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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】プリント基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
H05K1/02 N
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019147445
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021028934
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-07-22
【審判番号】
【審判請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】小林 陽
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏治
【合議体】
【審判長】高野 洋
【審判官】稲葉 崇
【審判官】馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-9322(JP,A)
【文献】特開2014-36138(JP,A)
【文献】特開2006-12495(JP,A)
【文献】特開2005-294511(JP,A)
【文献】登録実用新案第3199715(JP,U)
【文献】特開2017-103305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の領域および第2の領域、および、コネクタを有するプリント基板において、
前記プリント基板の表層において、前記第2の領域には、前記コネクタが実装され、
かつ、前記第1の領域および前記第2の領域は、電気的に絶縁され、
前記第1の領域および前記第2の領域は、前記プリント基板のグランドに接続され、
前記プリント基板の表層の周縁部であって、かつ、前記コネクタの挿入口に対応する位置に、前記第1の領域を有する、
ことを特徴とするプリント基板。
【請求項2】
前記絶縁は、前記第1の領域および前記第2の領域の間に設けられた空間である、
ことを特徴とする請求項1に記載のプリント基板。
【請求項3】
前記プリント基板のグランドは、ベタパターンである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のプリント基板。
【請求項4】
前記第1の領域および前記第2の領域は、
前記プリント基板のグランドと、複数のビアホールによって電気的に接続されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のプリント基板。
【請求項5】
前記複数のビアホールは、前記プリント基板が有する全ての層を貫通する、
ことを特徴とする請求項4に記載のプリント基板。
【請求項6】
前記コネクタは、プリント基板とは異なる外部装置又は、通信ケーブルと接続する、
請求項1乃至5の何れか1項に記載のプリント基板。
【請求項7】
前記プリント基板が、更に第3の領域を有し、
前記第3の領域には、前記コネクタから信号を受信する電子デバイスが実装され、
前記プリント基板の表層において、
前記第1の領域と前記第3の領域は、電気的に絶縁され、
前記第2の領域と前記第3の領域は、電気的に絶縁され、
前記第3の領域は、前記プリント基板のグランドに接続される、
請求項1乃至6の何れか1項に記載のプリント基板。
【請求項8】
前記絶縁は、前記第1の領域および前記第3の領域の間に設けられた空間または、
前記第2の領域および前記第3の領域の間に設けられた空間である、
ことを特徴とする請求項7に記載のプリント基板。
【請求項9】
前記第1の領域は、前記第2の領域を囲むように設けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のプリント基板。
【請求項10】
前記第1の領域は、前記第3の領域を囲むように設けられている、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載のプリント基板。
【請求項11】
前記第1の領域は、前記第2の領域および前記第3の領域を、
1つの領域として囲むように設けられている、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載のプリント基板。
【請求項12】
前記プリント基板は、少なくとも信号層、電源層及びグランド層を有する多層のプリント基板である、
ことを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載のプリント基板。
【請求項13】
前記グランド層は、前記プリント基板のグランドである、
ことを特徴とする請求項12に記載のプリント基板。
【請求項14】
前記コネクタの金属性の筐体は、前記第2の領域に接続する、
ことを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項に記載のプリント基板。
【請求項15】
前記コネクタを前記プリント基板に固定するロックピンは、
前記プリント基板が有する全ての層を貫通し、
前記コネクタの金属性の筐体は、前記ロックピンを介して、
前記プリント基板が有する複数の層のグランドと電気的に接続する、
ことを特徴とする請求項14に記載のプリント基板。
【請求項16】
固定するロックピンは、金属性のロックピンである、
ことを特徴とする請求項15に記載のプリント基板。
【請求項17】
前記第1の領域は、前記プリント基板を固定する固定部材が通過する穴又は切り欠きを有し、前記固定部材は、前記プリント基板とは異なる筐体に、前記プリント基板を固定する
ことを特徴とする請求項1乃至16の何れか1項に記載のプリント基板。
【請求項18】
前記固定部材及び前記筐体は、金属性を有する固定部材及び前記プリント基板とは異なる筐体である、
ことを特徴とする請求項17に記載のプリント基板。
【請求項19】
前記固定部材は、前記第1の領域と前記プリント基板とは異なる筐体を、電気的に接続する
ことを特徴とする請求項18に記載のプリント基板。
【請求項20】
前記プリント基板は、印刷装置のプリント基板である、
ことを特徴とする請求項1乃至19の何れか1項に記載のプリント基板。
【請求項21】
請求項1乃至20の何れか1項に記載のプリント基板と、用紙に画像を印刷する印刷手段と、
を備える印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器には、プリント基板(PCB:Printed Curcuit Board)が内蔵されていており、プリント基板は、筐体等に固定されている。プリント基板には、抵抗やコンデンサなどの受動部品、及び、IC(Integrated Curcuit)などの能動部品が実装されている。
【0003】
近年、電子機器の小型化が進んでいる影響を受けて、プリント基板のサイズも小さくなってきている。また、低消費電力化やパフォーマンスの向上のために、プリント基板に実装されるICの微細化や高集積化が進んでいる。
【0004】
基板サイズが小さくなることで、プリント基板における基準電位となるグランドの面積が小さくなり、静電気などのノイズが逃げにくく、電圧レベルの安定化が厳しくなっている。加えて、ICが微細化・高集積化されていることで耐静電性が低下しており、静電気等の外乱ノイズによる誤動作・破壊が起こりやすくなっている。
【0005】
特許文献1に記載の制御基板5では、フレームグランド用領域53とシグナルグランド用領域52とが絶縁距離ΔL2を隔てて設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-117131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、フレームグランド用領域53とシグナルグランド用領域52とが絶縁距離ΔL2で隔てられているので、フレームグランド用領域53からシグナルグランド用領域52に信号が伝搬するのを抑制することができる。しかしながら、フレームグランド用領域53への静電気の侵入を抑制することはできない。例えば、フレームグランド用領域53にケーブルや外部装置などを接続するコネクタが実装した場合、ケーブルや外部装置を持つ人の手、ケーブル、外部装置に帯電した静電気が、フレームグランド用領域53に侵入してしまう。特許文献1では、フレームグランド用領域53からシグナルグランド用領域52に信号が伝搬するのを抑制することができるが、全ての静電気の伝搬を禁止することができるわけではない。よって、フレームグランド用領域53への静電気の侵入を抑制しておく方がシグナルグランド用領域52への静電気の侵入を抑制することができる。
【0008】
そこで、本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、コネクタが実装される第2の領域への静電気の侵入を抑制することが可能なプリント基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のプリント基板は、第1の領域および第2の領域、および、コネクタを有するプリント基板において、前記プリント基板の表層において、前記第2の領域には、前記コネクタが実装され、かつ、前記第1の領域および前記第2の領域は、電気的に絶縁され、前記第1の領域および前記第2の領域は、前記プリント基板のグランドに接続され、前記プリント基板の表の周縁部であって、かつ、前記コネクタの挿入口に対応する位置に、前記第1の領域を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、省電力状態に移行した直後に第2制御手段に保留された情報によって省電力状態から復帰するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】画像形成装置の構造を示した図である。
図2】コントローラを示したブロック図である。
図3】プリント基板の詳細を示した図である。
図4】プリント基板の一部を拡大した拡大図である。
図5図3のA-A´の断面図である。
図6】静電気が伝搬する経路を示した図である。
図7】信号層及びグランド層の共振周波数と利得との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0014】
<画像形成装置の全体構成>
図1は、本発明の実施例1の画像形成装置の構造を示した図である。図1に示すように、画像形成装置10は、画像入力デバイスであるスキャナ部12と、画像出力デバイスであるプリンタ部13と、を備えている。
【0015】
スキャナ部12は、原稿上に形成された画像を読み取って画像データを取得するデバイスである。原稿上に形成された画像に照射された光の反射光をCCDに入力することによって、当該画像の情報を電気信号に変換する。この電気信号は、R、G、B各色からなる輝度信号に変換され、後述するコントローラ11に対して出力される。
【0016】
スキャナ部12のトレイ1250にセットされた原稿は、原稿フィーダ1260によって、1枚ずつ、プラテンガラス1211上の光学ユニット1213の読取位置に給送される。そして、前記光学ユニット1213による読み取られた原稿は、排出トレイ1219に排出される。光学ユニット1213のランプ1212から照射されて原稿で反射した光は、ミラー1214、1215、1216、及びレンズ1217を介して、CCDイメージセンサ1218に入力される。なお、原稿の読み取り方法は、原稿フィーダ1260による自動送り方式ではなく、プラテンガラス1211上に載置された原稿に対して、光学ユニット1213が搭載されたキャリッジを走査する方法であってもよい。なお、第1実施形態では、モノクロ印刷が可能な画像形成装置10について説明するが、当該画像形成装置10はカラー印刷が可能であっても良い。
【0017】
プリンタ部13は、入力された画像データを用いて用紙に画像を形成するデバイスである。なお、本実施形態のプリンタ部13の画像形成方式は、感光体ドラムや感光体ベルトを用いた電子写真方式であるが、本発明はこれに限定されない。例えば、プリンタ部13は、微少ノズルアレイからインクを吐出して用紙上に印字するインクジェット方式であっても良い。
【0018】
また、画像形成装置10は、プリンタ部13によって画像が形成される用紙を収納する複数の用紙カセット1311、1312、1313、1314および手差しトレイ1315を有している。プリンタ部13のレーザドライバ1321は、レーザ発光部1322を駆動する。レーザドライバ1321は、コントローラ11から出力された画像データに応じたレーザ光を、レーザ発光部1322に発光させる。レーザ光は、感光ドラム1323に照射され、感光ドラム1323には、レーザ光に応じた潜像が形成される。この感光ドラム1323の潜像の部分には現像器1324によって現像剤が付着される。転写部1325は、感光ドラム1323に付着された現像剤を、搬送路1331を通過した記録紙に転写する。現像剤の乗った記録紙は搬送ベルト1326によって、定着器1327に搬送される。定着器1327は、熱と圧力により現像剤を記像紙に定着させる。定着器1327を通過した記録紙は、搬送路1335、搬送路1334を通過して、排紙トレイ1328に排出される。あるいは、印字面を反転して排紙トレイ1328に排出する場合には、記録は、搬送路1336、搬送路1338まで導かれた後、搬送路1337、搬送路1334を通過する。
【0019】
また、両面印刷を行う場合、記録紙は、定着器1327から搬送路1336に導かれて、フラッパ1329によって、搬送路1333に導かれる。その後、記録紙を逆方向に搬送し、フラッパ1329によって、搬送路1338、再給紙搬送路1332へ導かれる。再給紙搬送路1332へ導かれた記録紙は、搬送路1331を通り、転写部1325へ給紙される。
【0020】
<画像形成装置10のコントローラ11の説明>
図2は、画像形成装置の全体を制御するコントローラを示したブロック図である。図2を参照して、画像形成装置10の全体の動作を制御するコントローラ11の詳細について説明する。
【0021】
図2に示すように、コントローラ11は、上記したスキャナ部12、プリンタ部13および操作部12と電気的に接続されている。本実施例のコントローラ11の各デバイスは、1つのプリント基板に実装されている。なお、2つ以上のプリント基板にコントローラ11の各デバイスを分けて実装しても良い。例えば、コントローラ11を、操作部I/F1105及び人感センサ1110を実装したプリント基板と、CPU1101等を実装したプリント基板と、によって構成しても良い。このコントローラ11は、CPU1101、RAM1102、ROM1103、操作部I/F1105、LANコントローラ1106、人体検知センサ1110、用紙検知センサ1112および電源制御部1114を備えている。そして、CPU1101、RAM1102、ROM1103、操作部I/F1105、LANコントローラ1106、人体検知センサ1110、用紙検知センサ1112および電源制御部1114は、システムバス1107に接続されている。また、コントローラ11は、HDD1104、画像処理部1109、スキャナI/F1111およびプリンタI/F1113を備えている。HDD1104、画像処理部1109、スキャナI/F1111およびプリンタI/F1113は、画像バス1108に接続されている。
【0022】
CPU1101は、ROM1103に記憶された制御プログラム等に基づいて接続中の各種デバイスとのアクセスを統括的に制御すると共に、コントローラ11で実行される各種処理についても統括的に制御する。
【0023】
RAM1102は、CPU1101が動作するためのシステムワークメモリである。このRAM1102は、画像データを一時記憶するためのメモリでもある。RAM1102は、電源がオフの場合でも記憶した内容を保持することが可能なSRAM、及び電源がオフの場合には記憶した内容が消去されるDRAMを有している。ROM1103には、装置のブートプログラムなどが格納されている。HDD1104は、ハードディスクドライブであり、画像形成装置10を制御するプログラムや画像データを格納する。
【0024】
操作部I/F1105は、システムバス1107と操作部12と接続するためのインターフェース部である。この操作部I/F1105は、操作部12に表示するための画像データをシステムバス1107から受け取り操作部12に出力すると共に、操作部12から入力された情報をシステムバス1107へと出力する。
【0025】
LANコントローラ1106は、画像形成装置10と、ネットワーク60に接続される外部装置50との間の情報の入出力を制御する。
【0026】
人体検知センサ1110は、赤外線を受光する赤外線センサがマトリクス状に配列された赤外線センサアレイである。人体検知センサ1110が人などから放射される赤外線を受光することによって、画像形成装置10に人が接近したことを検知する。なお、ここでは、本実施形態では、人体検知センサ1110が人を検知する例について説明するが、赤外線を放射する物体であれば、この人体検知センサ1110で検知することができる。なお、人体検知センサは、上記した赤外線センサに限定されない。物体が画像形成装置10に接近したことを検知できるセンサであれば、赤外線センサ以外のデバイス(光を検知する光センサ、物理力で変形するひずみセンサ、磁気を検知する磁気センサ、温度を検知する温度センサなど)であっても良い。
【0027】
用紙検知センサ1112は、手差しトレイ1315に用紙がセットされたことを検知する。
【0028】
電源制御部1114は、画像形成装置10の各部への電力供給を制御する。電源制御部1114の詳細についは後述する。
【0029】
画像バス1108は、画像データをやり取りするための伝送路であり、PCIバスやIEEE1394等のバスで構成されている。
【0030】
画像処理部1109は、画像処理を行うためのものであり、RAM1102に記憶された画像データを読み出し、JPEG、JBIGなどの拡大または縮小および、色調整などの画像処理を行う。
【0031】
スキャナ部12は、スキャナ制御部1201とスキャナ駆動部1202とを有している。スキャナ駆動部1202は、トレイ1250にセットされた原稿をスキャナ部12の読取位置まで搬送するための紙搬送用のモータなどを含み、物理的に駆動するデバイスである。スキャナ制御部1201は、スキャナ駆動部1202の動作を制御する。スキャナ制御部1201は、スキャナ処理を行う際にユーザによって設定された設定情報をCPU1101との通信により受信し、当該設定情報に基づいてスキャナ駆動部1202の動作を制御する。
【0032】
プリンタ部13は、プリンタ制御部1301とプリンタ駆動部1302とを有している。プリンタ駆動部1302は、感光ドラム1323を回転させるモータ、定着器1327を回転させるモータ、および紙搬送モータなどを含み、物理的に駆動するデバイスである。プリンタ制御部1301は、プリンタ駆動部1302の動作を制御する。プリンタ制御部1301は、プリント処理を行う際にユーザによって設定された設定情報をCPU1101との通信により受信し、当該設定情報に基づいてプリンタ駆動部1302の動作を制御する。
【0033】
<プリント基板の説明>
図3及び図4は、プリント基板の詳細を示した図である。プリント基板100は、金属製のビス20~ビス24によって、金属性の筐体300に固定されている。このプリント基板100には、IC200及びIC201が実装されている。IC200は、上記したCPU1101であり、IC201は、上記したLANコントローラ1106である。プリント基板100には、外部装置やケーブル(例えば、USBデバイス、USBケーブル)が接続されるコネクタ202およびケーブル(例えば、Ethernetケーブル)が接続されるコネクタ203が実装されている。IC200は、信号110、111、112、及び113を介して、コネクタ202に接続されている。また、IC201は、信号114および115を介して、コネクタ203に接続されている。IC200は、コネクタ202を介して、外部装置と通信することができる。また、IC201は、コネクタ203を介して、外部装置と通信することができる。信号110~115は、クロック信号を送信するものであっても良いし、データ信号を送信するものであっても良いし、電源を供給するものであっても良いし、グランドに接続されるものであっても良い。本実施例では、コネクタ202は、4ピン(ピン400、401、402、403)のコネクタであり、コネクタ203は、2ピン(ピン405、405)のコネクタである。コネクタ202及び203のピン数は、4ピンや2ピンには限定されない。
【0034】
IC200は、PGA(Prigrammable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)であっても良い。上記した電源制御部1114は、PGAであり、上記した画像処理部1109は、ASICである。IC200及びIC201は、高集積化されており、その半導体プロセスもナノメートルオーダになっている。半導体プロセスが小さいほど、耐静電性が低下するので、静電気等の外来ノイズで誤作動する確率が高くなる。
【0035】
コネクタ202は、ロックピン406及び407により、プリント基板100に固定されている。また、コネクタ203は、ロックピン408及び409により、プリント基板100に固定されている。コネクタ202が面実装タイプ(SMD:Surface Mounted Device)のコネクタである場合、ロックピン406及び407は、プリント基板100の表層(信号層30)とはんだとにより接合される。コネクタ202が挿入実装部品(DIP:Dual In-line Package)である場合、プリント基板100の表層(信号層30)から裏層(信号層36)までロックピン406及び407が貫通しており、同じくはんだで接合される。コネクタ203についても同様であるので、その説明を省略します。
【0036】
本実施例のプリント基板100の表層(信号層30)は、スリットにより分離された3つのグランド領域を有する。3つのグランド領域は、シグナルグランド領域101、フレームグランド領域102b、及び、静電気退避用のグランド領域103である。
【0037】
シグナルグランド領域101は、コネクタ202及び203から信号を受信するIC200及びIC201が実装される領域である。このシグナルグランド領域101は、内層のグランド層32を介して、グランドに接続される。内層のグランド層32の電位は、信号110~信号115の基準電位、IC200及びIC201に供給する電源の基準電位となる。このシグナルグランド領域101は、フレームグランド領域102a及びフレームグランド領域102bの外側に設けられている。
【0038】
フレームグランド領域102aは、コネクタ202が実装され、金属筐体300と電気的に接続される。フレームグランド領域102aは、コネクタ202の金属製のフレームに接続されている。
【0039】
フレームグランド領域102bは、コネクタ203が実装され、金属筐体300と電気的に接続される。フレームグランド領域102bは、コネクタ203の金属製のフレームに接続されている。
【0040】
そして、本実施例では、プリント基板100の信号層30に、シグナルグランド領域101、フレームグランド領域102a、フレームグランド領域102bに加えて、静電気退避用のグランド領域103が形成されている。静電気退避用のグランド領域103は、プリント基板100の周縁部に設けられている。また、静電気退避用のグランド領域103は、途切れることなく環状に形成されている。また、静電気退避用のグランド領域103は、グナルグランド領域100を途切れることなく囲むように設けられている。さらに、静電気退避用のグランド領域103は、フレームグランド領域102aを途切れることなく囲むように設けられている。また、静電気退避用のグランド領域103は、フレームグランド領域102bを途切れることなく囲むように設けられている。本実施例では、静電気退避用のグランド領域103は、シグナルグランド領域101を途切れることなく囲むように設けられている。
【0041】
そして、静電気退避用のグランド領域103は、フレームグランド領域102aの外側であって少なくともコネクタ202の外部装置やケーブルが挿入される挿入口202aに対応する位置に設けられる。また、静電気退避用のグランド領域103は、フレームグランド領域102bの外側であって少なくともコネクタ203のケーブルが挿入される挿入口203aに対応する位置に設けられる。
【0042】
静電気退避用のグランド領域103、グランド層32に接続される。なお、フレームグランド領域102a、フレームグランド領域102bおよびシグナルグランド領域101も、グランド層32に接続されている。つまり、静電気退避用のグランド領域103は、グランド層32において、フレームグランド領域102a、フレームグランド領域102bおよびシグナルグランド領域101に接続されている。
【0043】
静電気退避用のグランド領域103には、ビス20~23が通過する貫通穴が形成されている。ビス20~23は、プリント基板100を金属筐体300に固定する。貫通穴は、切り欠きであっても良い。ビス20~23は、金属製であって、プリント基板100を金属筐体300に固定した状態で、グランドに接続される。
【0044】
静電気退避用のグランド領域103は、信号層30において、スリット502によって、フレームグランド領域102a、フレームグランド領域102bおよびシグナルグランド領域101と完全に分離されている。このスリット502は、信号層30にだけ設けられており、グランド層32には届かない。
【0045】
静電気退避用のグランド領域103は、信号層30と信号層36に設けられている。信号層30の静電気退避用のグランド領域103と、信号層36の静電気退避用のグランド領域103は、プリント基板100の周縁部に設けられている。なお、本実施例では、信号層36には、フレームグランド領域は存在しない。当然、信号層36にフレームグランド領域を設けても良い。
【0046】
本実施例では、静電気退避用のグランド領域103とフレームグランド領域102aとの間には、シグナルグランド領域101が配置されている。また、静電気退避用のグランド領域103とフレームグランド領域102bとの間には、シグナルグランド領域101が配置されている。なお、静電気退避用のグランド領域103とフレームグランド領域102aとの間にシグナルグランド領域101を設けなくても良い。また、静電気退避用のグランド領域103とフレームグランド領域102bとの間にシグナルグランド領域101を設けなくても良い。
【0047】
静電気退避用のグランド領域103には、ビア107が形成されており、静電気退避用のグランド領域103は、グランド層32に接続される。
【0048】
プリント基板100の周縁部に侵入した静電気は、スリット502によりシグナルグランド領域101やフレームグランド領域102a、102にも伝搬しにくくなっている。プリント基板100の周縁部に侵入した静電気は、静電気退避用のグランド領域103のビア107やビス20~23を介して、金属筐体300に伝搬する。コネクタ202やコネクタ203にデバイスやケーブルを挿抜する際に人からの放電により発生する静電気を、静電気退避用のグランド領域103の内側に侵入するのを抑制することできる。コネクタ202やコネクタ203の周辺に放電された静電気は、プリント基板100に実装された高周波で動作する能動素子(IC200、201)に侵入するのを抑制することができる。
【0049】
フレームグランド領域102aは、信号層30からビア103を介して、グランド層32及び信号層36の静電気退避用のグランド領域103に接続される。コネクタ202のフレームに放電された静電気は、ロックピン406及びロックピン407を介して、フレームグランド領域102aに伝搬する。そして、静電気は、ビア103を介して、信号層36の静電気退避用のグランド領域103に伝搬し、金属筐体300に逃げる。
【0050】
また、フレームグランド領域102aは、スリット500によりシグナルグランド領域101と分離されている。また、フレームグランド領域102bは、スリット501によりシグナルグランド領域101と分離されている。さらに、本実施例では、静電気退避用のグランド領域103とフレームグランド領域102aとは、スリット502及びスリット500により分離されている。また、静電気退避用のグランド領域103とフレームグランド領域102bとは、スリット502及びスリット501により分離されている。また、静電気退避用のグランド領域103とシグナルグランド領域101とは、スリット502により分離されている。スリットとは、プリント基板100の信号層30を構成している導体(銅膜)を物理的に分離し、電気的に非導通状態にするための溝のことである。つまり、信号層30において、シグナルグランド100とフレームグランド101とが、スリット500によって分離されている。また、信号層30において、シグナルグランド100とフレームグランド102とが、スリット501によって分離されている。
【0051】
コネクタ202は、ビア103を介して、プリント基板100のグランド層32と接続される。本実施例のビアは、貫通ビアである。貫通ビアとは、表層から裏層まで貫通する穴である。貫通ビアは、表層から裏層までドリルで穴を空け、その穴を導体でコーティングすることで、複数の層と接合するものである。コネクタ202のピン400~ピン403は、フレームグランド領域102aの外、つまりシグナルグランド100に接続される。これは信号110~信号113が、異なる2つのグランド領域を跨ぐことを避けるためである。
【0052】
図5は、図3のA-A´に沿ったプリント基板の断面図である。図5では、斜線部がシグナルグランド領域、縦線部がフレームグランド領域、ドット部が電源層である。
【0053】
本実施例のプリント基板100は、4層構成である。プリント基板100の層数は、4層に限定されない。プリント基板100は、6層であっても8層であっても構わない。
【0054】
信号層30と信号層36は、IC200やIC201から出力される信号を他のIC等に伝えるために設けられている。IC200やIC201から出力される信号は、信号層36に伝わる場合もあれば、信号層30内で伝わる場合もある。
【0055】
信号層30には、上記した信号110~115等が配線されている。信号層30には、信号110~115等の信号線以外に、電源プレーンやグランド領域101~103が設けられている。信号層30に設けられたフレームグランド領域102aは、ビア103によりグランド層32と信号層36のシグナルグランド100に接続される。
【0056】
グランド層32は、グランドの電圧レベルの安定化を図る。本実施例では、グランド層32の全てがシグナルグランド領域101となっている。
【0057】
電源層34には、IC200、IC201、コネクタ202及びコネクタ203が使用する複数の系統の電源のプレーンが設けられている。電源層34の電源プレーンは、信号層30に実装されているICに対して、ビア105を介して、電力を供給する。ビア105は、電源プレーンと同電位になるため、信号層30、グランド層32、信号層36のグランドとは接続しないようになっている。ビア103は、電源層34の電源プレーンとは接続しないようになっている。
【0058】
各層の材料は、銅などの導体である。また、各層の間には、プリプレグ31、プリプレグ35、コア材33が配置されている。プリプレグ31、プリプレグ35は、ガラス布にエポキシなどの樹脂を含浸させて半硬化させた基材であって、各層の銅とコア材33を重ねてプリント基板100を成形するときに、各層間の絶縁のために使用される。
【0059】
ビス20は、金属筐体300に固定されている。
【0060】
コネクタ202や203にケーブルなどを挿入するときまたは抜くときには、帯電した人体、デバイス、ケーブルなどから静電気が放電され、接触したコネクタ202や203のフレームやコネクタ202や203から配線されている信号110等に静電気が侵入する可能性がある。
【0061】
図6は、静電気が伝搬する経路を示した図である。
【0062】
コネクタ202やコネクタ203にデバイスやケーブルを挿抜する時、物理的な距離が近いため、帯電した人体やデバイスなどは、コネクタ202の挿入口側に設けられた静電気退避用のグランド領域103に放電する可能性が高い。静電気退避用のグランド領域103に放電された静電気は、ビア107を介して、グランド層32、信号層36に伝搬する。そして、静電気は、ビス20を介して、金属筐体300に伝搬する(経路2000)。
【0063】
また、コネクタ202のフレームに侵入した静電気は、ロックピン406、ロックピン407を介してフレームグランド領域102aに伝搬し、ビア103を介してグランド層32及び信号層36に伝搬する。ビア103は、信号層36では静電気退避用のグランド領域103と接続されているため、静電気は、ビス20を介して金属筐体300に逃げていく(経路2001)。
【0064】
なお、コネクタ202に接続される信号110~信号113に侵入したノイズは、IC200に到達する可能性がある(経路2002)。
【0065】
静電気退避用のグランド領域103及びフレームグランド101に侵入した静電気が、スリット500及びスリット502に形成された寄生容量を介して、シグナルグランド領域101に伝搬する経路がある(経路2003)。本実施例では、コネクタ202の外側に静電気退避用のグランド領域103を設けており、さらに、シグナルグランド領域101までに2つのスリット500及び502が形成されていることから、静電気がシグナルコネクタに伝搬しにくくなっている。
【0066】
図7に示すように、プリント基板100の信号層30とグランド層32では、振動しやすい周波数が異なる。なぜなら、信号層30には、スリットで分離された3つのグランド領域があるのに対し、グランド層32には、上記したようなスリットが無く、信号層30とグランド層32とではその形状が大きく異なるためである。経路2003で伝搬した静電気が信号層30のシグナルグランド領域101で共振現象を起こした場合でも、グランド層32では、信号層30と同強度の共振現象は発生しづらくなる。よって、信号層30に伝搬した静電気は、グランド層32や信号層36に伝搬するにつれ、周波数特性に基づき減衰していく。よって、内層に伝搬するにしたがってノイズとして重畳しにくくなる。
【0067】
本実施例では、スリット502により、シグナルグランド領域101、フレームグランド101領域、フレームグランド領域102bと分離された静電気退避用のグランド領域103をプリント基板100の周縁部に設けることができる。これにより、静電気がプリント基板100の周縁部であるに静電気退避用のグランド領域103に集中する。そのため、人、ケーブル、デバイスに帯電した静電気を、金属筐体300に逃がすことができる。
【0068】
また、表層の信号層30と内層のグランド層32との形状を異ならせることによって、共振周波数をずらすことができるため、内層に伝搬する静電気は減衰する。結果として、プリント基板100が内蔵された印刷装置等の電子機器は耐静電性が向上し、実装されたIC200などの誤動作等の可能性が低くなる。
【0069】
<変形例>
上記した実施形態では、本発明のプリント基板を画像形成装置に搭載した例について説明したが、本発明のプリント基板を搭載する装置は、画像形成装置に限定されない。例えば、本発明のプリント基板を、ノートPC、タブレットPC、デスクトップPC、スマートフォン、自動車、空調機、遊技機、ロボットなど種々の装置に搭載することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 画像形成装置
100 プリント基板
101 シグナルグランド領域
102a フレームグランド領域
102b フレームグランド領域
103 静電気退避用のグランド領域
200 IC
201 IC
202 コネクタ
203 コネクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7