前記画像処理部に、前記撮像された試料の画像情報を得て試験対象とする試料を選択させると共に、前記選択された試料の前記試料載置範囲の幅方向における位置を決定させ、
前記圧縮機構部に、前記選択された試料の幅方向における直上の位置まで前記圧子を移動させて前記選択された試料に対して位置合わせすると共に鉛直方向に近接して前記圧子の底面を前記選択された試料に当接させ、かつ、前記選択された試料に試験力を付与して圧縮すると共に前記試験力の値及び前記試料載置範囲の上面から前記圧子の底面までの鉛直方向の変位を求めさせ、
前記解析部に、前記圧縮機構部が求めた試験力及び変位の値に基づき、前記選択された試料の圧縮特性を解析させる
ことができることを特徴とする
請求項7に記載の微小粒子圧縮試験装置。
【請求項12】
前記画像処理部に選択された試料が複数個存在する場合において、選択された試料の個数をNで表すとき、前記制御部は、
前記選択された試料の1個目から(N-1)個目まで、それぞれの圧縮特性の解析後に前記清掃部に前記圧子の底面を清掃させ、
次の試料を対象として前記選択された試料に対する前記幅方向における位置決定、前記選択された試料に対する前記圧子の位置合わせ及び圧縮、前記試験力の値及び変位を求めること並びに前記圧縮特性の解析を前記各部に実行させ、
前記選択された試料のN個目の圧縮特性の解析後に前記清掃部に前記圧子の底面及び前記試料載置範囲を清掃させる
ことができることを特徴とする
請求項11に記載の微小粒子圧縮試験装置。
【請求項13】
試験装置を用いて微小粒子を圧縮して圧縮特性を試験する
方法であって、前記試験装置は水平面内で奥行及び前記奥行より大きい幅を有する長方形をなす試料載置範囲を最上部に設けると共に前記試料載置範囲に散布された複数の微小粒子を試料として載置し、かつ、前記試料載置範囲から外れて散布された微小粒子を転落させるように構成された試料載置部を備えてなる微小粒子圧縮試験方法において、
前記試料載置範囲に試料とする複数の微小粒子を載置し、
前記載置された試料を前記試料載置範囲の奥行の向きに撮像し、
前記撮像された試料の画像情報を得て試験対象とする試料を選択すると共に、前記選択された試料の前記試料載置範囲の幅方向における位置を決定し、
前記試験装置において前記試料載置範囲の上方に設けられ底面が平坦に形成された圧子を、前記選択された試料の前記試料載置範囲の幅方向において決定された位置の直上まで移動させることにより、前記選択された試料に対して位置合わせすると共に鉛直方向に近接して前記底面を当接させ、
前記選択された試料に試験力を付与して圧縮すると共に前記試験力の値及び前記試料載置範囲の上面から前記圧子の底面までの鉛直方向の変位を求め、
前記試験力の値及び変位に基づき、前記選択された試料の圧縮特性を解析する
ことを特徴とする微小粒子圧縮試験方法。
【請求項14】
前記試料載置範囲に試料とする微小粒子を載置する前に、前記試料載置範囲及び前記圧子の底面を清掃し、
前記選択された試料が複数個存在する場合において、選択された試料の個数をNで表すとき、前記選択された試料の1個目から(N-1)個目まで、それぞれの圧縮特性の解析後に前記圧子の底面を清掃し、
次の試料を対象として前記選択された試料に対する前記幅方向における位置決定、前記選択された試料に対する前記圧子の位置合わせ及び圧縮、前記試験力の値及び変位を求めること並びに前記圧縮特性の解析を実行し、
前記選択された試料のN個目の圧縮特性の解析後に、前記圧子の底面及び前記試料載置範囲を清掃する
ことを特徴とする
請求項13に記載の微小粒子圧縮試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小粒子の圧縮強度などの物性を試験する微小粒子圧縮試験装置及び微小粒子圧縮試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子径が1mm以下(例えば数μm~数百μm程度)の微小粒子の圧縮強度等の特性(圧縮特性)を測定及び試験する装置及び方法が知られている。対象とする微小粒子の種類は、セラミックス、樹脂、医薬品、化粧品、金属などで、粒子径が数μm以下の微細な粒子を造粒した顆粒であることも多い。これらの微小粒子は、複数成分が混合されて生成、造粒、又は所定の形状に成形されて、流通したり使用されたりする。例えば造粒された微小セラミックス粒子を金型に充填してプレス成形し焼成するセラミックス成形において、硬度が過大な微小粒子が成形時に潰れないで残り、成形品の不良の原因となることがある。このような不具合を防止するためにも、微小粒子の圧縮特性を所定の範囲に収める必要がある。
【0003】
微小粒子の圧縮試験については、いくつかの従来技術が知られている。例えば特許文献1に記載された顆粒物性測定装置によれば、試料の顆粒を測定基板上に手動で載置し、測定基板を試料が圧子直下に来るまで手動で移動させてから、圧子を押し下げて試料に加圧する。加圧の前後に撮像した試料の形状と加圧時の圧縮荷重とから、試料の硬度や荷重変形率を求めることができる。
【0004】
また、特許文献2に記載された微小圧縮試験機によれば、X-Yステージ上に移動可能に保持された下部圧盤上に粒状試料をランダムに散布して上方から撮像し、その画像から単体で圧縮試験が可能な試料を判別し、当該試料が圧子直下に来るまでX-Yステージ及びもう1基のステージを駆動して下部圧盤を水平移動させると共に、Zステージにより昇降させて圧子と試料間の試験位置を決めた後、負荷機構により圧子を介して圧縮試験を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-365186号公報
【文献】特開2008-116349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載された顆粒物性測定装置では、試料を測定基板上に載置し、さらに測定基板を人手で動かして圧子と試料を位置合わせする操作を人手で行う必要がある。このような方法では、多数の試料を効率的に試験することは難しいという問題がある。また、上述した特許文献2に記載された微小圧縮試験機では、複数の試料に対して自動的に試験を繰り返すことが可能であるが、3基のステージを必要とするため機構が複雑になりやすい。さらに、試料が載置された下部圧盤を水平又は鉛直に移動させるとき試料が動いて、位置合わせを難しくする可能性がある。
【0007】
本発明はこのような事情を踏まえてなされたもので、試験装置の機構をできるだけ複雑にせずに、多数の試料を効率的に試験できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明の微小粒子圧縮試験装置は、微小粒子を圧縮して圧縮特性を試験することができる微小粒子圧縮試験装置において、水平面内で奥行及び前記奥行より大きい幅を有する長方形をなす試料載置範囲を最上部に設け、前記試料載置範囲に散布された複数の微小粒子を試料として載置すると共に、前記試料載置範囲から外れて散布された微小粒子を転落させるように構成された試料載置部と、前記試料載置範囲に載置された試料を前記試料載置範囲の奥行の向きに撮像することができる撮像部と、前記撮像部から試料の画像情報を得て試験対象とする試料を選択すると共に、前記選択された試料の前記試料載置範囲の幅方向における位置を決定することができる画像処理部と、前記試料載置範囲の上方に設けられ、底面が平坦に形成された圧子と、前記圧子を保持して前記幅方向に可動にすると共に前記試料載置部に対して相対的に鉛直方向に可動にすることができ、かつ、前記画像処理部から得られた前記選択された試料の幅方向における直上の位置まで前記圧子を移動させて前記選択された試料に対して位置合わせすると共に鉛直方向に近接して前記底面を当接させたとき、前記選択された試料に試験力を付与して圧縮すると共に前記試験力の値及び前記試料載置範囲の上面から前記圧子の底面までの鉛直方向の変位を求めることができる圧縮機構部と、前記圧縮機構部が求めた試験力の値及び変位に基づき、前記選択された試料の圧縮特性を解析することができる解析部と、前記撮像部、前記画像処理部、前記圧縮機構部及び前記解析部の各部に接続されて、前記各部の動作を制御することができる制御部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明の微小粒子圧縮試験方法は、試験装置を用いて微小粒子を圧縮して圧縮特性を試験する方法であって、前記試験装置は水平面内で奥行及び前記奥行より大きい幅を有する長方形をなす試料載置範囲を最上部に設けると共に前記試料載置範囲に散布された複数の微小粒子を試料として載置し、かつ、前記試料載置範囲から外れて散布された微小粒子を転落させるように構成された試料載置部を備えてなる微小粒子圧縮試験方法において、水平面内で奥行と幅を有する前記試験装置の試料載置範囲に試料とする複数の微小粒子を載置し、前記載置された試料を前記試料載置範囲の奥行の向きに撮像し、前記撮像された試料の画像情報を得て試験対象とする試料を選択すると共に、前記選択された試料の前記試料載置範囲の幅方向における位置を決定し、前記試験装置において前記試料載置範囲の上方に設けられ底面が平坦に形成された圧子を、前記選択された試料の前記試料載置範囲の幅方向において決定された位置の直上まで移動させることにより、前記選択された試料に対して位置合わせすると共に鉛直方向に近接して前記底面を当接させ、前記選択された試料に試験力を付与して圧縮すると共に前記試験力の値及び前記試料載置範囲の上面から前記圧子の底面までの鉛直方向の変位を求め、前記試験力の値及び変位に基づき、前記選択された試料の圧縮特性を解析することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の微小粒子圧縮試験装置及び微小粒子圧縮試験方法は、奥行と幅を有する試料載置範囲に載置した試料の幅方向の位置を決定して、当該幅方向に圧子を移動させて試料に対して位置合わせするため、位置合わせのために測定基板を人手で動かしたり試料を載置した下部圧盤を3基のステージで動かしたりする従来技術に対し、幅方向に分布した複数の試料を比較的シンプルな機構で効率的に試験することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は実施例に係る微小粒子圧縮試験装置の一部を除く構成及び構造を示す図である。(実施例1)
【
図2】
図2は
図1に示した微小粒子圧縮試験装置の構成及び構造を右側面から見て表す図である。(実施例1)
【
図3】
図3は
図1及び
図2に示した微小粒子圧縮試験装置のブロック図である。(実施例1)
【
図4】
図4は
図1ないし
図3に示した微小粒子圧縮試験装置を用いて行う微小粒子の圧縮試験のフローチャートである。(実施例1)。
【
図5】
図5は載置された試料を撮像した画像の一例を示す図である。(実施例1)
【
図6】
図6は実施例に係る微小粒子圧縮試験装置のブロック図である。(実施例2)
【
図7】
図7は
図6に示した微小粒子圧縮試験装置の一部の構成間の位置関係を示す図である。(実施例2)
【
図8】
図8は
図6に示した微小粒子圧縮試験装置を用いて行う微小粒子の圧縮試験のフローチャートである。(実施例2)
【
図9】
図9は
図8に示した圧縮試験の自動反復を説明するフローチャートである。(実施例2)
【
図10】
図10は実施例に係る微小粒子圧縮試験装置のブロック図である。(実施例3)
【
図11】
図11は
図10に示した微小粒子圧縮試験装置を用いて行う微小粒子の圧縮試験のフローチャートである。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1に係る微小粒子圧縮試験装置100の構成及び構造を説明する図である(一部の構成を除く。)。微小粒子圧縮試験装置100の主要な構成は、基台101の上面に固定されている。基台101の周囲の4面(正面、左側面、背面及び右側面)を、
図1にかっこ書で示すように定める。
【0014】
図1の中央付近に位置して右上に部分拡大図を示した六角柱形状の構成は、試料載置部102である。試料載置部102の六角柱側面のうち最上部に位置する細長い形状の面に、試料載置範囲103を設ける。試料載置範囲103は、
図1では六角柱の最上部の側面全域を指すが、最上部の側面のうち一部の範囲としてもよい。部分拡大図に示すように、六角柱の母線に平行な向きを試料載置範囲103の幅とし、六角柱底面の1つの辺に平行な向きを試料載置範囲103の奥行とする(幅>奥行とする。)。以下、試料載置範囲103の幅方向及び奥行方向を、それぞれX方向及びY方向とする。また、鉛直方向をZ方向とする。
【0015】
なお、角柱形状を横置きして最上部の側面上に設けた細長い形状の領域を試料載置範囲103とするのは、散布された複数の試料がY方向にできるだけ並ばず(試料載置範囲103から外れて散布された試料は転落する。)、かつ、X方向にできるだけ一列に並ぶようにするためである。この目的に適合する形であれば六角柱でなくてもよく、さらに角柱でなくても(例えば円柱の側面の一部を母線と平行に切り取った形状でも)よい。
【0016】
図1の部分拡大図では、試料載置範囲103に微小粒子(粒子径1mm以下)の試料(網掛けの円で示した部分)が1つ載置された状態を表している。当該微小粒子の上方に、微小粒子圧縮試験装置100の構成である圧子104が位置している。圧子104は底面が平坦に形成された、例えばコアピンと呼ばれる高硬度のピン形状の部材であるが、限定するものではない。すぐ後に述べるように圧子104を、部分拡大図にブロック矢印で示したX方向とZ方向に移動させることができる。
【0017】
試料載置範囲103の奥行の寸法を、試験対象とする複数の微小粒子の粒子径の分布に対応して適切に選ぶことにより、試料載置範囲103に散布された複数の試料がX方向に一列をなして載置される状態を、より高い確率で期待することができる。微小粒子を載置して圧縮するためには奥行を粒子径以上とする必要があるが、奥行が大き過ぎると複数粒子が奥行方向に並んで載る可能性が高まる問題がある。試料とする複数の微小粒子の中央値粒子径をdとして、経験上、奥行が10d以下であれば当該問題をほぼ無視することができることから、実施例1では奥行の寸法をdないし10dの範囲に設定する。また、圧子底面の直径が小さ過ぎると試料載置範囲の奥行方向の中央からはずれた位置に載った粒子を圧縮し損なう可能性があるが、大き過ぎると圧縮時に単一の粒子を圧縮するために必要な粒子間距離を大きく取る必要があり、効率が低下する。そのため、圧子底面の直径は試料載置範囲の奥行寸法と同等またはやや大きいサイズであることが好ましい。以上から実施例1では、圧子104の底面を、試料載置範囲103の奥行の寸法よりやや大きい直径を有する円形にする。
【0018】
圧子104は、圧子支持部105に支持されている。圧子支持部105は、
図1に破線の楕円で概略囲んで示した、背面に近い側に位置する部分である。圧子支持部105は、そのすぐ背後及び下に位置するステージ106に搭載されており、圧子104は圧子支持部105を介してステージ106に保持されている。ステージ106は図示しないモータードライバに駆動されて、圧子104をX方向及びZ方向に移動させることができる。なお、試料載置部102及び圧子104を図示しない装置電源の接地側に接続して、静電気による試料の吸引や飛び出し等の現象を防止することができる。
【0019】
ステージ106を鉛直方向に駆動して圧子104を鉛直に下降させていくと、試料載置範囲103に載置された試料に圧子104の底面を当接させ、さらに試験力を付与して圧縮することができる。このとき、圧縮試験におけるパラメータの1つである変位(圧子104の底面と試料載置範囲103の上面間のZ方向の距離)を、ステージ106のZ方向の下降レベルから知ることができる。別に設けた変位センサを使用して変位を計測してもよいし、撮像装置によって取得される粒子圧縮時の画像から変位を算出してもよい。なお、圧子104を下降させる代わりに試料載置部102を上昇させてもよい。
【0020】
試料載置部102の下部に、試験力計測部107が設けられている。試験力計測部107は例えばロードセルから構成され、圧縮試験における別のパラメータである試験力を検出することができる。圧子104の試験力計測部107を、なお、試験力計測部107としてロードセルに限らず、例えば電磁力平衡式の電子天秤を用いることもできる。試験力計測部107を、圧子104の上部に設けることもできる。
【0021】
図2を参照して、微小粒子圧縮試験装置100の構成及び構造を別の角度から(
図1における右側面から)見て説明する。
図2では左右の向きがY方向であり、紙面に垂直な向きがX方向である。
【0022】
図2において、符号101ないし107を付して表した構成は、
図1に同じ符号を付して表した構成とそれぞれ同じである。さらに、試料載置部102の最上部(試料載置範囲103であるが、
図2では符号を省略している。)の左側に、
図1において図示を省略した撮像部108が位置している(機械的な保持用の部材等の図示を省略する。)。撮像部108は、試料載置範囲103に載置された試料をY方向で(右向きのブロック矢印で示す。)撮像することができる。撮像部108のX方向の視野は試料載置範囲103の幅のうち一定範囲をカバーし、Z方向の視野は圧子104を下降させて試料を圧縮する経過を撮像するのに十分な範囲とする。撮像部108から見て試料の背景にバックライト109を設けることにより、画像のコントラストを高めることができる。
【0023】
圧子104は、
図2において圧子支持部105の左下の箇所に支持されている。圧子支持部105は上述したようにステージ106に搭載されている。ステージ106は、図示しないモータードライバに駆動されて、圧子支持部105を介して圧子104をX方向及びZ方向に移動させることができる。
【0024】
図3のブロック図を参照して、微小粒子圧縮試験装置100の構成を改めて説明する。
図3において、符号101ないし108を付して表した構成は、
図1及び
図2に同じ符号を付して表した構成とそれぞれ同じである。微小粒子圧縮試験装置100は、上述した各構成の他、モータードライバ110、画像処理部121、制御部122及び解析部123を備える。画像処理部121、制御部122及び解析部123は、それぞれが微小粒子圧縮試験装置100に組み込まれたマイクロプロセッサ又は外付けのパーソナルコンピュータ等に実装される機能ブロックとしてもよい。制御部122は、ヒューマンインターフェースとして図示しない表示部及び操作部に接続されている。
【0025】
画像処理部121は、撮像部108が撮像した試料の画像を処理して、試料載置範囲103上に載置された試料の形状とX方向の位置の情報を制御部122に送ることができる。制御部122は、モータードライバ110を制御してステージ106をX方向に駆動させることにより、試験対象に選んだ試料のX方向における直上の位置に圧子104を移動(位置合わせ)させることができる。制御部122は、モータードライバ110を制御してステージ106をZ方向下向きに駆動すること(圧縮の指示)により、圧子104を試料に押し当てて圧縮することができる。
【0026】
試料を圧縮したとき、ステージ106はZ方向の下降レベルの情報(上述した変位といいかえることができる。)を制御部122に送ることができる。また、試験力計測部107は、検出した試験力の値を制御部122に送ることができる。制御部122は、変位と試験力の値を解析部123に送って、試料の圧縮特性を解析させることができる。
【0027】
図3に破線の枠で囲んで示した圧子支持部105、ステージ106、試験力計測部107及びモータードライバ110は、圧子104の位置合わせから試料の圧縮及び試験力検出までの一連の動作を互いに連携して実行するものであるから、一括りの圧縮機構部115として位置づける。
【0028】
図4のフローチャートを参照して、微小粒子圧縮試験装置100を用いて行う微小粒子の圧縮試験について説明する。まず、複数の試料とする微小粒子(粒子径1mm以下)を試料載置範囲103に散布して載置する(ステップS401、これはマニュアル操作でも、実施例2で説明するような自動操作でもよい。)。試料載置範囲103を細長い形状にしてあるから、試料載置範囲103から外れて散布された試料は転落して試料載置範囲103に残らず、試料載置範囲103に残った試料は高い確率でX方向に一列に並ぶと期待できる。
【0029】
次に撮像部108を用いて、載置された試料をY方向の向きで撮像する(ステップS402)。撮像された画像の一例を、
図5に示す。
図5に示した画像情報は2値化されたもので、下部の試料載置部102、その上に5粒並んだ試料、最上部に位置する圧子104が、バックライト109を背景として映し出されている。
【0030】
画像処理部121は、2値化画像から試料が映った部分を切り出して、公知の画像処理技術により、試料ごとのX方向の位置と、粒子径、真円度、アスペクト比、凹凸度、対称度などの形状を表す指標を求めることができる。制御部122は、画像処理部121から試料ごとの位置及び各指標の情報を得て、試料どうしの凝集がなく、隣り合う試料との距離が確保されて試験対象として適切な試料を選ぶことができる(ステップS403)。
【0031】
制御部122は、試験対象として選んだ試料のX方向の位置情報をモータードライバ110に送り、ステージ106をX方向に駆動して圧子支持部105を移動させ、圧子104を試験対象とする試料のX方向における直上の位置に合わせる(ステップS404)。続いて制御部122は圧縮の指示をモータードライバ110に送り、ステージ106をZ方向下向きに駆動して、圧子104の底面を試験対象とする試料に当接させ当該試料を圧縮する(ステップS405)。
【0032】
制御部122は、試料を圧縮したときステージ106からZ方向の下降レベルの情報を得て圧子104の変位に換算すると共に、試料に付与された試験力の情報を試験力計測部107から得ることができる。制御部122はこれらの情報を解析部123に送り、解析部123は公知の解析技術を用いて、試料の圧壊強度、試料の圧裂後の試験力保持状態における変位(対粒子径比)の変化率等を解析することができる(ステップS406)。制御部122は解析部123からこれらの解析結果を得て、接続された表示部上に表示することができる。
【0033】
以上述べたように、本発明の実施例1に係る微小粒子圧縮試験装置100によれば、試料台ではなく圧子を一次元で動かして位置合わせを行うので、試料台を二次元で駆動する従来の方法に比べ、よりシンプルな機構で位置合わせすることができ、かつ、試料台移動中に試料が動いて位置を変えるような不都合を防止することができる。
【実施例2】
【0034】
図6は、本発明の実施例2に係る微小粒子圧縮試験装置200のブロック図である。微小粒子圧縮試験装置200は、
図3に示した実施例1の微小粒子圧縮試験装置100の各構成(
図6にそれぞれ
図3と同じ符号を付して示す。)に加えて、清掃部201と試料供給部205を備える。
図7は、試料載置部102及び圧子104と、付加的構成である清掃部201及び試料供給部205の位置関係等を説明する図である。
【0035】
清掃部201は、
図7に示すように、筒状の本体の先端部上下面にそれぞれブラシ202とブラシ203を取り付けてなる。清掃部201の長手方向はX方向に一致し、試料載置範囲103をX方向(
図7では左下向き)に延ばしてZ方向に上げた位置を初期位置とする。清掃部201は図示しない駆動機構に接続され、当該駆動機構は制御部122から指示されて清掃部201をX方向に移動させることができる。清掃部201は、先端部を圧子104の直下まで移動させて駆動機構によりブラシ202を動かして、圧子104の底面を清掃することができる。清掃部201は、先端部をX方向(試料載置範囲103の幅方向)に沿って移動させながら駆動機構によりブラシ203を動かして、試料載置範囲103を清掃することができる。なお、ブラシ202とブラシ203を分けずに一体にしてもよい。
【0036】
試料供給部205は、
図7に示すように、断面V字型の溝状の部材の底面に振動子206を取り付けると共に、溝の一端(
図7における左端)にメッシュ状のフィルター207を取り付けてなる。試料供給部205の長手方向はX方向に一致し、試料載置範囲103をX方向(
図6では右上向き)に延ばしてZ方向に上げた位置を初期位置とする。試料供給部205は図示しない駆動機構に接続され、当該駆動機構は制御部122から指示されて試料供給部205をX方向に移動させることができる。試料供給部205は、溝の
図7における右端の側から試料とされる微小粒子を適宜溝の内側に供給することのできる図示しない仕組みを備えていてもよい。溝の断面はV字型以外にも、下向きに凸状のU字型やバスタブ曲線型などであってもよい。試料供給部205としては、上記の振動フィーダー型に限らず、他の公知の粉体供給機(例えばスクリューフィーダー型)を用いてもよい。メッシュ状のフィルター207は、粗大粒子の除去、散布される粒子間距離の増大、粒子の凝集の解消等の効果を有する。
【0037】
図6、
図7及び
図8のフローチャートを参照して、微小粒子圧縮試験装置200を用いて行う微小粒子の圧縮試験について説明する。まず、制御部122の指示により清掃部201をX方向で初期位置から試料載置部102寄りに移動させて、ブラシ203を動かして試料載置範囲103を清掃すると共に、ブラシ202を動かして圧子104の底面を清掃する(ステップS801)。この清掃により、試料載置範囲103にも圧子104にも試料が存在しない状態に初期化することができる。
【0038】
制御部122は、ステップS801の終了後に清掃部201を初期位置まで退避させる。次に制御部122の指示により試料供給部205をX方向で初期位置から試料載置部102寄りに移動させて振動子206を振動させ、溝の内側に与えられていた試料を
図7における左端からふるい落とす。ふるい落とされた試料はメッシュ状のフィルター207を通して粒子径で選別され、試料載置範囲103上に散布及び載置される(ステップS802)。
【0039】
制御部122は、ステップS802の終了後に試料供給部205を初期位置まで退避させる。ステップS802に続くステップS803ないしステップS807の処理は、それぞれ
図4のステップS402ないしステップS406の処理と同じであるから、説明を省略する。
【0040】
図9のフローチャートを参照して、微小粒子圧縮試験装置200を用いて行う微小粒子圧縮試験の自動反復について説明する。
図9のステップS901ないしステップS903の処理は、
図8のステップS801ないしステップS803の処理とそれぞれ同じである。制御部122が、画像処理部121から得た情報に基づいて試験対象として適切と判断した試料の個数がNであるとする(ステップS904)。以下の説明では、N≧2と仮定する。
【0041】
全N個の試料のうち、k個目(1≦k≦N)の試料に対する処理は以下のステップS905ないしステップS910に示す通りである。初めにk=1に設定する(ステップS905)。続くステップS906ないしステップS908は、
図8のステップS805ないしステップS807とそれぞれ同じである。
【0042】
制御部122は、k≦N-1の場合(ステップS909の“YES”)、試験対象として選択された未試験の試料が残っていると判断する。次に制御部122は、圧子104をブラシ202の位置まで移動させ、底面を清掃させる(ステップS910)。続いて制御部122は、kの値に1を加えて(ステップS911)ステップS906に戻り、(k+1)個目の試料に対する処理を実行する。
【0043】
制御部122は、ステップS909においてk≦N-1でない場合(ステップS909の“NO”)、一つ前のステップS908で全N個の試料の試験を終えたと判断する。次に制御部122は清掃部201を駆動して、ブラシ202で圧子104の底面を清掃させると共にブラシ203で試料載置範囲103を清掃させ、試料が存在しない状態に初期化して全N個の試料に対する処理を終了する。制御部122は、続いて試料供給部205に次の試験対象の試料を与えて、ステップS902以降の処理を繰り返してもよい。
【0044】
以上述べたように、本発明の実施例2に係る微小粒子圧縮試験装置200によれば、圧縮試験の前後及び途中で適時に圧子の底面と試料載置範囲の清掃を自動的に行えるので、複数個の対象試料に対する圧縮試験を自動反復して作業効率を高められるという、付加的な効果を得られる。
【実施例3】
【0045】
図10は、本発明の実施例3に係る微小粒子圧縮試験装置300のブロック図である。微小粒子圧縮試験装置300は、
図6に示した微小粒子圧縮試験装置200の圧縮機構部115に代えて、圧縮機構部315を備える。微小粒子圧縮試験装置300は、
図6に示した微小粒子圧縮試験装置200の制御部122に代えて、制御部322を備える。そのほか、微小粒子圧縮試験装置300が備える試料載置部102(上向きの側面が試料載置範囲103である。)、圧子104、撮像部108、画像処理部121、解析部123、清掃部201及び試料供給部205は、
図6にそれぞれ同じ符号を付して表した構成と同じである。
【0046】
圧縮機構部315は、微小粒子圧縮試験装置200の圧子支持部105に相当する部位に、荷重発生部301及び変位センサ302を備える。圧縮機構部315は、微小粒子圧縮試験装置200の試験力計測部107に相当する部位に、昇降部303を備える。そのほか、圧縮機構部315が備えるステージ106及びモータードライバ110は、
図6にそれぞれ同じ符号を付して表した構成と同じである。圧縮機構部315及び
図6に示したのと同じ各構成間の位置関係並びにX、Y、Z各方向の定義は、
図1及び
図2に示した圧縮機構部115の下位構成及び各構成間の位置関係並びにX、Y、Z各方向の定義とそれぞれ同じである。
【0047】
荷重発生部301は、磁界中に置かれたコイルに試験電流を流して発生させた電磁力を試験力として、圧子104を介して試料に付与することができる(公知の電磁力負荷方式)。変位センサ302は圧子104の近傍に設けられ、例えば公知の差動トランス方式により、試料載置範囲103の上面及び圧子104の底面間の変位を計測することができる。昇降部303はマニュアル又は自動操作により試料載置部102を昇降させてその鉛直方向の位置を調整し、選択された試料を圧子104の底面と試料載置範囲103の上面面の間に固定することができる。
【0048】
図11のフローチャートを参照して、微小粒子圧縮試験装置300を用いて行う微小粒子の圧縮試験について説明する。
図11のステップS1101ないしステップS1105の処理は、
図8のステップS801ないしステップS805の処理とそれぞれ同じである。
【0049】
ステップS1105で圧子104を試験対象の試料に対してX方向において位置合わせした後、昇降部303若しくはステージ106又はそれら両方を用いて、試料載置部102のZ方向の位置を調整し、当該試料を圧子104の底面と試料載置範囲103の上面との間に固定することができる(ステップS1106)。このステップはマニュアル操作で行ってもよく、公知の光学的手段又は圧子の降下速度変化の検出手段を設けて、自動操作で行ってもよい。
【0050】
次に制御部322は、圧子104から試料に付与する試験力の値を設定して、荷重発生部301に指示する。荷重発生部301は、指示された試験力に対応する試験電流をコイルに流して発生させた電磁力を、圧子104を介して試料に付与する。このとき変位センサ302は指示された試験力で生じた変位を計測して、そのデータを制御部322に送る(ステップS1107)。これに続くステップS1108の処理は、制御部322が試験力の値を予め設定した点を別にすれば、
図8のステップS807の処理と同じである。
【0051】
以上述べたように、本発明の実施例3に係る微小粒子圧縮試験装置300によれば、低荷重の負荷に用いられる電磁力負荷方式を採用した微小粒子の圧縮試験においても、試料台ではなく圧子を一次元で動かして位置合わせするシンプルな機構の特徴を発揮することができる。
【実施例4】
【0052】
複数の微小粒子からなる試料を、実施例1のように幅が奥行より大きい試料載置範囲に載置して、操作又は観測手段を試料載置範囲の幅方向に移動させて個々の試料に位置合わせする技術の応用範囲は、圧縮試験に限らない。例えば、次のような装置を考えることができる。
【0053】
微小粒子を観測又は操作して特性を試験することができる微小粒子特性試験装置において、
水平面内で奥行と幅を有する試料載置範囲を備え、試料とする複数の微小粒子を前記試料載置範囲に載置することができる試料載置部と、
前記試料載置範囲に載置された試料を前記試料載置範囲の奥行の向きに撮像することができる撮像部と、
前記撮像部から試料の画像情報を得て試験対象とする試料を選択すると共に、前記選択された試料の前記試料載置範囲の幅方向における位置を決定することができる画像処理部と、
前記試料載置範囲の上方に設けられ、前記選択された試料に対する観測又は操作を行うことができる試料検知部と、
前記試料検知部を保持して前記幅方向に可動にすることにより、前記画像処理部から得られた前記選択された試料の幅方向における直上の位置まで前記試料検知部を移動させて前記選択された試料に対して位置合わせすることができる位置合わせ機構部と、
前記選択され位置合わせされた試料に対する観測又は操作により得られた情報を前記試料検知部から受け取って、前記選択され位置合わせされた試料の特性を解析することができる解析部と、
前記撮像部、前記画像処理部、前記試料検知部、前記位置合わせ機構部及び前記解析部の各部に接続されて、前記各部の動作を制御することができる制御部とを
備えたことを特徴とする微小粒子特性試験装置(1)を考えることができる。
【0054】
上述した微小粒子特性試験装置(1)において、試料とする微小粒子を投入されて前記試料載置範囲に散布及び載置することができる試料供給部と、前記試料載置範囲を清掃することができる清掃部をさらに備え、前記制御部は、
さらに前記清掃部に接続され、前記試料載置範囲に試料とする微小粒子を載置する前に前記清掃部に前記試料載置範囲を清掃させ、
さらに前記試料供給部に接続され、前記試料供給部に投入された試料を前記試料載置範囲に散布及び載置させ、
前記試料載置範囲に載置された試料を前記撮像部に撮像させ、
前記画像処理部に、前記撮像された試料の画像情報を得て試験対象とする試料を選択させると共に、前記選択された試料の前記試料載置範囲の幅方向における位置を決定させ、
前記位置合わせ機構部に、前記選択された試料の幅方向における直上の位置まで前記試料検知部を移動させて前記選択された試料に対して位置合わせさせ、
前記試料検知部に、前記選択された試料に対する観測又は操作を行わせ、
前記解析部に、前記選択され位置合わせされた試料に対する観測又は操作により得られた情報を前記試料検知部から受け取って前記選択され位置合わせされた試料の特性を解析させる
ことができることを特徴とする微小粒子特性試験装置(2)を考えることができる。
【0055】
上述した微小粒子特性試験装置(2)において、
前記画像処理部に選択された試料が複数個存在する場合において、選択された試料の個数をNで表すとき、前記制御部は、
前記選択された試料の1個目から(N-1)個目まで、それぞれの圧縮特性の解析後に、次の試料を対象として前記選択された試料に対する前記幅方向における位置決定、前記選択された試料に対する前記試料検知部の位置合わせ、前記選択され位置合わせされた試料に対する観測又は操作並びに前記特性の解析を前記各部に実行させ、
前記選択された試料のN個目の特性の解析後に前記清掃部に前記試料載置範囲を清掃させる
ことができることを特徴とする微小粒子特性試験装置(3)を考えることができる。
【0056】
上述した微小粒子特性試験装置(1)ないし(3)における試料検知部は、例えば単一粒子の帯電量、伝導度等を測定することのできる電極又はプローブ、単一粒子の吸光度、吸収スペクトル、散乱特性等を測定することのできる光検出プローブ等とすることができる(後者については、微小粒子特性試験装置が照射光源を備える必要がある。)。
【0057】
以上述べたように、本発明の実施例4に係る微小粒子特性試験装置(1)ないし(3)によれば、微小粒子の操作又は観測手段を試料載置範囲の幅方向に移動させて個々の試料に位置合わせする技術を応用して、微小粒子の電気的又は光学的等の幅広い特性試験を効率的に行うことができる。
【符号の説明】
【0058】
100、200、300 微小粒子圧縮試験装置
101 基台
102 試料載置部
103 試料載置範囲
104 圧子
105 圧子支持部
106 ステージ
107 試験力計測部
108 撮像部
109 バックライト
110 モータードライバ
115、315 圧縮機構部
121 画像処理部
122、322 制御部
123 解析部
201 清掃部
202、203 ブラシ
205 試料供給部
206 振動子
207 メッシュ状のフィルター
301 荷重発生部
302 変位センサ
303 昇降部
【要約】
【課題】多数の微小粒子の試料の特性を、試験装置の機構をできるだけ複雑にしないで効率的に試験できるようにする。
【解決手段】角柱形状の試料載置部102の最上部側面に、幅方向のサイズが奥行方向のサイズより大きい試料載置範囲103を設けて試料を載置して、さらに正面側から撮像して幅方向において位置決めする。試料載置範囲103の形状を細長いものにして、できるだけ複数の試料を一列に並べるようにする。次にステージ106に保持された圧子104を幅方向に移動させて試料に位置合わせし、ステージ106を鉛直下向きに駆動して圧子104を試料に当接させ圧縮する。試料載置部102の下部に設けた試験力計測部107が計測した圧縮時の試験力と圧子104の変位に対応するステージ106の下降レベルとから、試料の圧縮特性を評価する。次の試料に対しても、同様の手順を自動反復する。
【選択図】
図1