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特許7547052撮像装置、撮像装置の制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】撮像装置、撮像装置の制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/581 20230101AFI20240902BHJP
   H04N 23/54 20230101ALI20240902BHJP
   H04N 23/72 20230101ALI20240902BHJP
   H04N 25/57 20230101ALI20240902BHJP
   H04N 25/583 20230101ALI20240902BHJP
   H04N 25/585 20230101ALI20240902BHJP
   H04N 25/70 20230101ALI20240902BHJP
【FI】
H04N25/581
H04N23/54
H04N23/72
H04N25/57
H04N25/583
H04N25/585
H04N25/70
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020020791
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021129144
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】北荘 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】福井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 進
(72)【発明者】
【氏名】河口 修
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-092660(JP,A)
【文献】特開2019-075658(JP,A)
【文献】特開2006-237789(JP,A)
【文献】特開2012-105225(JP,A)
【文献】特開2012-104684(JP,A)
【文献】特開2017-220892(JP,A)
【文献】特開2018-113725(JP,A)
【文献】特開平02-297514(JP,A)
【文献】特開2000-092377(JP,A)
【文献】特表2009-535865(JP,A)
【文献】特開2010-103700(JP,A)
【文献】特開2019-047169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222- 5/257
H04N 5/30 - 5/33
H04N 9/01 - 9/11
H04N 23/00 -23/76
H04N 23/90 -23/959
H04N 25/00 -25/79
H01L 27/14 -27/148
H01L 29/76
H10K 39/32 -39/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を電荷に変換して蓄積する撮像素子の撮像領域を複数に分けた領域毎の露光時間を制御する露光時間制御手段と、
前記撮像素子の前記領域毎の出力をアナログ/デジタル変換する際に前記領域毎の出力のアナログゲインを制御するゲイン制御手段と、
前記露光時間制御手段が前記露光時間の制御を行うタイミングを制御するための露光時間出力パルスと、前記露光時間出力パルスに同期した出力パルスであって前記ゲイン制御手段が前記アナログゲインの制御を行うタイミングを制御するためのゲイン出力パルスとを生成して、前記露光時間出力パルスを前記露光時間制御手段に出力し、前記ゲイン出力パルスを前記ゲイン制御手段に出力する同期制御手段と、
前記ゲイン制御手段により前記領域毎に前記アナログゲインが制御された所定のビット幅の出力に対し、基準となる撮影条件と、前記撮像素子の各々の領域毎に対応する露光時間およびアナログゲインとに基づいたビット分を下位ビット側または上位ビット側にマップする階調拡張処理を施して、前記ゲイン制御手段により前記アナログゲインが制御された前記領域毎の画値のレベルを補正する露光補正手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記露光補正手段は、写体を最も明るく撮影する撮影条件における最低輝度と最高輝度を基準として、前記階調拡張処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記露光時間制御手段は、前記露光時間出力パルスに基づいて、前記領域毎の画素ブロックを構成する水平ライン毎に露光の開時間のタイミングと露光の終了時間のタイミングをずらして、各水平ラインに対して同じ前記露光時間を適用し、
前記ゲイン制御手段は、前記ゲイン出力パルスに基づいて、前記露光時間制御手段によって前記露光時間が制御された前記画素ブロックの水平ライン毎に同じ前記アナログゲインを適用する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記露光補正手段で前記画素値のレベルを補正した後、前記領域間の境界の画素間に生ずる画素値の段差を軽減する段差補正手段をさらに有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記段差補正手段は、前記領域間の境界の画素間に生ずる画素値の段差を平滑化する平滑化手段を有することを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記平滑化手段は、ローパスフィルタまたはイプシロンフィルタにより前記平滑化を行うことを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記露光補正手段が前記ビット分の前記マップにより前記画素値のレベルを補正することで階調が拡張された前記画素値に対して、ビット長を低減することで前記階調を低減する階調変換処理を行う階調変換手段をさらに有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
2層以上の積層構造で構成され、前記光を露光する側の層に前記撮像素子を配置し、それ以外の層に前記露光時間制御手段を配置し、
前記露光時間制御手段から前記撮像素子への制御信号は、前記積層構造の層間で垂直に配線されてなることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
撮像装置の制御方法であって、
光を電荷に変換して蓄積する撮像素子の撮像領域を複数に分けた領域毎の露光時間を制御する露光時間制御工程と、
前記撮像素子の前記領域毎の出力をアナログ/デジタル変換する際に前記領域毎の出力のアナログゲインを制御するゲイン制御工程と、
前記露光時間制御工程で前記露光時間の制御を行うタイミングを制御するための露光時間出力パルスと、前記露光時間出力パルスに同期した出力パルスであって前記ゲイン制御工程で前記アナログゲインの制御を行うタイミングを制御するためのゲイン出力パルスとを生成して、前記露光時間出力パルスを前記露光時間制御工程に出力し、前記ゲイン出力パルスを前記ゲイン制御工程に出力する同期制御工程と、
前記ゲイン制御工程により前記領域毎に前記アナログゲインが制御された所定のビット幅の出力に対し、基準となる撮影条件と、前記撮像素子の各々の領域毎に対応する露光時間およびアナログゲインとに基づいたビット分を下位ビット側または上位ビット側にマップする階調拡張処理を施して、前記ゲイン制御工程により前記アナログゲインが制御された前記領域毎の画値のレベルを補正する露光補正工程と、
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項10】
撮像装置が備えるコンピュータを、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の撮像装置が有する各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置およびその制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、デジタルカメラ等に用いられる撮像素子のダイナミックレンジは自然界のダイナミックレンジに対して小さいことが知られている。このため、従来、撮像素子のダイナミックレンジを拡大するための方法が検討されてきた。
特許文献1では予備撮影の情報から画素の各々の露光時間を決め、本撮影を行う方法が開示されている。また特許文献2では撮像素子の電荷を複数のデジタル撮像信号にそれぞれA/D変換し、各信号を合成して画像信号を生成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-136205号公報
【文献】特開2009-303010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術文献に記載の技術では、それぞれ以下の課題がある。
特許文献1の方法では露光時間の範囲(例えば1/30[秒]~1/61440[秒])を超えたダイナミックレンジを得ることが出来ない。ここで露光時間の範囲で得られるダイナミックレンジとは、露光時間の最大値と最小値の比で実現可能な階調数である。
特許文献2の方法ではA/D変換器を複数個並列に持つか、または時分割で高速に駆動する必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、ダイナミックレンジを拡大でき、A/D変換器は一つのみでよく、高速駆動も不要にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の撮像装置は、光を電荷に変換して蓄積する撮像素子の撮像領域を複数に分けた領域毎の露光時間を制御する露光時間制御手段と、前記撮像素子の前記領域毎の出力をアナログ/デジタル変換する際に前記領域毎の出力のアナログゲインを制御するゲイン制御手段と、前記露光時間制御手段が前記露光時間の制御を行うタイミングを制御するための露光時間出力パルスと、前記露光時間出力パルスに同期した出力パルスであって前記ゲイン制御手段が前記アナログゲインの制御を行うタイミングを制御するためのゲイン出力パルスとを生成して、前記露光時間出力パルスを前記露光時間制御手段に出力し、前記ゲイン出力パルスを前記ゲイン制御手段に出力する同期制御手段と、前記ゲイン制御手段により前記領域毎に前記アナログゲインが制御された所定のビット幅の出力に対し、基準となる撮影条件と、前記撮像素子の各々の領域毎に対応する露光時間およびアナログゲインとに基づいたビット分を下位ビット側または上位ビット側にマップする階調拡張処理を施して、前記ゲイン制御手段により前記アナログゲインが制御された前記領域毎の画値のレベルを補正する露光補正手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ダイナミックレンジを拡大でき、A/D変換器は一つのみでよく、高速駆動も不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態の撮像装置の概略構成を示す図である。
図2】撮像素子部の各領域の説明に用いる図である。
図3】領域毎露光時間の説明に用いる図である。
図4】領域毎アナログゲインの説明に用いる図である。
図5】露光時間とアナログゲインの組み合わせによる撮像条件例を示す図である。
図6】最も明るく撮影する撮影条件設定Aの説明に用いる図である。
図7】撮影条件設定Bの説明に用いる図である。
図8】最も暗く撮影する撮影条件設定Cの説明に用いる図である。
図9】階調変換処理の説明に用いる図である。
図10】境界段差補正処理の説明に用いる図である。
図11】同期制御処理の説明に用いる図である。
図12】領域毎露光制御信号の説明に用いる図である。
図13】第2の実施形態の撮像装置の概略構成を示す図である。
図14】第3の実施形態に係る階層構造の説明に用いる図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。同一の構成または処理については、同じ参照符号を付して説明する。
図1は第1の実施形態に係る撮像装置100の概略構成を示したブロック図である。本実施形態の撮像装置100は、一般的な撮像装置が有する各種の構成も備えているが、図示および説明を簡潔にするために、図1には本実施形態に係る主要な構成部のみを示している。
【0010】
まず図1の撮像装置100について、撮像素子部103を起点として各構成部の概要を説明する。
本実施形態において、撮像素子部103は、撮像領域を複数の領域に分割して駆動可能となされており、各々の領域毎に異なった露光時間による露光動作(電荷の蓄積)を行える機能を有している。本実施形態の場合、撮像素子部103は、後述する露光時間制御部109から供給される領域毎露光制御信号117によって各々の領域毎に露光時間が設定され、それら領域毎に設定された露光時間で露光を行う。そして撮像素子部103は、領域毎露光制御信号117によって領域毎に設定された露光時間で各画素に蓄積した電荷を、画素電位118として読み出してA/D変換部104に出力する。なお撮像素子部103における領域毎の露光と、画素電位118の読み出しの詳細は後述する。
【0011】
A/D変換部104は、撮像素子部103から読み出された画素電位118をアナログ/デジタル変換してデジタル値に変換する。詳細については後述するが、本実施形態の場合、A/D変換部104には、ゲイン制御部110によって前述の領域毎に対応したアナログゲイン(領域毎アナログゲイン121とする)が設定される。A/D変換部104は、撮像素子部103からの画素電位118に対して領域毎アナログゲイン121をかけた後、アナログ/デジタル変換してデジタル値に変換する。以下、A/D変換部104にて領域毎アナログゲイン121をかけてアナログ/デジタル変換されたデジタル信号よりなる画像を、領域毎露光画像122と呼ぶ。A/D変換部104から出力された領域毎露光画像122は、露光条件算出部111と露光補正部105とに送られる。
【0012】
露光条件算出部111は、領域毎露光画像122を基に、撮影が最適な条件となるように領域毎露光時間112および領域毎アナログゲイン値113を算出して更新する。そして、領域毎露光時間112の値は露光時間制御部109に送られ、領域毎アナログゲイン値113はゲイン制御部110に送られる。露光条件算出部111における領域毎露光時間112および領域毎アナログゲイン値113の算出処理の詳細は後述する。
【0013】
同期制御部101は、同期した露光時間出力パルス120とゲイン出力パルス114とを生成し、露光時間出力パルス120を露光時間制御部109に出力し、ゲイン出力パルス114をゲイン制御部110に出力する。同期制御部101と、露光時間出力パルス120およびゲイン出力パルス114の詳細は後述する。
【0014】
露光時間制御部109は、露光時間出力パルス120と領域毎露光時間112の値とを基に、撮像素子部103の各領域に露光時間を設定する領域毎露光制御信号117を生成して、撮像素子部103に出力する。これにより、撮像素子部103は、領域毎露光時間112に応じた領域毎の露光時間が、撮像素子部103に対して設定される。
【0015】
ゲイン制御部110は、ゲイン出力パルス114と領域毎アナログゲイン値113とを基に、撮像素子部103の領域毎の画素電位118に対する領域毎アナログゲイン121を生成して、A/D変換部104に出力する。これにより、A/D変換部104では、領域毎の画素電位118にそれぞれ対応した領域毎アナログゲイン121がかけられた後にアナログ/デジタル変換が行われる。ゲイン制御部110におけるアナログゲイン生成処理の詳細は後述する。
【0016】
露光補正部105は、A/D変換部104から送られてきた領域毎露光画像122に対し、領域毎露光時間112と領域毎アナログゲイン値113とに基づく階調拡張処理を施して階調拡張後画像123を生成する。詳細は後述するが、露光補正部105は、ビット(bit)数が10ビットで表される領域毎露光画像122に対する階調拡張処理により、17ビットで表される階調拡張後画像123を生成する。そして、階調拡張後画像123は、階調変換部106に送られる。
【0017】
階調変換部106は、階調拡張後画像123に対して階調変換を行い、その階調変換後画像124を段差補正部107へ出力する。本実施形態において、階調変換は、17ビット(bit)の階調拡張後画像123のガンマ変換により11ビットの階調変換後画像124を生成する処理であるとする。なお、本実施形態における階調変換処理は、後段の処理においてデータレートを抑えるために行われる。
【0018】
段差補正部107は、階調変換後画像124において、前述した領域毎に露光時間とアナログゲインを変更したことで領域間の境界部分に発生している可能性のある、画素値の段差(ギャップ、境界段差とする)を低減するための境界段差補正処理を行う。本実施形態の場合、境界段差補正処理は、領域の境界部分の段差を平滑化する平滑化処理であり、例えばローパスフィルタを適用するようなフィルタ処理であるとする。段差補正部107による境界段差補正後画像125は、画像出力部108に送られる。
画像出力部108は、境界段差補正後画像125を、撮像装置100の後段の構成若しくは外部に出力する。
【0019】
図2は、撮像素子部103の構成を説明する図である。
撮像素子部103の撮像領域は、複数の画素ブロック201からなり、さらに画素ブロック201は複数の画素202からなる。本実施形態の例では、撮像素子部103の撮像領域の幅206方向(水平ライン方向)の画素数が2000画素、高さ205方向の画素数が1000画素(つまり垂直方向における水平ライン数が1000ライン)であるとする。また、画素ブロック201の幅204方向(水平ライン方向)の画素数は100画素、高さ203方向の画素数は100画素(垂直方向における水平ラインの100ライン分)であるとする。この場合、撮像素子部103の撮像領域内における画素ブロック201の数は、水平方向が20個になり、垂直方向が10個になる。また図2の各画素ブロック201内に記載されている画素ブロック[0,0]~[19,9]は、撮像領域内の各画素ブロック201の位置を表しており、括弧[ ]内の値は撮像領域内における各画素ブロックの水平・垂直方向のインデックスを表している。図2において、撮像素子部103の例えば右上に位置している画素ブロック201の場合は、画素ブロック[19,0]となる。なお、撮像素子部103および画素ブロック201のそれぞれのサイズ(縦方向および横方向の画素数)は前述の例に限定されるものではない。また、画素202の形状および縦横比についても限定されず、例えば正方形ではなく長方形であってもよい。さらに画素ブロック201は、1つの画素202のみで構成されていてもよい。
【0020】
そして、本実施形態において、各画素ブロック201は、露光時間とアナログゲインの制御が可能な単位となされている。
ここで、露光時間は、撮影時において撮像素子部103の画素(受光素子)に電荷が蓄積される時間に相当する。このため、例えば撮像素子部103への入射光量が同じであり、画素が飽和しないとすると、露光時間が長いほど画素電位118は高くなる(明るく撮影できる)。つまり、入射光量が同じで画素の飽和を考慮しない場合、例えば露光時間が1/480秒の場合と1/30秒の場合とを比較すると、1/30秒の方が明るく撮影できることになる。
【0021】
アナログゲインは、撮影時にA/D変換部104において画素電位118にかけられるゲインである。このため、アナログゲインの値が大きいほど、A/D変換部104から出力されるデジタル画素値(ゲインがかけられた後にアナログ/デジタル変換されたデジタル値)が大きい値となる。
【0022】
図1に戻って、本実施形態の撮像装置100の構成および動作の詳細な説明を行う。
撮像素子部103は、領域毎露光制御信号117に基づき、画素ブロック201の単位で露光時間が制御されて撮像を行う。そして、撮像素子部103は、画素毎に蓄積された電荷に応じた画素電位118を出力する。
【0023】
A/D変換部104は、撮像素子部103から出力された各画素電位118に対し、撮像素子部103の画素ブロック毎に対応して設定された領域毎アナログゲイン121をかけた後にデジタル変換を行って、領域毎露光画像122を出力する。なお本実施形態において、領域毎露光画像122は10ビットのデジタル値であるとする。また、領域毎アナログゲイン121は、例えばゲイン値として、×1倍,×2倍,×4倍、×8倍の4つの値を取り得るものとする。
【0024】
露光補正部105は、A/D変換部104から入力された領域毎露光画像122に対し、領域毎露光時間112と領域毎アナログゲイン値113とに基づいた階調拡張処理を行って、階調拡張後画像123を出力する。本実施形態の場合、領域毎露光画像122は10ビットの値であるが、階調拡張後画像123のビット幅は、領域毎露光時間112と領域毎アナログゲイン値113とに基づく階調拡張処理でダイナミックレンジが増加することを考慮して17ビットとなされる。
【0025】
ここで、階調拡張後画像123のビット幅の17ビットは一例である。17ビットうち、領域毎露光画像122のビット幅(10ビット)に対する増加分(7ビット)の内訳は、領域毎露光時間112(1/30~1/480秒)に対応した4ビットと、領域毎アナログゲイン値113(1~8倍)に対応した3ビットとである。なお、露光時間とアナログゲイン値をそれぞれ表すのに必要な増加分のビット数は、露光時間とアナログゲイン値のそれぞれの最小値に対する最大値の比率を、2の底で対数を取った値である。具体的には、露光時間を表すのに必要となるビット数の場合、4ビット(=log2((1/30)÷(1/480)))の計算により求められる。本実施形態では、説明を単純にするために、比較的小さい範囲の露光時間とアナログゲイン値を例に挙げたが、これらの組み合わせに限定されるものではない。例えば、露光時間を(1/30~1/61440秒)とした場合には、その露光時間を表すのに必要なビット幅の増加分は、11ビット(=log2((1/30)÷(1/61440)))となる。なお、露光補正部105における補正処理の詳細は図6の説明時に後述する。
【0026】
露光補正部105の詳細な処理について説明する前に、領域毎露光時間112および領域毎アナログゲイン値113について、図3図4、および図5を参照しながら説明する。
先ず図3を用いて、画素ブロック201毎に設定される領域毎露光時間112について説明する。
領域毎露光時間112は、図3に示すように、露光時間IDと、露光時間(秒)の値と、露光補正係数とを含む。露光時間IDは、露光時間(秒)を示すインデックスである。図3の各画素ブロック201内に記載されている露光時間ID[0,0]~[19,9]は、図2に示した各画素ブロック[0,0]~[19,9]におけるそれぞれの露光時間IDを表している。本実施形態の場合、露光時間IDを示すインデックスの値は0~4の何れかとなされるものとする。図3の例では、撮像領域の右上に位置している画素ブロック[19,0]における露光時間ID[19,0]のインデックス値が4である場合を示している。なお、露光時間IDに対応した実際の露光時間(秒)と露光補正係数については後に図5を用いて説明する。
【0027】
次に図4を用いて、領域毎アナログゲイン値113について説明する。
領域毎アナログゲイン値113は、図4に示すように、ゲインIDと、アナログゲインの値と、ゲイン補正係数とを含む。ゲインIDは、アナログゲインを示すインデックスである。図4の各画素ブロック201内に記載されているゲインID[0,0]~[19,9]は、図2に示した各画素ブロック[0,0]~[19,9]におけるそれぞれのゲインIDを表している。本実施形態の場合、ゲインIDを示すインデックスの値は0~3の何れかとなされるものとする。図4の例では、撮像領域の右上に位置している画素ブロック[19,0]におけるゲインID[19,0]のインデックス値が2である場合を示している。なお、ゲインIDに対応した実際のアナログゲインとゲイン補正係数については後に図5を用いて説明する。
【0028】
次に、図5を参照して、露光時間IDとそれに対応した露光時間および露光補正係数について説明する。
前述したように、露光時間IDはインデックスとして0~4の値をとるものとする。露光時間IDのインデックス値0は、露光時間(秒)の1/30[秒]に対応しているとする。以下同様に、露光時間IDのインデックス値1は露光時間(秒)の1/60[秒]、インデックス値2は1/120[秒]、インデックス値3は1/240[秒]、インデックス値4は1/480[秒]にそれぞれ対応しているとする。露光時間は撮影条件に関わるパラメータの一つであり、本実施形態では、最も明るく撮影できる条件となる露光時間IDのインデックス値を0としている。撮像素子部103への入射光量が同じで画素飽和がないとすると、最も明るく撮影できる露光時間1/30[秒]を基準とした場合に、各々の露光時間(1/30秒~1/480秒)による撮影時の明るさは1~1/16倍となる。例えば、露光時間IDのインデックス値0における露光時間の1/30(秒)に対し、露光時間IDのインデックス値4における露光時間の1/480[秒]では、撮影時の明るさが1/16倍(=(1/480秒)÷(1/30秒))になる。
【0029】
また露光補正係数は、前述のように露光時間IDの各インデックスに対応した露光時間で撮影が行われた場合の画素値のレベルをそれぞれ合わせるための補正係数である。本実施形態の場合、露出補正係数は、最も明るく撮影できる露光時間1/30[秒]で撮影が行われた場合のレベルを基準として、各々の露光時間(1/30秒~1/480秒)における画素値のレベルを合わせるような補正係数となされている。このため、露光補正係数は、撮影時における明るさの比率の逆数が用いられる。前述のように最も明るく撮影できる露光時間1/30[秒]を基準にすると、露光時間1/30秒~1/480秒での撮影時の明るさは1~1/16倍となるため、図5に示すように、露光補正係数は、それらの逆数である1~16倍となる。
【0030】
次に図5を参照して、ゲインIDとそれに対応したアナログゲインおよびゲイン補正係数について説明する。
前述したように、ゲインIDはインデックスとして0~3の値をとるものとする。ゲインIDのインデックス値0は8倍に相当するアナログゲインに対応し、以下同様に、ゲインIDのインデックス値1は4倍、インデックス値2は2倍、インデックス値3は1倍にそれぞれ対応しているとする。アナログゲインは、前述した露光時間と同様、撮影条件に関わるパラメータの一つであり、本実施形態では、最も明るい画像が得られる条件となるゲインIDのインデックス値を0としている。
【0031】
ゲイン補正係数は、前述のようにゲインIDの各インデックスに対応したアナログゲインがかけられた場合の画素値のレベルをそれぞれ合わせるための補正係数である。本実施形態の場合、ゲイン補正係数は、最も明るい画像が得られるアナログゲインが8倍の場合の画素値のレベルを基準として、各々のアナログゲイン(8倍から1倍)における画素値のレベルを合わせるような補正係数となされている。このため、ゲイン補正係数は、図5に示すように、アナログゲインの8倍~1倍に対して、逆となる1~8倍となされる。
【0032】
次に図5を用いて、露光時間IDに対応した露光時間(秒)および露光補正係数と、ゲインIDに対応したアナログゲインおよびゲイン補正係数との組み合わせについて説明する。
露光時間とアナログゲインとは、前述したようにそれぞれが撮影条件に関わるパラメータであり、本実施形態の場合、最も明るく撮影できる条件となる露光時間IDおよびゲインIDの各インデックスが各々0になされている。このため、例えば図5中にAで示される、露光時間IDのインデックスが0(露光時間1/30秒)と、ゲインIDのインデックスが0(アナログゲイン8倍)との組み合わせは、最も明るく撮影される条件となる。以下、この組み合わせによる撮影条件の設定を、撮影条件設定Aと表記する。
【0033】
一方で、図5中にCで示される、露光時間IDとゲインIDのインデックスが共に最も大きくなる組み合わせは、最も暗く撮影される条件となる。以下、この組み合わせによる撮影条件の設定を、撮影条件設定Cと表記する。これらアナログゲインと露光時間との組み合わせは一例であり、前述の例に限定されるものではない。なお、図5中にBで示される組み合わせ例(撮影条件設定Bとする)については後述する。
【0034】
次に図5に示した各撮影条件設定A,B,Cを例に挙げ、図6図7、および図8を参照しながら、露光補正部105に行われる領域毎露光補正処理について詳細に説明する。
まず図6を用いて、最も明るく撮影する設定(図5の撮影条件設定A)の場合の領域毎露補正処理について説明する。
図6は、被写体の明るさ(照度)、画素電位、領域毎露光画像、ゲイン補正後画像、露光補正後画像、および階調拡張後画像のそれぞれを、明暗方向を示す各軸で表した図である。図6は、被写体が撮影されて階調拡張後画像が出力されるまでの過程を表している。また図6の例では、被写体を最も明るく撮影する設定(図5の撮影条件設定A)を基準となる設定とし、この基準の設定において、最低輝度の値(図中に○印で示した値)と最高輝度の値(図中に△印で示した値)とを基準にして、各軸が揃えられている。なお、被写体と画素電位と領域毎露光画像の各軸の値はそれぞれ単位の異なる値であるが、後述する図7図8で設定を変えた場合の説明を分かり易くするために、図6では最低輝度および最高輝度に対応した各値が水平方向に揃うように描かれている。
【0035】
以下、被写体が撮影されて階調拡張後画像が出力されるまでの過程における各値の遷移について説明する。
前述したように、図5に示した撮影条件設定Aは、最も明るく撮影するための組み合わせである。この撮影条件設定Aの場合、撮像素子部103では1/30秒の露光時間で被写体等を撮像し、A/D変換部104では撮像素子部103からの画素電位に対して8倍のアナログゲインをかけてA/D変換が行われる。以下の説明では、最も明るく撮影するための撮影条件設定Aで撮影できる明るさを「基準の明るさ」と呼ぶことにする。また、画素電位をA/D変換して得られる領域毎露光画像は、前述したように10ビットのデジタル値であるとする。
【0036】
A/D変換部104では、前述した撮影条件設定Aにより、8倍のアナログゲインを用いたA/D変換が行われる。8倍のアナログゲインが適用された場合のゲイン補正係数は1であるため、露光補正部105によるゲイン補正後画像は、領域毎露光画像に対してゲイン補正係数(1倍)を適用した画像となる。また図6の例の場合、撮影条件設定Aにより、撮像素子部103では露光時間1/30秒による撮像が行われる。露光時間が1/30秒の場合の露光補正係数は1であるため、露光補正部105による露光補正後画像は、ゲイン補正後画像に対して露光補正係数(1倍)を適用した画像となる。
【0037】
また領域毎露光画像は、撮像素子部103の領域毎に、前述の図5に示したような様々な撮影条件の組み合わせで撮像されて得られる画像である。このため露光補正部105は、領域毎露光画像に対し、領域毎の画像のレベルを合わせる。ただし領域毎のレベルを合わせることを考えた場合、領域毎露光画像のビット数(10ビット)に対し、前述した各露光時間に対応した4ビットがさらに必要となり、また各アナログゲインに対応した3ビットがさらに必要となる。より詳細に説明すると、図5に示したように、露光時間は1/30秒~1/480秒の幅があるので、例えば露光時間が1/480秒で撮像した時の明るさを1/30秒の露光時間で撮影した基準の明るさに合わせるためには画素値をレベル16倍する必要がある。これは+4ビット分(16=2^4)に相当する。同様に、図5に示したようにアナログゲインは8倍~1倍の幅があるので、例えば1倍で取得した明るさを、8倍の基準の明るさに合わせるためには画素値を8倍する必要がある。これは+3ビット分(8=2^3)に相当する。このようなことから露光補正部105は、露光補正後画像(10ビット)について領域毎のレベルを合わせてビット拡張処理を行った17ビット(=10+4+3)の階調拡張後画像を出力する。
【0038】
図6に例のように最も明るく撮影する設定(撮影条件設定A)において被写体撮影から階調拡張後画像の出力までの処理は、被写体の暗部側を階調拡張後画像の下位ビット側にマップする処理となり、暗い領域の撮影に適していることが判る。
【0039】
次に図7を用いて、露光時間が1/480秒で、アナログゲインが2倍(つまり図5における撮影条件設定B)である場合の例について説明する。図7図6と同様に表された図である。
【0040】
ここで、露光時間の1/480秒は、前述した基準の露光時間の1/30秒に対して1/16の時間である。このため、基準の露光時間(1/30秒)で撮像した場合と被写体の明るさ(照度)が同じであるならば、露光時間1/480秒で当該被写体が撮像された際の画素電位は、基準の露光時間1/30秒の場合の画素電位に対して1/16倍の値になる。また撮影条件設定Bにおいて、アナログゲインは2倍であり、これは基準のアナログゲインの8倍に対して1/4倍のゲインである。このため、アナログゲインが2倍である場合の領域毎露光画像は、基準のアナログゲイン(8倍)の場合の領域毎露光画像に対してレベルが1/4倍の画像になる。この結果、図5に示した撮影条件設定Bの場合、被写体の明部側の値が領域毎露光画像の10ビットにマップされる。
【0041】
次に、露光補正部105は、その領域毎露光画像の値を、基準の撮影条件(露光時間1/30秒、アナログゲイン8倍)の場合のレベルに合わせる。撮影条件設定B(露光時間1/480秒、アナログゲイン2倍)の場合、前述の図5に示したように、ゲイン補正係数は4(=8倍÷2倍)であり、露光補正係数は16(=(1/30秒)÷(1/480秒))である。このため、それらゲイン補正係数の4、露光補正係数の16を適用すると、領域毎露光画像に対して、露光補正後画像は6ビット分(4×16=2^6)上位ビット側にマップされる。この結果、領域毎露光画像は、階調拡張後画像における17ビットのうち6~15ビットにマップされる。
【0042】
すなわち、図7の例のように、撮影条件設定B(露光時間1/480秒、アナログゲイン2倍)の場合には、被写体の比較的明部側が階調拡張後画像にマップされることになる。
【0043】
次に図8を用いて、露光時間が1/480秒で、アナログゲインが1倍(つまり図5において最も暗く撮影する撮影条件設定C)である場合の例について説明する。図8図6図7と同様に表された図である。
【0044】
前述の図7で説明したように、露光時間1/480秒は基準の露光時間1/30秒に対して1/16の時間であるため、露光時間1/480秒の場合の画素電位は、基準の露光時間1/30秒の場合の画素電位に対して1/16倍の値になる。また撮影条件設定Cの場合、アナログゲインは1倍であり、これは基準のアナログゲインの8倍に対して1/8倍のゲインである。このため、アナログゲインが1倍である場合の領域毎露光画像は、基準のアナログゲイン(8倍)の場合の領域毎露光画像に対してレベルが1/8倍の画像になる。
【0045】
また図8の例の場合も、露光補正部105は、領域毎露光画像の値を、基準の撮影条件(露光時間1/30秒、アナログゲイン8倍)の場合のレベルに合わせる。撮影条件設定C(露光時間1/480秒、アナログゲイン1倍)の場合、前述の図5に示したように、ゲイン補正係数は8(=8倍÷1倍)であり、露光補正係数は16(=(1/30秒)÷(1/480秒))である。
【0046】
このため、図8の例のように、撮影条件設定C(露光時間1/480秒、アナログゲイン1倍)の場合には、被写体の明部側が、階調拡張後画像の最上位ビット側(7~16ビット)にマップされることになる。
以上、図6図8を例に挙げて説明したように、図1の露光補正部105は、領域毎露光画像122(10ビット)を階調拡張後画像123(17ビット)に変換する処理を行う。
【0047】
次に図9を参照して、図1の階調変換部106における階調変換処理を説明する。
階調変換部106は、階調拡張後画像123(17ビット)に対し、画素単位で階調変換処理を適用し、階調変換後画像124(本実施形態では11ビット)に変換する。階調変換処理は、階調拡張後画像123(17ビット)のビット長を低減して、撮像装置100からの出力データートを低減するために行う。具体的には、階調変換部106は、図9に示すように、階調拡張後画像123(0~2^17-1)の値を、階調変換後画像124(0~2^11-1)にマッピングする。
【0048】
次に図10を参照して、図1の段差補正部107における境界段差補正処理を説明する。
図10に示すように、画素ブロック201毎に撮影条件設定を変えて取得した画像は、撮影時の露光時間およびアナログゲインの補正を行っただけでは、各画素ブロック201の境界部の画素間で画素値に段差が残る可能性がある。例えば、アナログゲイン1倍に対し、アナログゲイン2倍の場合は、理想的にはデジタル値は2.0倍になることが期待されるが、実際にはデバイスの物理特性などに起因して誤差(2.0+Δ倍)が発生する可能性がある。このような場合は、隣り合う画素ブロック201の境界部の画素値間に段差が発生することが起こりえる。
【0049】
このため、段差補正部107は、画素ブロック201の境界部分にてフィルタ処理(平滑化処理)を適用することで、その境界部における画素値間の段差を軽減する。具体的には、段差補正部107は、図10に示すように、画素ブロック201の境界に位置する着目画素1001の近傍を参照画素1000とし、参照画素1000の画素値を加重平均した値と着目画素1001の画素値とから出力画素値を求める。フィルタ処理としては、一例としてローパスフィルタを用いた処理を挙げることができる。ローパスフィルタを用いたフィルタ処理は、既知の処理であるため、その説明は省略する。
【0050】
段差補正部107のフィルタ処理により、階調変換後画像124の画素ブロック境界のギャップは軽減されて、境界段差補正後画像125が出力される。なおローパスフィルタによるフィルタ処理が行われると画像のシャープネスは低下するが、本実施形態の場合、フィルタ処理は画素ブロック境界部分にのみ適用されるため、画像のシャープネスの低下を画素ブロックの境界部分にのみ止めることが出来る。
【0051】
また本実施形態では、ローパスフィルタによるフィルタ処理(平滑化処理)を例に挙げたが、フィルタの種類はローパスフィルタに限らず、イプシロンフィルタ等の他の公知のフィルタであってもよい。
【0052】
本実施形態では、図1の露光補正部105、階調変換部106、段差補正部107の順に各処理が行われる例を挙げたが、それらの処理順は図1の例に限定されず、適宜入れ替えられていてもよい。
【0053】
前述のように段差補正部107によって画素ブロック境界の段差が軽減された後の境界段差補正後画像125は、画像出力部108を介して不図示の後段の構成もしくは外部の構成等に出力される。画像出力部108は、例えばLVDSやMIPI(登録商標)等の高速シリアルI/Fを有する。なお、LVDSはLow Voltage Differential Signalingの略称である。MIPIは、Mobile Industry Processor Interfaceの略称である。
【0054】
ここまでは、撮像素子部103から画像出力部108までの構成を説明したが、以下、図1の同期制御部101、露光時間制御部109、露光条件算出部111、ゲイン制御部110について詳細に説明する。
【0055】
同期制御部101は、同期した露光時間出力パルス120とゲイン出力パルス114とを生成して、露光時間出力パルス120を露光時間制御部109に送り、ゲイン出力パルス114をゲイン制御部110に送る。これによって、同期制御部101は、露光時間制御部109とゲイン制御部110の処理を同期制御する。露光時間出力パルス120は、露光時間制御部109が領域毎露光制御信号117を撮像素子部103に出力するタイミングを制御するための信号である。露光時間制御部109は、露光時間出力パルス120に基づいて、領域毎露光制御信号117を撮像素子部103に出力することで、撮像素子部103の任意の画素ブロック毎に露光時間を変更する。また、ゲイン出力パルス114は、ゲイン制御部110が領域毎アナログゲイン121をA/D変換部104に出力するタイミングを制御するための信号である。ゲイン制御部110は、ゲイン出力パルス114に基づいて、領域毎アナログゲイン121をA/D変換部104に出力することで、任意の画素ブロック毎に画素電位にかけるゲインを変更する。このように本実施形態では、同期制御部101が、露光時間制御部109とゲイン制御部110を同期させて動作制御を行うことで、撮像素子部103の画素ブロック毎に露光時間とアナログゲインを適宜変えた領域毎露光画像122を取得できる。
【0056】
以下、図11を用いて、同期制御部101による露光時間出力パルス120およびゲイン出力パルス114の生成と、露光時間制御部109による露光時間制御およびゲイン制御部110によるアナログゲイン制御の処理について説明する。
図11では、画素ブロック[0,0]と[0,1]を例に挙げ、それら画素ブロックについて各々異なる露光時間とアナログゲインを適用する場合について説明する。なお、図2で説明したように、画素ブロック201は、幅方向(水平ライン方向)の画素数が100画素で、高さ方向の画素数が100画素(垂直方向における水平ラインが100ライン分)であるとする。例えば、画素ブロック[0,0]の場合、高さ方向(垂直方向)における水平ラインは0~99ラインとなり、画素ブロック[0,1]の場合、高さ方向(垂直方向)における水平ラインは100~199ラインとなる。また、撮像素子部103の撮像領域は、水平方向に20個、垂直方向に10個の各画素ブロック201からなるとする。
【0057】
図11において、左側のチャート1100は、横軸が時間、縦軸が垂直方向における水平ライン数を表しており、露光時間とアナログゲインがそれぞれ適用される動作タイミングを示している。一方、図11の右側は、撮像素子部103の撮像領域における各画素ブロック201の配置を表している。以下の説明では、各画素ブロック201のうち、左上の画素ブロック[0,0]で表される画素ブロック201については、露光時間が1/30秒で、アナログゲイン8倍が適用されるとする。一方、画素ブロック[0,0]に対して垂直方向に1ブロック分下の画素ブロック[0,1]で表される画素ブロック201については、露光時間が1/60秒で、アナログゲイン4倍が適用されるとする。
【0058】
画素ブロック[0,0]は、前述したように水平ラインの0~99ラインに対応する画素ブロック201である。このため、画素ブロック[0,0]について露光およびアナログゲイン処理が行われる場合、同期制御部101は、撮像素子部103の0~99ライン目までに対応した、露光時間出力パルス120とゲイン出力パルス114とを生成して出力する。
【0059】
そして、露光時間制御部109は、露光時間出力パルス120と領域毎露光時間112とを基に、0~99ラインの画素ブロック201では露光時間1/30秒で露光が行われるように撮像素子部103を駆動する領域毎露光制御信号117を生成する。また、ゲイン制御部110は、ゲイン出力パルス114と領域毎アナログゲイン値113とを基に、0~99ラインの画素ブロック201の画素電位には8倍のアナログゲインをかけるようにA/D変換部104を駆動制御する領域毎アナログゲイン121を生成する。このとき、画素ブロック[0,0]では、実線1103で示す露光の開始時間のタイミングと実線1104で示す露光の終了時間のタイミングを水平ラインごとにずらしつつ、各水平ラインに同じ露光時間(1/30秒)が適用される。また、同期制御部101は、画素ブロック[0,0]の各ラインの露光時間の終了タイミングがアナログゲインの駆動タイミングになるよう露光開始のタイミングを調整する。
【0060】
また画素ブロック[0,1]は、前述したように水平ラインの100~199ラインに対応する画素ブロック201である。このため、画素ブロック[0,1]について露光およびアナログゲイン処理が行われる場合、同期制御部101は、撮像素子部103の100~199ライン目までに対応した、露光時間出力パルス120とゲイン出力パルス114とを生成して出力する。
【0061】
露光時間制御部109は、露光時間出力パルス120と領域毎露光時間112とを基に、100~199ラインの画素ブロック201では露光時間1/60秒で露光が行われるように撮像素子部103を駆動する領域毎露光制御信号117を生成する。ゲイン制御部110は、ゲイン出力パルス114と領域毎アナログゲイン値113とを基に、100~199ラインの画素ブロック201の画素電位に4倍のアナログゲインをかけるようにA/D変換部104を駆動制御する領域毎アナログゲイン121を生成する。画素ブロック[0,1]の場合も前述同様に、実線1105と実線1106で示す露光の開始と終了のタイミングを水平ラインごとにずらしつつ、各水平ラインに同じ露光時間(1/60秒)が適用される。同様に、同期制御部101は、画素ブロック[0,1]の各ラインの露光時間の終了タイミングがアナログゲインの駆動タイミングになるよう露光開始のタイミングを調整する。
【0062】
図12は、領域毎露光制御信号117と画素ブロックとの関係説明に用いる図である。
領域毎露光制御信号117は、画素ブロック毎に適宜異なる露光時間を適用するための画素駆動パルスの束からなる信号である。
図12に示すように、領域毎露光制御信号117は、撮像素子部103の画素ブロックの1ライン毎に接続され、画素ブロック毎の露光時間を制御する信号となされている。図12の例では、領域毎露光制御信号117は、水平方向に画素駆動パルスsb0p0~sb19p0、sb0p1~sb19p1、・・・のように分かれ、さらに各々が行方向に分かれて、画素ブロックの1ライン毎に接続される。各画素駆動パルスはそれぞれ独立に制御可能となされている。
【0063】
ここで、水平方向の左端の各画素ブロック[0,0]~[0,9]に着目すると、領域毎露光制御信号117は画素駆動パルスsb0p0~sb0p999に分かれ、例えば画素駆動パルスsb0p0は画素ブロック[0,0]の1番目の水平ラインに接続される。一般的なイメージセンサの場合は、垂直方向の順に1水平ライン毎に画素駆動パルスが接続され、ローリングシャッタ方式が適用されることで撮像素子部103全体に一律の露光時間が適用される。これに対し、本実施形態の場合、水平方向の画素ブロック毎に領域毎露光制御信号117が接続され、水平方向の画素ブロック毎に異なる露光時間が適用される。また垂直方向については、画素ブロックの境界で異なる露光時間に切り替えることで、画素ブロック毎に異なる露光時間を適用できるようにしている。
【0064】
図1に説明を戻す。
ゲイン制御部110は、ゲイン出力パルス114と領域毎アナログゲイン値113とに基づいて、領域毎アナログゲイン121を出力する。領域毎アナログゲイン121は、領域毎アナログゲイン値113で指定される画素ブロック毎に、所望のアナログゲインが適用される。
【0065】
同様に、図1において、露光条件算出部111は、撮影した領域毎露光画像122の輝度分布に基づいて、領域毎露光時間112と領域毎アナログゲイン値113とが最適な設定値になるように計算する。具体的には、露光条件算出部111は、画素ブロック毎にと画素値のヒストグラムを算出し、明部側に画素値が分布していれば、より暗く撮影する設定値になるように領域毎露光時間112と領域毎アナログゲイン値113とを変更(更新)する。
【0066】
露光条件算出部111における処理を図7図8を参照しながら説明する。
前述の図5の撮影条件設定Bによる撮影例である図7において、例えば、階調拡張後画像123の画素値が明部側に分布していた場合、より明部側の画素値を取得したいとする。この場合、露光条件算出部111は、より暗く撮影できるよう領域毎露光時間112と領域毎アナログゲイン値113を更新する。具体的には、図7に示した撮影条件設定Bの場合、露光条件算出部111は、図8の最も暗く撮影する撮影条件設定Cに変更する。同様に、露光条件算出部111は、画素値が暗部側に分布していた場合には、逆の設定をする。このように、露光条件算出部111は画素ブロックごとに前述の処理を行う。
【0067】
以上説明したように、本実施形態の撮像装置100は、画素ブロック毎に露光時間とアナログゲインを同期して制御して撮影する。本実施形態の撮像装置100は、このように露光時間に加えてアナログゲインを領域毎に制御することで、アナログゲイン分のダイナミックレンジを拡張できる。一方で、A/D変換された後のデジタル値に係数を乗じるデジタルゲイン処理の場合、A/D変換後に低輝度側の値が0(黒つぶれ)または高輝度側の値がデジタル値の最大(白飛び)になる場合には、係数を乗じるという処理の特性上、階調を回復できない。これに対し、本実施形態のようなアナログゲインの調整は、前述の黒つぶれ、或いは白飛びの問題をアナログゲインの範囲内で解消できるという利点がある。また本実施形態のおいては、画素ブロック毎に異なる露光時間とアナログゲインで取得した画素値のレベルを合わせ、階調変換処理でビット長を低減し、さらに画素ブロックの境界に発生し得る段差を軽減した画像を出力可能となる。
【0068】
図13は、第2の実施形態に係る撮像装置1300の概略構成を示したブロック図である。前述した第1の実施形態の撮像装置100は、露光補正部105、階調変換部106、段差補正部107を有するのに対し、第2の実施形態の撮像装置1300はそれらを有していない。
【0069】
このため、第2の実施形態の撮像装置1300は、領域毎露光画像122を10ビットのまま画像出力部108から出力する。これに加え、画像出力部108は、領域毎露光時間112と領域毎アナログゲイン値113とをも出力する。すなわち、第2の実施形態では、撮像装置1300の外部で、図1の露光補正部105以降の処理をすることを想定している。本実施形態では、領域毎露光時間112と領域毎アナログゲイン値113とを、領域毎露光画像122と共に出力する例を示したが、この構成に限定する必要はなく、シリアルIOなどの別のI/Fから出力する構成としてもよい。
【0070】
図14は、第3の実施形態に係る撮像装置の構成例を示した図である。なお、第3の実施形態の撮像装置の他の構成は、図1に示した第1の実施形態の撮像装置100または図14に示した第2の実施形態の撮像装置1300と同様であるとする。
第3の実施形態に係る撮像装置は、図14に示すように、2層となる積層構造を有して構成されている。センサ層1400は撮像素子部103を露光する側であり、回路層1401はセンサ層1400と撮像素子部103の除いた他の層である。回路層1401には、露光時間制御部109が配置され、領域毎露光制御信号117の各画素駆動パルスが、積層構造の層間で垂直に配線される。
【0071】
ここで、領域毎露光制御信号117は、領域毎(画素ブロック毎)に異なる露光時間を設定するという性質上、配線本数が増大することになる。このため、通常の1層の構成で実現しようとすると、領域毎露光制御信号117のための配線が撮像素子部103を遮って、十分な画素面積を確保できなくなる。これに対し、第3の実施形態の場合、センサ層1400には基本的に撮像素子部103のみを配置できるので、十分な画素面積を確保できるという利点がある。なお、層の数は2層に限定したものではなく、3層以上(2層以上)の構成になされてもよい。また、センサ層1400と回路層1401の分け方は一例であり、センサ層1400に撮像素子部103以外の構成要素が配されてもよい。
【0072】
以上説明したようなことから、第1~第3の実施形態によれば、前述した特許文献1に記載された手法に対し、露光時間の範囲に加え、アナログゲインの範囲(例えば1倍から8倍)でダイナミックレンジを拡大できる。すなわち特許文献1に記載の手法の場合、露光時間の範囲(例えば1/30秒~1/61440秒)を超えるようなダイナミックレンジを得ることはできないが、本実施形態によればアナログゲインの範囲でダイナミックレンジを拡大できる。また、本実施形態によれば、特許文献2に記載の手法に対し、A/D変換部は一つ持つのみでよく、回路規模の削減ができ、また高速駆動を行う必要もない。すなわち特許文献2に記載の手法の場合、A/D変換器を複数個並列に持つか、またはA/D変換器を時分割で高速駆動する必要があるが、本実施形態によればA/D変換部は一つでよく、また高速駆動する必要がない。
【0073】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける一つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
上述の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明は、その技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0074】
100:撮像装置、101:同期制御部、103:撮像素子部、104:A/D変換部、105:露光補正部、106:階調変換部、107:段差補正部、108:画像出力部、109:露光時間制御部、110:ゲイン制御部、111:露光条件算出部
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