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特許7547048ピコリン酸マグネシウム組成物および使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ピコリン酸マグネシウム組成物および使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/06 20060101AFI20240902BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20240902BHJP
   A61K 31/4402 20060101ALI20240902BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240902BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
A61K33/06
A61K9/28
A61K31/4402
A61P25/28
A61P43/00 105
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019520116
(86)(22)【出願日】2017-10-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 US2017056228
(87)【国際公開番号】W WO2018071601
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2019-12-02
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】62/407,362
(32)【優先日】2016-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】524110746
【氏名又は名称】ボナファイド・ヘルス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】コモロフスキ、ジェームス・アール.
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン、ディアナ・ジェイ.
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】前田 佳与子
【審判官】吉田 佳代子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0228347(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0335599(US,A1)
【文献】特表平05-505935(JP,A)
【文献】特開平07-145317(JP,A)
【文献】特表2010-522216(JP,A)
【文献】特表2013-500933(JP,A)
【文献】有機基礎反応の研究(第9報)ピコリン酸塩の熱分解,日本化学雑誌,1954年,第75巻第10号,第987-989頁
【文献】PHARM TECH JAPAN,2013,Vol.29,No.13,p.7-17
【文献】Journal of Drug Targeting,2002,Vol.10,No.6,p.469-478
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80, A61K 33/00-33/44
A61K 9/00- 9/72, A61K 47/00-47/69
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピコリン酸マグネシウムおよび薬学的に許容されるビヒクル、担体、または希釈剤を含む組成物であって、前記組成物が、カドミウム、水銀、鉛、ニッケル、ヒ素、コバルト、アンチモン、タリウム、バリウム、銀、セレニウム、銅、亜鉛、マンガン、ストロンチウム、または前記の組み合わせからなる群から選択される200ppm以下の任意の重金属を含み、前記組成物が、記憶を改善するために使用される、組成物。
【請求項2】
前記組成物が固体組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、徐放性マトリックスを含む、請求項1~2のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、腸溶性である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、10mg~1,000mgのマグネシウムを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、200ppm未満のバリウムを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、200ppm未満のバリウムおよび他の重金属を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、100ppm未満のバリウムおよび他の重金属を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記記憶の改善が、脳マグネシウム濃度の増加によって達成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記記憶の改善が、肝臓マグネシウム濃度の増加によって達成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記記憶の改善が、血清マグネシウム濃度の増加によって達成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
マグネシウム欠乏症を有する、または発症するリスクがあると知られる哺乳類のマグネシウム欠乏症を伴う疾患、障害、または状態を治療または防止するための、ピコリン酸マグネシウムおよび薬学的に許容されるビヒクル、担体、または希釈剤を含む医薬組成物であって、前記組成物が、カドミウム、水銀、鉛、ニッケル、ヒ素、コバルト、アンチモン、タリウム、バリウム、銀、セレニウム、銅、亜鉛、マンガン、ストロンチウム、または前記の組み合わせからなる群から選択される200ppm以下の任意の重金属を含み、前記疾患、障害、または状態が、認知状態である、医薬組成物。
【請求項13】
前記認知状態が、アルツハイマー病、片頭痛、脳卒中、うつ病、パーキンソン病、統合失調症、外傷性脳損傷、外傷後ストレス障害、ハンチントン病、または前記の組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記ピコリン酸マグネシウムの投与量が、1日当たり10mg~1,000mgである、請求項12~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記ピコリン酸マグネシウムを、経口投与する、請求項12~14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本出願は、ピコリン酸マグネシウム(MgPic)組成物および使用方法に関する。ここに開示した方法および組成物は、バイオアベイラブルなマグネシウムを哺乳類に提供し、マグネシウム欠乏症の症状を治療または防止するために特に有用である。
【背景技術】
【0002】
マグネシウムは、豊富に存在する鉱物で、体内と多くの食品のどちらにも天然に存在するが、本明細書で開示される組成物は、天然に存在せず、また、本明細書でさらに記載されるように、従来の合成方法では、適切な組成物は得られえなかった。マグネシウムは、エネルギー生産、タンパク質合成および輸送、細胞シグナル伝達、およびホメオスタシス調節を含めて、多くの生理的プロセスで重要な補因子である。実際、マグネシウムは、体のすべての細胞および組織で生物活性を示す。
【0003】
食事性マグネシウムは、乳、オートミール、果実、野菜、ナッツ類、および種子から得ることができる。マグネシウムの摂取は、第一に小腸でおよび第二に大腸で起こる。いくつかの吸収は経細胞であるが、ほとんどの吸収はTRPMチャネルを経由する傍細胞である。消化管でのマグネシウム吸収は、通常、25-75%である。
【0004】
マグネシウムは天然に豊富に存在するが、マグネシウム欠乏症は、米国中および世界中で広がる健康上の懸念である。最近の推測によれば、半数以上のアメリカ人がマグネシウム欠乏である。マグネシウム欠乏症は、消化管からの栄養素の排出(例えば、下痢)が増加している個体の間で最も一般的である。したがって、例えば、クローン病、セリアック病、II型糖尿病、およびアルコール中毒を有する個体は、しばしばマグネシウム欠乏症を示す。
【0005】
マグネシウム欠乏症および/またはマグネシウム利用障害は、重大な生理学的影響を及ぼし得る。例えば、脳のマグネシウム濃度の低下は、片頭痛、脳卒中、うつ病、パーキンソン病、および他の神経障害と関係付けられている。肺のマグネシウム濃度の低下は、喘息およびCOPDと関係している。心臓のマグネシウム濃度の低下は、冠動脈疾患、心筋梗塞、および異常な血流と関係している。筋肉のマグネシウム濃度の低下は、痙攣と関係している。骨のマグネシウム濃度の低下は、骨粗鬆症と関係している。
【0006】
マグネシウム取り込みの推奨値(RDA)は、男性で一日当たり約400mg、女性で310-320mgである。食事の摂取および消化管からの吸収は、生理的要件を満たす十分なマグネシウムを提供しない場合、塩の形態、例えば、酸化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、グリシン酸マグネシウム、L-トレオン酸マグネシウム、塩化マグネシウムなどのサプリメントでマグネシウムを投与することができる。これらの塩は、組成物のマグネシウム百分率および腸からのバイオアベイラビリティ/吸収に関して互いに異なる。
【0007】
消化管からのバイオアベイラビリティの違いに加え、マグネシウム化合物は、血液脳関門を越え、脳のマグネシウム濃度を増加する能力に違いがある。これは、適切な神経機能を維持する際のマグネシウムの役割を考えると、特に重要である。例えば、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体は、グルタミン酸塩受容体であり、神経細胞でみられるイオンチャネルタンパク質である。この受容体は、学習および記憶用のシナプス可塑性、細胞機構において重要であると考えられる。NMDA受容体が活性化するのは、グルタミン酸塩およびグリシン(またはD-セリン)がそれに結合する場合、および活性化により正に荷電したイオン、例えばNa+2およびCa+2が細胞膜を超えることが可能になる場合である。
【0008】
マグネシウムは、このイオンチャネルの開閉に関与する。特に、活性化(リガンド結合)イオンチャネルを経由する電流の流れは、電位依存性である。細胞外のマグネシウムイオン(Mg+2)および亜鉛イオン(Zn+2)は、受容体上の部位に結合し、イオンチャネルを経由する他の(シグナリング)カチオンの通過を阻止する。最終的に、細胞の脱分極は、マグネシウムおよび亜鉛イオンを細孔から遠ざけ、細胞へのシグナリングカチオンおよび細胞からのカリウム(K)の電位依存性の流れを可能にする。
【0009】
さらに、これらの神経細胞へのカルシウムの流入は、α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸受容体(AMPA)のニューロン膜への移行を引き起こす。AMPA受容体は、興奮性神経伝達物質グルタミン酸塩にも結合し、グルタミン酸塩へのより強い応答、したがって、より大きい興奮を引き起こす。しかし、脳のマグネシウム濃度の低下は、NMDA受容体のブロッキングを低下させ、カルシウムの持続的流入、AMPA受容体の動員、およびグルタミン酸塩への応答の増加を可能にする。この過剰刺激は、ニューロンのタンパク質変性、最終的に神経細胞の死を引き起こす。実際、NMDA受容体の機能不全は、アルツハイマー病、うつ病、片頭痛、および他の疾患に関連していた。
【0010】
研究は、ピコリン酸がNMDA経路に関与し、そこで神経保護薬として作用することも示唆する。特に、データは、ピコリン酸が、NMDA受容体アゴニストキノリン酸、強力な神経毒のアンタゴニストであることを示唆する。キノリン酸へのアンタゴニストとして、ピコリン酸は、NMDA受容体の過剰刺激の効果を阻止することができる。
【0011】
MgPicの調製方法として2つの方法が知られている。Deloumeらは、炭酸マグネシウムを熱い希薄なピコリン酸の溶液に添加した。反応混合物をゆっくり蒸発乾固して、MgPicを得た。固体を2回再結晶して、結晶学的研究用に無色の結晶を得た。ActaCrystallogr,SectionB,Struct.CrystallogrCryst.Chem.,29(4):668-676(1973)を参照のこと。しかし、この方法は、現行の適正製造基準(cGMP)に準拠して繰り返すためには、十分な詳細を欠いている。
【0012】
あるいは、Swiderskiらによれば、MgPicは、水中での硫酸マグネシウムとピコリン酸バリウムとの交換反応により調製することができる。Spectrochim.ActaPartA、64(1):24-33(2006)を参照のこと。しかし、このMgPicの調製は、今日の医薬品および/または栄養補助食品の用途用として有用であるために必要な特定の特徴を欠いている。例えば、食用に適切な化合物は、金属汚染物質フリー、例えばバリウムフリーでなければならない。したがって、Swiderskiの手順は、MgPicの任意の医薬品または栄養補助食品用途で本方法を有用なものにするためには、広範囲に及ぶ追加の精製および試験が必要であろう。
【0013】
したがって、マグネシウムおよびピコリン酸組成物が、マグネシウムの高いバイオアベイラビリティ、およびピコリン酸の高いバイオアベイラビリティを特に脳に提供することが長年必要とされており、この必要性は満たされていない。
【発明の概要】
【0014】
いくつかの態様では、本発明は、マグネシウムおよびピコリン酸のバイオアベイラビリティおよび/または脳透過性を高めるのに有用である栄養および治療組成物を含む。本明細書で開示される方法は、マグネシウムおよびピコリン酸をピコリン酸マグネシウム(MgPic)組成物として提供することによりマグネシウムおよびピコリン酸のバイオアベイラビリティを高めることを含む。マグネシウムおよびピコリン酸のバイオアベイラビリティを高める方法も開示しており、MgPic組成物の安全で有効な量を対象に投与することを含むであろう。さらに、温血動物のマグネシウムおよびピコリン酸のバイオアベイラビリティを高める方法が開示される。そのような方法は、治療的に有効な量の、MgPic組成物を含む薬剤組成物を投与することを含むであろう。さらに、本発明は、マグネシウムおよびピコリン酸のバイオアベイラビリティを高めるのに有用である栄養および治療MgPic組成物を提供することができる。組成物は、例えば、哺乳類で有用であり得る。
【0015】
いくつかの側面では、ここに開示した組成物は、マグネシウム欠乏症を治療または防止するために使用することができる。例えば、組成物は、1つ以上の他の薬物の投与により引き起こされる消失したマグネシウム濃度を回復するために投与することができる。組成物は、NMDA受容体シグナリングの欠陥を伴う、および/または神経障害を伴う疾患、例えばアルツハイマー病および他の疾患を治療または防止するために使用することもできる。本発明の他の特徴、利点、および態様は、以下の記述、例、および添付の請求項から当業者には明らかであろう。
【0016】
いくつかの態様は、有効量の医薬品品質ピコリン酸マグネシウムおよび薬学的に許容されるビヒクル、担体、または希釈剤を含む組成物を提供する。いくつかの態様では、組成物は、固体組成物である。いくつかの態様では、組成物は、徐放性マトリックスを含む。
【0017】
いくつかの態様では、組成物は、腸溶性である。いくつかの態様では、組成物は、約10μg~約1,000μgのピコリン酸マグネシウムを含む。
【0018】
いくつかの態様では、組成物は、カドミウム、水銀、鉛、ニッケル、ヒ素、コバルト、アンチモン、タリウム、バリウム、銀、セレニウム、銅、亜鉛、マンガン、ストロンチウム、または前記の組み合わせからなる群から選択される200パーツパーミリオン(ppm)以下の任意の重金属を含む。
【0019】
いくつかの態様は、マグネシウム欠乏症を有する、または発症するリスクがあると知られる哺乳類のマグネシウム欠乏症を伴う疾患、障害、または状態を治療または防止する方法を提供し、方法は、哺乳類のマグネシウム欠乏症を伴う疾患、障害、または状態を治療または防止するために有効な量の医薬品品質ピコリン酸マグネシウムを投与することを含む。いくつかの態様は、記憶機能を改善するために本明細書に記載される組成物を投与することを含む。いくつかの態様は、記憶機能障害を回復するために本明細書に記載される組成物を投与することを含む。記憶機能障害は、アルツハイマー病、老化、貧しい食生活、または他の認知障害の結果であってもよい。特定の態様は、代謝機能を改善するために本明細書に記載される組成物を投与することを含む。
【0020】
いくつかの態様では、疾患、障害、または状態は、認知状態である。いくつかの態様では、認知状態は、アルツハイマー病、片頭痛、脳卒中、うつ病、パーキンソン病、統合失調症、外傷性脳損傷、外傷後ストレス障害、ハンチントン病、または前記の組み合わせからなる群から選択される。
【0021】
いくつかの態様では、疾患、障害、または状態は、線維筋痛症、切断後幻肢痛、神経障害による痛み、興奮性亢進、疲労、食欲不振、痙攣、筋振戦、筋痙攣、テタニー、筋力低下、線維束性収縮、不眠症、混乱、易刺激性、高血圧、骨粗鬆症、糖尿病、冠動脈心疾患、慢性炎症、子癇前症、心筋梗塞、喘息、腎疾患、バーター症候群、ギテルマン症候群、ループ利尿薬の長期投与、サイアザイド系利尿剤の長期投与、シスプラチンの投与、アミノグリコシドの投与、シクロスポリンの投与、アルコール中毒、プロトンポンプ阻害薬の長期投与、または前記の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様は、体脂肪を減少するために本明細書に記載される組成物を投与することを含む。いくつかの態様は、レプチン分泌を減少するために本明細書に記載される組成物を投与することを含む。いくつかの態様は、対象のマグネシウム濃度を増加するために本明細書に記載される組成物を投与することを含む。いくつかの態様は、対象の肝臓マグネシウム濃度を増加するために本明細書に記載される組成物を投与することを含む。いくつかの態様は、対象の脳マグネシウム濃度を増加するために本明細書に記載される組成物を投与することを含む。いくつかの態様は、対象の脳抗酸化酵素カタラーゼ(CAT)濃度を増加するために本明細書に記載される組成物を投与することを含む。いくつかの態様は、対象の脳抗酸化酵素GSH-Px濃度を増加するために本明細書に記載される組成物を投与することを含む。いくつかの態様は、体脂肪を減少するために本明細書に記載される組成物を投与することを含む。いくつかの態様は、内臓脂肪を減少するために本明細書に記載される組成物を投与することを含む。いくつかの態様は、血液グルコース濃度を減少するために本明細書に記載される組成物を投与することを含む。いくつかの態様は、血液インスリン濃度を減少するために本明細書に記載される組成物を投与することを含む。
【0022】
いくつかの態様では、投与されるピコリン酸マグネシウムの量は、一日当たり約10μg~約1,000μgである。いくつかの態様では、ピコリン酸マグネシウムは、経口投与される。
【0023】
いくつかの態様は、ピコリン酸と酢酸マグネシウム四水和物を溶液中で合わせること、および任意選択で水を除去することを含む、医薬品品質ピコリン酸マグネシウムを製造する方法を提供する。いくつかの態様は、ピコリン酸と酢酸マグネシウム四水和物を溶液中で合わせること、および任意選択で水を除去することを含む、栄養補助食品品質ピコリン酸マグネシウムを製造する方法を提供する。
【0024】
いくつかの態様では、ピコリン酸は、ピコリン酸の水溶液からなる。いくつかの態様では、酢酸マグネシウム四水和物は、酢酸マグネシウム四水和物の水溶液からなる。いくつかの態様は、水を除去することをさらに含む。いくつかの態様では、水を除去することは、混合物を加熱すること、混合物を真空下に置くこと、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、医薬品品質ピコリン酸マグネシウムは、結晶質である。いくつかの態様では、医薬品品質ピコリン酸マグネシウムは、非晶質である。
【0025】
いくつかの態様は、ピコリン酸とマグネシウムエトキシドを溶液中で合わせること、および任意選択で1つ以上の溶媒を除去することを含む、医薬品および/または栄養補助食品品質ピコリン酸マグネシウムを製造する方法であって、他の重金属を除去するさらなる工程を含まない方法を提供する。
【0026】
いくつかの態様は、ピコリン酸を水に溶解してピコリン酸溶液を形成すること、これに限定されないが、NaOHなどの塩基性溶液をピコリン酸溶液に添加すること、塩化マグネシウム六水和物を水に溶解して塩化マグネシウム六水和物溶液を形成すること、塩化マグネシウム六水和物溶液をろ過し、次いでろ液をピコリン酸溶液に添加して溶液を形成すること、溶液を加熱すること、ピコリン酸溶液を冷却すること、溶液をろ過すること、および残渣を乾燥することを含む、医薬品および/または栄養補助食品品質ピコリン酸マグネシウムを製造する方法を提供する。ピコリン酸マグネシウムを調製する方法は、約200ppm未満のバリウムおよび/または他の重金属を含む組成物を製造することができる。いくつかの態様では、これらの組成物は、約150未満、約100未満、50未満、または20ppm未満のバリウムおよび/または他の重金属を含むであろう。
【0027】
いくつかの態様は、ピコリン酸と酸化マグネシウムを水中で合わせてスラリーを製造すること、スラリーを加熱すること、水をスラリーに添加すること、スラリーを冷却すること、スラリーをろ過すること、および残渣を真空下で乾燥することを含む、医薬品および/または栄養補助食品品質ピコリン酸マグネシウムを製造する方法を提供する。冷却工程は、一晩とすることができる。方法は、残渣をエタノールに溶解してエタノール溶液を製造すること、エタノール溶液をろ過すること、および水を用いてピコリン酸マグネシウムを析出することをさらに含むことができる。ピコリン酸マグネシウムを調製する方法は、約200ppm未満のバリウムおよび/または他の重金属を含む組成物を製造することができる。いくつかの態様では、これらの組成物は、約150未満、約100未満、50未満、または20ppm未満のバリウムおよび/または他の重金属を含むであろう。
【0028】
いくつかの態様では、ピコリン酸は、ピコリン酸のエタノール性溶液からなる。いくつかの態様では、マグネシウムエトキシドは固体である。いくつかの態様では、マグネシウムエトキシドは、マグネシウムエトキシドのエタノール性溶液を含む。いくつかの態様では、方法は、1つ以上の溶媒を除去することを含む。いくつかの態様では、1つ以上の溶媒は、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、およびt-ブタノールから独立に選択される。
【0029】
いくつかの態様では、1つ以上の溶媒を除去することは、混合物を加熱すること、混合物を真空下に置くこと、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、医薬品品質ピコリン酸マグネシウムは結晶質である。いくつかの態様では、医薬品品質ピコリン酸マグネシウムは非晶質である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、ピコリン酸のH-NMRスペクトルを示す。
図2図2は、例2で開示されるMgPic組成物のH-NMRスペクトルを示す。
図3図3は、例3で開示されるMgPic組成物のH-NMRスペクトルを示す。
図4-1】図4-1のFigure 4A及びFigure 4Bは、酸化マグネシウムと比較した、ピコリン酸マグネシウムの投与後に得られた結果を示す。
図4-2】図4-2のFigure 4Cは、酸化マグネシウムと比較した、ピコリン酸マグネシウムの投与後に得られた結果を示す。
図4-3】図4-3のFigure 4D及びFigure 4Eは、酸化マグネシウムと比較した、ピコリン酸マグネシウムの投与後に得られた結果を示す。
図4-4】図4-4のFigure 4F及びFigure 4Gは、酸化マグネシウムと比較した、ピコリン酸マグネシウムの投与後に得られた結果を示す。
図5図5は、水タンク中の隠されたプラットフォームを見つけるためにラットが要した時間を示し、ピコリン酸マグネシウムを使用して実現した改善を示す。
図6図6は、ラット高脂肪食餌により記憶機能障害を生じたラットにピコリン酸マグネシウムを投与した後に、ラットにより実現した記憶の改善を示す。
図7図7のFigure 7A及びFigure 7Bは、ピコリン酸マグネシウムの投与により実現した脳酵素活性の改善を示す。
【発明の詳細な説明】
【0031】
ここに示した記述で使用する用語は、ここに記載したある特定の態様の詳細な説明に関して単に利用されているので、任意の制限されたまたは限定的な方法で解釈されるものではない。さらに、ここに記載した態様は、その望ましい属性に専ら原因がある、または、ここに記載した態様を実践するのに重要である、1つではなくいくつかの新規な特徴を含むであろう。
【0032】
ここでは、「同定すること」は、例えば、特定の対象が一定の固有性または特性を有することを確立するために、潜在的な対象の集団から対象を検出または選択することを指す。「同定すること」は、例えば、自己同定、自己診断、および医療関係者による診断を含むであろう。
【0033】
ここでは、「治療する」、「治療」、または「治療すること」は、予防および/または治療目的の組成物を投与することまたは提供することを指す。ここでは、用語「治療」は、哺乳類、特にヒトの疾患の任意の治療を含むことができ、(a)疾患を有するとまだ診断されていないが、疾患にかかる可能性のある対象に疾患が生じるのを防止すること、(b)疾患を抑制すること、もしくはその発症を阻止すること、または(c)疾患を軽減し、疾患および/またはその症状、状態、および併存症を退縮させることを含む。
【0034】
ここでは、「予防処置」、「予防する」、または「予防すること」という用語は、疾患の症状または状態をまだ示していないが、特定の疾患または状態を受けやすく、そうでない場合はそのリスクがある対象を治療することを指すことがあり、それによって、患者が疾患または状態を発症することになる可能性を治療が低減する。「障害」は、ここに記載した組成物を用いる治療から利益を得ることになる任意の状態である。
【0035】
以下の請求項および本開示全体で使用するように、表現「から本質的になる」は、表現の後に列挙される任意の要素を含むことを意味し、列挙された要素のために本開示で指定される活性または作用を妨げず、または寄与する他の要素に限定される。したがって、表現「から本質的になる」は、列挙された要素が必要、または必須であるが、他の要素は任意選択であり、列挙された要素の活性または作用に影響を及ぼすか及ぼさないかに依存して、存在してもしなくてもよいことを示す。例えば、特定の疾患または障害をなくそうと努める上で活性であると公知である、特定の疾患の治療または障害の治療用の「ピコリン酸マグネシウムから本質的になる」組成物の使用は、他の成分を除外することになる。
【0036】
ここでは、組成物が化合物を「実質的に」含むことは、組成物が約80重量%超、より好ましくは約90重量%超、さらにより好ましくは約95重量%超、および最も好ましくは約98重量%超の化合物を含むことを意味する。
【0037】
用語「約」は、ここで別段の明確な記載がない限り、±20%を意味する。例えば約100は、80~120を意味し、約5は、4~6を意味し、約0.3は、0.24~0.36を意味し、約60%は、48%~72%を意味する(40%~80%ではない)。
【0038】
用語「薬剤調合物」は、有効成分の生物活性が有効であり得るような形態である調製物を指し、したがって、治療用の使用のために対象に投与してもよい。
【0039】
ここでは「治療的に有効な量」は、所望の治療効果を提供するためにここに開示した態様での使用のための、非毒性であるが十分な量の化合物有効成分、またはそれを含む組成物をその意味に含む。同様に、ここに用いた「に有効な量」は、所望の効果を提供するための、非毒性であるが、十分な量の化合物有効成分、またはそれを含む組成物をその意味に含む。ここに開示した、求められる有効成分の正確な量は、因子、例えば、治療される種、対象の年齢および一般状態、治療される状態の重症度、投与する特定の薬剤、対象の重量、および投与の様式などに依存して、対象により変化することになる。したがって、正確な「有効量」を特定することは可能ではない。しかし、どのような場合にも、適切な「有効量」は、慣用的方法のみを使用して当業者により決定することができる。いくつかの側面では、治療的に有効な量は、投与レジメンを含むであろう。「治療的に有効な」は、マグネシウム欠乏症を伴う悪影響を防止および治療するのに必要な量のマグネシウムおよびピコリン酸またはその塩をもたらす目的を達成することになる、MgPic組成物の量を限定することを意図することができる。その量のMgPic組成物、同じ単位用量の一部として、または協調して投与される異なる単位用量として対象に経口投与することができる。さらに、この治療を必要とする対象のバイオアベイラビリティを確実にする必要がある場合、その量のMgPic組成物は、協調して異なる経路の投与により投与してもよい。例として、協調した投与は、有効量のMgPic組成物の一時点での経口投与、および有効量のMgPic組成物の経口、経皮、または静脈内投与による、最初の有効量の前記組成物の投与から72時間以内の別の時点での投与を含むであろう。例えば、治療的に有効な量は、連続14日間毎日経口摂取されるMgPic約1mgを含むであろう。いくつかの側面では、治療的に有効な量は、連続30日間毎日経口摂取されるMgPic約1mgを含むであろう。MgPicを含む組成物は、例えば、MgPic0.1~10グラムを含むであろう。MgPicの投薬量は、マグネシウム元素の所望の量のために設定することができることにも留意されたい。例えば、1グラムのMgPicは、重量比で9%のMg元素を含むであろう(すなわち、MgPic1g中にMg0.09g)。この関係から、当業者は、マグネシウムのみの量またはMgPic組成物の質量を含むための、本開示で示される投薬の量および重量を理解するであろう。また、これらの用語が使用される文脈に鑑みてこれらの値を直ちに特定するであろう。
【0040】
さらに、組成物の適切な投薬量は、例えば、治療すべき状態、状態の重症度および経過、組成物が予防または治療目的で投与されるかどうか、以前の療法、患者の病歴および組成物への応答、使用する組成物の種類、および主治医の裁量に依存することがある。組成物を、一度にまたは一連の治療を通して患者に適切に投与し、また、診断後いつでも患者に投与することができる。組成物を、唯一の治療として、または当該の状態の治療に有用な他の薬物または療法とともに投与することができる。
【0041】
例として、ここに開示した化合物の「治療的に有効な量」は、例えば、0.1μg/kg、0.5μg/kg、1μg/kg、1.5μg/kg、2.0μg/kg、2.5μg/kg、3.0μg/kg、3.5μg/kg、4.0μg/kg、4.5μg/kg、5.0μg/kg、10μg/kg、15μg/kg、20μg/kg、25μg/kg、30μg/kg、35μg/kg、40μg/kg、45μg/kg、50μg/kg、55μg/kg、60μg/kg、65μg/kg、70μg/kg、75μg/kg、80μg/kg、85μg/kg、90μg/kg、95μg/kg、100μg/kg、150μg/kg、200μg/kg、250μg/kg、300μg/kg、350μg/kg、400μg/kg、450μg/kg、500μg/kg、550μg/kg、600μg/kg、650μg/kg、700μg/kg、750μg/kg、80μg/kg0、850μg/kg、900μg/kg、1mg/kg、1.5mg.kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、3mg/kg、3.5mg/kg、4.0mg/kg、4.5mg/kg、5mg/kg、5.5mg/kg、6mg/kg、6.5mg/kg、7mg/kg、7.5mg/kg、8mg/kg、8.5mg/kg、9mg/kg、9.5mg/kg、10mg/kg10.5mg/kg、11mg/kg、11.5mg/kg、12mg/kg、12.5mg/kg、13mg/kg、13.5mg/kg、14mg/kg、14.5mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、21mg/kg、22mg/kg、23mg/kg、24mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、55mg/kg、60mg/kg、65mg/kg、70mg/kg、またはそれ以上、またはその間の任意の分数の化合物でありうる(例えば、この場合、化合物はMgPic化合物を指すことができる)。
【0042】
したがって、いくつかの態様では、ここに開示した組成物中の化合物の用量は、好ましくは1日当たり約10μg~約10gとすることができる。例えば、錯体の量は、10μg、15μg、20μg、25μg、30μg、35μg、40μg、45μg、50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、125μg、150μg、175μg、200μg、225μg、250μg、275μg、300μg、325μg、350μg、375μg、400μg、425μg、450μg、475μg、500μg、525μg、575μg、600μg、625μg、650μg、675μg、700μg、725μg、750μg、775μg、800μg、825μg、850μg、875μg、900μg、925μg、950μg、975μg、1000μg、1.25g、1.5g、1.75g、2.0g、2.25g、2.5g、2.75g、3.0g、3.25g、3.5g、3.5g、3.75g、4.0g、4.25g、4.5g、4.75g、5.0g、5.25g、5.5g、5.75g、6.0g、6.25g、6.5g、6.75g、7.0g、7.25g、7.5g、7.75g、8.0g、8.25g、8.5g、8.75g、9.0g、8.25g、9.5g、9.75g、10g、15g、20g、30g、40g、50g、またはそれ以上、または前記値の任意の2つ間の任意の範囲または量とすることができる。例えば、用量は、約10μg~100μg、約1,000μg~約10,000μg、約10mg~100mg、約100mg~約1000mg、約50mg~約1000mg、約500~約1000mg、約1g~約50g、およびそれらの間の範囲を含むであろう。上記で列挙した例示的な治療的に有効な量は、いくつかの態様では、所望の治療効果を達成するためにここのどこかで記載する方法で毎時、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23時間毎、もしくはその間の任意の間隔、または毎日、2日間毎、3日間毎、4日間毎、5日間毎、6日間毎、1週間毎、8日間毎、9日間毎、10日間毎、2週間毎、1カ月毎、または頻繁に投与することができる。
【0043】
本発明は、アルミニウム、ヒ素、バリウム、カドミウム、クロム、鉛、水銀、およびタリウムからなる群から選択される金属汚染物質の多くて微量濃度を含む医薬品品質MgPic組成物の調製および使用の方法を提供する。したがって、本発明の組成物は、容認できないほどの高濃度のバリウムおよび他の有毒金属が存在する従来技術組成物の欠点を克服する。医薬品品質MgPic組成物の調製方法は、現行の適正製造基準(cGMP)に適合する。
【0044】
本発明は、マグネシウムおよびピコリン酸のバイオアベイラビリティを高めるために有用な栄養および治療組成物を含む。MgPic組成物としてマグネシウムとピコリン酸の両方を提供することにより、マグネシウムおよびピコリン酸の水溶性を高めるための方法が開示される。マグネシウムおよびピコリン酸のバイオアベイラビリティを高める方法も開示され、方法は、MgPic組成物の安全で有効な量を対象に投与することを含む。さらに、温血動物のマグネシウムおよびピコリン酸のバイオアベイラビリティを高める方法が開示され、方法は、医薬品品質MgPic組成物を含む治療的に有効な量の医薬品品質組成物を投与することを含む。さらに、本発明は、脳のマグネシウムとピコリン酸塩の両方のバイオアベイラビリティを高めるために有用である栄養的および治療的な水溶性MgPic組成物を提供する。組成物は、哺乳類で有用である。
【0045】
ここでは、用語「ピコリン酸マグネシウム」または「MgPic」は、生理学的に相溶性の水和物、結晶形、結晶多形、特定のかさ密度またはタップ密度を有する固体形態、および特定の粒径を有する固体形態と共に、分子式Mg(CNO、質量268.508g/mol、および一般式
【化1】
を有するマグネシウム塩を指す。
【0046】
MgPicに対する他の一般的名称は、2-ピリジンカルボン酸のマグネシウム塩、ジ(2-ピリジンカルボキシレート)デマグネシウム、マグネシウムジ(2-ピリジンカルボキシレート)、マグネシウムジピリジン-2-カルボキシレート、およびマグネシウムビス(ピリジン-2-カルボキシレート)である。
【0047】
ここでは、用語「ピコリン酸塩」は、ピコリン酸の共役塩基を指す。ピコリン酸は、ケミカルアブストラクトサービス登録番号98-96-6、分子式CNO、および一般式
【化2】
を有する。
【0048】
ここでは、用語「医薬品品質」は、任意の金属または他の汚染物質を除去することなくヒトに投与することが安全である材料を指す。医薬品品質は、いくつかの実施では、現行の適正製造基準(cGMP)に適合して製造される物質も指すことができる。Guidance for Industry-Quality Systems Approach to Pharmaceutical CGMP Regulations, September 2008を参照のこと。さらに、いくつかの実施では、用語は、元素不純物に関連する現行の規制に適合して製造される物質を指す。Guidance for Industry-Q3D Elemental Impurities, September 2015を参照のこと。
【0049】
ここでは、用語「微量濃度」は、物質中に存在する元素の濃度を指す。容認できる微量濃度は、元素により異なるであろう。一般に、用語は、約200マイクログラム/ 物質グラム未満であるマグネシウム以外の金属元素の濃度を指す。
【0050】
ここでは、用語「重金属」は、これに限定されないが、カドミウム、水銀、鉛、ニッケル、ヒ素、コバルト、アンチモン、タリウム、クロム、バリウム、銀、セレニウム、銅、亜鉛、マンガン、ストロンチウム、およびそれらの塩または組み合わせを含む金属を指す。
【0051】
ここでは、用語「認知状態」は、記憶喪失、認知症、および/または譫妄を含むであろう、学習、記憶、知覚、および/または問題解決に主に影響を及ぼす疾患、障害、または状態を指す。
【0052】
いくつかの態様は、結晶形、結晶多形、特定のかさ密度またはタップ密度を有する固体形態、および特定の粒径を有する固体形態の、生理学的に相溶性のMgPic水和物を提供する。いくつかの態様は、これに限定されないが、オイドラギット、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどを含み、その放出および/またはバイオアベイラビリティを変更することを意図した薬学的に許容される材料で塗布された組成を提供する。
【0053】
ここでは、「マグネシウム」という用語は、マグネシウムイオン、Mg2+を指す。
【0054】
ここでは、「薬学的に許容される溶媒」という用語は、水、注射用の水、生理学的に相溶性である水性緩衝溶液、ならびに生理学的に相溶性である有機溶媒を含有する水溶液を意味する。薬学的に許容される溶媒の非包括的リストは、米国保健福祉省、食品医薬品局、「Guidance for Industry:Q3C Impurities:Residual Solvents」、1997年12月版に示されている。
【0055】
ここでは、「バイオアベイラビリティ」という用語は、腸で吸収され、最終的に対象の組織および細胞の生物活性用に利用できる物質の量を指す。
【0056】
ここでは、「バイオアベイラビリティを高めること」という用語などを、ここでは、組成物を哺乳類に投与後に腸から吸収され、または組織および細胞により吸収され、マグネシウムの量を高める所望の薬理学的および生理的効果を得ることを指すのに使用する。この効果により、治療剤の不足により引き起こされる、またはそれに関連する有害症状または状態の発生、リスク、または重症化を防止すること、または部分的に防止することに関して、予防的であってもよい。
【0057】
ここでは、用語「脳透過性を高めること」などは、本明細書で特定のサブタイプのバイオアベイラビリティを指すために使用される。特に、組成物を哺乳類に投与後に血液脳関門を越えるマグネシウムの量を増加する所望の薬理学的および生理的効果を得ることを指す。効果は、治療剤の欠乏により引き起こされる、または関連する有害症状または状態の発生率、リスク、または重症度を防止する、または部分的に防止することに関して予防的であってもよい。
【0058】
ここでは、「賦形剤材料」という用語は、有効成分ではない調合物、すなわち、関連する生物活性を有しない調合物の一部である任意の化合物を指し、これは、例として、化学分解から有効成分を保護すること、錠剤またはカプレットが形成される装置からの放出を促進することなどを含め、投与形態に特定の特性を与えるために調合物に添加する。
【0059】
本開示の目的では、温血動物は、これらに限定されないが、哺乳類および鳥類を含む動物界の一員である。本出願の最も好ましい哺乳類は、ヒトである。
【0060】
ここでは、用語「栄養補助食品」および「医薬品」は、互換的に、および区別して使用することができ、その意味は、使用される文脈を考慮して当業者に明らかとなるであろう。例えば、「薬学的に許容される溶媒」は、「栄養補助的に許容される溶媒」を含むと解釈することができるが、その逆は必ずしも成り立たない。本明細書に記載される組成物は、「栄養補助食品(nutraceuticals)」または「栄養補助食品(dietary supplements)」と呼ぶことができ、これらの用語は、同じ意味で使用することができる。「医薬品」は、「栄養補助食品(nutraceutical)」を含むことができ、「栄養補助食品(nutraceutical)」は、「栄養補助食品(dietary supplement)」を含むことができるが、「栄養補助食品(dietary supplement)」と「栄養補助食品(nutraceutical)」はどちらも「医薬品」とすることはできない。栄養補助食品(nutraceuticals)および栄養補助食品(dietary supplements)を記載する場合、これらの用語は、当業者が理解するように、および米国食品医薬品局のガイドラインを考慮して解釈されるべきである。本明細書に記載される栄養補助食品(nutraceutical)および栄養補助食品(dietary supplement)組成物は、一般に安全と認められる(GRAS)と定義される成分(ingredients)または成分(components)を含むこともできる。
【0061】
より簡潔に記載するために、ここに示した定量的表現のいくつかは、用語「約」では修正されない。「約」という用語が明瞭に使用されるかどうかに関わらず、ここに示したあらゆる量が、実際の所定値を指すことを意味し、また、そのような所定値の実験条件および/または測定条件による近似を含めて、当業者により合理的に推測されることになるそのような所定値の近似を指すことも意味することを理解されたい。
【0062】
合成法は、高純度MgPic組成物を調製するために必要な薬学的に許容される溶媒量を最小にする試みで開発された。そのような薬学的に許容されるビオチン用の溶媒は、調製全体で薬学的に許容される溶媒を使用できるように、MgPicの溶液と相溶性であることが好ましいであろう。
【0063】
意外にも、MgPic組成物は、吸湿性ではなく、露光時にも安定であった。組成物は、25℃/相対湿度40%、ならびに40℃/相対湿度75%での貯蔵時にも安定であった。
【0064】
本発明は、ここに記載されるMgPic組成物が、ここに含まれる実験で記載されるような投与の後により多くのマグネシウムおよびピコリン酸を意外にも提供するという驚くべき発見に少なくとも部分的には基づく。したがって、いくつかの側面では、MgPic組成物は、他の既知の組成物と比較して、マグネシウムおよびピコリン酸のバイオアベイラビリティを増加させる。任意特定の仮説や理論に拘泥するものではないが、本明細書で開示される組成物は、生理的pHでのその水溶性のため、より多くのマグネシウムおよびピコリン酸を意外にも提供すると考えられる。したがって、いくつかの側面では、本開示の組成物は、従来の組成物に比べよりバイオアベイラブルなマグネシウムおよびピコリン酸を提供する。
【0065】
よりバイオアベイラブルなマグネシウムを送達することができる組成物は、従来の組成物および調合物よりも少ない総マグネシウムの量を有する組成物を生じるであろう。このようにして、製造コストは、低下する可能性があり、対象はより多くのマグネシウムを有する組成物と同等の効能を実現するためにより少量のマグネシウムを含む組成物を投与されるであろう。
【0066】
よりバイオアベイラブルなピコリン酸またはその塩を送達することができる組成物は、従来の組成物および製剤よりも少ない量の総ピコリン酸を有する組成物を生じる可能性がある。このようにして、製造コストは減少する可能性があり、対象により少ない量のピコリン酸を含む組成物を投与して、より多くのピコリン酸を有する組成物と似た効能を実現することができる。
【0067】
よりバイオアベイラブルなマグネシウムおよびよりバイオアベイラブルなピコリン酸またはその塩を送達することができる組成物は、従来の組成物および製剤よりも少ない量の総ピコリン酸、および少ない量の総マグネシウムを有する組成物を生じる可能性がある。このようにして、製造コストは減少する可能性があり、対象により少ない量のピコリン酸およびマグネシウムを含む組成物を投与して、より多くのピコリン酸およびより多くのマグネシウムを有する組成物と似た効能を実現することができる。
【0068】
ここに開示した1つ以上の組成物の投与は、ここに記載した投与の方法または当業者に公知の送達方法のいずれかによることができる。組成物を、非経口栄養、例えば、栄養チューブにより、静脈内に、または局所的に、および他の公知の手段により経口で投与するであろう。
【0069】
経口投与では、ここに開示した組成物は、錠剤、水性または油性懸濁液、分散性粉末または顆粒物、エマルション、ハードまたはソフトカプセル、シロップ、エリキシル、または飲料として提供することができる。固形投与形態、例えば錠剤およびカプセルは、腸溶コーティングを含むであろう。経口使用を意図した組成物は、薬学的に許容される組成物を製造するための当該技術分野で公知の任意の方法により調製することができ、そのような組成物は、1つ以上の以下の薬剤:甘味料、矯味剤、着色剤、コーティング、および防腐剤を含むであろう。甘味剤および矯味剤は、調製品の嗜好性を増加することになる。錠剤製造に適した非毒性で薬学的に許容される賦形剤と混合した錯体を含有する錠剤は許容される。製薬学的に許容されるビヒクル、例えば賦形剤は、調合物の他の成分と相溶性である(ならびに、患者に非傷害性である)。そのような賦形剤は、不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム;顆粒および崩壊剤、例えばコーンスターチまたはアルギン酸;結合剤、例えばスターチ、ゼラチンまたはアカシア;および滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクを含む。錠剤は、消化管での崩壊および吸収を遅らせるために公知の技法により素錠またはコーティング錠とすることができ、それによって持続作用を長時間にわたり提供する。例えば、徐放化物質、例えばモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルは単独でまたはワックスとともに使用することができる。
【0070】
経口使用用の調合物を、ハードゼラチンまたは非ゼラチンカプセルとしても提供することができ、この場合、有効成分を、不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合し、またはソフトゼラチンカプセルとしても提供することができ、この場合、有効成分を、水または油性媒体、例えば落花生油、流動パラフィンまたはオリーブ油と混合する。水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合した本発明の錯体を含むであろう。そのような賦形剤は、懸濁剤、分散剤または湿潤剤、1つ以上の防腐剤、1つ以上の着色剤、1つ以上の矯味剤および1つ以上の甘味剤、例えばスクロースまたはサッカリンを含む。
【0071】
油性懸濁液は、有効成分を植物油、例えばアラキス油、オリーブ油、ゴマ油またはココナッツ油に、または鉱油、例えば、流動パラフィンに懸濁することにより配合することができる。油性懸濁液は、増粘剤、例えば蜜ろう、硬質パラフィンまたはセチルアルコールを含有することができる。甘味剤、例えば、上記で記載したもの、および矯味剤は、味の良い経口剤を提供するために添加することができる。これらの組成物は、添加される酸化防止剤、例えばアスコルビン酸により保存することができる。水の添加による水性懸濁液の調製に適した本発明の分散性粉末および顆粒物は、分散剤または湿潤剤、懸濁剤、および1つ以上の防腐剤と混合した有効成分を提供する。追加の賦形剤、例えば甘味剤、矯味剤および着色剤も用いることができる。
【0072】
シロップおよびエリキシルを、甘味剤、例えば、グリセロール、ソルビトールまたはスクロースと配合することができる。そのような調合物は、粘滑薬、防腐剤、矯味剤または着色剤を含有することもできる。
【0073】
非経口投与用の組成物は、滅菌した注射用の調製品、例えば、滅菌した注射用の水性または油性懸濁液の形態とすることができる。この懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用する当該技術分野で周知の方法により配合することができる。滅菌した注射用の調製品は、非毒性で非経口可能な希釈剤または溶媒中の滅菌した注射用の溶液または懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液とすることもできる。適切な希釈剤は、例えば、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液を含む。さらに、従来、滅菌した不揮発性油を溶媒または懸濁媒体として使用することができる。この目的のため、合成モノまたはジグリセリドを含む任意の無刺激不揮発性油を使用することができる。さらに、脂肪酸、例えば、オレイン酸は、注射用の調製品の調製で同様に使用することができる。
【0074】
前記量の化合物をキャリア材料と組み合わせて、単一の投与形態を製造することができることを理解されたい。そのような形態は、治療されるホストおよび投与の特定の様式に依存して変化することになる。
【0075】
哺乳類、例えば、獣医学的使用あるいは家畜の改良のための動物、または治療的使用のためのヒトに投与される場合、ここで開示される組成物は、単離した形態で、または治療組成物中の単離した形態として投与することができる。ここでは、「単離」は、ここで開示される組成物が、(a)天然資源、例えば、植物または細胞または食品、好ましくは細菌培養物、または(b)合成有機化学反応混合物のどちらかの他の成分から分離されることを意味する。好ましくは、ここで開示される組成物は、従来技術により精製される。ここでは、「精製」は、単離した場合、単離物が、少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%の組成物を含むことを意味する。
【0076】
いくつかの側面では、MgPicを動物用に設計された食品に添加するであろう。例えば、化合物または組成物は、ペットフードまたはビスケット、例えば、犬用ビスケットまたはキャットフードに添加および/または含まれるであろう。
【0077】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合した、ここに開示した化合物を含有するであろう。そのような賦形剤は、懸濁剤、分散剤または湿潤剤、1つ以上の防腐剤、1つ以上の着色剤、1つ以上の矯味剤および1つ以上の甘味剤、例えばスクロースまたはサッカリンを含む。
【0078】
徐放性ビヒクルは、製剤科学の当業者に周知である。当該技術分野の技術および製品は、徐放性(controlled release)、徐放性(sustained release)、持続作用(prolonged action)、デポ(depot)、レポジトリ(repository)、遅延作用(delayed action)、遅延放出(retarded release)および持続放出(timed release)と様々に呼ばれる;単語「徐放性」は、ここでは前述の技術の各々を組み込むものである。
【0079】
生分解性または生物浸食性ポリマー、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、および再生コラーゲンを含む、数多くの徐放性ビヒクルが公知である。公知の徐放性薬物送達装置は、クリーム、ローション、錠剤、カプセル、ゲル、ミクロスフェア、リポソーム、眼球インサート、ミニポンプ、および他の輸液器具、例えば、ポンプおよびシリンジを含む。
有効成分がゆっくり放出される、埋め込み型または注射用のポリマーマトリックス、および経皮製剤も周知であり、開示される方法で使用することができる。
【0080】
徐放性調製は、MgPicと錯体を形成、または吸収するポリマーを使用することにより実施することができる。制御送達は、適切な高分子、例えばポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルピロリドン、エチレン酢酸ビニル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、および硫酸プロタミンを選択することにより実施することができ、これらの高分子の濃度ならびに組み込む方法を、活性な錯体の放出を制御するために選択する。
【0081】
活性な錯体の徐放は、いずれかの徐放性(extended release)投与形態を意味することができる。以下の用語は、本開示の目的では、徐放性と実質的に等価と考えることができる:連続放出(continuous release)、徐放性(controlled release)、遅延放出(delayed release)、デポ(depot)、漸進的放出(gradual release)、長期放出(long term release)、プログラム放出(programmed release)、持続放出(prolonged release)、プログラム放出(programmed release)、比例的放出(proportionate release)、持続放出(protracted release)、レポジトリ(repository)、遅延(retard)、持続放出(slow release)、間隔を空けた放出(spaced release)、徐放性(sustained release)、タイムコート(time coat)、持続放出(time release)、遅延作用(delayed action)、持続作用(extended action)、間隔を空けた作用(layered time action)、長時間作用(long acting)、持続作用(prolonged action)、持続作用投与(sustained action medications)および徐放性(extended release)、消化管および腸内のpHレベルに関する放出、分子の分解ならびに吸収およびバイオアベイラビリティ基準。
【0082】
親水性モノオレフィンモノマー、例えば、エチレングリコールメタクリレートの共重合によりヒドロゲルを調製することができ、ヒドロゲルでは、MgPicが水性成分に溶解して経時的に徐々に放出する。MgPicがキャリア材料のマトリックスに分散しているマトリックスデバイスを使用することができる。担体は、多孔質、非多孔質、固体、半固体、透過性または非透過性とすることができる。あるいは、速度制御膜により囲まれるピコリン酸マグネシウムの中央リザーバを含む装置を、錯体の放出を制御するために使用することができる。速度制御膜は、エチレン-酢酸ビニルコポリマーまたはブチレンテレフタレート/ポリテトラメチレンエーテルテレフタレートを含む。シリコンゴムデポの使用も考えられる。
【0083】
徐放性経口調合物も周知である。一態様では、活性な錯体を、可溶性または浸食性マトリックス、例えば、丸薬またはトローチに組み込む。別の例では、経口調合物は、舌下投与用に使用される液体とすることができる。これらの液体の組成物は、ゲルまたはペーストの形態とすることもできる。親水性ガム、例えばヒドロキシメチルセルロースが、一般的に用いられる。滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはステアリン酸カルシウムは、錠剤化プロセスを手助けするために使用することができる。
【0084】
ピコリン酸マグネシウムは、軟膏、クリーム、ローション、軟膏剤、シャンプー、溶液、またはエマルションを含めて、局所的に送達することもできる。
【0085】
ここに開示した特定の障害または状態の治療で有効となる錯体の量は、障害または状態の性質に依存し、標準臨床技術により決定することができる。さらに、in vitroまたはin vivo分析は、最適な投薬量範囲を同定する手助けのために任意に使用することができる。
【0086】
組成物を、1日当たり1回、2回、または3回投与することができる。いくつかの側面では、組成物を、1日4回投与する。例えば、組成物を、食前、食後、食事中に投与してもよい。経口投与用の投薬を、毎日の単回投与、または1日おきの単回投与、または最初の投与から72時間以内の単回投与、または1日を通して複数回の間隔を空けた投与を求めるレジメンで行ってもよい。療法を構成する活性薬剤を、同時に、組合せの投与形態か、実質的に同時の経口投与を意図した別々の投与形態のどちらかで投与してもよい。療法を構成する活性薬剤を、2段階摂取を求めるレジメンにより投与されるどちらかの活性成分を用い、順次投与してもよい。したがって、レジメンは、別々の活性薬剤の間隔を空けた摂取を伴う、活性薬剤の連続投与を求めてもよい。複数の摂取の間の時間は、各活性薬剤の諸特性、例えば、薬剤の効能、溶解度、バイオアベイラビリティ、プラズマ半減期および動態プロファイルに依存して、ならびに患者の年齢および状態に依存して、数分間から約72時間もの長時間までの範囲であろう。療法の活性薬剤を、同時に、実質的に同時に、または順次投与するかに関わらず、経口経路による1つの活性薬剤および静脈内経路による他の活性薬剤の投与を求めるレジメンを含むことができる。療法の活性薬剤を経口または静脈内経路により、別々にまたは一緒に投与するかに関わらず、そのような活性薬剤を各々、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または他の調合物成分の適切な薬剤調合物に含ませることになる。
【0087】
有効成分(すなわち、MgPicおよび他の存在し得る医薬品成分または補充成分)を、固形投与形態、例えば錠剤、カプセル、および粉末で、または液体の投与形態、例えばエリキシル、シロップ、および懸濁液で経口経路により投与することができる。各有効成分を、液体の投与形態で非経口経路により投与することができる。薬剤組成物は、好ましくは、特定の量の各有効成分を含有する投与単位の形態で作製される。本出願の組成物の最も好ましい経口投与形態の1つは、サッシェ内に含まれる粉末の混合物である。本出願の組成物は、吸湿性ではなく、嫌な味または臭いを有しないので、本出願の組成物を含む粉末の混合物は、使い易さを高め、毎日投与レジメンに対する高レベルのコンプライアンスを得る助けとなるように、食品上に振りかけることができ、または飲料に入れ撹拌することができる。
【0088】
一般に、本出願の組成物の医薬品投与形態を、この分野の標準参照であるRemingtonのPharmaceutical Sciences,Gennaro AR,Ed.Remington:The Science and Practice of Pharmacy.20th Edition.Baltimore:Lippincott,Williams & Williams,(2000)に記載されるような、従来の技法により調製することができる。治療目的では、通常、この組合せ療法適用の活性成分を、指示される投与経路に適切な1つ以上のアジュバントと組み合わせる。便利な投与量のために、成分をラクトース、スクロース、スターチ粉末、アルカン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ゼラチン、アカシアガム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、および/またはポリビニルアルコールと混合し、次いで錠剤にしまたは被包することができる。そのようなカプセルまたは錠剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース中の活性化合物分散系として提供されるであろう、徐放性調合物を含有してもよい。固形投与形態は、薬剤を数時間かけて連続で放出するために徐放性製品として製造することができる。圧縮錠剤を、あらゆる嫌な味を隠すために、および錠剤を雰囲気から保護するために、糖衣コーティングまたはフィルムコーティングすることができ、または消化管での選択的崩壊のために腸溶性にすることができる。固体および液体の経口投与形態はどちらも、患者の受容を高めるために、着色剤および矯味剤を含有することができる。他のアジュバントおよび投与様式は、薬学分野で周知および広く公知である。
【0089】
本発明を、簡潔さおよび理解の目的である程度詳細に記載したが、本発明の真の範囲から逸脱することなく様々な形態および詳細について改変を実施することができることを理解されたい。
【実施例
【0090】
例1
Swiderskiによるピコリン酸マグネシウムの調製の試み
Swiderskiによれば、MgPicは、硫酸マグネシウムとピコリン酸バリウムとの交換反応により調製することができる。したがって、ピコリン酸バリウムの溶液は、2mol当量のピコリン酸および1mol当量の水酸化バリウムを水100mLに溶解して調製した。ピコリン酸バリウムの透明溶液が得られたときに、1mol当量の硫酸マグネシウム粉末を添加した。12時間撹拌後、スラリーをろ過して固体の硫酸バリウムを除去し、ろ液を濃縮乾固し、得られる固体を120℃で24時間乾燥して、無水MgPicを得た。無水MgPic中のバリウム濃度は、200ppm超であることが分かった。これは、バリウム汚染の薬物耐性約200ppmをはるかに超えている。バリウム汚染のレベルを低減する試みとして溶解および結晶化を繰り返した結果、ほぼ50%のMgPicが消失し、バリウム汚染は許容される微量濃度まで下がらなかった。
【0091】
例2
結晶質および非晶質ピコリン酸マグネシウムの調製A
ピコリン酸(3.7g、30mmol)および酢酸マグネシウム四水和物(3.2g、15mmol)を水25mLに懸濁した。スラリーを撹拌し、一晩加熱還流し、次いでろ過して、結晶質MgPic1.7グラムを単離した。残りのろ液を冷却し、蒸発乾固して、微量の残留酢酸塩を有する2.2グラムの非晶質MgPicをさらに得た。固体をエタノールで洗浄することにより酢酸塩を除去して、総収率96%のMgPic(結晶質および非晶質)を得た。生成物のH-NMRスペクトル(図2)は、金属ピコリン酸塩のスペクトルと一致した。生成物は、水に易溶であり、MgPicの透明で無色の溶液が得られた。生成物は、各評価元素について200ppm未満の許容される微量濃度のバリウムおよび他の重金属を含有した。したがって、MgPic組成物の態様は、約200ppm未満のバリウムおよび/または他の重金属を含むであろう。いくつかの態様では、これらの組成物は、約150未満、約100未満、50未満、または20ppm未満のバリウムおよび/または他の重金属を含むであろう。
【0092】
例3
結晶質ピコリン酸マグネシウムの調製B
ピコリン酸(1.23g、10mmol)をエタノール25mLに添加し、完全な溶解が観察されるまで室温で撹拌した。マグネシウムエトキシド(560mg、4.9mmol)を添加し、スラリーを80℃に加熱した。透明溶液が得られるまで水を滴下した。溶液を熱時ろ過し、室温まで冷却し、一晩4℃に保った。得られる白色結晶をろ過により単離し、エタノールで洗浄し、風乾して、結晶質MgPic1.1グラム(収率85%)を得た。生成物のH-NMRスペクトル(図3)は、金属ピコリン酸塩のスペクトルと一致した。生成物は、各評価元素について200ppm未満の許容される微量濃度のバリウムおよび他の重金属を含有した。
【0093】
例4
ピコリン酸マグネシウム(水和物および無水物)の大規模調製C
ピコリン酸(12.3g、100mmol)をエタノール235mLに添加し、完全な溶解が観察されるまで反応混合物を室温で撹拌した。マグネシウムエトキシド(6.3g、55mmol)を添加し、スラリーを80℃に加熱した。透明溶液が得られるまで水を滴下した。溶液を熱時ろ過し、室温まで冷却し、次いで一晩4℃に保った。
【0094】
得られた固体をろ過により単離し、エタノールで洗浄し、風乾して、MgPic水和物14.5グラムを得た。固体を108℃で2.5時間乾燥して、無水MgPic10.8グラム(収率81%)を得た。生成物のH-NMRスペクトルは、例2~3で得られるMgPicのスペクトルと一致した。生成物は、各評価元素について200ppm未満の許容される微量濃度のバリウムおよび他の重金属を含有した。
【0095】
例5
ピコリン酸マグネシウムの安定性
本発明のピコリン酸マグネシウム組成物は、室温での貯蔵時に安定であった。非晶質の固体は、重量測定で吸湿性ではなく、相対湿度40%および25℃で60日後に、および相対湿度75%および40℃で30日後に、劣化の兆候は見られなかった。非晶質の固体は、露光により色は変化しなかった。
【0096】
結晶質固体は、重量測定では吸湿性でなく、相対湿度40%および25℃での60日間後、および相対湿度75%および40℃での30日間後に劣化の兆候はなかった。結晶質固体は、露光により変色しなかった。
【0097】
例6
マグネシウムおよびピコリン酸の血清濃度
二重盲検臨床試験では、対象30人を2つのグループ(n=15)に分ける。対照群に、ピコリン酸916mgおよびマグネシウム90mgを含有するサプリメントを投与する。試験群に、ピコリン酸マグネシウム500mg(マグネシウム46mgおよびピコリン酸454mg)、または対照群のピコリン酸およびマグネシウムの総用量の半分を含有するサプリメントを投与する。ピコリン酸の血清濃度(ng/mL)およびマグネシウムの血清濃度(ng/mL)を1時間、4時間、6時間、および8時間で測定する。試験群の平均血清マグネシウム濃度は、各時点で対照群の80-120%である。試験群の平均血清ピコリン酸濃度は、各時点で対照群の80-120%である。したがって、ピコリン酸マグネシウムは、マグネシウムおよびピコリン酸のみの場合の2倍用量に比べて、80-120%のバイオアベイラブルなマグネシウム、および80-120%のバイオアベイラブルなピコリン酸を提供する。
【0098】
例7
マグネシウムおよびピコリン酸の脳脊髄液(CSF)濃度
二重盲検臨床試験では、対象30人を2つのグループ(n=15)に分ける。対照群に、ピコリン酸916mgおよびマグネシウム90mgを含有するサプリメントを投与する。試験群に、ピコリン酸マグネシウム500mg(マグネシウム46mgおよびピコリン酸454mg)、または対照群のピコリン酸およびマグネシウムの総用量の半分を含有するサプリメントを投与する。ピコリン酸のCSF濃度(ng/mL)およびマグネシウムの血清濃度(ng/mL)を脊椎穿刺により4時間および8時間で測定する。試験群の平均CSFマグネシウム濃度は、各時点で対照群の80-120%である。試験群の平均CSFピコリン酸濃度は、各時点で対照群の80-120%である。したがって、ピコリン酸マグネシウムは、マグネシウムおよびピコリン酸のみの場合の2倍用量に比べて、80-120%のマグネシウムの脳透過性、および80-120%のピコリン酸の脳透過性を提供する。
【0099】
例8
マグネシウムおよびピコリン酸CmaxおよびTmax
二重盲検臨床試験では、対象30人を2つのグループ(n=15)に分ける。対照群に、ピコリン酸916mgおよびマグネシウム90mgを含有するサプリメントを投与する。試験群に、ピコリン酸マグネシウム500mg(マグネシウム46mgおよびピコリン酸454mg)、または対照群のピコリン酸およびマグネシウムの総用量の半分を含有するサプリメントを投与する。マグネシウムおよびピコリン酸のCmax(ng/mL)およびTmax(分間)を各対象で測定する。試験群の平均マグネシウムおよびピコリン酸Cmaxは、各時点で対照群の80-120%である。したがって、ピコリン酸マグネシウムは、マグネシウムのみの場合の2倍用量に比べて、またはピコリン酸のみの場合の2倍用量に比べて、80-120%の最大血清マグネシウムおよびピコリン酸濃度を提供する。試験群の平均マグネシウムおよびピコリン酸Tmaxは、各時点で対照群の50-80%である。したがって、ピコリン酸マグネシウムは、マグネシウムのみの場合の2倍用量に比べて、またはピコリン酸のみの場合の2倍用量に比べて、50-80%の時間で、バイオアベイラブルなマグネシウムおよびピコリン酸最大量を送達する。
【0100】
例9
マグネシウムおよびピコリン酸AUC0→∞
二重盲検臨床試験では、対象30人を2つのグループ(n=15)に分ける。対照群にピコリン酸916mgおよびマグネシウム90mgを含有するサプリメントを投与する。試験群に、ピコリン酸マグネシウム500mg(マグネシウム46mgおよびピコリン酸454mg)、または対照群のピコリン酸およびマグネシウムの総用量の半分を含有するサプリメントを投与する。マグネシウムおよびピコリン酸AUC0→∞(ng・h/mL)を各対象で測定する。試験群の平均マグネシウムおよびピコリン酸AUC0→∞は、各時点で対照群の80-120%である。したがって、ピコリン酸マグネシウムは、マグネシウムのみの場合の2倍用量またはピコリン酸のみの場合の2倍用量に比べて、バイオアベイラブルなマグネシウムおよびピコリン酸の最大量の80-120%を提供する。
【0101】
例10
ピコリン酸マグネシウム徐放性
二重盲検臨床試験では、対象30人を2つのグループ(n=15)に分ける。対照群に、ピコリン酸916mgおよびマグネシウム90mgを含有する腸溶性である多層錠剤を投与する。被験者群に、ピコリン酸マグネシウム500mg(マグネシウム46mgおよびピコリン酸454mg)、または対照群のピコリン酸およびマグネシウムの総用量の半分を含有する腸溶性である多層錠剤を投与する。
【0102】
マグネシウムおよびピコリン酸のCmax(ng/mL)、Tmax(分間)、およびAUC0→∞(ng・h/mL)を各対象で測定する。Cmax、Tmax、およびAUC0→∞の値は、マグネシウムおよびピコリン酸の血清濃度の第一のピーク、次に比較的一定な血液血清濃度の第一のプラトー、次にマグネシウムおよびピコリン酸の血清濃度の第二のピーク、次に比較的一定な血液血清濃度の第二のプラトーを示す。いずれの場合も、平均マグネシウムおよびピコリン酸CmaxおよびAUC0→∞は、各時点で対照群の80-120%であり、平均Tmaxは各時点で対照群の50-80%である。
【0103】
したがって、多層腸溶性であるピコリン酸マグネシウム製剤は、ピコリン酸のみの場合の2倍用量に比べて、50-80%%の時間で80-120%の最大血清ピコリン酸濃度および80-120%のバイオアベイラブルなピコリン酸最大量を送達することができる。多層腸溶性であるピコリン酸マグネシウム製剤は、マグネシウムのみの場合の2倍用量に比べて、50-80%%の時間で80-120%の最大血清マグネシウム濃度および80-120%のバイオアベイラブルなマグネシウム最大量を送達することもできる。
【0104】
例11
ピコリン酸マグネシウムのラットへの投与。
治療アーム当たり7匹の雄のWistarラット(年齢:8週、体重:180±20g)を12:12時間昼夜サイクル、22℃の制御環境で飼育し、ラットの食事および水を適宜与えた。7日間の順応期間後に、動物を以下のグループにランダムに分けた。
【0105】
1.対照(処理なし);
2.対照+MgO(500mgMg元素/kg食餌)、
3.対照+MgPic(500mgMg元素/kg食餌)、
4.HFD(高脂肪食餌を給餌);
5.HFD+MgO(500mgMg元素/kg食餌)、
6.HFD+MgPic(500mgMg元素/kg食餌)。
【0106】
投与したMgPicは、本明細書に記載される本発明の方法により調製した。すべての処理は、8週間、1日当たりの経口サプリメントとして毎日投与した。投薬量を選択した理由は、従来の研究が、当業者に公知の方法を使用してラットにおけるこの投薬量の効果を示したからである。ラットは、処理期間の間、いくつかの研究プロトコールに従いラットを処理した。
【0107】
実験室分析-処理期間後に、グルコース、インスリン、内臓脂肪、マグネシウム、およびレプチン濃度を決定するため、血漿を抽出し、使用した。この分析は、自動分析器(Samsung)を用いて実施した。脳抗酸化酵素カタラーゼ(CAT)およびグルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)は、市販の分析キット(CaymanChemical、AnnArbor、MI、USA)を使用し、製造業者の指示に従い測定した。図4は、これらの試験の結果を示し、従来技術の組成物と比べて優れた結果を示し、ピコリン酸マグネシウムの投与と酸化マグネシウムの投与の比較を示す(対照群は、標準飼料を与えられたラットから構成された)。図4A-4Cは、血清、肝臓、および脳の試料で測定した、実質的に改善したマグネシウム濃度を示し、ラット組織でのマグネシウムの吸収が意外にも改善したことを示す。図4D-4Eは、対照の試験片と酸化マグネシウムを与えられたものの両方と比較して、ピコリン酸マグネシウムを投与されたラットで測定したグルコースおよびインスリンの量の減少を示す。図4Fは、酸化マグネシウムの投与と比較して、ピコリン酸マグネシウムの投与で実現した内臓脂肪の意外にも改善した減少を示す。図4Gは、酸化マグネシウムの投与と比較して、ピコリン酸マグネシウムの投与で実現したレプチン分泌の意外にも優れた減少を示す。
【0108】
モーリス水迷路-当業者に公知の方法に従い水迷路試験を実施した。水迷路は、ラットを対比させるために毒性を示さない黒い染料を用いて着色済みの、水(温度:24±2℃)を有する大きな黒色の円形プール(直径160cm)で実施した。直径12cmの黒色の丸いプラットフォームを水面から1.5cm下に置いた。すべてのラットを毎日の水迷路試行の1時間前に水迷路室に入れた。ラットに、隠されたプラットフォームを見つけるために60秒間の最大時間を与え、30秒間プラットフォーム上に留まらせた。60秒間以内にプラットフォームを見つけられなければ、ラットをプラットフォーム上に着地するように導いた。ラットに、連続6日間、1日当たり4試行のセッションを毎日実施した。隠されたプラットフォームを探す際のスイミング経路および待ち時間(latency)を各試行で記録した。7日目に、プラットフォームを除去して、象限に達するのに要した時間および標的象限を横断した回数を評価した。図5は、隠されたプラットフォームを有する象限に達するのに各グループが要した時間を示す。図5で分かるように、ピコリン酸マグネシウムを投与すると、高脂肪食餌を給餌したラットおよび対照食餌を給餌したラットの両方で記憶機能が改善した。高脂肪食餌を給餌されたラットは、記憶機能が低下することに留意されたい。したがって、図5は、対象にピコリン酸マグネシウムを投与した場合の優れた記憶の改善(記憶機能が低下した集団および記憶機能が低下していない集団で)を意外にも示す。図6も、酸化マグネシウムを投与したラットと比較して、高脂肪食餌を給餌したラットにピコリン酸マグネシウムを投与した場合に実現する改善を示す(図6の「対照」は、高脂肪食餌を給餌したラットである)。
【0109】
原子吸光分析-処理期間後に分析のため、ラットの血清、肝臓、脳を除去し、大脳皮質および海馬を解剖した。原子吸光分析(AAS)を使用する分析まで、組織を-70℃で保存した。組織を37℃のインキュベーターに入れ、乾燥重量が一定になるまで約24時間放置した。その後、乾燥組織を秤量し、ガラス遠心分離管の濃硝酸中で60℃で1時間消化し、分析前に蒸留した脱イオン水を用いて1:10に希釈した。すべての試料を加工して、透明な消化物を作製し、各試料の総マグネシウムを、確立され、十分に検証された方法を使用してフレームAAS(PerkinElmer)により測定した。図7Aは、酸化マグネシウムと比較してピコリン酸マグネシウムを投与した場合に実現した、脳抗酸化酵素(CAT)活性を増加する優れた改善を示す。図7Bは、酸化マグネシウムと比較してピコリン酸マグネシウムを投与した場合に実現した、脳抗酸化酵素(GSH-Px)活性を増加する優れた改善を示す。図7Aおよび7Bで言及した対照グループには、標準飼料を給餌した。
【0110】
例12
塩化マグネシウムからのmgpicの調製
ピコリン酸を室温で水に溶解した。溶解直後に、1.00当量の12.4%NaOH水溶液を冷却しながら5分間かけて添加した。塩化マグネシウム六水和物(0.50当量)を水に溶解し、ろ過し、25℃のピコリン酸ナトリウム溶液に撹拌しながら5分間かけて添加した。白色の沈殿が生じた。懸濁液を70℃で1時間加熱し(混合物は懸濁液のままであった)、17℃に冷却し、ろ過した。ろ過ケーキを水で洗浄し、真空下80~100℃で乾燥した。収量は約93%であり、約3%のピコリン酸マグネシウムがろ液に含まれていた。
【0111】
例13
酸化マグネシウムからのMgPicの調製
ピコリン酸および酸化マグネシウム(0.5当量)を水に添加し、白色で撹拌可能なスラリーが得られた。スラリーを95-100℃で3時間加熱し、水をさらに添加し、初期の水量の3倍にした[注意:手順は酸化マグネシウムを使用する関連マグネシウム塩の調製に基づいており、初期のスラリーは、80-90℃で完全に溶解した。この溶解は、ピコリン酸マグネシウムでは起こらなかった]。一晩冷却後、混合物を21℃でろ過し、ろ過ケーキは水を用いて洗浄し、真空下80~100℃で乾燥した。収量は、約89%であり、約6%のピコリン酸マグネシウムがろ液に含まれていた。ピコリン酸マグネシウムは、エタノール/水に可溶性であり、したがって、材料中において、さらに、エタノールに溶解し、ろ過し、水を用い析出させることができる。得られた生成物の塩化ナトリウム含量は、リスラリー(reslurries)なしで0.6%であった。
【0112】
上記の記述は、本発明のいくつかの方法および材料を開示している。本発明には、方法および材料の改変、ならびに製造方法および装置の変更の余地がある。そのような改変は、本開示またはここに開示した本発明の実施を考慮すると当業者に明らかとなるであろう。したがって、本発明は、ここに開示した特定の態様に限定されるものではなく、本発明の真の範囲および趣旨内から生じるすべての改変および代替物を網羅する。
【0113】
本出願の要素またはその好ましい態様を導入する際に、冠詞「a」「an」「the」および「said」は、1つ以上の要素があることを意味するものとする。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」は、包括的であり、列挙された要素以外のさらなる要素があり得ることを意味するものである。
【0114】
さらなる加工なしに、上記の記述を使用して、当業者は本出願を最大に利用することができると考えられる。したがって、特定の態様は、単に例示的であり、どんなものであれ、本開示の残りの部分について限定的ではないと解釈されるべきである。透明性および理解の目的のため、ある程度詳細に本出願を記述したが、本出願の真の範囲から逸脱することなく、様々な形態および詳細の改変を実施できることを理解されたい。
【0115】
これに限定されないが、出版および未出版の出願、特許、および参考文献を含む、ここで引用されるすべての参照は、参照によりその全体をここに組み込み、それにより本明細書の一部となる。参照により組み込む刊行物および特許または特許出願が、本明細書に含有される開示と矛盾する程度まで、本明細書は、任意のそのような矛盾する資料に対し優先(supersede)および/または優先(take precedence over)するものである。
以下に、本願の出願当初の請求項を実施の態様として付記する。
[1]
医薬品品質ピコリン酸マグネシウムおよび薬学的に許容されるビヒクル、担体、または希釈剤を含む組成物。
[2]
前記組成物が固体組成物である、[1]に記載の組成物。
[3]
前記組成物が、徐放性マトリックスを含む、[1]~[2]のいずれかに記載の組成物。
[4]
前記組成物が、腸溶性である、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]
前記組成物が、約10mg~約1、000mgのマグネシウムを含む、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]
前記組成物が、カドミウム、水銀、鉛、ニッケル、ヒ素、コバルト、アンチモン、タリウム、バリウム、銀、セレニウム、銅、亜鉛、マンガン、ストロンチウム、または前記の組み合わせからなる群から選択される200ppm以下の任意の重金属を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]
前記組成物が、代謝機能を改善するために使用される、[1]に記載の組成物。
[8]
前記組成物が、記憶を改善するために使用される、[1]に記載の組成物。
[9]
前記組成物が、約200mg未満のバリウムを含む、[1]に記載の組成物。
[10]
前記組成物が、約200mg未満のバリウムおよび他の重金属を含む、[1]に記載の組成物。
[11]
前記組成物が、約100mg未満のバリウムおよび他の重金属を含む、[1]に記載の組成物。
[12]
前記組成物が、脳マグネシウム濃度を高めるために使用される、[1]に記載の組成物。
[13]
前記組成物が、肝臓マグネシウム濃度を高めるために使用される、[1]に記載の組成物。
[14]
前記組成物が、血清マグネシウム濃度を高めるために使用される、[1]に記載の組成物。
[15]
マグネシウム欠乏症を有する、または発症するリスクがあると知られる哺乳類のマグネシウム欠乏症を伴う疾患、障害、または状態を治療または防止する方法であって、前記哺乳類のマグネシウム欠乏症を伴う疾患、障害、または状態を治療または防止するために有効な量の医薬品品質ピコリン酸マグネシウムを投与することを含む方法。
[16]
前記疾患、障害、または状態が、認知状態である、[7]に記載の方法。
[17]
前記認知状態が、アルツハイマー病、片頭痛、脳卒中、うつ病、パーキンソン病、統合失調症、外傷性脳損傷、外傷後ストレス障害、ハンチントン病、または前記の組み合わせからなる群から選択される、[8]に記載の方法。
[18]
前記疾患、障害、または状態が、線維筋痛症、切断後幻肢痛、神経障害による痛み、興奮性亢進、疲労、食欲不振、痙攣、筋振戦、筋痙攣、テタニー、筋力低下、線維束性収縮、不眠症、混乱、易刺激性、高血圧、骨粗鬆症、糖尿病、冠動脈心疾患、慢性炎症、子癇前症、心筋梗塞、喘息、腎疾患、バーター症候群、ギテルマン症候群、ループ利尿薬の長期投与、サイアザイド系利尿剤の長期投与、シスプラチンの投与、アミノグリコシドの投与、シクロスポリンの投与、アルコール中毒、プロトンポンプ阻害薬の長期使用、または前記の組み合わせからなる群から選択される、[7]に記載の方法。
[19]
投与するピコリン酸マグネシウムの前記量が、1日当たり約10mg~約1,000mgである、[7]~[10]のいずれかに記載の方法。
[20]
前記ピコリン酸マグネシウムを、経口投与する、[7]~[11]のいずれかに記載の方法。
[21]
ピコリン酸および酢酸マグネシウム四水和物を溶液中で合わせること、および水を任意選択で除去することを含む、医薬品品質ピコリン酸マグネシウムを製造する方法。
[22]
前記ピコリン酸が、ピコリン酸の水溶液からなる、[13]に記載の方法。
[23]
前記酢酸マグネシウム四水和物が、酢酸マグネシウム四水和物の水溶液からなる、[13]~[14]のいずれかに記載の方法。
[24]
水を除去することをさらに含む、[13]~[15]のいずれかに記載の方法。
[25]
水を除去することが、前記混合物を加熱すること、前記混合物を真空下に置くこと、またはそれらの組み合わせを含む、[13]~[16]のいずれかに記載の方法。
[26]
前記医薬品品質ピコリン酸マグネシウムが、結晶質である、[13]~[17]のいずれかに記載の方法。
[27]
前記医薬品品質ピコリン酸マグネシウムが、非晶質である、[13]~[18]のいずれかに記載の方法。
[28]
医薬品品質ピコリン酸マグネシウムを製造する方法であって、
ピコリン酸およびマグネシウムエトキシドを溶液中で合わせること、および1つ以上の溶媒を任意選択で除去することを含み、他の重金属を除去するさらなる工程を含まない方法。
[29]
前記ピコリン酸が、ピコリン酸のエタノール性溶液からなる、[20]に記載の方法。
[30]
前記マグネシウムエトキシドが、固体である、[20]~[21]のいずれかに記載の方法。
[31]
前記マグネシウムエトキシドが、マグネシウムエトキシドのエタノール性溶液を含む、[20]~[21]のいずれかに記載の方法。
[32]
1つ以上の溶媒を除去することをさらに含む、[20]~[23]のいずれかに記載の方法。
[33]
前記1つ以上の溶媒が、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、およびt-ブタノールから独立に選択される、[20]~[24]のいずれかに記載の方法。
[34]
1つ以上の溶媒を除去することが、前記混合物を加熱すること、前記混合物を真空下に置くこと、またはそれらの組み合わせを含む、[20]~[25]のいずれかに記載の方法。
[35]
前記医薬品品質ピコリン酸マグネシウムが、結晶質である、[20]~[26]のいずれかに記載の方法。
[36]
前記医薬品品質ピコリン酸マグネシウムが、非晶質である、[20]~[26]のいずれかに記載の方法。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図5
図6
図7