(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】樹脂積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 3/30 20060101AFI20240902BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B32B3/30
B32B27/00 E
(21)【出願番号】P 2019162988
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】三宅 慶昌
(72)【発明者】
【氏名】大鹿 尚子
(72)【発明者】
【氏名】秋山 尚文
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-064093(JP,A)
【文献】特開2012-051218(JP,A)
【文献】特開2004-106445(JP,A)
【文献】特開2008-087267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 45/00-45/24,
45/46-45/63,
45/70-45/72,
45/74-45/84,
63/00-63/48,
65/00-65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明の樹脂材料で形成された表面材と、
樹脂材料により形成された基材と、
前記表面材と前記基材との間に配置され、インクジェット印刷法によって形成された装飾層と、を備え、
前記表面材および前記基材のいずれか一方には他方に向かって形成された凸部が設けられ、他方には前記凸部に対応した凹部が設けられ、
前記凸部は、第1所定方向において少なくとも一部が互いに対向するように線状に形成された第1凸部と、前記第1所定方向に対して垂直な第2所定方向において少なくとも一部が互いに対向して線状に形成された第2凸部と、を有し、
前記凹部は、前記第1凸部に対応した第1凹部と、前記第2凸部に対応した第2凹部と、を有し、
外周の縁のうち前記第1凸部に沿い且つ最も近い第1縁と前記第1凸部との間の距離は、前記第1縁と前記第1縁に対向する第2縁との間の距離の10%以内であり、
外周の縁のうち第2凸部に沿い且つ最も近い第3縁と前記第2凸部との間の距離は、前記第3縁と前記第3縁に対向する第4縁との間の距離の10%以内であり、
前記凸部の少なくとも一部が、前記凹部に挿入されている、
樹脂積層体。
【請求項2】
前記凸部の高さは40μm以上5mm以下であり、
前記凸部の傾斜面と前記凸部の幅方向が成す傾斜角度が45度以上90度未満である、
請求項
1に記載の樹脂積層体。
【請求項3】
前記傾斜角度は、60度以上である、
請求項
2に記載の樹脂積層体。
【請求項4】
前記凸部は、前記表面材に設けられており、
前記凹部は、前記基材に設けられている、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の樹脂積層体。
【請求項5】
前記凸部は、平面視において格子状に配置されている、
請求項1~
4のいずれか1項に記載の樹脂積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建材にインクで装飾を施す技術が多数開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
例えば、特許文献1には透明性樹脂層及び表面保護層が順に積層されており、且つ、基材シートの裏面に少なくともバッカー層が積層されている化粧シートに関する特許が開示されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には金属基材の片面に凸部を付与させ、前記金属基材凸面に溶融した樹脂組成物を射出させる事で、機械的にアンカー効果を発現させる特許が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-64629号公報
【文献】特開2009-51131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、熱や水により樹脂積層体に寸法変化が生じた場合、積層の向きと垂直方向のせん断力が加わる時に層の間で剥離が生じるおそれがある。
【0007】
熱や水により寸法変化が生じた場合、その寸法変化量は物体の寸法に比例する。線膨張係数や吸水による寸法変化率が、異なる2種類の材料の積層体において、片方が固定端、もう一方が自自端を想定した場合、自由端側の末端において最も寸法変化量の差が大きくなり、最も大きなせん断力が発生することになる。その力は2種材料の接合界面においても発生する。
【0008】
本発明は、層間における剥離を抑制することが可能な樹脂積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の発明にかかる樹脂積層体は、表面材と、基材と、装飾層と、を備える。表面材は、透明の樹脂材料で形成されている。基材は、樹脂材料により形成されている。装飾層は、表面材と基材との間に配置され、インクジェット印刷法によって形成されている。表面材および基材のいずれか一方には他方に向かって形成された凸部が設けられ、他方には凸部に対応した凹部が設けられている。凸部は、外周の近傍であって、外周の縁の各々の少なくとも一部に沿って線状に形成されている。凸部の少なくとも一部が、凹部に挿入されている。
【0010】
このように、凸部および凸部に対応する凹部が設けられていることにより、積層方向に対して垂直な方向にせん断力が生じた場合であっても凸部の凹部への引っ掛かりによってせん断ストレスを抑制することができる。
【0011】
このため、基材と装飾層の間または装飾層と表面材の間における剥離を抑制することができる。
【0012】
第2の発明にかかる樹脂積層体は、表面材と、基材と、装飾層と、を備える。表面材は、透明の樹脂材料で形成されている。基材は、樹脂材料により形成されている。装飾層は、表面材と基材との間に配置され、インクジェット印刷法によって形成されている。表面材および基材のいずれか一方には他方に向かって形成された凸部が設けられ、他方には凸部に対応した凹部が設けられている。凸部は、外周の近傍であって、外周の頂点の各々に対向するように線状に形成されている。凸部の少なくとも一部が、凹部に挿入されている。
【0013】
このように、凸部および凸部に対応する凹部が設けられていることにより、積層方向に対して垂直な方向にせん断力が生じた場合であっても凸部の凹部への引っ掛かりによってせん断ストレスを抑制することができる。
【0014】
このため、基材と装飾層の間または装飾層と表面材の間における剥離を抑制することができる。
【0015】
第3の発明にかかる樹脂積層体は、表面材と、基材と、装飾層と、を備える。表面材は、透明の樹脂材料で形成されている。基材は、樹脂材料により形成されている。装飾層は、表面材と基材との間に配置され、インクジェット印刷法によって形成されている。表面材および基材のいずれか一方には他方に向かって形成された凸部が設けられ、他方には凸部に対応した凹部が設けられている。凸部は、外周の近傍であって、第1所定方向において少なくとも一部が互いに対向するように線状に形成され、第1所定方向に対して垂直な第2所定方向において少なくとも一部が互いに対向して線状に形成されている。凸部の少なくとも一部が、凹部に挿入されている。
【0016】
このように、凸部および凸部に対応する凹部が設けられていることにより、積層方向に対して垂直な方向にせん断力が生じた場合であっても凸部の凹部への引っ掛かりによってせん断ストレスを抑制することができる。
【0017】
このため、基材と装飾層の間または装飾層と表面材の間における剥離を抑制することができる。
【0018】
第4の発明にかかる樹脂積層体は、第1~3のいずれかの発明にかかる樹脂積層体であって、凸部の高さは40μm以上5mm以下であり、凸部の傾斜面と凸部の幅方向が成す傾斜角度が45度以上である。
【0019】
このように、傾斜角度および高さを設定することにより、せん断ストレスを抑制することができる。
【0020】
第5の発明にかかる樹脂積層体は、第4の発明にかかる樹脂積層体であって、傾斜角度は、60度以上である。
【0021】
このように、傾斜角度を大きくすることにより、せん断ストレスを抑制することができる。
【0022】
第6の発明にかかる樹脂積層体は、第1~5のいずれかの発明にかかる樹脂積層体であって、凸部は、表面材に設けられている。凹部は、基材に設けられている。
【0023】
凹部を基材に設けて凸部を表面材に設けることによって、表面材に所定の厚みを確保することができ、強度を確保することができる。
【0024】
第7の発明にかかる樹脂積層体は、第1~6のいずれかの発明にかかる樹脂積層体は、凸部は、平面視において格子状に配置されている。
【0025】
このように、格子状に凸部を形成することによって、せん断力を分散させることができ、層間の剥離を抑制することができる。
【0026】
第8の発明にかかる樹脂積層体は、第1~7のいずれかの発明にかかる樹脂積層体は、凸部の間で最も長い距離は、30mm以下である。
【0027】
このように凸部の間の距離を30mm以下に設定することにより、平面視に置いて所定面積の単位でせん断力を抑制することができ、層間の剥離を抑制することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、層間の剥離を抑制することが可能な樹脂積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明にかかる実施の形態の樹脂積層体の斜視図。
【
図3】
図1の樹脂積層体における表面材を第2面側から見た斜視図。
【
図4】
図1の化粧パネルにおける表面材を第2面側から見た平面図。
【
図6】本発明にかかる実施の形態の樹脂積層体の製造方法を示すフロー図。
【
図7】(a)(b)
図6の樹脂積層体の製造方法を説明するための断面図。
【
図8】
図6の樹脂積層体の製造方法を説明するための断面図。
【
図9】
図6の樹脂積層体の製造方法を説明するための断面図。
【
図10】
図6の樹脂積層体の製造方法を説明するための断面図。
【
図11】本発明にかかる実施の形態の変形例における樹脂積層体を示す断面図。
【
図12】(a)、(b)本発明にかかる実施の形態の変形例における樹脂積層体を示す断面図。
【
図13】(a)本発明にかかる実施の形態の変形例における樹脂積層体を示す平面図、(b)
図13(a)の樹脂積層体の側面図。
【
図14A】本発明にかかる実施の形態の変形例における樹脂積層体を示す平面図。
【
図14B】本発明にかかる実施の形態の変形例における樹脂積層体を示す平面図。
【
図14C】本発明にかかる実施の形態の変形例における樹脂積層体を示す平面図。
【
図14D】本発明にかかる実施の形態の変形例における樹脂積層体を示す平面図。
【
図14E】本発明にかかる実施の形態の変形例における樹脂積層体を示す平面図。
【
図15A】本発明にかかる実施の形態の変形例における樹脂積層体を示す平面図。
【
図15B】本発明にかかる実施の形態の変形例における樹脂積層体を示す平面図。
【
図16】本発明にかかる実施の形態の変形例における樹脂積層体を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の樹脂積層体について、図面に基づいて詳細に説明する。
<構成>
(樹脂積層体の概要)
図1は、本実施の形態の樹脂積層体100の斜視図である。
図2は、本実施の形態の樹脂積層体100の部分断面図である。
【0031】
また、以下の説明において、上下方向が
図2中における上下方向と一致するが、これに限定されるものではなく、樹脂積層体100の配置される位置によって方向は変わるものとする。
【0032】
本実施の形態の樹脂積層体100は、例えば、床材、パネル、タイル、化粧または加飾タイル、化粧または加飾パネル等に用いられる。
【0033】
本実施の形態の樹脂積層体100は、表面材1と、装飾層2と、基材3と、を備える。表面材1は、透明の樹脂材料で形成されている。基材3は、樹脂材料によって形成されている。装飾層2は、表面材1と基材3の間に配置されている。
【0034】
表面材1は、第1面1aと、第1面1aの反対側の第2面1bとを有する。装飾層2は、表面材1の第2面1b上に設けられている。装飾層2は、第2面1bと接触する第1面2aと、第1面2aの反対側の第2面2bと、を有する。基材3は、第2面2b上に設けられている。基材3は、装飾層2の第2面2bと接触する第1面3aと、第1面3aの反対側の第2面3bとを有する。
【0035】
(表面材)
図3は、表面材1を裏面から見た斜視図である。
図4は、表面材1の第2面1b側を示す平面図である。
図5は、
図2の部分拡大図である。
図5では、説明のためにハッチングを省略している。
【0036】
表面材1は、透明の樹脂材料で形成されていれば特に限定されるものではなく、透明度の高い樹脂材料で形成されるほうがより好ましい。
【0037】
表面材1の材料としては、例えば、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ポリメタクリル酸メチル樹脂等のアクリル系樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、またはポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレンなどから選ばれる少なくとも一つを含む材料より形成することができる。
【0038】
また、表面材1は、射出成形、プレス成形または真空形成などによって作成することができる。
【0039】
表面材1の厚みW1は、
図2に示すように、0.1mm以上1mm以下に設定されているほうが好ましい。
【0040】
表面材1の第2面1bには、凸部10が形成されている。この凸部10は、樹脂積層体100が膨張または収縮した際に、基材3と表面材1の剥離を抑制するために設けられている。基材3と表面材1のいずれか一方が他方に比べて膨張または収縮した場合でも、この凸部10の部分が楔となって双方のズレが抑制される。
【0041】
図3および
図4に示すように凸部10は、格子状に形成されている。凸部10は、表面材1から基材3の方向に向かって突出している。
【0042】
表面材1は、
図4に示すように平面視において正方形状であり、その外周1αは、対向する一対の縁1c、1dと、対向する一対の縁1e、1fを有する。縁1c、1dに平行な方向を第1所定方向B1とし、縁1e、1fに平行な方向を第2所定方向B2とする。
【0043】
凸部10は、第1所定方向B1と平行に線状に形成された複数の第1凸部11と、第2所定方向B2と平行に線状に形成された複数の第2凸部12と、を備える。
【0044】
第1凸部11と第2凸部12は、形成方向に対して垂直な断面形状は同じ形状であり、三角形状である。
【0045】
図5に示すように、凸部10は、側面10a、10b(傾斜面の一例)を有する。側面10a、10bは、凸部10の幅方向Wと形成される傾斜角θが45度以上であり、好ましくは、60度以上に設定されている。
図5では、側面10aの傾斜角度が示されている。なお、幅方向Wは、
図5の拡大図では、一方のみの矢印で示しているが、反対方向も含む。
【0046】
また、凸部10の高さHは、40μm以上5mm以下に設定されている。ここで高さHは、第2面1bの凸部10以外の平面部分1gから第1凸部11の頂点10pまでの積層方向Fにおける距離である。
【0047】
また、
図4に示すように、第1凸部11のうち縁1cに最も近い第1凸部11(11aで示す)から縁1cまでの距離d1は、縁1e、1fの長さE1の10%以内に設定されている。第1凸部11のうち縁1dに最も近い第1凸部11(11bで示す)から縁1dまでの距離d2は、縁1e、1fの長さE1の10%以内に設定されている。
【0048】
また、第2凸部12のうち縁1eに最も近い第2凸部12(12aで示す)から縁1eまでの距離d3は、縁1c、1dの長さE2の10%以内に設定されている。第2凸部12のうち縁1fに最も近い第2凸部12(12bで示す)から縁1fまでの距離d4は、縁1c、1dの長さE2の10%以内に設定されている。
【0049】
この10%以内に第1凸部11a、11bおよび第2凸部12a、12bが形成されることが、凸部が縁近傍に形成されていることの一例に対応する。
【0050】
また、表面材1における凸部10(第1凸部11および第2凸部12を含む)間の最大距離1hは、30mm以下である。本実施の形態では、第1凸部11と第2凸部12に囲まれた区画Rの対角線の距離となる。この距離1hは、自由移動距離ともいえる。
【0051】
なお、線状の凸部10の数や区画Rの数は、特に限定されるものではないが、せん断方向の最大強度により設計することができる。例えば、長さ150mm、幅10mm、厚み5mmで縦弾性率が2.25GPaの物体を想定した場合、3mm延びた場合の長さ方向にかかる力は、フックの法則を利用して計算すると、1600Nとなる。最大界面強度を500Nとすると、多角形は4区画必要となる。なお、区画の数を設計する場合は安全率を考慮し、区画数を多く設定してもよい。
【0052】
(装飾層)
装飾層2は、種々の模様、色等により形成され、樹脂積層体100を装飾するものである。装飾層2は、
図2および
図5に示すように、表面材1の第2面1bに形成される。装飾層2による装飾は、透明の表面材1を介して外部から視認することができる。
【0053】
装飾層2は、インクジェット印刷機によって表面材1の第2面1bに非接触で印刷することができる。装飾層2は、インクジェット印刷機で吐出可能なインクによって形成される。この場合、表面材1の第2面1bに直接印刷してもよいし、接着性を向上するために表面材1の第2面1bにプライマー処理や放電処理を行った上で印刷してもよい。また、これらの処理は、印刷後に、装飾層2に対して行われてもよい。
【0054】
インクジェット印刷機によって吐出されるインクは、公知の技術によるインクを用いられる。例えば、モノマーを主要成分とし、オリゴマー、色材、分散材、光重合開始剤、界面活性剤などのその他添加剤のどれか一つ以上を含むUVもしくはEB硬化インク(引用:日本画像学会誌 第49巻 第5号 UVインクジェットの硬化特性および 高分子 34巻 11月号(1985年)電子線硬化樹脂 )。
【0055】
または、公知の着色剤(染料又は顔料)を結着材樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)して得られる例えば、浸透、蒸発、乾燥、酸重合乾燥、熱硬化インクを用いても良い。これらを組み合わせて使用してもよい。
【0056】
装飾層2は、インクジェット印刷機によって表面材1の第2面1bに印刷によって形成される。
【0057】
なお、インクは、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの4色の場合、一色の厚みが約10μmとなっている。そのため、装飾層2の厚みW2(
図2参照)は、10μm以上40μm以下に設定されているほうが好ましい。
【0058】
(基材)
基材3は、
図2に示すように、表面材1を支持するものである。基材3は、
図2に示すように、装飾層2の表面材1側の第1面2aとは反対側の第2面2b上に配置されている。
【0059】
基材3は樹脂材料で形成されており、この樹脂材料は特に限定されるものではないが、例えば、樹脂積層体100が受ける衝撃を吸収するために弾性変形しやすい材料が好ましい。
【0060】
このような材料としては、例えば、PVC等の塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂などから選ばれる少なくとも1つの樹脂材料より形成することができる。また、上記装飾層2のインクとの接着性の観点からは、極性を有する樹脂材料で形成されるほうが好ましい。
【0061】
なお、基材3は、後述するようにインサート成形によって形成される。
基材3の第1面3aには、表面材1の凸部10に対応する凹部30が形成されている。凹部30は、
図3に示す格子状の凸部10に対応するように格子状に形成されている。凸部10の少なくとも一部は、凹部30に挿入されている。
図5に示すように、凸部10の頂点10pは、積層方向Fにおいて第1面3aのうち凹部30以外の平面3cの位置(点線Kで示す)よりも基材3側に位置する。
【0062】
また、凹部30は、インサート成形により凸部10に対応した形状に形成されるため、凹部30の幅方向W(平面3cの位置と兼ねて示す)と凹部30の内側面30a、30bの形成する傾斜角θ´は、45度以上であり、好ましくは60度以上に設定される。
【0063】
上述のように、樹脂積層体100に凸部10および凹部30を設けることにより、樹脂積層体100が熱膨張または収縮した際に、力が発生する方向に凸部10が凹部30に引っ掛かりせん断力を分散させることができるため、剥離を抑制することができる。
【0064】
なお、基材3の厚みW3は1mm以上5mm以下が好ましく、2mm以上5mm以下が更に好ましい。
【0065】
また、本実施の形態では、平面視において基材3の外形は、例えば、表面材1の外形と一致している。このため、表面材1の外周1αは、基材1の外周と一致する。
【0066】
<樹脂積層体の製造方法>
次に、本実施の形態の樹脂積層体100の製造方法について説明する。
【0067】
図6は、本実施の形態の樹脂積層体100の製造方法を示すフロー図である。
図7(a)、
図7(b)、
図8、
図9、
図10は、樹脂積層体100の製造方法を説明するための断面図である。
【0068】
はじめにステップS10において、
図3~
図5に示すような表面材1が、射出成形、プレス成形または真空成形などによって作成される。
【0069】
次に、ステップS20において、
図7(a)に示すように、表面材1の第2面1bにインクジェット印刷機120からインク130が吐出され、インクが第2面1bに塗布されて、
図7(b)に示すように、装飾層2が形成される。
【0070】
次に、ステップS30において、装飾層2上に基材3がインサート成形によって形成される。
【0071】
具体的には、
図8に示すように、表面材1および装飾層2が金型220内に配置される。金型220は、第1金型201と第2金型202とを有している。
【0072】
第1金型201には、樹脂材料を金型内に射出するためのゲート203が形成されている。第2金型202には、表面材1および装飾層2が配置される。本実施の形態では、ゲート203は2つ形成されている。
【0073】
図9に示すように、表面材1および装飾層2が第2金型202に配置されてから、第1金型201と第2金型202が閉じられる。その後、樹脂材料がゲート203から金型220内に射出され(矢印C参照)、
図10に示すように、基材3が形成される。そして、作成された樹脂積層体100が金型220内から取り出される。
【0074】
<他の実施の形態>
以上、本発明による樹脂積層体、及び樹脂積層体の製造方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0075】
(A)
上記実施の形態の樹脂積層体100では、表面材1に凸部10が設けられており、基材3に凹部30が形成されているが、逆であってもよい。例えば、
図11に示す樹脂積層体200では、基材3の第1面3aに表面材1に向かって形成された凸部230が形成されており、表面材1に凸部230に対応した凹部210が形成されている。凸部230の形状については、上述した凸部10と同様の形状である。
【0076】
(B)
上記実施の形態の樹脂積層体100では、凸部10は断面形状が三角形状であるが、これに限らず半円形状であってもよい。また、凹部30も断面形状が三角形に限らず、半円形状であってもよい。要するに、凸部の少なくとも一部が、凹部に挿入されていればよい。
【0077】
(C)
上記実施の形態の樹脂積層体100では、凸部10は形成方向に対して垂直な断面が三角形状であったが、これに限らなくてもよく、先端が尖っていなくても良い。例えば、
図12(a)に示す樹脂積層体300のように、先端310cが平らに形成された凸部310が設けられていてもよい。凸部310は、形成方向に対して垂直な断面が台形状である。基材3には、凸部310に対応する断面が台形状の凹部330が形成されている。なお、傾斜角は、凸部310の側面310a、310bと幅方向Wの成す角度である。
【0078】
図12(b)に示す樹脂積層体400のように、先端が湾曲した凸部410が設けられていてもよい、凸部410は、側面410a、410bと、先端の湾曲面410cを有する。凹部430は、凸部410に対応して形成されている。なお、傾斜角は、凸部310の側面410a、410bと幅方向Wの成す角度である。
【0079】
(D)
上記実施の形態では、格子状に線状の凸部10の区画Rの構成に限らなくてもよく、以下のような構成であってもよい。
【0080】
図13(a)は、樹脂積層体500の平面における凸部510の位置を示す模式図である。
図13(a)では、樹脂積層体500の表面において凸部510を線で示している。以下の図でも同様である。
【0081】
図13(b)は、樹脂積層体500の側面模式図である。
図13(a)の樹脂積層体500の凸部510は、表面材1の縁1c、1d、1e、1fの各々の近傍において、縁1c、1d、1e、1fに沿って形成された凸部510c、510d、510e、510fと、凸部510c、510d、510e、510fで囲まれた部分を4つに区切るように形成された凸部510c、510dと平行な凸部510g、凸部510e、510fと平行な凸部510hを有する。
【0082】
凸部510c、510d、510e、510fは平面視において四角形状であり、各々の端が繋がっている。また、凸部510c、510d、510e、510fと縁1c、1d、1e、1fの間には凸部が形成されていない。
【0083】
例えば、樹脂積層体500が縁1cと縁1dの対向方向に延びた場合、
図13(b)に示す凸部510c(位置P1で示す)、凸部510g(位置P2で示す)、および凸部10d(位置P3で示す)の3箇所の凸部510でせん断力を分散させることができる。なお、縁1cと凸部510cの間の距離は、縁1e、1fの長さの10%以内である。縁1dと凸部510dの間の距離は、縁1e、1fの長さの10%以内である。縁1eと凸部510eの間の距離は、縁1c、1dの長さの10%以内である。縁1fと凸部510fの間の距離は、縁1c、1dの長さの10%以内である。
【0084】
また、
図14Aの平面図に示す樹脂積層体600のように、凸部510gと凸部510fが複数設けられ、凸部510c、510d、510e、510fで囲まれた部分が16区画Rに区切るように形成されてもよい。
【0085】
また、
図14Bの平面図に示す樹脂積層体700のように、凸部510c、510d、510e、510fのみが形成されていてもよい。
【0086】
また、
図14Cの平面図に示す樹脂積層体800のように、点線または破線状に形成された凸部510c´、510d´、510e´、510f´が設けられていてもよい。なお、点線または破線の場合、本発明の線状の凸部の一例とは、点線または破線の一つ分(510ca、510da、510ea、510faで示す)に対応する。
【0087】
(E)
上記実施の形態および変形例で示した樹脂積層体の外周1αは平面視において正方形状であるが、これに限らなくても良く、例えば長方形状でもよく、さらに
図14Dに示した三角形状でもよい。
【0088】
図14Dに示す樹脂積層体900は、表面材1、装飾層2および基材3の平面視における外形が三角形状である。
図14Dの表面材1は、縁1i、1j、1kを有しており、縁1iに沿って凸部910iが形成され、縁1jに沿って凸部910jが形成され、縁1kに沿って凸部910kが形成されている。
【0089】
凸部910i、910j、910kは平面視において三角形状であり、各々の端が繋がっている。また、凸部910i、910j、910kと縁1i、1j、1kの間には凸部が形成されていない。
【0090】
また、縁1jと縁1kの間の頂点を1xとし、縁1kと縁1iの間の頂点を1yとし、縁1iと縁1jの間の頂点を1zとすると、凸部910iは、縁1iから、縁1iに対向する頂点1xから縁1iに下ろした垂線の10%以内の長さに配置されている。凸部910jは、縁1jから、縁1jに対向する頂点1yから縁1jに下ろした垂線の10%以内の長さに配置されている。凸部910kは、縁1kから、縁1kに対向する頂点1zから縁1kに下ろした垂線の10%以内の長さに配置されている。
【0091】
図14Eに示す樹脂積層体1000は、表面材1、装飾層2および基材3の平面視における外周1αの外周が八角形状である。
図14Eの表面材1は、縁1l、1m、1n、1o、1p、1q、1r、1sと、線状の凸部1010m、1010o、1010q、1010sと、を有する。凸部1010mは、縁1mの近傍であって縁1mに沿って形成されている。凸部1010oは、縁1oの近傍であって縁1oに沿って形成されている。凸部1010qは、縁1qの近傍であって縁1qに沿って形成されている。凸部1010sは、縁1sの近傍であって縁1sに沿って形成されている。
【0092】
第1所定方向B1において凸部1010mと凸部1010qは対向するように形成されている。第1所定方向B1に対して垂直に設けられている第2所定方向B2において凸部1010oと凸部1010qは対向するように形成されている。なお、凸部1010mと凸部1010qは少なくとも一部が対向するように設けられていればよく、凸部1010oと凸部1010qも少なくとも一部が対向するようには対向するように設けられていればよい。
【0093】
(F)
上記実施の形態および変形例では、凸部は縁に沿って形成されているが、これに限らず例えば、頂点の近傍に設けられていてもよい。
図15Aに示す樹脂積層体1100は、樹脂積層体100と異なり、凸部が表面材1の頂点1t、1u、1v、1wの各々の近傍に対向するように形成されている。頂点1tの近傍に凸部1110tが頂点1tに対向するように線状に形成されている。頂点1uの近傍に凸部1110uが頂点1uに対向するように線状に形成されている。頂点1vの近傍に凸部1110vが頂点1vに対向するように線状に形成されている。頂点1wの近傍に凸部1110wが頂点1wに対向するように線状に形成されている。
【0094】
また、第1所定方向B3において凸部1110tと凸部1110vは対向するように互いに平行に形成されている。第1所定方向B3に対して垂直に設けられている第2所定方向B4において凸部1110uと凸部1110wは対向するように互いに平行に形成されている。なお、凸部1110tと凸部1110vは少なくとも一部が対向するように設けられていてもよく、凸部1110uと凸部1010wも少なくとも一部が対向するようには対向するように設けられていてもよい。さらに、凸部1110uと凸部1110wは互いに平行に形成されていなくてもよく、凸部1110tと凸部1110vは互いに平行に形成されていなくてもよい。
【0095】
また、
図15Bに示す外形が三角形の樹脂積層体1200のように、表面材1の頂点1x、1y、1zの各々の対向するように線状に凸部が設けられていてもよい。頂点1xの近傍に凸部1210xが頂点1xに対向するように線状に形成されている。頂点1yの近傍に凸部1210yが頂点1yに対向するように線状に形成されている。頂点1zの近傍に凸部1210zが頂点1zに対向するように線状に形成されている。
【0096】
(G)
上記実施の形態では、樹脂積層体100は板状であったが、
図16の樹脂積層体1300に示すように、隆起していてもよい。
図16は、樹脂積層体1300の斜視図である。
図17は、樹脂積層体1300の断面図である。樹脂積層体1300は、表面材1301と、装飾層2と、基材1303と、を備える。
【0097】
樹脂積層体1300の表面材1301は、本体部1311と、側壁部1312と、を有している。本体部1311は、板状である。側壁部1312は、本体部1311の周縁から裾広がりに傾斜している。本体部1311と側壁部1312は一体的に形成されている。表面材1301の第2面1301b(反対側の面が第1面1301aとして示されている)には、本体部1311の第2面1311bと側壁部1312の内壁面1312bで囲まれる凹部1301cが形成されている。本体部1311の第2面1311bに複数の凸部1310が形成されている。
【0098】
図17に示す例では、表面材1301の第2面1301bおよび側壁部1312の端面1312eに装飾層2が形成されている。装飾層2に接触するように基材3がインサート成形によって形成されている。
【0099】
基材1303の装飾層2と接触する面1303aには、凸部1310に対応する凹部1330が形成されている。
【0100】
また、
図17に示す樹脂積層体1300では、表面材1301の両端間の距離に対して、表面材1301の端近傍に設けられた凸部1310の中心からその端までの距離が10%以内に設定されている。
【0101】
(H)
上記実施の形態では、装飾層2に基材3が直接接触しているが、装飾層2と基材3の間の剥離を抑制するために、装飾層2と基材3の間に接着層が設けられていてもよい。
【0102】
(I)
上記実施の形態では、2つのゲート203が形成されているが、2つに限られるものではなく、更に場所についても
図9に示すような場所に限られるものではない。
【0103】
(J)
また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の樹脂積層体は、層間の剥離を抑制することが可能な効果を有し、化粧タイル、化粧パネル、加飾タイル、および加飾パネルなどとして有用である。
【符号の説明】
【0105】
1 :表面材
1c :縁
1d :縁
1e :縁
1f :縁
1α :外周
2 :装飾層
3 :基材
10 :凸部
10a :側面
10b :側面
30 :凹部
100 :樹脂積層体