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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】リチウム二次電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20240902BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240902BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240902BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240902BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240902BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20240902BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20240902BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240902BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/525
H01M4/505
H01M50/414
H01M10/0565
H01M4/139
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023513848
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-21
(86)【国際出願番号】 KR2021012734
(87)【国際公開番号】W WO2022060140
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0121824
(32)【優先日】2020-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジ・フン・リュ
(72)【発明者】
【氏名】ブム・ヨン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・フン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヨ・ミン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ウォン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヒ・カン
【審査官】岸 智之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/208958(WO,A1)
【文献】特表2019-530958(JP,A)
【文献】特表2015-537352(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0060522(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052
H01M 4/13
H01M 4/62
H01M 4/525
H01M 4/505
H01M 50/414
H01M 10/0565
H01M 4/139
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一面に位置して添加剤;及び正極活物質;を含む正極活物質層を含む正極;
負極;
前記正極及び前記負極間に介在する分離膜;及び
ゲルポリマー電解質を含み、
前記添加剤は、スクシノニトリル(Succinonitrile,SN)、プロパンスルトン(Propane sultone,PS)及びプロペンスルトン(Propene sultone,PRS)から選択される1種以上であり、
前記添加剤は、前記正極活物質層100重量部に対して、0.2重量部~5.0重量部含まれるものであり、
前記添加剤は、前記正極活物質層中で厚さ方向に均一に分布するものである、リチウム二次電池。
【請求項2】
前記添加剤は、前記正極活物質層100重量部に対して、0.5重量部~3.0重量部含まれるものである、請求項に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記正極活物質は、下記化学式1で表される組成を有するものである、請求項1または2に記載のリチウム二次電池:
[化学式1]
Lix[NiaCobM1cM2d]O2
上記化学式1において、
M1は、Mn及びAlから選択される1種以上であり、
M2は、B、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Fe、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、Mo、Ta及びWから選択される1種以上であり、
0.9≦x≦1.2、0.5≦a<1、0<b<0.5、0<c<0.5、0≦d≦0.1、a+b+c+d=1である。
【請求項4】
前記負極は、前記添加剤を含まないものである、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記分離膜は、多孔性高分子フィルムである、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
前記ゲルポリマー電解質は、位相角(phase angle,δ)値が45゜以上である、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
(A)正極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一面に位置してスクシノニトリル(Succinonitrile,SN)、プロパンスルトン(Propane sultone,PS)及びプロペンスルトン(Propene sultone,PRS)から選択される1種以上の添加剤;及び正極活物質;を含む正極活物質層を含む正極を準備するステップ;
(B)前記正極、負極、及び前記正極と前記負極間に介在する分離膜からなる電極組立体を電池ケースに挿入するステップ;
(C)前記電極組立体が挿入された電池ケース内にゲルポリマー電解質形成用組成物を注液し、その後前記ゲルポリマー電解質形成用組成物を硬化させてゲルポリマー電解質を形成するステップ;を含み、
前記添加剤は、前記正極活物質層100重量部に対して、0.2重量部~5.0重量部含まれるものであり、
前記添加剤は、前記正極活物質層中で厚さ方向に均一に分布するものである、リチウム二次電池製造方法。
【請求項8】
前記添加剤は、前記正極活物質層100重量部に対して、0.5重量部~3.0重量部含まれるものである、請求項に記載のリチウム二次電池製造方法。
【請求項9】
前記(A)ステップは、i)スクシノニトリル(Succinonitrile,SN)、プロパンスルトン(Propane sultone,PS)及びプロペンスルトン(Propene sultone,PRS)から選択される1種以上の添加剤;及び正極活物質;を含む正極活物質層形成用組成物を準備するステップ;及び
ii)集電体上に前記正極活物質層形成用組成物を塗布して乾燥して正極活物質層を形成するステップ;を含むものである、請求項に記載のリチウム二次電池製造方法。
【請求項10】
前記負極は、前記添加剤を含まないものである、請求項8または9に記載のリチウム二次電池製造方法。
【請求項11】
前記分離膜は、多孔性高分子フィルムである、請求項8から10のいずれか一項に記載のリチウム二次電池製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノートブックコンピュータ、電気自動車など電池を使用する電子機器の急速な普及に伴い、小型軽量であると共に相対的に高容量である二次電池の需要が急速に増大している。特に、リチウム二次電池は、軽量で高いエネルギー密度を有しており、携帯機器の駆動電源として脚光を浴びている。これにより、リチウム二次電池の性能向上のための研究開発努力が活発に行われている。
【0003】
リチウム二次電池は、リチウムイオンの挿入(intercalations)及び脱離(deintercalation)が可能な活物質を含む正極と負極との間でリチウムイオンが挿入/脱離される時の酸化・還元反応により電気エネルギーを生産する。リチウム二次電池の正極活物質としてはリチウム遷移金属酸化物が用いられ、負極活物質としてはリチウム金属、リチウム合金、結晶質炭素、非晶質炭素、炭素複合体などが用いられている。
【0004】
一般に、リチウム二次電池は、正極、負極及び分離膜が巻取又は積層された電極組立体が入っている電池ケースに液体状態の電解液を注入して二次電池を製造する。通常、リチウム二次電池は、液体状態の電解液を用いるので、電解液中の組成が均一に維持される。
【0005】
一方、電極の種類(正極又は負極)によって必要な電解液成分(ex.添加剤、溶媒など)が異なるにもかかわらず電解液中の組成が均一であるので、所望の電池性能を満たすためには不要に多くの添加剤、溶媒などを用いなければならないという問題があった。また、その場合、不要に多くの添加剤、溶媒などにより副反応が増加することがあり、追加添加によりコストが増加するという問題もあった。
【0006】
さらに、所望の電池性能を満たすために電極の種類によって電解液成分を異なる成分に調節する場合は、電解液成分の濃度差により電解液中の組成が均一になるまで、すなわち濃度平衡が生じるまで溶媒、添加剤などが移動し、時間が経過するとかえって電池性能が低下するという問題があった。
【0007】
これにより、不要に多くの添加剤を含まないと共に寿命特性及び高温貯蔵特性が改善された、すなわち初期性能を長時間維持できるリチウム二次電池が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、リチウム二次電池の寿命特性及び高温貯蔵特性を向上させることのできるリチウム二次電池及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、スクシノニトリル(Succinonitrile,SN)、プロパンスルトン(Propane sultone,PS)及びプロペンスルトン(Propene sultone,PRS)から選択される1種以上の添加剤;及び正極活物質;を含む正極活物質層を含む正極;負極;前記正極及び負極間に介在する分離膜;及びゲルポリマー電解質を含み、前記添加剤は、前記正極活物質層100重量部に対して、0.2重量部~5.0重量部含まれるものである、リチウム二次電池を提供する。
【0010】
また、本発明は、(A)スクシノニトリル(Succinonitrile,SN)、プロパンスルトン(Propane sultone,PS)及びプロペンスルトン(Propene sultone,PRS)から選択される1種以上の添加剤;及び正極活物質;を含む正極活物質層を含む正極を準備するステップ;(B)前記正極、負極、及び前記正極と負極間に介在する分離膜からなる電極組立体を電池ケースに挿入するステップ;(C)前記電極組立体が挿入された電池ケース内にゲルポリマー電解質形成用組成物を注液し、その後前記ゲルポリマー電解質形成用組成物を硬化させてゲルポリマー電解質を形成するステップ;を含み、前記添加剤は、前記正極活物質層100重量部に対して、0.2重量部~5.0重量部含まれるものである、リチウム二次電池製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるリチウム二次電池は、特定の種類の添加剤を特定の含有量で含む正極活物質層を含む正極と、ゲルポリマー電解質とを含み、不要に多くの添加剤を含まないと共に添加剤が濃度平衡をとるために移動することを防止することができるので、寿命特性及び高温貯蔵特性に優れている。
【0012】
本発明によるリチウム二次電池製造方法は、工程における特別な装置の追加や変更事項がないにもかかわらず、寿命特性及び高温貯蔵特性が改善されたリチウム二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的又は辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に立脚して、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈されるべきである。
【0014】
本明細書において、「含む」、「備える」、「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、ステップ、構成要素もしくはこれらの組み合わせが存在することを指定するものであり、1つ又はそれ以上の他の特徴、数字、ステップ、構成要素もしくはこれらの組み合わせなどの存在や付加可能性を予め排除するものではないことを理解すべきである。
【0015】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0016】
リチウム二次電池
本発明によるリチウム二次電池は、スクシノニトリル(Succinonitrile,SN)、プロパンスルトン(Propane sultone,PS)及びプロペンスルトン(Propene sultone,PRS)から選択される1種以上の添加剤;及び正極活物質;を含む正極活物質層を含む正極;負極;前記正極及び負極間に介在する分離膜;及びゲルポリマー電解質を含み、前記添加剤は、前記正極活物質層100重量部に対して、0.2重量部~5.0重量部含まれるものである。
【0017】
正極
前記正極は、スクシノニトリル(Succinonitrile,SN)、プロパンスルトン(Propane sultone,PS)及びプロペンスルトン(Propene sultone,PRS)から選択される1種以上の添加剤;及び正極活物質;を含む正極活物質層を含む。具体的には、前記正極は、正極集電体、及び前記正極集電体の少なくとも一面に位置し、前記添加剤;及び正極活物質;を含む正極活物質層を含む。
【0018】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を起こさず、かつ導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、又はアルミニウムやステンレススチールの表面を炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを用いることができる。また、前記正極集電体は、通常3μm~500μmの厚さを有することができ、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で用いることができる。
【0019】
前記正極活物質層は、前記添加剤及び正極活物質と共に、導電材及びバインダーを含んでもよい。
【0020】
本発明によれば、前記添加剤は、スクシノニトリル(Succinonitrile,SN)、プロパンスルトン(Propane sultone,PS)及びプロペンスルトン(Propene sultone,PRS)から選択される1種以上であり、好ましくは、スクシノニトリル(Succinonitrile,SN)、プロパンスルトン(Propane sultone,PS)、プロペンスルトン(Propene sultone,PRS)であり、より好ましくは、スクシノニトリル(Succinonitrile,SN)であってもよい。前記添加剤は、前記ゲルポリマー電解質で発生する副反応を抑制してガスの生成を低下させることができる。また、前記添加剤は、正極の物性に影響を及ぼさないと共に、正極活物質層中で厚さ方向に均一に分布することができる。添加剤が正極活物質層に均一に存在せず、正極活物質層の表面にリッチ(rich)に存在する場合、前記添加剤がリチウムイオンの移動において抵抗として作用してリチウムの移動性が低下するという問題が生じることがある。
【0021】
前記添加剤は、ゲル状態で存在することができる。前記添加剤は、正極活物質層中にのみ存在することができ、前記ゲルポリマー電解質への移動がほとんど起こらないので、本発明によるリチウム二次電池は、寿命特性に優れている。すなわち、前記添加剤は、分離膜を透過して負極まで拡散せず、正極中にのみ存在し、正極を保護し続けることができる。
【0022】
本発明によれば、前記添加剤は、前記正極活物質層100重量部に対して、0.2重量部~5.0重量部、好ましくは0.5重量部~3.0重量部、より好ましくは1.0重量部~3.0重量部含まれてもよい。前記添加剤が正極活物質層100重量部に対して0.2重量部未満の場合、添加剤の性能が発現しないという問題があり、前記添加剤が正極活物質層100重量部に対して5.0重量部を超える場合、添加剤がリチウムイオンの移動を邪魔して二次電池の抵抗が高くなるという問題がある。前記添加剤の含有量が上記範囲内である場合、二次電池の抵抗が増加することなく高温で電解液との副反応を抑制し、貯蔵性能に優れ、寿命性能も向上する。
【0023】
本発明によれば、前記正極活物質は、NCM系正極活物質、NCA系正極活物質、NCMA系正極活物質及びLiFePO4から選択される1種以上であってもよい。
【0024】
具体的には、前記正極活物質は、下記化学式1で表される組成を有するものであってもよい。
【0025】
[化学式1]
Lix[NiaCobM1cM2d]O2
上記化学式1において、
M1は、Mn及びAlから選択される1種以上であり、
M2は、B、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Fe、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、Mo、Ta及びWから選択される1種以上であり、
0.9≦x≦1.2、0.5≦a<1、0<b<0.5、0<c<0.5、0≦d≦0.1、a+b+c+d=1である。
【0026】
前記aは、正極活物質中におけるリチウムを除く金属元素中のニッケルの原子分率を意味するものであり、0.5≦a<1、0.6≦a≦0.98又は0.7≦a≦0.95であってもよい。
【0027】
前記bは、正極活物質中におけるリチウムを除く金属元素中のコバルトの原子分率を意味するものであり、0<b<0.5、0.01≦b≦0.4又は0.01≦b≦0.3であってもよい。
【0028】
前記cは、正極活物質中におけるリチウムを除く金属元素中のM1元素の元素分率を意味するものであり、0<c<0.5、0.01≦c≦0.4又は0.01≦c≦0.3であってもよい。
【0029】
前記dは、正極活物質中におけるリチウムを除く金属元素中のM2元素の元素分率を意味するものであり、0≦d≦0.1又は0≦d≦0.05であってもよい。
【0030】
前記正極活物質は、正極活物質層100重量部に対して、80重量部~99重量部、より具体的には85重量部~98重量部含まれてもよい。上記含有量の範囲に含まれる場合、優れた容量特性を示すことができる。
【0031】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために用いられるものであり、構成される電池において、化学変化を起こさず、電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末もしくは金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;又はポリフェニレン誘導体などの導電性高分子などが挙げられ、これらのうち1種単独又は2種以上の混合物を用いることができる。前記導電材は、正極活物質層100重量部に対して、1重量部~30重量部含まれてもよい。
【0032】
前記バインダーは、正極活物質粒子間の付着及び正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割を果たす。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、又はこれらの様々な共重合体などが挙げられ、これらのうち1種単独又は2種以上の混合物を用いることができる。前記バインダーは、正極活物質層100重量部に対して、1重量部~30重量部含まれてもよい。
【0033】
負極
前記負極は、負極集電体、及び前記負極集電体上に位置する負極活物質層を含む。
【0034】
本発明によれば、前記負極は、前記スクシノニトリル(Succinonitrile,SN)、プロパンスルトン(Propane sultone,PS)及びプロペンスルトン(Propene sultone,PRS)から選択される1種以上の添加剤を含まないものであってもよい。前記添加剤は、負極で主な反応を起こさず、前記添加剤が負極に含まれる場合、二次電池の抵抗が増加するという問題があるからである。また、前記添加剤が負極に含まれる場合、前記添加剤が負極(ex.銅ホイル)の表面に吸着するなど、不要な副反応が生じることがあり、負極電極内でのリチウムイオンのイオン導電性の減少により二次電池の初期抵抗の増加が生じることがある。これにより、二次電池の寿命が短縮されるという問題が生じることがある。
【0035】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を起こさず、かつ高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面を炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などを用いることができる。また、前記負極集電体は、通常3μm~500μmの厚さを有することができ、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化することもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で用いることができる。
【0036】
前記負極活物質層は、負極活物質と共に、選択的にバインダー及び導電材を含む。
【0037】
前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、並びに選択的にバインダー及び導電材を溶媒中に分散させて製造した負極合材を塗布して乾燥することにより製造されてもよく、前記負極合材を別の支持体上にキャストし、その後その支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネートすることにより製造されてもよい。
【0038】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な化合物を用いることができる。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金もしくはAl合金などリチウムとの合金化が可能な 金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO2、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムのドープ及び脱ドープが可能な金属酸化物;又はSi-C複合体もしくはSn-C複合体のように前記金属質化合物と炭素質材料とを含む複合物などが挙げられ、これらのうちのいずれか1つ又は2つ以上の混合物を用いることができる。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜を用いることもできる。さらに、炭素質材料は、低結晶性炭素や高結晶性炭素などを全て用いることができる。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球状又は繊維状の天然黒鉛又は人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、メソフェーズピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソカーボンマイクロビーズ(meso-carbon microbeads)、メソフェーズピッチ(Mesophase pitches)及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0039】
前記負極活物質は、負極活物質層100重量部に対して、80重量部~99重量部含まれてもよい。
【0040】
前記バインダーは、導電材、活物質及び集電体間の結合に助力する成分であって、通常、負極活物質層100重量部に対して、0.1重量部~10重量部添加されてもよい。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの様々な共重合体などが挙げられる。
【0041】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であって、負極活物質層100重量部に対して、10重量部以下、好ましくは5重量部以下添加されてもよい。このような導電材は、当該電池に化学的変化を起こさず、かつ導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン; アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などを用いることができる。
【0042】
分離膜
前記分離膜は、負極と正極を分離してリチウムイオンの移動通路を提供するものであって、特に電解質のイオンの移動に対して低抵抗であり、かつ電解液含湿能力に優れていることが好ましい。
【0043】
本発明によれば、前記分離膜は、多孔性高分子フィルムであってもよい。例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルム、又はこれらの2層以上の積層構造体を用いることができる。
【0044】
前記分離膜は、ゲル状の分離膜ではなく、これにより、現在用いられている工程に特別な装置を追加したり工程を変更することなく二次電池を製造することができ、追加費用を必要としないという利点がある。
【0045】
ゲルポリマー電解質
前記ゲルポリマー電解質は、流動性が抑制される高分子を含む電解質であって、物質の粘弾性を測定する指標の1つである位相角(phase angle,δ)値が45゜以上、具体的には60゜以上であってもよい。この場合、電解質の流動性が低いので、前記添加剤の移動が制限されて前記添加剤が正極にリッチに存在し続け、正極を保護し続けることができる。
【0046】
前記ゲルポリマー電解質は、高分子及びリチウム塩を含むものであってもよい。
【0047】
前記高分子は、熱硬化性高分子、光硬化性高分子、電子ビーム硬化性高分子などの硬化性高分子の硬化物であってもよい。例えば、前記高分子は、重量平均分子量(Mw)が1,000~10,000であるアクリル系高分子の硬化物であってもよい。
【0048】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池に用いられるリチウムイオンを提供できる化合物であれば、特に制限なく用いることができる。具体的には、前記リチウム塩は、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiCl、LiI又はLiB(C2O4)2などを用いることができる。前記リチウム塩の濃度は、0.1M~2.0Mの範囲内で用いることがよい。リチウム塩の濃度が上記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度及び粘弾性を有するので優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0049】
前記ゲルポリマー電解質には、前記電解質の構成成分以外にも、電池の寿命特性の向上、電池の容量減少の抑制、電池の放電容量の向上などを目的として、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール又は三塩化アルミニウムなどの電解質添加剤が1種以上さらに含まれてもよい。
【0050】
上述したように、本発明によるリチウム二次電池は、優れた寿命特性及び優れた高温貯蔵性能を示すので、携帯電話、ノートブックコンピュータ、デジタルカメラなどの携帯用機器、及びハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle,HEV)などの電気自動車の分野などにおいて有用である。
【0051】
これにより、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール及びこれを含む電池パックを提供することができる。
【0052】
前記電池モジュール又は電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle,EV)、ハイブリッド電気自動車、及びプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle,PHEV)を含む電気自動車;又は電力貯蔵用システムのいずれか1つ以上の中大型デバイスの電源として用いることができる。
【0053】
本発明のリチウム二次電池の外形は、特に制限されないが、缶を用いた円筒型、角型、パウチ(pouch)型又はコイン(coin)型などであってもよい。
【0054】
本発明によるリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として用いられる電池セルに用いることができるだけでなく、複数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく用いることができる。
【0055】
リチウム二次電池の製造方法
本発明によるリチウム二次電池の製造方法は、(A)スクシノニトリル(Succinonitrile,SN)、プロパンスルトン(Propane sultone,PS)及びプロペンスルトン(Propene sultone,PRS)から選択される1種以上の添加剤;及び正極活物質;を含む正極活物質層を含む正極を準備するステップ;(B)前記正極、負極、及び前記正極と負極間に介在する分離膜からなる電極組立体を電池ケースに挿入するステップ;(C)前記電極組立体が挿入された電池ケース内にゲルポリマー電解質形成用組成物を注液し、その後前記ゲルポリマー電解質形成用組成物を硬化させてゲルポリマー電解質を形成するステップ;を含む。前記添加剤は、前記正極活物質層100重量部に対して、0.2重量部~5.0重量部含まれるものである。
【0056】
本発明によるリチウム二次電池は、前記リチウム二次電池製造方法により製造することができる。
【0057】
以下、リチウム二次電池の製造方法の各ステップについて具体的に説明する。
【0058】
(A)ステップ
前記(A)ステップは、スクシノニトリル(Succinonitrile,SN)、プロパンスルトン(Propane sultone,PS)及びプロペンスルトン(Propene sultone,PRS)から選択される1種以上の添加剤;及び正極活物質;を含む正極活物質層を含む正極を準備するステップである。
【0059】
本発明によれば、前記(A)ステップは、i)スクシノニトリル(Succinonitrile,SN)、プロパンスルトン(Propane sultone,PS)及びプロペンスルトン(Propene sultone,PRS)から選択される1種以上の添加剤;及び正極活物質;を含む正極活物質層形成用組成物を準備するステップ;及びii)集電体上に前記正極活物質層形成用組成物を塗布して乾燥して正極活物質層を形成するステップ;を含んでもよい。
【0060】
本発明は、正極の製造時に前記添加剤を正極活物質層形成用組成物に投入するので、製造された正極において前記添加剤が固体状態で存在することができる。
【0061】
具体的には、前記正極活物質層は、前記添加剤、正極活物質、並びに選択的にバインダー及び導電材を溶媒中に分散させて製造した正極活物質層形成用組成物を正極集電体上に塗布し、その後乾燥及び圧延することにより製造することができる。
【0062】
前記正極活物質、バインダー及び導電材については本発明によるリチウム二次電池についての説明において上述したので、具体的な説明を省略し、以下、他の構成についてのみ具体的に説明する。
【0063】
前記溶媒としては、当該技術分野において一般的に用いられる溶媒であってもよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide,DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)又は水などが挙げられ、これらのうち1種単独又は2種以上の混合物を用いることができる。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造収率を考慮して前記正極活物質、導電材及びバインダーを溶解又は分散させ、その後正極の製造のための塗布時に優れた厚さ均一度を示すことができる粘度を持たせる程度であれば十分である。
【0064】
また、他の方法として、前記正極は、前記正極活物質層形成用組成物を別の支持体上にキャストし、その後その支持体から剥離して得られたフィルムを正極集電体上にラミネートすることにより製造することもできる。
【0065】
(B)ステップ
前記(B)ステップは、前記正極、負極、及び前記正極と負極間に介在する分離膜からなる電極組立体を電池ケースに挿入するステップである。
【0066】
前記負極は、正極活物質の代わりに負極活物質を用いることを除き、正極の製造方法と同様の方法で製造することができる。
【0067】
前記分離膜については本発明によるリチウム二次電池についての説明において上述したので、具体的な説明を省略する。
【0068】
(C)ステップ
前記(C)ステップは、前記電極組立体が挿入された電池ケース内にゲルポリマー電解質形成用組成物を注液し、その後前記ゲルポリマー電解質形成用組成物を硬化させてゲルポリマー電解質を形成するステップである。
【0069】
前記電極組立体が挿入された電池ケース内にゲルポリマー電解質形成用組成物を注液すると、前記ゲルポリマー電解質形成用組成物が硬化するまでは、前記正極活物質層に含まれる添加剤が前記ゲルポリマー電解質形成用組成物に含まれる溶媒に溶解して液状化することができる。また、前記溶媒に溶解した添加剤は、前記ゲルポリマー電解質形成用組成物の硬化後、ゲル状態で存在することができる。一方、本発明は、液体電解質ではなくゲルポリマー電解質を用いることにより、前記添加剤の移動が制限されて前記添加剤が正極にリッチに存在し続け、正極を保護し続けることができる。すなわち、正極活物質層に含まれる添加剤がゲルポリマー電解質形成用組成物に含まれる溶媒に溶解しても、添加剤は、分離膜を透過して負極まで拡散せず、正極中にのみ存在することができる。
【0070】
前記ゲルポリマー電解質形成用組成物は、硬化性高分子、非水系有機溶媒及びリチウム塩を含むものであってもよい。
【0071】
前記硬化性高分子は、熱硬化性高分子、光硬化性高分子、電子ビーム硬化性高分子などであってもよい。例えば、重量平均分子量(Mw)が1,000~10,000であるアクリル系高分子であってもよい。
【0072】
前記非水系有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割を果たすものであれば、特に制限なく用いることができる。具体的には、前記非水系有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)もしくはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate,DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate,DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate,MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate,EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate,EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate,PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分枝状もしくは環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環もしくはエーテル結合を含んでもよい)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;又はスルホラン(sulfolane)類などを用いることができる。これらの中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高める高イオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートもしくはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の鎖状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートもしくはジエチルカーボネートなど)との混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートとは、約1:1~約1:9の体積比で混合して用いた場合、優れた電解液の性能を奏することができる。
【0073】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池に用いられるリチウムイオンを提供できる化合物であれば、特に制限なく用いることができる。具体的には、前記リチウム塩は、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiCl、LiI又はLiB(C2O4)2などを用いることができる。前記リチウム塩の濃度は、0.1M~2.0Mの範囲内で用いることがよい。リチウム塩の濃度が上記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度及び粘弾性を有するので優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0074】
以下、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で実現することができ、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0075】
実施例及び比較例
実施例1
正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、カーボンブラック(Super P,Timcal社)導電材、PVdFバインダー及びスクシノニトリル(SN)をN-メチルピロリドン溶媒中で93:2:2:3の重量比で混合して正極活物質形成用組成物を製造し、それをアルミニウム集電体の一面に塗布し、130℃で乾燥及び圧延して正極を製造した。このとき、正極活物質層に含まれるスクシノニトリルは固体状態で存在していた。
【0076】
負極活物質として人造黒鉛、カーボンブラック(Super P,Timcal社)導電材及びPVdFバインダーをN-メチルピロリドン溶媒中で96:1:3の重量比で混合して負極活物質形成用組成物を製造し、それを銅集電体の一面に塗布し、120℃で乾燥及び圧延して負極を製造した。
【0077】
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを30:70の重量比で混合した非水系有機溶媒に1.0MのLiPF6が含まれる溶液に、重量平均分子量が3,000であるアクリル系高分子を非水系有機溶媒100重量部に対して5重量部混合して、ゲルポリマー電解質形成用組成物を準備した。
【0078】
上記のように製造された正極と負極との間に多孔性ポリエチレン分離膜を介在して電極組立体を製造し、前記電極組立体を電池ケースの内部に配置し、その後ケースの内部に前記ゲルポリマー電解質形成用組成物を注液し、次いで前記ゲルポリマー電解質形成用組成物を60℃で熱硬化させてゲルポリマー電解質を形成して、リチウム二次電池を製造した。このとき、リチウム二次電池の正極活物質層に含まれるスクシノニトリルはゲル状態で存在していた。
【0079】
実施例2
正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、カーボンブラック(Super P,Timcal社)導電材、PVdFバインダー及びスクシノニトリル(SN)をN-メチルピロリドン溶媒中で95.5:2:2:0.5の重量比で混合して正極活物質形成用組成物を製造したことを除き、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0080】
実施例3
正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、カーボンブラック(Super P,Timcal社)導電材、PVdFバインダー及びプロパンスルトン(PS)をN-メチルピロリドン溶媒中で93:2:2:3の重量比で混合して正極活物質形成用組成物を製造したことを除き、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0081】
実施例4
正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、カーボンブラック(Super P,Timcal社)導電材、PVdFバインダー及びプロペンスルトン(PRS)をN-メチルピロリドン溶媒中で93:2:2:3の重量比で混合して正極活物質形成用組成物を製造したことを除き、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0082】
比較例1
正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、カーボンブラック(Super P,Timcal社)導電材及びPVdFバインダーをN-メチルピロリドン溶媒中で96:2:2の重量比で混合して正極活物質形成用組成物を製造したことを除き、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0083】
比較例2
正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、カーボンブラック(Super P,Timcal社)導電材、PVdFバインダー及びスクシノニトリル(SN)をN-メチルピロリドン溶媒中で89:2:2:7の重量比で混合して正極活物質形成用組成物を製造したことを除き、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0084】
比較例3
正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、カーボンブラック(Super P,Timcal社)導電材、PVdFバインダー及びスクシノニトリル(SN)をN-メチルピロリドン溶媒中で86:2:2:10の重量比で混合して正極活物質形成用組成物を製造したことを除き、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0085】
比較例4
正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、カーボンブラック(Super P,Timcal社)導電材、PVdFバインダー及びスクシノニトリル(SN)をN-メチルピロリドン溶媒中で95.9:2:2:0.1の重量比で混合して正極活物質形成用組成物を製造したことを除き、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0086】
比較例5
正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、カーボンブラック(Super P,Timcal社)導電材及びPVdFバインダーをN-メチルピロリドン溶媒中で96:2:2の重量比で混合して正極活物質形成用組成物を製造し、それをアルミニウム集電体の一面に塗布し、130℃で乾燥及び圧延して正極を製造した。
【0087】
負極活物質として人造黒鉛、カーボンブラック(Super P,Timcal社)導電材及びPVdFバインダーをN-メチルピロリドン溶媒中で96:1:3の重量比で混合して負極活物質形成用組成物を製造し、それを銅集電体の一面に塗布し、120℃で乾燥及び圧延して負極を製造した。
【0088】
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを30:70の重量比で混合した非水系有機溶媒に1.0MのLiPF6が含まれる溶液に、スクシノニトリルを非水系有機溶媒100重量部に対して1重量部混合して、電解液を準備した。
【0089】
上記のように製造された正極と負極との間に多孔性ポリエチレン分離膜を介在して電極組立体を製造し、前記電極組立体を電池ケースの内部に配置し、その後ケースの内部に前記電解液を注液して、リチウム二次電池を製造した。
【0090】
比較例6
正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、カーボンブラック(Super P,Timcal社)導電材、PVdFバインダー及びプロパンスルトン(PS)をN-メチルピロリドン溶媒中で89:2:2:7の重量比で混合して正極活物質形成用組成物を製造したことを除き、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0091】
比較例7
正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、カーボンブラック(Super P,Timcal社)導電材、PVdFバインダー及びプロペンスルトン(PRS)をN-メチルピロリドン溶媒中で89:2:2:7の重量比で混合して正極活物質形成用組成物を製造したことを除き、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0092】
比較例8
正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、カーボンブラック(Super P,Timcal社)導電材及びPVdFバインダーをN-メチルピロリドン溶媒中で96:2:2の重量比で混合して正極活物質形成用組成物を製造し、前記正極活物質形成用組成物をアルミニウム集電体の一面に塗布し、その後130℃で乾燥及び圧延して正極を製造した。
【0093】
次に、スクシノニトリル(SN)をN-メチルピロリドン溶媒中に5重量%溶解させ、その後前記正極の表面に塗布して乾燥してコーティング層を形成した。
【0094】
負極活物質として人造黒鉛、カーボンブラック(Super P,Timcal社)導電材及びPVdFバインダーをN-メチルピロリドン溶媒中で96:1:3の重量比で混合して負極活物質形成用組成物を製造し、それを銅集電体の一面に塗布し、120℃で乾燥及び圧延して負極を製造した。
【0095】
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを30:70の重量比で混合した非水系有機溶媒に1.0MのLiPF6が含まれる溶液に、重量平均分子量が3,000であるアクリル系高分子を非水系有機溶媒100重量部に対して5重量部混合して、ゲルポリマー電解質形成用組成物を準備した。
【0096】
上記のように製造された正極と負極との間に多孔性ポリエチレン分離膜を介在して電極組立体を製造し、前記電極組立体を電池ケースの内部に配置し、その後ケースの内部に前記ゲルポリマー電解質形成用組成物を注液し、次いで前記ゲルポリマー電解質形成用組成物を60℃で熱硬化させてゲルポリマー電解質を形成して、リチウム二次電池を製造した。
【0097】
実験例
実験例1:高温貯蔵後のガス発生増加率及び抵抗増加率の評価
実施例1~4及び比較例1~8の二次電池をそれぞれ4.2Vまで充電した後に二次電池の体積を測定し、前記二次電池を60℃で4週間放置した後に二次電池の体積を測定した。60℃で放置する前の体積に対する60℃で放置した後の体積の増加率をガス発生増加率とし、下記表1に示した。
【0098】
また、実施例1~4及び比較例1~8の二次電池をそれぞれ4.2Vまで充電し、次いで常温でSOC50%まで放電し、2.5Cで10秒間瞬間放電を行いながら電圧の変化量を測定し、その後変化した電圧を電流で割って二次電池の抵抗を確認した。実施例1~4及び比較例1~8の二次電池をそれぞれ4.2Vまで充電し、次いで60℃で4週間放置した後の二次電池も同様の方法で抵抗を確認した。60℃で放置する前の抵抗に対する60℃で放置した後の抵抗の増加率を下記表1に示した。
【0099】
【表1】
【0100】
上記表1を参照すると、スクシノニトリル、プロパンスルトン又はプロペンスルトンを正極活物質層100重量部に対して3重量部又は0.5重量部含む実施例1~4の二次電池の場合、スクシノニトリルを含まない比較例1及びスクシノニトリルを正極活物質層100重量部に対して0.1重量部含む比較例4に比べて、高温貯蔵特性に優れていることが確認される。すなわち、高温貯蔵後のガス発生増加率及び抵抗増加率がどちらも低いことが確認される。特に、実施例1の二次電池の場合、高温貯蔵特性が著しく優れていることが確認される。それに対して、スクシノニトリル、プロパンスルトン又はプロペンスルトンを過剰量含む比較例2、3、6及び7の二次電池の場合、添加剤がリチウムイオンの移動を邪魔して抵抗増加率が著しく高いことが確認される。また、スクシノニトリルを含む液体状態の電解液を用いた比較例5の二次電池の場合、高温貯蔵特性がよくないことが確認される。
【0101】
さらに、スクシノニトリルを正極活物質層に含むのではなく正極活物質層の表面にコーティングした比較例8の二次電池の場合、高温貯蔵特性がよくないことが確認される。
【0102】
実験例2:初期充放電容量及び容量維持率の評価
実施例1~4及び比較例1~8の二次電池のそれぞれに対して初期充放電容量及び容量維持率を評価した。
【0103】
それぞれのリチウム二次電池を25℃で0.1Cの定電流で電圧が4.2Vになるまで充電し、その後、電圧が2.5Vに到達するまで0.1Cの定電流で放電した。初期充放電容量値を表2に示した。
【0104】
また、45℃、2.5~4.2Vの範囲で0.33Cの定電流で充放電サイクルを100回繰り返し実施してリチウム二次電池の容量を測定し、特に1番目のサイクル容量に対する100番目のサイクル容量の割合を容量維持率とし、それを下記表2に示した。
【0105】
【表2】
【0106】
上記表2を参照すると、実施例1~4の二次電池は、比較例1~8の二次電池に比べて容量維持率が著しく優れていることが確認される。これは、実施例1~4の二次電池の場合、副反応の結果で生じるガスが減少してガスによる抵抗が減少するからである。
【0107】
これにより、本発明によるリチウム二次電池は、特定の種類の添加剤を正極活物質層100重量部に対して0.2重量部~5.0重量部含む正極と、ゲルポリマー電解質とを含み、不要に多くの添加剤を含まないと共に添加剤が濃度平衡をとるために移動することを防止することができるので、寿命特性及び高温貯蔵特性に優れていることが分かる。
【0108】
また、本発明によるリチウム二次電池製造方法は、工程における特別な装置の追加や変更事項がないにもかかわらず、寿命特性及び高温貯蔵特性が改善されたリチウム二次電池を提供できることが分かる。