(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60K 11/02 20060101AFI20240902BHJP
B60K 8/00 20060101ALI20240902BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240902BHJP
H01M 8/06 20160101ALI20240902BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240902BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20240902BHJP
【FI】
B60K11/02
B60K8/00
B60K1/04 Z
H01M8/06
H01M8/04 Z
F16H57/04 G
(21)【出願番号】P 2023529733
(86)(22)【出願日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 JP2022021497
(87)【国際公開番号】W WO2022270215
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2021105245
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004141
【氏名又は名称】弁理士法人紀尾井坂テーミス
(72)【発明者】
【氏名】松倉 英樹
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6770662(JP,B1)
【文献】特開2019-30131(JP,A)
【文献】特開2004-335177(JP,A)
【文献】特開2008-125181(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108233607(CN,A)
【文献】特表2017-516965(JP,A)
【文献】特開2019-51872(JP,A)
【文献】特開2019-46720(JP,A)
【文献】中国実用新案第210652704(CN,U)
【文献】特開2016-134322(JP,A)
【文献】特開2016-117366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/02
B60K 8/00
B60K 1/04
H01M 8/06
H01M 8/04
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータと接続するギアと、
オイルと前記ギアとを収容するギア室を有するハウジングと、
前記ハウジングを囲う部分を有するカバリングと、
前記カバリングの外表面と前記ハウジングの外表面との間に介在するリキッドと、を有し、
径方向視において、前記リキッドは前記ギア室内の前記オイルとオーバーラップする部分を有する、車両。
【請求項2】
請求項1において、
前記リキッドは、燃料電池の排水である、車両。
【請求項3】
モータと、
前記モータの出力回転を減速または増速して駆動輪へ伝達する歯車機構を収容するハウジングと、
前記ハウジングと燃料電池の排水であるリキッドとの熱交換を行う熱交換部と、を有する、車両。
【請求項4】
請求項1において、
ハウジングの外表面に固定された電気部品を有し、
径方向視において前記電気部品は前記カバリングとオフセットする部分を有する、車両。
【請求項5】
請求項2において、
ハウジングの外表面に固定された電気部品を有し、
径方向視において前記電気部品は前記カバリングとオフセットする部分を有する、車両。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
前記ハウジングは車室よりも車両後方側に位置し、
前記車室内に前記ハウジングの配置された空間と連通する通気口を有する、車両。
【請求項7】
請求項1において、
前記リキッドは前記カバリングの内表面と前記ハウジングの外表面との間に介在する、車両。
【請求項8】
請求項1において、
前記カバリングは有機材料を含む材料で構成されている、車両。
【請求項9】
請求項1において、
前記カバリングは金属材料を含む材料で構成されている、車両。
【請求項10】
請求項1において、
前記カバリングは、前記ハウジングに巻きつけられている、車両。
【請求項11】
請求項1において、
前記カバリングは、多孔質構造を有する、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2および3は、燃料電池が搭載された車両を開示する。燃料電池が搭載された車両には、燃料電池の排水、冷却液、オイル等のリキッドが流れている。
車両には、また、動力伝達機構を収容するハウジングが搭載される。特許文献4および5は、このハウジングに、防音材としてカバリングを設けることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-17099号公報
【文献】特開2010-212126号公報
【文献】特開2015-209043号公報
【文献】特開2018-50385号公報
【文献】特開2008-267465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両において、リキッドを有効に利用することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様における車両は、
動力伝達機構を収容するハウジングと、
前記ハウジングを覆う部分を有するカバリングと、
前記カバリングの外表面と前記ハウジングの外表面との間に介在するリキッドと、を有する。
【0006】
本発明のある態様における車両は、
モータと、
前記モータの出力回転を減速または増速して駆動輪へ伝達する歯車機構を収容するハウジングと、
前記ハウジングと燃料電池の排水であるリキッドとの熱交換を行う熱交換部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のある態様によれば、リキッドを有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、車両に搭載されるユニットを説明するスケルトン図である。
【
図5】
図5は、モータケースを、第2ケース部材を取り外した状態で上方から見た図である。
【
図6】
図6は、ユニットにおける冷却水の循環システムを説明する図である。
【
図7】
図7は、ギアケースのキャッチタンクを示す図である。
【
図8】
図8は、ハウジングを覆うカバリングと、リキッドを導入するボックスを示す図である。
【
図10】
図10は、ユニットおよび燃料電池を搭載した車両を示す図である。
【
図11】
図11は、ボックスを上方から見た状態をハウジングと共に示した図である。
【
図12】
図12は、ボックスを、
図11におけるA-A線に沿って切断した断面を、ハウジングと共に示した図である。
【
図13】
図13は、変形例1に係るカバリングを示す模式図である。
【
図14】
図14は、変形例1に係るカバリングを回転軸X方向から視た模式図である。
【
図15】
図15は、変形例2に係るカバリングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本明細書における用語の定義を説明する。
「ユニット」は、「モータユニット」、「動力伝達装置」等とも呼ばれる。モータユニットは、少なくともモータを有するユニットである。動力伝達装置は、少なくとも動力伝達機構を有する装置であり、動力伝達装置は、例えば、歯車機構及び/又は差動歯車機構である。モータ及び動力伝達機構を有する装置であるユニットは、モータユニット及び動力伝達装置の双方の概念に属する。
【0010】
「ハウジング」は、モータ、ギア、インバータを収容するものである。ハウジングは1つ以上のケースから構成される。
【0011】
「3in1」とは、モータを収容するモータケースの一部と、インバータを収容するインバータケースの一部とが、一体形成された形式を意味する。たとえば、カバーとケースが1つのケースを構成する場合、「3in1」では、モータを収容するケースとインバータを収容するケースが一体に形成されている。
【0012】
「モータ」は、電動機機能及び/又は発電機機能を有する回転電機である。
【0013】
第1要素(部品、部分等)に接続された第2要素(部品、部分等)、第1要素(部品、部分等)の下流に接続された第2要素(部品、部分等)、第1要素(部品、部分等)の上流に接続された第2要素(部品、部分等)と述べた場合、第1要素と第2要素とが動力伝達可能に接続されていることを意味する。動力の入力側が上流となり、動力の出力側が下流となる。また、第1要素と第2要素は、他の要素(クラッチ、他の歯車機構等)を介して接続されていても良い。
【0014】
「所定方向視においてオーバーラップする」とは、所定方向に複数の要素が並んでいることを意味し、「所定方向にオーバーラップする」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいることが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていることを説明した文章があるとみなして良い。
【0015】
「所定方向視においてオーバーラップしていない」、「所定方向視においてオフセットしている」とは、所定方向に複数の要素が並んでいないことを意味し、「所定方向にオーバーラップしていない」、「所定方向にオフセットしている」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいないことが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていないことを説明した文章があるとみなして良い。
【0016】
「所定方向視において、第1要素(部品、部分等)は第2要素(部品、部分等)と第3要素(部品、部分等)との間に位置する」とは、所定方向から観察した場合において、第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが観察できることを意味する。「所定方向」とは、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
例えば、第2要素と第1要素と第3要素とが、この順で軸方向に沿って並んでいる場合は、径方向視において、第1要素は第2要素と第3要素との間に位置しているといえる。図面上において、所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが図示されている場合は、明細書の説明において所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることを説明した文章があるとみなして良い。
【0017】
軸方向視において、2つの要素(部品、部分等)がオーバーラップするとき、2つの要素は同軸である。
【0018】
「軸方向」とは、ユニットを構成する部品の回転軸の軸方向を意味する。「径方向」とは、ユニットを構成する部品の回転軸に直交する方向を意味する。部品は、例えば、モータ、歯車機構、差動歯車機構等である。
【0019】
遊星歯車機構の回転要素(例えば、サンギア、キャリア、リングギア等)が他の要素と「固定されている」とは、直接固定されていても良いし、別部材を介して固定されていても良い。
【0020】
「回転方向の下流側」とは、車両前進時における回転方向または車両後進時における回転方向の下流側を意味する。頻度の多い車両前進時における回転方向の下流側にすることが好適である。遊星歯車機構における回転方向の下流側とは、ピニオンギアの公転方向の下流側を意味する。
【0021】
「キャッチタンク」は、オイルが導入されるタンク(コンテナ)の機能を有する要素(部品、部分等)である。タンクの外側からタンクにオイルが供給されることを、「キャッチ」と表現している。キャッチタンクは、たとえばハウジングの少なくとも一部を利用して設けられるか、ハウジングと別体で設けられる。キャッチタンクとハウジングとを一体形成することにより、部品点数削減に寄与する。
【0022】
「クーラント」は冷媒であり、熱交換媒体の一種である。たとえば、「クーラント」は、液体(冷却水等)、気体(空気等)等である。クーラントはオイルを含む概念であるが、本明細書においてオイルとクーラントとが併記されている場合は、クーラントはオイルとは異なる材料で構成されていることを意味する。
【0023】
「熱交換部」は、異なる2つの熱交換媒体間で熱交換を行う要素(部品、部分等)である。2つの熱交換媒体の組合せは、たとえば、オイルと冷却水、冷却水と空気、空気とオイル等がある。熱交換部は、例えば、熱交換器(オイルクーラ)、クーラントの流れる流路、ヒートパイプ等がある。本件では、熱交換部として、ハウジングを覆うカバリングを用いると好適である。
【0024】
カバリングは、ハウジングと別体の部品である。例えば、カバリングの外表面とハウジング外表面との間にクーラントとなる液体(リキッド)が導入される。クーラントと、ハウジング内のオイル及び/又は空気と、の熱交換がハウジングの壁部を介して行われる。
【0025】
「車室」は、車両において乗員が乗り込む部屋を意味する。
【0026】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、車両に搭載されるユニットを説明するスケルトン図である。
図2は、ユニットの外観図である。
図3は、ユニットの断面模式図である。
図3は、インバータケースを取り除いた状態を示している。
図4は、遊星減速ギア周りの拡大図である。
図5は、モータケースを、第2ケース部材を取り外した状態で上方から見た図である。
図6は、ユニットにおける冷却水の循環システムを示す図である。
図7は、ギアケースのキャッチタンクを説明する図である。
【0027】
図1に示すように、ユニット1は、3in1ユニットとして、モータ2と、モータ2が出力した動力を車両の駆動輪K、Kに伝達する動力伝達機構3と、モータ2の電力変換装置であるインバータ7(
図2参照)を有する。
【0028】
実施の形態では、
図1に示すように、ユニット1は、動力伝達機構3として、遊星減速ギア4(減速歯車機構、遊星歯車機構)、差動機構5(差動歯車機構)および出力軸であるドライブシャフトDA、DBを有する。
ユニット1では、モータ2の回転軸X回りの出力回転の伝達経路に沿って、遊星減速ギア4と、差動機構5と、ドライブシャフトDA、DBと、が設けられている。ドライブシャフトDA、DBの軸線は、モータ2の回転軸Xと同軸であり、差動機構5はモータ2と同軸である。
【0029】
ユニット1では、モータ2の出力回転が、遊星減速ギア4で減速されて差動機構5に入力された後、ドライブシャフトDA、DBを介して、ユニット1が搭載された車両の左右の駆動輪K、Kに伝達される。
ここで、遊星減速ギア4は、モータ2の下流に接続されている。差動機構5は、遊星減速ギア4を介してモータ2の下流に接続されている。ドライブシャフトDA、DBは、差動機構5の下流に接続されている。
【0030】
図2に示すように、ユニット1は、3in1タイプのハウジングとして、モータ2、動力伝達機構3およびインバータ7を収容するハウジングHSを有する。ハウジングHSは、1つ以上のケースから構成される。ハウジングHSは、例えば、モータ2を収容するモータケース10と、動力伝達機構3を収容するギアケース14と、インバータ7を収容するインバータケース17と、を有する。回転軸X方向におけるモータケース10の一端側に、ギアケース14が接合されている。ユニット1を車両に搭載した状態における、モータケース10の重力方向上方にインバータケース17が接合されている。
【0031】
インバータ7は、平滑コンデンサ、パワー半導体素子、ドライバ基板等を備えた電子部品である。インバータ7は、不図示の配線によってモータケース10内のモータ2と電気的に接続されている。
インバータケース17内には、インバータ7を冷却する冷却水CL(
図6参照)が通流する冷却路CP2が形成されている。
【0032】
モータ2は、軸方向視において、差動機構5(差動歯車機構)とオーバーラップする部分を有する(
図3参照)。ここで、「軸方向視において」とは、回転軸X方向から視て、という意味である。なお、「径方向視において」とは、回転軸X方向の径方向から視て、という意味である。
軸方向視において、モータ2は遊星減速ギア4(減速歯車機構)にオーバーラップする部分を有する。
軸方向視において、遊星減速ギア4(減速歯車機構)は差動機構5(差動歯車機構)にオーバーラップする部分を有する。
軸方向視において、遊星減速ギア4(減速歯車機構)はモータ2にオーバーラップする部分を有する。
軸方向視において、差動機構5(差動歯車機構)は遊星減速ギア4(減速歯車機構)にオーバーラップする部分を有する。
軸方向視において、差動機構5(差動歯車機構)はモータ2にオーバーラップする部分を有する。
軸方向視において、モータ2は差動機構5(差動歯車機構)とオーバーラップする部分を有する。
【0033】
図3に示すように、モータケース10は、第1ケース部材11と、第1ケース部材11に外挿される第2ケース部材12と、第1ケース部材11の一端に接合されるカバー部材13を有する。第1ケース部材11は、円筒状の支持壁部111と、支持壁部111の一端111aに設けられたフランジ状の接合部112と、を有している。
支持壁部111はモータ2の回転軸Xに沿わせた向きで設けられている。支持壁部111の内側には、モータ2が収容される。
【0034】
第2ケース部材12は、円筒状の周壁部121と、周壁部121の一端121aに設けられたフランジ状の接合部122と、周壁部121の他端121bに設けられたフランジ状の接合部123と、を有している。
第2ケース部材12の周壁部121は、第1ケース部材11の支持壁部111に外挿可能な内径で形成されている。
第1ケース部材11と第2ケース部材12は、第1ケース部材11の支持壁部111に、第2ケース部材12の周壁部121を外挿して互いに組み付けられている。
【0035】
周壁部121の一端121a側の接合部122は、回転軸X方向から、第1ケース部材11の接合部112に当接している。これら接合部122、112は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。
【0036】
図5に示すように、第1ケース部材11の支持壁部111の外周には、突起111bが設けられている。突起111bは回転軸Xを間隔を空けて囲む1つの壁である。支持壁部111において突起111bは、回転軸X方向の一端から他端に向かって位相をずらして螺旋状に設けられている。突起111bは、支持壁部111の全周に亘って、支持壁部111の外周を取り巻いている。
【0037】
図3に示すように、第1ケース部材11の支持壁部111に、第2ケース部材12の周壁部121が外挿される。この状態において周壁部121の内周は、支持壁部111の螺旋状の突起111bの外周に当接しているため、周壁部121と支持壁部111の間には空間が形成される。この空間は、回転軸Xを間隔をあけて囲むと共に、回転軸X方向に連続する螺旋状に形成される。この螺旋状の空間によって、クーラントである冷却水CL(
図6参照)が通流する冷却路CP1が形成される。なお、
図6では螺旋状の冷却路CP1を、簡略化して直線状に示している。
【0038】
第1ケース部材11の支持壁部111の外周では、突起111bが設けられた領域の両側に、リング溝111c、111cが形成されている。リング溝111c、111cには、シールリング113、113が外嵌して取り付けられている。
これらシールリング113は、支持壁部111に外挿された周壁部121の内周に圧接して、支持壁部111の外周と、周壁部121の内周との間の隙間を封止する。
【0039】
第2ケース部材12の他端121bには、内径側に延びる壁部120(カバー)が設けられている。壁部120は、回転軸Xに直交する向きで設けられている。壁部120の回転軸Xと交差する領域に、ドライブシャフトDAが挿通する開口120aが開口している。
【0040】
壁部120の、モータ2側(図中、右側)の面に、開口120aを囲み、モータ2側に延びる筒状のモータ支持部125が設けられている。
モータ支持部125は、後記するコイルエンド253bの内側に挿入されている。モータ支持部125は、ロータコア21の端部21bに回転軸X方向の隙間をあけて対向している。モータ支持部125の内周には、ベアリングB1が支持されている。モータシャフト20の外周が、ベアリングB1を介してモータ支持部125で支持されている。
【0041】
壁部120の、差動機構5側(図中、左側)の面に、差動機構5側に延びる筒壁部126が設けられている。筒壁部126は、開口120aを囲む筒状であり、筒壁部126の内周には、ベアリングB2が支持されている。ベアリングB2は、後記するデフケース50の筒壁部61を支持する。
【0042】
カバー部材13は、回転軸Xに直交する壁部130と、接合部132とを有する。
第1ケース部材11から見てカバー部材13は、差動機構5とは反対側(図中、右側)に位置している。カバー部材13の接合部132は、第1ケース部材11の接合部112に回転軸X方向から接合されている。カバー部材13と第1ケース部材11は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。この状態において第1ケース部材11は、支持壁部111の接合部122側(図中、右側)の開口が、カバー部材13で塞がれている。
【0043】
カバー部材13では、壁部130の中央部に、ドライブシャフトDAの挿通孔130aが設けられている。
挿通孔130aの内周には、リップシールRSが設けられている。リップシールRSは、図示しないリップ部をドライブシャフトDAの外周に弾発的に接触させている。挿通孔130aの内周と、ドライブシャフトDAの外周との隙間が、リップシールRSにより封止されている。
壁部130における第1ケース部材11側(図中、左側)の面には、挿通孔130aを囲む周壁部131が設けられている。周壁部131の内周には、ドライブシャフトDAがベアリングB4を介して支持されている。
【0044】
接合部132の内径側には、モータ支持部135および接続壁136が設けられている。モータ支持部135は、周壁部131から見てモータ2側(図中、左側)に設けられている。モータ支持部135は、回転軸Xを間隔を空けて囲む筒状を成している。
モータ支持部135の外周には、円筒状の接続壁136が接続されている。接続壁136は、壁部130側(図中、右側)の周壁部131よりも大きい外径で形成されている。接続壁136は、回転軸Xに沿う向きで設けられており、モータ2から離れる方向に延びている。接続壁136は、モータ支持部135と接合部132とを接続している。
【0045】
モータ支持部135の内側を、モータシャフト20の一端20a側が、モータ2側から周壁部131側に貫通している。
モータ支持部135の内周には、ベアリングB1が支持されている。モータシャフト20の外周が、ベアリングB1を介してモータ支持部135で支持されている。
ベアリングB1と隣り合う位置には、リップシールRSが設けられている。
【0046】
接続壁136の内周に、油孔136a、136bが開口している。接続壁136で囲まれた空間(内部空間Sc)に、油孔136aからオイルOLが流入する。内部空間Scに流入したオイルOLは、油孔136bから排出される。リップシールRSは、接続壁136内のオイルOLのモータ2側への流入を阻止するために設けられている。
【0047】
ギアケース14は、周壁部141と、周壁部141におけるモータケース10側の端部に設けられたフランジ状の接合部142と、を有している。周壁部141における接合部142と対向側(図中、左側)の端部には、後記するベアリングB2の支持部145が設けられている。周壁部141は、接合部142に接続する筒壁部141aと、支持部145に接続する傾斜部141c(傾斜面)と、これら筒壁部141aと傾斜部141cとを接続する接続壁部141bとを有する。筒壁部141aと接続壁部141bは、接合部142から段階的に縮径して傾斜部141cに接続する。傾斜部141cは、接続壁部141bから支持部145に向かって内径側に傾斜する。周壁部141の内側に、動力伝達機構3である遊星減速ギア4と差動機構5が収容される。
【0048】
ギアケース14は、モータケース10から見て差動機構5側(図中、左側)に位置している。ギアケース14の接合部142は、モータケース10の第2ケース部材12の接合部123に、回転軸X方向から接合されている。ギアケース14と第2ケース部材12は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。
【0049】
接合されたモータケース10およびギアケース14の内部に形成される空間は、第2ケース部材12の壁部120(カバー)によって、2つに区画される。壁部120のモータケース10側がモータ2を収容するモータ室Saであり、ギアケース14側が動力伝達機構3を収容するギア室Sbである。カバーである壁部120は、ハウジングHSの内部において、モータ2と差動機構5に挟まれる。
【0050】
カバーは、ハウジングHS内に収容された部分を有するものであれば良く、壁部120のように、全体がハウジングHSに収容されていても良い。また、カバーは、たとえば、第2ケース部材12とは別体としても良い。この場合、カバーは、モータケース10とギアケース14で挟んで固定しても良い。なお、カバーの一部がハウジングHS外に露出しても良い。
【0051】
モータ2は、円筒状のモータシャフト20と、モータシャフト20に外挿された円筒状のロータコア21と、ロータコア21の外周を間隔を空けて囲むステータコア25とを、有する。
【0052】
モータシャフト20では、ロータコア21の両側に、ベアリングB1、B1が外挿されて固定されている。
ロータコア21から見てモータシャフト20の一端20a側(図中、右側)に位置するベアリングB1は、カバー部材13のモータ支持部135の内周に支持されている。他端20b側(図中、左側)に位置するベアリングB1は、第2ケース部材12の円筒状のモータ支持部125の内周に支持されている。
【0053】
モータ支持部135、125は、後記するコイルエンド253a、253bの内径側で、ロータコア21の一方の端部21aと他方の端部21bに、回転軸X方向の隙間をあけて対向して配置されている。
【0054】
ロータコア21は、複数の珪素鋼板を積層して形成したものである。珪素鋼板の各々は、モータシャフト20との相対回転が規制された状態で、モータシャフト20に外挿されている。
モータシャフト20の回転軸X方向から見て、珪素鋼板はリング状を成している。珪素鋼板の外周側では、図示しないN極とS極の磁石が、回転軸X周りの周方向に交互に設けられている。
【0055】
ロータコア21の外周を囲むステータコア25は、複数の電磁鋼板を積層して形成したものである。ステータコア25は、第1ケース部材11の円筒状の支持壁部111の内周に固定されている。
電磁鋼板の各々は、支持壁部111の内周に固定されたリング状のヨーク部251と、ヨーク部251の内周からロータコア21側に突出するティース部252と、を有している。
【0056】
本実施形態では、巻線253を、複数のティース部252に跨がって分布巻きした構成のステータコア25を採用している。ステータコア25は、回転軸X方向に突出するコイルエンド253a、253bの分だけ、ロータコア21よりも回転軸X方向の長さが長くなっている。
【0057】
なお、ロータコア21側に突出する複数のティース部252の各々に、巻線を集中巻きした構成のステータコアを採用しても良い。
【0058】
第2ケース部材12の壁部120(モータ支持部125)には、開口120aが設けられている。モータシャフト20の他端20b側は、開口120aを差動機構5側(図中、左側)に貫通して、ギアケース14内に位置している。
モータシャフト20の他端20bは、ギアケース14の内側で、後記するサイドギア54Aに、回転軸X方向の隙間をあけて対向している。
【0059】
モータシャフト20と壁部120の開口120aの間にはリップシールRSが挿入されている。
ギアケース14の内径側には、遊星減速ギア4と差動機構5を潤滑するためのオイルOLが封入されている。
リップシールRSは、ギアケース14内のオイルOLがモータケース10内に流入することを阻止するために設けられている。
【0060】
図4に示すように、モータシャフト20の、ギアケース14内に位置する領域に遊星減速ギア4のサンギア41がスプライン嵌合している。
【0061】
サンギア41の外周には歯部41aが形成されており、歯部41aには段付きピニオンギア43の大径歯車部431が噛合している。
【0062】
段付きピニオンギア43は、サンギア41に噛合する大径歯車部431(ラージピニオン)と、大径歯車部431よりも小径の小径歯車部432(スモールピニオン)とを有している。
大径歯車部431と小径歯車部432は、回転軸Xに平行な軸線X1方向に並んで配置された、一体のギア部品である。
【0063】
小径歯車部432の外周は、リングギア42の内周に噛合している。リングギア42は、回転軸Xを間隔を空けて囲むリング状を成している。リングギア42の外周には、係合歯が設けられ、係合歯が接続壁部141bの内周に設けられた歯部146aにスプライン嵌合している。リングギア42は、回転軸X回りの回転が規制されている。
【0064】
大径歯車部431および小径歯車部432の内径側をピニオン軸44が貫通している。段付きピニオンギア43は、ピニオン軸44の外周にニードルベアリングNB、NBを介して回転可能に支持されている。
【0065】
図3に示すように、差動機構5は、入力要素であるデフケース50(デファレンシャルケース)と、出力要素であるドライブシャフトDA、DB(出力軸)、差動要素である差動歯車セットを有する。詳細な説明は省略するが、デフケース50は、回転軸方向に組み付けられた2つのケース部材から構成しても良い。
【0066】
デフケース50は、遊星減速ギア4の段付きピニオンギア43を支持するキャリアとしても機能する。段付きピニオンギア43は、ピニオン軸44を介して、デフケース50に回転可能に支持されている。
図7に示すように、3つの段付きピニオンギア43は、回転軸X周りの周方向に間隔を空けて配置されている。
【0067】
図3に示すように、デフケース50内には、差動歯車セットとして、傘歯車式のデファレンシャルギアであるピニオンメートギア52と、サイドギア54A、54Bが設けられている。ピニオンメートギア52は、ピニオンメートシャフト51に支持されている。
ピニオンメートシャフト51は、回転軸X上に配置された中心部材510と、中心部材510の外径側に連結されたシャフト部材511を有する。図示は省略するが、複数のシャフト部材511が回転軸X周りの周方向に等間隔で設けられている。シャフト部材511は、デフケース50の径方向に延びる支持孔69に挿通され、支持されている。
【0068】
ピニオンメートギア52は、シャフト部材511の各々に1つずつ外挿され、回転可能に支持されている。
【0069】
デフケース50では、回転軸X方向における中心部材510の一方側にサイドギア54Aが位置し、他方側にサイドギア54Bが位置する。サイドギア54A、54Bは、それぞれデフケース50に回転可能に支持される。
サイドギア54Aは、回転軸X方向における一方側から、ピニオンメートギア52に噛合している。サイドギア54Bは、回転軸X方向における他方側から、ピニオンメートギア52に噛合している。
【0070】
デフケース50の一端側(図中、右側)の中央部には、開口60と、開口60を囲み、モータケース10側に延びる筒壁部61が設けられている。筒壁部61の外周は、ベアリングB2を介して、第2ケース部材12の壁部120に支持されている。
【0071】
デフケース50の内部には、開口60を挿通したドライブシャフトDAが、回転軸X方向から挿入されている。ドライブシャフトDAは、カバー部材13の壁部130の挿通孔130aを貫通し、モータ2のモータシャフト20と、遊星減速ギア4のサンギア41の内径側を回転軸X方向に横切って設けられている。
【0072】
図3に示すように、デフケース50の他端側(図中、左側)の中央部には、貫通孔65と、貫通孔65を囲む筒壁部66が形成されている。筒壁部66に、ベアリングB2が外挿されている。筒壁部66に外挿されたベアリングB2は、ギアケース14の支持部145で保持されている。デフケース50の筒壁部66は、ベアリングB2を介して、ギアケース14で回転可能に支持されている。
【0073】
支持部145には、ギアケース14の開口部145aを貫通したドライブシャフトDBが、回転軸X方向から挿入されている。ドライブシャフトDBは、支持部145で回転可能に支持されている。筒壁部66は、ドライブシャフトDBの外周を支持する軸支持部として機能する。
開口部145aの内周には、リップシールRSが固定されている。リップシールRSの図示しないリップ部が、ドライブシャフトDBに外挿されたサイドギア54Bの筒壁部540の外周に弾発的に接触している。
これにより、サイドギア54Bの筒壁部540の外周と開口部145aの内周との隙間が封止されている。
【0074】
デフケース50の内部では、ドライブシャフトDA、DBの先端部が、回転軸X方向に間隔を空けて対向している。
ドライブシャフトDA、DBの先端部の外周に、デフケース50に支持されたサイドギア54A、54Bがスプライン嵌合している。サイドギア54A、54BとドライブシャフトDA、DBとが、回転軸X周りに一体回転可能に連結されている。
【0075】
この状態においてサイドギア54A、54Bは、回転軸X方向で間隔をあけて、対向配置されている。サイドギア54A、54Bの間に、ピニオンメートシャフト51の中心部材510が位置している。
ピニオンメートギア52は、回転軸X方向の一方側に位置するサイドギア54Aおよび他方側に位置するサイドギア54Bに、互いの歯部を噛合させた状態で組み付けられている。
【0076】
図4に示すように、デフケース50の一端側(図中、右側)の、開口60の外径側に、ピニオン軸44の一端44a側の支持孔62が形成されている。デフケース50の他端側(図中、左側)には、ピニオン軸44の他端44b側の支持孔68が形成されている。
【0077】
支持孔62、68は、回転軸X方向にオーバーラップする位置に形成される。支持孔62、68は、それぞれ、段付きピニオンギア43を配置する位置に合わせて、回転軸X周りの周方向に間隔を空けて形成される。ピニオン軸44の一端44aが支持孔62に挿入され、他端44bが支持孔68に挿入される。ピニオン軸44は、他端44bが支持孔68に圧入されることで、ピニオン軸44はデフケース50に対して相対回転不能に固定されている。ピニオン軸44に外挿された段付きピニオンギア43は、回転軸Xに平行な軸線X1回りに回転可能に支持されている。
【0078】
図示は省略するが、ギアケース14の内部には、潤滑用のオイルOLが貯留されている。デフケース50が回転軸X回りに回転すると、オイルOLがデフケース50によって掻き上げられる。
詳細な説明は省略するが、デフケース50、ピニオン軸44等には、デフケース50に掻き上げられたオイルOLを導入するための油路、油孔等が設けられている。これによって、ベアリングB2、ニードルベアリングNB等の回転部材にオイルOLが導入されやすくなっている。
【0079】
また、
図7に示すように、ギアケース14内の、デフケース50の上部に、キャッチタンク15が設けられている。キャッチタンク15は、回転軸Xと直交する鉛直線VLを挟んだ一方側(図中、左側)に位置している。キャッチタンク15と、デフケース50の収容部140とは、連通口147を介して連通している。デフケース50によって掻き上げられて飛散したオイルOLの一部は、連通口147からキャッチタンク15内に流入して捕集される。
【0080】
ユニット1を搭載した車両の前進走行時に、モータケース10側から見てデフケース50は、回転軸X周りの反時計回り方向CCWに回転する。
図4に示すように、段付きピニオンギア43の小径歯車部432は、ギアケース14の内周に固定されたリングギア42に噛合している。そのため、段付きピニオンギア43の大径歯車部431は、
図7に示すように、軸線X1回りを時計回り方向に自転しながら、回転軸X周りの反時計回り方向CCWに公転する。
【0081】
キャッチタンク15は、鉛直線VLを挟んだ左側、すなわちデフケース50の回転方向における下流側に位置している。これにより、回転軸X回りに回転するデフケース50で掻き上げられたオイルOLの多くが、キャッチタンク15内に流入できるようになっている。
図3に示すように、キャッチタンク15は、油路151aを介して、リップシールRSとベアリングB2との間の空間Rxに接続している。また、キャッチタンク15は、不図示の油路、配管等を介して、オイルクーラ83(
図6参照)に接続している。オイルクーラ83は、不図示の配管、油路等を介して、接続壁136に形成された油孔136a(
図3参照)に接続している。
【0082】
ギアケース14の周壁部141には、油孔Haが形成されている。油孔Haは、不図示の配管を介して、内部空間Scに形成された油孔136bと接続している。油孔136bを介して内部空間Scから排出されたオイルOLは、油孔Haから再びギア室Sb内部に供給される。
【0083】
図6に示すように、ユニット1には、冷却水CLの循環システム80が設けられている。循環システム80は、前記したモータケース10の冷却路CP1とインバータケース17の冷却路CP2との間で、冷却水CLを循環させる。循環システム80は、さらに、冷却路CP1と冷却路CP2の間に、オイルクーラ83、ウォーターポンプWPおよびラジエータ82を備えており、これらは冷却水CLが通流する配管等で接続されている。
【0084】
ウォーターポンプWPは、冷却水CLを循環システム80内において圧送する。
ラジエータ82は、冷却水CLの熱を放熱して冷却する装置である。
【0085】
オイルクーラ83は、冷却水CLと、オイルOLとの熱交換を行う熱交換器である。オイルクーラ83には、ギアケース14のギア室Sb内に設けられたキャッチタンク15で捕集されたオイルOLが導入される。オイルOLは、冷却水CLとの熱交換により冷却される。冷却されたオイルOLは、モータケース10の油孔136aから内部空間Scに供給される。なお、オイルクーラ83に供給するオイルOLは、キャッチタンク15で捕集されたオイルOLに限定されず、ハウジングHSに適宜設けた別の油路から供給しても良い。また、オイルクーラ83から排出されたオイルOLを、内部空間Scとは別の箇所に供給しても良い。
【0086】
冷却水CLは、インバータケース17内の冷却路CP2およびモータケース10内の冷却路CP1を通流した後に、オイルクーラ83に供給される。冷却水CLは、オイルクーラ83においてオイルOLとの熱交換が行われた後に、ラジエータ82で冷却され、再びインバータケース17の冷却路CP2に供給される。
【0087】
かかる構成のユニット1の作用を説明する。
図1に示すように、ユニット1では、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、遊星減速ギア4と、差動機構5と、ドライブシャフトDA、DBと、が設けられている。
【0088】
図3に示すように、モータ2が駆動されて、ロータコア21が回転軸X回りに回転すると、ロータコア21と一体に回転するモータシャフト20を介して、遊星減速ギア4のサンギア41に回転が入力される。
【0089】
遊星減速ギア4では、サンギア41が、モータ2の出力回転の入力部となっており、段付きピニオンギア43を支持するデフケース50が、入力された回転の出力部となっている。
【0090】
図4に示すように、サンギア41が入力された回転で回転軸X回りに回転すると、段付きピニオンギア43(大径歯車部431、小径歯車部432)が、サンギア41側から入力される回転で、軸線X1回りに回転する。
ここで、段付きピニオンギア43の小径歯車部432は、ギアケース14の内周に固定されたリングギア42に噛合している。そのため、段付きピニオンギア43は、軸線X1回りに自転しながら、回転軸X周りに公転する。
【0091】
ここで、段付きピニオンギア43では、小径歯車部432の外径が大径歯車部431の外径よりも小さくなっている。
これにより、段付きピニオンギア43を支持するデフケース50が、モータ2側から入力された回転よりも低い回転速度で回転軸X回りに回転する。
そのため、遊星減速ギア4のサンギア41に入力された回転は、段付きピニオンギア43により、大きく減速されたのちに、デフケース50(差動機構5)に出力される。
【0092】
図3に示すように、デフケース50が入力された回転で回転軸X回りに回転することにより、デフケース50内で、ピニオンメートギア52と噛合するドライブシャフトDA、DBが回転軸X回りに回転する。これによりユニット1が搭載された車両の左右の駆動輪K、K(
図1参照)が、伝達された回転駆動力で回転する。
【0093】
図3に示すように、ギア室Sbの内部には、潤滑および冷却用のオイルOLが貯留される。ギア室Sbにおいては、モータ2の出力回転の伝達時に、貯留されたオイルOLが、回転軸X回りに回転するデフケース50により掻き上げられる。
図3および
図4に示すように、掻き上げられたオイルOLにより、サンギア41と大径歯車部431との噛合部と、小径歯車部432とリングギア42との噛合部と、ピニオンメートギア52とサイドギア54A、54Bとの噛合部とが潤滑される。また、オイルOLとの熱交換によってこれらの噛合部が冷却される。
【0094】
図7に示すように、デフケース50は、回転軸X周りの反時計回り方向CCWに回転する。
ギアケース14の上部には、キャッチタンク15が設けられている。キャッチタンク15は、デフケース50の回転方向における下流側に位置しており、デフケース50で掻き上げられたオイルOLの一部が、キャッチタンク15内に流入する。
【0095】
図3に示すように、キャッチタンク15に流入したオイルOLの一部は、油路151aを介して、リップシールRSとベアリングB2との間の空間Rxに供給され、ベアリングB2を潤滑する。キャッチタンク15に流入したオイルOLの一部は、不図示の配管を介してオイルクーラ83(
図6参照)に導入され、冷却される。冷却されたオイルOLは、油孔136aを介して、接続壁136に形成された内部空間Sc(
図3参照)に供給される。内部空間Scに供給されたオイルOLは、ベアリングB4を潤滑し、油孔136bから排出される。油孔136bから排出されたオイルOLは、不図示の配管等を介して、油孔Haからギア室Sb内に供給される。
【0096】
図8は、ハウジングHSを覆うカバリング90と、リキッドLqを導入するボックス93を示す図である。
図9は、
図8を回転軸X方向から見た図である。
図8および
図9では、わかりやすくするためにカバリング90を破線で示している。
図8に示すように、ハウジングHSを、ノイズ対策のために、別体の部品であるカバリング90で覆うことができる。ノイズ対策とは、たとえば、ユニット1の各種部品(たとえば、動力伝達機構3、モータ2等)にて発生し外部に漏れるノイズを減らす対策を意味する。ノイズは、音または電磁ノイズである。
【0097】
カバリング90は、図示の例のように、ハウジングHS全体を収容する直方体形状のものとすることができるが、これに限定されない。カバリング90は、たとえば、柔軟性のある素材を用い、ハウジングHSの表面に隙間なく巻きつけることができる。また、カバリング90は、ハウジングHSのうち、ギアケース14のみを覆うものであっても良い。または、ギアケース14およびモータケース10をカバリング90で覆い、インバータケース17はカバリング90から露出させても良い。
【0098】
カバリング90は、ノイズを減少する機能(たとえば、防音機能、吸音機能、遮音機能等)を有する材料から構成することができる。カバリング90に適用可能な材料は、例えば、有機材料、金属材料等である。音の減少効果を高める場合は、有機材料を含む材料が好適である。電磁ノイズの減少効果を高める場合は金属材料を含む材料が好適である。
【0099】
有機材料の中で、例えば、ウレタン、ゴム、ポリエチレン等は、音の減少効果が高く、特に好適な材料である。
【0100】
金属材料の中で特に好適な材料は、電磁ノイズの減少効果をより高めることから、ハウジングHS部材を構成する材料より、比導電率/比透磁率が高い材料、及び/又は、比導電率×比透磁率が高い材料である。たとえば、ハウジングHS部材の材料がアルミニウムを主成分とする材料の場合は、カバリング90に適用する金属材料は、金、銀、銅を含む材料であることが好ましい。
【0101】
カバリング90には、異なる材料を積層する、及び/又は、異なる材料を混合したものを用いることができる。たとえば、金属材料と有機材料を積層したカバリング90としたり、有機材料に金属を含む粒子(金属粒子、合金粒子等)を混合した材料をカバリング90としたりすると、音及び電磁ノイズの対策となり好適である。
【0102】
音の減少効果を高めるために、カバリング90を、多孔質構造を有するものとすることができる。
【0103】
カバリング90でハウジングHSを覆うにあたり、耐久性向上のため防水効果のある材料を用いることができる。金属材料は防水効果を有する。有機材料のうち防水効果があるものは、例えば、ゴム、ポリエチレン等がある。
【0104】
図8に示すように、カバリング90の外側に、電気部品として、モータ2の駆動用バッテリ91が取り付けられている。駆動用バッテリ91は、不図示の配線を介してインバータ7と接続されている。駆動用バッテリ91は、カバリング90の外側からハウジングHSの上部に固定されている。駆動用バッテリ91は、回転軸Xの径方向視において、一部がカバリング90からオフセットしている。
なお、電気部品は、駆動用バッテリ91に限定されず、たとえば、コネクタ、パークアクチュエータ等としても良い。また、インバータケース17をカバリング90で覆わない場合には、電気部品はインバータ7としても良い。
【0105】
図9に示すように、車両には、ユニット1が配置された車両下方の空間SPと、乗員が乗り込む車室VR内とを連通する通気口VPが設けられている。
【0106】
図10は、ユニット1および燃料電池95を搭載した車両VHを示す図である。
図10に示すように、ユニット1は車両VHの後方に配置され、燃料電池95は車両VHの前方に配置されている。車両VHの中央の車室VRの下には、水素タンク96が配置されている。水素タンク96は、配管99を介して燃料電池95に接続されている。
【0107】
車両VHの、ユニット1より後方に、貯水タンク97が配置されている。貯水タンク97の下部には排水口97aが設けられている。
【0108】
燃料電池95とユニット1は排水パイプ98Aを介して接続されている。ユニット1と貯水タンク97は排水パイプ98Bを介して接続されている。すなわち、燃料電池95と貯水タンク97は、排水パイプ98A、ユニット1および排水パイプ98Bを介して接続されている。
【0109】
燃料電池95は、また、不図示の配線を介してユニット1に電気的に接続されている。
車両VHにおいて、駆動用バッテリ91(
図8参照)からモータ2に電力が供給される。駆動用バッテリ91を充電する場合、または駆動用バッテリ91からモータ2に供給する電力が不足する場合には、燃料電池95から電力が供給される。
【0110】
図10に示すように、燃料電池95のアノードに水素タンク96から水素ガスを供給し、カソードに外気から取り込んだ酸素ガス(空気)を供給し、電気化学反応させることで発電を行う。水素ガスと酸素ガスの電気化学反応の結果として、リキッドLq(水:H
2O)が生成される。
【0111】
生成されたリキッドLqは、排水パイプ98A、98Bを介して車両VH後方の貯水タンク97に導入され、貯水タンク97の排水口97aから車外に排出される。なお、排水パイプ98A、98Bに、電気化学反応によって生じる排気(主に窒素ガス)を導入しても良い。
前記したように、排水パイプ98A、98Bはそれぞれユニット1に接続している。すなわち、リキッドLqはユニット1を経由して、貯水タンク97に導入される。実施の形態では、リキッドLqをユニット1の熱対策に利用する。
【0112】
図8に示すように、ユニット1では、モータ2および動力伝達機構3を構成する部品の回転によって、ハウジングHSに熱が発生しやすい。
図8に示すように、ハウジングHSはカバリング90で覆われているため、発生した熱がこもりやすい。実施の形態では、ハウジングHSと、クーラント(冷媒)であるリキッドLqとの熱交換を行うことで、ハウジングHSの温度上昇を低減する。
【0113】
熱交換のために、たとえば、カバリング90の外表面とハウジングHSの外表面との間に、リキッドLqを介在させる。カバリング90の外表面とハウジングHSの外表面との間にリキッドLqを介在させる方法として、たとえば、カバリング90の外表面とハウジングHSの外表面との間にリキッドLqを滞留させる滞留部を設けることができる。また、カバリング90の外表面とハウジングHSの外表面との間にリキッドLqを流す流路を設けることができる。
【0114】
ここで、「カバリング90の外表面とハウジングHSの外表面との間」は、「カバリング90の外表面とカバリング90の内表面との間」という概念を含み、例えば、カバリング90に滞留部又は流路を形成する構成等が含まれる。
また、「カバリング90の外表面とハウジングHSの外表面との間」は、「カバリング90の内表面とハウジングHSの外表面との間」という概念を含む。この概念は、たとえば、カバリング90とハウジングHSとの間のクリアランスが滞留部または流路となる構成を含む。この概念は、また、カバリング90とハウジングHSとの間に滞留部(リキッドLqが導入されるボックス93等)または流路(リキッドLqが流れるパイプ等)を設ける構成等を含む。
【0115】
図8に示すように、実施の形態では、カバリング90の内表面とハウジングHSの外表面の間に、リキッドLqが導入される滞留部として、ボックス93を設けている。
図8および
図9では、わかりやすくするために、ボックス93にハッチングを付して示している。
【0116】
図8に示すように、ボックス93はカバリング90内の、ハウジングHSの下部に設置されている。ボックス93は、回転軸Xの径方向視において、動力伝達機構3が収容されたギアケース14と、モータ2が収容されたモータケース10とにオーバーラップする部分を有する。
【0117】
ボックス93の回転軸X方向の一端側(図中、右側)にはリキッドLqの導入口93aが設けられ、他端側(図中、左側)には排出口93bが設けられている。燃料電池95から延びる排水パイプ98Aは、カバリング90を貫通してボックス93の導入口93aに接続する。貯水タンク97から延びる排水パイプ98Bは、カバリング90を貫通してボックス93の排出口93bに接続する。導入口93aおよび排出口93bは、ボックス93の底面93dから離間して設けられている。
【0118】
排水パイプ98Aを通流するリキッドLqは、導入口93aを介してボックス93内に導入される。ボックス93内に滞留するリキッドLqが、排出口93bの高さまで達すると、排出口93bを介して排水パイプ98Bに排出される。
【0119】
ボックス93内に滞留するリキッドLqと、ハウジングHSとの熱交換が行われることで、ハウジングHSの温度上昇が低減される。カバリング90は、ボックス93を備えることで、ハウジングHSとの熱交換部として機能する。
【0120】
ボックス93内に滞留するリキッドLqは、回転軸Xの径方向から視て、動力伝達機構3とオーバーラップする部分を有する。
図8に示すように、ハウジングHSのギアケース14内に形成されるギア室Sbの下部には、オイルOLが貯留されている。ギア室Sbに貯留されるオイルOLは、動力伝達機構3を構成する各ギアの噛合部との熱交換によって、温度が上昇しやすい。ボックス93はギア室Sbの重力方向下方に位置するため、ギア室Sbに貯留されるオイルOLとの熱交換が行われやすい。これによりギア室Sbに貯留されるオイルOLの温度上昇を低減し、ハウジングHSの熱対策に寄与する。
【0121】
ボックス93内に滞留するリキッドLqは、回転軸Xの径方向から視て、モータ2とオーバーラップする部分を有する。
図8では、ギア室SbにオイルOLを貯留する例を示している。モータ2をオイルOLで直接冷却する場合には、モータ2を収容するモータ室SaにもオイルOLを貯留することができる。この場合は、モータ2に掻き上げられたオイルOLの温度上昇を、ボックス内に滞留するリキッドLqとの熱交換で低減することができる。
【0122】
さらに、カバリング90の外表面とハウジングHSの外表面との間にリキッドLqが介在することによって、動力伝達装置およびモータ2から生じるノイズの外部漏れが低減される。
【0123】
図11は、ボックス93を上方から見た状態をハウジングHSと共に示した図である。
図12は、ボックス93を、
図11におけるA-A線に沿って切断した断面を、ハウジングHSと共に示した図である。
図11では、ボックス93の領域を判り易くするために、ボックス93の上部外表面93cにハッチングを付して示している。
【0124】
図11に示すように、上面視において、ボックス93は略矩形形状を成している。ボックス93は、当該ボックス93の外周縁930の内側に、ハウジングHSが配置される大きさで形成されている。
【0125】
図12に示すように、ボックス93は、鉛直線方向に厚みを持つ直方体形状である。
図12に示すように、ボックス93の上部外表面93cには凹部931が設けられている。凹部931は、鉛直線方向の上側に開口している。凹部931の内周は、ハウジングHSの下部外表面HSSの形状に合わせて形成される。ハウジングHSの下部外表面HSSは、凹部931内に配置される。凹部931内において、上部外表面93cと下部外表面HSSが接触する。これによって、ボックス93内のリキッドLqとハウジングHSとの熱交換効率を向上させることができる。
【0126】
なお、図示したボックス93はあくまで一例である。ボックス93は凹部931を形成しない直方体形状であっても良く、筒状であっても良い。また、ハウジングHSの周囲を囲むように複数のボックス93を設けても良い。
【0127】
ボックス93内のリキッドLqは、排出口93bの高さまで達すると排出口93bから排出され、導入口93aから新たなリキッドLqが導入される。このように、ボックス93内のリキッドLqは常に入れ替えられているため、効率良くハウジングHSとの熱交換を行うことができる。
【0128】
図10に示すように、リキッドLqが生成される燃料電池95に対して、ユニット1と貯水タンク97は車両VHの後方側に位置している。すなわち、ユニット1のハウジングHSと貯水タンク97の排水口97aが近くに配置されている。これによって、ユニット1のハウジングHSと貯水タンク97の排水口97aを接続する排水パイプ98Bを短くすることができる。コスト、重量等に有利である。
【0129】
ハウジングHSのボックス93の排出口93bおよび貯水タンク97の排水口97aからリキッドLqが排出される際に、排水音が生じることがある。
図10に示すように、ユニット1のハウジングHSと、貯水タンク97は、車室VRより車両VH後方に配置されている。これによって、ハウジングHSから生じる音と、リキッドLqの排水音が車室VRに届きにくく、ノイズ対策に有利である。
【0130】
貯水タンク97の排水口97aは、ハウジングHSよりも車両VH後方に配置する。例えば、重力方向視において、ハウジングHSは貯水タンク97の排水口97aと車室VRとの間に位置する部分を有する。このように構成することで、ハウジングHSは、貯水タンク97から発生するノイズである排出音をカットする壁として機能するため、ノイズ対策に有利である。
【0131】
車両VHの下方に配置されるユニット1は、車両VHの走行風との熱交換を行うことによって温度上昇が低減されるが、ユニット1が車両VHの後方側に配置されると、車両の走行風を受けにくい。
図9に示すように、実施の形態では、車室VR内とハウジングHSの配置された空間SPとを連通する通気口VPを設けている。
【0132】
車室VRにおいて空調装置を駆動する、または車室VRの窓を開けることによって、車室VR内の空気Airが通気口VPから排出され、空間SPに流入する。車室VR内の空気Airは、外気温に合わせた温度調整がなされる。例えば、外気温が高い時には、車両VHにおいて冷房が使用され、または窓が開けられる。また、例えば、外気温が低い時には暖房が使用される。
【0133】
外気温に応じて温度調整された空気Airが空間SPに流入し、ハウジングHSと熱交換を行うことによって、走行風を受けにくい車両の後方側においても、ハウジングHSを適正温度に近づける方向で熱交換を行うことができる。なお、車室VR内の空気Airが、空間SPに流入しやすいように、ファン等を設けても良い。
【0134】
以上の通り、実施の形態にかかる車両VHは、以下の構成を有する。
(1)車両VHは、動力伝達機構3を収容するハウジングHSと、
ハウジングHSを覆う部分を有するカバリング90と、
カバリング90の外表面とハウジングHSの外表面との間に介在するリキッドLqと、を有する。
【0135】
このように構成することにより、リキッドLqを有効に利用することができる。ハウジングHSに収容される動力伝達機構3の作動によりノイズが発生する。動力伝達機構3を収容するハウジングHSをカバリング90で覆うことで、ノイズ対策をすることができる。しかしながら、ハウジングHSはカバリング90で覆われることによって熱がこもりやすくなる。カバリング90の外表面とハウジングHSの外表面との間にリキッドLqを介在させることで、ハウジングHSをリキッドLqにより冷却することができる。また、リキッドLqは、ハウジングHSの外部に漏れるノイズ対策にも寄与する。このように、車両VHにおける熱対策またはノイズ対策にリキッドLqを有効に利用することができる。
【0136】
(2)リキッドLqは、燃料電池95の排水である。
燃料電池95における発電により、リキッドLq(水)が生成される。貯水タンク97から車外に排出するリキッドLqを、カバリング90の外表面とハウジングHSの外表面との間に介在させることで、燃料電池95の排水を有効利用することができる。
【0137】
(3)車両VHは、動力伝達機構3を収容するハウジングHSと、
ハウジングHSと燃料電池95の排水であるリキッドLqとの熱交換を行うカバリング90(熱交換部)と、を有する。
【0138】
貯水タンク97から車外に排出するリキッドLqを、カバリング90のボックス93に導入して、ハウジングHSとの熱交換を行うことで、燃料電池95の排水を有効利用することができる。
【0139】
(4、5)車両VHは、ハウジングHSの外表面に固定された駆動用バッテリ91(電気部品)を有する。
回転軸Xの径方向視において、駆動用バッテリ91はカバリング90とオフセットする部分を有する。
【0140】
カバリング90で覆われたハウジングHSに対して、電気部品(例えば、パークアクチュエータ、コネクタ等)をカバリング90外部に露出して固定する。
これによって、
図8の例のように、カバリング90の内表面とハウジングHSの外表面との間にリキッドLqを介在させる場合は、カバリング90の内部に導入されるリキッドLqと電気部品との接触面積を減らすことができる。これによって、リキッドLqによる電気部品への干渉を少なくすることができる。
【0141】
カバリング90の内表面とカバリング90の外表面との間にリキッドLqを介在させる場合は、カバリング90とハウジングHSの外表面を近づけることができる。これによって、リキッドLqとハウジングHSの熱交換効率を向上させることができ、ハウジングHSの熱対策に寄与する。また、電気部品もカバリング90で覆った際には、カバリング90がハウジングHSの表面から離れることによって生じる隙間が低減されるため、ノイズ対策効果を向上させることができる。
【0142】
(6)ハウジングHSは車室VRよりも車両VHの後方側に位置する。
車両VHは、車室VR内にハウジングHSの配置された空間SPと連通する通気口VPを有する。
【0143】
車室VR内とハウジングHSの配置された空間SPとを連通する通気口VPを設けることで、空間SPに車室VR内の空気Airを送ることが可能となる。これによって、外気温に応じて温度を調整された車室VR内の空気Airが空間SPに導入されるため、走行風を受けにくい車両VHの後方側においても、ハウジングHSの適正温度に近づく方向に熱交換を行うことができる。
【0144】
(変形例1)
図13は、変形例1に係るカバリング90Aを示す模式図である。
図14は、変形例1に係るカバリング90Aを回転軸X方向から視た模式図である。
図13および
図14に示すように、変形例1では、カバリング90Aに、ハウジングHSの外表面を露出させた開口部901を設けている。
【0145】
図13に示すように、燃料電池95から排出されたリキッドLqが通流する排水パイプ98Aの先端には、リキッドLqを噴射するノズル981が装着されている。ノズル981は、リキッドLqを水流として噴射するものであっても良く、ミスト状に噴射するものでも良い。
【0146】
排水パイプ98Aに、燃料電池95の電気化学反応によって生じる排気(主に窒素ガス)を導入することで、ノズル981からリキッドLqを噴射させることができる。
【0147】
図14に示すように、ノズル981は、カバリング90Aに形成された開口部901から露出するハウジングHSの外表面に面して配置される。ノズル981から噴射されたリキッドLqは、ハウジングHSの外表面に吹きかけられる。ハウジングHSの外表面に吹きかけられたリキッドLqが気化する際に、ハウジングHSの外表面の熱を吸収することで、ハウジングHSの熱対策に寄与する。
【0148】
ハウジングHSの外表面に吹きかけられたリキッドLqの一部は気化せず、重力に従ってハウジングHSの外表面を、重力方向下方に伝い落ちる。
【0149】
変形例1においても、ハウジングHSの下部に、リキッドLqの滞留部として、ボックス93が設けられている。
図13に示すように、変形例1のボックス93は、導入口93a(
図8参照)の代わりに、上部外表面93cに開口93eが設けられている。ハウジングHSの外表面を伝い落ちたリキッドLqは、開口93eを介してボックス93に落下して滞留する。ボックス93に滞留したリキッドLqは、実施の形態と同様に、ハウジングHSと熱交換を行うことで、熱対策に寄与する。
ボックス93に滞留したリキッドLqは、実施の形態と同様に、排出口93bから排水パイプ98Bに導入される。
【0150】
変形例1の構成によれば、カバリング90Aに開口部901を設けてハウジングHSの外表面を露出させる。燃料電池95から排出されたリキッドLqが通流する排水パイプ98Aの先端にノズル981を設け、ノズル981を開口部901に配置する。ノズル981からハウジングHSの外表面にリキッドLqを噴射することで、気化熱によってハウジングHSを効率的に冷却することができる。
【0151】
開口部901を設ける場所は限定されないが、たとえば、ハウジングHSの上部の、熱が発生しやすい箇所とすることができる。開口部901をハウジングHSの上部に設けることで、リキッドLqの滞留部をハウジングHSの上部まで設ける場合と比較して、少ない流量のリキッドLqでハウジングHSの上部を冷却することができる。
【0152】
開口部901を、例えば、カバリング90Aにおけるモータケース10に対向する領域に設けると、モータケース10に吹き付けたリキッドLqを、モータ2の熱対策に寄与させることができる。また、開口部901を例えば、カバリング90Aにおけるギアケース14に対向する領域に設けると、ギアケース14に吹き付けたリキッドLqを、動力伝達機構3の熱対策に寄与させることができる。
【0153】
特に、変形例1では、開口部901からハウジングHSの外表面へのリキッドLqの吹きつけと、ハウジングHSの外表面を伝い落ちるリキッドLqを貯留可能なボックス93とを組み合わせている。これにより、リキッドLqを、ハウジングHSの熱対策に有効活用できる。
【0154】
(変形例2)
図15は、変形例2に係るカバリング90Bを示す図である。
図15に示すように、変形例2では、カバリング90Bに、リキッドLqが流れる流路902を設けている。流路902は、例えば、カバリング90Bの外表面と内表面との間に設けることができる。
【0155】
一例として、流路902は、カバリング90Bと一体に設けられたチューブ状の部材で構成することができる。チューブ状の部材は、ハウジングHSに外周に沿わせて曲げても、チューブ内部の空間が完全に潰れることがない程度の可撓性を有することが好ましい。
【0156】
流路902は、カバリング90Bの回転軸X方向の一端側(図中、右側)で排水パイプ98Aと接続し、他端側(図中、左側)で排水パイプ98Bと接続する。
流路902は、排水パイプ98Aとの接続部から、排水パイプ98Bとの接続部まで連続する一つの流路として形成されている。
【0157】
カバリング90BがハウジングHSの周囲を覆った状態で、流路902は、回転軸X周りの周方向に沿って延びていると共に、回転軸X方向の位相をずらして設けられている。そのため、流路902は、回転軸Xを囲む螺旋状に配置されている。
【0158】
実施の形態と同様に、変形例2においても、流路902を流れるリキッドLqと、ハウジングHSとの間で熱交換が行われるため、カバリング90が熱交換部として機能し、ハウジングHSの熱対策に寄与する。
また、ハウジングHS全体にリキッドLqの滞留部を設ける場合と比較すると、螺旋状の流路902でハウジングHSの概ね全体を囲うことができるため、少ない流量のリキッドLqで熱対策を行うことができる。車両VH全体として必要なリキッドLqの量の削減に寄与する。
【0159】
なお、
図15では、カバリング90Bを直方体形状として図示しているが、これに限定されない。たとえば、流路902とハウジングHSとの熱交換が行われやすいように、カバリング90Bを、ハウジングHSの外表面に沿った形状としても良い。これによって、カバリング90がハウジングHSの外表面と接触する面積が増加し、熱交換効率を向上させることができる。
【0160】
(その他の変形例)
前記した実施の形態および変形例では、カバリング90にリキッドLqが導入される滞留部または流路を設ける例を説明したが、これに限定されない。熱交換部として、燃料電池95の排水であるリキッドLqと、オイルとが導入される熱交換器(オイルクーラ)を用いることができる。
オイルは、ハウジングHS内の動力伝達機構3またはモータ2の潤滑および冷却に用いられるオイルOLとすることができる。たとえば、
図6に示したオイルクーラ83において、冷却水の代わりに燃料電池95の排水であるリキッドLqを導入しても良い。あるいは、オイルクーラ83とは別のオイルクーラを設けても良い。
【0161】
変形例2では、流路902をカバリング90の外表面とカバリング90内表面との間に形成する例を説明したが、これに限定されない。流路は、ハウジングHSの一部を用いて形成された流路としても良い。例えば、ハウジングHSの外表面と内表面の間に、リキッドLqが流れる流路を形成しても良い。
【0162】
また、カバリング90内にハウジングHS内のオイル溜りと接触するパイプを設けても良い。例えば、燃料電池95の排水であるリキッドLqが流れるパイプを、ハウジングHSのギア室Sbの下部に貯留されるオイルを通過するように配置しても良い。
【0163】
また、ハウジングHSの隣にインバータ7を設け、ハウジングHSとインバータ7との間にリキッドLqを流す流路を熱交換部として設けても良い。これによって、インバータ7で発生する熱の対策に寄与する。
【0164】
ハウジングHSの隣に駆動用バッテリ91を設け、ハウジングHSと駆動用バッテリ91との間にリキッドLqを流す流路を熱交換部として設けても良い。これによって、駆動用バッテリ91で発生する熱の対策に寄与する。
【0165】
その他にも、ハウジングHSとカバリング90の間またはハウジングHS内のデットスペースに熱交換部として流路、または熱交換器(オイルクーラ)を設けても良い。
【0166】
実施の形態および変形例では、ハウジングHSの熱対策として、ハウジングHSとリキッドLqとの熱交換を行う例を説明したが、これに限定されない。
熱対策は、たとえば、ハウジングHSと他の部品との熱交換量を下げることが考えられる。
熱交換量を下げる対策として、たとえば、ハウジングHSとハウジングHS外部の要素との間の熱交換量を下げることができる。また、たとえば、ハウジングHSとハウジングHSより高温の外部熱源との間の熱交換量を下げることができる。また、たとえば、ハウジングHSと、ハウジングHSを有するユニット1よりも低温にしたい要求のある外部部品との間の熱交換量を下げる等の対策が考えられる。
【0167】
本発明のある態様として、少なくとも動力伝達機構3を収容するハウジングHSを例とした。本発明の他の態様として、少なくともモータ2を収容するハウジングHSとしても良い。この場合、同一のハウジングHS内に動力伝達機構3が収容されていても良いし、収容させていなくても良い。
【0168】
本発明の他の態様として、少なくともインバータ7を収容するハウジングHSとしても良い。この場合、同一のハウジングHS内に動力伝達機構3が収容されていても良いし、収容させていなくても良い。
【0169】
本発明の他の態様として、少なくともバッテリを収容するハウジングHSとしても良い。バッテリは、たとえば駆動用バッテリ91(
図8参照)とすることができる。この場合、同一のハウジングHS内に動力伝達機構3が収容されていても良いし、収容されていなくても良い。
【0170】
本発明のある態様において、動力伝達機構3は、例えば、歯車機構、環状機構等を有する。
歯車機構は、例えば、減速歯車機構、増速歯車機構、差動歯車機構(差動機構)等を有する。
減速歯車機構及び増速歯車機構は、例えば、遊星歯車機構、平行歯車機構等を有する。
環状機構は、例えば、無端環状部品等を有する。
無端環状部品等は、例えば、チェーンスプロケット、ベルトとプーリ等を有する。
【0171】
差動機構5は、例えば、傘歯車式のデファレンシャルギア、遊星歯車式のデファレンシャルギア等である。
差動機構5は、入力要素であるデファレンシャルケースと、出力要素である2つの出力軸と、差動要素である差動歯車セットと、を有する。
傘歯車式のデファレンシャルギアにおいて、差動歯車セットは傘歯車を有する。
遊星歯車式のデファレンシャルギアにおいて、差動歯車セットは遊星歯車を有する。
【0172】
ユニット1は、デファレンシャルケースと一体回転するギアを有する。
例えば、平行歯車機構のうちのファイナルギア(デフリングギア)は、デファレンシャルケースと一体に回転する。例えば、遊星歯車機構のキャリアとデファレンシャルケースとが接続している場合、ピニオンギアがデファレンシャルケースと一体に回転(公転)する。
【0173】
例えば、モータ2の下流に減速歯車機構が接続されている。減速歯車機構の下流に差動歯車機構が接続されている。即ち、モータ2の下流には、減速歯車機構を介して差動歯車機構が接続されている。なお、減速歯車機構に替えて増速歯車機構としても良い。
シングルピニオン型の遊星歯車機構は、例えば、サンギアを入力要素とし、リングギアを固定要素とし、キャリアを出力要素とすることができる。
ダブルピニオン型の遊星歯車機構は、例えば、サンギアを入力要素とし、リングギアを出力要素とし、キャリアを固定要素とすることができる。
シングルピニオン型又はダブルピニオン型の遊星歯車機構のピニオンギアは、例えば、ステップドピニオンギア、ノンステップドピニオンギア等を用いることができる。
ステップドピニオンギアは、ラージピニオンおよびとスモールピニオンとを有する。例えば、ラージピニオンをサンギアに噛合させると好適である。例えば、スモールピニオンをリングギアに嵌合させると好適である。
ノンステップドピニオンギアは、ステップドピニオンギアではない形式である。
【0174】
本実施形態では、ユニット1を車両に搭載する例を説明したが、この態様に限定されず、ユニット1は車両以外にも適用することができる。また、本実施形態において複数の実施例、変形例が記載されている場合は、これらを任意に組み合わせても良い。
【0175】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0176】
1 :ユニット
3 :動力伝達機構
90 :カバリング(熱交換部)
91 :駆動用バッテリ(電気部品)
92 :通気口
93 :ボックス
95 :燃料電池
VH :車両
VR :車室
HS :ハウジング
Lq :リキッド