(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20240902BHJP
G05D 1/43 20240101ALN20240902BHJP
【FI】
A01B69/00 303J
A01B69/00 303Z
G05D1/43
(21)【出願番号】P 2019228668
(22)【出願日】2019-12-18
【審査請求日】2021-12-22
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】新谷 晃市
(72)【発明者】
【氏名】吉村 史也
(72)【発明者】
【氏名】西久保 拓也
(72)【発明者】
【氏名】森下 孝文
(72)【発明者】
【氏名】山口 幸太郎
【合議体】
【審判長】居島 一仁
【審判官】蔵野 いづみ
【審判官】澤田 真治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-113937(JP,A)
【文献】特開2019-37168(JP,A)
【文献】特開2019-114138(JP,A)
【文献】特開2018-164423(JP,A)
【文献】特開平8-19(JP,A)
【文献】特開2019-175048(JP,A)
【文献】特開2017-211734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00-69/08
G05D 1/00-1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に設けられ且つ作業装置を連結可能な連結装置と、
前記車体を自動走行させる制御装置と、
前記車体の後方の障害物を検出可能な後方障害物検出装置と、
前記連結装置を介して前記車体に連結された前記作業装置により行う作業の種類を選択するための設定画面において、選択された前記作業の種類が所定作業であるか否かに応じて、前記後方障害物検出装置において前記障害物を検出するための後方設定情報
を変更する設定変更部と、
を備えている作業車両。
【請求項2】
前記設定変更部は、
前記後方設定情報に含まれる前記後方障害物検出装置の検出範囲の大きさ及び前記障害物として判定する物体の大きさ
の閾値を変更可能であり、
前記作業装置により行う作業が前記所定作業以外の作業である場合、
前記閾値を第1デフォルト値に設定し、
前記作業装置により行う作業が前記所定作業である場合、
前記閾値を前記第1デフォルト値よりも小さくする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記後方障害物検出装置は、
前記検出範囲内に位置する前記物体の検出時間を演算する第1時間演算部と、
前記検出時間が第1閾値以上である場合に前記物体を前記障害物として判定する第1障害物判定部と、
を有し、
前記設定変更部は、
前記作業装置により行う作業が前記所定作業以外の作業である場合、前記後方設定情報に含まれる前記第1閾値を第2デフォルト値に設定し、
前記作業装置により行う作業が前記所定作業である場合、前記後方設定情報に含まれる前記第1閾値を最大に変更する請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記車体の前方の障害物を検出可能な前方障害物検出装置を備え、
前記設定変更部は、前記前方障害物検出装置において前記障害物を検出するための前方設定情報を変更する請求項1~3のいずれかに記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行経路に沿って作業走行する自動走行作業車として、特許文献1が知られている。
特許文献1に開示の作業車両(トラクタ)は、作業装置を装備した車体と、作業走行を制御する作業走行制御部と、作業走行状態を検出する作業走行状態検出センサ群と、走行の障害となる障害物を検出する1つ以上の障害物センサと、障害物センサからのセンサ信号に基づいて障害物検出領域内に存在する障害物を検出する障害物検出部と、作業走行状態検出センサ群によって検出された作業走行状態に基づいて障害物検出領域を決定する障害物検出領域決定部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の作業車両にあっては、作業走行状態に基づいて障害物検出領域を決定しているものの、前進時の作業状態に応じて、障害物検出領域を決定しているだけであり、作業装置が装着される後方側については考慮されていない。即ち、特許文献1の作業装置に応じて障害物検出領域を変更したり、作業に応じて障害物検出領域を変更していないのが実情である。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みて、車体の後方において障害物を検出する情報を変更することで、効率よく自動走行を行いながら作業性を向上させることができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
本発明の一態様の作業車両は、車体と、前記車体に設けられ且つ作業装置を連結可能な連結装置と、前記車体を自動走行させる制御装置と、前記車体の後方の障害物を検出可能な後方障害物検出装置と、前記連結装置を介して前記車体に連結された前記作業装置により行う作業の種類を選択するための設定画面において、選択された前記作業の種類が所定作業であるか否かに応じて、前記後方障害物検出装置において前記障害物を検出するための後方設定情報を変更する設定変更部と、を備えている。
【0007】
本発明の一態様では、前記設定変更部は、前記後方設定情報に含まれる前記後方障害物検出装置の検出範囲の大きさ及び前記障害物として判定する物体の大きさの閾値を変更可能であり、前記作業装置により行う作業が前記所定作業以外の作業である場合、前記閾値をデフォルト値に設定し、前記作業装置により行う作業が前記所定作業である場合、前記閾値をデフォルト値よりも小さくする。
また、本発明の一態様では、前記後方障害物検出装置は、前記検出範囲内に位置する前記物体の検出時間を演算する第1時間演算部と、前記検出時間が第1閾値以上である場合に前記物体を前記障害物として判定する第1障害物判定部と、を有し、前記設定変更部は、前記作業装置により行う作業が前記所定作業以外の作業である場合、前記後方設定情報に含まれる前記第1閾値をデフォルト値に設定し、前記作業装置により行う作業が前記所定作業である場合、前記第1閾値を最大に変更する。
本発明の一態様では、前記作業車両は、前記車体の前方の障害物を検出可能な前方障害物検出装置を備え、前記設定変更部は、前記前方障害物検出装置において前記障害物を検出するための前方設定情報を変更する。
【0008】
本発明の別の一態様の作業車両は、車体と、前記車体に設けられ且つ作業装置を連結可能な連結装置と、前記車体を自動走行させる制御装置と、前記車体の後方の障害物を検出可能な後方障害物検出装置と、前記車体の前方の障害物を検出可能な前方障害物検出装置と、前記後方障害物検出装置において前記障害物を検出するための後方設定情報及び前記前方障害物検出装置において前記障害物を検出するための前方設定情報を変更可能な設定変更部と、設定画面を表示する表示装置と、を備え、前記表示装置は、前記後方設定情報及び前記前方設定情報のそれぞれの変更要否と、前記後方設定情報及び前記前方設定情報にそれぞれ含まれる複数の設定情報をそれぞれ示す複数の変更項目と、複数の変更条件とを、それぞれ選択可能に前記設定画面に表示し、前記設定変更部は、前記表示装置の操作によって前記後方設定情報及び前記前方設定情報の少なくともいずれかを変更することが選択された場合、前記表示装置の操作によって選択された少なくともいずれかの前記変更項目に対応する前記設定情報を、前記表示装置の操作によって選択されたいずれかの前記変更条件に応じて変更する。
本発明の一態様では、前記表示装置が表示し且つ前記設定変更部が応じる複数の前記変更条件には、前記連結装置を介して前記車体に連結された前記作業装置の種類、当該作業装置により行う作業の種類、及び前記車体の走行速度が含まれている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車体の後方において障害物を検出する情報を変更することで、効率よく自動走行を行いながら作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】前方障害物検出装置及び後方障害物検出装置の検出範囲Q1、Q2の一例を示す図である。
【
図5】前方障害物検出装置が検出した物体M1と、後方障害物検出装置が検出した物体M2の一例を示す図である。
【
図6】第1検出時間T1と、第2検出時間T2との一例を示す図である。
【
図7】設定情報(前方設定情報、後方設定情報)をまとめた図である。
【
図8A】検知長さL11が作業装置の機械幅W10よりも短い場合を示す図である。
【
図8B】検知長さL11が作業装置の機械幅W10よりも長い場合を示す図である。
【
図8C】検出範囲Q2が作業装置の後端よりも短い場合を示す図である。
【
図8D】検出範囲Q2が作業装置の後端よりも長い場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1、
図2は本発明に係る作業車両1の一実施形態を示している。本実施形態では、作業車両1がトラクタ1であるとして説明する。但し、作業車両1は、トラクタに限らず、コンバイン、田植機等の他の作業車両(農業車両)であってもよい。
以下の説明において、トラクタ1の運転席6に着座したオペレータの前側を前方、オペレータの後側を後方、オペレータの左側を左方、オペレータの右側を右方という。また、矢印D方向を車幅方向という。また、車幅方向であって車幅方向の中心から離れる方向を車幅方向外方、車幅方向であって車幅方向の中心に近づく方向を車幅方向内方という。
【0012】
図1、
図2に示すように、トラクタ1は、車体2と、走行装置3と、原動機4と、変速装置5とを備えている。走行装置3は、車体2を走行可能に支持しており、前輪3F及び後輪3Rを有する。前輪3F及び後輪3Rは、本実施形態の場合はタイヤ型であるが、クローラ型であってもよい。
原動機4は、エンジン(ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン)、電動モータ等である。変速装置5は、変速によって走行装置3の推進力を切り換え可能であると共に、走行装置3の前進と後進の切り換えが可能である。
【0013】
車体2には運転席6が搭載されている。運転席6の周囲には、運転席保護体7が設けられている。本実施形態の場合、運転席保護体7は、運転席6の前方、後方、上方及び側方を取り囲むことにより運転席6を保護するキャビンであるが、ロプス等であってもよい。車体2の後部には、連結装置8が設けられている。連結装置8は、作業装置9と車体2とを連結し且つ昇降を行わないスイングドローバ、3点リンク機構等で構成されて昇降を行う昇降装置等である。連結装置には、作業装置(インプルメント等)2が着脱可能である。
【0014】
作業装置を連結装置に連結することによって、車体2によって作業装置を牽引することができる。作業装置は、耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置等である。
車体2は、車体フレーム10を有する。車体フレーム10は、変速装置5側から前方に延設されていて、原動機4の下部を支持している。
図2に示すように、車体フレーム10の上方にはボンネット13が設けられている。ボンネット13は、車体フレーム10に沿って前後方向に延設されている。ボンネット13は、運転席保護体7の車幅方向の中央部の前方に配置されている。ボンネット13は、左側に設けられた左側壁13Lと、右側に設けられた右側壁13Rと、左側壁13Lと右側壁13Rとの上部を連結する上壁部13Uとを有する。左側壁13L、右側壁13R及び上壁部13Uによってエンジンルームが形成され、エンジンルームに原動機4、冷却ファン、ラジエータ、バッテリ等が収容されている。左側壁13Lの左側方と右側壁13Rの右側方には、それぞれ前輪3Fが配置されている。
【0015】
ボンネット13の前側、即ち、車体フレーム10の前側には、ウエイト14が設けられている。ウエイト14は、車体2の前部に設けられたウエイトブラケット15に取り付けられている。ウエイトブラケット15は、車体フレーム10の前部にボルト等の締結具により取り付けられている。ウエイト14の周囲は、ウエイトカバー16により覆われている。
【0016】
図3に示すように、トラクタ1は、操舵装置11を備えている。操舵装置11は、ハンドル(ステアリングホイール)11aと、ハンドル11aの回転に伴って回転する回転軸(操舵軸)11bと、ハンドル11aの操舵を補助する補助機構(パワーステアリング機構)11cと、を有する。補助機構11cは、油圧ポンプ21と、油圧ポンプ21から吐出した作動油が供給される制御弁22と、制御弁22により作動するステアリングシリンダ23とを含む。制御弁22は、制御信号に基づいて作動する電磁弁である。制御弁22は、例えば、スプール等の移動によって切り換え可能な3位置切換弁である。また、制御弁22は、操舵軸11bの操舵によっても切り換え可能である。ステアリングシリンダ23は、前輪3Fの向きを変えるアーム(ナックルアーム)24に接続されている。
【0017】
したがって、ハンドル11aを操作すれば、ハンドル11aに応じて制御弁22の切換位置及び開度が切り換わり、制御弁22の切換位置及び開度に応じてステアリングシリンダ23が左又は右に伸縮することによって、前輪3Fの操舵方向を変更することができる。なお、上述した操舵装置11は一例であり、操舵装置11の構成は上述した構成に限定されない。
【0018】
図1、
図2に示すように、トラクタ1は、位置検出装置20を備えている。位置検出装置20は、キャビン7の天板の前方に装着体18を介して装着されている。但し、位置検出装置20の装着位置は、図示の位置には限定されず、キャビン7の天板上に装着してもよいし、車体2の別の場所に装着してもよい。また、位置検出装置20は、上述した耕耘装置等の作業装置に装着されていてもよい。
【0019】
位置検出装置20は、衛星測位システムによって自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出する装置である。即ち、位置検出装置20は、測位衛星から送信された信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、受信した信号に基づいて位置(緯度、経度)を検出する。位置検出装置20は、測位衛星からの信号を受信可能な基地局(基準局)からの補正等の信号に基づいて補正した位置を、自己の位置(緯度、経度)として検出してもよい。また、位置検出装置20がジャイロセンサや加速度センサ等の慣性計測装置を有し、慣性計測装置によって補正した位置を、自己の位置として検出してもよい。位置検出装置20によって、トラクタ1の車体2の位置(走行位置)を検出することができる。位置検出装置20により検出されるトラクタ1の自己の位置は、車体2の中心位置であってもよいし、前輪3Fの位置(例えば前端位置)や後輪3Rの位置(例えば後端位置)等であってもよい。
【0020】
<障害物検出装置>
図1及び
図2に示すように、トラクタ1は、走行の障害となる障害物を検出する障害物検出装置31を備えている。障害物検出装置31は、前方障害物検出装置31Aと、後方障害物検出装置31Bとを含む。前方障害物検出装置31Aは、車体2の前方の障害物を検出可能な装置である。後方障害物検出装置31Bは、車体2の後方の障害物を検出可能な装置である。前方障害物検出装置31A及び後方障害物検出装置31Bは、検出波として光波を照射することによって障害物を検出するレーザスキャナである。但し、障害物検出装置は、検出波として音波(超音波)を照射することによって障害物を検出するソナー、レーザスキャナ以外のセンサ(測距センサ)であってもよい。
【0021】
前方障害物検出装置31Aは、後方障害物検出装置31Bと前後方向において異なる位置に設けられている。本実施形態の場合、前方障害物検出装置31Aは、後方障害物検出装置31Bよりも前方に設けられている。前方障害物検出装置31Aは、前輪3Fよりも前方に配置されている。前方障害物検出装置31Aは、前輪3Fよりも車幅方向外方に配置されている。前方障害物検出装置31Aは、後輪3Rよりも車幅方向外方に配置されている。
【0022】
前方障害物検出装置31Aは、左側の前輪3Fの左前方及び右側の前輪3Fの右前方にそれぞれ配置されている。左側の前輪3Fの左前方に配置された前方障害物検出装置31Aと、右側の前輪3Fの右前方に配置された前方障害物検出装置31Aとは、トラクタ1の車幅方向の中心線を挟んで対称位置にある。
前方障害物検出装置31Aは、取付構造体50を介して車体フレーム10に取り付けられている。
図1及び
図2に示すように、取付構造体50は、第1構造体51、第2構造体52、第3構造体53、第4構造体54を有する。第1構造体51は、車体フレーム10に取り付けられており、車体フレーム10から前方且つ車幅方向外方(左前方及び右前方)に延出されている。第2構造体52は、第1構造体51の前端(延出端)に取り付けられている。第2構造体52は、機体の幅方向の外方に伸びていて、前方障害物検出装置31Aを支持している。第2構造体52には、後方障害物検出装置31Bを構成するソナーとは別のソナー55が取り付けられている。前方障害物検出装置31Aから照射されるレーザの照射方向は水平方向となる。
【0023】
前方障害物検出装置31A及び第2構造体52の一部は、カバー56により覆われている。カバー56は、ボルト等の取付具によって第2構造体52に取り付けられている。カバー56は、前方障害物検出装置31Aの上方に配置された上カバーと、前方障害物検出装置31Aの下方に配置された下カバーとから構成されている。前方障害物検出装置31Aの周囲において上カバー56Aと下カバー56Bとの間には隙間Gが形成され(
図2参照)、前方障害物検出装置31Aは当該隙間Gを介して検出波(レーザ)の送受信を行うことができる。ソナー55は、上カバー56Aに形成された開口を介して検出波(音波)の送受信を行うことができる。
【0024】
後方障害物検出装置31Bは、キャビン7の後部であって、当該キャビン7の上部にブラケット(図示省略)を介して取付けられている。後方障害物検出装置31Bにおいて、検出方向は、水平方向に対してやや下向きに傾斜、即ち、作業装置9側に向けられている。なお、検出方向とは、後方障害物検出装置31Bがレーザスキャナである場合、レーザを照射する光軸が向けられた方向であり、後方障害物検出装置31Bがソナーである場合、音波を照射する方向であり、後方障害物検出装置31Bがカメラである場合、イメージセンサの光軸(レンズの中心軸)が向く方向である。
【0025】
<前方障害物検出装置、後方障害物検出装置>
前方障害物検出装置31Aは、障害物を検出する前方設定情報が記憶されていて、後方障害物検出装置31Bも障害物を検出する後方設定情報が記憶されている。前方設定情報及び後方設定情報とは、障害物検出装置31(前方障害物検出装置31A、後方障害物検出装置31B)によって障害物を検出するための様々な情報であって、検出範囲、検出範囲で検出した物体が障害物であるか否かを判定する判断条件等である。
まず、検出範囲について説明する。
【0026】
図4は、前方障害物検出装置31A及び後方障害物検出装置31Bの検出範囲Q1、Q2の一例を示している。
前方障害物検出装置31Aの検出範囲Q1は、当該前方障害物検出装置31Aから車体2の後方及び側方(車体2の幅方向外方)へ亘る側方範囲Qa1と、前方障害物検出装置31Aから車体2の前方及び車体2の幅方向内側へ亘る前方範囲Qa2とを含んでいる。側方範囲Qa1は、幅方向の外側に向けての検知長さL1、L2と、前後方向の長さL3によって設定される。前方範囲Qa2は、前方に向けての検知長さL6と、幅方向の検出長さL5によって設定される。
図7に示すように、検出範囲Q1の大きさ(検知長さL1、L2、L3、L5、L6)のデフォルト値(標準検出範囲、標準検知長さ)は、前方障害物検出装置31Aの前方設定情報として記憶されている。
【0027】
後方障害物検出装置31Bの検出範囲Q2は、当該後方障害物検出装置31Bから車体2の後方へ亘る範囲であり、後方に向けての検知長さL10、幅方向に向けての検知長さL11により設定される。
図7に示すように、検出範囲Q2の大きさ(検知長さL10、L11)のデフォルト値(標準検出範囲、標準検知長さ)は、後方障害物検出装置31Bの後方設定情報として記憶されている。なお、前方障害物検出装置31A及び後方障害物検出装置31Bにおいて、検出範囲Q1、Q2の大きさは、自在に設定が可能であり、幅、長さ、角度等を変更することができる。
【0028】
図5は、前方障害物検出装置31Aが検出した物体M1と、後方障害物検出装置31Bが検出した物体M2の一例を示している。
図5に示すように、前方障害物検出装置31Aは、検出範囲Q1に物体M1が位置した場合、当該物体(検出物体)M1を検出する。前方障害物検出装置31Aは、検出物体M1の高さH1が高さ閾値H2以上(H1≧H2)であり、且つ、検出物体M1の物体幅W1が幅閾値W2以上(W1≧W2)である場合に、前方障害物検出装置31Aは、検出物体M1を障害物であると判断する。前方障害物検出装置31Aは、検出物体M1の高さH1が高さ閾値H2未満、或いは、検出物体M1の物体幅W1が幅閾値W2未満である場合、検出物体M1は障害物でないと判断する。
図7に示すように、前方障害物検出装置31Aは、検出物体M1が障害物であるか否かを判断する判断条件として、高さ閾値H2と、幅閾値W2とを記憶している。即ち、前方障害物検出装置31Aは、判断条件である高さ閾値H2及び幅閾値W2を前方設定情報として記憶している。
【0029】
後方障害物検出装置31Bは、検出範囲Q2に物体M2が位置した場合、当該物体(検出物体)M2を検出する。後方障害物検出装置31Bは、検出物体M2の高さH3が高さ閾値H4以上(H3≧H4)であり、且つ、検出物体M2の物体幅W3が幅閾値W4以上(W3≧W4)である場合に、後方障害物検出装置31Bは、検出物体M2を障害物であると判断する。後方障害物検出装置31Bは、検出物体M2の高さH3が高さ閾値H4未満、或いは、検出物体M2の物体幅W3が幅閾値W4未満である場合、検出物体M2は障害物でないと判断する。
図7に示すように、後方障害物検出装置31Bは、検出物体M2が障害物であるか否かを判断する判断条件として、高さ閾値H4と、幅閾値W4とを記憶している。即ち、後方障害物検出装置31Bは、判断条件である高さ閾値H4及び幅閾値W4を後方設定情報として記憶している。
【0030】
上述した実施形態では、検出物体M1、M2の大きさ(高さH1、H3、物体幅W1、W4)によって、障害物であるか否かを判断しているが、検出物体M1、M2が検出範囲Q1、Q2に位置している時間(留まっている時間)で障害物であるか否かを判断してもよい。
前方障害物検出装置31Aは、第2時間演算部33と、第2障害物判定部34とを有している。第2時間演算部33及び第2障害物判定部34は、前方障害物検出装置31Aに設けられた電気回路、電子回路等、格納されたプログラム等により構成されている。
【0031】
第2時間演算部33は、検出物体M1が検出範囲Q1に位置している検出時間(第2検出時間)T2を演算する。第2障害物判定部34は、第2時間演算部33で演算した第2検出時間T2が第2閾値T11以上である場合に検出物体M1を障害物として判定し、第2検出時間T2が第2閾値T11未満である場合に検出物体M1を障害物として判定しない。なお、前方障害物検出装置31Aは、判断条件として、第2閾値T11を記憶している。即ち、前方障害物検出装置31Aは、判断条件である第2閾値T11を前方設定情報として記憶している。
【0032】
なお、第2閾値T11のデフォルト値は、自動運転の開始前にボリューム等の設定部材によって設定可能である。即ち、設定部材の操作量に応じて、第2閾値T11が設定され、操作量が最小である場合には最小値に設定され、操作量が最大である場合に最大値に設定される。また、第2閾値T11の最大値は、T11max=[検知長さL6のデフォルト値-制動距離-猶予距離]÷規定の走行速度により求めてもよい。制動距離及び猶予距離は、シミュレーション、実験等により求めた値であり、規定の走行速度は、農作業に応じて設定された速度である。第2閾値T11の最大値の算出方法は限定されない。
【0033】
後方障害物検出装置31Bは、第1時間演算部35と、第1障害物判定部36とを有している。第1時間演算部35及び第1障害物判定部36は、前方障害物検出装置31Aに設けられた電気回路、電子回路等、格納されたプログラム等により構成されている。
第1時間演算部35は、検出物体M2が検出範囲Q2に位置している検出時間(第1検出時間)T1を演算する。第1障害物判定部36は、第1時間演算部35で演算した第1検出時間T1が第1閾値T10以上である場合に検出物体M2を障害物として判定し、第1検出時間T1が第1閾値T10未満である場合に検出物体M2を障害物として判定しない。なお、後方障害物検出装置31Bは、判断条件として、第1閾値T10を記憶している。即ち、後方障害物検出装置31Bは、判断条件である第1閾値T10を後方設定情報として記憶している。なお、第1閾値T10のデフォルト値は、自動運転の開始前にボリューム等の設定部材によって設定可能である。即ち、設定部材の操作量に応じて、第1閾値T10が設定され、操作量が最小である場合には最小値に設定され、操作量が最大である場合には最大値に設定される。
【0034】
図6は、前方障害物検出装置31Aが検出物体M1を検出してからの第2検出時間T2と、後方障害物検出装置31Bが検出物体M2を検出してからの第1検出時間T1との一例を示している。
図6に示すように、時点P1で検出物体M1が検出範囲Q1に入ったとする。第2時間演算部33は、検出物体M1が検出範囲Q1に入った第2検出時間T2を演算する。第2障害物判定部34は、第2検出時間T2が第2閾値T11以上経過すると、検出物体M1は、障害物であると判断する。
【0035】
また、時点P2で検出物体M2が検出範囲Q2に入ったとする。第1時間演算部35は、検出物体M2が検出範囲Q2に入った第1検出時間T1を演算する。第1障害物判定部36は、第1検出時間T1が第1閾値T10以上経過すると、検出物体M2は、障害物であると判断する。
【0036】
<制御装置>
図3に示すように、トラクタ1は、制御装置25を備えている。制御装置25は、CPUや記憶部(RAM、ROM等)等で構成されていて、記憶部に記憶されたプログラム等に基づいてトラクタ1の様々な制御を実行する。
制御装置25には、トラクタ1の駆動状態等を検出する状態検出装置26が接続されている。状態検出装置26は、例えば、クランクセンサ、カムセンサ、エンジン回転センサ、アクセルセンサ、車速センサ、加速度センサ、操舵角センサ、昇降レバー検出センサ、PTO回転検出センサ等である。また、制御装置25には、変速装置5、前後進切換装置28、PTOクラッチ29、ブレーキ装置30が接続されている。
【0037】
状態検出装置26と、変速装置5、前後進切換装置28、PTOクラッチ29、ブレーキ装置30は、CAN(Controller Area Network)、国際規格ISO11783(ISO-BUS)等の車載ネットワークN1を介して接続されている。車載ネットワークN1には、作業装置9の制御装置9aが接続されている。制御装置9aは、例えば、CPUや記憶部(RAM、ROM等)等を含む電気回路、電子回路等で構成されていて、作業装置9の制御を行う。
【0038】
制御装置25は、トラクタ1における走行系の制御、作業系の制御を行う。制御装置25は、例えば、状態検出装置26が検出した検出状態に基づいてエンジン回転数、車速、操舵装置11の操舵角等を制御する。状態検出装置26は、状態検出装置26が検出した検出状態に基づいて、昇降装置の昇降、PTO回転数等の制御を行う。
制御装置25は、トラクタ1(車体2)の自動走行の制御(自動走行制御)を行うことが可能である。制御装置25は、自動走行モードと手動走行モードとを切り換えることが可能である。自動走行モードである場合、制御装置25は、車体2を予め設定された走行ルートに沿って自動走行させる。制御装置25は、少なくとも車体2の走行位置(位置検出装置20で検出された位置)と、予め設定された走行ルート(走行経路)が一致するように、即ち、車体2と走行ルートとが一致するように、制御弁22の切換位置及び開度を設定する。言い換えれば、自動走行モードである場合、制御装置25は、トラクタ1の走行位置と走行ルートとが一致するように、ステアリングシリンダ23の移動方向及び移動量(前輪3Fの操舵方向及び操舵角)を設定する。
【0039】
詳しくは、自動走行モードである場合、制御装置25は、車体2の走行位置と、走行ルートで示された位置(走行予定位置)とを比較し、走行位置と走行予定位置とが一致している場合は、操舵装置11におけるハンドル11aの操舵角及び操舵方向(前輪3Fの操舵角及び操舵方向)を変更せずに保持する(制御弁22の開度及び切換位置を変更せずに維持する)。制御装置25は、走行位置と走行予定位置とが一致していない場合、当該走行位置と走行予定位置との偏差(ズレ量)が零となるように、操舵装置11におけるハンドル11aの操舵角及び/又は操舵方向を変更する(制御弁22の開度及び/又は切換位置を変更する)。
【0040】
なお、上述した実施形態では、制御装置25は、自動走行制御において、走行位置と走行予定位置との偏差に基づいて操舵装置11の操舵角を変更するものであるが、走行ルートの方位とトラクタ1(車体2)の進行方向(走行方向)の方位(車体方位)とが異なる場合、制御装置25は、車体方位が走行ルートの方位に一致するように操舵角を設定してもよい。また、制御装置25は、自動走行制御において、偏差(位置偏差)に基づいて求めた操舵角と、方位偏差に基づいて求めた操舵角とに基づいて、自動走行制御における最終の操舵角を設定してもよい。また、上記した自動走行制御における操舵角の設定方法とは異なる方法で操舵角を設定してもよい。
【0041】
また、制御装置25は、自動走行制御において、トラクタ1(車体2)の実際の車速が、予め設定された走行ルートに対応する車速に一致するように、走行装置3(即ち、前輪3F及び/又は後輪3R)の回転数を制御してもよい。
また、制御装置25は、障害物検出装置31による障害物の検出結果に基づいて自動走行を制御する。例えば、障害物検出装置31が障害物を検出していない場合は自動走行を継続して行い、障害物検出装置31が障害物を検出した場合に自動走行を停止する。より具体的には、障害物検出装置31が障害物を検出した場合に、制御装置25は、障害物とトラクタ1との距離が予め定められた距離以下である場合に、トラクタ1の走行を停止することで自動走行を停止する。
【0042】
詳しくは、制御装置25は、障害物検出装置31が障害物を検出した場合、変速装置5、前後進切換装置28、PTOクラッチ29、ブレーキ装置30の動作を制御する。具体的には、制御装置25は、変速装置5を減速側に作動させて車速を低下させる。また、制御装置25は、前後進切換装置28を中立状態に切り換えるとともに、ブレーキ装置30を作動させる。これにより、トラクタ1の自動走行が停止される。さらに、制御装置25は、PTOクラッチ29をオフ状態に切り換えて、トラクタ1のPTO軸から作業装置9への動力伝達を遮断する。これにより、作業装置9の駆動が停止される。
【0043】
<後方設定情報の変更>
図3に示すように、制御装置25は、設定変更部27を備えている。設定変更部27は、制御装置25に設けられた電気回路、電子回路、プログラム等で構成されている。後方障害物検出装置31Bの後方設定情報を変更可能である。
設定変更部27は、車体2の走行速度に基づいて検出範囲Q2の大きさを変更する。具体的には、制御装置25の自動走行制御によって自動走行が開始されると、設定変更部27は、車速センサで検出された車体2の車速(走行速度)を参照する。設定変更部27は、走行速度が走行閾値以上超えると、検知長さL10をデフォルト値(標準検知長さ)よりも長くする変更を行う。即ち、設定変更部27は、検知長さL10をデフォルト値(標準検知長さ)よりも長くすることで検出範囲Q2の大きさを標準検出範囲よりも大きくする。
【0044】
一方、設定変更部27は、走行速度が走行閾値未満になると、検知長さL10をデフォルト値(標準検知長さ)よりも短くする変更を行う。即ち、設定変更部27は、検知長さL10をデフォルト値(標準検知長さ)よりも短くすることで検出範囲Q2の大きさを標準検出範囲よりも小さくする。走行閾値は、高速、低速のいずれかであるかを判断する値である。走行閾値は、予め制御装置25に記憶されていてもよいし、ボリューム等によって変更できるようにしてもよいし、限定されない。
【0045】
なお、検知長さL10の変更は、走行速度に応じて長くしたり、短くしてもよい。設定変更部27は、例えば、走行速度に比例して、走行速度が増加するにつれて検知長さL10の長さを次第に長くし走行速度が減少するにつれて、検知長さL10の長さを次第に短くする。また、設定変更部27における検出範囲Q2等の変更は、車体2の後進時の走行速度に応じて変更してもよい。
【0046】
設定変更部27は、車体2に連結された作業装置9に応じて、検知長さL10、L11の大きさを変更する。具体的には、車体2に作業装置9が連結されると、車載ネットワークN1を介して当該作業装置9の制御装置9aから作業装置9の機械幅W10、機械長さL20を取得する。
図8Aに示すように、検知長さL11のデフォルト値(標準検知長さ)が作業装置9の機械幅W10よりも短い場合、
図8Bに示すように、設定変更部27は、検知長さL11を作業装置9の機械幅W10よりも長くする。
【0047】
図8Cに示すように、検知長さL10、L11のデフォルト値(標準検知長さ)によって検出範囲Q2を設定している状況下で、検出範囲Q2の後端Q2aが作業装置9の後端9bよりも前側で、且つ、検出範囲Q2の幅方向の境界Q2bが作業装置9の後端9bの幅方向の端部9cよりも内側である場合、
図8Dに示すように、設定変更部27は、検知長さL10、L11をデフォルト値(標準検知長さ)よりも大きくして、検出範囲Q2の後端Q2aが作業装置9の後端9bよりも後方に位置し、且つ、検出範囲Q2の幅方向の境界Q2bが作業装置9の後端9bの幅方向の端部9cよりも幅方向の外側に位置させる。この実施形態では、作業装置9の前端は前方障害物検出装置31Aによって検出可能である。また、前方障害物検出装置31Aに検出長さL3を方向側へ長くすることによって、検出範囲Ha1と、作業装置9とをオーバラップさせることができる。
【0048】
なお、上述した実施形態では、設定変更部27が車載ネットワークN1を介して作業装置9の機械幅W10を取得する方法について説明をしたが、設定変更部27は、トラクタ1に設けた表示装置60(
図3参照)に、作業装置9の機械幅W10、機械長さL20を入力する入力画面を表示し、入力画面に入力された作業装置9の機械幅W10を取得してもよい。
【0049】
設定変更部27は、検出物体M2を障害物として判断する判断条件(高さ閾値H4、幅閾値W4、第1閾値T10)を変更する。設定変更部27は、例えば、作業が散布作業(施肥作業、薬剤作業)、耕耘作業など、砂埃などが舞い上がり易い作業である場合は、高さ閾値H4及び幅閾値W4をデフォルト値よりも小さくする。また、設定変更部27は、作業が散布作業(施肥作業、薬剤作業)、耕耘作業以外の作業である場合は、高さ閾値H4及び幅閾値W4をデフォルト値に設定する。
【0050】
図9に示すように、設定変更部27は、作業(農作業)を設定する設定画面J1を表示する。設定画面J1には、複数の農作業が表示される。設定画面J1において、施肥作業、薬剤作業、耕耘作業が選択された場合は、高さ閾値H4及び幅閾値W4をデフォルト値よりも小さくし、施肥作業、薬剤作業、耕耘作業以外の農作業が選択された場合は、高さ閾値H4及び幅閾値W4をデフォルト値に設定する。或いは、設定変更部27は、施肥作業、薬剤作業、耕耘作業を行う作業装置9が車体2に連結された場合、高さ閾値H4及び幅閾値W4をデフォルト値よりも小さくし、肥作業、薬剤作業、耕耘作業以外を行う作業装置9が車体2に連結された場合、高さ閾値H4及び幅閾値W4をデフォルト値に設定する。
【0051】
上述した実施形態では、農作業及び作業装置9のいずれかに基づいて高さ閾値H4及び幅閾値W4を変更していたが、検出物体M2を障害物と判定するための、経過時間(第1閾値T10)を変更してもよい。この場合、設定変更部27は、設定画面J1において、施肥作業、薬剤作業、耕耘作業が選択された場合は、第1閾値T10を最大にし、施肥作業、薬剤作業、耕耘作業以外の農作業が選択された場合は、第1閾値T10をデフォルト値に設定する。或いは、設定変更部27は、第1閾値T10を最大にして、施肥作業、薬剤作業、耕耘作業以外を行う作業装置9が車体2に連結された場合、第1閾値T10をデフォルト値に設定する。
【0052】
<前方設定情報の変更>
さて、設定変更部27は、前方障害物検出装置31Aの前方設定情報も変更可能である。
設定変更部27は、車体2の走行速度に基づいて検出範囲Q1の大きさを変更する。具体的には、設定変更部27は、車速センサで検出された車体2の車速(走行速度)が走行閾値以上超えると、検知長さL6をデフォルト値(標準検知長さ)よりも長くする変更を行う。即ち、設定変更部27は、検知長さL6をデフォルト値(標準検知長さ)よりも長くすることで検出範囲Q1の大きさを標準検出範囲よりも大きくする。一方、設定変更部27は、走行速度が走行閾値未満になると、検知長さL6をデフォルト値(標準検知長さ)よりも短くする変更を行う。即ち、設定変更部27は、検知長さL6をデフォルト値(標準検知長さ)よりも短くすることで検出範囲Q1の大きさを標準検出範囲よりも小さくする。
【0053】
なお、検知長さL6の変更は、走行速度に応じて長くしたり、短くしてもよい。設定変更部27は、例えば、走行速度に比例して、走行速度が増加するにつれて検知長さL6の長さを次第に長くし走行速度が減少するにつれて、検知長さL6の長さを次第に短くする。
設定変更部27は、車体2に連結された作業装置9に応じて、検知長さL5の大きさを変更する。具体的には、検知長さL5のデフォルト値(標準検知長さ)が作業装置9の機械幅W10よりも短い場合、設定変更部27は、検知長さL5を作業装置9の機械幅W10よりも長くする。
【0054】
設定変更部27は、検出物体M1を障害物として判断する判断条件(高さ閾値H2、幅閾値W2、第2閾値T11)を変更する。設定変更部27は、後方障害物検出装置31Bと同様に、作業が散布作業(施肥作業、薬剤作業)、耕耘作業などの場合は、高さ閾値H2及び幅閾値W2をデフォルト値よりも小さくする。また、設定変更部27は、作業が散布作業(施肥作業、薬剤作業)、耕耘作業以外の作業である場合は、高さ閾値H2及び幅閾値W2をデフォルト値に設定する。なお、検出物体M1に対応する高さ閾値H2及び幅閾値W2のデフォルト値は、検出物体M2に対応する高さ閾値H4及び幅閾値W4よりも小さく設定されている。
【0055】
上述した実施形態では、農作業及び作業装置9のいずれかに基づいて、高さ閾値H2及び幅閾値W2を変更していたが、検出物体M1を障害物と判定するための、経過時間(第2閾値T11)を変更してもよい。
設定変更部27は、施肥作業、薬剤作業、耕耘作業が選択された場合は、第2閾値T11をデフォルト値よりも小さくし、施肥作業、薬剤作業、耕耘作業以外の農作業が選択された場合は、第2閾値T11をデフォルト値に設定する。或いは、設定変更部27は、施肥作業、薬剤作業、耕耘作業を行う作業装置9が車体2に連結された場合、第2閾値T11をデフォルト値よりも小さくし、肥作業、薬剤作業、耕耘作業以外を行う作業装置9が車体2に連結された場合、第2閾値T11をデフォルト値に設定する。また、設定変更部27は、施肥作業、薬剤作業、耕耘作業が選択された場合は、検知長さL6の長さをデフォルト値よりも小さくしてもよい。
【0056】
<変形例>
上述したように、設定変更部27における前方設定情報及び後方設定情報のそれぞれの変更は、走行速度、作業(農作業)、作業装置9の種類に応じて連動して行われてもよいし、それぞれ独立して行ってもよい。
図10に示すように、表示装置60に設定画面J2を表示して、設定画面J2において、当該表示装置60を操作することにより、前方設定情報及び後方設定情報のそれぞれの変更に関する設定を行えるとしてもよい。
【0057】
例えば、設定画面J2の第1項目K1において、前方設定情報及び後方設定情報のそれぞれを自動走行時においてデフォルト値から変更可/変更不可の選択を行えるようにしてもよい。第1項目K1の前方設定情報及び後方設定情報のそれぞれにおいて、変更可である場合には、上述したように、走行速度、作業(農作業)、作業装置9の種類等に応じて、設定情報の変更が設定変更部27によって行うことができる。一方、第2項目の前方設定情報及び後方設定情報のそれぞれにおいて、変更不可である場合には、設定変更部27によって変更は行われず、自動走行時には、デフォルト値に固定される。
【0058】
設定画面J2の第2項目K2において、設定情報が変更可である場合の変更する項目(検出範囲Q1、Q2、高さ閾値H2、H4、幅閾値W2、W4、第1閾値T10、第2閾値T11)を選択できるようにしてもよい。この場合、第2項目K2において選択された項目に対応する設定情報(前方設定情報、後方設定情報)が変更される。
設定画面J2の第3項目K3において、変更する変更条件[走行速度、作業(農作業)、作業装置9の種類]のそれぞれを選択できるようにしてもよい。この場合、第3項目K3において選択された項目に対応する変更条件[走行速度、作業(農作業)、作業装置9の種類]が、自動走行時に満たされた場合に、設定情報(前方設定情報、後方設定情報)が変更される。
【0059】
このように、前方設定情報及び後方設定情報の変更を行うか否か、変更する場合であっても複数の変更項目のうち所定の変更項目を選択でき、変更条件までも任意に選択できるため、農作業において様々な状況に応じた設定を実現することができる。例えば、農作業自体だけでなく、農作業を行う圃場の状態(土壌が柔らかい硬い、傾斜しているなど)、トラクタ1の大きさ、作業装置9の大きさ、天候等に応じても変更が可能である。
【0060】
作業車両1は、車体2と、車体2に設けられ且つ作業装置9を連結可能な連結装置8と、車体2を自動走行させる制御装置25と、車体2の後方の障害物を検出可能な後方障害物検出装置31Bと、後方障害物検出装置31Bにおいて障害物を検出する後方設定情報を変更可能な設定変更部27とを備えている。これによれば、設定変更部27によって、車体2の後方に設けた後方障害物検出装置31Bの後方設定情報を変更することができるため、作業装置9の作業、車体2の走行(前進、後進)に応じて障害物の検出の精度などをすることができ、様々な状況に応じて適正な作業を進めることができる。特に、車体の後方において障害物を検出する情報を変更することで、効率よく自動走行を行いながら作業性を向上させることができる。
【0061】
後方設定情報は、障害物を検出する検出範囲Q2の大きさを含み、設定変更部27は、検出範囲Q2の大きさを車体2の走行速度に基づいて変更する。これによれば、作業装置2の作業に対応する走行速度に応じて、検出範囲Q2を変更することができる。例えば、作業装置2において高速で作業を行う場合には、検出範囲Q2を広くすることで、後方作業時における異常などを素早く検知することができ、一方で、低速で作業を行う場合には、検出範囲Q2を狭くすることで、より精度を高めた監視を行うことができる。また、低速で作業を行う場合において、検出範囲Q2を狭くすれば、作業装置9において、圃場の際まで作業を行うことができ、作業面積を増加させることができる。
【0062】
設定変更部27は、検出範囲Q2の大きさを車体2に連結された作業装置9に応じて変更する。これによれば、作業装置9の大きさによって後方の死角をできる限り無くすだけでなく、作業装置9の大きさによって作業後の対地に対する状況が異なることから、この点でも、作業中における監視を高めることができる。
後方設定情報は、障害物として判定する物体M2の大きさを含み、設定変更部27は、作業及び作業装置9のいずれかに基づいて、判定する物体M2の大きさを設定する。これによれば、施肥作業、薬剤作業、耕耘作業など比較的、土埃が発生するような作業である場合に、障害物の誤検知を低減することができる一方で、土埃が発生しないような作業である場合には、障害物の検出の精度を向上させることができる。
【0063】
後方障害物検出装置31Bは、障害物を検出する検出範囲Q2内に位置する物体M2の検出時間を演算する第1時間演算部35と、第1時間演算部35で演算した検出時間が第1閾値以上である場合に物体M1,M2を障害物として判定する第1障害物判定部36と、を備えている。これによれば、物体M1は検出範囲Q2に留まる状況を考慮した検出を行うことができる。
【0064】
設定変更部27は、第1閾値を変更する。これによれば、物体M2が検出範囲Q2に留まる時間を変更することで施肥作業、薬剤作業、耕耘作業など比較的、土埃が発生するような作業である場合に、障害物の誤検知を低減することができる一方で、土埃が発生しないような作業である場合には、障害物の検出の精度を向上させることができる。
作業車両1は、車体2の前方の障害物を検出可能な前方障害物検出装置31Aを備え、設定変更部27は、前方障害物検出装置31Aにおいて障害物を検出する前方設定情報を変更する。これによれば、前方障害物検出装置31Aの前方設定情報を変更することができるため、作業装置9の作業、車体2の走行(前進、後進)に応じて障害物の検出の精度などをすることができ、様々な状況に応じて適正な作業を進めることができる。特に、車体の前方側の前方設定情報と後方設定情報とを組み合わせることで、前進、後進を繰り返すような作業であったり、複合的な作業において、より精度の高い障害物の検出を行うことができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
1 :作業車両(トラクタ)
2 :車体
2 :作業装置
8 :連結装置
9 :作業装置
25 :制御装置
27 :設定変更部
31 :障害物検出装置
31A :前方障害物検出装置
31B :後方障害物検出装置
35 :第1時間演算部
36 :第1障害物判定部
Ha1 :検出範囲
M1 :物体
M2 :物体
Q1 :検出範囲
Q2 :検出範囲
T10 :第1閾値