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特許7546999リチウム2次電池及びリチウム2次電池の製造方法
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  • 特許-リチウム2次電池及びリチウム2次電池の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】リチウム2次電池及びリチウム2次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20240902BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240902BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20240902BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20240902BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20240902BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20240902BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240902BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/66 A
H01M50/449
H01M50/46
H01M50/426
H01M10/0585
H01M4/13
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2024523254
(86)(22)【出願日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2023043892
【審査請求日】2024-04-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522369728
【氏名又は名称】TeraWatt Technology株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】梶川 哲志
(72)【発明者】
【氏名】大山 剛輔
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-112890(JP,A)
【文献】特開2014-170752(JP,A)
【文献】特開2022-166718(JP,A)
【文献】特表2022-531039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052
H01M 4/66
H01M 50/40
H01M 10/0585
H01M 4/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、セパレータと、負極集電体及び該負極集電体上の負極活物質層を含む負極と、を備え、
前記負極集電体が、樹脂層と、該樹脂層の両面に設けられた金属層と、を備え、
前記負極活物質層が、前記セパレータを介して前記正極と対向し、
前記セパレータが、前記負極側の面上に接着層を備え、
前記樹脂層と前記金属層との間の25℃における剥離強度xが、0.05N/cm以上であり、
前記負極活物質層と前記セパレータとの間の25℃における剥離強度yが、x<yを満たす、
リチウム2次電池。
【請求項2】
前記25℃における剥離強度yが、0.07N/cm以上である、
請求項1に記載のリチウム2次電池。
【請求項3】
前記剥離強度x及び前記剥離強度yが、y>0.1+0.5xを満たす、
請求項1に記載のリチウム2次電池。
【請求項4】
前記樹脂層が、ポリプロピレンを含み、
前記金属層が、銅を含む、
請求項1に記載のリチウム2次電池。
【請求項5】
前記接着層が、ポリフッ化ビニリデンを含む、
請求項1に記載のリチウム2次電池。
【請求項6】
前記負極活物質層と前記金属層との間の25℃における剥離強度z、前記25℃における剥離強度x、及び前記25℃における剥離強度yが、x<y<(z/2)を満たす、
請求項1に記載のリチウム2次電池。
【請求項7】
前記25℃における剥離強度xが、0.09N/cm以上である、
請求項6に記載のリチウム2次電池。
【請求項8】
前記25℃における剥離強度zが、0.30N/cm以上である、
請求項6の記載のリチウム2次電池。
【請求項9】
前記正極、前記セパレータ及び前記負極のセットが複数セット積層される積層体を備える、
請求項1に記載のリチウム2次電池。
【請求項10】
前記金属層は、前記樹脂層上に設けられた蒸着層と、前記蒸着層上に設けられためっき層とを備える、
請求項1に記載のリチウム2次電池。
【請求項11】
リチウム2次電池の製造方法であって、
樹脂層と、該樹脂層の両面に設けられた金属層とを備える負極集電体を準備する負極集電体準備工程と、
前記負極集電体上に負極活物質層を形成して、負極を作製する負極作製工程と、
前記負極活物質層が、接着層を備えるセパレータを介して正極と対向し、且つ、前記接着層が前記負極活物質層と隣接するように、前記負極、前記正極、及び前記セパレータを配置して積層体を作製する積層体作製工程と、
前記積層体を加熱しながら加圧するヒートプレス工程と、を含み、
前記リチウム2次電池において、
前記樹脂層と前記金属層との間の25℃における剥離強度xが、0.05N/cm以上であり、
前記負極活物質層と前記セパレータとの間の25℃における剥離強度yが、x<yを満たす、
リチウム2次電池の製造方法。
【請求項12】
前記負極集電体準備工程において、前記樹脂層の両面に金属を蒸着し、その後、めっきすることで、前記樹脂層の両面に金属層を設けて、負極集電体を作製する、
請求項11に記載のリチウム2次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム2次電池及びリチウム2次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光又は風力等の自然エネルギーを電気エネルギーに変換する技術が注目されている。また、電気自動車などの電気エネルギーを活用する機器の普及に伴い、軽量で、かつ多くの電気エネルギーを蓄えることができる蓄電デバイスとして、様々な2次電池が開発されている。
【0003】
その中でも、正極及び負極の間をリチウムイオンが移動することで充放電を行うリチウム2次電池は、高電圧及び高エネルギー密度を示すことが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、樹脂層の両面に金属層が形成された集電体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-102711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リチウム2次電池において、樹脂層の両面に金属層が形成された集電体を用いると、電池の容量維持率が低下する等の問題が生じることが分かった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、質量が大きくなることを抑制し、且つ容量維持率が向上するリチウム2次電池、及び該リチウム2次電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係るリチウム2次電池は、正極と、セパレータと、負極集電体及び該負極集電体上の負極活物質層を含む負極と、を備え、上記負極集電体が、樹脂層と、該樹脂層の両面に設けられた金属層と、を備え、上記負極活物質層が、上記セパレータを介して上記正極と対向し、上記セパレータが、上記負極側の面上に接着層を備え、上記樹脂層と上記金属層との間の25℃における剥離強度xが、0.05N/cm以上であり、上記負極活物質層と上記セパレータとの間の25℃における剥離強度yが、x<yを満たす。
【0009】
本発明の一実施形態にかかるリチウム2次電池の製造方法は、樹脂層と、該樹脂層の両面に設けられた金属層とを備える負極集電体を準備する負極集電体準備工程と、上記負極集電体上に負極活物質層を形成して、負極を作製する負極作製工程と、上記負極活物質層が、接着層を備えるセパレータを介して正極と対向し、且つ、上記接着層が上記負極活物質層と隣接するように、上記負極、上記正極、及び上記セパレータを配置して積層体を作製する積層体作製工程と、上記積層体を加熱しながら加圧するヒートプレス工程と、を含み、上記リチウム2次電池において、上記樹脂層と上記金属層との間の25℃における剥離強度xが、0.05N/cm以上であり、上記負極活物質層と上記セパレータとの間の25℃における剥離強度yが、x<yを満たす。
【0010】
かかるリチウム2次電池は、負極集電体が、樹脂層と、該樹脂層の両面に設けられた金属層と、を備える。このような負極集電体は、金属層のみを備える集電体よりも密度が小さいため、このような負極集電体を用いることで、リチウム2次電池の軽量化が可能になる。また、リチウム2次電池において、負極活物質層が、セパレータを介して正極と対向し、上記セパレータが、上記負極側の面上に接着層を備え、上記樹脂層と上記金属層との間の25℃における剥離強度xが、0.05N/cm以上であり、上記負極活物質層と上記セパレータとの間の25℃における剥離強度yが、x<yを満たすことにより、リチウム2次電池が良好な容量維持率を有することを見出した。よって、上述した各構成がリチウム2次電池の軽量化及び良好な容量維持率を両立させると推測される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軽量化及び良好な容量維持率を両立させるリチウム2次電池、及び該リチウム2次電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態にかかるリチウム2次電池の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0014】
1.リチウム2次電池
本実施形態のリチウム2次電池100の種類としては、リチウムの酸化還元反応により充放電が行われるものであれば特に限定されないが、例えば、リチウムイオン電池、リチウム金属電池、リチウム硫黄電池、リチウム酸素電池、リチウム空気電池等が挙げられる。
【0015】
本実施形態のリチウム2次電池100が有する電池の形状は、特に限定されず、例えば、シート型、積層シート型、薄型形状、有底筒型形状、有底角型形状等であってもよい。本実施形態による効果を一層有効かつ確実に奏する観点からは、シート型、積層シート型、又は薄型形状であることが好ましい。
【0016】
以下、必要に応じて、本実施形態のリチウム2次電池の一例であるリチウムイオン2次電池を例として、本実施形態のリチウム2次電池について詳説する。
【0017】
<リチウムイオン2次電池>
図1は、本実施形態に係るリチウム2次電池100の概略断面図である。本実施形態のリチウム2次電池100は、正極110と、セパレータ130と、負極集電体121及び該負極集電体121上の負極活物質層122を含む負極120と、を備え、上記負極集電体121が、樹脂層121bと、該樹脂層121bの両面に設けられた金属層121aと、を備え、上記負極活物質層122が、上記セパレータ130を介して上記正極110と対向し、上記セパレータ130が、上記負極120側の面上に接着層131を備え、上記樹脂層121bと上記金属層121aとの間の25℃における剥離強度xが、0.05N/cm以上であり、上記負極活物質層122と上記セパレータ130との間の25℃における剥離強度yが、x<yを満たす。
【0018】
接着層131は、図1に示すようにセパレータ本体132の負極側の面のみに設けられてもよく、セパレータ本体132の両面に設けられてもよい。
【0019】
正極活物質層112は、図1に示すように正極集電体111の片面に設けられてもよく、正極集電体111の両面に設けられてもよい。また、負極活物質層122は、図1に示すように負極集電体121の片面に設けられてもよく、負極集電体121の両面に設けられてもよい。
【0020】
正極集電体111は、図1に示すように単層構造でもよく、樹脂層と樹脂層の両面に設けられた金属層とを備える複層構造でもよい。
【0021】
また、負極集電体121は、金属よりも密度が小さい樹脂を含み、金属層のみを備える集電体よりも体積当たりの重量が減少するため、樹脂層121bと、該樹脂層121bの両面に設けられた金属層121aと、を備える負極集電体121を用いたリチウム2次電池100は、重量当たりエネルギー密度に優れる傾向にある。
【0022】
上述のように、集電体として樹脂層と該樹脂層の両面に設けられた金属層と、を備える集電体を用いることで、リチウム2次電池の重量当たりエネルギー密度を向上させることができる傾向にある。一方で、そのような集電体を用いると、電池の容量維持率が低下する等の問題が生じる。この要因は、特に限定されるものではないが、以下のように推測される。樹脂層と該樹脂層の両面に設けられた金属層と、を備える集電体においては、金属層と樹脂層との間の接着強度が弱い場合がある。特に、リチウム2次電池の負極集電体に用いられる金属と樹脂との間の接着強度は弱くなる傾向にある。そのため、負極集電体が、樹脂層と、該樹脂層の両面に設けられた金属層と、を備える場合、充放電サイクルを繰り返した時に発生するリチウム2次電池の膨張及び収縮により、負極集電体の樹脂層と金属層との間に剥離が生じ、これをきっかけにして、リチウム2次電池における正極とセパレータとの間や負極とセパレータとの間など、様々な箇所に隙間が生じてリチウム2次電池の形状が崩壊し、結果として、電池の容量維持率が低下する等の問題が生じると考えられる。
【0023】
そこで、本実施形態のリチウム2次電池100では、負極集電体121を構成する金属層121aと樹脂層121bとの間の25℃における剥離強度xを規定する。これにより、リチウム2次電池100が膨張及び収縮を繰り返しても、負極集電体121において金属層121aと樹脂層121bとの間の剥離が生じにくくなる。
【0024】
加えて、本実施形態のリチウム2次電池100では、負極活物質層122とセパレータ130との間の25℃における剥離強度yが、上記25℃における剥離強度xよりも大きいことを規定する。負極集電体121において、金属層121aと樹脂層121bとの間において剥離がわずかに生じても、そのことが直ちに電池性能の大きな悪化を引き起こすことは少ないが、負極活物質層122とセパレータ130との間において剥離が生じると、リチウム2次電池100内でのリチウムイオンの移動が阻害されやすくなり、容量維持率の低下等の電池性能の悪化につながる。この点、25℃における剥離強度yが25℃における剥離強度xよりも大きいことにより、負極活物質層122とセパレータ130との間において剥離が生じにくくなる。また、金属層121aと樹脂層121bとの間において剥離が生じても、これをきっかけにして、リチウム2次電池100の様々な箇所に隙間が生じてリチウム2次電池100の形状が崩壊することを防ぐことができる。そのため、本実施形態のリチウム2次電池100は、良好な容量維持率を有すると考えられる。但し、本実施形態のリチウム2次電池100が良好な容量維持率を有する要因は上述のものに限定されない。
【0025】
以下、本実施形態のリチウム2次電池100の各構成についてそれぞれ詳説する。
【0026】
1.1.負極
本実施形態の負極120は、負極集電体121及び該負極集電体121上の負極活物質層122を含む。
【0027】
負極120の平均厚さは、特に限定されないが、例えば、5.0μm以上120.0μm以下である。電池の容量及び/又はエネルギー密度の向上の観点からは、好ましくは、20.0μm以上100.0μm以下であり、50.0μm以上80.0μm以下である。
【0028】
1.1.1.負極集電体
本実施形態の負極集電体121は、樹脂層121bと、該樹脂層の両面に設けられた金属層121aと備える。これにより、本実施形態のリチウム2次電池100の軽量化が実現でき、重量当たりエネルギー密度に優れる傾向にある。また、樹脂は金属に比べて安価な傾向があるため、金属層のみを備える集電体に比べて、本実施形態の負極集電体121を用いたリチウム2次電池100は、コストが低下する傾向にある。
【0029】
1.1.1.1.金属層
本実施形態の金属層121aを構成する金属としては、集電体として用いることができるものであれば特に限定されず、例えば、銅、ニッケル、チタン、鉄、その他リチウムと反応しない金属、及びこれらの合金、並びにステンレス鋼(SUS)が挙げられ、好ましくは、銅、ニッケル、及びこれらの合金、並びにSUSである。これらの金属の中でも、酸化還元電位の観点から、銅、SUSが好ましく、銅がより好ましい。なお、金属は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。なお、本明細書中、「リチウムと反応しない金属」とは、リチウム2次電池の動作条件においてリチウムイオン又はリチウム金属と反応して合金化することがない金属を意味する。
【0030】
金属の含有量は、金属層121aの総量に対して、好ましくは、80質量%以上100質量%以下であり、90質量%以上100質量%以下であり、95質量%以上100質量%以下であり、100質量%である。また、実質的に金属からなることが好ましい。
【0031】
金属層121aの厚さは、好ましくは、0.1μm以上4.0μm以下であり、0.2μm以上3.5μm以下であり、0.3μm以上3.3μm以下であり、0.4μm以上3.0μm以下であり、1.0μm以上3.0μm以下である。
【0032】
金属層121aは、樹脂層121bの両面に、蒸着、スパッタリング、電解めっき等のめっき、又は接着剤などで貼り合わせることで形成される。この中でも、蒸着、めっきが好ましく、蒸着後にめっきすることがより好ましい。この場合、金属層121aは、樹脂層121b上に設けられた蒸着層と、蒸着層上に設けられためっき層とを備えることになる。
【0033】
蒸着後にめっきを行って金属層121aを形成する場合、蒸着により形成される蒸着層の厚さは、好ましくは、0.07μm以上0.30μm以下であり、0.10μm以上0.25μm以下である。また、めっきにより形成されるめっき層の厚さは、好ましくは、0.50μm以上2.00μm以下であり、0.75μm以上1.50μm以下である。
【0034】
1.1.1.2.樹脂層
本実施形態の樹脂層121bは絶縁体であり、該樹脂層121bの両面に設けられた金属層121a同士が導通することを防止する。樹脂層121bを構成する樹脂は、特に限定されないが、例えば、シート状(フィルム状)又は繊維状の樹脂で構成されてもよい。樹脂としては、特に限定されないが、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン樹脂;ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂;ポリエチレンテレフタラート(PET)が挙げられる。この中でも、PP、PEが好ましく、PPがより好ましい。PPは、リチウム2次電池の電解液に対する安定性により優れる傾向にある。樹脂層121bを構成する樹脂としてPPを用いる場合、金属層121aを構成する金属として銅を用いることが好ましい。樹脂は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0035】
樹脂層121bは、上述の樹脂のほか、所望の物性に応じて適宜その他の添加剤を含んでもよい。その他の添加剤としては、特に限定されないが、例えば、着色剤、難燃剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0036】
樹脂の含有量は、特に限定されないが、例えば、樹脂層121bの総量に対して、60質量%以上100質量%以下であってよく、80質量%以上100質量%以下であってよく、90質量%以上100質量%以下であってよく、95質量%以上100質量%以下であってよく、100質量%であってよい。また、実質的に樹脂からなってもよい。
【0037】
樹脂層121bの厚さは、好ましくは、1μm以上10μm以下であり、2μm以上9μm以下であり、3μm以上8μm以下である。
【0038】
1.1.2.負極活物質層
本実施形態の負極活物質層122は負極活物質を含む。負極活物質とは、負極において電極反応、すなわち酸化反応及び還元反応を生じる物質である。具体的には、本実施形態の負極活物質としては、リチウム金属、及びリチウム元素(リチウムイオン又はリチウム金属)のホスト物質が挙げられる。リチウム元素のホスト物質とは、リチウムイオン又はリチウム金属を負極に保持するために設けられる物質を意味する。そのような保持の機構としては、例えば、インターカレーション、合金化、及び金属クラスターの吸蔵等が挙げられ、典型的には、インターカレーションである。
【0039】
負極活物質としては、特に限定されないが、例えば、リチウム金属及びリチウム金属を含む合金、炭素系物質、金属酸化物、並びにリチウムと合金化する金属及び該金属を含む合金等が挙げられる。上記炭素系物質としては、特に限定されず、例えば、人造黒鉛、グラフェン、グラファイト、ハードカーボン、カーボンナノチューブ等が挙げられる。上記金属酸化物としては、特に限定されず、例えば、酸化チタン系化合物、酸化コバルト系化合物等が挙げられる。上記リチウムと合金化する金属としては、特に限定されず、例えば、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アルミニウム、及びガリウムが挙げられる。負極活物質は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0040】
負極活物質の含有量は、負極活物質層122の総量に対して、好ましくは、60.0質量%以上100質量%以下であり、70.0質量%以上99.5質量%以下であり、80.0質量%以上99.0質量%以下である。
【0041】
負極活物質層122は、負極活物質以外に、バインダー、導電助剤、その他の添加剤を含んでもよい。
【0042】
バインダーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン;ポリフッ化ビニリデンに水酸基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、フェニル基、メチル基等の官能基を導入した変性ポリフッ化ビニリデン;ポリテトラフルオロエチレン;ポリテトラフルオロエチレンに水酸基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、フェニル基、メチル基等の官能基を導入した変性ポリテトラフルオロエチレン;テトラフルオロエチレンを構成単位として有するブロック共重合体、ランダム共重合体、又はグラフト共重合体;スチレンブタジエンゴム;カルボキシメチルセルロース;アクリル樹脂;ポリイミド樹脂等が挙げられる。バインダーは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0043】
バインダーの含有量は、負極活物質層122の総量に対して、好ましくは、0.5質量%以上10.0質量%以下であり、0.7質量%以上8.0質量%以下であり、1.0質量%以上6.0質量%以下であり、1.0質量%以上4.0質量%以下である。
【0044】
導電助剤としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)、マルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)、カーボンナノファイバー(CF)、及びアセチレンブラックが挙げられる。導電助剤は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0045】
導電助剤の含有量は、負極活物質層122の総量に対して、好ましくは、0.5質量%以上30.0質量%以下である。
【0046】
負極活物質層122の厚さは、好ましくは、3.0μm以上100.0μm以下であり、10.0μm以上70.0μm以下であり、20.0μm以上60.0μm以下である。
【0047】
1.2.セパレータ
本実施形態のセパレータ130は、セパレータ本体132の負極120側の面上に接着層131を備える。セパレータ130としては、正極110と負極120とを物理的及び/又は電気的に隔離する機能、及びリチウムイオンのイオン伝導性を確保する機能を有するものであれば、特に限定されない。そのような機能を有するために、セパレータ本体132の材料としては、例えば、絶縁性の多孔質部材、ポリマー電解質、ゲル電解質、及び無機固体電解質が挙げられ、典型的には絶縁性を有する多孔質の部材、ポリマー電解質、及びゲル電解質からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。また、セパレータ本体132として、1種の部材を単独で用いてもよく、2種以上の部材を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
セパレータ本体132としては、好ましくは絶縁性の多孔質部材、ポリマー電解質、又はゲル電解質を1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いる。なお、セパレータ本体132として絶縁性の多孔質部材を単独で用いる場合、リチウム2次電池100は電解液を更に備える必要がある。
【0049】
上記のポリマー電解質としては、特に限定されないが、例えば高分子及び電解質を主に含む固体ポリマー電解質、並びに高分子、電解質、及び可塑剤を主に含む半固体ポリマー電解質が挙げられる。
上記のゲル電解質としては、特に限定されないが、例えば高分子及び液体電解質(すなわち、溶媒と電解質)を主に含むものが挙げられる。
【0050】
ポリマー電解質及びゲル電解質が含み得る高分子としては、特に限定されないが、例えばエーテル及びエステル等の酸素原子を含む官能基、ハロゲン基、並びにシアノ基のような極性基を含む高分子が挙げられる。具体的には、ポリエチレンオキサイド(PEO)のような主鎖及び/又は側鎖にエチレンオキサイドユニットを有する樹脂、ポリプロピレンオキサイド(PPO)のような主鎖及び/又は側鎖にプロピレンオキサイドユニットを有する樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリシロキサン、ポリホスファゼン、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、ポリ乳酸、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、及びポリテトラフロロエチレンが挙げられる。上記のような樹脂は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0051】
ポリマー電解質及びゲル電解質に含まれる電解質としては、Li、Na、K、Ca、及びMgの塩等が挙げられる。典型的には本実施形態において、ポリマー電解質及びゲル電解質はリチウム塩を含む。
リチウム塩としては、特に限定されないが、例えば、LiI、LiCl、LiBr、LiF、LiBF、LiPF、LiAsF、LiSOCF、LiN(SOF)、LiN(SOCF、LiN(SOCFCF、LiB(O、LiB(C、LiB(O)F、LiB(OCOCF、LiNO、及びLiSOが挙げられ、好ましくはLiPF、LiN(SOF)、LiN(SOCF、及びLiN(SOCFCFからなる群より選択される少なくとも1種である。上記のような塩、又はリチウム塩は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0052】
ポリマー電解質及びゲル電解質における高分子とリチウム塩との配合比は、高分子の有する極性基と、リチウム塩の有するリチウム原子の比によって定めてもよい。例えば高分子が酸素原子を有する場合、高分子の有する酸素原子の数と、リチウム塩の有するリチウム原子の数の比([Li]/[O])によって定めてもよい。ポリマー電解質及びゲル電解質において、高分子とリチウム塩との配合比は、上記比([Li]/[O])が、例えば、0.02以上0.20以下、0.03以上0.15以下、又は0.04以上0.12以下になるように調整することができる。
【0053】
ゲル電解質に含まれる溶媒としては、特に限定されないが、例えば後述する電解液に含まれ得る溶媒を、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましい溶媒の例についても後述する電解液におけるものと同様である。
半固体ポリマー電解質に含まれる可塑剤としては、特に限定されないが、例えばゲル電解質に含まれ得る溶媒と同様の成分、及び種々のオリゴマーが挙げられる。
【0054】
セパレータ本体132が絶縁性の多孔質部材を含む場合、かかる部材の細孔にイオン伝導性を有する物質が充填されることにより、かかる部材はイオン伝導性を発揮する。よって、本実施形態においては、例えば本実施形態の電解液、及び本実施形態の電解液を含むゲル電解質等が充填される。
【0055】
絶縁性の多孔質部材を構成する材料としては、特に限定されず、例えば絶縁性高分子材料が挙げられ、具体的には、ポリエチレン(PE)、及びポリプロピレン(PP)が挙げられる。すなわち、セパレータ本体132は、多孔質のポリエチレン(PE)膜、多孔質のポリプロピレン(PP)膜、又はこれらの積層構造であってよい。
【0056】
1.2.1.接着層
セパレータ本体132は、セパレータ本体132の負極120側の面上に接着層131を備える。また、セパレータ本体132の両面上に接着層131を備えることが好ましい。
【0057】
接着層131は多孔質であり、特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアミド、スチレンブタジエンゴムとカルボキシメチルセルロースの合材(SBR-CMC)、及びポリアクリル酸(PAA)のようなバインダーを含むものが好ましく、この中でも、PVdFがより好ましい。接着層131は、上記バインダーにシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、水酸化マグネシウム等の無機粒子を添加させてもよい。
【0058】
バインダーの含有量は、接着層131の総量に対して、特に限定されないが、例えば、80質量%以上100質量%以下であり、90質量%以上100質量%以下であり、100質量%である。また、接着層131は実質的にバインダーからなってもよい。また、接着層131は、アルミナ、チタニア、ジルコニア、水酸化マグネシウム等の無機粒子を含んでもよい。無機粒子を含む場合、バインダーの含有量は、接着層131の総量に対して、好ましくは、10.0質量%以上90.0質量%以下であり、20.0質量%以上80.0質量%以下であり、30.0質量%以上70.0質量%以下である。
【0059】
接着層131の厚さは、好ましくは、0.1μm以上5.0μm以下であり、0.3μm以上4.0μm以下であり、0.5μm以上3.0μm以下である。
【0060】
接着層131を含めたセパレータ130の厚さとしては、特に限定されないが、例えば、1.0μm以上40.0μm以下である。リチウム2次電池100において、正極110と負極120とを確実に隔離しつつ、電池におけるセパレータ130の占める体積を減少させる観点から、セパレータ130の厚さは、好ましくは、3.0μm以上30.0μm以下であり、4.0μm以上25.0μm以下であり、5.0μm以上20.0μm以下である。
【0061】
本実施形態のリチウム2次電池100は、樹脂層121bと金属層121aとの間の25℃における剥離強度xが、0.05N/cm以上であり、好ましくは、0.05N/cm以上2.00N/cm以下であり、0.06N/cm以上1.50N/cm以下であり、0.07N/cm以上1.45N/cm以下であり、0.08N/cm以上1.40N/cm以下であり、0.09N/cm以上1.35N/cm以下である。25℃における剥離強度xが上記範囲内であることにより、リチウム2次電池100の容量維持率が向上する傾向にある。
【0062】
25℃における剥離強度xは、樹脂層121b上に金属層121aを設ける際の方法や、樹脂層121bの樹脂の種類、組成等により調整できる。また、上記方法の調整とは、特に限定されないが、例えば、蒸着やめっきなど複数の方法により金属層121aを設け、その複数の方法を行う時間や順番等を調製することが挙げられる。
【0063】
本実施形態のリチウム2次電池100は、負極活物質層122とセパレータ130との間の25℃における剥離強度yが、好ましくは、0.06N/cm以上であり、0.07N/cm以上であり、0.06N/cm以上2.00N/cm以下であり、0.07N/cm以上1.75N/cm以下であり、0.08N/cm以上1.50N/cm以下であり、0.09N/cm以上1.40N/cm以下であり、0.10N/cm以上1.35N/cm以下であり、0.11N/cm以上1.30N/cm以下であり、0.12N/cm以上1.25N/cm以下であり、0.13N/cm以上1.20N/cm以下であり、0.14N/cm以上1.10N/cm以下である。25℃における剥離強度yが上記範囲内であることにより、リチウム2次電池100の容量維持率がより向上する傾向にある。
【0064】
25℃における剥離強度yは、負極活物質層122に含まれる材料の種類及び組成や接着層131に含まれる材料の種類及び組成等により調整できる。
【0065】
本実施形態のリチウム2次電池100は、金属層121aと負極活物質層122との間の25℃における剥離強度zが、好ましくは、0.30N/cm以上であり、0.30N/cm以上3.00N/cm以下であり、0.35N/cm以上2.50N/cm以下である。25℃における剥離強度zが上記範囲内であることにより、リチウム2次電池100の容量維持率がより向上する傾向にある。
【0066】
25℃における剥離強度zは、負極活物質層122に含まれる材料の種類及び組成や金属層121aに含まれる金属の種類及び組成等により調整できる。
【0067】
本実施形態のリチウム2次電池100は、負極活物質層122とセパレータ130との間の25℃における剥離強度yが、25℃における剥離強度xとの関係で、x<yを満たす。25℃における剥離強度xと25℃における剥離強度yとが上記関係性を満たすことにより、リチウム2次電池100の容量維持率が向上する傾向にある。
【0068】
また、本実施形態のリチウム2次電池100は、25℃における剥離強度yが、25℃における剥離強度xとの関係で、y>0.1+0.5xを満たすことが好ましい。25℃における剥離強度xと25℃における剥離強度yとが上記関係性を満たすことにより、リチウム2次電池100の容量維持率がより向上する傾向にある。
【0069】
また、本実施形態のリチウム2次電池100は、25℃における剥離強度x、25℃における剥離強度y、及び25℃における剥離強度zが、x<y<(z/2)を満たすことが好ましい。リチウム2次電池100の負極120の中で、電子の授受が行われるのは、金属層121aと負極活物質層122との間であり、この間で剥離が生じると、電池の容量維持率等の性質が顕著に悪化する傾向にある。そのため、25℃における剥離強度zが、25℃における剥離強度x及び25℃における剥離強度yに比べて十分大きい場合、金属層121aと負極活物質層122との間で剥離が生じることが防げ、リチウム2次電池100の容量維持率がより向上する傾向にある。
【0070】
なお、25℃における剥離強度x、25℃における剥離強度y、及び25℃における剥離強度zが、x≧0.05N/cm及びx<y<(z/2)を満たすとき、xは、好ましくは、0.09N/cm以上であり、0.05N/cm以上2.00N/cm以下であり、0.06N/cm以上1.50N/cm以下であり、0.07N/cm以上1.45N/cm以下であり、0.08N/cm以上1.40N/cm以下であり、0.09N/cm以上1.35N/cm以下である。
【0071】
また、25℃における剥離強度x、25℃における剥離強度y、及び25℃における剥離強度zが、x≧0.05N/cm及びx<y<(z/2)を満たすとき、zは、好ましくは、0.30N/cm以上であり、0.30N/cm以上3.00N/cm以下であり、0.35N/cm以上2.50N/cm以下である。
【0072】
25℃における剥離強度x、25℃における剥離強度y、及び25℃における剥離強度zは、温度を25℃として、JIS K 6854-2:1999の180度はく離によるはく離接着強さ試験方法に準じて測定することができる。
【0073】
なお、本実施形態においては、剥離強度を測定する温度として、25℃を用いる。この点、リチウム2次電池の仕様によっては、リチウム2次電池の充電時又は放電時に25℃よりも高い又は低い温度になることも想定される。しかしながら、仮に実際のリチウム2次電池の充電時又は放電時の温度が25℃ではなく、これよりも高い又は低い温度であるとしても、25℃を基準として測定される剥離強度が所定の範囲を満たすことにより、樹脂層121bと金属層121aとの間の接着性、負極活物質層122とセパレータ130との間の接着性、及び金属層121aと負極活物質層122との間の接着性は向上し、結果としてリチウム2次電池100の容量維持率が向上するといえる。
【0074】
1.3.正極
本実施形態の正極110としては、一般的にリチウム2次電池に用いられるものであれば特に限定されず、リチウム2次電池の用途によって、公知の材料を適宜選択することができる。電池の安定性及び出力電圧を向上させる観点から、正極110は、正極集電体111と正極活物質層112とを備えることが好ましい。
【0075】
正極110の平均厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm以上100μm以下であり、20μm以上90μm以下であり、30μm以上80μm以下であり、40μm以上70μm以下である。ただし、正極30の平均厚さは、所望する電池の容量に応じて適宜調整することができる。
【0076】
1.3.1.正極集電体
本実施形態の正極集電体111は、リチウム2次電池においてリチウムと反応しない金属を有していれば特に限定されない。そのような金属としては、例えば、アルミニウムが挙げられる。また、本実施形態の正極集電体111は、上述の金属を含む金属層のみを備える単層構造でもよく、樹脂層と、該樹脂層の両面に設けられた上述の金属を含む金属層とを備える複層構造でもよい。
【0077】
正極集電体111が複層構造をとる場合、金属層を構成する金属は、リチウム2次電池においてリチウムと反応しない金属であれば特に限定されず、そのような金属としては、例えば、アルミニウムが挙げられる。
【0078】
金属の含有量は、金属層の総量に対して、好ましくは、80質量%以上100質量%以下であり、90質量%以上100質量%以下であり、95質量%以上100質量%以下であり、100質量%である。また、実質的に金属からなることが好ましい。
【0079】
正極集電体111が複層構造をとる場合、金属層の厚さは、好ましくは、0.1μm以上4.0μm以下であり、0.2μm以上3.0μm以下であり、0.3μm以上2.5μm以下であり、0.4μm以上2.0μm以下である。
【0080】
正極集電体111が複層構造をとる場合、樹脂層を構成する樹脂は、負極集電体121の樹脂層121bと同様のものが挙げられる。また、樹脂層は、所望の物性に応じて適宜その他の添加剤を含んでもよく、その他の添加剤としては、負極集電体121の樹脂層121bと同様のものが挙げられる。また、樹脂層における樹脂の含有量は、負極集電体121の樹脂層121bにおける樹脂の含有量と同様であってよい。また、樹脂層の厚さは、負極集電体121の樹脂層121bの厚さと同様であってよい。
【0081】
1.3.2.正極活物質層
本実施形態の正極活物質層112は正極活物質を含む。正極活物質とは、正極において電極反応、すなわち酸化反応及び還元反応を生じる物質である。具体的には、本実施形態の正極活物質としてはリチウム元素(典型的には、リチウムイオン)のホスト物質が挙げられる。
【0082】
そのような正極活物質としては、特に限定されないが、例えば、金属酸化物及び金属リン酸塩が挙げられる。金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、酸化コバルト系化合物、酸化マンガン系化合物、及び酸化ニッケル系化合物が挙げられる。上記金属リン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、リン酸鉄系化合物、及びリン酸コバルト系化合物が挙げられる。典型的な正極活物質としては、LiCoO、LiNiCoMn(x+y+z=1)、LiNiCoAl(x+y+z=1)、LiNiMn(x+y=1)、LiNiO、LiMn、LiFePO、LiCoPO、LiFeOF、LiNiOF、及びLiTiSが挙げられる。正極活物質は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0083】
正極活物質の含有量は、正極活物質組成物の総量に対して、特に限定されないが、例えば、60質量%以上100質量%以下であり、70質量%以上99質量%以下であり、80質量%以上99質量%以下であり、85質量%以上99質量%以下であり、90質量%以上99質量%以下である。
【0084】
本実施形態の正極活物質層112は、バインダーを含んでもよい。バインダーを含むことにより、正極活物質層112が正極集電体111により結着しやすくなる傾向にある。
【0085】
本実施形態のバインダーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン;ポリフッ化ビニリデンに水酸基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、フェニル基、メチル基等の官能基を導入した変性ポリフッ化ビニリデン;ポリテトラフルオロエチレン;ポリテトラフルオロエチレンに水酸基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、フェニル基、メチル基等の官能基を導入した変性ポリテトラフルオロエチレン;テトラフルオロエチレンを構成単位として有するブロック共重合体、ランダム共重合体、又はグラフト共重合体;スチレンブタジエンゴム;カルボキシメチルセルロース;アクリル樹脂;ポリイミド樹脂等が挙げられる。バインダーは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0086】
バインダーの含有量は、正極活物質層112の総量に対して、特に限定されないが、例えば、0.5質量%以上10.0質量%以下であり、0.5質量%以上8.0質量%以下であり、0.5質量%以上6.0質量%以下である。
【0087】
本実施形態の正極活物質層112は、導電助剤を含んでもよい。導電助剤としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー(CF)、及びアセチレンブラックが挙げられる。導電助剤は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0088】
導電助剤の含有量は、正極活物質層112の総量に対して、特に限定されないが、例えば、0.5質量%以上30.0質量%未満である。
【0089】
本実施形態のリチウム2次電池100は、正極110、セパレータ130及び負極120のセットが複数セット積層される積層体を備えてもよい。このセットを複数セット積層される積層体を備えることにより、電池の性能が向上する傾向にある。
【0090】
1.4.電解液
本実施形態のリチウム2次電池100は、電解液を含むことが好ましい。電解液としては、溶媒及び電解質を含む液体であり、イオン電導性を有するものであれば、特に限定されない。電解液は、セパレータ130に浸潤させてもよく、負極120、セパレータ130、正極110の積層体と共に電解液を封入したものをリチウム2次電池100の完成品としてもよい。
【0091】
電解液に含まれる電解質としては、ポリマー電解質及びゲル電解質に含まれ得る電解質、特に上述のリチウム塩を1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。好ましいリチウム塩は、ポリマー電解質及びゲル電解質におけるものと同様である。
【0092】
電解液に含まれる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、鎖状カーボネート、環状カーボネート、鎖状エーテル、及びこれらの溶媒以外のその他の溶媒が挙げられる。溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0093】
鎖状カーボネートとは、芳香環、脂環、単素環、複素環等の環状構造を有さないカーボネートである。鎖状カーボネートとしては、特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、及びこれらのカーボネートの水素の一部又は全てがフッ素に置換した化合物が挙げられる。
【0094】
環状カーボネートとは、芳香環、脂環、単素環、複素環等の環状構造を有するカーボネートである。環状カーボネートとしては、特に限定されないが、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、及びこれらのカーボネートの水素の一部又は全てがフッ素に置換した化合物が挙げられる。
【0095】
鎖状エーテルとは、芳香環、脂環、単素環、複素環等の環状構造を有さないエーテルである。鎖状エーテルとしては、特に限定されないが、例えば、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジメトキシプロパン、ジメトキシブタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
【0096】
その他の溶媒としては、特に限定されないが、例えば、アセトニトリル、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、12-クラウン-4、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテルの誘導体、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテルの誘導体、及び1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテルの誘導体が挙げられる。
【0097】
鎖状カーボネート及び環状カーボネートの総量は、溶媒の総量に対して、特に限定されないが、例えば、40体積%以上100体積%以下であり、60体積%以上100体積%以下であり、80体積%以上100体積%以下である。
【0098】
鎖状エーテルの含有量は、溶媒の総量に対して、特に限定されないが、例えば、5体積%以上40体積%以下であり、10体積%以上30体積%以下である。また、溶媒は、鎖状エーテルを含まなくてもよい。
【0099】
その他の溶媒の含有量は、溶媒の総量に対して、特に限定されないが、例えば、1体積%以上10体積%以下である。また、溶媒は、その他の溶媒を含まなくてもよい。
【0100】
本実施形態の電解液は、添加剤を含むことが好ましい。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)が挙げられる。
【0101】
添加剤の含有量は、溶媒の総量に対して、特に限定されないが、例えば、0.1質量%以上5.0質量%以下である。
【0102】
2.リチウム2次電池の使用
リチウム2次電池100の例示的な使用態様について説明する。リチウム2次電池100の例示的な使用態様においては、正極集電体111及び負極集電体121に、電池を外部回路に接続するための正極端子および負極端子がそれぞれ接合される。リチウム2次電池100は、負極端子を外部回路の一端に、正極端子を外部回路のもう一端に接続して充放電が行われる。正極端子及び負極端子において、負極端子(負極)から外部回路を通り正極端子(正極)へと電流が流れるような電圧を印加することでリチウム2次電池100が充電される。充電後のリチウム2次電池については、所望の外部回路を介して正極端子及び負極端子を接続するとリチウム2次電池が放電される。
【0103】
3.リチウム2次電池の製造方法
本実施形態のリチウム2次電池100の製造方法は、樹脂層121bと、該樹脂層121bの両面に設けられた金属層121aとを備える負極集電体121を準備する負極集電体準備工程と、負極集電体121上に負極活物質層122を形成して、負極120を作製する負極作製工程と、負極活物質層122が、接着層131を備えるセパレータ130を介して正極110と対向し、且つ、接着層131が負極活物質層122と隣接するように、負極120、正極110、及びセパレータ130を配置して積層体を作製する積層体作製工程と、上記積層体を加熱しながら加圧するヒートプレス工程と、を含み、リチウム2次電池100において、樹脂層121bと金属層121aとの間の25℃における剥離強度xが、0.05N/cm以上であり、負極活物質層122とセパレータ130との間の25℃における剥離強度yが、x<yを満たす。
【0104】
以下、本実施形態のリチウム2次電池100の製造方法について詳説する。
【0105】
3.1.負極集電体準備工程
本実施形態の負極集電体準備工程では、樹脂層121bと、該樹脂層121bの両面に設けられた金属層121aとを備える負極集電体121を準備する。負極集電体121は、市販されている製品を使用してもよく、種々の材料から作製してもよい。負極集電体121を作製する場合、その方法としては、樹脂層121bの両面に、蒸着、スパッタリング、電解めっき等のめっき、又は接着剤などで金属層121aを形成することが挙げられる。これらの手法の中でも、蒸着、めっきが好ましく、蒸着後にめっきすることがより好ましい。樹脂層121bの両面に金属を蒸着し、その後、めっきすることで、樹脂層121bの両面に金属層121aを設けて、負極集電体121を作製することが好ましい。
【0106】
樹脂層121bに金属層121aを蒸着する方法としては、特に限定されないが、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法が挙げられる。
【0107】
3.2.負極作製工程
本実施形態の負極作製工程では、負極集電体121上に負極活物質層122を形成する。負極集電体121上に負極活物質層122を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、必要に応じて、負極活物質及び負極活物質以外の、バインダー、導電助剤、及びその他の添加剤等を混合して負極活物質組成物を得る。負極活物質又は得られた負極活物質組成物を、負極集電体121の両面又は片面に塗布し、プレス成形して、負極集電体121の両面又は片面に負極活物質層122を形成し、成形体を得る。得られた成形体を打ち抜き加工により、所定の形状に打ち抜き、本実施形態の負極120を作製する。
【0108】
負極集電体121上に負極活物質層122を形成する他の方法としては、例えば、負極活物質組成物に熱硬化性化合物を含ませて加熱することで硬化させる方法、負極活物質組成物に光硬化性化合物を含ませて光照射することで硬化させる方法、負極活物質組成物を2液硬化型組成物として、2液混合することで硬化させる方法、等が挙げられる。
【0109】
3.3.積層体作製工程
本実施形態の積層体作製工程では、負極活物質層122が、接着層131を備えるセパレータ130を介して正極110と対向し、且つ、接着層131が負極活物質層122と隣接するように、負極120、正極110、及びセパレータ130を配置して積層体を作製する。
【0110】
セパレータ130は、両面に接着層131を有することが好ましく、その場合は、一方の接着層131は負極活物質層122と隣接し、他方の接着層131は正極活物質層112と隣接する。
【0111】
3.4.ヒートプレス工程
本実施形態のヒートプレス工程では、上記積層体を加熱しながら加圧する。ヒートプレス工程としては、上記積層体を電解液と共に密閉容器に封入する前に行う注液前ヒートプレス工程;上記積層体を電解液と共に密閉容器に封入した後に行う注液後ヒートプレス工程;上記積層体を電解液と共に密閉容器に封入し、その後60℃以下の温度で充電しながら行う充電中ヒートプレス工程が挙げられる。ヒートプレス工程を行うことにより、リチウム2次電池100の各層間の接着強度をより向上できる傾向にある。
【0112】
ヒートプレス工程において、電池の表面温度が50℃以上150℃以下になるように加熱することが好ましく、電池の表面温度が55℃以上120℃以下になるように加熱することがより好ましい。
【0113】
ヒートプレス工程において、250kPa以上2000kPa以下で加圧することが好ましく、300kPa以上1750kPa以下で加圧することがより好ましい。
【0114】
3.5.密閉工程
本実施形態のリチウム2次電池100の製造方法は、密閉工程を有してもよい。密閉工程では、上記積層体を密閉容器に封入して、リチウム2次電池100を得る。密閉容器としては、特に限定されないが、例えば、ラミネートフィルムが挙げられる。また、上記積層体を密閉容器に封入する際、電解液と共に封入してもよい。
【0115】
3.6.正極作製工程
本実施形態のリチウム2次電池100の製造方法は、正極作製工程を有してもよい。正極作製工程では、正極集電体111上に正極活物質層112を形成する。正極集電体111上に正極活物質層112を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、必要に応じて、正極活物質及び負正極活物質以外の、バインダー、導電助剤、及びその他の添加剤等を混合して正極活物質組成物を得る。正極活物質又は得られた正極活物質組成物を、正極集電体111の両面又は片面に塗布し、プレス成形して、正極集電体111の両面又は片面に正極活物質層112を形成し、成形体を得る。得られた成形体を打ち抜き加工により、所定の形状に打ち抜き、本実施形態の正極110を作製する。
【0116】
正極集電体111上に正極活物質層112を形成する他の方法としては、例えば、正極活物質組成物に熱硬化性化合物を含ませて加熱することで硬化させる方法、正極活物質組成物に光硬化性化合物を含ませて光照射することで硬化させる方法、正極活物質組成物を2液硬化型組成物として、2液混合することで硬化させる方法、等が挙げられる。
【0117】
なお、正極集電体111が、樹脂層と、該樹脂層の両面に設けられた金属層とを備える場合、正極集電体111は、市販されている製品を使用してもよく、種々の材料から作製してもよい。正極集電体111を作製する場合、その方法としては、負極集電体121を作製する方法と同様の方法が挙げられる。
【0118】
3.7.その他の工程
本実施形態のリチウム2次電池100の製造方法は、その他の工程を有してもよい。その他の工程としては、特に限定されないが、例えば、リチウム2次電池100に、所望の機能を付与するための機能層を形成する工程が挙げられる。
【実施例
【0119】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。また、特に記載がない限り、室温(25℃)、1気圧で行われた。
【0120】
1.リチウム2次電池の作製
以下のようにして、実施例1のリチウム2次電池を作製した。
【0121】
1.1.負極の作製
負極集電体であるCC1として、樹脂層である4.5μm厚のフィルム状のポリプロピレン(PP)の両面に金属層であるCu層を1.0μm厚となるように形成したものを準備した。真空蒸着によって0.10μm厚のCu層を形成した後、電解めっきによって更に0.90μm厚のCu層を形成することにより、1.0μm厚のCu層を形成した。
【0122】
溶剤としての水に、負極活物質として99.0質量部の人造黒鉛、バインダーとして0.5質量部のスチレンブタジエンゴム(SBR)及び0.5質量部のカルボキシメチルセルロース(CMC)を混合して負極活物質組成物を準備した。この負極活物質組成物を負極集電体の片面にそれぞれ目付が15mg/cmとなるように塗布、押圧して、負極集電体の片面に負極活物質層を形成し、成型体を得た。この成型体を所定のサイズ(縦横4.5×4.5cm)に切り抜いた。これにより負極を得た。
【0123】
1.2.正極の作製
正極集電体として、厚さ12μmのアルミ箔を用いた。そして、溶剤としてのN-メチル-ピロリドン(NMP)に、正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1を96質量部、導電助剤としてアセチレンブラック及びカーボンナノチューブをそれぞれ1質量部、及びバインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を2質量部混合した正極活物質組成物を準備した。この正極活物質組成物を正極集電体の片面にそれぞれ目付が23mg/cmで塗布、押圧して、正極集電体の片面に正極活物質層を形成し、成型体を得た。この成型体を所定のサイズ(縦横4×4cm)に切り抜いた。
【0124】
1.3.セパレータの準備
ポリエチレン微多孔膜のシート(厚み:8μm、縦横5×5cm)をセパレータ本体として準備した。そして、セパレータ本体の両面にポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む接着層を厚さ2μmで形成した。セパレータの厚さは、12μmであった。
【0125】
1.4.電解液の調整
30体積%のエチレンカーボネート(EC)、35体積%のジメチルカーボネート(DMC)及び35体積%のエチルメチルカーボネート(EMC)を混合し、100体積%の混合溶媒を用意した。この混合溶媒に、濃度が1MとなるようにLiPFを溶解させ、さらに、ビニレンカーボネート(VC)及びLiPOを溶解させて、電解液を得た。VCは、混合溶媒の総質量(すなわち、VC、LiPO及びLiPFを含まないEC、DMC及びEMCの総質量)に対して、2質量%であった。LiPOは、混合溶媒の総質量に対して、1質量%であった。
【0126】
1.5.電池の組み立て
次いで、正極、セパレータ、及び負極を、負極活物質層がセパレータを介して正極活物質層と対向するように配置して積層体を得た。さらに正極集電体及び負極集電体に、それぞれ100μmのAl端子及び100μmのNi端子を超音波溶接で接合した後、ラミネートの外装体に挿入した。次いで、上記の電解液を上記の外装体に注入した。外装体を封止することにより、リチウム2次電池を得た。
【0127】
1.6.ヒートプレス
上述のようにして得られた、電解液が注入済みのリチウム2次電池に対して、高温熱プレス機を使用し、注液後ヒートプレスを実施した。注液後ヒートプレスは、350kPaで加圧しながら、電池表面の温度が60℃に到達後、3分間にわたって加熱して実施した。
【0128】
表1に記載の負極集電体及び負極活物質組成物を用いて、接着層を用いる場合は表1に記載の接着層を用いて、注液後ヒートプレスを行う場合は表1に記載のヒートプレス条件でヒートプレスを行ったこと以外は、実施例1と同様にして実施例2~8及び比較例1~7のリチウム2次電池を得た。
【0129】
なお、負極集電体であるCC2~CC5は以下のように準備した。
【0130】
CC2として、樹脂層である4.5μm厚のフィルム状のポリプロピレン(PP)の両面に金属層であるCu層を1.0μm厚となるように形成したものを準備した。真空蒸着によって0.20μm厚のCu層を形成した後、電解めっきによって更に0.80μm厚のCu層を形成することにより、1.0μm厚のCu層を形成した。
【0131】
CC3として、樹脂層である4.5μm厚のフィルム状のポリエチレン(PE)の両面に金属層であるCu層を1.0μm厚となるように形成したものを準備した。真空蒸着によって0.20μm厚のCu層を形成した後、電解めっきによって更に0.80μm厚のCu層を形成することにより、1.0μm厚のCu層を形成した。
【0132】
CC4として、樹脂層である4.5μm厚のフィルム状のポリエチレンテレフタラート(PET)の両面に金属層であるCu層を1.0μm厚となるように形成したものを準備した。真空蒸着によって0.20μm厚のCu層を形成した後、電解めっきによって更に0.80μm厚のCu層を形成することにより、1.0μm厚のCu層を形成した。
【0133】
CC5として、樹脂層である4.5μm厚のフィルム状のポリプロピレン(PP)の両面に金属層であるCu層を1.0μm厚となるように形成したものを準備した。真空蒸着によって0.05μm厚のCu層を形成した後、電解めっきによって更に0.95μm厚のCu層を形成することにより、1.0μm厚のCu層を形成した。
【0134】
25℃における剥離強度x、y、zは、温度25℃の環境において、JIS K 6854-2:1999の180度はく離によるはく離接着強さ試験方法に準じて測定した。具体的には、以下のように測定した。ヒートプレスを行う場合はヒートプレス後のリチウム2次電池を使用して測定した。ヒートプレスを行わない場合は組み立てた後のリチウム2次電池を使用して測定した。必要に応じて、上記リチウム2次電池を分解して25℃における剥離強度x、y、zを測定した。
25℃における剥離強度xの測定では、金属層に幅15mmのテープを貼り付けて、このテープを180°折り曲げて引っ張り、金属層を樹脂層から剥がした。金属層を樹脂層から剥がす際に印加した力から剥離強度x(N/cm)を求めた。
25℃における剥離強度yの測定では、負極活物質層に幅15mmのテープを貼り付けて、このテープを180°折り曲げて引っ張り、負極活物質層をセパレータから剥がした。負極活物質層をセパレータから剥がす際に印加した力から剥離強度y(N/cm)を求めた。
25℃における剥離強度zの測定では、負極活物質層に幅15mmのテープを貼り付けて、このテープを180°折り曲げて引っ張り、負極活物質層を金属層から剥がした。負極活物質層を金属層から剥がす際に印加した力から剥離強度z(N/cm)を求めた。
なお、剥離強度の試験で用いたテープは十分に接着力が強く、一方の層をもう一方の層から剥がす際に、テープは一方の層に完全に密着して接着していた。例えば、25℃における剥離強度xを測定するために、金属層を樹脂層から剥がす際に、テープは金属層に完全に密着して接着していた。
【0135】
表中、剥離強度関係式1とは、x<yであり、剥離強度関係式2とは、x<y<(z/2)である。また、表中、蒸着層/めっき層の厚さの欄は、負極集電体の金属層における、蒸着層及びめっき層の厚さを表す。
【0136】
2.評価
以下では、作製したリチウム2次電池を、最初にCC充電することを「初期充電」ともいい、最初にCC放電することを「初期放電」ともいう。なお、CC充電とは、一定の電流値で行う充電であり、CC放電とは、一定の電流値で行う放電である。また、1Cの電流とは、電池の理論容量に基づいて算出された、その電池を1時間で完全に充電することができる電流である。2Cの電流は、1Cの電流の2倍の大きさである。
【0137】
2.1.容量維持率
実施例及び比較例のリチウム2次電池を、温度25℃の環境において、350kPaで加圧して、0.1Cの電流で、電圧が4.2Vになるまで初期充電した後、0.1Cの電流で、電圧が3.0Vになるまで初期放電した。次いで、実施例及び比較例のリチウム2次電池を、温度25℃の環境において、無加圧で、1.0Cの電流で、電圧が4.2VになるまでCC充電した後、1.0Cの電流で、電圧が3.0VになるまでCC放電するサイクルを実施し、このCC放電から放電容量(1サイクル目)を求めた。そして、このサイクルを100サイクル実施し、100サイクル目のCC放電から放電容量(100サイクル目)を求めた。そして、放電容量(100サイクル目)を、放電容量(1サイクル目)で除して100をかけることにより、100サイクル目容量維持率を求めた。この値を、表1の容量維持率の欄に示す。
【0138】
【表1】
【0139】
3.評価結果
表1から、正極110と、セパレータ130と、負極集電体121及び該負極集電体121上の負極活物質層122を含む負極120と、を備え、負極集電体121が、樹脂層121bと、該樹脂層121bの両面に設けられた金属層121aと、を備え、負極活物質層122が、セパレータ130を介して正極110と対向し、セパレータ130が、負極120側の面上に接着層131を備え、樹脂層121bと金属層121aとの間の25℃における剥離強度xが、0.05N/cm以上であり、負極活物質層122とセパレータ130との間の25℃における剥離強度yが、x<yを満たす、リチウム2次電池での実施例が、そうでないリチウム2次電池の比較例と比較して、良好な容量維持率を示すことがわかる。
【0140】
<付記>
本開示の実施形態は、以下の態様を含む。
[1]
正極と、セパレータと、負極集電体及び該負極集電体上の負極活物質層を含む負極と、を備え、
前記負極集電体が、樹脂層と、該樹脂層の両面に設けられた金属層と、を備え、
前記負極活物質層が、前記セパレータを介して前記正極と対向し、
前記セパレータが、前記負極側の面上に接着層を備え、
前記樹脂層と前記金属層との間の25℃における剥離強度xが、0.05N/cm以上であり、
前記負極活物質層と前記セパレータとの間の25℃における剥離強度yが、x<yを満たす、
リチウム2次電池。
[2]
前記25℃における剥離強度yが、0.07N/cm以上である、
[1]に記載のリチウム2次電池。
[3]
前記剥離強度x及び前記剥離強度yが、y>0.1+0.5xを満たす、
[1]又は[2]に記載のリチウム2次電池。
[4]
前記樹脂層が、ポリプロピレンを含み、
前記金属層が、銅を含む、
[1]~[3]のいずれかに記載のリチウム2次電池。
[5]
前記接着層が、ポリフッ化ビニリデンを含む、
[1]~[4]のいずれかに記載のリチウム2次電池。
[6]
前記負極活物質層と前記金属層との間の25℃における剥離強度z、前記25℃における剥離強度x、及び前記25℃における剥離強度yが、x<y<(z/2)を満たす、
[1]~[5]のいずれかに記載のリチウム2次電池。
[7]
前記25℃における剥離強度xが、0.09N/cm以上である、
[1]~[6]のいずれかに記載のリチウム2次電池。
[8]
前記25℃における剥離強度zが、0.30N/cm以上である、
[6]又は[7]に記載のリチウム2次電池。
[9]
前記正極、前記セパレータ及び前記負極のセットが複数セット積層される積層体を備える、
[1]~[8]のいずれかに記載のリチウム2次電池。
[10]
前記金属層は、前記樹脂層上に設けられた蒸着層と、前記蒸着層上に設けられためっき層とを備える、
[1]~[9]のいずれかに記載のリチウム2次電池。
[11]
リチウム2次電池の製造方法であって、
樹脂層と、該樹脂層の両面に設けられた金属層とを備える負極集電体を準備する負極集電体準備工程と、
前記負極集電体上に負極活物質層を形成して、負極を作製する負極作製工程と、
前記負極活物質層が、接着層を備えるセパレータを介して正極と対向し、且つ、前記接着層が前記負極活物質層と隣接するように、前記負極、前記正極、及び前記セパレータを配置して積層体を作製する積層体作製工程と、
前記積層体を加熱しながら加圧するヒートプレス工程と、を含み、
前記リチウム2次電池において、
前記樹脂層と前記金属層との間の25℃における剥離強度xが、0.05N/cm以上であり、
前記負極活物質層と前記セパレータとの間の25℃における剥離強度yが、x<yを満たす、
リチウム2次電池の製造方法。
[12]
前記負極集電体準備工程において、前記樹脂層の両面に金属を蒸着し、その後、めっきすることで、前記樹脂層の両面に金属層を設けて、負極集電体を作製する、
[11]に記載のリチウム2次電池の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明のリチウム2次電池は軽量化、低コスト化、及び良好な容量維持率を両立させるため、様々な用途に用いられる蓄電デバイスとして、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0142】
100…リチウム2次電池、110…正極、111…正極集電体、112…正極活物質層、120…負極、121…負極集電体、121a…金属層、121b…樹脂層、122…負極活物質層、130…セパレータ、131…接着層、132…セパレータ本体
【要約】
本発明は、軽量化、低コスト化、及び良好な容量維持率を両立させるリチウム2次電池、及び該リチウム2次電池の製造方法を提供する。本発明は、正極と、セパレータと、負極集電体及び該負極集電体上の負極活物質層を含む負極と、を備え、前記負極集電体が、樹脂層と、該樹脂層の両面に設けられた金属層と、を備え、前記負極活物質層が、前記セパレータを介して前記正極と対向し、前記セパレータが、前記負極側の面上に接着層を備え、前記樹脂層と前記金属層との間の25℃における剥離強度xが、0.05N/cm以上であり、前記負極活物質層と前記セパレータとの間の25℃における剥離強度yが、x<yを満たす、リチウム2次電池に関する。
図1