(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/28 20210101AFI20240902BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20240902BHJP
G03B 7/091 20210101ALI20240902BHJP
H04N 23/611 20230101ALI20240902BHJP
H04N 23/63 20230101ALI20240902BHJP
H04N 23/67 20230101ALI20240902BHJP
【FI】
G02B7/28 N
G03B15/00 Q
G03B7/091
H04N23/611
H04N23/63 330
H04N23/67 100
(21)【出願番号】P 2020053989
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 裕
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-022207(JP,A)
【文献】特開2019-012900(JP,A)
【文献】特開2009-218807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/28 - 7/40
G03B 15/00
G03B 7/00 - 7/30
H04N 5/222- 5/257
H04N 23/00
H04N 23/40 -23/76
H04N 23/90 -23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段と、
前記撮像手段で撮像された画像から特定の種別の被写体を検出する被写体検出手段と、
撮影者の視線位置を検知可能な視線検出手段と、
前記撮像手段で撮像された画像から前記被写体検出手段で前記特定の種別の被写体を検出していない場合には、前記視線検出手段で検出された視線入力位置が含まれる第1の種別のゾーンにおいて所定の条件に基づいて特定の処理を施すべき主被写体を選択し、
前記撮像手段で撮像された画像から前記被写体検出手段で前記特定の種別の被写体を検出した場合には、前記視線検出手段で検出された視線入力位置が、前記第1の種別のゾーンよりも大きく、前記特定の種別の被写体を含む第2の種別のゾーンに含まれていれば、前記特定の処理を施すべき主被写体として、前記所定の条件にかかわらず、前記視線入力位置に対応する前記第2の種別のゾーンに含まれる前記特定の種別の被写体を選択する
ように制御する制御手段と
を有
し、
前記第2の種別の1つ以上のゾーンからなる範囲は、前記第1の種別の複数のゾーンからなる範囲と略同一である
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記特定の処理は、AF(オートフォーカス)と追尾の少なくともいずれかである
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、特定の操作部材に対する操作があったことに応じて、前記主被写体を選択するように制御する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記特定の操作部材は、前記撮像装置のグリップ部を保持する手の指で操作可能な位置に配置された、当該手の指で操作可能なシャッターボタンとは異なる操作部材である
ことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記特定の種別の被写体は、人物の顔である
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記所定の条件は、前記主被写体として選択される優先度を上げるための条件であり、前記撮像装置に近い被写体、前記画像内における中央に近い被写体、コントラストが高い被写体、動体、及び、乗り物の少なくともいずれかであるという条件である
ことを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記特定の種別の被写体は、人物の目、動物の顔、乗り物、及び、動体の少なくともいずれかである
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記特定の種別の被写体が複数検出された場合に、当該複数の被写体のそれぞれについて前記第2の種別のゾーンを設定する
ことを特徴とする請求項1~
7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記制御手段は、各々が前記第2の種別のゾーンである、隣り合う第1のゾーンと第2のゾーンを設定する場合に、前記第1のゾーンで検出されている前記特定の種別の被写体の中心位置と、前記第2のゾーンで検出されている前記特定の種別の被写体の中心位置との中間を、前記第1のゾーンと前記第2のゾーンの間の境界とする
ことを特徴とする請求項
8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記第2の種別のゾーンは、対応する前記特定の種別の被写体の検出サイズよりも大きい
ことを特徴とする請求項1~
9のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項11】
撮像された画像から特定の種別の被写体を検出する被写体検出ステップと、
撮影者の視線位置を検知可能な視線検出ステップと、
前記撮像された画像から前記被写体検出ステップで前記特定の種別の被写体を検出していない場合には、前記視線検出ステップで検出された視線入力位置が含まれる第1の種別のゾーンにおいて所定の条件に基づいて特定の処理を施すべき主被写体を選択し、
前記撮像された画像から前記被写体検出ステップで前記特定の種別の被写体を検出した場合には、前記視線検出ステップで検出された視線入力位置が、前記第1の種別のゾーンよりも大きく、前記特定の種別の被写体を含む第2の種別のゾーンに含まれていれば、前記特定の処理を施すべき主被写体として、前記所定の条件にかかわらず、前記視線入力位置に対応する前記第2の種別のゾーンに含まれる前記特定の種別の被写体を選択する
ように制御する制御ステップと
を有
し、
前記第2の種別の1つ以上のゾーンからなる範囲は、前記第1の種別の複数のゾーンからなる範囲と略同一である
ことを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項12】
コンピュータを、請求項1~10のいずれか1項に記載の撮像装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項13】
コンピュータを、請求項1~10のいずれか1項に記載の撮像装置の各手段として機能させるためのプログラムを格納したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視線検知機能と被写体認識機能を有する撮像装置の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザーである撮影者の視線方向を検出し、撮影者がファインダー視野内のどの領域(位置)を観察しているかを検出して、自動焦点調節等の撮影機能を制御するカメラが提案されている。特許文献1には、ユーザーがシャッターボタンを押したときに、シャッターボタンが押された時点での視線位置を検出してファインダー内に表示し、視線位置に応じた被写体に焦点を合わせるカメラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
視線入力によってユーザーが意図する精密な位置を指定することは難しい。そのため、特許文献1のように、視線位置に応じた被写体に焦点を合わせると、ユーザーの意図しない被写体に焦点が合わせられてしまう可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、視線入力を用いて、より撮影者の意図にあった被写体を選択することを可能とした撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の撮像装置は、撮像手段と、前記撮像手段で撮像された画像から特定の種別の被写体を検出する被写体検出手段と、撮影者の視線位置を検知可能な視線検出手段と、前記撮像手段で撮像された画像から前記被写体検出手段で前記特定の種別の被写体を検出していない場合には、前記視線検出手段で検出された視線入力位置が含まれる第1の種別のゾーンにおいて所定の条件に基づいて特定の処理を施すべき主被写体を選択し、前記撮像手段で撮像された画像から前記被写体検出手段で前記特定の種別の被写体を検出した場合には、前記視線検出手段で検出された視線入力位置が、前記第1の種別のゾーンよりも大きく、前記特定の種別の被写体を含む第2の種別のゾーンに含まれていれば、前記特定の処理を施すべき主被写体として、前記所定の条件にかかわらず、前記視線入力位置に対応する前記第2の種別のゾーンに含まれる前記特定の種別の被写体を選択するように制御する制御手段とを有し、前記第2の種別の1つ以上のゾーンからなる範囲は、前記第1の種別の複数のゾーンからなる範囲と略同一であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、視線入力を用いて、より撮影者の意図にあった被写体を選択することを可能とした撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】デジタルカメラ100の構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<デジタルカメラ100の外観図>
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
図1(a),1(b)に、本発明を適用可能な装置(撮像装置)の一例としてのデジタルカメラ100の外観図を示す。
図1(a)はデジタルカメラ100の前面斜視図であり、
図1(b)はデジタルカメラ100の背面斜視図である。
【0010】
表示部28は、デジタルカメラ100の背面に設けられた表示部であり、画像や各種情報を表示する。タッチパネル70aは、表示部28の表示面(タッチ操作面)に対するタッチ操作を検出することができる。ファインダー外表示部43は、デジタルカメラ100の上面に設けられた表示部であり、シャッター速度や絞りをはじめとするデジタルカメラ100の様々な設定値を表示する。シャッターボタン61は撮影指示を行うための操作部材である。モード切替スイッチ60は、各種モードを切り替えるための操作部材である。端子カバー40は、デジタルカメラ100を外部機器に接続する接続ケーブル等とのコネクタ(不図示)を保護するカバーである。
【0011】
メイン電子ダイヤル71は回転操作部材であり、メイン電子ダイヤル71を回すことで、シャッター速度や絞りなどの設定値の変更等が行える。電源スイッチ72は、デジタルカメラ100の電源のONとOFFを切り替える操作部材である。サブ電子ダイヤル73は回転操作部材であり、サブ電子ダイヤル73を回すことで、選択枠(カーソル)の移動や画像送りなどが行える。4方向キー74は、上、下、左、右部分をそれぞれ押し込み可能に構成され、4方向キー74の押した部分に応じた処理が可能である。SETボタン75は、押しボタンであり、主に設定項目の決定などに用いられる。
【0012】
動画ボタン76は、動画撮影(記録)の開始や停止の指示に用いられる。AEロックボタン77は押しボタンであり、撮影待機状態でAEロックボタン77を押下することにより、露出状態を固定することができる。拡大ボタン78は、撮影モードのライブビュー表示(LV表示)において拡大モードのONとOFFを切り替えるための操作ボタンである。拡大モードをONとしてからメイン電子ダイヤル71を操作することにより、ライブビュー画像(LV画像)の拡大や縮小を行える。再生モードにおいては、拡大ボタン78は、再生画像を拡大したり、その拡大率を増加させるたりするための操作ボタンとして機能する。再生ボタン79は、撮影モードと再生モードとを切り替えるための操作ボタンである。撮影モード中に再生ボタン79を押下することで再生モードに移行し、記録媒体200(後述)に記録された画像のうち最新の画像を表示部28に表示させることができる。メニューボタン81はメニュー画面を表示させる指示操作を行うために用いられる押しボタンであり、メニューボタン81が押されると各種の設定が可能なメニュー画面が表示部28に表示される。ユーザーは、表示部28に表示されたメニュー画面と、4方向キー74やSETボタン75とを用いて直感的に各種設定を行うことができる。
【0013】
タッチバー82(マルチファンクションバー:M-Fnバー)は、タッチ操作を受け付けることが可能なライン状のタッチ操作部材(ラインタッチセンサー)である。タッチバー82は、右手の人差し指でシャッターボタン61押下可能なようにグリップ部90を右手で握った状態(右手の小指、薬指、中指で握った状態)で、右手の親指でタッチ操作可能(タッチ可能)な位置に配置されている。すなわち、タッチバー82は接眼部16に接眼してファインダーを覗き、いつでもシャッターボタン61を押下できるように構えた状態(撮影姿勢)で操作可能な位置に配置されている。タッチバー82は、タッチバー82に対するタップ操作(タッチして所定期間以内に移動せずに離す操作)、左右へのスライド操作(タッチした後、タッチしたままタッチ位置を移動する操作)などを受け付け可能な受付部である。タッチバー82は、タッチパネル70aとは異なる操作部材であり、表示機能を備えていない。
【0014】
通信端子10は、デジタルカメラ100がレンズユニット150(後述;着脱可能)側と通信を行うための通信端子である。接眼部16は、接眼ファインダー17(覗き込み型のファインダー)の接眼部であり、ユーザーは、接眼部16を介して内部のEVF29(Electronic View Finder)に表示された映像を視認することができる。接眼検知部57は、接眼部16にユーザー(撮影者)が接眼しているか否かを検知する接眼検知センサーである。蓋202は、記録媒体200(後述)を格納するスロットの蓋である。グリップ部90は、ユーザーがデジタルカメラ100を構える際に右手で握りやすい形状とした保持部である。グリップ部90を右手の小指、薬指、中指で握ってデジタルカメラ100を保持した状態で、右手の人差指で操作可能な位置にシャッターボタン61とメイン電子ダイヤル71が配置されている。また、同じ状態で、右手の親指で操作可能な位置に、サブ電子ダイヤル73とタッチバー82が配置されている。サムレスト部91(親指待機位置)は、デジタルカメラ100の背面側の、どの操作部材も操作しない状態でグリップ部90を握った右手の親指を置きやすい箇所に設けられたグリップ部材である。サムレスト部91は、保持力(グリップ感)を高めるためのラバー部材などで構成される。
【0015】
<デジタルカメラ100の構成ブロック図>
図2は、デジタルカメラ100の構成例を示すブロック図である。レンズユニット150は、交換可能な撮影レンズを搭載するレンズユニットである。レンズ103は通常、複数枚のレンズから構成されるが、
図2では簡略して一枚のレンズのみで示している。通信端子6は、レンズユニット150がデジタルカメラ100側と通信を行うための通信端子であり、通信端子10は、デジタルカメラ100がレンズユニット150側と通信を行うための通信端子である。レンズユニット150は、これら通信端子6,10を介してシステム制御部50と通信する。そして、レンズユニット150は、内部のレンズシステム制御回路4によって絞り駆動回路2を介して絞り1の制御を行う。また、レンズユニット150は、レンズシステム制御回路4によってAF駆動回路3を介してレンズ103の位置を変位させることで焦点を合わせる。
【0016】
シャッター101は、システム制御部50の制御で撮像部22の露光時間を自由に制御できるフォーカルプレーンシャッターである。
【0017】
撮像部22は、光学像を電気信号に変換するCCDやCMOS素子等で構成される撮像素子(イメージセンサー)である。撮像部22は、システム制御部50にデフォーカス量情報を出力する撮像面位相差センサーを有していてもよい。A/D変換器23は、撮像部22から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0018】
画像処理部24は、A/D変換器23からのデータ、又は、メモリ制御部15からのデータに対し所定の処理(画素補間、縮小といったリサイズ処理、色変換処理、等)を行う。また、画像処理部24は、撮像した画像データを用いて所定の演算処理を行い、システム制御部50は、画像処理部24により得られた演算結果に基づいて露光制御や測距制御を行う。これにより、TTL(スルー・ザ・レンズ)方式のAF(オートフォーカス)処理、AE(自動露出)処理、EF(フラッシュプリ発光)処理、等が行われる。画像処理部24は更に、撮像した画像データを用いて所定の演算処理を行い、得られた演算結果に基づいてTTL方式のAWB(オートホワイトバランス)処理を行う。
【0019】
A/D変換器23からの出力データは、画像処理部24及びメモリ制御部15を介してメモリ32に書き込まれる。あるいは、A/D変換器23からの出力データは、画像処理部24を介さずにメモリ制御部15を介してメモリ32に書き込まれる。メモリ32は、撮像部22によって得られA/D変換器23によりデジタルデータに変換された画像データや、表示部28やEVF29に表示するための画像データを格納する。メモリ32は、
所定枚数の静止画像や所定時間の動画像および音声を格納するのに十分な記憶容量を備えている。
【0020】
また、メモリ32は画像表示用のメモリ(ビデオメモリ)を兼ねている。D/A変換器19は、メモリ32に格納されている画像表示用のデータをアナログ信号に変換して表示部28やEVF29に供給する。こうして、メモリ32に書き込まれた表示用の画像データはD/A変換器19を介して表示部28やEVF29により表示される。表示部28とEVF29のそれぞれは、LCDや有機EL等のディスプレイであり、D/A変換器19からのアナログ信号に応じた表示を行う。A/D変換器23によってA/D変換されメモリ32に蓄積されたデジタル信号をD/A変換器19においてアナログ信号に変換し、表示部28またはEVF29に逐次転送して表示することで、ライブビュー表示(LV)が行える。以下、ライブビュー表示で表示される画像をライブビュー画像(LV画像)と称する。
【0021】
システム制御部50は、少なくとも1つのプロセッサ及び/または少なくとも1つの回路からなる制御部であり、デジタルカメラ100全体を制御する。システム制御部50は、プロセッサであり、回路でもある。システム制御部50は、不揮発性メモリ56に記録されたプログラムを実行することで、後述する本実施形態の各処理を実現する。また、システム制御部50は、メモリ32、D/A変換器19、表示部28、EVF29等を制御することにより表示制御も行う。
【0022】
システムメモリ52は例えばRAMであり、システム制御部50は、システム制御部50の動作用の定数、変数、不揮発性メモリ56から読み出したプログラム等をシステムメモリ52に展開する。
【0023】
不揮発性メモリ56は、電気的に消去・記録可能なメモリであり、例えばEEPROM等である。不揮発性メモリ56には、システム制御部50の動作用の定数、プログラム等が記録される。ここでいうプログラムとは、本実施形態にて後述する各種フローチャートを実行するためのプログラムのことである。
【0024】
システムタイマー53は、各種制御に用いる時間や、内蔵された時計の時間を計測する計時部である。
【0025】
通信部54は、無線または有線ケーブルによって接続された外部機器との間で、映像信号や音声信号の送受信を行う。通信部54は無線LAN(Local Area Network)やインターネットとも接続可能である。また、通信部54は、Bluetooth(登録商標)やBluetooth Low Energyでも外部機器と通信可能である。通信部54は撮像部22で撮像した画像(LV画像を含む)や、記録媒体200に記録された画像を送信可能であり、外部機器から画像データやその他の各種情報を受信することができる。
【0026】
姿勢検知部55は、重力方向に対するデジタルカメラ100の姿勢を検知する。姿勢検知部55で検知された姿勢に基づいて、撮像部22で撮影された画像が、デジタルカメラ100を横に構えて撮影された画像であるか、縦に構えて撮影された画像であるかを判別可能である。システム制御部50は、姿勢検知部55で検知された姿勢に応じた向き情報を撮像部22で撮像された画像の画像ファイルに付加したり、画像を回転して記録したりすることが可能である。姿勢検知部55としては、加速度センサーやジャイロセンサーなどを用いることができる。姿勢検知部55である加速度センサーやジャイロセンサーを用いて、デジタルカメラ100の動き(パン、チルト、持ち上げ、静止しているか否か等)を検知することも可能である。
【0027】
接眼検知部57は、接眼ファインダー17(以後、単に「ファインダー」と記載する)の接眼部16に対する目(物体)の接近(接眼)および離反(離眼)を検知する(接近検知)、接眼検知センサーである。システム制御部50は、接眼検知部57で検知された状態に応じて、表示部28とEVF29の表示(表示状態)/非表示(非表示状態)を切り替える。より具体的には、少なくとも撮影待機状態で、かつ、表示先の切替設定が自動切替である場合において、非接眼中は表示先を表示部28として表示をオンとし、EVF29は非表示とする。また、接眼中は表示先をEVF29として表示をオンとし、表示部28は非表示とする。
【0028】
接眼検知部57としては、例えば赤外線近接センサーを用いることができ、EVF29を内蔵するファインダー17の接眼部16への何らかの物体の接近を検知することができる。物体が接近した場合は、接眼検知部57の投光部(図示せず)から投光した赤外線が物体で反射して赤外線近接センサーの受光部(図示せず)で受光される。受光された赤外線の量によって、物体が接眼部16からどの距離まで近づいているか(接眼距離)も判別することができる。このように、接眼検知部57は、接眼部16への物体の近接距離を検知する接眼検知を行う。非接眼状態(非接近状態)から、接眼部16に対して所定距離以内に近づく物体が検出された場合に、接眼されたと検出するものとする。接眼状態(接近状態)から、接近を検知していた物体が所定距離以上離れた場合に、離眼されたと検出するものとする。
【0029】
接眼を検出する閾値と、離眼を検出する閾値は例えばヒステリシスを設けるなどして異なっていてもよい。また、接眼を検出した後は、離眼を検出するまでは接眼状態であるものとする。離眼を検出した後は、接眼を検出するまでは非接眼状態であるものとする。なお、赤外線近接センサーは一例であって、接眼検知部57には、接眼とみなせる状態を検知できるものであれば他のセンサーを採用してもよい。
【0030】
ファインダー外表示部43には、ファインダー外表示部駆動回路44を介して、シャッター速度や絞りをはじめとするカメラの様々な設定値が表示される。
【0031】
電源制御部80は、電池検出回路、DC-DCコンバータ、通電するブロックを切り替えるスイッチ回路等により構成され、電池の装着の有無、電池の種類、電池残量の検出などを行う。また、電源制御部80は、その検出結果及びシステム制御部50の指示に基づいてDC-DCコンバータを制御し、必要な電圧を必要な期間、記録媒体200を含む各部へ供給する。電源部30は、アルカリ電池やリチウム電池等の一次電池やNiCd電池やNiMH電池、Li電池等の二次電池、ACアダプター等からなる。
【0032】
記録媒体I/F18は、メモリカードやハードディスク等の記録媒体200とのインターフェースである。記録媒体200は、撮影された画像を記録するためのメモリカード等の記録媒体であり、半導体メモリや磁気ディスク等から構成される。
【0033】
操作部70は、ユーザーからの操作(ユーザー操作)を受け付ける入力部であり、システム制御部50に各種の動作指示を入力するために使用される。
図2に示すように、操作部70は、シャッターボタン61、モード切替スイッチ60、電源スイッチ72、タッチパネル70a、視線確定ボタン83、その他の操作部材70b等を含む。その他の操作部材70bには、メイン電子ダイヤル71、サブ電子ダイヤル73、4方向キー74、SETボタン75、動画ボタン76、AEロックボタン77、拡大ボタン78、再生ボタン79、メニューボタン81、タッチバー82、等が含まれる。
【0034】
シャッターボタン61は、第1シャッタースイッチ62と第2シャッタースイッチ64
を備える。第1シャッタースイッチ62は、シャッターボタン61の操作途中、いわゆる半押し(撮影準備指示)でONとなり第1シャッタースイッチ信号SW1を発生する。システム制御部50は、第1シャッタースイッチ信号SW1により、AF(オートフォーカス)処理、AE(自動露出)処理、AWB(オートホワイトバランス)処理、EF(フラッシュプリ発光)処理等の撮影準備動作を開始する。
【0035】
第2シャッタースイッチ64は、シャッターボタン61の操作完了、いわゆる全押し(撮影指示)でONとなり、第2シャッタースイッチ信号SW2を発生する。システム制御部50は、第2シャッタースイッチ信号SW2により、撮像部22からの信号読み出しから、撮像された画像を画像ファイルとして記録媒体200に書き込むまでの、一連の撮影処理の動作を開始する。
【0036】
モード切替スイッチ60は、システム制御部50の動作モードを静止画撮影モード、動画撮影モード、再生モード等のいずれかに切り替える。静止画撮影モードに含まれるモードとして、オート撮影モード、オートシーン判別モード、マニュアルモード、絞り優先モード(Avモード)、シャッター速度優先モード(Tvモード)、プログラムAEモード(Pモード)がある。また、撮影シーン別の撮影設定となる各種シーンモード、カスタムモード等がある。モード切替スイッチ60より、ユーザーは、これらのモードのいずれかに直接切り替えることができる。あるいは、モード切替スイッチ60で撮影モードの一覧画面に一旦切り替えた後に、表示された複数のモードのいずれかに、他の操作部材を用いて選択的に切り替えるようにしてもよい。同様に、動画撮影モードにも複数のモードが含まれていてもよい。
【0037】
タッチパネル70aは、表示部28の表示面(タッチパネル70aの操作面)への各種タッチ操作を検出するタッチセンサーである。タッチパネル70aと表示部28とは一体的に構成することができる。例えば、タッチパネル70aは、光の透過率が表示部28の表示を妨げないように構成され、表示部28の表示面の上層に取り付けられる。そして、タッチパネル70aにおける入力座標と、表示部28の表示面上の表示座標とを対応付ける。これにより、あたかもユーザーが表示部28上に表示された画面を直接的に操作可能であるかのようなGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を提供できる。
【0038】
システム制御部50は、タッチパネル70aへの以下の操作、あるいは状態を検出できる。
・タッチパネル70aにタッチしていなかった指やペンが新たにタッチパネル70aにタッチしたこと、すなわちタッチの開始(以下、タッチダウン(Touch-Down)と称する)
・タッチパネル70aを指やペンでタッチしている状態(以下、タッチオン(Touch-On)と称する)
・指やペンがタッチパネル70aをタッチしたまま移動していること(以下、タッチムーブ(Touch-Move)と称する)
・タッチパネル70aへタッチしていた指やペンがタッチパネル70aから離れた(リリースされた)こと、すなわちタッチの終了(以下、タッチアップ(Touch-Up)と称する)
・タッチパネル70aに何もタッチしていない状態(以下、タッチオフ(Touch-Off)と称する)
【0039】
タッチダウンが検出されると、同時にタッチオンも検出される。タッチダウンの後、タッチアップが検出されない限りは、通常はタッチオンが検出され続ける。タッチムーブが検出された場合も、同時にタッチオンが検出される。タッチオンが検出されていても、タッチ位置が移動していなければタッチムーブは検出されない。タッチしていた全ての指や
ペンがタッチアップしたことが検出された後は、タッチオフとなる。
【0040】
これらの操作・状態や、タッチパネル70a上に指やペンがタッチしている位置座標は内部バスを通じてシステム制御部50に通知される。そして、システム制御部50は通知された情報に基づいてタッチパネル70a上にどのような操作(タッチ操作)が行なわれたかを判定する。タッチムーブについてはタッチパネル70a上で移動する指やペンの移動方向についても、位置座標の変化に基づいて、タッチパネル70a上の垂直成分・水平成分毎に判定できる。所定距離以上をタッチムーブしたことが検出された場合はスライド操作が行なわれたと判定するものとする。タッチパネル70a上に指をタッチしたままある程度の距離だけ素早く動かして、そのまま離すといった操作をフリックと呼ぶ。フリックは、言い換えればタッチパネル70a上を指ではじくように素早くなぞる操作である。所定距離以上を、所定速度以上でタッチムーブしたことが検出され、そのままタッチアップが検出されるとフリックが行なわれたと判定できる(スライド操作に続いてフリックがあったものと判定できる)。更に、複数箇所(例えば2点)を共にタッチして(マルチタッチして)、互いのタッチ位置を近づけるタッチ操作をピンチイン、互いのタッチ位置を遠ざけるタッチ操作をピンチアウトと称する。ピンチアウトとピンチインを総称してピンチ操作(あるいは単にピンチ)と称する。タッチパネル70aは、抵抗膜方式や静電容量方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、画像認識方式、光センサー方式等、様々な方式のタッチパネルのうちいずれの方式のものであってもよい。タッチパネルに対する接触があったことでタッチがあったと検出する方式や、タッチパネルに対する指やペンの接近があったことでタッチがあったと検出する方式があるが、いずれの方式でもよい。
【0041】
視線検出ブロック160は、接眼部16に接眼したユーザーがEVF29を見ているか、見ている場合、どの位置を見ているかという視線を検知するためのブロックである。視線検出ブロック160には、ダイクロイックミラー162、結像レンズ163、視線検知センサー164、赤外発光ダイオード166、視線検出回路165が含まれる。
【0042】
赤外発光ダイオード166は発光素子であり、接眼部16に接眼したユーザーの眼球(目)161に赤外光を照射する。赤外発光ダイオード166から発した赤外光は眼球(目)161で反射し、その赤外反射光はダイクロイックミラー162に到達する。ダイクロイックミラー162は赤外光だけを反射して可視光を透過させる。光路を変更された赤外反射光は、結像レンズ163を介して視線検知センサー164の撮像面に結像する。結像レンズ163は視線検知光学系を構成する光学部材である。視線検知センサー164は、CCD型イメージセンサ等の撮像デバイスから成る。視線検知センサー164は、入射された赤外反射光を電気信号に光電変換して視線検出回路165へ出力する。視線検出回路165は少なくとも1つのプロセッサを含み、視線検知センサー164の出力信号に基づき、ユーザーの眼球(目)161の画像または動きからユーザーの視線位置を検出し、検出情報をシステム制御部50に出力する。
【0043】
本実施形態では視線検出ブロック160を用いて、角膜反射法と呼ばれる方式で視線を検出する。角膜反射法とは、赤外発光ダイオード166から発した赤外光が眼球(目)161の特に角膜で反射した反射光と、眼球(目)161の瞳孔との位置関係から、視線の向き・位置を検出する方式である。この他にも黒目と白目での光の反射率が異なることを利用する強膜反射法と呼ばれる方式など、様々な視線の向き・位置を検出する方式がある。なお、視線の向き・位置を検出できる方式であれば、上記以外の視線検出手段の方式を用いてもよい。なお、本実施形態では接眼検知部57の投光部および受光部は前述の赤外発光ダイオード166および視線検知センサー164とは別体のデバイスであるものとして説明した。しかしこれに限るものではなく、接眼検知部57の投光部を赤外発光ダイオード166で兼ね、受光部を視線検知センサー164で兼ねてもよい。
【0044】
システム制御部50は視線検出ブロック160からの出力に基づいて以下の操作、あるいは状態を検知できる。
・接眼部16に接眼したユーザーの視線が新たに入力(検出)されたこと。すなわち、視線入力の開始。
・接眼部16に接眼したユーザーの視線入力がある状態であること。
・接眼部16に接眼したユーザーが注視している状態であること。
・接眼部16に接眼したユーザーが入力していた視線を外したこと。すなわち、視線入力の終了。
・接眼部16に接眼したユーザーが何も視線入力していない状態。
【0045】
ここで述べた注視とは、ある程度の時間にわたってユーザーがほぼ同じ位置を見続けたことを意味している。注視しているか否かの判定としては例えば、ユーザーの視線位置が所定時間(例えば0.5秒程度)にわたって所定の移動量を超えなかった場合に注視されたと判定する。なお、所定時間はユーザーによって設定できる時間でもよいし、あらかじめ固定して決められた時間でもよいし、直前の視線位置と現在の視線位置との距離関係で変化するようにしてもよい。例えば、システム制御部50は、視線検出回路165から受け取った検出情報に基づいて、ユーザーの視線がほぼ同じ位置で検出されている状態(視線移動無し状態)の継続期間が所定時間(閾値期間)を越えた場合に、ユーザーが注視していると判定する。また、システム制御部50は、例えば、最新の検出タイミングを含む短期間(≦前述の閾値期間)における視線の検出位置の平均位置が所定範囲内に収まり、かつ、ばらつき(分散)が所定値よりも少ない場合に、視線移動無し状態であると判定する。
【0046】
視線確定ボタン83は、操作部70に含まれる操作部材であって、視線位置(視線入力位置)に基づく被写体の選択実行または解除を指示する押しボタンである。視線確定ボタン83は、ユーザーがファインダー17を覗いた状態(接眼部16に接眼した状態)でも操作しやすい位置に配置されており、グリップ部90を持つ右手の親指で操作可能な位置に配置されている。
【0047】
システム制御部50は、操作部70に対するユーザー操作などに応じて、タッチ操作による指標位置(AF位置(AF枠の位置)など)の指定方法を、絶対位置指定または相対位置指定に設定することができる。例えば、システム制御部50は、接眼部16への接眼に応じて指定方法を絶対位置指定から相対位置指定に切り替え、接眼部16からの離眼に応じて指定方法を相対位置指定から絶対位置指定に切り替える。指標がAF枠の例を説明する。絶対位置指定の場合には、タッチパネル70aに対するタッチダウンがあると、タッチダウンされる前に設定されていたAF位置(現在のAF位置)にかかわらず、タッチダウンされた位置(座標入力された位置)に対応付けられたAF位置が設定される。つまり、タッチ操作が行われる位置座標(入力座標)と、表示部28の位置座標(表示座標)とが対応付けられる。一方、相対位置指定の場合には、タッチ操作が行われる位置座標と表示部28の位置座標とは対応付けられない。相対位置指定では、タッチダウンされた位置にかかわらず、タッチダウンされる前に設定されていたAF位置(現在のAF位置)からタッチムーブの移動方向にタッチムーブの移動量に応じた距離だけ、AF位置を移動させる。
【0048】
AF枠の選択モード(測距エリア選択モード、AF方式)として、少なくとも以下の選択モードを含む複数の選択モードのうちいずれかを設定メニューより予めユーザーが選択して設定することができる。
・1点AF…191点の測距点(焦点調節領域)の中から、ピント合わせ(AF)に使う測距点(一点AF枠)をユーザーが任意の位置に設定するモード。設定されたAF枠に
おいて、撮像面位相差AF、あるいはコントラストAFにて焦点検出、AFが行われる。後述するゾーンAFよりも狭い範囲が焦点調節領域となる。
・ゾーンAF…複数の測距点を複数の測距ゾーン(焦点調節領域)に分類し、いずれかの測距ゾーンをユーザーが選択する選択モード。選択したゾーンに含まれる全ての測距点を用いて自動選択AFを行う。ゾーンの選択は視線入力を用いて行うこともできる。自動選択AFでは、選択されたゾーン内の測距点で測距された被写体のうち、自動選択条件に基づいて自動的にピントを合わせるべき被写体と判定された被写体にピントが合うようにAFを行う。基本的には最も近距離にある被写体にピントが合うようにAFを行うが、画面上の被写体の位置や被写体のサイズ、被写体距離などの条件が加味されることもある。1点AFよりも被写体を捉えやすく、動きのある被写体を撮影するときにピントを合わせやすくなる。また、ピントを合わせるゾーンを絞っているため、構図における意図しない位置の被写体にピントが合ってしまうことも防止することができる。
・自動選択AF…全ての測距点を用いて上述の自動選択AFを行うモード。ユーザーがAFエリアを選択することなく、AFに用いる測距点は全測距点の中から自動的に決定される。
・顔+追尾優先AF(顔+追尾AF)…LV画像から顔が検知されている場合には顔をAF対象として自動的に追尾してAFし、顔検知されていない場合には自動選択AFでAF位置を決定してAFを行う選択モード。LV画像から複数の顔が検知されている場合には、最初は自動選択で決定された顔にAF枠(顔追尾枠)が表示され、4方向キー74やAF-ONボタンへの左右操作で、右または左側の顔に追尾対象を切り替えることができる。また、表示部28にタッチすることで、顔または顔以外の被写体(モノ)を選択して追尾対象とし、追尾してAFを合わせることもできる。
【0049】
ゾーンAFにおいて、ゾーン内におけるピントを合わせるべき主被写体の決定は、前述のように自動選択条件に基づいて自動的に行われる。自動選択条件は、以下に示す例のような要素条件のうち少なくとも1つの要素条件を用いて重みづけを行って得られるスコアが所定の閾値以上であることや、得られるスコアが最も高いという条件である。
・検出された人物の顔である。
・顔のサイズが大きい。
・顔の位置がデジタルカメラ100に近い(至近側である)。
・顔の位置が画像内における中央に近い。
・予め登録された個人の顔である。
・デジタルカメラ100に近い(至近側である)。
・コントラストが高い。
・動物や乗り物などの特徴的な被写体である。
・動体である。
【0050】
すなわち、自動選択条件は、主被写体として選択される優先度を上げるための条件であり、至近側の被写体、画像内における中央に近い被写体、コントラストが高い被写体、動体、乗り物などの少なくともいずれかであるという条件である。
【0051】
本実施形態では、初期設定されたゾーンが視線で選択された場合には、ゾーン内で自動選択条件に基づいて主被写体を選択する。ライブビュー(以下、LV)画像から顔が検出された場合には、デフォルトのゾーンよりも大きいゾーンを、検出された顔に対応して設定する。そして、顔に対応するゾーンが視線で選択された場合には、対応する顔を主被写体として設定する。
図3(a)~3(h)に示すEVF29での表示例と、
図4のフローチャートとを用いて、このような処理について説明する。
【0052】
<撮影モード処理>
図4に、デジタルカメラ100における撮影モード処理のフローチャートを示す。この
処理は、システム制御部50が不揮発性メモリ56に記録されたプログラムをシステムメモリ52に展開して実行することにより実現する。なお、本実施形態では、接眼した状態で表示先がEVF29となっており、視線検知の機能を有効として視線検出ブロック(視線検出部)160での視線の検出動作を行っている場合について説明し、その他の場合についての説明は省略する。デジタルカメラ100を撮影モードで起動すると
図4の処理を開始する。
【0053】
S401では、システム制御部50は、撮像部22での撮像を開始し、撮像されたLV画像をEVF29に表示する。
【0054】
S402では、システム制御部50は、画像処理部24でLV画像から人物の顔が検出されたか否かを判定する。顔が検出された場合はS404に進み、そうでない場合はS403に進む。
【0055】
S403では、システム制御部50は、ゾーンAF用のゾーンとして、デフォルトのゾーンを定義・設定し、ゾーンを示す枠を表示する。
【0056】
図3(a)に、デフォルトのゾーンの表示例を示す。EVF29には、LV画像301が表示されている。さらに、ぞれぞれ予め定められた第1のサイズのデフォルトの16個のゾーン310a~310pが、4行4列に並べて配置されている。なお、このゾーンの数、サイズ、配置は一例であって、他の数、サイズ、配置でもよい。
【0057】
S404では、システム制御部50は、顔に対応するゾーンであって、デフォルトのゾーンよりも大きい顔有ゾーンを設定し、ゾーン枠を表示する。
【0058】
図3(b)に、顔が1つ検出された場合の顔有ゾーンの表示例を示す。
図3(b)のLV画像からは、1つの顔が検出され、顔枠320aが表示されている。そのため、顔を含み、デフォルトのゾーンより大きい第2のサイズのゾーンとして、顔有ゾーン330aが設定される。顔有ゾーン330aは顔枠320aの顔に対応するゾーンである。また、顔有ゾーン330aは、デフォルトのゾーン310b,310c,310f,310g,310j,310kを統合した(包含する)ゾーンである。顔有ゾーン330aが設定された場所以外の位置にはデフォルトのゾーンが設定される。
【0059】
図3(c)に、顔が2つ検出された場合の顔有ゾーンの表示例を示す。本実施形態では、顔が複数検出された場合に、当該複数の顔のそれぞれについて顔有ゾーンを設定する。
図3(c)のLV画像からは、人物bと人物cの2人の顔が検出され、顔枠320bと顔枠320cが表示されている。そのため、顔を含み、デフォルトのゾーンより大きいゾーンとして、顔有ゾーン330b,330cが設定される。顔有ゾーン330bは顔枠320bの顔に対応するゾーンである。顔有ゾーン330cは顔枠320cの顔に対応するゾーンである。顔有ゾーン330b,330cが設定された場所以外の位置にはデフォルトのゾーンが設定される。隣り合う顔有ゾーン330bと顔有ゾーン330cの境界位置は、顔有ゾーン330bに対応する顔(顔枠320b)の中心位置と、顔有ゾーン330cに対応する顔(顔枠320c)の中心位置との中間の位置とする。具体的には、
図3(d)に示す通り、顔有ゾーン330b,330cの境界位置340は、顔有ゾーン330bに対応する顔枠320bの中点321bと、顔有ゾーン330cに対応する顔枠320cの中点321cとを結ぶ線分の中点341の位置となる。このようにすることで、2つの顔のどちらにも偏ることなくAFゾーンを設定することが可能となる。3つ以上の顔が検出された場合も、同様にして3つ以上の顔有ゾーンをそれぞれの顔に対応して設定する。
【0060】
なお、顔有ゾーンの大きさはデフォルトのゾーンの大きさの略整数倍とした例を示した
が、検出された被写体のサイズに応じて変えるようにしてもよい。この場合、顔有ゾーンの大きさは、対応する顔の検出サイズよりも大きなサイズとなる。また、検出された被写体の移動速度や、被写体を追う際のデジタルカメラ100のパンニング(ユーザーによるフレーミング)によって生じる角速度などに応じて顔有ゾーンの大きさを変更するようにしてもよい。
【0061】
S405では、システム制御部50は、視線確定ボタン83が押下されたか否か(視線入力位置に基づく主被写体の確定指示操作があったか否か)を判定する。視線確定ボタン83が押下された場合はS406に進み、そうでない場合はS411に進む。
【0062】
S406では、システム制御部50は、まだ主被写体が決定されていない未確定状態(まだ追尾対象が指定されていない状態)であるか否かを判定する。未確定状態であればS408に進み、そうでない場合(すでに主被写体が決定された確定状態であって、追尾対象が指定されて追尾が行われている状態の場合)はS407に進む。
【0063】
S407では、システム制御部50は、未確定状態となるように、確定状態を解除する。これによって追尾されていた被写体の追尾は解除され、追尾対象が未指定の状態となる。
【0064】
S408では、システム制御部50は、視線検出ブロック160で検出されている視線の位置(視線入力位置)が、顔有ゾーン内であるか否かを判定する。視線が顔有ゾーン内にあればS409に進み、そうでない場合(視線入力位置がいずれかのデフォルトのゾーン内である場合)にはS410に進む。
【0065】
S409では、システム制御部50は、視線入力位置を内包する顔有ゾーンに対応する顔を主被写体として設定する。この際、前述の自動選択条件には基づかずに主被写体が設定される。そして、主被写体の顔にAFを行う。また、主被写体の顔を追尾対象として追尾を開始する。これによって前述の確定状態となる。
【0066】
図3(e)のように、視線入力位置を示す視線ポインタ350の中心が、顔有ゾーン330cの中にある状態で、視線確定ボタン83が押下されると、主被写体は顔有ゾーン330cに対応する顔枠320cの顔となる。そのため視線確定ボタン83の押下に応じて
図3(e)から
図3(f)へと表示が遷移し、顔枠320cが付されていた顔が追尾対象となり、追尾枠302が表示され、AFが行われるとともに、追尾が開始される。このように、デフォルトのゾーンよりも大きく設定された顔有ゾーン330cに視線入力することで、対応する顔を選択することができるため、視線による大雑把な位置指定によってユーザーの意図にあった被写体を簡単に選択することができる。人間による視線には、固視微動と呼ばれる、ある一点を注視している際にも眼球が細かい運動を起こすという特性がある。従って視線入力だけを用いて厳密な位置の指定を行おうとしても、ユーザーの意図通りの位置を指定することは難しく、ユーザーにとって不快な操作感となってしまう。これに対し、本実施形態によれば、このような不快感を軽減することができる。
【0067】
S410では、システム制御部50は、視線入力位置を内包するデフォルトのゾーン内において、前述の自動選択条件に基づいて主被写体を設定する。そして、主被写体にAFを行う。また、主被写体を追尾対象として追尾を開始する。これによって前述の確定状態となる。
【0068】
S411では、システム制御部50は、シャッターボタン61が半押しされて第1シャッタースイッチ62がオンとなったか否か、つまり第1シャッタースイッチ信号SW1があったか否かを判定する。第1シャッタースイッチ信号があった場合はS412に進み、
そうでない場合はS420に進む。
【0069】
S412では、システム制御部50は、被写体の追尾中であるか否かを判定する。追尾優である場合はS413に進み、そうでない場合はS414に進む。
【0070】
S413では、システム制御部50は、追尾対象に対してAFを行う。この場合は視線入力位置には基づかず、追尾していた被写体がAF対象となる。
【0071】
S414では、システム制御部50は、視線検出ブロック160で検出されている視線の位置(視線入力位置)が、顔有ゾーン内であるか否かを判定する。視線が顔有ゾーン内にあればS415に進み、そうでない場合(視線入力位置がいずれかのデフォルトのゾーン内である場合)にはS416に進む。
【0072】
S415では、システム制御部50は、視線入力位置を内包する顔有ゾーンに対応する顔を主被写体として設定し、主被写体の顔にAFを行う。この際、前述の自動選択条件には基づかずに主被写体が設定される。
【0073】
S416では、システム制御部50は、視線入力位置を内包するデフォルトのゾーン内において、前述の自動選択条件に基づいて主被写体を設定する。そして、主被写体にAFを行う。
【0074】
S417では、システム制御部50は、シャッターボタン61が全押しされ、第2シャッタースイッチ64がオンとなったか否か、つまり第2シャッタースイッチ信号SW2があったか否かを判定する。第2シャッタースイッチ信号SW2があった場合はS418に進み、そうでない場合はS419に進む。
【0075】
S418では、システム制御部50は、撮像部22で露光・撮像を行い、生成された画像ファイルを記録媒体200に記録するまでの前述の一連の撮影処理を行う。
【0076】
S419では、システム制御部50は、シャッターボタン61の半押しが継続しており、第1シャッタースイッチ62のオンが保持されているか否か、つまり第1シャッタースイッチ信号SW1の発生が継続しているか否かを判定する。継続している場合はS417に進み、そうでない場合にはS420に進む。
【0077】
S420では、システム制御部50は、電源オフ、再生モードへの移行指示などの終了イベントがあったか否かを判定する。終了イベントがあった場合には
図4の処理を終了し、そうでない場合にはS401に戻って処理を繰り返す。
【0078】
以上説明した本実施形態によれば、顔が検出された場合に、視線による大まかな位置の指定によって簡単かつ確実に所望の顔を選択することができる。なお、本実施形態では特定の種別の被写体を人物の顔として、人物の顔に対応するゾーンを大きくする例を説明した。しかし人物の顔は一例にすぎず、顔に含まれる目、動物の顔、乗り物、動体など、LV画像から検出可能な他の種別の被写体も上述の人物の顔と同様に扱い、視線によって主被写体として選択しやすくするように、対応する大きいゾーンを設定してもよい。
【0079】
また、上述の実施形態では、デフォルトのゾーン、顔有ゾーンともに、ゾーン枠をEVF29に表示してユーザーが認識可能とする例を説明したが、これらのゾーン枠は表示しなくともよい。すなわち、内部的に上述したようなゾーンの区分けをしておき、この区分けと視線に応じて主被写体を設定するようにしてもよい。
【0080】
また、上述の実施形態では、視線確定ボタン83や第1シャッタースイッチ62などの特定の操作部材に対する操作があったことに応じて主被写体を選択する例を説明したが、そうでなくてもよい。例えば、視線を常時検出し、現在の視線に応じて主被写体の選択や切り替えを常に行ってもよい。また、主被写体に施す特定の処理がAFと追従である例を説明したが、それらの一方のみを行ってもよいし、AFや追従とは異なる処理を行ってもよい。
【0081】
図3(g),
図3(f)の表示例を用いて、本実施形態を適用しなかった場合の動作を説明する。
図3(g)は、
図3(c)と同様のLV画像が表示されており、2人の顔が検出されている場合の例である。ただし、検出されている顔枠320b,320cに対応する顔有ゾーンは設定されておらず、デフォルトのゾーンが設定されたままの場合の例である。この状態で、視線入力位置(視線ポインタ350)の位置が前述の
図3(e)とまったく同じ位置となっているときに視線確定ボタン83が押下されたとする。その場合は、視線入力位置(視線ポインタ350の中心)を内包するデフォルトのゾーン310c内で、自動選択条件に従って主被写体が決定される。この結果、ゾーン310c内で最至近側の被写体であって、コントラストが高い、空との境界付近の木の一部が選択され、
図3(h)に示す位置に追尾枠302が表示される。このケースでは、ユーザーが人物cの顔を選択しようとしていたとしても、人物の顔の位置に視線入力位置を厳密に合わせることができなかったため、意図と異なる位置が主被写体として設定されてしまう。これに対し本実施形態によれば、同じ被写体と視線入力位置の状況であっても前述のとおり人物cの顔を主被写体とすることができる。すなわち本実施形態によれば、視線入力による大まかな位置の指定であっても、ユーザーの意図通りの被写体を選択できる可能性が高まる。
【0082】
なお、システム制御部50が行うものとして説明した上述の各種制御は1つのハードウェアが行ってもよいし、複数のハードウェア(例えば、複数のプロセッサーや回路)が処理を分担することで、装置全体の制御を行ってもよい。
【0083】
また、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。さらに、上述した各実施形態は本発明の一実施形態を示すものにすぎず、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0084】
また、上述した実施形態では、本発明をデジタルカメラに適用した場合を例にして説明したが、これはこの例に限定されず、視線検知可能かつ被写体検出可能な撮像装置であれば適用可能である。例えば、本発明は、パーソナルコンピュータやPDA、携帯電話端末や携帯型の画像ビューワ、プリンタ装置、デジタルフォトフレーム、音楽プレーヤー、ゲーム機、電子ブックリーダーなどに適用可能である。また、本発明は、映像プレーヤー、表示装置(投影装置を含む)、タブレット端末、スマートフォン、AIスピーカー、家電装置や車載装置などに適用可能である。
【0085】
<その他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0086】
100:デジタルカメラ 22:撮像部 24:画像処理部
50:システム制御部 160:視線検出ブロック