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  • 特許-キャビネット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】キャビネット
(51)【国際特許分類】
   A47B 77/16 20060101AFI20240902BHJP
   A47B 88/453 20170101ALI20240902BHJP
【FI】
A47B77/16
A47B88/453
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020053126
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021151395
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000104973
【氏名又は名称】クリナップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】竹内 祥馬
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-102846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 77/16
A47B 88/00-88/994
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引出を備えるキャビネットにおいて、
当該キャビネットの内面に取り付けられた押出ガイドと、
前記引出の側面に取り付けられたレバーと、
前記レバーの中途部を支持して前記引出の移動方向に回動させる回転軸と、
前記レバーの上側先端に取り付けられたハンドルと、
前記レバーの下側先端であって前記押出ガイドを押す作用部とを備え、
前記押出ガイドは、上方に向うにしたがって当該キャビネットの手前側に傾斜する傾斜面を有し、
前記ハンドルは、前記引出が閉じているときに該引出の前板の前面より手前側に離隔して配置されていて、下方に押されることによって前記レバーが回動することを特徴とするキャビネット。
【請求項2】
前記前板の背面に立板を備え、
前記回転軸は、前記前板の背面から離隔して前記立板に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のキャビネット。
【請求項3】
前記回転軸と前記ハンドルを結ぶ直線が水平方向となす角度が45°以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のキャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチン等に設けられる引出を有するキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のキッチンは、一枚の天板からなるワークトップの下に複数のキャビネットを備えたシステムキッチンが主流となっている。キッチン全体の上面を覆う天板(ワークトップ)には、組み込み式のコンロやシンク、主に調理を行うのに利用される平坦なテーブル面である調理スペースが設けられる。
【0003】
キッチンの引出には、閉じる直前の勢いを抑えるダンパーが備えられている場合がある。これにより引出が閉じたときの衝撃および衝撃音を低減することができる。しかしながらこのダンパーがあることによって、引き出し開始時の荷重が増大してしまうという問題がある。
【0004】
例えば特許文献1には、前方に開口部を有するキャビネット本体と、キャビネット本体に収納されて開口部から前方に引き出し可能な抽斗とを備えた収納キャビネットが開示されている。特許文献1の収納キャビネットは、引き出し開始時に、使用者が抽斗を引き出そうとする力を増幅させて前記キャビネット本体に作用させるアシスト手段を備えている。特許文献1では、アシスト手段を備えることにより、従来よりも軽い力で抽斗を引き出すことができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-102846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
キャビネットに収納されている引出は手前方向に引き出される。このとき使用者は水平方向の力を取っ手にかける必要がある。特許文献1に記載の収納キャビネットにおいては、引き出す力を軽減することはできると考えられるが、あくまでも水平方向の力しか作用することができない。したがって、仮に特許文献1のようなアシスト手段があったとしても、使用者が高齢者だった場合や、使用者の握力が低い場合には引出を引き出す際の負担が大きい。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、使用者が引出を引き出す際にその作業をより効率的にサポートすることができ、引出を開く作業を快適に行うことが可能なキャビネットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかるキャビネットの代表的な構成は、引出を備えるキャビネットにおいて、当該キャビネットの内面に取り付けられた押出ガイドと、引出の側面に取り付けられたレバーと、レバーの中途部を支持して引出の移動方向に回動させる回転軸と、レバーの上側先端に取り付けられたハンドルと、レバーの下側先端であって押出ガイドを押す作用部とを備え、ハンドルは、引出が閉じているときに前板の前面より手前側に離隔して配置されていて、下方に押されることによってレバーが回動することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、使用者が引出を引き出す際にハンドルを下方に押すと、回転軸を中心としてレバーが回転して作用部が押出ガイドを押す。これにより、引出が手前側に押し出される。すなわち、垂直方向の力を水平方向の力に変換して引出を引き出すことができる。このとき、垂直方向の力には重力が含まれるため、使用者が引出を引き出す際の力として体重を利用することが可能となる。したがって、使用者が引出を引き出す際にその作業をより効率的にサポートすることができ、引出を開く作業を快適に行うことが可能となる。
【0010】
上記前板の背面に立板を備え、回転軸は、前板の背面から離隔して立板に設けられているとよい。これにより、回転軸とハンドルとの水平方向の距離を離すことができ、さらに垂直方向の力を利用しやすくなる。
【0011】
上記回転軸とハンドルを結ぶ直線が水平方向となす角度が45°以下であるとよい。これにより、垂直方向の力を効率的に得ることが可能となる。
【0012】
上記押出ガイドは、上方に向うにしたがって当該キャビネットの手前側に傾斜する傾斜面を有するとよい。これにより、レバーが回転した際に作用部と押出ガイドとの当接箇所の角度の変化を低減することができる。したがって、作用部と押出ガイドとの当接箇所における力の伝達を平均化することが可能となる。
【0013】
上記立板には、垂直方向に延びる垂直溝および水平方向に延びる水平溝が形成されていて、当該キャビネットは、作用部を軸支し水平溝内を移動する水平スライダと、回転軸を軸支し垂直溝内を移動する垂直スライダとを備えるとよい。これにより、垂直方向の力を水平方向の力へと効率的に変換することができる。したがって、上述した効果を確実に得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、使用者が引出を引き出す際にその作業をより効率的にサポートすることができ、引出を開く作業を快適に行うことが可能なキャビネットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態のキャビネットの全体斜視図である。
図2】引出を開くときの動作を説明する図である。
図3】引出のハンドルに作用する力のベクトルについて説明する図である。
図4】本実施形態のキャビネットの他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
図1は、本実施形態のキャビネット100の全体斜視図である。図1に示すように、本実施形態のキャビネット100は一対の側板102を有する。なお図1においては説明の便宜のために図示左側の側板102を透過表示にしている。一対の側板102の後部には背板104が配置されていて、一対の側板102の前部には前板106が配置されている。また本実施形態では、キャビネット100の側板102の内面に押出ガイド108が取り付けられている。
【0018】
キャビネット100には、上述した板材によって形成された空間に引出110が収容される。引出110は、一対の側板112、背板114および前板116によって収納空間が形成されている。引出110の前板116の背面には、かかる前板116と側板112とを連結する立板120が設けられている。
【0019】
引出の側板(側面)にはレバー130が取り付けられている。レバー130の中途部は、かかるレバー130を引出110の移動方向(キャビネット100の前後方向)に回動させる回転軸132によって立板120に支持されている。レバー130の上側先端134には、使用者が把持するためのハンドル140が取り付けられている。レバーの下側先端136は、引出が開く際に押出ガイド108を押す作用部として機能する。ハンドル140が力点、上側先端134が支点、下側先端136が作用点である。
【0020】
図2は、引出110を開くときの動作を説明する図である。図2(a)は、閉状態の引出110を側方から観察した状態を示していて、図2(b)は、引き出し始めの状態の引出110を側方から観察した状態を示している。
【0021】
図2(a)に示すように、引出110を閉じている状態では、ハンドル140は、前板116の前面よりも手前側に離隔した状態で、回転軸132よりも上方に位置している。そして引出110を引き出す際にハンドル140を下方に押し下げると、図2(b)に示すように回転軸132を中心としてレバー130が回動し、作用部であるレバーの下側先端136が押出ガイド108を押す。これにより、作用部(レバーの下側先端136)によって前方に押し出す力が引出110に作用する。したがって、レバー130および押出ガイド108によって引出を手前側に付勢することができる。
【0022】
図3は、引出110のハンドル140に作用する力について説明する図である。図3(a)は、本実施形態の引出110が閉じている状態を側方から観察した状態を示していて、図3(b)は、従来例(特許文献1)の引出10が閉じている状態を側方から観察した状態を示している。
【0023】
図3(b)に示すように従来例のキャビネット10では、側板12の後部に背板14が配置されていて、側板12の前部に前板16が配置されている。引出20は、側板22の後部に背板24が配置されていて、側板22の前部に前板26が配置されている。従来例のキャビネット10では、引出20の前板26の上部にハンドル30が形成されていて、ハンドル30と回転軸32とはレバー34によって連結されている。
【0024】
図3(b)の従来例のキャビネット10では、回転軸32の取付位置とハンドル30の初期位置の間に、奥行き方向の距離がほとんどなく、前板26の厚みの半分程度しかない。するとレバー34を回転させるための回転モーメントをFとして、これを水平分力F3と垂直分力F4に分解すると、回転モーメントFは水平分力F3とほぼ同じであり、垂直分力F4はないに等しい。このような構成であると、引出20を引き出す際、使用者は、水平方向の力F3のみによって引出20を開く必要がある。なお図3(b)の構成では、垂直分力F4をかけてもレバー34の回転にはほとんど寄与しない。
【0025】
これに対し本実施形態のキャビネット100では、図3(a)に示すように、ハンドル140が前板106の前面より手前側に離隔して配置されていること、および回転軸132が前板106の背面から離隔して設けられていることから、回転軸132とハンドル140を結ぶ直線が水平方向となす角度は90°よりも大幅に傾いている。したがって回転モーメントFを水平分力F1と垂直分力F2に分解すると、垂直分力F2によって十分にレバー130を回転させることができる。このように、引出を引き出す際の力として垂直方向の力が含まれることにより、使用者が引出110を引き出す際の力として体重を利用することが可能となる。したがって、使用者が引出110を引き出す際にその作業をより効率的にサポートすることができ、引出110を開く作業を快適に行うことが可能となる。
【0026】
また上述したように、本実施形態では前板116の背面に立板120を備え、回転軸132は、前板116の背面から離隔して立板120に設けられている。ハンドル140の飛び出し量はキャビネットの使い勝手を考えるとあまり大きく取ることはできないが、回転軸を奥行き方向にずらすことは問題がない。そのため、回転軸132とハンドル140を結ぶ直線を大きく傾けることができる。
【0027】
なお、回転軸132とハンドル140を結ぶ直線が水平方向となす角度θ(図3(a)参照)は、45°以下とすることが好ましい。これにより、垂直分力のF2方が水平分力F1よりも大きくなるため、垂直方向の力を効率的に得ることが可能となる。
【0028】
更に図3(a)に示すように、押出ガイド108は、上方に向うにしたがって当該キャビネット100の手前側に傾斜する傾斜面108aを有する。これにより、レバー130が回転した際に作用部(レバーの下側先端136)と押出ガイド108との当接箇所の角度の変化が低減される。したがって、作用部と押出ガイド108との当接箇所における力の伝達を平均化することが可能となる。
【0029】
図4は、本実施形態のキャビネット100aの他の例である。図4(a)は、閉状態の引出210を側方から観察した状態を示していて、図2(b)は、引き出し始めの状態の引出210を側方から観察した状態を示している。
【0030】
図4(a)に示すように、引出210では、垂直方向に延びる垂直溝122、および水平方向に延びる水平溝124が立板120に形成されている。図4(b)に示すように、垂直溝122には、回転軸132を軸支して垂直溝122内を移動する垂直スライダ152が取り付けられている。水平溝124には、作用部であるレバーの下側先端136を軸支して水平溝124内を移動する水平スライダ154が取り付けられている。また水平スライダ154には、押出ガイド108を押すプッシャ156が固定されている。
【0031】
上記構成によれば、図4(a)に示すように閉じた状態の引出210のハンドル140を下げると、レバー130が回転軸132を中心として回動する。これにより図4(b)に示すように、水平スライダ154がキャビネットの奥側へと移動するため、水平スライダ154に固定されているプッシャ156が押出ガイド108を押す。するとその反力によって引出210が手前側に押し出される。水平スライダ154が移動するに従い、垂直スライダ152が下方へと移動する。
【0032】
したがって、図4(a)および(b)に示す構成によっても、垂直方向の力を水平方向の力へと効率的に変換することができ、上述したキャビネット100と同様の効果を得ることが可能である。さらに図4の構成では、プッシャ156が常に水平方向に移動するため、押出ガイド108に対して効率的に力を伝達することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、キッチン等に設けられる引出を有するキャビネットに利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
10…キャビネット、12…側板、14…背板、16…前板、18…受け具、20…引出、22…側板、24…背板、26…前板、30…ハンドル、32…回転軸、34…レバー、100…キャビネット、100a…キャビネット、102…側板、104…背板、106…前板、108…押出ガイド、108a…傾斜面、110…引出、112…側板、114…背板、116…前板、120…立板、122…垂直溝、124…水平溝、130…レバー、132…回転軸、134…上側先端、136…下側先端、140…ハンドル、152…垂直スライダ、154…水平スライダ、156…プッシャ、210…引出
図1
図2
図3
図4