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特許7547050特に金属および/またはセラミックに適用可能な成形方法および成形装置
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  • 特許-特に金属および/またはセラミックに適用可能な成形方法および成形装置 図1A
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  • 特許-特に金属および/またはセラミックに適用可能な成形方法および成形装置 図13
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】特に金属および/またはセラミックに適用可能な成形方法および成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/106 20170101AFI20240902BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20240902BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20240902BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20240902BHJP
   B29C 64/188 20170101ALI20240902BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20240902BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240902BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240902BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240902BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240902BHJP
【FI】
B29C64/106
B28B1/30
B29C64/112
B29C64/118
B29C64/188
B29C64/209
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y70/00
B33Y80/00
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2019559325
(86)(22)【出願日】2018-04-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 IL2018050475
(87)【国際公開番号】W WO2018203331
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-02-09
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-25
(31)【優先権主張番号】62/492,305
(32)【優先日】2017-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519383061
【氏名又は名称】トリトン テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TRITONE TECHNOLOGIES LTD.
【住所又は居所原語表記】12 Amal Street, Park Afek Industrial Zone, Rosh HaAyin, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベン-ツァー オフェル
(72)【発明者】
【氏名】ペレド ハガイ
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】相澤 啓祐
【審判官】土屋 知久
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-179243(JP,A)
【文献】特開2015-168135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/00-12/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形積層製品の製造方法であって、
内部スペースの外側の周囲に壁を設けるために、第1の型の3D印刷を行うことであって、前記内部スペースは前記成形積層製品の1層を画定し、前記内部スペースは高さを有し、前記高さは前記壁の高さにより画定される、3D印刷を行うことと、
鋳造材料を前記高さまで注入することにより、前記3D印刷された第1の型の前記内部スペースを充填することであって、前記壁内の前記内部スペースは前記成形積層製品の第1の層を形成する、充填することと、
前記第1の層の上に第2の内部スペースの外側の周囲に第2の壁を設けるために、第2の型の3D印刷を行うことであって、前記第2の内部スペースは前記成形積層製品の第2の層を画定し、前記第2の内部スペースは第2の高さを有し、前記第2の高さは前記第2の壁の高さにより画定される、3D印刷を行うことと、
さらなる前記鋳造材料を前記第2の高さまで注入することにより、前記第1の層の上で、前記3D印刷された第2の型の前記第2の内部スペースを充填することであって、それにより前記第1の層の上に第2の層を形成し、それにより成形積層製品を形成する、充填することと、
を含み、前記鋳造材料は、セラミックまたは金属を含むペーストを含む、方法。
【請求項2】
前記第1の層を、形成後かつ前記第2の型の印刷前に仕上げ、それにより前記第1の層の仕上げ表面に前記第2の層を形成することをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記型は、型印刷材料を使用して印刷される、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記型印刷材料の融点は、前記鋳造材料の融点よりも低い、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記鋳造材料は、ワックス、バインダー、硬化材料、分散剤、消泡剤、モノマー、オリゴマー、開始剤、活性剤、安定剤、バインダー除去制御添加剤、および焼結制御剤からなる第1の群の中の1つを含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
型印刷材料の粘度は、前記鋳造材料の粘度よりも高い、
請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記鋳造材料は、親水性成分または疎水性成分を含む、
請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記注入することは、注入ノズルから行われる、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
充填される前記型内のスペースのサイズに応じて前記注入ノズルを選択することを含む、
請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記充填することは、前記型への前記鋳造材料の射出成形を含む、
請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記充填することは、前記鋳造材料を前記型の中に押し広げるために、前記型に押し付けられたスキージを使用することを含む、または、前記充填することは、前記鋳造材料を前記型の中に押し広げるために、ブレードを使用することを含む、
請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも2つの異なる鋳造材料を別々の層に使用することを含む、
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記鋳造材料は、少なくとも2つの異なる構成材料または少なくとも2つの異なるサイズの粒子を含む、
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
加熱、溶解、ならびに、加熱および溶解の組合せを含む群の中の1つを使用して、鋳造後に前記型を除去することを含む、
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
型を印刷し、前記型を充填するための3D印刷装置を使用し、前記3D印刷装置は、
第1の型材料を用いて前記型を3D印刷するための、第1のサイズを有する第1のノズルと、
材料を注入して前記型を充填するための、前記第1のサイズとは異なる第2のサイズを有する第2のノズルと、
を備える、3D印刷装置である、
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のノズルは、取り外し可能である、
請求項15に記載の方法
【請求項17】
前記第2のノズルは、交換可能であり、それにより、様々な充填速度が様々なサイズの型に対して提供される、
請求項15または16に記載の方法
【請求項18】
前記第1のノズルは、熱溶解積層方式(FDM:Fused Deposition Modeling)の押出機である、
請求項1517のいずれか一項に記載の方法
【請求項19】
前記第1のノズルは、インクジェットノズルまたはインクジェットノズルアレイである、
請求項1518のいずれか一項に記載の方法
【請求項20】
型を印刷し、前記型を充填するための3D印刷装置を使用し、前記3D印刷装置は、
型材料を用いて前記型を3D印刷するためのノズルと、
前記注入された充填材料を塗布して前記型を充填するためのスキージと、
を備える、3D印刷装置である、
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
型を印刷し、前記型を充填するための3D印刷装置を使用し、前記3D印刷装置は、
型材料を用いて前記型を3D印刷するためのノズルと、
前記型を封止するための封止キャップと、
充填材料を射出して前記型を充填するための射出成形ユニットと、
を備える、3D印刷装置である、
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
成形積層製品の製造方法であって、
前記成形積層製品の設計図を作成することと、
前記設計図を複数の層にスライスすることと、
層ごとに、それぞれの層を取り囲む外部壁として、型を設計することと、
連続した層ごとに、設計された型を3D印刷することであって、その結果、それぞれの型は前記層の外部境界を形成し、前記境界内のスペースは前記それぞれの層を画定する、3D印刷することと、
連続した層ごとに、前記3D印刷された前記それぞれの型の形成後に鋳造材料を前記3D印刷された型内のそれぞれのスペースに注入して前記それぞれの層を形成することと、
次層の型を、それぞれの次の層に3D印刷することと、
を含み、前記鋳造材料は、セラミックまたは金属を含むペーストを含む、製造方法。
【請求項23】
各層の上に次層の型を印刷する前に該各層を硬化することをさらに含む、
請求項22に記載の製造方法。
【請求項24】
各層の上に後続層を形成する前に該各層を研磨することを含む、
請求項22または23に記載の製造方法。
【請求項25】
前記鋳造材料は、流動して前記型を充填するレオロジー特性、および前記型の内面に付着するレオロジー特性を有するように選択される、
請求項2224のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項26】
前記製品の全層が形成された後、前記製品を安定化するために熱を使用することを含む、
請求項2225のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項27】
前記それぞれの型を除去することを含む、
請求項2226のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項28】
加熱して、または溶媒を使用して前記鋳造材料から犠牲材料を除去することを含む、
請求項2227のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項29】
前記鋳造材料は粉末を含み、熱処理を適用して前記粉末を焼結することを含む、
請求項2228のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項30】
熱間等方圧加圧法(HIP:Hot Isostatic Pressing process)を使用して前記鋳造材料の密度を高めることをさらに含む、
請求項2229のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いくつかの実施の形態において、金属部品およびセラミック部品の付加製造のためのプロセスおよび装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、試作部品を作るために、および縮尺が小さい製造のために、付加製造、すなわち、3次元(3D)印刷が広く使用されている。熱溶解積層方式(FDM:Fused Deposition Modeling)が広く用いられている技術の一つである。FDMでは、プラスチックフィラメントをコイルからほどき、融合してノズルを通過させ、平らにしたストリングとして配置することにより、プラスチックフィラメントが、最終的に3D物体が出現する層を形成する。
【0003】
使用されている他の技術には、光造形法(stereolithography)がある。光造形法は、紫外線(UV)レーザーをフォトポリマー樹脂のバットに集束させることによって機能する付加製造プロセスである。コンピュータ支援製造ソフトウェアまたはコンピュータ支援設計ソフトウェア(CAM/CAD)の助けを借り、UVレーザーを使用して、予めプログラムされた設計または形状をフォトポリマーバットの表面に描画する。フォトポリマーは紫外線に対して感光性であるため、樹脂は固化し、所望の3D物体の単一層が形成される。このプロセスは、3D物体が完成するまで設計における各層について繰り返される。
【0004】
粉末焼結積層造形法(SLS:Selective Laser Sintering)は、層を付加製造する他の技術であり、高出力レーザー、例えば、二酸化炭素レーザーを使用して、小さなプラスチック粒子を融合して所望の3次元形状を有する塊にする。レーザーは、粉末床の表面上に、部品の3次元デジタル記述(例えば、CADファイルまたはスキャンデータ)から生成された断面をスキャンすることにより粉体材料を選択的に融合する。各断面のスキャン後、粉末床を1層の厚さ分下げ、新たな層の材料を最上部に設け、部品が完成するまでプロセスを繰り返す。
【0005】
金属材料およびセラミック材料は、比較的高い溶融温度のため、付加製造手順において使用することがより困難である。
【0006】
付加製造技術は、部品を層毎に形成する構築プロセスであるため、機械加工等の従来の製造工程に比べて概して遅い。
【0007】
広く用いられている金属印刷技術としては、直接金属レーザー焼結法(DMLS:Direct Metal Sintering Laser)がある。金属粉末の非常に薄い層が、印刷される表面に押し広げられる。表面全体にわたってレーザーをゆっくりと確実に移動させて粉末を焼結し、次いで、追加の粉末層を設けて焼結することにより、一度に断面を1つずつ「印刷」する。これにより、DMLSでは、一連の非常に薄い層を通して段階的に3D物体を構築する。
【0008】
3D金属印刷の他の方法には、選択的レーザー溶融法(SLM:Selective Laser Melting)がある。選択的レーザー溶融法では、高出力レーザーが、金属粉末の各層を単に焼結するのではなく、完全に溶融する。選択的レーザー溶融法は、非常に高密度で強固な印刷物体を製造する。選択的レーザー溶融法は、特定の金属でのみ使用可能である。この技術は、ステンレス鋼、工具鋼、チタン、コバルトクロムおよびアルミニウム部品の付加製造に使用することができる。選択的レーザー溶融法は、金属粉末の各層を金属の融点を超えて加熱しなければならないため、非常に高エネルギーのプロセスである。また、SLM製造中に生じる高い温度勾配により、最終製品内に応力および転位が生じ、それにより最終製品の物理的特性が損なわれる可能性がある。
【0009】
電子ビーム溶融法(EBM:Electron Beam Melting)は、選択的レーザー溶融法と非常に類似した付加製造プロセスである。EBMでは、SLMと同様に非常に高密度なモデルが製造される。2つの技術の違いは、EBMが金属粉末の溶融にレーザーではなく電子ビームを使用することである。現在、電子ビーム溶融法は、限られた数の金属でのみ使用可能である。チタン合金がこのプロセスの主な出発材料であるが、コバルトクロムも使用できる。
【0010】
上述の金属印刷技術は、高価で、非常に遅く、ビルドサイズおよび使用可能な材料によって制限される。
【0011】
バインダージェッティング方式の3D印刷(Binder Jet 3D-Printing)は、鋳物用の砂型を印刷したり、複雑なセラミック部品を生成したりするために広く使用されている。バインダージェッティング方式の3D印刷は、金属付加製造技術としても知られている。選択的レーザー溶融法(SLM)または電子ビーム溶融法(EBM)で行われるように材料を溶融する代わりに、金属粉末を接着インクによって選択的に結合し、その後、部分的に焼結・溶浸する。
【0012】
金属バインダージェッティング技術は、場合によって、複合金属合金、特にステンレス鋼と青銅の構成物に限定される。
【0013】
非特許文献1にセラミックの印刷技術が開示されている。この印刷技術では、金属の場合と同様に、阻害材料が、セラミック粉末層の周囲の縁部を画定する境界を形成し、次いでセラミック粉末層が焼結される。その後、阻害層は除去される。
【0014】
Stuart Uramの特許文献1が、付加製造を使用して製造された型の中にスリップ混合物を設けることと、次いで、この混合物が中に入っている型を焼くこととを含む型鋳造法を使用して物体を作製する方法を開示している。上記開示では、アルミン酸カルシウム10重量%~60重量%および充填剤の組成物について論じている。
【0015】
非特許文献2は、付加製造を使用してワックスの型を作り、次いで最終部品の粉末状の材料を含むスラリーを導入することを開示している。
【0016】
粉末射出成形(PIM:Powder Injection Molding)は、微細な粉末状の金属(金属射出成形(MIM:Metal Injection Molding))または微細な粉末状のセラミック(セラミック射出成形(CIM:Ceramic Injection Molding))を測定量のバインダー材料と混合して、射出成形によって取り扱うことのできる原料とする従来の方法である。成形プロセスにより、原料中のバインダー剤の存在により必要以上にサイズが膨張した複雑な部品を、単一のステップで大量に成形することができる。成形後、粉末とバインダーとの混合物に、バインダーを除去するバインダー除去(debinding)ステップ、および焼結を行い、粉末を高密度化する。最終製品は、様々な産業や用途に使用される小型部品である。PIM原料フローの性質はレオロジーを用いて定義される。現在の機器の性能では、型へのショットが1ショット当たり100グラム以下の典型的な体積を用いて成形可能な製品に処理が限定されている必要がある。PIM原料内で実施可能な材料の種類は広範である。その後、成形形状について調整作業を行う。調整作業では、バインダー材料が除去され、金属粒子またはセラミック粒子が拡散結合され、各寸法で通常15%の収縮を伴う所望の状態に高密度化される。PIM部品が、プラスチックに用いられるものと同様の精密射出成形型で製造されるため、工作機械類は非常に高価になり得る。その結果、PIMは通常、体積の大きい部品にのみ使用される。
【0017】
とりわけ、比較的速く、複雑な幾何形状を作ることができ、かつ多種多様な材料と適合可能な、セラミックおよび金属を使用した付加製造を効率的に行う方法を見出すことが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】米国特許出願公開第2014/0339745号明細書
【非特許文献】
【0019】
【文献】Ceramics 3D Printing by Selective Inhibition Sintering - Khoshnevis et al.
【文献】Rapid Prototyping and manufacturing by gelcasting of metallic and ceramic slurries, Stampfl et al., Materials Science and Engineering A334 (2002) 187 - 192
【発明の概要】
【0020】
本実施の形態は、従来の成形技術または機械加工技術では不可能な形状を構築するため、または既知の付加製造技術では使用が困難もしくは不可能な材料を使用するため、または既知の付加製造技術で構築することができるよりも早く形状を構築するために付加製造と成形技術を組み合わせることに関する。
【0021】
実施の形態では、付加製造を使用して型を作り、次いで、型に最終製品の材料を充填する。いくつかの実施の形態では、最終製品の層が個々の型で別々に構築され、後続層が前の層の上に形成される。実際、前の層は、新たな層のための床部を提供するのみならず新たな層の型を支持してよい。
【0022】
一実施の形態では、材料を3D印刷して型を形成するための第1のノズル、および充填剤を供給するための別個の第2のノズルを有する印刷ユニットが設けられる。第2のノズルは、様々なサイズの型を効率的に充填するために異なるサイズの開口を提供するように調節されうる。他の実施の形態では、2つの別個のアプリケータが設けられ、1つは型を印刷するためのものであり、3D印刷のために必要に応じて3度の自由度を有し、1つは型の形成後に型を充填するためのものである。
【0023】
一実施の形態には、ワックス、他の任意のホットメルト、熱硬化性材料、またはUV硬化材料を使用して型を印刷するためにインクジェット印刷ヘッドを使用すること、および自己平坦化(self-leveling)鋳造材料を使用してペースト鋳造堆積層を平坦化できることが含まれる。鋳造物を平坦化するための代替手段は、成形直後に鋳造材料を振動させることであり、さらなる代替手段は、スキージまたはブレード等の機械的工具を使用し、型を充填および平坦化することを含む。
【0024】
本発明のいくつかの実施の形態の一態様によれば、成形積層製品の製造方法であって、製品の1層を画定するために第1の型を印刷することと、前記第1の型を鋳造材料で充填し、それにより第1の層を形成することと、第2の層を画定するために前記第1の層の上に第2の型を印刷することと、前記第1の層の上で、前記第2の層を鋳造材料で充填し、それにより成形積層製品を形成することと、を含む、製造方法が提供される。
【0025】
本方法は、前記第1の層を、形成後かつ前記第2の型の印刷前に仕上げ、それにより前記第1の層の仕上げ表面に前記第2の層を形成することを含んでよい。仕上げとは、層を乾燥または硬化させ、かつ、次いで層表面を平滑化または切断して余分なペースト等の余分な材料を型の上から除去することをいう。
【0026】
一実施の形態では、型は、型印刷材料を使用して印刷される。
【0027】
一実施の形態では、型印刷材料の融点は、鋳造材料の融点未満である。
【0028】
一実施の形態では、鋳造材料は、ワックス、バインダー、硬化材料、分散剤、消泡剤、モノマー、オリゴマー、開始剤、活性剤、安定剤、バインダー除去制御添加剤、および焼結制御剤のいずれかと、セラミックおよび金属のいずれかと、を含む。
【0029】
一実施の形態では、型鋳造材料は、スリップ材料、ゲルキャスト材料、またはペースト材料を含む。
【0030】
一実施の形態では、型印刷材料の粘度は、鋳造材料の粘度よりも高い。
【0031】
一実施の形態では、スリップまたはペーストは、水ベースの材料または有機溶剤ベースの材料であり、エネルギー活性化材料であってもよい。
【0032】
一実施の形態では、鋳造材料は、親水性成分または疎水性成分を含む。
【0033】
一実施の形態では、充填することは、型に鋳造材料を注入することを含む。
【0034】
一実施の形態では、注入することは、注入ノズルから行われる。
【0035】
本方法は、充填される型内のスペースのサイズに応じて注入ノズルを選択することを含んでよい。
【0036】
一実施の形態では、充填することは、型への鋳造材料の射出成形を含む。一実施の形態では、充填することは、鋳造またはブレードを使用して鋳造材料を型の中に押し広げることを含む。本実施の形態では、型の表面に接触し、ペーストを把持するまたは押すスキージまたはブレードを使用してよい。代替的に、スキージまたはブレードを型の表面のわずかに上方に保ち、該表面に接触することなくペーストを把持する。
【0037】
一実施の形態では、2つ以上の異なる鋳造材料が別々の層に使用される。
【0038】
本発明の第2の態様によれば、型を印刷し、前記型を充填するための3D印刷装置であって、第1の型材料を用いて前記型を3D印刷するための、第1のサイズの第1のノズルと、材料を注入して前記型を充填するための、前記第1のサイズとは異なる第2のサイズの第2のノズルと、を備える、3D印刷装置が提供される。
【0039】
本発明の第3の態様によれば、型を印刷し、前記型を充填するための3D印刷装置であって、型材料を用いて前記型を3D印刷するためのノズルと、充填材料を塗布して前記型を充填するためのスキージまたはブレードと、を備える、3D印刷装置が提供される。
【0040】
本発明の第4の態様によれば、型を印刷し、前記型を充填するための3D印刷装置であって、型材料を用いて前記型を3D印刷するためのノズルと、前記型を封止するための封止キャップと、充填材料を射出して前記型を充填するための射出成形ユニットと、を備える、3D印刷装置が提供される。
【0041】
本発明の第5の態様によれば、積層成形製品の製造方法であって、積層成形製品の設計図を作成することと、前記設計図を複数の層にスライスすることと、層ごとに、型を設計することと、連続した層ごとに、設計された型を3D印刷することと、連続した層ごとに、前記型の形成後に鋳造材料を前記型に注入して前記層を形成することと、次層の型を、それぞれの先行する層の上に3D印刷することと、を含む、製造方法が提供される。
【0042】
本方法は、各層の上に次層の型を印刷する前に該各層を硬化することを含んでもよく、追加的にまたは代替的に、各層の上に後続層を形成する前に該各層を研磨することを含んでよい。
【0043】
鋳造材料は、流動して型を充填するレオロジー特性、および型の内面に付着するレオロジー特性を有していてもよい。
【0044】
本方法は、製品の全層が形成された後、製品を安定化するために熱を使用してもよい。
【0045】
本方法は、各型の層を除去することを含んでもよい。
【0046】
本方法は、鋳造材料から結合材料または犠牲材料を除去するために加熱することを含んでもよい。
【0047】
一実施の形態では、鋳造材料は粉末を含み、本方法は熱処理を適用して粉末を焼結することを含む。熱間等方圧加圧法(HIP:Hot Isostatic Pressing process)を使用して鋳造材料の密度を高めてもよい。
【0048】
本発明の第6の態様によれば、上記方法に従って金属またはセラミックで作られた成形部品または成形製品が提供される。
【0049】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および/または科学的用語は、本発明が関係する当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の実施の形態の実行または試験において、本明細書に記載されたものと類似または等価な方法および材料を使用することができるが、例示的な方法および/または材料を以下に説明する。矛盾が生じた場合、定義を含む特許明細書が優先される。さらに、材料、方法、および実施例は、単なる例示であり、必ずしも限定することを意図するものではない。
【0050】
本発明の実施の形態の3D印刷装置の動作は、選択されたタスクを手動で、自動で、またはそれらの組み合わせで実行または完了することを含むことができる。さらに、本発明の方法および/またはシステムの実施の形態の実際の計装および機器に応じて、いくつかの選択されたタスクが、ハードウェアによって、ソフトウェアによって、もしくはファームウェアによって、またはオペレーティングシステムを使用したそれらの組み合わせによって実現され得る。
【0051】
例えば、本発明の実施の形態に従って選択されたタスクを実行するためのハードウェアが、チップまたは回路として実現され得る。ソフトウェアとしては、本発明の実施の形態に係る選択されたタスクが、任意の適切なオペレーティングシステムを使用してコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実現され得る。本発明の例示的な実施の形態では、本明細書に記載される方法および/またはシステムの例示的な実施の形態に係る1つ以上のタスクが、複数の命令を実行するための計算プラットフォーム等のデータプロセッサによって実行される。任意選択で、データプロセッサは、命令および/もしくはデータを格納するための揮発性メモリ、ならびに/または不揮発性記憶装置、例えば、命令および/もしくはデータを格納するための磁気ハードディスクおよび/もしくは周縁部バブルメディアを含む。任意選択で、ネットワーク接続もまた提供される。ディスプレイおよび/またはキーボードもしくはマウス等のユーザ入力装置も任意選択で提供される。
【0052】
本明細書では、本発明のいくつかの実施の形態を、単なる例として、添付の図面を参照して説明する。ここで、具体的に図面を詳細に参照する際、図示された個々の事項が例であり、本発明の実施の形態の例示的な説明を目的としていることを強調しておく。この点に関して、図面と合わせて説明を解釈することにより、本発明の実施の形態がいかに実現されうるかが当業者に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1A】本発明の実施の形態に係る積層成形製品または積層成形部品の製造手順を示す簡略化されたフローチャートである。
図1B図1Aの手順のより詳細な実施の形態を示す簡略化されたフローチャートである。
図2】本実施の形態を使用して作られる部品の設計図を示す簡略図である。
図3】本実施の形態に係る積層製造のために図2の部品をスライスする1つの例示的な方法を示す簡略図である。
図4図2の部品を作るための第1の層のための印刷された型を示す簡略図である。
図5図2の部品の第1の層を形成するための、図4で作られた型への鋳込みを示す簡略図である。
図6図2の部品の第2の層のための型の印刷を示す簡略図である。
図7図6で作られた型への鋳込みを示す簡略図である。
図8図2に従って作られた、型の除去後の部品の簡略図である。
図9】本実施の形態に係る積層成形部品または積層成形製品を作るための2ステーションリニア装置の簡略図である。
図10】型印刷アプリケータと注入アプリケータとを組み合わせて1つの動作アプリケータとした図9の装置の変形例である。
図11】印刷ステーションと、注入ステーションと、別々のトラック上の2つのプラテンとを有する図9の装置の変形例の正面図である。
図12】印刷ステーションと、注入ステーションと、別々のトラック上の2つのプラテンとを有する図9の装置の変形例の上面図である。
図13】4ステーションカルーセルに基づく図9の装置の変形例である。
図14】任意選択で加熱されるシリンダを使用する表面仕上げステーションをさらに組み込んだ図9の装置の変形例である。
図15】スキージまたはブレードが型の表面に接触し、ペーストを押し広げて型を充填する図9の装置の変形例である。
図16】型の表面の上方にスキージが持ち上げられている図15の装置の変形例である。
図17】カッターをさらに組み込んだ図9の装置の変形例である。
図18】本実施の形態に従って印刷された層の型を充填するために射出成形が使用される図9の装置の変形例である。
図19】本発明の実施の形態に係る欠陥層を検出・修正する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明は、いくつかの実施の形態において、金属およびセラミックの付加製造のためのプロセスおよび装置に関する。
【0055】
本発明の少なくとも1つの実施の形態を詳細に説明する前に、本発明が、必ずしもその適用において、下記の説明に記載され、かつ/または図面および/または実施例に示された構成要素および/または方法の構造および配置の詳細に限定されるものではないことを理解されたい。本発明は、他の実施の形態とすることが可能であるか、または様々な方法で実施または実行可能である。
【0056】
ここで図面を参照すると、図1Aは、本実施の形態に係る成形積層製品の製造方法を示す簡略化されたフローチャートである。第1のボックス10は、製品の1層を画定するために第1の型を印刷することを示す。型は、以下に詳細に説明するように、既知の付加製造技術を用いて印刷されうる。ボックス12は、鋳造材料を注入して、ボックス10で印刷された型を充填することを示す。これにより、鋳造材料は、最終的な成形積層製品の第1の層を形成しうる。
【0057】
次いで、ボックス14において、第1の層および/または第1の成形層に第2の層の型が印刷される。場合によっては、第2の層は、少なくとも1つの寸法において第1の層よりも小さいため、第2の層の型は、第1の層の鋳造された部分に堆積される。以下にさらに詳細に説明するように、印刷を支持するために鋳造層を硬化してもよいし、あるいは、第2の層の型を支持するために第1の層が十分に乾燥するかまたは硬化されるまで第2の層の型の印刷を待機してもよい。
【0058】
ボックス16では、製品の第2の層を形成するためにより多くの鋳造材料が第2の層の型に注入される。ボックス18に示されるように、必要な数の層を有する成形積層製品を形成するために必要な回数この手順は繰り返される。別々の層の厚さが異なっていてもよいことが理解されるであろう。
【0059】
注入後、鋳造層の新しい表面を、20および22に示されるように、任意選択で仕上げ工具で仕上げてもよいし、研磨してもよい。
【0060】
型は、鋳造温度および他の鋳造条件で鋳造材料を保持するのに十分な強度を有する任意の標準的な型印刷材料を使用して印刷されうる。型の印刷には、熱溶解積層方式(FDM)またはインクジェット印刷等の任意の標準的な3D印刷技術を使用してよい。
【0061】
実施の形態では、型印刷材料の融点温度が鋳造材料の融点未満であるため、製品の準備ができ次第、加熱により型を取り除くことができる。例えば、型にはワックスを使用してもよく、鋳造材料をワックスよりも融点が高い任意の適切な鋳造材料としてもよい。焼結を使用する場合、鋳造材料を、セラミック、金属、および場合によってはプラスチックを含む、焼結可能な任意の材料としてよい。
【0062】
同様に、未焼結段階にある状態で使用可能な任意の材料を使用することができ、そのような材料は、セラミック型に特に有用である。
【0063】
実施の形態において、このプロセスが所望の温度を超えて加熱するという傾向がありうる。したがって、空気流を使用する等の冷却プロセスを使用してよい。
【0064】
一般に、鋳造材料は、型を充填することができ、その後、必要な特性を製品に付与するために、例えば乾燥もしくは冷却によりまたは任意のエネルギー活性化遷移反応により硬化可能であるか、あるいは焼結可能な任意の材料でありうる。硬化方法は、蒸発や、エネルギー硬化(例えば熱硬化またはUV硬化等)を含む活性化反応を含んでもよい。熱風の吹き付けだけでなくIR照射、マイクロ波照射、またはUV照射が使用されうる。
【0065】
実施の形態において、鋳造材料は、活性化されて硬化するワックス、モノマー、もしくはオリゴマー、または、乾燥して鋳造材料を硬化するポリマーエマルジョンもしくは溶解ポリマーと、セラミック粉末もしくは金属粉末または混合材料と、の混合物であってもよい。したがって、例えば、特定の機械的特性または他の特性を実現するために、材料の混合物から層を形成してよい。この場合、最終製品を加熱して型材料を溶融してもよいし、溶媒に浸漬して型を溶解してもよく、次いで、溶媒に浸漬して添加剤の部分を溶出してもよく、高温に加熱してバインダーを除去してもよく、さらに、焼結して粉末を融合してもよく、HIP(熱間等方圧加圧法)のような他の一般的な熱プロセスにさらしてもよい。これにより、本実施の形態は、成形されたセラミック、金属、または複合物の製品を作る方法を提供しうる。
【0066】
スリップ混合物、スラリー混合物、またはペースト混合物が、水、またはポリオレフィン、アルコール、グリコール、ポリエチレングリコール、グリコールエーテル、およびグリコールエーテルアセテート等の有機溶媒等の液体担体にセラミック粒子または金属粒子、あるいは任意選択で数種類の粉末の混合物を入れた懸濁液であり、鋳造材料は、60重量%~95重量%の粉末または粉末混合物の水ベースまたは溶媒ベースの組成物のような混合物を含んでよい。
【0067】
ゲルキャスト法は、複雑な形状のセラミック製品を作るための高効率のセラミック成形技術である。ゲルキャスト法に用いられるプロセスは、従来のセラミック成形プロセスにおいてしばしば用いられるプロセスと類似しているが、高い強度および良好な機械的特性を実現するように調整されている。ゲルキャスト法では、最終部品の粉末状の材料を含有するスラリーが使用され、目的の特性を実現するために内部の気泡を除去する等のステップが含まれる。
【0068】
ペーストは、粉末および有機材料が液体中に分散したものであり、一方の側から流動して型を充填することができるレオロジー特性、および型の境界面において堆積された型材料に適切に位置することができるレオロジー特性を有してもよい。
【0069】
ゲルキャスト硬化プロセスの場合、鋳造材料は、適切な流動性を確保し、型を充填するために、剪断減粘性およびチキソトロピーを有する。事前成形材料および鋳造材料の温度は、スリップの粘度を高め、熱間鋳造材料を堆積後すぐに固化するために低温である。鋳造材料は型材料と混和しない。実施の形態は、水ベースのスリップ材料を疎水性の鋳造材料と共に使用してもよく、またはその逆でもよい。いくつかの表面濡れ性が、小さなフィーチャサイズの制御および再現のために保持されうる。
【0070】
型の設計のアプローチにより、スリップ鋳造材料に対する型材料の負荷を減少することができる。設計プロセスのエンジニアリングによって確実に、構造が支持されるように最大限の面積にわたって、堆積された型材料の重量が分配されうる。
【0071】
さらなる硬化手順では、堆積スリップのエネルギー活性化プロセス、すなわち、硬化を使用してよい。硬化は、乾燥、または、熱硬化や紫外線硬化等の手段を用いた重合遷移反応のような物理的条件を変更する介入によって達成されうる。
【0072】
実施の形態では、型印刷材料の粘度は、鋳造材料の粘度よりも高くてもよいため、鋳造材料が注入されたときに型は影響を受けないままである。鋳造材料は、型を適切に充填するために良好な濡れ性を有してよい。
【0073】
実施の形態では、鋳造材料は、室温で低粘度であってよく、型材料に対する良好な濡れ能力を有してよい。堆積後、鋳造材料を乾燥または熱硬化や紫外線硬化等の手段を用いた重合遷移反応によって硬化することができてよい。また、鋳造材料の収縮率は低くてよく、また、良好なバインダー除去特性を有してよい。
【0074】
実施の形態では、鋳造材料は、親水性成分または疎水性成分を含んでよい。
【0075】
ゲルキャスト、乾燥、または重合遷移反応等を用いて、機械的または化学的な欠陥のない強い積層結合で製品を構築できる。
【0076】
鋳造または注入は、必要な機械的特性を提供するために材料を厳密に管理しながら、高温で行ってよい。注入では、吐出制御ユニットからなる液体吐出システムを使用してよい。充填材料の量は、容積やオーバーフローファクタ等の部分型パラメータに従って設定されうる。次いで、鋳造材料を、スキージまたはブレード等の機械的手段によって、または任意選択の振動手順で鋳造材料自体の自己平坦化特性により平坦化してよい。
【0077】
注入後、材料は、IRによって、より安定した状態(例えば、硬化状態)をもたらす温度(例えば、30℃~150℃の範囲)までエネルギーが活性化されうる。あるいは、材料は、UV等によってエネルギーが活性化されうる。これにより、材料は硬化される。
【0078】
その後、個々の層の型である部分型を、アセンブリをより高い温度にさらすか、酸による化学溶解プロセスを使用するか、溶媒に浸漬して型材料を溶解するか、または他のプロセスにより除去することができる。ワックスベースの型の場合の適切な温度は、50℃~250℃の範囲内でありうる。
【0079】
バインダー除去・焼結段階は、鋳造材料の活性部分のバインダー除去および焼結が可能になるように温度を上昇することを含んでもよく、バインダー除去および焼結の典型的な温度は、最終製品の正確な材料および要求される機械的特性に応じて200℃~1800℃の範囲内である。
【0080】
本実施の形態に係る提案プロセスによれば、ペースト鋳造材料は、高い剪断力および制御された温度の下で鋳造される。この実施の形態におけるペースト鋳造材料は、高粘度および高硬度で鋳造されたスリップ鋳造材料の前の層の上に堆積され得、また、より低温であってもよい。
【0081】
連続する2層は、同一の材料から構成されるため、それらは、特性を共有することが期待されうる。一般に、鋳造材料は、水または有機溶媒をベースとし、材料の分散を可能にする。
【0082】
乾燥、バインダー除去、および焼結を、いつくかのオーブンで行ってよく、これらのオーブンは、単一の装置に一体化してもよく、または別々に設けてもよい。
【0083】
ここで、図1Aに係るプロセスをより詳細に検討する。
【0084】
このプロセスでは、鋳造材料および型材料を使用してよい。型材料を、例えば、300℃未満で凝固し、鋭い融点を有する鉱物ワックスのような任意の材料としてよい。成形材料を、上述のようなFDMまたはインクジェット技術のような任意の制御された付加製造ツールによって設けてよい。したがって、成形材料は、そのようなプロセスに適した材料から選択される。
【0085】
鋳造材料は、犠牲材料内に分散された機能性粉末から構成されうる。対応する型材料の融点および対応するゲル化温度よりも低い温度で凝固する鋳造材料のペーストを選択してよい。一例として、必要な凝固点および融点の組合せに到達するように適当なPEG等の混合物を犠牲材料として使用してよい。代替として、硬化では、エネルギー活性化または遷移反応によって重合され、また、代替的に乾燥により硬化するモノマーまたはオリゴマーを使用してよい。
【0086】
スラリーまたはペースト等の鋳造材料は、凝固温度より高い温度であって、かつ型材料の融点より低い温度でゲル化され得る。あるいは、例えば、適当な硬化剤と合わせたエポキシ低粘度モノマーおよび/もしくはエポキシ低粘度オリゴマー、ならびに/または、適当な架橋剤と合わせたアクリルモノマーおよび/もしくはメタクリルモノマー等の自己硬化性鋳造材料を使用してもよい。
【0087】
スラリーまたはペースト等の鋳造材料の第1の層の安定性を確保するために、スラリーまたはペーストは、粘度が変化しても変化しなくてもよいように、静止した非流動材料に硬質ゲルのように挙動させるレオロジー特性を有し、必要に応じて、適切な剪断減粘性およびチキソトロピーを含むように設計されうる。
【0088】
結合材料は、スラリーまたはペーストの流動部分であり、機能的硬化剤として使用される液体担体を含んでよく、不要になった際に除去されるように700℃未満で乾燥および分解されうる有機添加物を最終段階において含有してよい。
【0089】
機能性粉末は、最終製品の本体を構成する金属および/もしくは金属酸化物またはセラミックである。材料は、犠牲材料の消失後に粉末を融合して最終的な固形の本体を形成するために、500℃超で熱処理されるように選択されうる。
【0090】
ここで、図1Bを参照すると、このプロセスは、ボックス10に示されるように型の構築を含む。型の構築において、3D印刷では、型部品を形成するために、融点が60℃より高い鉱物ワックス、UV硬化型もしくはEB硬化型のアクリル樹脂、メタクリル樹脂、熱硬化エポキシ、ポリウレタン等のいずれかを使用してよい。
【0091】
トレイを所定の位置に配置し、第1の層の型のサブパーツをトレイ上に構築する。
【0092】
次いで、型に液状またはスラリー状またはペースト状の型材料を充填する(12)。確実に型壁と密接に接触することにより型の適切かつ完全な充填を確実にするために、鋳造材料を高剪断力下で型に注入してもよいし、実施の形態によっては射出してもよい。型自体は、射出力に耐える十分な機械的強度を有してよい。
【0093】
ここで形成された(n-1)サブパーツまたは(n-1)層が、次のn番目のサブパーツの土台を提供する。
【0094】
この層を型材料の後続層の負荷に耐えることができるようにするために、鋳造材料のスラリーまたはペーストの固化または硬化(23)が必要でありうる。他の場合には、すでに形成された層の粘度で十分でありうる。固化または硬化は、下記のいずれか1つまたは複数の手段を使用することにより実現されうる。
(1)鋳造の温度を、前の層から既に鋳造されたスラリーまたはペーストを凝固するのに十分低い温度に維持する。
(2)例えば、エポキシ樹脂および/またはアクリル系および/またはメタクリル系の架橋性モノマーを用いる熱硬化プロセスを用いて鋳造材料のスラリーまたはペーストを硬化する。
(3)重合反応を活性化するか、または場合によってはプロセスの他の部分からの熱を使用してスラリーの表面を硬化させる。
(4)赤外線照射等の乾燥プロセスで鋳造原料のペーストを硬化させる。
(5)結合材料、例えば溶剤または水を加熱して蒸発させる。
【0095】
そして、このプロセスは、次の型の層を印刷すること(14)によって続けられる。
【0096】
第2の型の層を、先に鋳造されたペースト材料の表面に印刷してよく、また、前の層から型材料にわたって構築してもよい。
【0097】
次の段階では、第1の層について行ったように第2の型の層を充填する(16)。必要に応じて、固化を行ってもよい(24)。
【0098】
製品に必要な追加層ごとに、硬化、印刷、および充填の段階を繰り返す(18)。
【0099】
ここで、最終的な製品または製品の部品として硬化された鋳造材料ペーストは、部分型に埋め込まれている。
【0100】
このとき、最終部品を安定化してよい(25)。剪断力を停止している間に、スラリーまたはペーストがゲル化および硬化し始めるため、鋳造材料に生強度が発現し得、かつ/または硬化剤を活性化して生強度を与えてよい。生強度は、圧縮された粉末が焼結前に受ける機械的操作に、該粉末の微細な細部および鋭い縁部にダメージを受けずに耐えるために該粉末に与えられる機械的強度である。
【0101】
ゲルキャスト法が実施される場合、最終的な生強度は熱重合によって発現する。熱重合は、硬化したスラリーの凝固点より高く、型材料の融点未満の高温で、かつこのような温度を選択できる適切な条件下で行われうる。
【0102】
次いで、型材料を除去してよい(26)。除去は、成形材料が液化して再利用のために回収可能になるように、製品および型を型の融点まで加熱することを含んでよい。あるいは、化学的溶解によって型を除去してよい。
【0103】
全ての型部品および部分型部品の製造において、鉱物ワックス等の溶融された型材料を再利用のために回収するためのシンクを設けてよい。
【0104】
型の除去後、ペーストの犠牲材料を、例えば、担体液および有機添加剤等の犠牲材料を最適温度まで制御可能な方法で加熱して蒸発および/または分解することにより除去する(27)。
【0105】
犠牲材料の除去後、活物質の粉末を融合して固体形態にしてよい。製品の所望の最終特性を得るためにボックス28の焼結等の熱処理を適用してよい。上述のように、400℃~1800℃の例示的な温度、特に500℃超の温度が使用されうる。
【0106】
ここで、図2を参照する。図2は、製造が望まれる製品の青写真30の簡略図である。製品は、下部リング32、中間リング34、および上部リング36を有し、これらのリングのうちの下部リングの半径は大きく、中間リングの半径は小さく、上部リングの半径は中程度である。
【0107】
次に、製品30を作る方法の1つを説明する図3を参照する。製品は、層ごとに図1Aおよび図1Bに概説した手順を用いて別々に製造される層に分解されうる。固定層厚さを選択し、固定層厚さを有する必要な数の層を作ることが可能性の1つであるが、そのためには、下部リング32の上側境界38が正確に層の境界に位置すべきであり、したがって、層厚がZ軸における部品寸法に関する制約を課すZ軸解像度となる。
【0108】
各リング32、34、および36を別々の層として製造することが他の可能性であるが、この場合、第3の層のための型に支持構造が必要となりうる。第3の層のための型は、支持構造がなければ空中に吊り下げられるであろう。
【0109】
現在の例では、リング32は単一の第1の層40として製造され、2つのリング34および36が一緒に単一の第2の層42として製造される。
【0110】
図4を参照すると、型44が下部リング部32のために3D印刷されている。型は、床部46と包囲周縁部48とからなる。
【0111】
図5は、鋳造材料50で充填された図4の型44を示す。鋳造材料は、バインダーと添加剤、場合によってワックスと金属粉末またはセラミック粉末との組合せであってよく、周縁部48内の床部46にわたって型を充填する。鋳造材料は、以下でより詳細に説明するように、本実施の形態に係る専用装置の一部でありうるノズル52から注入されうる。
【0112】
次に、図6を参照し、図2の例に係る第2の層の印刷を示す。上部リング36の半径より大きい単一の外側半径を有する単一の型部品60が印刷される。内部的には、型60の下部62が中間リング34の半径に等しい半径を有し、型60の上部64が上部リング36の半径に等しい半径を有する。型部品60は、鋳造層50の注入によって形成された表面上に位置しており、製品の既存の表面によって支持され、追加の支持構造を必要としない。上述のように、一実施の形態では、鋳造層の粘度は、新たな型部品60を支持するのに十分であってもよく、あるいは代替的な実施の形態では、第1の層は、新たな型部品を載置する前に最初に硬化してもよい。
【0113】
次に、図7を参照する。上部型部品60は、下部に用いられたものと同じ鋳造材料をさらに用いて充填してよく、それにより、製品の上部リングおよび中間リングを形成する。あるいは、別々の層に対して異なる鋳造材料を使用してもよい。
【0114】
型と鋳物の組み合わせは、型とワックスを除去し、バインダーを除去し、鋳造材料中の粉末を融合するために、加熱、バインダー除去、または焼結されうる。最後に、ワックスの溶融後、図8に示されるように製品70が鋳造物から出現する。
【0115】
次に、図9を参照する。図9は、型を印刷し、型に鋳造材料を充填するための3D印刷および充填装置の部分を示している。押出機アセンブリ80が、第1の型材料を使用して上述のような型または型部品を印刷するのに適したノズルサイズのノズル81を有する。簡略化のために、一つの印刷ノズル81を示しているが、任意の適切な数の印刷ノズルを設けてよい。押出機アセンブリ80は、例えば、3自由度で移動しうる標準の3D押出機アセンブリであってよい。より具体的には、トレイとアプリケータとの間の相対的移動のために3度の自由度が提供され得、ほとんどのFDMプリンタが押出機のためのXYテーブルおよびZ軸を有する。押出機アセンブリは、任意の所望の数のノズルを有していてもよい。
【0116】
鋳造材料アプリケータ82は、単一の注入ノズル84からなり、型の形成後、鋳造材料を型に注入するために設けられている。ノズル84のサイズは、鋳造材料が型材料と同じ技術によって設けられることがないように、効率的に型を鋳造材料で充填するサイズである。したがって、鋳造材料には比較的粗い技術が用いられ、型には比較的微細な技術が用いられる。型は幾何形状を画定し、鋳造により部品の特性が提供される。注入ノズルは、必要な充填スループット、最小直径等を実現するために設けられうる。
【0117】
充填速度を上げ、さらに正確な充填を可能にするために、複数のノズルを設けてもよい。
【0118】
一実施の形態では、鋳造材料がペースト形態である場合、ペーストをキャビティの内側または外側に注ぎ、次いで、キャビティの境界線に沿ってスキージを移動させることによってキャビティを埋めてよい。
【0119】
より詳細には、この装置は、2つの主要なサブシステムを備えてよい。
【0120】
(1)付加製造システム(AMS)80:FDM、インクジェット、およびその他の周知の方法に基づいてよく、部分型を作るシステムである。このシステムは、構築トレイに対して少なくとも3度の自由度を有してよい。本発明の一実施の形態によれば、部分型は、鉱物ワックスまたは鉱物ワックスと同様の材料で形成できる。
【0121】
(2)液体吐出システム(LDS):注入システム82のベースとなり、部品を製造するための鋳造材料を型に鋳込むまたは注入するシステムである。部品の材料は、上述のように、金属、セラミック、または他の材料の任意の液体懸濁液またはペーストであってよい。
【0122】
液体形態の鋳造材料は、予め定義された値にしたがって、例えば、充填される部分型の容積に応じて制御しながら吐出される。
【0123】
注入システム82の位置も、部分型に対する好ましい充填位置に応じて決定される。注入システムは、典型的には、構築トレイに対して少なくとも2度の自由度を有してよい。場合によっては、自由度は3度であってよい。
【0124】
型を振動させて、注入された材料が確実に型の中で均等に分散されかつ平坦化されるように振動面を設けてよい。型および鋳造材料を加熱して、材料が確実に十分に硬化されるように赤外線ランプまたは熱風ユニット等の硬化ユニットを設けてよい。
【0125】
部品を製造する前の第1のステップは、青写真を反映するデジタル製造ファイルを作成することを含む。部品は、別々の層に対応するサブパーツに分割、すなわちスライスされる。各サブパーツについて、部分型ファイルが作成される。
【0126】
次いで、各部分型ファイルを印刷のために付加製造システム(AMS)に送信する。部分型は装置トレイに構築される。次いで、トレイをLDS位置に移動し、材料を部分型の中に吐出し、型の中に画定されたスペースを充填する。処理が完了すると、装置トレイは次の部分型ファイルが送信されるAMS位置に戻る。新たな部分型は、注入したばかりの層の上に構築され、この手順はすべてのサブパーツが作られるまで層ごとに繰り返される。
【0127】
サブファイルの生成方法がいくつかある。各ファイルは「合法的」である必要がある。「合法的」とは、部分型が、装置において使用される関連する付加製造方法によって物理的に製造可能であり、鋳造材料を型に挿入することにより物理的なサブパーツを作ることができることを意味する。非合法的ファイルは、例えば、崩壊しやすい型形状を含みうる。
【0128】
一実施の形態では、サブファイルは、装置の選択されたZ解像度に応じて生成され得、これは、所定の層高さが選択されることを意味する。例えば、装置の選択された解像度が0.2mmの場合、製品はソフトウェアによって別々の0.2mmのサブパーツファイルにスライスされ得、それに従ってサブパーツが用意される。厚さは、部品の幾何学的品質要件に応じて変更してよい。
【0129】
他の実施の形態では、サブパーツは、鋳造材料で適切に充填可能な部分型の最大深さに応じて画定されうる。
【0130】
また、部分型ファイルの縮尺は、熱処理中の部品の推定収縮量に応じて決定してよい。
【0131】
次いで、部分型およびサブパーツのアセンブリは、熱処理ユニットに運ばれる。一実施の形態によれば、熱処理は、以下のステップを含みうる。
(1)温度を上げてワックスを溶融する。
(2)溶剤またはガスに浸漬してバインダーの一部を溶解または溶出する、または温度を上げてバインダー除去を行う。
(3)再度温度を上げて焼結する。
(4)材料および品質の要件に従い、必要に応じて熱プロセスを追加する。例えば、熱間等方圧加圧法により、部品の密度を高めることができる。アルミニウム部品には、焼き戻しや熟成等も可能である。
【0132】
上記およびワックスを除去するために溶融を用いることの代替として、溶媒を用いてワックスを除去してもよい。さらなる代替例として、溶融と溶媒の使用の組み合わせを使用してもよい。
【0133】
図示のように、型部品85はトレイ86に印刷され、トレイ86は移動プラテン88上に位置している。プラテンは、3D印刷ヘッド80と注入ノズル84との間を直線軸90上で移動する。単一部品の場合、プラテンは、各層につき1回、2つの位置の間を移動してよい。直線軸の代わりに、プラテンは回転式であってもよく、2つの位置の間を回転してもよい。
【0134】
さらなる実施の形態では、複数のステーションをプラテンの経路上に設けてもよく、それにより、いくつかの印刷位置およびいくつかの充填位置が存在し、複数の部品が並行して印刷されうる。
【0135】
さらなる実施の形態では、複数のステーションをプラテンの経路上に設けてもよく、それにより、IRステーション、研磨ステーション等のいくつかの追加プロセス位置が存在しうる。
【0136】
注入ノズル84を、取り外し可能としてもよく、実施の形態によっては、様々な縮尺の製品のすべてが適切な充填速度で効率的に充填されうるように様々なサイズの他のノズルと交換してもよい。
【0137】
次に、図10を参照する。図10は、図9の装置の変形例を示す簡略図であり、印刷ヘッド80と注入ノズル82とを組み合わせて、印刷ノズル81と注入ノズル84の両方を備えた(但し、これらは必ずしも同時に動作する必要はない)単一の二重目的動作ユニット89としている。
【0138】
ユニット89は、型を印刷するために、およびその後、型を充填するためにトレイに対して3度以上の自由度を有してよい。
【0139】
図11および図12は、印刷ステーションと、注入ステーションと、それぞれが別々のトラック上に位置する2つのプラテンとを有する、図9の装置の変形例の正面図および上面図である。図11は、それぞれが1つのノズルの下に位置する2つのトレイ90および92を示す簡略化された概略図である。トレイ90が、型部品96を印刷する印刷ヘッド94の下にある。同時に、トレイ92が、鋳造材料を型部品100に注入する注入ユニット98の下にある。トレイ92は、以前は、型100を印刷するために印刷ヘッド94の下にあったのであってもよい。したがって、1つの型を充填しながら他の型を印刷することによって、さらに印刷機の利用率が高まる。
【0140】
図12では、第1のトレイ110が第1のプラテン112上において印刷ヘッド114と注入ユニット116との間を、型部品117を担持しながら移動する。同様に、第2のトレイ118が第2のプラテン120上において印刷ヘッド114と注入ユニット116との間を、型部品121を担持しながら移動する。トレイおよびプラテンは、本明細書においてx方向と称される第1の軸において移動する。印刷ヘッド114および注入ユニット116は、プラテンの移動方向に対して直交していてもよいし実質的に直交していてもよい第2の軸において2つのプラテンの間を移動する。ここでは、印刷ユニットと注入ユニットの移動方向をy方向として示す。ブリッジ122がヘッド114を、ブリッジ124が注入ユニット116を担持してよい。同様に、レールまたはトラック126がプラテン112を、レールまたはトラック128がプラテン120を担持してよい。印刷ヘッド114は、典型的には、トレイおよびアプリケータに対して3度の自由度を有し、このことは、本明細書のすべての実施の形態について同様である。
【0141】
図12の実施の形態では、各プラテンが型印刷位置から注入位置に移動し、印刷ヘッドおよび注入ユニットが一方側から他方側に移動することにより、両側で印刷および注入を連続的に行うことができ、印刷ヘッドを高利用率で利用し2つの部品を並行して製造することができる。
【0142】
一実施の形態によれば、プラテンは固定されていてもよく、ヘッドはx方向に移動してもよい。ヘッドまたはプラテンは、y方向に移動してもよい。
【0143】
次に、図13を参照する。図13は、4つのステーション132、134、136、および138を有するカルーセル130に基づく印刷および注入装置の一実施の形態を示す。カルーセルは回転し、各トレイが、型部品の印刷のためのステーション132および注入のためのステーション134に到達する。プロセス自体の間、部品は動かないことに留意されたい。カルーセルは、各プロセス間に1つのステーションと次のステーションとの間の角度にわたって回転してよい。残りの2つのステーション136および138は、任意選択のプロセスのために分類される。収容力を2倍にするために、ステーション136および138が第2の印刷ヘッドおよび第2の注入ユニットを備えることが可能性の1つである。他の可能性としては、ステーション136が、ステージ134において注入された表面を仕上げるための仕上げユニットを含み、ステーション138が加熱または焼結を行ってよい(加熱および焼結は、高温の真空中で数時間かかるため、一般にカルーセルのステーションには含まれない)。
【0144】
任意選択のステーションの他の使用が考えられ得、また、カルーセルは4つのステーションに限定されない。したがって、UV硬化、IR熱硬化、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、冷却、平らにするプロセス、研磨、または仕上げ等の、並行して行うことができる種々の補足的プロセスのためのステーションを追加してよい。
【0145】
次に、第3のステーション、すなわち第3のプロセス位置を有する線形の実施の形態を示す図14を参照する。トレイ143および型145を担持するプラテン141または複数のプラテンが、印刷ヘッド140の下の第1の位置、注入ユニット142の下の第2の位置、およびシリンダ144の下の第3の位置の間を移動する。シリンダは、注入後に鋳造材料146を平滑化してよい。想起されるように、鋳造材料は高粘度であってよく、したがって、より低粘度の材料が期待されるように水平になるのではなく、山のように積み上がる傾向がありうる。あるいは、本明細書の他の箇所に記載されるように、意図的に型の上端より上方の或る限界まで型を充填してもよい。したがって、次の段階を開始する前に、または製品または部品を完成させるために平滑化が必要となりうる。シリンダは、型および/または型の充填材、すなわち鋳造材料を平らにするために使用されうる。平らにするために、シリンダを60℃~140℃の例示的な範囲の温度に加熱してよい。
【0146】
仕上げステーションは、線形の実施の形態のみならず、カルーセルを使用する実施の形態に組み込まれてもよいことが理解されよう。
【0147】
次に、他の実施の形態を示す図15を参照する。トレイ160が型部品または部分型162を担持し、ペーストの塊164が型を充填するために設けられている。スキージ166は、ペーストを型の上部全体に塗り広げつつ、ペーストを型内のスペース168に押し込むことによって型を充填し、かつ同時に表面を仕上げる。スキージの代替として、ブレードを使用してもよい。
【0148】
スキージは、注入ノズルと共に追加のステーションとして組み込まれうるため、注入によってペーストをスペースの中に入れ、次いでスキージによってペーストを押してスペースを埋めてよい。
【0149】
ペーストの吐出は、例えば、ペースト吐出ノズルを用いて塊164を設けるために行われうる。ノズルは、材料が必要な個所のそばに材料を吐出してよく、次いで、スキージ166は、ペーストを型の凹部の中に押し込み、層を平滑化して適所に配置してよい。あるいは、例えば、型の凹部の上を印刷ヘッドのように移動するディスペンサの列を用いて凹部の中にペーストを直接吐出しつつ、後からブレードで層を平滑化してもよい。
【0150】
ディスペンサの列は、任意の所望の解像度で設けられうる。ディスペンサを、ブレードの動きまたはテーブルの動きに対して角度を付けて移動してよい。
【0151】
図15に示すように、スキージまたはブレードを、型の表面に押し付けてよい。
【0152】
次に、型の非接触充填を可能にするためにスキージまたはブレードが型の表面から例えば1ミクロン~100ミクロン離間している点以外は図15と同一である図16を参照する。図15と同様に、トレイ160は型部品または部分型162を担持し、型を充填するためのペーストの塊164が設けられている。スキージ166は、ペーストを型の上部全体に塗り広げつつ、ペーストを型内のスペース168に押し込むことによって型を充填し、かつ同時に表面を仕上げる。スキージと型との間のスペースにより、ペーストの薄いコーティングが型の上部の表面全体に延在しうる。
【0153】
次に、第3のステーションも有する代替的な線形の実施の形態を示す図17を参照する。トレイ143および型145を担持するプラテン141または複数のプラテンが、印刷ヘッド140の下の第1の位置、注入ユニット142の下の第2の位置、およびポリッシャまたはカッター150の下の第3の位置の間を移動する。ポリッシャは、注入および/または成形後に、鋳造材料146の余分を切断する。
【0154】
ポリッシャを、カルーセルを使用する実施の形態に組み込んでよいことが理解されよう。ポリッシャ150は、鋳造材料が注入され、所定の高さで、例えば、部分型の上縁部から0.05mm越えて硬化した後で部分型を避けてサブパーツを研磨するCNC工具、例えば、舞いカッター等の機械加工工具であってもよい。
【0155】
次に、型を充填するためのさらなる代替例を示す図18を参照する。トレイ170は、充填されるスペース174を含む部分型または部品型172を担持する。封止板176は、型を封止し、スペース内に射出成形するためのパイプ178を含む。特に、射出では、粉末射出成形(PIM:Powder Injection Molding)を使用してよい。粉末は、粉末冶金(PM:Powder Metallurgy)粉末、例えば、金属射出成形(MIM:Metal Injection Molding)粉末であってもよい。粉末は、図17の実施の形態および本明細書に記載する他の実施の形態のいずれについても、大小の粒子の混合物であってよい。
【0156】
射出成形を、線形のまたはカルーセルの実施の形態のいずれにおいても、追加のステーションとして提供してもよいし、型を充填するための主ステーションとしてもよい。
【0157】
次に、自己検査手順180を示す簡略化されたフロー図である図19を参照する。手順180において、最後に配置された層がチェックされる(182)。一般に、チェックは、例えば、診断カメラを用いて画像化することによる平滑性の検査を含んでよい。決定ボックス184において損傷または欠陥が検出された場合、損傷した層が切り取られ(186)、新たな層が設けられる(188)。このような損傷または欠陥が検出されない場合、プロセスは次の層に続く(190)。自己検査手順は、ノズルを使用する実施の形態およびペーストを押し広げることを含む実施の形態を含む、本明細書に記載する全ての実施の形態に適用可能である。
【0158】
上記のいずれの実施の形態のプロセスも、不活性環境、例えば、窒素もしくはアルゴンで満たされた環境、または真空中でさえ行われうる。これは酸化力の高い材料に役立ちうる。
【0159】
本出願から完成される特許の存続期間中、多くの関連する成形技術、3D印刷技術、および鋳造技術が開発され、対応する用語の範囲が、そのようなすべての新技術を演繹的に含むことが意図される。
【0160】
用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」およびその活用形は、「限定されるものではないが、含む(including but not limited to)」を意味する。
【0161】
「からなる」という用語は、「含み、限定される」ことを意味する。
【0162】
用語「本質的に~からなる」は、組成、方法または構造が、追加の成分、追加のステップ、および/または追加の部分を含みうることを意味する。但しこれは、請求項に記載の組成、方法、または構造の基本的かつ新規の特徴が、これら追加の構成要素、ステップ、または部分によって実質的に変更されない場合に限られる。
【0163】
本明細書において使用される単数形の「a」、「an」および「the」は、別段文脈により明らかに示されない限り、複数形をも対象とする。
【0164】
明確さのために別個の実施形態に関連して記載した本発明の所定の特徴はまた、1つの実施形態において、これら特徴を組み合わせて提供され得ること、また、本明細書は、そのような組み合わせが本明細書に明示的に記載されているかのごとく読まれるべきであることを理解されたい。逆に、簡潔さのために1つの実施形態に関連して記載した本発明の複数の特徴はまた、別々に、または任意の好適な部分的な組み合わせ、または適当な他の記載された実施形態に対しても提供され得る。本明細書は、そのような組み合わせが本明細書に明示的に記載されているかのごとく読まれるべきである。さまざまな実施形態に関連して記載される所定の特徴は、その要素なしでは特定の実施形態が動作不能でない限り、その実施形態の必須要件であると捉えてはならない。
【0165】
本発明をその特定の実施形態との関連で説明したが、多数の代替、修正および変形が当業者には明らかであろう。したがって、そのような代替、修正および変形の全ては、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲内に含まれることを意図するものである。
【0166】
本明細書で言及した全ての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許および特許出願のそれぞれについて具体的且つ個別の参照により本明細書に組み込む場合と同程度に、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。加えて、本願におけるいかなる参考文献の引用または特定は、このような参考文献が本発明の先行技術として使用できることの容認として解釈されるべきではない。また、各節の表題が使用される範囲において、必ずしも限定として解釈されるべきではない。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19