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特許7547016電解コンデンサ用電解液及び電解コンデンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】電解コンデンサ用電解液及び電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/035 20060101AFI20240902BHJP
   H01G 9/145 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H01G9/035
H01G9/145
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020213978
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2021106261
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2019236903
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】白石 雄基
(72)【発明者】
【氏名】芝 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 比祐吾
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-176144(JP,A)
【文献】特開平01-077110(JP,A)
【文献】特開2019-029498(JP,A)
【文献】国際公開第2019/082904(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/035
H01G 9/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリルモノマー(a)を必須の構成単量体とする重合体(A)、溶剤(C)及び電解質(D)を含む電解コンデンサ用電解液であって、前記(メタ)アクリルモノマー(a)として下記一般式(1)で表される(メタ)アクリルモノマー(a1)を含み、前記(メタ)アクリルモノマー(a1)の含有量が前記重合体(A)を構成する全単量体に対して30~100重量%であることを特徴とする電解コンデンサ用電解液。
CH=CR-CO-X-R (1)
[一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基、R炭素数1~8の飽和鎖状脂肪族炭化水素基、Xはジオールの水酸基から水素原子を除いた残基を示す。]
【請求項2】
前記一般式(1)中、Xがポリアルキレンエーテルグリコールの水酸基から水素原子を除いた残基である請求項に記載の電解コンデンサ用電解液。
【請求項3】
前記重合体(A)の数平均分子量が1,000~100,000である請求項1又は2に記載の電解コンデンサ用電解液。
【請求項4】
前記重合体(A)を構成する前記(メタ)アクリルモノマー(a)として、更にカルボキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(a2)を含む請求項1~のいずれか1項に記載の電解コンデンサ用電解液。
【請求項5】
更にホウ酸化合物(E)を含有する請求項1~のいずれか1項に記載の電解コンデンサ用電解液。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の電解コンデンサ用電解液を含む電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電解コンデンサ用電解液及び該電解液を含む電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサは、様々な電気製品及び電子製品において広く用いられており、その用途は電荷の蓄積、ノイズの除去及び位相の調整等多岐に渡っている。近年、電解コンデンサをより高い駆動電圧でも動作可能にするため、耐電圧向上のニーズが高まっており、様々な改良が試みられている。特に駆動時に高温になりやすい用途に対しては高温での耐電圧の向上が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリエチレングリコール-ポリアクリル酸グラフト共重合体又はポリプロピレングリコール-ポリアクリル酸グラフト共重合体を電解コンデンサ用電解液に含有させることで、耐電圧を向上させる技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーを構成成分とする重合体を含有する電解液を用いることでコンデンサの耐電圧を向上させることが開示されている。しかし、特許文献1及び2に記載の電解コンデンサでは耐電圧が向上するものの、電解液の粘度が高く導電率が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-217067号公報
【文献】国際公開第2017/023800号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は電解液の導電率を低下することなく高温での優れた耐電圧を有する電解コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち、本発明は、(メタ)アクリルモノマー(a)を必須の構成単量体とする重合体(A)、溶剤(C)及び電解質(D)を含む電解コンデンサ用電解液であって、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリルモノマー(a1)の含有量が前記重合体(A)を構成する全単量体に対して30~100重量%であることを特徴とする電解コンデンサ用電解液;並びに当該当電解コンデンサ用電解液を含む電解コンデンサである。
CH=CR-CO-X-R (1)
[一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基、R炭素数1~8の飽和鎖状脂肪族炭化水素基、Xはジオールの水酸基から水素原子を除いた残基を示す。]
【発明の効果】
【0008】
本発明の電解コンデンサ用電解液を用いることで、導電率の低下を生じることなく高温での優れた耐電圧を有する電解コンデンサを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の電解コンデンサ用電解液は、(メタ)アクリルモノマー(a)を必須の構成単量体とする重合体(A)、溶剤(C)及び電解質(D)を必須成分として含む。
【0010】
本発明における重合体(A)において、一般式(1)で表される(メタ)アクリルモノマー(a1)の含有量は、重合体(A)を構成する全単量体の合計重量に対して、30~100重量%である。一般式(1)で表される(メタ)アクリルモノマー(a1)の含有量が、重合体(A)を構成する全単量体の合計重量に対して30重量%未満であると、耐電圧が悪化する。
また、前記の一般式(1)で表される(メタ)アクリルモノマー(a1)の含有量は、耐電圧の観点から、重合体(A)を構成する全単量体の合計重量に対して、好ましくは50~100重量%、更に好ましくは70~100重量%である。
【0011】
なお、本発明おいて、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」と「メタクリロイル」との双方又はいずれかを意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」との双方又はいずれかを意味し、「(メタ)アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」との双方又はいずれかを意味し、「(メタ)アクリロイルオキシ」は「アクリロイルオキシ」と「メタクリロイルオキシ」との双方又はいずれかを意味する。
【0012】
本発明における(メタ)アクリルモノマー(a)としては、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリルモノマー(a1)、カルボキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(a2)及びその他の(メタ)アクリルモノマー(a3)等が挙げられる。
CH=CR-CO-X-R (1)
[一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基、Rは脂肪族炭化水素基、Xはジオールの水酸基から水素原子を除いた残基を示す。]
【0013】
一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、高温でのポリマーの熱安定性の観点から好ましくはメチル基である。
は脂肪族炭化水素基である。
脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~8の飽和鎖状脂肪族炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等)及び炭素数4~6の飽和脂環式炭化水素基(例えばシクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)等が挙げられる。
これらの基のうち、溶解性の観点から好ましくは炭素数1~8の飽和鎖状脂肪族炭化水素基である。
【0014】
Xはジオールの水酸基から水素原子を除いた残基である。
前記ジオールとしては、炭素数2~36のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール等);炭素数4~36のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等);炭素数4~36の脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等);上記アルキレングリコールまたは脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(以下AOと略記する)〔EO、プロピレンオキサイド(以下POと略記する)、ブチレンオキサイド(以下BOと略記する)等〕付加物(付加モル数1~120);ビスフェノール化合物(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど)のAO(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2~30);ポリラクトンジオール(ポリε-カプロラクトンジオール等);ヒマシ油系ポリオール;及びポリブタジエンジオール等が挙げられる。
これらのジオールのうち、電解液の低粘度化の観点から好ましくはポリアルキレンエーテルグリコールであり、更に好ましくは炭素数4~36のポリアルキレンエーテルグリコールであり、特に好ましくは炭素数4~36のポリエチレングリコール及び炭素数6~36のポリプロピレングリコールであり、最も好ましくは炭素数4~20のポリエチレングリコール及び炭素数6~20のポリプロピレングリコールである。
【0015】
本発明における一般式(1)で表される(メタ)アクリルモノマー(a1)の具体例としては、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの(a1)のうち、好ましくはメトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート及びメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートである。
【0016】
本発明における重合体(A)を構成する(メタ)アクリルモノマー(a)としては、(メタ)アクリルモノマー(a1)以外に、カルボキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(a2)を構成単量体として用いてもよい。
カルボキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(a2)としては、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーへの炭素数4~10の酸無水物付加物(a21)及び(メタ)アクリル酸(a22)等が挙げられる。
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル及びグリセリンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(a21)において、炭素数4~10の酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸及びヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0017】
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーへの炭素数4~10の酸無水物付加物(a21)の具体例としては、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルの無水コハク酸付加物等のコハク酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、マレイン酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、フタル酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル及びヘキサヒドロフタル酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル等が挙げられる。
これらの(a2)のうち、耐電圧の観点から好ましくは、(メタ)アクリル酸及びコハク酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチルである。
また、前記カルボキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(a2)を使用する場合、前記カルボキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(a2)の含有量は、耐電圧の観点から、重合体(A)を構成する全単量体の合計重量に対して、好ましくは0.001~70重量%、更に好ましくは0.01~30重量%である。
【0018】
本発明における重合体(A)を構成する、前述の一般式(1)で表されるモノマー(a1)及びカルボキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(a2)以外のその他の(メタ)アクリルモノマー(a3)としては、炭素数4~20のアルキル(メタ)アクリレート[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル及び(メタ)アクリル酸ラウリル等];
炭素数3~20の(メタ)アクリルアミド[(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド及びN,N-ジベンジル(メタ)アクリルアミド等];
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等];
カルボキシ基以外の酸性官能基(ホスホ基及びスルホ基等)を有する(メタ)アクリレート[リン酸2-((メタ)アクリロイロキシ)エチル及び(メタ)アクリル酸2-スルホエチル等]等が挙げられる。
その他の(メタ)アクリルモノマー(a3)の内、好ましいのはヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートであり、特に好ましいのは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル及び(メタ)アクリル酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルである。
これらのモノマーは、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
また、前記その他の(メタ)アクリルモノマー(a3)を使用する場合、前記その他の(メタ)アクリルモノマー(a3)の含有量は、耐電圧の観点から、重合体(A)を構成する全単量体の合計重量に対して、好ましくは0.001~50重量%、更に好ましく0.01~30重量%である。
【0019】
本発明における重合体(A)は、構成単量体として(メタ)アクリルモノマー(a)以外のモノマーを含んでいてもよい。(a)以外のモノマーとしては、(a)以外の重合性二重結合を有する化合物(オレフィン、スチレン系化合物等のビニル化合物)等が挙げられる。
【0020】
重合体(A)の数平均分子量(以下、Mnと略記する)は、1,000以上であることが好ましく、更に好ましくは3,000以上であり、特に好ましくは5,000以上である。
また、重合体(A)のMnは、100,000以下であることが好ましく、更に好ましくは80,000以下であり、特に好ましくは50,000以下である。
Mnが1,000以上であると電解液の耐電圧の観点で好ましく、100,000以下であると電解液の素子への含浸性の観点で好ましい。
なお、本発明におけるMnは実施例に記載のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値とする。
【0021】
前記の重合体(A)は、(メタ)アクリルモノマー(a)を公知の方法(特開平5-117330号公報等に記載の方法)を用いて重合することで合成することができる。例えば、前記モノマー(a)等の単量体を溶剤(トルエン等)中でラジカル開始剤(アゾビスイソブチロニトリル等)とともに反応させる溶液重合法により合成し、その後重合に用いた溶剤を減圧乾燥により留去することで得ることができる。
前記のその他の添加剤は、合成に用いる溶剤に混合してもよいし、溶剤留去後に重合体(A)と混合してもよい。
【0022】
本発明における溶剤(C)としては、アルコール溶剤[モノオール(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール及びブチルアルコール等)、ジオール(エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びポリエチレングリコール(Mn:600以下)等)等]、アミド溶剤(N-メチルホルムアミド、N-エチルホルムアミド及びN,N-ジメチルホルムアミド等)、ラクトン溶剤(α-アセチル-γ-ブチロラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン及びδ-バレロラクトン等)、ニトリル溶剤(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、アクリロニトリル、メタクリルニトリル及びベンゾニトリル等)、スルホキシド溶剤(ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド及びジエチルスルホキシド)及びスルホン溶剤(スルホラン及びエチルメチルスルホン等)等が挙げられる。
これらの溶剤のうち、電解質の溶解性と溶剤の誘電率の観点から好ましくはアルコール溶剤であり、更に好ましくはジオールであり、特に好ましくはエチレングリコール及びプロピレングリコールであり、最も好ましくはエチレングリコールである。
これらの溶剤(C)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記の溶剤(C)は、エチレングリコールを必須成分とすることが好ましい。また、溶剤(C)がエチレングリコール以外の溶剤を含有する場合、溶剤(C)の合計重量に対するエチレングリコールの重量比率は、10~100重量%であることが好ましく、更に好ましくは30~100重量%である。
【0024】
本発明の電解コンデンサ用電解液が含有する電解質(D)は電解コンデンサ用電解液に用いられる公知の電解質を使用することができるが、好ましくはカルボキシレートアニオンとアンモニウム、第1級アンモニウム、第2級アンモニウム、第3級アンモニウムおよびアミジニウムからなる群から選ばれるカチオンとからなる電解質である。前記の電解質(D)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0025】
カルボキシレートアニオンとしては、カルボン酸のカルボキシ基から水素イオンを除いたアニオンであって、化学式量が好ましくは500以下のものであり、飽和ポリカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、2-メチルアゼライン酸、セバシン酸、1,5-オクタンジカルボン酸、4,5-オクタンジカルボン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,6-デカンジカルボン酸、5,6-デカンジカルボン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,15-ペンタデカンジカルボン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン酸、ペンチルマロン酸、ヘキシルマロン酸、ジメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、メチルプロピルマロン酸、メチルブチルマロン酸、エチルプロピルマロン酸、ジプロピルマロン酸、メチルコハク酸、エチルコハク酸、2,2-ジメチルコハク酸、2,3-ジメチルコハク酸、2-メチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、3-メチル-3-エチルグルタル酸、3,3-ジエチルグルタル酸、3,3-ジメチルグルタル酸及び3-メチルアジピン酸等);
飽和モノカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸及びウンデカン酸等);
不飽和モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸、クロトン酸及びオレイン酸等];
不飽和脂肪族ポリカルボン酸(マレイン酸、フマール酸、イタコン酸及びシトラコン酸等);
芳香族モノカルボン酸(安息香酸、ケイ皮酸、ナフトエ酸、トルイル酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、イソプロピル安息香酸、ブチル安息香酸、イソブチル安息香酸、第2ブチル安息香酸、第3ブチル安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、エトキシ安息香酸、プロポキシ安息香酸、イソプロポキシ安息香酸、ブトキシ安息香酸、イソブトキシ安息香酸、第2ブトキシ安息香酸、第3ブトキシ安息香酸、アミノ安息香酸、N-メチルアミノ安息香酸、N-エチルアミノ安息香酸、N-プロピルアミノ安息香酸、N-イソプロピルアミノ安息香酸、N-ブチルアミノ安息香酸、N-イソブチルアミノ安息香酸、N-第2ブチルアミノ安息香酸、N-第3ブチルアミノ安息香酸、N,N-ジメチルアミノ安息香酸及びN,N-ジエチルアミノ安息香酸等);
及び芳香族ポリカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸等)等のカルボン酸のカルボキシ基から水素イオンを除いたアニオンが挙げられる。
これらの内、耐電圧の観点から好ましいのは飽和ポリカルボン酸及び不飽和ポリカルボン酸のカルボキシ基から水素イオンを除いたアニオンである。
【0026】
前記のカチオンとしては、アンモニウム、第1級アンモニウム、第2級アンモニウム、第3級アンモニウム及びアミジニウム等が挙げられる。
アンモニウムとしては、無置換アンモニウムが挙げられる。
第1級アンモニウムとしては、例えば、炭素数1~3のアンモニウム(メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、プロピルアンモニウム及びイソプロピルアンモニウム等)等が挙げられる。
第2級アンモニウムとしては、例えば、炭素数2~6のアンモニウム(ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、メチルエチルアンモニウム、メチルプロピルアンモニウム及びメチルイソプロピルアンモニウム等)等が挙げられる。
第3級アンモニウムとしては、例えば、炭素数3~9のアンモニウム(トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、ジメチルプロピルアンモニウム及びジメチルイソプロピルアンモニウム等)等が挙げられる。
第4級アンモニウムとしては、例えば、炭素数4~12のアンモニウム(テトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム及びテトラエチルアンモニウム等)等が挙げられる。
【0027】
アミジニウムは、前記カルボキシレートアニオンと塩を形成するアミジニウムであれば特に限定されることなく使用することができる。
アミジニウムとしては、イミダゾリニウム、イミダゾリニウムが有する水素原子をアルキル基で置換したカチオン(1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム、1,3,4-トリメチル-2-エチルイミダゾリニウム、1,3-ジメチル-2,4-ジエチルイミダゾリニウム及び1,2-ジメチル-3,4-ジエチルイミダゾリニウム等)、イミダゾリウム及びイミダゾリウムが有する水素原子をアルキル基で置換したカチオン(1,3-ジメチルイミダゾリウム、1,3-ジエチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム及び1,2,3-トリメチルイミダゾリウム等)等が挙げられる。
【0028】
アンモニウム、第1級アンモニウム、第2級アンモニウム、第3級アンモニウム及びアミジニウムの内、耐電圧の観点から好ましいのはアンモニウム、第1級アンモニウム、第2級アンモニウム及び第3級アンモニウムであり、更に好ましいのは無置換アンモニウム、第1級アンモニウム及び第3級アンモニウムである。
【0029】
本発明の電解コンデンサ用電解液は、必要に応じてホウ酸化合物(E)を含有していてもよい。
前記のホウ酸化合物(E)としては、ホウ酸及びホウ酸エステル等が挙げられる。
前記のホウ酸エステルとしては、ホウ酸アルキル(ホウ酸トリエチル等の炭素数1~6のホウ酸アルキル等)及びホウ酸アリール(ホウ酸トリフェニル等)等が挙げられる。
これらの内、耐電圧の観点から好ましいのはホウ酸である。
【0030】
本発明の電解コンデンサ用電解液は、必要に応じてその他の添加剤を更に含有していてもよい。
その他の添加剤の具体例としては、ガス発生抑制剤(o-ニトロ安息香酸、p-ニトロ安息香酸、m-ニトロ安息香酸、o-ニトロフェノール及びp-ニトロフェノールなどのニトロ化合物)及び耐電圧向上剤(ポリエチレングリコール(Mn:600以上)、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール及びマンニトール等)が挙げられる。
これらのうち耐電圧を向上させる目的で耐電圧向上剤が好ましく用いられ、マンニトールを用いることが更に好ましい。
【0031】
本発明の電解コンデンサ用電解液において、電解コンデンサ用電解液の合計重量に対する重合体(A)の重量比率は、0.5~40重量%であることが好ましく、更に好ましくは1~30重量%であり、特に好ましくは5~20重量%である。
0.5重量%以上の重合体(A)を含有すると耐電圧が良好であり、40重量%以下であると導電率が良好である。
電解コンデンサ用電解液の合計重量に対する前記の溶剤(C)の重量比率は、導電率の観点から、50~99重量%であることが好ましく、更に好ましくは60~80重量%である。
電解コンデンサ用電解液の合計重量に対する電解質(D)の重量比率は、導電率の観点から0.5~40重量%であることが好ましく、更に好ましくは5~30重量%である。
【0032】
電解コンデンサ用電解液の合計重量に対するホウ酸化合物(E)の重量比率は、耐電圧の観点から0~10重量%であることが好ましく、更に好ましくは0.5~5重量%である。
電解コンデンサ用電解液の合計重量に対するその他の添加剤の合計の重量比率は、0~10重量%であることが好ましく、更に好ましくは0~5重量%である。
【0033】
本発明の電解コンデンサ用電解液の製造方法は、特に限定はされない。例えば、重合体(A)、溶剤(C)及び電解質(D)並びに必要に応じてホウ酸化合物(E)及びその他添加剤を、20~100℃の温度範囲で、公知の機械的混合方法(例えばメカニカルスターラーやマグネティックスターラーを用いる方法)を用いることによって均一混合することで、製造することができる。
【0034】
アルミニウム電解コンデンサ等の本発明の電解コンデンサとしては、前記の本発明の電解コンデンサ用電解液を含んでいればよく、形状及び大きさ等は限定されない。本発明の電解コンデンサとしては、例えば、捲き取り形の電解コンデンサであって、陽極表面に酸化アルミニウムが形成された陽極(酸化アルミニウム箔)と陰極アルミニウム箔との間に、セパレータを介在させて捲回することにより構成されたコンデンサが挙げられる。
【0035】
アルミニウム電解コンデンサ等の本発明の電解コンデンサは、例えば、本発明の電解コンデンサ用電解液を駆動用電解液としてセパレータ(クラフト紙及びマニラ紙等)に含浸し、陽陰極と共に、有底筒状のアルミニウムケースに収納した後、アルミニウムケースの開口部を封口ゴム(ブチルゴム及びシリコーンゴム等)で密閉することで得ることができる。
【実施例
【0036】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
また、製造例及び比較製造例で合成した重合体(A)のMnは、GPCを用いて以下の条件で測定した。
装置(一例) : 東ソー(株)製 HLC-8120
カラム(一例): TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量 : 100μl
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 東ソー製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(重量平均分子量: 500 1050 2800 5970 9100 18100 37900 96400 190000 355000 1090000 2890000)
【0038】
<製造例1:重合体(A-1)の合成>
撹拌機、温度計及び冷却管を取り付けたフラスコに、メチルイソブチルケトン[和光純薬工業(株)製]200重量部及びメトキシポリエチレングリコールアクリレート(I)[ライトアクリレート130A、共栄社化学(株)製]100重量部を投入し、80℃まで加熱した。ここに予め調製しておいたアゾビスイソブチロニトリル[和光純薬工業(株)製]1重量部をメチルイソブチルケトン5重量部に溶解させた溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間加熱した。その後100℃、0.5kPaの条件の減圧乾燥によりメチルイソブチルケトンを留去し、重合体(A-1)を合成した。
【0039】
<製造例2:重合体(A-2)の合成>
製造例1において、メチルイソブチルケトンの投入量を200重量部から120重量部に変更した以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-2)を合成した。
【0040】
<製造例3:重合体(A-3)の合成>
製造例1において、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(I)に代えて、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(I)[M-90G、新中村化学工業(株)製]100重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-3)を合成した。
【0041】
<製造例4:重合体(A-4)の合成>
製造例1において、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(I)に代えて、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(I)[M-90G、新中村化学工業(株)製]80重量部、メタクリル酸[和光純薬工業(株)製]10重量部及びメタクリル酸2-ヒドロキシエチル[(株)日本触媒製]10重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-4)を合成した。
【0042】
<製造例5:重合体(A-5)の合成>
製造例1において、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(I)に代えて、メトキシジプロピレングリコールアクリレート[ライトアクリレートDPM-A、共栄社化学(株)製]80重量部、メタクリル酸[和光純薬工業(株)製]10重量部及びメタクリル酸2-ヒドロキシエチル[(株)日本触媒製]10重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-5)を合成した。
【0043】
<製造例6:重合体(A-6)の合成>
製造例1において、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(I)に代えて、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(I)[M-90G、新中村化学工業(株)製]80重量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルの無水コハク酸付加物[ライトエステルHO-MS(N)、共栄社化学(株)製]20重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-6)を合成した。
【0044】
<製造例7:重合体(A-7)の合成>
製造例1において、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(I)に代えて、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(II)[M-40G、新中村化学工業(株)製]70重量部、メタクリル酸[和光純薬工業(株)製]5重量部及びメタクリル酸2-ヒドロキシエチル[(株)日本触媒製]25重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-7)を合成した。
【0045】
<製造例8:重合体(A-8)の合成>
製造例1において、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(I)に代えて、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(II)[M-40G、新中村化学工業(株)製]80重量部、メタクリル酸[和光純薬工業(株)製]5重量部及びメタクリル酸2-ヒドロキシエチル[(株)日本触媒製]15重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-8)を合成した。
【0046】
<製造例9:重合体(A-9)の合成>
製造例1において、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(I)に代えて、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(II)[M-40G、新中村化学工業(株)製]30重量部、メタクリル酸[和光純薬工業(株)製]65重量部及びメタクリル酸2-ヒドロキシエチル[(株)日本触媒製]5重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-9)を合成した。
【0047】
<製造例10:重合体(A-10)の合成>
製造例1において、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(I)に代えて、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(II)[M-40G、新中村化学工業(株)製]70重量部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(III)[M-90G、新中村化学工業(株)製]10重量部、メタクリル酸[和光純薬工業(株)製]5重量部及びメタクリル酸2-ヒドロキシエチル[(株)日本触媒製]15重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-10)を合成した。
【0048】
<製造例11:重合体(A-11)の合成>
製造例1において、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(I)に代えて、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(II)[M-40G、新中村化学工業(株)製]10重量部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(III)[M-90G、新中村化学工業(株)製]60重量部、メタクリル酸[和光純薬工業(株)製]5重量部及びメタクリル酸2-ヒドロキシエチル[(株)日本触媒製]25重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-11)を合成した。
【0049】
<製造例12:重合体(A-12)の合成>
製造例1において、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(I)に代えて、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(II)[ブレンマーPE-200、日油(株)製]80重量部、アクリル酸[和光純薬工業(株)製]5重量部及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル[(株)日本触媒製]15重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-12)を合成した。
【0050】
<製造例13:重合体(A-13)の合成>
製造例1において、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(I)に代えて、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(II)[ブレンマーPME-200、日油(株)製]60重量部、アクリル酸[和光純薬工業(株)製]5重量部及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル[(株)日本触媒製]35重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-13)を合成した。
【0051】
<製造例14:重合体(A-14)の合成>
製造例1において、アゾビスイソブチロニトリルの投入量を1重量部から2重量部に変更した以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-14)を合成した。
【0052】
<製造例15:重合体(A-15)の合成>
製造例1において、アゾビスイソブチロニトリルの投入量を1重量部から0.1重量部に変更した以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-14)を合成した。
【0053】
<製造例16:重合体(A-16)の合成>
製造例1において、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(I)に代えて、2-エチルヘキシルオキシポリエチレングリコールアクリレート[アロニックスM-120、東亞合成(株)製]100重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-16)を合成した。
【0054】
<比較製造例1:重合体(A’-1)の合成>
製造例1において、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(I)に代えて、メタクリル酸[和光純薬工業(株)製]40重量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル[(株)日本触媒製]60重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い比較用の重合体(A’-1)を合成した。
【0055】
<比較製造例2:重合体(A’-2)の合成>
製造例1において、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(I)に代えて、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(I)20重量部及びメタクリル酸[和光純薬工業(株)製]80重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い比較用の重合体(A’-2)を合成した。
【0056】
<比較製造例3:重合体(A’-3)の合成>
製造例1において、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(I)に代えて、ポリエチレングリコールメタクリレート[ブレンマーPE-200、共栄社化学(株)製]80重量部、メタクリル酸[和光純薬工業(株)製]5重量部及びメタクリル酸2-ヒドロキシエチル[(株)日本触媒製]15重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い比較用の重合体(A’-3)を合成した。
【0057】
重合体(A-1)~(A-16)及び比較用の重合体(A’-1)~(A’-3)の数平均分子量を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
<製造例17>
容器にメタノール80重量部と1,6-デカンジカルボン酸20重量部を投入し、撹拌しながらアンモニアガス2.5重量部吹き込み中和した。その後減圧下(0.5kPa)80℃の条件でメタノールを除去し、電解質(D)として1,6-デカンジカルボン酸二アンモニウム塩22.2重量部を得た。
【0060】
<電解液(D)の調製>
<実施例1~18、比較例1~4>
重合体(A)としての重合体(A-1)~(A-16)又は比較製造例で合成した比較用の重合体(A’-1)~(A’-3)と、電解質(D)としての1,6-デカンジカルボン酸二アンモニウム塩と、溶剤(C)としてのエチレングリコール又はプロピレングリコールと、必要に応じてホウ酸化合物(E)としてのホウ酸とを表2に示した重量部数で配合し、実施例1~18の電解液及び比較例1~4の電解液を調製した。また、以下の方法で評価を行った。結果を表2に示す。
【0061】
<導電率>
電気伝導率計CM-40S[東亜電波工業(株)製]を用いて、実施例及び比較例の電解液の30℃での導電率を測定した。
【0062】
<火花電圧(25℃、85℃)>
陽極としての高圧用化成エッチングアルミニウム箔を、陰極としてプレーンなアルミニウム箔をそれぞれ、電解コンデンサ用電解液(実施例1~18、比較例1~4)に電解液との接触面積が10cmになるように含浸させた。次に、電解コンデンサ用電解液を25℃及び85℃に温調し、定電圧・定電流直流電源装置[(株)高砂製作所製、GP0650-05R]を用いて定電流法(2mA)による負荷をかけ、電圧を測定した。横軸に時間を、縦軸に電圧をプロットし、時間経過に伴う電圧の上昇カーブを観測し、初めにスパーク又はシンチレーションによる上昇カーブの乱れが生じた時点での電圧を火花電圧とした。火花電圧が高いほど、耐電圧が高いことを示す。
【0063】
<粘度>
E型粘度計(東機産業(株)製、TVE-25L)を用いて25℃における電解コンデンサ用電解液の粘度を測定した。
【0064】
【表2】
【0065】
本発明の実施例1~18の電解液は低粘度であり優れた耐電圧と導電率を示し、さらに85℃の高温下においても、優れた耐電圧を維持し、耐電圧の低下が小さい。
一方、比較例1の電解液は重合体(A)を含まず、耐電圧が低い。また、比較例2の電解液は添加剤未添加の比較例1の電解液に比べて耐電圧が向上するものの導電率が大きく低下する。これは重合体(A’-1)中に多数含まれるカルボキシ基と水酸基が溶媒と水素結合を形成してアニオンの動きを阻害するためと考えられる。また、一般式(1)で表される(メタ)アクリルモノマー(a1)の含有量が重合体を構成する全単量体の重量に対して30重量%未満の比較例3及び4は、電解液粘度が高いため電導率が低い。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の電解コンデンサ用電解液を用いた電解コンデンサは、高い導電率を保持しつつ高温での耐電圧も高い電解液を用いているため、高い駆動電圧が要求される電気製品及び電子製品の部品として好適に使用できる。
本発明の電解コンデンサ用電解液は、外気温の影響を受け、かつ、駆動時に高温になりやすいノートパソコン等のモバイル用途、特に車載用途の電解コンデンサ用電解液として好適である。