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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】搬送波再生回路
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/38 20060101AFI20240902BHJP
   H04L 27/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H04L27/38 100
H04L27/00 C
H04L27/00 J
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020145167
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040441
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141678
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 賢晃
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-046587(JP,A)
【文献】特開2019-220797(JP,A)
【文献】特表2013-531414(JP,A)
【文献】国際公開第2013/161801(WO,A1)
【文献】特開平11-205405(JP,A)
【文献】特開2000-138722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/00-27/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される信号に対して搬送波再生処理を行う第1の搬送波再生ループと、
前記第1の搬送波再生ループから出力される信号の周波数特性の劣化を補償する第2の等化器と、
前記第2の等化器から出力される信号に対して搬送波再生処理を行う第2の搬送波再生ループと、を有し、
前記第1の搬送波再生ループが当該第1の搬送波再生ループへと入力される信号の周波数特性の劣化を補償する第1の等化器を含み、
前記第2の搬送波再生ループが等化器を含ま
前記第1の搬送波再生ループが第1のLPFを含むとともに前記第2の搬送波再生ループが第2のLPFを含み、
前記第2のLPFの帯域幅が前記第1のLPFの帯域幅よりも広く設定される、
ことを特徴とする搬送波再生回路。
【請求項2】
前段の搬送波再生ループから出力される信号の周波数特性の劣化を補償する等化器と、当該等化器から出力される信号に対して搬送波再生処理を行う搬送波再生ループであって等化器を含まない搬送波再生ループと、の組み合わせをさらに1つまたは複数有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送波再生回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、搬送波再生回路に関し、特に、デジタル無線伝送において搬送波・受信波を再生する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線トラフィックの増大に伴う周波数利用の高効率化の要求からデジタル無線伝送においては高多値QAM(QAM:Quadrature Amplitude Modulation の略;直角位相振幅変調)方式による高速伝送の要求が高まっている。
【0003】
高多値QAM方式では、送信装置や受信装置において生じる搬送波の位相ノイズ(位相誤差)などによって、復調性能が劣化する場合がある。このため、位相ノイズと熱雑音の影響度に基づいて復調性能(具体的には、符号誤り率)を向上させる、という搬送波再生回路が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-101177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、高多値化変調においては搬送波再生の位相誤差検出範囲が著しく狭くなり、位相ノイズ環境下で位相ジッタが増加する状況になると搬送波再生の補正精度が大幅に劣化する、という問題がある。
【0006】
そこでこの発明は、シングルキャリア高多値QAM無線システムにおいて、性能の劣化の原因となる搬送波の位相ノイズが付加された条件下でも高い復調性能を実現することが可能な、搬送波再生回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、入力される信号に対して搬送波再生処理を行う第1の搬送波再生ループと、前記第1の搬送波再生ループから出力される信号の周波数特性の劣化を補償する第2の等化器と、前記第2の等化器から出力される信号に対して搬送波再生処理を行う第2の搬送波再生ループと、を有し、前記第1の搬送波再生ループが当該第1の搬送波再生ループへと入力される信号の周波数特性の劣化を補償する第1の等化器を含み、前記第2の搬送波再生ループが等化器を含ま前記第1の搬送波再生ループが第1のLPFを含むとともに前記第2の搬送波再生ループが第2のLPFを含み、前記第2のLPFの帯域幅が前記第1のLPFの帯域幅よりも広く設定される、ことを特徴とする搬送波再生回路である。
【0009】
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の搬送波再生回路において、前段の搬送波再生ループから出力される信号の周波数特性の劣化を補償する等化器と、当該等化器から出力される信号に対して搬送波再生処理を行う搬送波再生ループであって等化器を含まない搬送波再生ループと、の組み合わせをさらに1つまたは複数有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、信号処理ループのなかに第1の等化器が組み込まれている第1の搬送波再生ループに加えて信号処理ループのなかに等化器が組み込まれていない第2の搬送波再生ループを有するようにしており、第2の搬送波再生ループは、信号処理ループのなかに等化器が組み込まれていないので、信号処理ループ内の遅延量が第1の搬送波再生ループと比べて小さいため、位相誤差の推定精度が向上し、延いては高い復調性能を実現することが可能となる。
【0011】
また、請求項に記載の発明によれば、第2の搬送波再生ループにおける第2のLPFの帯域幅を第1の搬送波再生ループにおける第1のLPFの帯域幅よりも広く設定するようにしているので、位相ノイズを補償できる帯域を広げることができ、延いては高い復調性能を一層確実に実現することが可能となる。
【0012】
請求項に記載の発明によれば、位相ノイズを補償できる帯域を一層柔軟に(言い換えると、きめ細かく)設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の実施の形態に係る搬送波再生回路の概略構成を示す機能ブロック図である。
図2】位相変動の補償前後の位相誤差を示す図である。(A)は補償前の位相誤差を示す図である。(B)はこの発明に係る搬送波再生回路による補償後の位相誤差を示す図である。
図3】位相変動の補償手法の違いによる符号誤り率の違いを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0015】
図1は、この発明の実施の形態に係る搬送波再生回路の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0016】
この搬送波再生回路は、デジタル無線伝送において搬送波・受信波を再生する機序であり、主として、第1の搬送波再生ループ1と、第2の等化器2と、第2の搬送波再生ループ3と、を有する。搬送波再生回路に関係する信号の変調方式として、QAM(Quadrature Amplitude Modulation の略;直角位相振幅変調)方式を仮定する。
【0017】
そして、実施の形態1に係る搬送波再生回路は、入力される信号に対して搬送波再生処理を行う第1の搬送波再生ループ1と、第1の搬送波再生ループ1から出力される信号の周波数特性の劣化を補償する第2の等化器2と、第2の等化器2から出力される信号に対して搬送波再生処理を行う第2の搬送波再生ループ3と、を有し、第1の搬送波再生ループ1が当該第1の搬送波再生ループ1へと入力される信号の周波数特性の劣化を補償する第1の等化器12を含み、第2の搬送波再生ループ3が等化器を含まない、ようにしている。
【0018】
第1の搬送波再生ループ1は、第1の位相回転器11、第1の等化器12、第1の検出器13、第1のLPF14、第1のNCO15、第2の位相回転器16、および第1の遅延回路17を含み、第1の位相回転器11へと入力される信号に対して搬送波再生処理を行うための仕組みである。
【0019】
第1の位相回転器11は、入力される信号の位相を回転する回転器・乗算器であり、第1のNCO15から出力される位相回転制御信号に基づいて、入力される信号の位相を回転する。
【0020】
第1の位相回転器11は、具体的には、送信側において直交変調されたIF信号が入力される直交復調器(図示していない)によって直交復調されたうえでA/D変換器(図示していない)によってデジタル信号に変換された同相成分Ichのベースバンド信号および直交成分Qchのベースバンド信号の入力を受け、前記同相成分Ichおよび直交成分Qchのベースバンド信号のそれぞれに対して、第1のNCO15から出力される位相回転制御信号としての正弦波および余弦波に基づいて位相回転を行う。なお、図においては、同相成分Ichと直交成分Qchとを1本の信号線によって示している。
【0021】
第1の等化器12は、第1の位相回転器11から出力される信号(「位相回転信号」と呼ぶ)の周波数特性の劣化(伝搬路および無線装置内の回路で変動した周波数特性)を補償する適応等化器であり、つまり位相回転信号の線形歪やデータ誤りを解消する等化器である。第1の等化器12は、具体的には例えば判定帰還型等化器や線形等化器によって構成され、判定指向アルゴリズムやCMAアルゴリズムに基づいてタップ係数を更新する機能を備える。
【0022】
第1の検出器13は、第1の等化器12による補償後の位相回転信号に含まれる位相誤差を検出して出力する位相誤差検出器である。位相誤差には、位相の回転方向(即ち、進み方向か遅れ方向か)と位相誤差量(即ち、回転量)とが含まれる。
【0023】
第1の検出器13による位相誤差の検出の仕法は、特定の手法には限定されないものの、例えば特開2008-244918号公報に記載の手法や特開2019-220942号公報に記載の手法などが用いられ得る。
【0024】
第1のLPF14は、第1の検出器13によって検出された位相誤差の高周波成分を、所定の帯域幅(言い換えると、カットオフ周波数)に応じて除去するフィルタであり、具体的にはローパスフィルタ(LPF:Low Pass Filter の略)によって構成される。
【0025】
第1のNCO15は、第1のLPF14によって高周波成分が除去された位相誤差に基づいて位相回転制御信号を生成する機器であり、数値制御発振器(NCO:Numerically Controlled Oscillator の略)によって構成される。
【0026】
第1のNCO15は、具体的には、第1のLPF14から出力される位相誤差に基づいて逆位相の正弦波および余弦波を生成して、生成した前記逆位相の正弦波および余弦波を位相回転制御信号として第1の位相回転器11へと出力して該第1の位相回転器11による位相回転を制御するとともに、前記逆位相の正弦波および余弦波を位相回転制御信号として第2の位相回転器16へも出力する。
【0027】
上記により、第1の位相回転器11において、IF信号の搬送波周波数と直交復調に用いられるローカル周波数との差分の周波数成分が取り除かれて搬送波周波数同期がとられる。
【0028】
第2の位相回転器16は、入力される信号の位相を回転する回転器・乗算器であり、第1のNCO15から出力される位相回転制御信号に基づいて、入力される信号の位相を回転する。
【0029】
第2の位相回転器16は、具体的には、第1の等化器12によって周波数特性の劣化が補償されたうえで(即ち、線形歪などが解消されたうえで)第1の検出器13によって検出された位相誤差に基づいて第1のNCO15から出力される位相回転制御信号としての正弦波および余弦波に基づいて、第1の遅延回路17から出力される信号の位相回転を行う。
【0030】
第1の遅延回路17は、第1の位相回転器11へと入力される信号(具体的には、同相成分Ichのベースバンド信号および直交成分Qchのベースバンド信号)を主に第1の位相回転器11から第1のNCO15までの処理時間の合計に相当する時間だけ遅延させた信号を生成して第2の位相回転器16に対して出力する。
【0031】
上記のように、第1の搬送波再生ループ1は、信号処理ループのなかに第1の等化器12が組み込まれることにより、周波数特性の劣化を補償した後(即ち、線形歪などが解消された後)に推定した位相誤差に基づいて入力信号の位相ノイズのキャンセル処理が施される。これにより、マイクロ波無線システムはマルチパスフェージング環境下での無線伝送が前提となるため、フェージングによる受信信号の位相回転やレベル変動によって搬送波の位相ノイズの推定精度が著しく低下する場合があるのに対し、信号処理ループのなかに等化器が組み込まれることで、フェージング環境下における搬送波の位相ノイズの推定精度が向上し、延いては高い搬送波再生性能/復調性能が実現される。
【0032】
第2の等化器2は、第2の位相回転器16から出力される信号の周波数特性の劣化を補償する等化器である。第2の等化器2は、具体的には例えば判定帰還型等化器や線形等化器によって構成され、判定指向アルゴリズムやCMAアルゴリズムに基づいてタップ係数を更新する機能を備える。
【0033】
第2の搬送波再生ループ3は、第3の位相回転器31、第2の検出器32、第2のLPF33、第2のNCO34、第4の位相回転器35、および第2の遅延回路36を含み、第3の位相回転器31へと入力される信号に対して搬送波再生処理を行うための仕組みである。
【0034】
第3の位相回転器31は、入力される信号の位相を回転する回転器・乗算器であり、第2のNCO34から出力される位相回転制御信号に基づいて、入力される信号の位相を回転する。
【0035】
第3の位相回転器31は、具体的には、第2の等化器2から出力される同相成分Ichの信号および直交成分Qchの信号の入力を受け、前記同相成分Ichおよび直交成分Qchの信号のそれぞれに対して、第2のNCO34から出力される位相回転制御信号としての正弦波および余弦波に基づいて位相回転を行う。
【0036】
第2の検出器32は、第3の位相回転器31から出力される信号に含まれる位相誤差を検出して出力する位相誤差検出器である。位相誤差には、位相の回転方向(即ち、進み方向か遅れ方向か)と位相誤差量(即ち、回転量)とが含まれる。
【0037】
第2のLPF33は、第2の検出器32によって検出された位相誤差の高周波成分を、所定の帯域幅(言い換えると、カットオフ周波数)に応じて除去するフィルタであり、具体的にはローパスフィルタ(LPF)によって構成される。
【0038】
第2のLPF33の帯域幅は、第1のLPF14の帯域幅よりも広く設定されることが好ましい。第2のLPF33の帯域幅と第1のLPF14の帯域幅との間の関係は、第2のLPF33の帯域幅の方が第1のLPF14の帯域幅よりも広い方が好ましいものの、特定の関係に限定されるものではなく、搬送波再生ループの処理が発散しないことが考慮されるなどしたうえで、適当な関係に適宜設定される。第2のLPF33の帯域幅は、例えば、熱雑音が小さく発散し難いと考えられる場合には第1のLPF14の帯域幅の1.5~2.0倍程度に設定されることが考えられ、熱雑音が大きく発散し易いと考えられる場合には第1のLPF14の帯域幅の1.0~1.5倍程度に設定されることが考えられる。
【0039】
第2のNCO34は、第2のLPF33によって高周波成分が除去された位相誤差に基づいて位相回転制御信号を生成する機器であり、数値制御発振器(NCO)によって構成される。
【0040】
第2のNCO34は、具体的には、第2のLPF33から出力される位相誤差に基づいて逆位相の正弦波および余弦波を生成して、生成した前記逆位相の正弦波および余弦波を位相回転制御信号として第3の位相回転器31へと出力して該第3の位相回転器31による位相回転を制御するとともに、前記逆位相の正弦波および余弦波を位相回転制御信号として第4の位相回転器35へも出力する。
【0041】
第4の位相回転器35は、入力される信号の位相を回転する回転器・乗算器であり、第2のNCO34から出力される位相回転制御信号に基づいて、入力される信号の位相を回転する。
【0042】
第4の位相回転器35は、具体的には、第2の等化器2によって周波数特性の劣化が補償されたうえで(即ち、線形歪などが解消されたうえで)第2の検出器32によって検出された位相誤差に基づいて第2のNCO34から出力される位相回転制御信号としての正弦波および余弦波に基づいて、第2の遅延回路36から出力される信号の位相回転を行う。
【0043】
第2の遅延回路36は、第2の等化器2から出力されて第3の位相回転器31へと入力される信号を主に第3の位相回転器31から第2のNCO34までの処理時間の合計に相当する時間だけ遅延させた信号を生成して第4の位相回転器35に対して出力する。
【0044】
上記のように、第2の搬送波再生ループ3は、信号処理ループのなかに等化器が組み込まれていないので、信号処理ループ内の遅延量が第1の搬送波再生ループ1と比べて小さいため、位相誤差の推定精度が向上する。さらに、第2の搬送波再生ループ3における第2のLPF33の帯域幅を第1の搬送波再生ループ1における第1のLPF14の帯域幅よりも広く設定することにより、位相ノイズを補償できる帯域を広げることが可能となる。すなわち、前段の第1の搬送波再生ループ1によって位相ノイズの第1段階の補償が既に行われているので、第2段階の補償としては、搬送波再生ループの処理を発散させないことに留意しても、第1のLPF14の帯域幅よりも広く設定して位相ノイズを補償できる帯域を広げることが可能となる。
【0045】
上記のような搬送波再生回路の作用効果の検証例として、位相変動の補償前後の位相誤差を図2に示す。図2に示す結果から、補償前(即ち、第1の位相回転器11へと入力される信号)は同図(A)に示すように位相誤差が大きく変動しているのに対し、この発明に係る搬送波再生回路による補償後は同図(B)に示すように残留位相誤差が大幅に少ないことが確認される。
【0046】
上記のような搬送波再生回路の作用効果の他の検証例として、位相変動の補償手法の違いによる符号誤り率(BER:Bit Error Rate の略)の違いを図3に示す。図3では、4096QAMにおける従来手法の符号誤り率とこの発明に係る搬送波再生回路の符号誤り率とを示す。図3に示す結果から、従来手法に対して、この発明に係る搬送波再生回路の符号誤り率が改善していることが確認され、特に搬送波対雑音比(CNR:Carrer-to-Noise Ratio の略)が大きい領域において符号誤り率が大きく改善していることが確認される。
【0047】
上記のような搬送波再生回路によれば、信号処理ループのなかに第1の等化器12が組み込まれている第1の搬送波再生ループ1に加えて信号処理ループのなかに等化器が組み込まれていない第2の搬送波再生ループ3を有するようにしており、第2の搬送波再生ループ3は、信号処理ループのなかに等化器が組み込まれていないので、信号処理ループ内の遅延量が第1の搬送波再生ループ1と比べて小さいため、位相誤差の推定精度が向上し、延いては高い復調性能を実現することが可能となる。
【0048】
上記のような搬送波再生回路によれば、また、第2の搬送波再生ループ3における第2のLPF33の帯域幅を第1の搬送波再生ループ1における第1のLPF14の帯域幅よりも広く設定するようにしているので、位相ノイズを補償できる帯域を広げることができ、延いては高い復調性能を一層確実に実現することが可能となる。
【0049】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0050】
例えば、上記の実施の形態では第1の搬送波再生ループ1と第2の搬送波再生ループ3との2つの搬送波再生ループを有するようにしているが、3つ以上の搬送波再生ループを有するようにしてもよい。すなわち、前段の搬送波再生ループから出力される信号の周波数特性の劣化を補償する等化器と、当該等化器から出力される信号に対して搬送波再生処理を行う搬送波再生ループであって等化器を含まない搬送波再生ループと、の組み合わせをさらに1つまたは複数有するようにしてもよい。
【0051】
また、この発明の要点は、等化器を含む搬送波再生ループ(上記の実施の形態では、第1の搬送波再生ループ1)と、搬送波再生ループに組み込まれていない等化器(上記の実施の形態では、第2の等化器2)と、等化器を含まない搬送波再生ループ(上記の実施の形態では、第2の搬送波再生ループ3)と、を有することであり、等化器を含む/含まないに関係のない範囲での搬送波再生ループ1,3それぞれの具体的な態様/構成や搬送波再生ループ1,3それぞれを構成する機器や回路の具体的な構成は、上記の実施の形態における態様・構成に限定されるものではなく、個々の搬送波再生回路の例えば使用目的や使用環境が考慮されるなどしたうえで必要とされる信号処理の内容に合わせて適当な機序が適宜選択され組み合わせられて構成されるようにしてよい。
【符号の説明】
【0052】
1 第1の搬送波再生ループ
11 第1の位相回転器
12 第1の等化器
13 第1の検出器
14 第1のLPF
15 第1のNCO
16 第2の位相回転器
17 第1の遅延回路
2 第2の等化器
3 第2の搬送波再生ループ
31 第3の位相回転器
32 第2の検出器
33 第2のLPF
34 第2のNCO
35 第4の位相回転器
36 第2の遅延回路
図1
図2
図3