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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】無機繊維用分散剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 255/04 20060101AFI20240902BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20240902BHJP
   C08K 7/04 20060101ALI20240902BHJP
   C09K 23/52 20220101ALI20240902BHJP
【FI】
C08F255/04
C08L23/00
C08K7/04
C09K23/52
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020203079
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2021098843
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2019231868
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】樋口 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 友平
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-156007(JP,A)
【文献】特開2013-209615(JP,A)
【文献】特開2013-227501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン(A)と不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(B)とを構成原料として含む酸変性ポリオレフィン(X)を含有してなる無機繊維用分散剤であって、前記(A)がエチレンとα-オレフィン(炭素数3~8)とを構成単量体として含み、前記エチレンとα-オレフィンとの重量比[エチレン/α-オレフィン]が3/97~50/50である無機繊維用分散剤であって、前記酸変性ポリオレフィン(X)のα-オレフィン部分のアイソタクティシティーが1~50%である無機繊維用分散剤(Y)
【請求項2】
前記ポリオレフィン(A)の炭素数1,000個当たり炭素-炭素二重結合数が0.5~20個である請求項1記載の無機繊維用分散剤(Y)
【請求項3】
前記酸変性ポリオレフィン(X)の酸価が、1~100mgKOH/gである請求項1又は2記載の無機繊維用分散剤(Y)
【請求項4】
前記酸変性ポリオレフィン(X)の数平均分子量(Mn)が1,000~60,000である請求項1~3のいずれか記載の無機繊維用分散剤(Y)
【請求項5】
請求項1~4のいずれか記載の無機繊維用分散剤(Y)と、ポリオレフィン樹脂(E)と、無機繊維(F)とを含有してなる無機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物(Z)。
【請求項6】
前記(Y)と、(E)と、(F)との合計重量に基づく割合が、(Y)が0.1~15%、(E)が30~98%、(F)が1~60%である請求項5記載の無機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物(Z)
【請求項7】
請求項5又6記載の無機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物(Z)を成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機繊維用分散剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂の機械的および熱的特性を向上させるために、該樹脂に無機繊維を混合することが行われている。しかし、ポリオレフィン樹脂と無機繊維は親和性が低いことから、成形性、機械的強度等に課題があり、種々の改良策が提案されている。例えば、
無機繊維に予めポリオレフィン樹脂を被覆した後、ポリオレフィン樹脂と混合する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-16883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、無機繊維に予めポリオレフィン樹脂を被覆した後、ポリオレフィン樹脂と混合する方法では無機繊維の分散性は改善されるものの、十分とは言えず、機械的強度が劣るという問題があり、改善が切望されていた。本発明は、無機繊維の分散性に優れる無機繊維用分散剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、ポリオレフィン(A)と不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(B)とを構成原料として含む酸変性ポリオレフィン(X)を含有してなる無機繊維用分散剤であって、前記(A)がエチレンとα-オレフィン(炭素数3~8)とを構成単量体として含み、前記エチレンとα-オレフィンとの重量比[エチレン/α-オレフィン]が3/97~50/50である無機繊維用分散剤であって、前記酸変性ポリオレフィン(X)のα-オレフィン部分のアイソタクティシティーが1~50%である無機繊維用分散剤(Y)である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の無機繊維用分散剤(Y)は、以下の効果を奏する。
(1)無機繊維の分散性に優れる。
(2)無機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物(Z)の成形品に、優れた機械的強度(耐衝撃性等)を付与する。
(3)無機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物(Z)に優れた成形性を付与する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<ポリオレフィン(A)>
本発明におけるポリオレフィン(A)は、エチレンとα-オレフィン(炭素数3~8)とを構成単量体として含む。
前記α-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンが挙げられる。
なお、α-オレフィンは2種又はそれ以上を併用してもよいが、1種が好ましい。
上記α-オレフィンのうち、機械的強度および工業上の観点から、好ましいのはプロピレンである。
また、(A)のうち、工業的な観点から、好ましいのはエチレン/プロピレン共重合体である。
【0008】
ポリオレフィン(A)の構成単量体であるエチレンとα-オレフィン(炭素数3~8)との重量比[エチレン/α-オレフィン]は、3/97~50/50であり、好ましくは5/95~40/60、さらに好ましくは10/90~30/70である。
重量比[エチレン/α-オレフィン]が、3/97未満の場合、分散性に劣り、50/50を超えると機械的強度に劣る。
上記重量比[エチレン/α-オレフィン]は、例えば、1H-MNRにより算出できる。
【0009】
前記(A)には、エチレン、α-オレフィン以外にその他の単量体を構成単量体としてもよい。その場合、(A)を構成する全単量体の重量に基づいて、その他の単量体の重量は、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、とくに好ましくは1重量%以下である。
上記その他の単量体としては、例えば、2-ブテン、イソブテン、炭素数[Cと略記することがある]9~30のα-オレフィン(1-デセン、1-ドデセン等)、C4~30の不飽和単量体(例えば、酢酸ビニル)が挙げられる。
【0010】
ポリオレフィン(A)の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、機械的強度および分散性、成形性の観点から、好ましくは800~50,000であり、さらに好ましくは1,500~40,000、とくに好ましくは2,000~30,000である。
【0011】
本発明におけるGPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)によるMn、重量平均分子量(Mw)の測定条件は以下のとおりである。
装置 :高温ゲルパーミエイションクロマトグラフ
[「Alliance GPC V2000」、Waters(株)製]
検出装置 :屈折率検出器
溶媒 :オルトジクロロベンゼン
基準物質 :ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel 10μm、MIXED-B 2本直列
[ポリマーラボラトリーズ(株)製]
カラム温度 :135℃
【0012】
ポリオレフィン(A)は、炭素数1000個当たりの二重結合数[(A)の分子末端及び/又は分子鎖中の炭素-炭素の二重結合数]は、後述の(ポリ)カルボン酸(無水物)(B)との反応性および生産性の観点から、好ましくは1~20個であり、さらに好ましくは1.5~18個、とくに好ましくは2~15個である。
ここにおいて、該二重結合数は、(A)の1H-NMR(核磁気共鳴)分光法のスペクトルから求めることができる。すなわち、該スペクトル中のピークを帰属し、(A)の4.5~6ppmにおける二重結合由来の積分値および(A)由来の積分値から、(A)の二重結合数と(A)の炭素数の相対値を求め、(A)の炭素1,000個当たりの該分子末端および/または分子鎖中の二重結合数を算出する。後述の実施例における二重結合数は該方法に従った。
【0013】
ポリオレフィン(A)のα-オレフィン部分のアイソタクティシティーは、分散性および機械的強度、成形性の観点から、好ましくは1~50%であり、さらに好ましくは5~45%であり、とくに好ましくは10~40%である。
上記ポリオレフィン(A)のα-オレフィン部分のアイソタクティシティーは、後述の酸変性ポリオレフィン(X)のα-オレフィン部分のアイソタクティシティーに、そのまま反映される傾向がある。
【0014】
上記アイソタクティシティーは、例えば、13C-NMR(核磁気共鳴分光法)を用いて算出することができる。一般的に、側鎖メチル基は両隣(三連子、トリアッド)、その三連子の両隣隣(五連子、ペンタッド)、更にその五連子の両隣(七連子、ヘプタッド)程度までのメチル基との立体配置(メソ又はラセモ)の影響を受け、異なる化学シフトにピークが観測されることが知られており、立体規則性の評価はペンタッドについて行うことが一般的であり、本発明におけるアイソタクティシティーも、ペンタッドの評価に基づいて算出することができる。
即ち、α-オレフィンがプロピレンの場合、13C-NMRで得られるプロピレン中の側鎖メチル基由来の炭素ピークについて、ペンタッド各ピーク(H)、ペンタッドがメソ構造のみで形成されるアイソタクティックのプロピレン中のメチル基由来のピーク(Ha)とした場合、アイソタクティシティーは、以下の式で算出される。
アイソタクティシティー(%)=[(Ha)/Σ(H)]×100 (1)
但し、式中、Haはアイソタクティック(ペンタッドがメソ構造のみで形成される)の信号のピーク高さ、Hはペンタッドの各ピーク高さである。
なお、後述の(X)のα-オレフィン部分のアイソタクティシティーについても上記同様に測定できる。
【0015】
本発明におけるポリオレフィン(A)の製造方法は、例えば、高分子量(好ましくはMnが60,000~400,000、さらに好ましくはMnが80,000~250,000のポリオレフィン(A0)を熱減成する方法が挙げられる。
【0016】
熱減成法には、前記ポリオレフィン(A0)を(1)有機過酸化物不存在下、例えば300~450℃で0.5~10時間、熱減成する方法、および(2)有機過酸化物[例えば2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン]存在下、例えば180~300℃で0.5~10時間、熱減成する方法等が含まれる。
これらのうち工業的な観点および分散性の観点から、好ましいのは、分子末端および/または分子鎖中の二重結合数のより多いものが得やすい(1)の方法である。
【0017】
上記(A)を構成する単量体であるエチレンとα-オレフィンとの重量比[エチレン/α-オレフィン]は、高分子量ポリオレフィン(A0)の重量比[エチレン/α-オレフィン]が、そのまま維持される傾向がある。
また、熱減成温度が高い、熱減成時間が長いほど、炭素数1000個当たりの二重結合数は、大となる傾向がある。
さらに、(A0)のMnが大、熱減成温度が高い、熱減成時間が長いほど、(A)のMnは小となる傾向がある。
また、(A0)のアイソタクティシティーが大であるほど、(A)のアイソタクティシティーが大である傾向がある。
【0018】
<不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(B)>
本発明における不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(B)は、重合性不飽和基を1個有する炭素数[以下、Cと略記することがある]3~30の(ポリ)カルボン酸(無水物)が含まれる。
なお、本発明において不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)は、不飽和モノカルボン酸、不飽和ポリカルボン酸および/または不飽和ポリカルボン酸無水物を意味する。
該(B)のうち、不飽和モノカルボン酸としては、脂肪族モノカルボン酸(C3~24、例えばアクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸)、脂環含有モノカルボン酸(C6~24、例えばシクロヘキセンカルボン酸);不飽和ポリ(2~3またはそれ以上)カルボン酸(無水物)としては、不飽和ジカルボン酸(無水物)[脂肪族ジカルボン酸(無水物)(C4~24、例えばマレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、およびこれらの無水物)、脂環含有ジカルボン酸(無水物)(C8~24、例えばシクロへキセンジカルボン酸、シクロヘプテンジカルボン酸、ビシクロヘプテンジカルボン酸、メチルテトラヒドロフタル酸、およびこれらの無水物)等]等が挙げられる。(B)は1種単独でも、2種以上併用してもいずれでもよい。
上記(B)のうち、ポリオレフィン(A)との反応性および分散性の観点から、好ましいのは、不飽和ジカルボン酸無水物、さらに好ましいのは無水マレイン酸である。
【0019】
<酸変性ポリオレフィン(X)>
本発明における酸変性ポリオレフィン(X)は、前記ポリオレフィン(A)と不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(B)とを構成原料(構成単位)として含む。好ましくは、前記ポリオレフィン(A)と不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(B)とを、ラジカル開始剤の不存在下または存在下で反応させてなる。
【0020】
(A)と(B)との重量比[(A)/(B)]は、分散性および機械的強度のバランスの観点から、好ましくは80/20~99.5/0.5、さらに好ましくは90/10~99/1で反応させてなる。
【0021】
酸変性ポリオレフィン(X)は、好ましくは、ラジカル開始剤(f)の存在下で、前記ポリオレフィン(A)および不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(B)に、必要により適当な有機溶媒[C3~18、例えば炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭化水素(ジ-、トリ-、又はテトラクロロエタン、ジクロロブタン等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、ジ-t-ブチルケトン等)、エーテル(エチル-n-プロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジ-t-ブチルエーテル、ジオキサン等)]を加え反応させて製造することができる。
なお、上記ラジカル開始剤(f)は、公知のもの、例えば、アゾ開始剤(アゾビスイソブチロニトリル等)、過酸化物開始剤(ジクミルパーオキサイド等)が挙げられる。
上記(f)のうち、過酸化物開始剤が好ましい。
【0022】
反応温度は(A)、(B)の反応性および生産性の観点から好ましくは100~270℃、さらに好ましくは120~250℃、とくに好ましくは130~240℃である。
【0023】
前記酸変性ポリオレフィン(X)は、下記要件(1)~(3)のうち、好ましくは1要件、さらに好ましくは2要件、とくに好ましくは3要件を満たす。
(1)酸価が、1~100mgKOH/g
(2)数平均分子量(Mn)が1,000~60,000
(3)α-オレフィン部分のアイソタクティシティーが1~50%
【0024】
要件(1):
(X)の酸価は、機械的強度および(X)の生産性の観点から、好ましくは1~100mgKOH/g(以下数値のみを示す)、さらに好ましくは3~75、とくに好ましくは5~50である。ここにおける酸価は、JIS K0070に準じて以下の(i)~(iii)の手順で測定して得られる値である。
(i)100℃に温度調整したキシレン100gに(X)1gを溶解させる。
(ii)70℃まで冷却後、70℃でフェノールフタレインを指示薬として、0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液[商品名「0.1mol/Lエタノール性水酸化カリウム溶液」、和光純薬(株)製]で滴定[滴定速度:2mL/分]を行う。
(iii)滴定に要した水酸化カリウム量をmgに換算して酸価(単位:mgKOH/g)を算出する。
なお、上記測定では1個の酸無水物基は1個のカルボキシル基と等価になる結果が得られる。後述の実施例における酸価は該方法に従った。
また、上記酸価は、(A)の有する二重結合数、(A)の重量、(B)の種類、重量で適宜、調整可能である。
【0025】
要件(2):
(X)のMnは、機械的強度および分散性、成形性の観点から、好ましくは1,000~60,000、さらに好ましくは2,000~50,000、とくに好ましくは3,000~40,000である。
また、上記(X)のMnは、(A)のMn、(B)の種類、重量、(A)と(B)との反応の制御により、適宜、調整可能である。
【0026】
要件(3):
(X)のα-オレフィン部分のアイソタクティシティーは、機械的強度および分散性、成形性の観点から、好ましくは1~50%であり、さらに好ましくは5~45%、とくに好ましくは10~40%である。
また、(X)のα-オレフィン部分のアイソタクティシティーは、前記のとおり、(A)、(A0)のアイソタクティシティーにより、適宜、調整可能である。
すなわち、上記α-オレフィン部分のアイソタクティシティーは、(X)の構成原料であるポリオレフィン(A)由来のα-オレフィン部分のアイソタクティシティーである。
【0027】
<無機繊維用分散剤(Y)>
本発明の無機繊維用分散剤(Y)は、前記酸変性ポリオレフィン(X)を含有してなる。該(Y)には、後述の無機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物(Z)に含有してもよい添加剤(G)を、予め含有させることができる。
無機繊維用分散剤(Y)は、種々の無機繊維分散として使用可能であるが、とりわけ無機繊維(G)を、熱可塑性樹脂[とりわけ、ポリオレフィン樹脂(E)]中で分散させるための分散剤として好適に使用できる。
【0028】
<ポリオレフィン樹脂(E)>
本発明におけるポリオレフィン樹脂(E)には、前記(Y)の製造方法として例示した重合法、または高分子量ポリオレフィン(好ましくはMn80,000~400,000)の減成(熱的、化学的および機械的減成)法で得られるものが含まれ、例えば、前記例示のエチレン単位含有(プロピレン単位非含有)(共)重合体、プロピレン単位含有(エチレン単位非含有)(共)重合体、エチレン/プロピレン共重合体およびC4以上のオレフィンの(共)重合体等が含まれる。
【0029】
(E)と(X)の組合せとしては、(E)の構成単位と(X)を構成するポリオレフィン(A)の構成単位が同じか類似している場合が、(E)と(X)との相溶性の観点から好ましい。例えば、(E)がプロピレン単位含有(エチレン単位非含有)(共)重合体である場合は、(X)を構成する(A)もプロピレン単位含有(エチレン単位非含有)(共)重合体である場合が好ましい。
【0030】
(E)のMnは、ポリオレフィン樹脂基材の機械的強度および(X)との相溶性の観点から好ましくは10,000~500,000、さらに好ましくは20,000~400,000である。
【0031】
<無機繊維(F)>
本発明における無機繊維(F)としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、セラミック繊維、岩石繊維、スラッグ繊維、ステンレス繊維、ウォラストナイト、炭化ケイ素繊維が挙げられる。
上記(F)のうち、成形品の機械的強度の観点から、好ましいのは炭素繊維、ガラス繊維である。これらの繊維は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
ガラス繊維の具体例としては、ガラスロービング、ガラスチョップドストランド、ガラスミルドファイバー、ガラスステープル、ガラスクロス等が挙げられる。
【0033】
炭素繊維としては、公知の各種炭素繊維、例えばポリアクリロニトリル、レーヨン、ピッチ、炭化水素ガスなどを原料とする炭素繊維、黒鉛繊維、およびこれらにニッケル、アルミニウム、銅などの金属をコーティングした金属被覆炭素繊維等が挙げられる。機械的強度の観点から好ましいのはポリアクリロニトリル系炭素繊維、および、これにさらに金属をコーティングした金属被覆炭素繊維である。
【0034】
(F)の形状についてはとくに限定されないが、(F)の繊維径は成形品の機械的強度および成形性の観点から、好ましくは1~1,000μm、さらに好ましくは3~500μmである。また、(F)の繊維長は成形品の機械的強度および成形性の観点から、好ましくは1~100mm、さらに好ましくは2~50mmである。
【0035】
<無機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物(Z)>
本発明の無機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物(Z)は、前記分散剤(Y)と、ポリオレフィン樹脂(E)と、無機繊維(F)とを含有してなる。
該樹脂組成物において、(Y)と、(E)と、(F)との合計重量に基づく各成分の割合は、(Y)は、(F)の分散性および成形品の機械的強度の観点から好ましくは0.1~15%、さらに好ましくは0.5~12%、とくに好ましくは1~10%;(E)は、成形品の生産性および機械的強度の観点から好ましくは30~98%、さらに好ましくは40~85%、とくに好ましくは50~80%;(F)は、成形品の機械的強度および生産性の観点から好ましくは1~60%、さらに好ましくは5~55%、とくに好ましくは10~50%である。
【0036】
本発明の無機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物(Z)には、上記(X)、(E)、(F)以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で必要によりさらに種々の添加剤(G)を含有させることができる。
(G)としては、着色剤(G1)、難燃剤(G2)、充填剤(G3)、滑剤(G4)、帯電防止剤(G5)、(X)以外の分散剤(G6)、酸化防止剤(G7)および紫外線吸収剤(G8)からなる群から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0037】
着色剤(G1)としては顔料および染料が挙げられる。
顔料としては、無機顔料(アルミナホワイト、グラファイト等);有機顔料(アゾレーキ系等)が挙げられる。
染料としては、アゾ系、アントラキノン系等が挙げられる。
【0038】
難燃剤(G2)としては、有機難燃剤〔含窒素化合物[尿素化合物、グアニジン化合物等の塩等]、含硫黄化合物[硫酸エステル、スルファミン酸、およびそれらの塩、エステル、アミド等]、含珪素化合物[ポリオルガノシロキサン等]、含リン系[リン酸エステル等]等〕;無機難燃剤〔三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ポリリン酸アンモニム等〕等が挙げられる。
【0039】
充填剤(G3)としては、炭酸塩(炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、硫酸塩(硫酸アルミニウム等)、亜硫酸塩(亜硫酸カルシウム等)、金属硫化物(二硫化モリブデン等)、珪酸塩(珪酸アルミニウム等)、珪藻土、珪石粉、タルク、シリカ、ゼオライト、木質材料(木粉等)およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0040】
滑剤(G4)としては、ワックス(カルナバロウワックス等)、高級脂肪酸(ステアリン酸等)、高級アルコール(ステアリルアルコール等)、高級脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド等)等が挙げられる。
【0041】
帯電防止剤(G5)としては、下記および米国特許第3,929,678および4,331,447号明細書に記載の、非イオン性、カチオン性、アニオン性および両性の界面活性剤が挙げられる。
(1)非イオン性界面活性剤
アルキレンオキシド(以下AOと略記)付加型ノニオニックス、例えば疎水性基(C8~24またはそれ以上)を有する活性水素原子含有化合物[飽和および不飽和の、高級アルコール(C8~18)、高級脂肪族アミン(C8~24)および高級脂肪酸(C8~24)等]の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(AO付加物およびポリアルキレングリコールの高級脂肪酸モノ-およびジ-エステル);多価アルコール(C3~60)の高級脂肪酸(C8~24)エステルの(ポリ)オキシアルキレン誘導体(ツイーン型ノニオニックス等);高級脂肪酸(上記)の(アルカノール)アミドの(ポリ)オキシアルキレン誘導体;多価アルコール(上記)アルキル(C3~60)エーテルの(ポリ)オキシアルキレン誘導体;およびポリオキシプロピレンポリオール[多価アルコールおよびポリアミン(C2~10)のポリオキシプロピレン誘導体(プルロニック(登録商標)型およびテトロニック型ノニオニックス)];多価アルコール(上記)型ノニオニックス(例えば多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールアルキル(C3~60)エーテル、および脂肪酸アルカノールアミド);並びに、アミンオキシド型ノニオニックス[例えば(ヒドロキシ)アルキル(C10~18)ジ(ヒドロキシ)アルキル(C1~3)アミンオキシド]。
【0042】
(2)カチオン性界面活性剤
第4級アンモニウム塩型カチオニックス[テトラアルキルアンモニウム塩(C11~100)アルキル(C8~18)トリメチルアンモニウム塩およびジアルキル(C8~18)ジメチルアンモニウム塩等];トリアルキルベンジルアンモニウム塩(C17~80)(ラウリルジメチルベンジルアンモニウム塩等);アルキル(C8~60)ピリジニウム塩(セチルピリジニウム塩等);(ポリ)オキシアルキレン(C2~4)トリアルキルアンモニウム塩(C12~100)(ポリオキシエチレンラウリルジメチルアンモニウム塩等);およびアシル(C8~18)アミノアルキル(C2~4)もしくはアシル(C8~18)オキシアルキル(C2~4)トリ[(ヒドロキシ)アルキル(C1~4)]アンモニウム塩(サパミン型4級アンモニウム塩)[これらの塩には、例えばハライド(クロライド、ブロマイド等)、アルキルサルフェート(メトサルフェート等)および有機酸(下記)の塩が含まれる];並びにアミン塩型カチオニックス:1~3級アミン〔例えば高級脂肪族アミン(C12~60)、脂肪族アミン(メチルアミン、ジエチルアミン等)のポリオキシアルキレン誘導体[エチレンオキシド(以下EOと略記)付加物等]、およびアシルアミノアルキルもしくはアシルオキシアルキル(上記)ジ(ヒドロキシ)アルキル(上記)アミン(ステアロイロキシエチルジヒドロキシエチルアミン、ステアラミドエチルジエチルアミン等)〕の、無機酸(塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸等)塩および有機酸(C2~22)塩。
【0043】
(3)アニオン性界面活性剤
高級脂肪酸(上記)塩(ラウリル酸ナトリウム等)、エーテルカルボン酸[EO(1~10モル)付加物のカルボキシメチル化物等]、およびそれらの塩;硫酸エステル塩(アルキルおよびアルキルエーテルサルフェート等)、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステルおよび硫酸化オレフィン;スルホン酸塩[アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸ジアルキルエステル型、α-オレフィン(C12~18)スルホン酸塩、N-アシル-N-メチルタウリン(イゲポンT型等)等];並びにリン酸エステル塩等(アルキル、アルキルエーテルおよびアルキルフェニルエーテルホスフェート等)。
【0044】
(4)両性界面活性剤:
カルボン酸(塩)型アンフォテリックス[アミノ酸型アンフォテリックス(ラウリルアミノプロピオン酸(塩)等)、およびベタイン型アンフォテリックス(アルキルジメチルベタイン、アルキルジヒドロキシエチルベタイン等)等];硫酸エステル(塩)型アンフォテリックス[ラウリルアミンの硫酸エステル(塩)、ヒドロキシエチルイミダゾリン硫酸エステル(塩)等];スルホン酸(塩)型アンフォテリックス[ペンタデシルスルホタウリン、イミダゾリンスルホン酸(塩)等];並びにリン酸エステル(塩)型アンフォテリックス等[グリセリンラウリル酸エステルのリン酸エステル(塩)等]。
【0045】
上記のアニオン性および両性界面活性剤における塩には、金属塩、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)およびIIB族金属(亜鉛等)の塩;アンモニウム塩;並びにアミン塩および4級アンモニウム塩が含まれる。
【0046】
分散剤(G6)としては、Mn1,000~20,000のポリマー、例えばビニル樹脂〔ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、変性ポリオレフィン[酸化ポリエチレン(ポリエチレンをオゾン等で酸化し、カルボキシル基、カルボニル基および/または水酸基等を導入したもの)等]、および上記ポリオレフィン以外のビニル樹脂〔ポリハロゲン化ビニル[ポリ塩化ビニル、ポリ臭化ビニル等]、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメチルビニルエーテル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル[ポリ(メタ)アクリル酸メチル等]およびスチレン樹脂[ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン(AS)樹脂等〕等〕;ポリエステル樹脂[ポリエチレンテレフタレート等]、ポリアミド樹脂[6,6-ナイロン、12-ナイロン等]、ポリエーテル樹脂[ポリエーテルサルフォン等]、ポリカーボネート樹脂[ビスフェノールAとホスゲンの重縮合物等]、およびそれらのブロック共重合体等が挙げられる。
【0047】
酸化防止剤(G7)としては、ヒンダードフェノール化合物[p-t-アミルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、2-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHA)、6-t-ブチル-2,4,-メチルフェノール(24M6B)、2,6-ジ-t-ブチルフェノール(26B)等];
【0048】
含イオウ化合物[N,N’-ジフェニルチオウレア、ジミリスチルチオジプロピオネート等];
【0049】
含リン化合物[2-t-ブチル-α-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-p-クメニルビス(p-ノニルフェニル)ホスファイト、ジオクタデシル-4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルベンジルホスホネート等]等が挙げられる。
【0050】
紫外線吸収剤(G8)としては、サリチレート化合物[フェニルサリチレート等];ベンゾフェノン化合物[2,4-ジヒドロキシべンゾフェノン等];ベンゾトリアゾール化合物[2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)-ベンゾトリアゾール等]等が挙げられる。
【0051】
無機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物(Z)中の(G)全体の含有量は、該組成物の全重量に基づいて、例えば20%以下、各(G)の機能発現および工業上の観点から好ましくは0.05~10%、さらに好ましくは0.1~5%である。
該組成物の全重量に基づく各添加剤の使用量は、(G1)は、例えば5%以下、好ましくは0.1~3%;(G2)は、例えば8%以下、好ましくは1~3%;(G3)は、例えば5%以下、好ましくは0.1~1%;(G4)は、例えば8%以下、好ましくは1~5%;(G5)は、例えば8%以下、好ましくは1~3%;(G6)は、例えば1%以下、好ましくは0.1~0.5%;(G7)は、例えば2%以下、好ましくは0.05~0.5%;(G8)は、例えば2%以下、好ましくは0.05~0.5%である。
【0052】
上記(G1)~(G8)の間で添加剤が同一で重複する場合は、それぞれの添加剤が該当する添加効果を奏する量をそのまま使用するのではなく、他の添加剤としての効果も同時に得られることをも考慮し、使用目的に応じて使用量を調整するものとする。
【0053】
本発明の無機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物(Z)の製造方法としては、
(1)前記(Y)、(E)、(F)および必要により(G)を一括混合して無機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物(Z)とする方法(一括法);
(2)(E)の一部、(Y)の全量、および必要により(G)の一部もしくは全量を混合して高濃度の(Y)を含有するマスターバッチポリオレフィン樹脂組成物を一旦作成し、その後残りの(E)、(F)および必要により(G)の残りを加えて混合して無機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物(Z)とする方法(マスターバッチ法)が含まれる。
(Y)の混合効率の観点から好ましいのは(2)の方法である。
【0054】
前記の無機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物(Z)の製造方法における具体的な混合方法としては、
(i)混合する各成分を、例えば粉体混合機〔「ヘンシェルミキサー」[商品名「ヘンシェルミキサーFM150L/B」、三井鉱山(株)、社名変更後は日本コークス工業(株)製]、「ナウターミキサー」[商品名「ナウターミキサーDBX3000RX」、ホソカワミクロン(株)製]、「バンバリーミキサー」[商品名「MIXTRON BB-16MIXER」、(株)神戸製鋼所製]等〕で混合した後、溶融混練装置[バッチ混練機、連続混練機(単軸混練機、二軸混練機等)等]を使用して通常120~220℃で2~30分間混練する方法;
(ii)混合する各成分をあらかじめ粉体混合することなく、上記と同様の溶融混練装置を使用して同様の条件で直接混練する方法が挙げられる。
これらの方法のうち混合効率の観点から(i)の方法が好ましい。
【0055】
本発明の無機繊維含有ポリオレフィン組成物(Z)は、無機繊維の分散性に優れ、後述の成形品は機械的強度に優れる。該成形品の機械的強度は後述の耐衝撃性等により評価できる。一方、無機繊維の分散性は後述のポリオレフィン樹脂(E)と無機繊維(F)との親和性等により評価できる。また、成形性は、成形後の金型を目視して評価した。
【0056】
<成形品、成形物品>
本発明の成形品は、前記無機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物(Z)を成形してなる。
成形方法としては、射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形(キャスト法、テンター法、インフレーション法等)等が挙げられ、目的に応じて単層成形、多層成形あるいは発泡成形等の手段も取り入れた任意の方法で成形できる。成形品の形態としては、板状、シート状、フィルム、織物、繊維(不織布等も含む)等が挙げられる。
【0057】
本発明の成形品は、優れた機械的強度を有すると共に、良好な塗装性および印刷性を有し、成形品に塗装および/または印刷を施すことにより成形物品が得られる。
該成形品を塗装する方法としては、例えばエアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電スプレー塗装、浸漬塗装、ローラー塗装、刷毛塗り等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
塗料としては、例えば、ポリエステルメラミン樹脂塗料、エポキシメラミン樹脂塗料、アクリルメラミン樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料等のプラスチックの塗装に一般に用いられる塗料が挙げられ、これらのいわゆる極性の比較的高い塗料でも、また極性の低い塗料(オレフィン系等)でも使用することができる。
塗装膜厚(乾燥膜厚)は、目的に応じて適宜選択することができるが通常10~50μmである。
【0058】
また、該成形品または成形品に塗装を施した上にさらに印刷する方法としては、一般的にプラスチックの印刷に用いられている印刷法であればいずれも用いることができ、例えばグラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、ドライオフセット印刷およびオフセット印刷等が挙げられる。
印刷インキとしてはプラスチックの印刷に通常用いられるもの、例えばグラビアインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ、パッドインキ、ドライオフセットインキおよびオフセットインキが使用できる。
【0059】
本発明の無機繊維用分散剤(Y)は、無機繊維の分散性に優れ、無機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物(Z)の成形品は、機械的強度(耐衝撃性等)、成形性に優れる。
このため、種々のポリオレフィン成形品用途に好適に使用できる。
【実施例
【0060】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0061】
<製造例1>
反応容器に、プロピレン85%、エチレン15%を構成単位とするポリオレフィン(A0-1)[商品名「Vistamaxx6202」、Exxonmobil社製、以下同じ。]1000gを仕込み、液相に窒素通気しながら、マントルヒーターにて加熱溶融し、撹拌しながら380℃で50分間の条件で、熱減成を行い、ポリオレフィン(A-1)を得た。
ポリオレフィン(A-1)のMnは3,900、炭素1,000個当たりの分子末端および/または分子鎖中の二重結合数は7.4個、アイソタクティシティーは17%であった。
【0062】
<製造例2~9、比較製造例1>
製造例1において、表1にしたがった以外は、製造例1と同様に行い、各ポリオレフィン(A)を得た。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
<実施例1>
反応容器に(A-1)100部、無水マレイン酸(B-1)5部を仕込み、窒素置換後、窒素通気下に180℃まで加熱昇温して均一に溶解させた。ここにラジカル開始剤[ジクミルパーオキサイド、商品名「パークミルD」、日油(株)製](f-1)2部をキシレン5部に溶解させた溶液を5分間で滴下した後、キシレン還流下1時間撹拌を続けた。その後、減圧下(1.5kPa、以下同じ。)で未反応の無水マレイン酸を留去して、酸変性ポリオレフィン(X-1)を含有してなる無機繊維用分散剤(Y-1)を得た。
なお、(X-1)は、酸価は26、Mnは4,500、アイソタクティシティーは14%であった。
【0065】
<実施例2~15、比較例1>
実施例1において、表2にしたがった以外は、実施例1と同様に行い、各酸変性ポリオレフィン(X)を含有してなる各無機繊維分散剤(Y)を得た。結果を表2に示す。
【0066】
【表2】
【0067】
<実施例16~37、比較例11~15>
前記得られた分散剤(Y)、および下記の使用原料[ポリオレフィン樹脂(E)、無機繊維(F)]を、表3の配合組成(部)に従って、それぞれヘンシェルミキサーで3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、180℃、100rpm、滞留時間5分の条件で溶融混練して無機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物(Z)を得た。
各無機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物(Z)について射出成形機[商品名「PS40E5ASE」、日精樹脂工業(株)]を用い、シリンダー温度190℃、金型温度60℃で成形し、所定の試験片を作成後、後述の評価方法に従って評価した。結果を表3に示す。
【0068】
なお、表3中の使用原料は、以下のとおりである。
<使用原料>
ポリオレフィン樹脂(E)
(E-1):市販のポリプロピレン[商品名「サンアロマーPL500A」、
サンアロマー(株)製、Mn300,000]
(E-2):市販のポリエチレン[商品名「ノバテックHJ490」、
日本ポリエチレン(株)製、Mn300,000]
(E-3):市販のエチレン/プロピレン共重合体
[商品名「サンアロマーPB222A」、サンアロマー(株)製、
Mn350,000]
【0069】
無機繊維(F)
(F-1):ガラス繊維[商品名「FT157C」、旭ファイバーグラス(株)製、
繊度2,200tex、繊維径16μm]を繊維長5mmにカットしたもの
(F-2):炭素繊維[商品名「トレカT700SC-1200」、東レ(株)製、
ポリアクリロニトリル系、繊度800tex、フィラメント数12,000]
を繊維長5mmにカットしたもの
(F-3):アルミナ繊維[商品名「デンカアルセンバルク」、デンカ(株)製、
繊維径5μm]
(F-4):ステンレス繊維[商品名「ナスロン」、山中産業(株)製、
繊維径8μm]を繊維長5mmにカットしたもの
(F-5):ウォラストナイト[商品名「ウォラストナイト」、関西マテック(株)製]
(F-6):炭化ケイ素繊維[商品名「チラノ繊維ZMI」、宇部興産(株)製、
繊度200tex、繊維径11μm]を繊維長5mmにカットしたもの
【0070】
<1>耐衝撃性(単位:kJ/m2
JISK7111に準拠してシャルピー衝撃値を測定した。
【0071】
<2>ポリオレフィン樹脂(E)と無機繊維(F)との親和性
上記<1>の試験後の試験片の破断面を観察し、(E)と(F)の親和性を以下の評価基準で評価した。
<評価基準>
◎:(E)/(F)間に界面剥離なし
○:(E)/(F)間に界面剥離があるがごく一部
△:(E)/(F)間に界面剥離がやや多い
×:(E)/(F)間に界面剥離が多い
【0072】
<3>成形性(耐金型汚染性)
得られた無機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物(Z)を、100回成形を行った。実施後の金型を目視して、以下の基準で評価した。
<評価基準>
◎:金型に変化なし
○:金型に汚れがごくわずか
△:金型に汚れが確認できる
×:金型に汚れが多い
【0073】
【表3】
【0074】
表1~3の結果から、本発明の無機繊維分散剤は、比較のものと比べて、無機繊維の分散性に優れ、無機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物に優れた成形性、成形品に優れた機械的強度を付与することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の無機繊維分散剤は、無機繊維の分散性に優れ、無機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物に優れた成形性を付与し、成形品は、優れた機械的強度を有するため、電気・電子機器用、搬送材用、生活資材用および建材用等の幅広い分野に好適に適用することができることから、極めて有用である。