(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】X線CT装置、X線CT装置の制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/42 20240101AFI20240902BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
A61B6/42 530P
A61B6/03 521B
(21)【出願番号】P 2020046028
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2023-01-31
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西島 輝
(72)【発明者】
【氏名】高安 正郎
【審査官】佐藤 賢斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-260048(JP,A)
【文献】特開2015-104667(JP,A)
【文献】特開2002-065659(JP,A)
【文献】特開2011-194223(JP,A)
【文献】特開2007-220087(JP,A)
【文献】特開2000-342568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管から照射されたX線を検出するX線検出器と、
前記X線管と前記X線検出器とを対向保持した状態で回転させる回転部と、
前記X線検出器の温度制御を行う制御部であって、
前記回転部が回転しているときの前記回転部の回転速度に基づいて、前記回転部が回転しているときの前記温度制御に関するフィードバックパラメータを調整する制御部と、
を備える、X線CT装置。
【請求項2】
前記制御部は、P制御、PI制御、またはPID制御による前記温度制御に関するフィードバックパラメータを調整する、
請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記X線CT装置で実行するスキャンプロトコルを取得する取得部をさらに備え、
前記取得部は取得されたスキャンプロトコルに基づいて、前記回転部の回転速度に関する情報を取得し、
前記制御部は、前記取得部により取得された前記スキャンプロトコルに基づいて前記フィードバックパラメータを制御する、
請求項1または2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記X線CT装置の撮影終了時には、スキャン用の前記フィードバックパラメータとは異なる、停止時専用フィードバックパラメータを制御する、
請求項3に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記X線CT装置の架台温度を計測する計測部と、
前記計測部による計測結果に基づいて、前記フィードバックパラメータを設定するパラメータ設定部と、をさらに備える、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載のX線CT装置。
【請求項6】
コンピュータが、
X線管と前記X線管から照射されたX線を検出するX線検出器とを対向保持した状態で回転させる回転部を回転させ、
前記X線管および前記X線検出器
を回転させる前記回転部が回転しているときの前記回転部の回転速度に基づいて、前記回転部が回転しているときの温度制御に関するフィードバックパラメータを調整する、
X線CT装置の制御方法。
【請求項7】
コンピュータに、
X線管と前記X線管から照射されたX線を検出するX線検出器とを対向保持した状態で回転させる回転部を回転させ、
前記X線管および前記X線検出器
を回転させる前記回転部が回転しているときの前記回転部の回転速度に基づいて、前記回転部が回転しているときの温度制御に関するフィードバックパラメータを調整させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線CT装置、X線CT装置の制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スキャン画質維持のため、X線CT装置の架台装置(ガントリ)内のX線検出器の温度が所定温度(例えば、40〔℃〕程度)に保たれることが望ましく、その温度調整をオペレータコンソール側で操作する医用画像診断装置が知られている。これに関する従来の技術では、医用画像診断装置を配置した架台装置内のX線検出器に温度取得手段を配置し、温度調整に関わる情報を取得してオペレータコンソールに提供することで、操作者がオペレータコンソール側で温度調整操作できるようにしていた。しかしながら、X線検出器の温度調整を自動的に行うことについては十分考慮されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は、X線検出器の温度調整を自動的に行うことである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のX線CT装置は、X線検出器と、回転部と、制御部とを備える。X線検出器は、X線管から照射されたX線を検出する。回転部は、前記X線管と前記X線検出器とを対向保持した状態で回転させる。制御部は、前記X線検出器の温度制御を行う制御部であって、前記回転部の回転速度に基づいて、前記温度制御に関するフィードバックパラメータを調整する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図4】架台装置およびX線検出器の構成を示した斜視図。
【
図6】X線CT装置による温度制御パラメータ取得処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図7】X線CT装置による撮影に伴う温度制御処理の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、実施形態のX線CT装置、X線CT装置の制御方法およびプログラムについて説明する。X線CT装置は、被検体を寝台装置に載置してX線撮影(スキャン)を行って医用画像を取得し、その医用画像に対する処理を行って被検体を診断する装置である。
【0008】
図1は、実施形態のX線CT装置1の概要を示す図である。X線CT装置1は、例えば、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを備える。
【0009】
架台装置10は、例えば、X線管11と、ウェッジ12と、コリメータ13と、X線高電圧装置14と、X線検出器15と、データ収集システム(以下、DAS:Data Acquisition System)16と、回転フレーム17と、制御装置18とを有する。
【0010】
X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生させる。X線管11は、真空管を含む。例えば、X線管11は、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管である。
【0011】
ウェッジ12は、X線管11から被検体Pに照射されるX線量を調節するためのフィルタである。ウェッジ12は、X線管11から被検体Pに照射されるX線量の分布が予め定められた分布になるように、自身を透過するX線を減衰させる。ウェッジ12は、ウェッジフィルタ(wedge filter)、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。ウェッジ12は、例えば、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したものである。
【0012】
コリメータ13は、ウェッジ12を透過したX線の照射範囲を絞り込むための機構である。コリメータ13は、例えば、複数の鉛板の組み合わせによってスリットを形成することで、X線の照射範囲を絞り込む。コリメータ13は、X線絞りと呼ばれる場合もある。
【0013】
X線高電圧装置14は、例えば、高電圧発生装置と、X線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器(トランス)および整流器などを含む電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生させる。X線制御装置は、X線管11に発生させるべきX線量に応じて高電圧発生装置の出力電圧を制御する。高電圧発生装置は、上述した変圧器によって昇圧を行うものであってもよいし、インバータによって昇圧を行うものであってもよい。X線高電圧装置14は、回転フレーム17に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム(不図示)の側に設けられてもよい。
【0014】
X線検出器15は、X線管11が発生させ、被検体Pを通過して入射したX線の強度を検出する。X線検出器15は、検出したX線の強度に応じた電気信号(光信号などでもよい)をDAS18に出力する。X線検出器15は、例えば、複数のX線検出素子列を有する。複数のX線検出素子列のそれぞれは、X線管11の焦点を中心とした円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたものである。複数のX線検出素子列は、スライス方向(列方向、row方向)に配列される。
【0015】
X線検出器15は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。それぞれのシンチレータは、シンチレータ結晶を有する。シンチレータ結晶は、入射するX線の強度に応じた光量の光を発する。グリッドは、シンチレータアレイのX線が入射する面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドは、コリメータ(一次元コリメータまたは二次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、例えば、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)等の光センサを有する。光センサアレイは、シンチレータにより発せられる光の光量に応じた電気信号を出力する。X線検出器15は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であってもかまわない。
【0016】
X線検出器15には、複数の検出ユニット15aが含まれる。検出ユニット15aは、例えば、冷却装置15bやヒータ15cなどの温度調整機能が含まれる。X線検出器15の構成については後述する。
【0017】
DAS16は、例えば、増幅器と、積分器と、A/D変換器とを有する。増幅器は、X線検出器15の各X線検出素子により出力される電気信号に対して増幅処理を行う。積分器は、増幅処理が行われた電気信号をビュー期間(後述)に亘って積分する。A/D変換器は、積分結果を示す電気信号をデジタル信号に変換する。DAS16は、デジタル信号に基づく検出データをコンソール装置40に出力する。検出データは、生成元のX線検出素子のチャンネル番号、列番号、及び収集されたビューを示すビュー番号により識別されたX線強度のデジタル値である。ビュー番号は、回転フレーム17の回転に応じて変化する番号であり、例えば、回転フレーム17の回転に応じてインクリメントされる番号である。従って、ビュー番号は、X線管11の回転角度を示す情報である。ビュー期間とは、あるビュー番号に対応する回転角度から、次のビュー番号に対応する回転角度に到達するまでの間に収まる期間である。DAS16は、ビューの切り替わりを、制御装置18から入力されるタイミング信号によって検知してもよいし、内部のタイマーによって検知してもよいし、図示しないセンサから取得される信号によって検知してもよい。フルスキャンを行う場合においてX線管11によりX線が連続曝射されている場合、DAS16は、全周囲分(360度分)の検出データ群を収集する。ハーフスキャンを行う場合においてX線管11によりX線が連続曝射されている場合、DAS16は、半周囲分(180度分)の検出データを収集する。
【0018】
回転フレーム17は、X線管11、ウェッジ12、およびコリメータ13と、X線検出器15とを対向保持した状態で回転させる円環状の回転部材である。回転フレーム17は、固定フレームによって、内部に導入された被検体Pを中心として回転自在に支持される。回転フレーム17は、更にDAS16を支持する。DAS16が出力する検出データは、回転フレーム17に設けられた発光ダイオード(LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置10の非回転部分(例えば固定フレーム)に設けられたフォトダイオードを有する受信機に送信され、受信機によってコンソール装置40に転送される。なお、回転フレーム17から非回転部分への検出データの送信方法として、前述の光通信を用いた方法に限らず、非接触型の任意の送信方法を採用してよい。回転フレーム17は、X線管11などを支持して回転させることができるものであれば、円環状の部材に限らず、アームのような部材であってもよい。
【0019】
制御装置18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを有する処理回路と、モータやアクチュエータなどを含む駆動機構とを有する。制御装置18は、コンソール装置40または架台装置10に取り付けられた入力インターフェース43からの入力信号を受け付けて、架台装置10および寝台装置30の動作を制御する。
【0020】
制御装置18は、例えば、回転フレーム17を回転させたり、架台装置10をチルトさせたり、寝台装置30の天板33を移動させたりする。架台装置10をチルトさせる場合、制御装置18は、入力インターフェース43に入力された傾斜角度(チルト角度)に基づいて、Z軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム17を回転させる。制御装置18は、図示しないセンサの出力等によって回転フレーム17の回転角度を把握している。また、制御装置18は、回転フレーム17の回転角度を随時、処理回路50に提供する。制御装置18は、架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられてもよい。
【0021】
制御装置18は、架台装置10を移動レールに沿って自走させ、本スキャン撮影を行ったり、本スキャン撮影の実行前に行う位置決め撮影であるスキャノ撮影を行う。
【0022】
寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置して、架台装置10の回転フレーム17の内部に導入する装置である。寝台装置30は、例えば、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを有する。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向(Y軸方向)に移動可能に支持する筐体を含む。寝台駆動装置32は、モータやアクチュエータを含む。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を、支持フレーム34に沿って、天板33の長手方向(Z軸方向)に移動させる。天板33は、被検体Pが載置される板状の部材である。
【0023】
コンソール装置40は、例えば、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、メモリ41と、ネットワーク接続回路44と、処理回路50とを有する。実施形態では、コンソール装置40は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40の各構成要素の一部または全部が含まれてもよい。
【0024】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば、検出データや投影データ、再構成画像、CT画像等を記憶する。これらのデータは、メモリ41ではなく(或いはメモリ41に加えて)、X線CT装置1が通信可能な外部メモリに記憶されてもよい。外部メモリは、例えば、外部メモリを管理するクラウドサーバが読み書きの要求を受け付けることで、クラウドサーバによって制御されるものである。
【0025】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路によって生成された医用画像(CT画像)や、操作者による各種操作を受け付けるGUI(Graphical User Interface)画像等を表示する。ディスプレイ42は、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等である。ディスプレイ42は、架台装置10に設けられてもよい。ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)であってもよい。
【0026】
入力インターフェース43は、操作者による各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作の内容を示す電気信号を処理回路50に出力する。例えば、入力インターフェース43は、検出データまたは投影データ(後述)を収集する際の収集条件、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件などの入力操作を受け付ける。例えば、入力インターフェース43は、マウスやキーボード、タッチパネル、ドラッグボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、フットペダル、カメラ、赤外線センサ、マイク等により実現される。入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)により実現されてもよい。なお、本明細書において入力インターフェース43はマウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0027】
ネットワーク接続回路44は、例えば、プリント回路基板を有するネットワークカード、或いは無線通信モジュールなどを含む。ネットワーク接続回路44は、接続する対象のネットワークの形態に応じた情報通信用プロトコルを実装する。ネットワークは、例えば、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)、インターネット、セルラー網、専用回線等を含む。
【0028】
処理回路50は、X線CT装置1の全体の動作を制御する。処理回路50は、例えば、システム制御機能51、前処理機能52、再構成処理機能53、画像処理機能54、スキャン制御機能55、パラメータ設定機能56などを実行する。処理回路50は、例えば、ハードウェアプロセッサがメモリ41に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものである。
【0029】
ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit; ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device; SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device; CPLD)や、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA))などの回路(circuitry)を意味する。メモリ41にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0030】
コンソール装置40または処理回路50が有する各構成要素は、分散化されて複数のハードウェアにより実現されてもよい。処理回路50は、コンソール装置40が有する構成ではなく、コンソール装置40と通信可能な処理装置によって実現されてもよい。処理装置は、例えば、一つのX線CT装置と接続されたワークステーション、あるいは複数のX線CT装置に接続され、以下に説明する処理回路50と同等の処理を一括して実行する装置(例えばクラウドサーバ)である。
【0031】
システム制御機能51は、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、処理回路50の各種機能を制御する。
【0032】
前処理機能52は、DAS16により出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を行って、投影データを生成し、生成した投影データをメモリ41に記憶させる。前処理機能52の処理の詳細については後述する。
【0033】
再構成処理機能53は、前処理機能52によって生成された投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等による再構成処理を行って、CT画像を生成し、生成したCT画像をメモリ41に記憶させる。再構成処理機能53は、「再構成部」の一例である。
【0034】
画像処理機能54は、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、CT画像を公知の方法により、三次元画像や任意断面の断面像データに変換する。三次元画像への変換は、前処理機能52によって行われてもよい。また、画像処理機能54は、断面像データの画像を解析して、解析結果に基づいて被検体の体型を分類してもよい。
【0035】
スキャン制御機能55は、X線高電圧装置14、DAS16、制御装置18、および寝台駆動装置32に指示することで、架台装置10における検出データの収集処理を制御する。スキャン制御機能55は、スキャノ画像を収集する撮影、および診断に用いる画像を撮影する際の各部の動作をそれぞれ制御する。
【0036】
パラメータ設定機能56は、後述する温度センサの計測結果に基づいてX線検出器15の温度制御のための、架台装置10の回転フレーム17の回転速度を制御するパラメータを設定する。パラメータ設定機能56は、「パラメータ設定部」の一例である。
【0037】
上記構成により、X線CT装置1は、ヘリカルスキャンやステップアンドシュートスキャンなどの形式で被検体Pの本スキャン撮影を行う。ヘリカルスキャンとは、天板33を移動させながら回転フレーム17を回転させて被検体Pをらせん状にスキャンする態様である。ステップアンドシュートスキャンとは、天板33の位置を一定間隔で移動させてコンベンショナルスキャンを複数のスキャンエリアで行う態様である。
【0038】
図2は、スキャン制御機能55の構成図である。スキャン制御機能55は、例えば、取得機能55-1と、回転制御機能55-2と、制御機能55-3とを備える。
【0039】
取得機能55-1は、システム制御機能51により受け付けられた、入力インターフェース43が受け付けた入力操作のうち、スキャンプロトコルに関する情報を取得する。スキャンプロトコルとは、X線CT装置1を用いて行われる撮影の各種条件のことであり、例えば、撮影対象部位、X線線量、撮影時間、被検体Pの年代、性別、体型などに関する情報が含まれる。取得機能55-1は、スキャンプロトコルに関する情報に加え、撮影時間に関する情報をさらに取得してもよい。取得機能55-1は、「取得部」の一例である。
【0040】
回転制御機能55-2は、回転速度を指定して、制御装置18に回転フレーム17を制御させる。回転フレーム17、制御装置18および回転制御機能55-2の機能を併せ持つものは、「回転部」の一例である。
【0041】
制御機能55-3は、X線検出器15の温度制御を行う。制御機能55-3は、回転フレーム17の回転速度に基づいて、X線検出器15の温度制御に関するフィードバックパラメータを調整する。制御機能55-3は、「制御部」の一例である。
【0042】
図3は、メモリ41に格納されるデータの一例を示す図である。
図3に示すように、メモリ41には、例えば、プロトコル情報41-1、回転速度情報41-2、温度制御パラメータ41-3などの情報が格納される。
【0043】
プロトコル情報41-1は、架台装置10により撮影可能なスキャンプロトコルの情報である。プロトコル情報41-1には、例えば、撮影部位、スキャン方法、撮影時間などの情報が含まれる。
【0044】
回転速度情報41-2には、回転フレーム17を回転速度の情報が含まれる。
【0045】
温度制御パラメータ41-3には、パラメータ設定機能56により設定されたX線検出器15の温度制御用のパラメータの設定情報が含まれる。
【0046】
〔X線検出器〕
図4は、架台装置10およびX線検出器15の構成を示した斜視図である。X線検出器15は、複数の検出ユニット15aおよび各検出ユニット15aを冷却する冷却装置15bを備える。検出ユニット15aのそれぞれは、図示のチャンネル方向Cに並べられて配置される。また、冷却装置15bは、各検出ユニット15aのチャンネル方向Cに対して垂直な矢印で示した列方向Sにおける一端部側に配置される。
【0047】
図5は、検出ユニット15aの構成の一例を示す図である。検出ユニット15aは、 例えば、複数の検出モジュール70と、ケーブル80と、放熱部材81と、遮蔽部材85と、データ処理モジュール90と、支持部材95と、ヒータ15cとを備える。
【0048】
検出モジュール70は、例えば、基板71と、X線変換素子72と、ADC73を含む電子回路と、コネクタ74と、保持部材75とを備える。基板71には、X線が入射する表面側の面上にX線変換素子72と、このX線変換素子72の近傍に配置されたADC73等の電子回路とが実装される。また、基板71には、検出モジュール70のX線が入射する面とは反対側(裏面側)にコネクタ74および保持部材75が配置される。
【0049】
検出モジュール70は、例えば、架台装置10の任意の場所の温度を計測する温度センサ(不図示)を備える。検出モジュール70の温度センサは「計測部」の一例である。
【0050】
X線変換素子72は、X線を光に変換するシンチレータ、およびシンチレータにより変換された光を電気信号に変換するフォトダイオードにより構成される。そして、X線変換素子72は、X線管11から照射されて被検体Pを透過したX線を検出して電気信号に変換する。
【0051】
ADC73等の電子回路は、X線変換素子72により変換された電気信号を電圧信号に変換して増幅し、増幅した電圧信号をデジタル信号に変換して投影データを生成する。
【0052】
コネクタ74は、ADC73等の電子回路でデジタル信号への変換により生成された投影データをケーブル80に出力する。
【0053】
保持部材75は、剛性及び高熱伝導性を有する例えばアルミニウム等の材料により構成される。そして、保持部材75は、一端部側が基板71に配置され、他端部が放熱部材81を介してケーブル80を保持する。
【0054】
ケーブル80は、各検出モジュール70から出力された投影データをデータ処理モジュール90に出力するケーブルである。ケーブル80は、例えば、一端部側に配置されたコネクタ80aと、フレキシブル配線板80bとにより構成される。
【0055】
各コネクタ80aは、フレキシブル配線板80bの一端部側に配置され、列方向Sにおける各検出モジュール70のコネクタ74に係合して当該検出モジュール70と電気的に接続される。
【0056】
フレキシブル配線板80bは、放熱部材81を介して各検出モジュール70の保持部材75に保持され、データ処理モジュール90とこのデータ処理モジュール90に最も近い検出モジュール70との間では屈曲して配置される。そして、フレキシブル配線板80bは、各検出モジュール70からコネクタ80aに出力された投影データを他端部側に伝送する。
【0057】
放熱部材81は、フレキシブル配線板80bの両面の表面全域に亘って密着して配置され、一端部側の各検出モジュール70の基板71近傍では保持部材75に接触して配置される。
【0058】
遮蔽部材85は、各検出モジュール70と、コネクタ80aを含む各検出モジュール70近傍に配置された一端部側と、放熱部材81の各検出モジュール70近傍に配置された一端部側とを包囲して配置される。また、遮蔽部材85は、貫通配置されたケーブル80及び放熱部材81により封止される開口部86を有する。そして、遮蔽部材85は、X線管11から照射されたX線が入射する面がX線を透過し外部からの光を遮蔽する材料により構成され、それ以外の面が外部からの光や不要なX線を遮蔽する。
【0059】
なお、遮蔽部材85内に配置した放熱部材81の一端部側を開口部86まではケーブル80に密着して配置し、遮蔽部材85外に配置した放熱部材81の他端部側をケーブル80から離して配置するように実施してもよい。
【0060】
各検出モジュール70を遮蔽部材85で包囲して密閉することにより、外部からX線変換素子72のフォトダイオードへの光の侵入を防ぐことができる。また、X線管11に電力が供給されると各検出モジュール70のADC73等の電子回路の発熱により遮蔽部材85内の温度が遮蔽部材85外の温度よりも高くなるため、放熱部材81の一端部側を保持部材75と接触させて遮蔽部材85内に配置し、放熱部材81の他端部側を遮蔽部材85外に配置することにより、ADC73等の電子回路から発生した熱を、基板71及び保持部材75を経由して放熱部材81の一端部側から他端部側に伝達させ、放熱部材81の他端部側から放熱させることができる。また、ADC73等の電子回路から発生した熱を、コネクタ74、80a及びフレキシブル配線板80bを経由して放熱部材81の一端部側から他端部側に伝達させ、放熱部材81の他端部側から放熱させることができる。これにより、検出モジュール70の温度を下げることができる。
【0061】
データ処理モジュール90は、各検出モジュール70で生成された投影データを例えば光通信によりデータ受信装置25に送信処理する送信回路、電源等が高密度に実装された基板を備える。
【0062】
支持部材95は、開口部96、97、98を有する箱状をなし、内部に配置されたデータ処理モジュール90を支持する。そして、支持部材95内には、開口部96を貫通してケーブル80及び放熱部材81の他端部側が配置される。また、支持部材95の開口部98には、冷却装置15bが配置される。
【0063】
冷却装置15bは、支持部材95の開口部98に配置された例えばファンを備えている。そして、冷却装置15bは、矢印で示すように、外部の空気を開口部97から支持部材95内へ流入させ、流入した空気をデータ処理モジュール90及び放熱部材81近傍を流動させてから、開口部98より支持部材95外へ流出させることにより、データ処理モジュール90及び放熱部材81の他端部側を冷却する。
【0064】
各検出モジュール70で発生して放熱部材81の一端部側から他端部側に伝達される熱を冷却装置15bで強制的に放熱させることにより、より効果的に各検出モジュール70の温度上昇を防ぐことができる。
【0065】
ヒータ15cは、X線CT装置1の利用開始直後などのX線検出器15が低温状態である場合などの、検出モジュール70のそれぞれに対して加温が必要な場合に作用する。
【0066】
〔温度制御パラメータ〕
制御機能55-3は、例えば、冷却装置15bおよびヒータ15cを制御することにより、X線検出器15の温度制御をP制御(比例制御:Proportional Controller)やPI制御(比例積分制御:Proportional-Integral Controller)、PID制御(Proportional-Integral-Differential Controller)等のフィードバック制御により実現する。制御機能55-3は、X線検出器15の保温放熱性能を考慮した上で、X線CT装置1に関する所定の温度(例えば、メーカ推奨の目標温度)となるように、入力値(冷却装置15bまたはヒータ15cの制御量)の制御を、出力値(冷却装置15bが機能することにより見込まれる温度低下、またはヒータ15cが機能することにより見込まれる温度上昇)と目標値との偏差、その積分、および微分の3つの要素によって行う。
【0067】
制御機能55-3は、取得機能55-1により取得されたスキャンプロトコルに基づいて、または取得機能55-1により取得された回転フレーム17の回転速度に関する情報の取得結果に基づいて、温度制御パラメータ41-3を参照して温度制御を行う。温度制御パラメータ41-3は、パラメータ設定機能56によりスキャンプロトコル毎に予め設定される。パラメータ設定機能56は、例えば、X線CT装置1の工場出荷時や、実際に撮影を行う場所(例えば、病院の撮影室)への納品時、定期メンテナンス時などにX線CT装置1において実行可能なスキャンプロトコルのそれぞれに対応付いた温度制御パラメータ41-3を設定する。
【0068】
パラメータ設定機能56は、例えば、スキャンプロトコルに基づいて回転フレーム17が回転した状態で冷却装置15bおよびヒータ15cを制御することで温度のオートチューニングを行い、そのチューニング時の操作量に基づいて制御定数を導出し、導出結果を温度制御パラメータとして設定する。パラメータ設定機能56は、各スキャンプロトコルに対応付いた温度制御パラメータ41-3を、少なくとも一組(冷却装置15bおよびヒータ15cのそれぞれの操作量)設定する。パラメータ設定機能56は、スキャンプロトコルの実行時間が比較的長い場合には、スキャンプロトコルに対応付いた温度制御パラメータ41-3を、例えば、撮影前半用パラメータ、撮影後半パラメータのように複数設定してもよい。
【0069】
また、パラメータ設定機能56は、撮影終了後に架台装置10の回転を停止させるときのための専用温度制御パラメータや、撮影と撮影の間に待機時間が発生する場合の温度制御パラメータなどを設定してもよい。
【0070】
なお、パラメータ設定機能56は、他のスキャンプロトコルに対応付いた温度制御パラメータから、対象のスキャンプロトコルに対応付いた温度制御パラメータを推測して設定してもよい。
【0071】
パラメータ設定機能56は、例えば、撮影時間以外の条件が同一のスキャンプロトコルAおよびBの温度制御パラメータに基づいて、撮影時間が異なる対象のスキャンプロトコルCの温度制御パラメータを推測する。
スキャンプロトコルAの撮影時間:1.5〔sec〕
スキャンプロトコルBの撮影時間:0.5〔sec〕
スキャンプロトコルCの撮影時間:0.3〔sec〕
【0072】
この場合、パラメータ設定機能56は、例えば、最小二乗法回帰分析方式などの線形推測により、スキャンプロトコルAおよびスキャンプロトコルBの温度制御パラメータの線形トレンドの計算をし、推測結果を用いてスキャンプロトコルCの温度制御パラメータを推測する。これにより、すべてのスキャンプロトコルに対応付いた温度制御パラメータを実測値に基づいて取得しなくてもよくなり、X線CT装置1の納品に要する時間や、X線CT装置1の設置から撮影が可能になるまでの時間を短縮することができる。
【0073】
制御機能55-3は、PID制御等のフィードバック制御の代わりに、より高度な理論に基づいてPID制御以外の制御演算を行うアドバンスト制御を適用してもよい。アドバンスト制御とは、例えば、X線検出器15の保温性能や、冷却装置15bの冷却性能、ヒータ15cの加熱性能などの特性を定量的に調査した結果が反映された制御モデルを用意することにより実現される。
【0074】
[処理フロー1]
図6は、X線CT装置1による温度制御パラメータ取得処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0075】
まず、回転制御機能55-2は、対象のスキャンプロトコルに基づいて架台装置10の回転フレーム17の回転速度を設定する(ステップS100)。次に、制御装置18は、回転フレーム17の回転を開始して、X線検出器15の温度を安定させる(ステップS102)。次に、制御機能55-3は、X線検出器15の温度制御を行い、温度制御結果をパラメータ設定機能56に対象のスキャンプロトコルに対応付いた温度制御パラメータとして設定させる(ステップS104)。次に、パラメータ設定機能56は、全てのスキャンプロトコルに対応付いた温度制御パラメータの取得が終了したか否かを判定する(ステップS106)。全てのスキャンプロトコルに対応付いた温度制御パラメータが取得されたと判定した場合、パラメータ設定機能56は、取得結果を温度制御パラメータ41-3として記録する(ステップS108)。全てのスキャンプロトコルに対応付いた温度制御パラメータが取得されていないと判定された場合、回転制御機能55-2は、対象のスキャンプロトコルを変更してステップS100に処理を戻す。以上、本フローチャートの処理の説明を終了する。
【0076】
なお、ステップS102~S104の処理は、パラメータ設定機能56による、他のスキャンプロトコルに対応付いた温度制御パラメータに基づいて対象のスキャンプロトコルの温度制御パラメータの推測処理により代替されてもよい。
【0077】
[処理フロー2]
図7は、X線CT装置1による撮影に伴う温度制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0078】
まず、取得機能55-1は、スキャンプロトコルを取得する(ステップS200)。次に、回転制御機能55-2は、スキャンプロトコルに基づいて回転速度を指定して、制御装置18に回転フレーム17を制御させる(ステップS202)。次に、制御機能55-3は、温度制御パラメータ41-3を読み出す(ステップS204)。次に、制御装置18は、スキャンを開始する(ステップS206)。
【0079】
次に、制御機能55-3は、ステップS204で読み出した温度制御パラメータを用いて温度制御を行う(ステップS208)。なお、ステップS206およびステップS208の処理順は逆でもよいし、略同時に行われてもよい。
【0080】
次に、制御装置18は、スキャンを終了する(ステップS210)。次に、制御機能55-3は、撮影終了後に架台装置10の回転の停止時専用温度制御パラメータを用いて温度制御を行う(ステップS212)。以上、本フローチャートの処理の説明を終了する。
【0081】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、X線検出器15がX線管11から照射されたX線を検出し、回転制御機能55-2がX線管11とX線検出器15とを対向保持した状態で回転させる回転フレーム17を制御し、制御機能55-3が回転フレーム17の回転速度に基づいて、温度制御に関するフィードバックパラメータを調整してX線検出器15の温度制御を行うことによって、X線検出器15の温度調整を自動的に行うことができる。
【0082】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の軽減、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0083】
1…X線CT装置、10…架台装置、11…X線管、12…ウェッジ、13…コリメータ、14…X線高電圧装置、15…X線検出器、16…データ収集システム、17…回転フレーム、18…制御装置、30…寝台装置、31…基台、32…寝台駆動装置、33…天板、34…支持フレーム、40…コンソール装置、50…処理回路、51…システム制御機能、52…前処理機能、53…再構成処理機能、54…画像処理機能、55…スキャン制御機能、55-1…取得機能、55-2…回転制御機能、55-3…制御機能、56…パラメータ設定機能